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特許6994613神経発生性疾患および障害を処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】神経発生性疾患および障害を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20220106BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20220106BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K31/201
A61K35/644
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/28
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019174687
(22)【出願日】2019-09-25
(62)【分割の表示】P 2017516008の分割
【原出願日】2015-06-05
(65)【公開番号】P2019214623
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】2014902173
(32)【優先日】2014-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521165792
【氏名又は名称】ワー チン ブーン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】チャン,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ブーン,ワー チン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2012年,Vol.2012,pp.1-6
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2014年 5月,Vol.155,pp.343-351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 35/00-35/768
A61P 25/00
A61P 25/18
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系の疾患または障害の処置のための薬剤の製造における、有効な量のトランス10-ヒドロキシ-2-デセン酸またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記中枢神経系の疾患または障害は、神経発生性疾患または障害であり、
前記神経発生性疾患または障害は、後天性の神経発生性疾患または障害、先天性の神経発生性疾患または障害、あるいは関連する疾病であり、前記関連する疾病が、自閉症スペクトラム障害、胎児性アルコール・スペクトラム障害、発生的協調障害を含む運動不全、常同性運動障害、トゥーレット症候群を含むチック障害、脳性麻痺、コミュニケーション、会話、および言語の障害を引き起こすような先天性の損傷、脆弱X症候群、ダウン症候群、および注意欠陥多動性障害のような遺伝性障害から選択される、
使用
【請求項2】
トランス10-ヒドロキシ-2-デセン酸またはその薬学的に許容可能な塩が、組成物として投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
トランス10-ヒドロキシ-2-デセン酸またはその薬学的に許容可能な塩が、医薬組成物として投与される、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、神経系の疾患および障害の処置及び/又は予防のための方法に関する。詳しくは本発明の方法は、哺乳動物における後天性または進行性の神経発生性疾患および疾病の処置及び/又は予防において、特に有用である。より詳しくは、自閉症障害のような疾患および障害の処置及び/又は予防のための方法が、本明細書で教示される。
【背景技術】
【0002】
神経学的疾患および障害は、潜在的な衰弱疾病を表わし、あらゆる年齢の人が罹患し得る。そのような疾患は後天性でも先天性でもあり得る。神経発生性障害は、脳または中枢神経系の成長および発達の障害によって特徴づけられる障害のサブセットを表わす。それらは、著しく精神的、情緒的、身体的、および経済的な結果を個人にもたらし得る、広範囲に異なる障害の程度と関連づけられる。
【0003】
後天性の神経学的疾患または疾患は、外傷性、すなわち外力が引き起こした脳の損傷によるもの;または、例えば感染、疾患、毒、酸素やグルコースの欠乏による障害であり得る。先天性神経障害は、典型的には出生時または出生前に存在し、遺伝的異常、子宮内環境、形態形成のエラー、感染または染色体異常の結果であり得る。神経発生性疾患は、後天性でも、先天性でもあり得る。本発明に関連する神経発生性疾患または障害は、例えば、自閉症スペクトラム障害を含み得る。
【0004】
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、150人の出生あたり1人が罹患する、突発性および家族性の発達障害の複合群であり、異常な社会的相互関係、阻害されたコミュニケーション、阻害された社会的相互関係、および、制限的、反復的な行動パターン、興味、および動作を特徴とする。ASDは、自閉症、アスペルガー症候群、幼年期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびレット症候群を含む、ASDの病因学はよく理解されておらず、単一の特定の原因は同定されていない。しかしながら、遺伝子な出生前および分娩時の要因、神経細胞学的な異常、および環境要因を含む、ある種の危険因子が、ASDの発生に寄与すると考えられている。例えば、遺伝的根拠は、一卵性双生児(MZ)における70%を超える一致および母集団全体と比較した子孫間の危険度の増大によって証拠づけられている。
