(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220106BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20220106BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220106BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220106BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220106BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220106BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220106BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220106BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D11/54
C09D5/02
C09D5/00 D
B41M5/00 132
B41J2/01 501
C09D7/61
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2021141846
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2021-09-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
(72)【発明者】
【氏名】植田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛仁
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6837591(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/181527(WO,A1)
【文献】特開2017-061124(JP,A)
【文献】特開2019-111763(JP,A)
【文献】特開2009-262549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00-201/10
B41J2/01
B41M5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルジョン、凝集促進剤、界面活性剤、及び水を含有するプライマー組成物であって、
前記樹脂エマルジョンは
ウレタン系樹脂エマルジョンを含有し、
前記界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる1つ以上の界面活性剤(A)と、
前記界面活性剤(A)以外のノニオン性界面活性剤(B)を含有し、
前記ノニオン性界面活性剤(B)は、HLB値が10.0以上15.5未満であり、分子内に複数のポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤であって、さらにポリオキシアルキレン基含有脂肪酸グリセリル、ポリオキシアルキレン基含有脂肪族アミン、及びポリオキシアルキレン基含有ソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1つ以上のノニオン性界面活性剤であり、
前記プライマー組成物中、前記ノニオン性界面活性剤(B)の含有割合が、3.0質量%以下であり、
有機溶剤を含有しないか、又は前記プライマー組成物中の有機溶剤の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤(A)と前記ノニオン性界面活性剤(B)との質量比(界面活性剤(A)/ノニオン性界面活性剤(B))が、0.01以上100以下であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプライマー組成物から形成されることを特徴とするプライマー層。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプライマー組成物と、水性インクジェット用インク組成物を有することを特徴とするインクセット。
【請求項5】
請求項4に記載のインクセットにより印刷して得られることを特徴とする印刷物。
【請求項6】
請求項4に記載のインクセットを用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物、プライマー層、インクセット、印刷物、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料等を含有する水性インクジェット用インク組成物と、前記水性インクジェット用インク組成物の凝集を促進させる凝集促進剤を含有するプライマー組成物を有するインクセットを用いた印刷方法が知られている(特許文献1-5)。
これら特許文献には、プライマー組成物は、保存安定性が良く、また、当該プライマー組成物から形成されるプライマー層に、水性インクジェット用インク組成物を用いて細線印刷をした場合、滲み等のない良好な印刷画質(印刷層)が形成できること等が開示されている。
【0003】
また特許文献6及び7には、アセチレン系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤のうち少なくとも一方を含む、水性インクジェット用インク組成物用前処理液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-61124号公報
【文献】特開2019-111763号公報
【文献】特開2017-88646号公報
【文献】特開2018-12219号公報
【文献】特開2019-73608号公報
【文献】特開2021-55093号公報
【文献】特開2021-54084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット印刷は、非接触の印刷であるため、ベタ画像(ベタ部)を印刷する際、水性インクジェット用インク組成物のドットが、プライマー層に十分に広がらない場合、ベタ画像(ベタ部)のスジが目立ち、画質の劣化が顕著となる問題があった。そして、上記の特許文献で開示されたプライマー組成物(前処理液)には、これらの特性に改善の余地があった。
更にベタ画像のスジ等の発生は、プライマー組成物が製造直後であるか、そうでないかによっても異なる場合があり、しかも、いわゆる保存安定性に優れたプライマー組成物であっても、その製造直後及び製造直後ではない、いずれの場合でもスジやムラの発生を十分に防止できるとはいえない。
また、樹脂フィルム等の透明性の高い基材に塗布する場合、プライマー層にも高い透明性が求められていた。
【0006】
本発明の課題は、保存安定性に優れ、プライマー製造直後及び一ヶ月後の印刷適性に優れ、更にプライマー組成物の皮膜の乾燥性及び印刷後のプライマー皮膜の透明性に優れるプライマー組成物を提供することである。
また、上記のプライマー層を形成できるインクセット、当該インクセットを印刷して得られる印刷物、及び当該インクセットを用いる画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下記のプライマー組成物とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の本発明とするに至った。
1.樹脂エマルジョン、凝集促進剤、界面活性剤、及び水を含有するプライマー組成物であって、
前記樹脂エマルジョンはポリオレフィン系樹脂エマルジョン及びウレタン系樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる1つ以上の界面活性剤(A)と、
前記界面活性剤(A)以外のノニオン性界面活性剤(B)を含有し、
前記ノニオン性界面活性剤(B)は、HLB値が10.0以上15.5未満であり、分子内に複数のポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤であって、さらにポリオキシアルキレン基含有脂肪酸グリセリル、ポリオキシアルキレン基含有脂肪族アミン、及びポリオキシアルキレン基含有ソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1つ以上のノニオン性界面活性剤であり、
前記プライマー組成物中、前記ノニオン性界面活性剤(B)の含有割合が、3.0質量%以下であり、
有機溶剤を含有しないか、又は前記プライマー組成物中の有機溶剤の含有量が1.0質量%以下であること を特徴とするプライマー組成物。
2.前記界面活性剤(A)と前記ノニオン性界面活性剤(B)との質量比(界面活性剤(A)/ノニオン性界面活性剤(B))が、0.01以上100以下であることを特徴とする1に記載のプライマー組成物。
3.1又は2に記載のプライマー組成物から形成されることを特徴とするプライマー層。
4.1又は2に記載のプライマー組成物と、水性インクジェット用インク組成物を有することを特徴とするインクセット。
5.4に記載のインクセットにより印刷して得られることを特徴とする印刷物。
6.4に記載のインクセットを用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プライマー組成物の保存安定性、プライマー製造直後及び一ヶ月後の印刷適性に優れ、更にプライマー組成物の皮膜の乾燥性及び印刷後のプライマー皮膜の透明性に優れる。特に、上記のHLB値を有する、ノニオン性界面活性剤(B)を特定量使用することにより、保存安定性に優れ、透明性の高いプライマー層を形成できる効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物は、樹脂エマルジョン、凝集促進剤、界面活性剤、及び水を含有することを基本とする。
【0010】
<樹脂エマルジョン>
前記樹脂エマルジョンは、ポリオレフィン系樹脂エマルジョン及びウレタン系樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも1種を使用する。ポリオレフィン系樹脂エマルジョンとウレタン系樹脂エマルジョンをいずれも含有することが好ましいが、いずれが一方でも良い。
ポリオレフィン系樹脂エマルジョンとしては、ポリオレフィン系樹脂が水に分散したエマルジョンである。前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、ならびにエチレン、プロピレン、及びブチレンのうち2種以上を共重合させたポリオレフィン樹脂等が挙げられる。また、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン鎖に対して、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アクリロイル基、その他の高分子鎖を導入した変性ポリオレフィン樹脂;ポリオレフィン鎖の一部を酸化処理した酸化ポリオレフィン樹脂;一部をハロゲンで処理したハロゲン化ポリオレフィン樹脂等であってもよい。
中でもポリオレフィン樹脂を塩素化し、エマルジョン化した塩素化ポリオレフィン系樹脂エマルジョンが好ましい。塩素化ポリオレフィン系樹脂エマルジョンとしては、例えば、塩素化ポリプロピレン樹脂エマルジョン、塩素化ポリエチレン樹脂エマルジョン等が挙げられ、塩素化度が15~30%であることが好ましい。前記ポリオレフィン系樹脂エマルジョンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
前記ポリオレフィン系樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、「ケミパールS100」(三井化学社、ポリエチレン系樹脂エマルジョン)、「ケミパールXEP800H」(三井化学社、ポリプロピレン系樹脂エマルジョン)、「アローベースTC-4010」(ユニチカ社、ポリプロピレン系樹脂エマルジョン)、「スーパークロンE-604」(日本製紙社、塩素化ポリプロピレンエマルジョン)等が挙げられる。
【0012】
ウレタン系樹脂エマルジョンとしては、ポリウレタン樹脂が水に分散したエマルジョンであり、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれも使用できるが、カチオン性、ノニオン性が好ましい。また、前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル・ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。前記ポリウレタン系樹脂エマルジョンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
前記ポリウレタン系樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、「スーパーフレックス620」(第一工業製薬社、カチオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「スーパーフレックス650」(第一工業製薬社、カチオン性ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)、「スーパーフレックス500M」(第一工業製薬社、ノニオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「スーパーフレックスE-2000」(第一工業製薬社、ノニオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「バイボンド PU406」(住化コベストロウレタン社、ノニオン性ポリエーテル系ポリウレタン樹脂)、「NeoRez R-9330」(DSM社、ノニオン性ポリエステル系ポリウレタンエマルジョン)等が挙げられる。
【0014】
本発明のプライマー組成物には、上記の特定の樹脂エマルジョンに加えて、本発明による効果を毀損しないない範囲で、公知の、アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルジョン、ポリブタジエン系樹脂エマルジョン等を使用できる。
【0015】
前記アクリル系樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、アクリル-酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル-塩化ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル-シリコーン系樹脂エマルジョン、アクリル-コロイダルシリカ系樹脂エマルジョン等が挙げられ、これらの中でも、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョンが好ましい。また、前記アクリル系樹脂エマルジョンに含まれる樹脂のガラス転移温度は、ガラス転移温度が0℃以下であるものが好ましい。
【0016】
前記ポリエステル系樹脂エマルジョンは、ポリエステル骨格を有するものであればよいが、基材に対する密着性を向上させる観点から、特開2020-75954号公報等で開示されているポリエステル系ポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましい。
【0017】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、被記録媒体との密着性が良好である点から、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョンに含まれる樹脂のガラス転移温度は、0℃以上50℃以下であるものが好ましい。
【0018】
前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分の含有量は、耐滲み性を向上させる観点から、プライマー組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。そして、保存安定性を向上させる観点から、プライマー組成物中、15.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
前記樹脂エマルジョンの樹脂固形分の含有量は、耐滲み性を向上させる観点から、プライマー組成物の不揮発分中、10.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましく、30.0質量%以上であることが更に好ましい。そして、保存安定性を向上させる観点から、プライマー組成物の不揮発分中、85.0質量%以下であることが好ましく、75.0質量%以下であることがより好ましく、70.0質量%以下であることが更に好ましい。なお、本明細書中の不揮発分は溶剤以外の成分を示す。
【0020】
<凝集促進剤>
前記凝集促進剤は、水性インクジェット用インク組成物用のプライマー組成物に含まれる公知のものが使用でき、例えば、水溶性多価金属塩、有機酸、カチオンポリマー等が挙げられる。前記凝集促進剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記水溶性多価金属塩としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム等の金属と、有機酸又は無機酸から構成される解離性塩が挙げられる。前記有機酸としては、例えば、RCOOH(式中、Rは、水素、炭素数1~30の有機基)で表される脂肪酸等が挙げられる。また、前記無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩化水素(塩酸)、臭化水素、ヨウ化水素、塩素酸、臭素酸、炭酸、リン酸等が挙げられる。前記水溶性多価金属塩としては、具体的には、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0022】
前記有機酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0023】
前記カチオンポリマーとしては、例えば、第1級~第3級アミノ基を有するポリマー、
第4級アンモニウム塩基を有するポリマー等が挙げられる。前記カチオンポリマーとしては、具体的に、第1級~第3級アミノ基及びその塩、第4級アンモニウム塩基を有する単量体(カチオンモノマー)の単独重合体や、該カチオン性モノマーと他のモノマー(以下、「非カチオンモノマー」という。)との共重合体又は縮重合体が挙げられる。前記カチオンポリマーは、水溶性ポリマーや水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0024】
前記凝集促進剤の含有量は、印刷物の鮮明性及び耐滲み性を向上させる観点から、プライマー組成物中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。そして、保存安定性を向上させる観点から、プライマー組成物中、15.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることが更に好ましい。
プライマー組成物の全不揮発分中、1.0質量%以上であることが好ましく、15.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であることが更に好ましい。そして、保存安定性を向上させる観点から、プライマー組成物中、70.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましく、50.0質量%以下であることが更に好ましく、40.0質量%以下であることが最も好ましい。
【0025】
<界面活性剤>
前記界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤からなる群より選ばれる1つ以上の界面活性剤(A)と、前記界面活性剤(A)以外のノニオン性界面活性剤(B)を含有する。
【0026】
<界面活性剤(A)>
前記界面活性剤(A)は、アセチレン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤からなる群より選ばれる1つ以上の界面活性剤である。前記界面活性剤(A)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記アセチレン系界面活性剤としては、公知のアセチレングリコール系界面活性剤やアセチレンアルコール系界面活性剤を採用できる。公知のものが使用でき、例えば、市販品として、「ダイノール607」、「ダイノール609」、「オルフィンE-1004」、「オルフィンE-1010」、「オルフィンE-1020」、「オルフィンPD-001」、「オルフィンPD-002W」、「オルフィンPD-004」、「オルフィンPD-005」、「オルフィンEXP.4001」、「オルフィンEXP.4200」、「オルフィンEXP.4123」、「オルフィンEXP.4300」(以上、日信化学工業社);「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール104A」、「サーフィノール104BC」、「サーフィノール104DPM」、「サーフィノール104PA」、「サーフィノール104PG-50」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」(以上、EVONIK社)等が挙げられる。
【0028】
前記シリコーン系界面活性剤としては、公知のものが使用でき、例えば、市販品として、「BYK-307」、「BYK-331」、「BYK-333」、「BYK-347」、「BYK-348」、「BYK-349」、「BYK-345」、「BYK-378」、「BYK-3455」(以上、ビックケミー社)等が挙げられる。
【0029】
<ノニオン性界面活性剤(B)>
前記ノニオン性界面活性剤(B)は、前記界面活性剤(A)以外のノニオン性界面活性剤であり、HLB値が10.0以上15.5未満であり、かつ分子内に複数のポリオキシアルキレン基を有する。前記界面活性剤(B)は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記ノニオン性界面活性剤(B)は、HLB値が10.0以上15.5未満であり、保存安定性を向上させる観点から、HLB値が11.0以上であることが好ましく、12.0以上であることがより好ましく、13.0以上であることが更に好ましい。またHLB値が15.4以下であることが好ましい。なお、HLB値とは、上記の特許文献1及び2に開示されているように、グリフィン法によって算出される界面活性剤の親水性と親油性の程度を表す指標であり、HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。
【0031】
また、前記ノニオン性界面活性剤(B)は、分子内に複数のポリオキシアルキレン基(2本以上のポリオキシアルキレン鎖)を有する。前記ノニオン性界面活性剤(B)は、水性インクジェット用インク組成物によるベタ画像の印刷性及び耐滲み性を向上させる観点から、少なくとも、ポリオキシエチレン基を有することが好ましい。なお、本明細書では、例えば、ポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基が、直接、連結(縮合)しているポリオキシアルキレン基は、1本と数える。
【0032】
前記ノニオン性界面活性剤(B)は、上記のHLB値及び分子内に複数のポリオキシアルキレン基(2本以上のポリオキシアルキレン鎖)を有するものであれば、その分子骨格は何ら制限されないが、例えば、ポリオキシアルキレン基含有脂肪酸グリセリル、ポリオキシアルキレン基含有脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン基含有ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0033】
前記界面活性剤(A)の含有量は、プライマー組成物の印刷性を向上させる観点から、プライマー組成物中、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましい。そして、耐滲み性を向上させる観点から、プライマー組成物中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.8質量%以下が最も好ましい。
プライマー組成物の全不揮発分中の前記界面活性剤(A)の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましく、6.0質量%以上が更に好ましい。また20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下が更に好ましい。
【0034】
前記ノニオン性界面活性剤(B)の含有量は、プライマー組成物中、4.0質量%以下である。前記ノニオン性界面活性剤(B)の含有量は、ベタ画像の印刷性を向上させる観点から、プライマー組成物中、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましい。そして、耐滲み性及びプライマー層の透明性を向上させる観点から、プライマー組成物中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.8質量%以下であることが最も好ましい。
プライマー組成物の全不揮発分中の前記界面活性剤(B)の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、8.0質量%以上が更に好ましい。また15.0質量%以下が好ましく、13.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下が更に好ましい。
【0035】
前記界面活性剤(A)と前記ノニオン性界面活性剤(B)との質量比(界面活性剤(A)/ノニオン性界面活性剤(B)(含有するノニオン性界面活性剤(B)の質量に対する界面活性剤(A)の質量の比))が、プライマー組成物の印刷性、ベタ画像の印刷性、耐滲み性、プライマー層の透明性を向上させる観点から、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。そして、100以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明中の界面活性剤には、前記界面活性剤(A)と前記ノニオン性界面活性剤(B)以外の公知の界面活性剤(その他の界面活性剤)を、本発明の効果を毀損しない範囲で含有させることができるが、含有させなくてもよい。前記その他の界面活性剤としては、例えば、HLB値が10.0未満又は15.5以上のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記その他の界面活性剤の具体例としては、例えば、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。但し、HLB値が15.5以上20.0以下のノニオン性界面活性剤を含有させなくても良い。
【0037】
<有機溶剤>
本発明のプライマー組成物は有機溶剤を含有しないか、又は前記プライマー組成物中の含有量が1.0質量%以下含有する。有機溶剤の含有量は0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましい。また、乾燥性の観点から、有機溶剤を含有しないことがさらに好ましい。
前記有機溶剤は、公知の有機溶剤が使用でき、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、窒素含有化合物類、ケトン類、エーテル類、エステル類等が挙げられる。前記有機溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
前記モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等が挙げられる。
【0039】
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール等が挙げられる。
【0040】
前記多価アルコールの低級アルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0041】
前記窒素含有化合物としては、例えば、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0042】
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0043】
前記エーテル類としては、例えば、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0044】
前記エステル類としては、例えば、プロピレンカルボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、酪酸エチル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート;ε-カプロラクトン、ε-カプロラクタム等の環状エステル等が挙げられる。
【0045】
<水>
前記水は、前記樹脂エマルジョン中に含有する水、本発明のプライマー組成物の濃度調製のために加える水、等を含むものである。前記水としては、例えば、イオン交換水、純水、蒸留水、工業用水等が挙げられる。前記水は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
前記水(各成分に含有する水を含む)の含有割合は、塗膜乾燥性を向上させる観点から、70.0質量%以上であることが好ましく、80.0質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、98.0質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
前記プライマー組成物は、基材表面との相互作用によりプライマーと基材との密着性が向上することから、ヒドラジド化合物を含んでいてもよい。前記ヒドラジド化合物としては、ジヒドラジド化合物であることが好ましく、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。前記ヒドラジド化合物の含有量は、通常、プライマー組成物中、0.2質量%以上5.0質量%以下程度である。
【0048】
本発明のプライマー組成物は、上記した成分以外に、必要に応じて任意成分が配合されてもよい。任意成分としては、各種添加剤が例示される。添加剤としては、保存性向上剤、消泡剤、接着性付与剤、フィラー、増粘剤等が挙げられる。
【0049】
前記保存性向上剤としては、ヒンダートアミン、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。前記ヒンダートアミンとしては、例えば、N-CH3タイプ、N-Hタイプ、N-ORタイプ等が挙げられる。前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等が挙げられる。前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。前記保存性向上剤を使用する場合、前記保存性向上剤の含有量は、プライマー組成物中、通常、0.05~1.0質量%程度である。
【0050】
前記消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、プルロニック(登録商標)系消泡剤等が挙げられる。前記消泡剤を使用する場合、前記消泡剤の含有量は、プライマー組成物中、通常、0.05~1.0質量%程度である。
【0051】
前記接着性付与剤としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。前記接着性付与剤を使用する場合、前記接着性付与剤の含有量は、プライマー組成物中、通常、0.5~5.0質量%程度である。
【0052】
前記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレー、硫酸バリウム等の体質顔料が挙げられる。前記フィラーを使用する場合、前記フィラーの含有量は、プライマー組成物中、通常、0.1~10.0質量%程度である。
【0053】
前記増粘剤としては、例えば、無機系増粘剤、多糖類及びその誘導体、各種高分子化合物等が挙げられる。前記増粘剤を使用する場合、前記増粘剤の含有量は、プライマー組成物中、通常、0.1~10.0質量%程度である。
【0054】
<プライマー組成物の製造及びプライマー組成物の塗布>
前記プライマー組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、水に、前記樹脂エマルジョン、前記凝集促進剤、及び前記界面活性剤、必要に応じて、各種添加剤等を加え、ディスパー等で撹拌混合することにより製造できる。
本発明のグラビア印刷用プライマー組成物は、プライマー組成物を塗布する手段として均一に塗布できる手段であれば、任意の手段を採用できる。そのような手段として、グラビア印刷、噴霧塗布、ローラ塗布、バーコーターによる塗布等を採用できる。これらの塗布の条件は特に限定されず、プライマー組成物の物性、印刷用基材である被塗布物の性質や材質等に応じて適宜決定できる。
【0055】
[インクセット]
本発明のインクセットは、前記プライマー組成物と、水性インクジェット用インク組成物を有する。
【0056】
前記水性インクジェット用インク組成物は、特に限定されず、公知の水性インクジェット用インク組成物を用いることができ、例えば、顔料、アルカリ可溶性樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、有機溶剤、及び水を含有するインク組成物等が挙げられる。
【0057】
前記顔料は、水性インクジェット用インク組成物に使用される有機顔料や無機顔料を使用することができる。前記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、フラバンスロン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、インダンスロン系顔料等が挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記顔料は、公知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。前記顔料を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
前記顔料の代表的な色相ごとの具体例としては、以下のものが挙げられる。
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられる。
【0059】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0060】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等が挙げられる。
【0061】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
【0062】
ホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理されていてもよい。
【0063】
前記顔料の含有割合は、前記水性インクジェット用インク組成物中、印刷物の印画濃度を向上させる観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、10.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましい。ただし、前記顔料が白色顔料である場合、前記白色顔料の含有割合は、前記水性インクジェット用インク組成物中、4.0質量%以上であることが好ましく、8.0質量%以上であることがより好ましく、そして、30.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
<アルカリ可溶性樹脂>
前記アルカリ可溶性樹脂は、通常のインクや塗料の顔料分散用やバインダーとして利用できるアルカリ可溶性樹脂であって、塩基性化合物の存在下で水性媒体中に溶解できるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH2))等のアニオン性基の1種又は2種以上を含有する樹脂が好ましい。
【0065】
前記アルカリ可溶性樹脂は、更に、主に顔料との吸着性を向上させるための疎水性部分を分子中に有することが好ましい。分子内に導入する疎水性部分としては、例えば、長鎖アルキル基、脂環族、芳香族の環状炭化水素基等の疎水性基が挙げられる。
【0066】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、水性媒体への溶解性を高める観点から、40mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、300mgKOH/g以下であることが好ましく、250mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、前記酸価は、アルカリ可溶性樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0067】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐ブロッキング性を向上させる観点から、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐折り曲げ性を向上させる観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
【0068】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂の場合、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1~Tgxはアルカリ可溶性樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1~Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
【0069】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂以外の場合、熱分析により求めた理論ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定することができる。
【0070】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、水性媒体への溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。
【0071】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0072】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。この様なアルカリ可溶性樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000-94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が利用可能である。更には、これら以外のその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。前記アルカリ可溶性樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
前記アクリル系共重合樹脂としては、例えば、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下、溶媒中で重合して得られるものが使用できる。
【0074】
前記アニオン性基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体が挙げられ、これらの中でも、カルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。
【0075】
前記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマル酸、マレイン酸ハーフエステル等が挙げられる。また、前記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スルホエチルメタクリレート等が挙げられる。また、前記ホスホン酸基を有する単量体としては、例えば、ホスホノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0076】
前記アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0077】
前記疎水性基含有単量体としては、例えば、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート等)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテル等)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレート等);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。前記疎水性基含有単量は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
前記アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、水性媒体中でアルカリ可溶性樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことができる。
【0079】
前記親水性基含有単量体としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物等;塩基性基含有単量体として、例えば、1-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニル-3-ピロリドン等のビニルピロリドン類、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のビニルピリジン類、1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール等のビニルイミダゾール類、3-ビニルピペリジン、N-メチル-3-ビニルピペリジン等のビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(メタ)アクリルアミド、N-エトキシ(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類等;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類等;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記親水性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類等が挙げられる。前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
前記アルカリ可溶性樹脂は、当該樹脂を適度に架橋して、顔料の凝集を抑制させる観点から、2官能以上の架橋剤を使用してもよい。
【0082】
前記2官能以上の架橋剤は、アルカリ架橋性樹脂が有する官能基と反応するために、分子内に2つ以上の反応性官能基を有するものであればよい。当該反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、アジリジン基等が挙げられる。前記2官能以上の架橋剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100.0質量部に対して、顔料の分散性を高める観点から、5.0質量部以上であることが好ましく、15.0質量部以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100.0質量部に対して、水性インクジェット用組成物の粘度を低下させる観点から、100.0質量部以下であることが好ましく、80.0質量部以下であることがより好ましく、60.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0084】
<樹脂エマルジョン>
前記樹脂エマルジョンは、水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の樹脂エマルジョンが使用でき、例えば、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリウレタン系樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルジョン、ポリブタジエン系樹脂エマルジョン、ポリオレフィン系樹脂エマルジョン等が挙げられる。前記樹脂エマルジョンは、印刷物の塗膜の乾燥性や基材への密着性を向上させる観点から、樹脂のガラス転移温度が20℃以下であることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、通常、ガラス転移が起こる温度範囲の中点により算出される。前記樹脂エマルジョンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0085】
前記樹脂エマルジョンの(樹脂)固形分の含有割合は、水性インクジェット用インク組成物中、印刷画質及び耐擦過性を向上させる観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることが好ましく、そして、印刷画質及び保存安定性を向上させる観点から、10.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましい。
【0086】
<界面活性剤>
前記界面活性剤は、水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の界面活性剤が使用でき、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等が挙げられる。前記界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
前記界面活性剤の含有割合は、前記水性インクジェット用インク組成物中、ドット拡張性、印刷物のベタ均一性を向上させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、そして、保存安定性を向上させる観点から、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。
【0088】
<有機溶剤>
前記有機溶剤は、水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の有機溶剤が使用でき、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、窒素含有化合物類、ケトン類、エーテル類、エステル類等が挙げられる。前記有機溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
具体的な溶媒としては、上記のプライマー組成物に使用できる有機溶媒と共通する。
【0089】
前記有機溶剤は、インクジェットノズル内でのインク組成物の乾燥抑制、及び基材上でのインク層(皮膜)の形成のしやすさの観点から、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、及び窒素含有化合物類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0090】
前記有機溶剤の含有割合は、前記水性インクジェット用インク組成物中、吐出安定性を向上させる観点から、15.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜乾燥性を向上させる観点から、60.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であることがより好ましい。
【0091】
<水>
本発明の水は、後述する顔料分散液中に含有する水性媒体としての水、及び本発明の水性インクジェット用インク組成物の濃度調製のために加える水、等を含むものである。前記水としては、例えば、イオン交換水、純水、蒸留水、工業用水等が挙げられる。前記水は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
前記水(各成分に含有する水を含む)の含有割合は、水性インクジェット用インク組成物中、塗膜乾燥性を向上させる観点から、40.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、70.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましい。
【0093】
<塩基性化合物>
前記水性インクジェット用インク組成物には、アルカリ可溶性樹脂を溶解させる観点から、塩基性化合物を含むことが好ましい。前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N、N-ジエチルエタノールアミン、N、N-ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の有機塩基性化合物等が挙げられる。前記塩基性化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
前記水性インクジェット用インク組成物中の前記塩基性化合物の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂を媒体中に溶解させる量であればよいが、通常、アルカリ可溶性樹脂の分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、印刷物の耐水性を高める観点から、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0095】
本発明の水性インクジェット用インク組成物には、更に、目的に応じて公知の樹脂、顔料分散剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤を添加することができる。
【0096】
<水性インクジェット用インク組成物の調製方法>
前記水性インクジェット用インク組成物を調製(製造)する方法としては、特に限定されず、上記の成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合すればよいが、例えば、(1)前記塩基性化合物の存在下にアルカリ可溶性樹脂を水に溶解した水性樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散剤等を混合した後、各種分散機、例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミル等を利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、更に残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法や、(2)上記の方法で顔料を分散した後、酸析法や再公表特許WO2005/116147号公報に記載のイオン交換手段等により、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速攪拌装置等)を用いて水に再分散し、更に残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法等が挙げられる。
【0097】
前記水性インクジェット用インク組成物は、製造後の初期粘度が2.0~15.0mPa・s、好ましくは3.0~12.0mPa・sの範囲である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「RE100L型粘度計」、東機産業社)により測定できる。
【0098】
[印刷物]
本発明の印刷物は、前記水性インクジェット用インク組成物と前記プライマー組成物を有するインクセットを印刷して得られる。具体的には、前記プライマー組成物を、基材に塗工・乾燥してプライマー層を形成した後、前記水性インクジェット用インク組成物を当該プライマー層にインクジェット印刷機を用いて印刷する画像形成方法により得られる。前記プライマー組成物の塗工方法は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター、インクジェット等の各種塗工装置を用いた塗工方法が挙げられる。
【0099】
前記基材としては、例えば、アート紙、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙等のコート紙、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルシートのようなプラスチック系基材等の非吸収性印刷媒体;普通紙、オフセット紙等の未コート紙;綿等の布帛等が挙げられ、これらの中でも、プライマー層の密着性が良好な観点から、非吸収性印刷媒体が好ましく、プラスチック系基材がより好ましい。
【実施例】
【0100】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する(表に記載の数値は質量部)。さらに表1中の水以外の物質の含有量はその不揮発分の含有量であり、例えば、樹脂エマルジョンの含有量の数値は溶媒である水を含まず、樹脂エマルジョンに由来する水は表1中の水の含有量に含まれる。
<実施例及び比較例>
<プライマー組成物の製造>
表1の質量の含有割合になるように、表1に記載の各成分を撹拌・混合して、実施例及び比較例のプライマー組成物を製造した。
(界面活性剤A)
アセチレン系:オレフィンE1010:アセチレンジオールEO付加物:(有効成分100%、HLB:13、日信化学工業社)
シリコーン系:BYK331:ポリシロキサン誘導体:(有効成分98%、ビッグケミー社)
【0101】
(界面活性剤B)
NIKKOL TMGS―15V :ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル(有効成分100%、HLB:13.5、日光ケミカルズ社)
アミート320:ポリオキシエチレン脂肪族アミン:(有効成分100%、HLB:15.4、花王社)
NIKKOL TS-10V:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:(有効成分100%、HLB:14.9、日光ケミカルズ社)
【0102】
(その他の界面活性剤)
アミート105:ポリオキシエチレンアルキルアミン:(有効成分100%、HLB:9.8、花王社)
ノニオンLT-280W:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:(有効成分100%、HLB:19.0、日油社)
エマルゲン1108:ポリオキシエチレンアルキルエーテル:(有効成分100%、HLB:13.5、花王社)
【0103】
<樹脂エマルジョン>
ポリオレフィン系樹脂:スーパークロンE-604(Nv:40%、塩素化ポリプロピレンエマルジョン、日本製紙社)
ポリウレタン系樹脂:NeoRez R-9330(Nv:40%、ポリエステルポリウレタンエマルジョン、DSM社)
スチレン-アクリル系樹脂:モビニール966A(Nv:45%、スチレン-アクリルエマルジョン、ジャパンコーティングレジン社)
【0104】
<プライマー層の作製>
実施例及び比較例のインクジェット記録用プライマーインクをOPPフィルム(P2161、25μm、東洋紡社)に#4のバーコーターで塗布し、加熱乾燥させることにより、実施例及び比較例のプライマーインクベタ印刷物(プライマー層)を作製した。この時のプライマー層の膜厚は、1μmであった。
【0105】
<保存安定性>
上記で製造したプライマー組成物をそれぞれガラス瓶に充填し、60℃で7日間静置した後、プライマー組成物の分離・析出物の有無の状態を目視で観察して、以下の基準で評価した。
[評価基準]
○:液相の分離・析出物がなく、均一である。
△:液相の分離・析出物が僅かに認められる。
×:液相の分離・析出物が認められる、又は不均一である。
【0106】
<プライマー印刷適性>
・製造直後
製造後24時間以内の実施例及び比較例のプライマーを塗布した印刷物の表面に、エプソン社のインクジェットプリンタ“PX-105”を用いて水性顔料型インクジェット記録用インク組成物を吐出して約0.3mmの細線及びベタ画像を印刷し、得られた画像を目視観察して以下の評価基準で画質を評価した。
評価基準
○:滲みやムラ、スジがない。
△:僅かにムラ、スジが見られる(実用可)。
×:滲みやムラ、スジがあることが目視で分かる(実用不可)。
【0107】
・製造1か月後
製造後、室温・暗所にて1か月保管した実施例及び比較例のプライマーを塗布した印刷物の表面に、エプソン社のインクジェットプリンタ“PX-105”を用いて水性顔料型インクジェット記録用インク組成物を吐出して約0.3mmの細線及びベタ画像を印刷し、得られた画像を目視観察して以下の評価基準で画質を評価した。
評価基準
○:滲みやムラ、スジがない。
△:僅かにムラ、スジが見られる(実用可)。
×:滲みやムラ、スジがあることが目視で分かる(実用不可)。
【0108】
<乾燥性>
実施例及び比較例のプライマー組成物をOPPフィルム(P2161、25μm、東洋紡社)に#4のバーコーターで塗布した後、高さ10cmの位置に吹き口を固定したドライヤーで乾燥し、完全に乾燥するまでの時間を計測した。
評価基準
○:3秒未満で完全乾燥する。
△:5秒未満で完全乾燥する。
×:完全乾燥に5秒以上かかる。
【0109】
<透明性>
OPPフィルム上に実施例及び比較例のプライマーを前記方法で印刷した印刷物を、湿度90%、温度40℃のオーブン中で24時間加熱したのち、印刷物の状態を目視観察して以下の評価基準で画質を評価した。
評価基準
○:透明である。
△:僅かに白濁している(実用可)。
×:明らかに白濁している(実用不可)。
【0110】
【0111】
本発明に沿った例である実施例によれば、優れた保存安定性、製造直後と製造1か月後の印刷適性、乾燥性及び透明性に優れるという効果を発揮した。
これに対して、界面活性剤(B)を含有しなかった比較例1によれば、プライマーの製造直後及び製造1ヵ月後のプライマーの印刷適性は悪化した。
界面活性剤(B)が3.0質量%を超えた比較例2によれば、製造直後及び1ケ月後の印刷適性が悪化し、更に印刷塗膜は透明ではなかった。
界面活性剤(B)を含有せず、界面活性剤(A)に対してその他の界面活性剤を使用した比較例3によれば、保存安定性が悪く、その他の効果を確認できなかった。同様のその他の界面活性剤を含有した比較例4及び5の結果によれば、プライマーの製造直後及び製造1ヵ月後のプライマーの印刷適性は悪化した。有機溶剤が1.0質量%を超えて含有された比較例6~8の結果によれば、特にプライマーの製造1ヶ月後の印刷適性、又はプライマー塗膜の透明性や乾燥性が悪化した。更に、ポリオレフィン系樹脂エマルジョン及びウレタン系樹脂エマルジョンのいずれでもない樹脂エマルジョンを含有した比較例9によれば、プライマーの製造直後及び製造1ヵ月後のプライマーの印刷適性は悪化した。
【要約】
【課題】保存安定性に優れ、プライマー製造直後及び一ヶ月後の印刷適性に優れ、更にプライマー組成物の皮膜の乾燥性及び印刷後のプライマー皮膜の透明性に優れるプライマー組成物を提供すること。
【解決手段】下記の樹脂エマルジョン、凝集促進剤、界面活性剤、及び水を含有するプライマー組成物、
前記樹脂エマルジョンはポリオレフィン系樹脂エマルジョン及びウレタン系樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも1種、
アセチレン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる1つ以上の界面活性剤(A)、
前記界面活性剤(A)以外のノニオン性界面活性剤(B)は、HLB値が10.0以上15.5未満の、分子内に複数のポリオキシアルキレン基を有する、ポリオキシアルキレン基含有脂肪酸グリセリル、ポリオキシアルキレン基含有脂肪族アミン、及びポリオキシアルキレン基含有ソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1つ以上、
前記プライマー組成物中、前記ノニオン性界面活性剤(B)の含有割合が、3.0質量%以下、
有機溶剤を含有しないか、又は前記プライマー組成物中の有機溶剤の含有量が1.0質量%以下である。
【選択図】なし