【0005】
自閉症スペクトラム障害は非常に可変な神経発生性障害である;単一の疾病によってではなく、典型的には乳児期または幼年期に最初に現われる多くの特有の症状によって、識別される。関連する症状は、生後6か月で始まり、2歳か3歳ころに確立され、成人期を通じて継続する。
【0006】
ASDは、女性よりも男性の方においてよく見られ、その比率は約5.5:1である。驚くべきことに、唯一の伴性のASDに関連する遺伝子Neuroligin3における突然変異は、ASD患者においてまれであり、他の伴性遺伝子は、ASD結合またはGWASの研究において、これまで同定されていない。しかしながら、性的二形性の脳で発現するCYP19A1(アロマターゼ、つまりエストロゲンを合成する酵素をエンコードする)遺伝子は、15q23-q25 7の示唆的なASD結合から、わずか19Mb離れているだけである。
近年、アロマターゼ発現が、ASD患者において低下したことは報告された。更に、CYP19A1が、読解、会話、および言語に関係するヒト認知機能のための候補遺伝子であることが報告された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在まで、ASDに対する処置法はなく、また、単一の効果的な処置法も同定されていない。自閉症スペクトラム障害の現在の処置法は、生活の質および機能的な独立を向上させることと同じく、関係する経済的損失や家族の苦痛を減少させることを目標としている。ある場合において、教育や行動療法は、機能を改善し、疾病の重症度を減少させ得る。行動処置法以外に、行動療法が失敗したときに、社会的な統合性と機能とに干渉するASDの症状を特異的に縮小するために、多くの異なる薬物が、成功の度合は変化するが、使用されてきたそのような薬物は、向精神薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、覚せい剤および抗精神病剤を含む。しかしながら、ASD患者は、しばしば薬物に変則的に反応し、あるいは、処方された薬物が他の有害な副作用をもたらし得る。社会およびコミュニケーションの障害のようなASDの中核的症状を緩和または逆転させる薬物は一つも知られていない。
【0008】
従って、新しい処置薬または、ASDのような神経発生性障害を処置及び/又は防止する方法を開発するための継続的な必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の出願人は、驚くべきことに、10-HDA、すなわち10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10-HDA)を含む組成物、およびその薬学的に許容可能な塩が、中枢神経系の疾患または疾患、特に自閉症スペクトラム障害のような神経発生性障害の処置及び/又は予防のために効果的な処置法を提供することを発見した。
【0010】
女王バチ酸(queen bee acid)とも呼ばれる10ーHDAは、脂肪酸であり、ローヤルゼリー(幼虫および成体女王の栄養分に使用されるミツバチ分泌物)のキーとなる構成要素である;トランスまたは(E)10ーHDAは、下記の構造を有する:
【0011】
【化1】
【0012】
これは、下記の構造を有する、シスまたは(Z)10ーHDAの構造物と対照的である:
【0013】
【化2】
【0014】
この明細書の全体にわたって10-HDAと言う場合、この化合物のトランスまたは(E)異性体を指すことを意味するように意図される。本発明者がこれを、本発明の文脈において、この化合物の活性型であると決定したものである。
【0015】
本発明の1つの様相において、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、またはその薬学的に許容可能な塩の効果的な量を、その必要性を有する哺乳動物に投与する工程を含む、中枢神経系の疾患または疾患の処置及び/又は予防のための方法が提供される。
【0016】
1以上の実施形態において、中枢神経系疾患または障害は、後天性の神経発生性疾患または障害、先天性の神経発生性疾患または障害、または関連する疾病を含む神経発生性疾患または障害であり得る。
【0017】
本発明に関連する疾患または障害の例は、下記を含む:自閉症スペクトラム障害、胎児性アルコール・スペクトラム障害、発生的協調障害を含む運動不全、トゥーレット症候群を含む常同性運動障害およびチック障害、脳性麻痺、コミュニケーション、会話、および言語障害を引き起こすような先天性の損傷、脆弱X症候群、ダウン症候群、および、注意欠陥多動性障害のような遺伝性障害。
【0018】
1以上の実施形態において、神経発生性障害は、自閉症スペクトラム障害であり得る。詳しくは、自閉症スペクトラム障害は、自閉性障害、アスペルガー症候群、幼年期崩壊性障害、および特定不能の広汎性発達障害、およびレット症候群から成る群から選択される。
【0019】
他の様相において、本発明に基づく10-ヒドロキシ-2-デセン酸またはそれらの薬学的に許容可能な塩は、組成物として投与され得る。例えば、組成物は、ローヤルゼリー、ローヤルゼリー抽出物、またはローヤルゼリー由来の組成物を含見得る。
【0020】
さらに別の様相において、本発明は、ASDを含む神経発生性疾患または障害の処置用及び/又は予防用の医薬の調製における、10-ヒドロキシ-2-デセン酸またはそれらの薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0021】
他に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0022】
この明細書中における任意の先行技術への言及は、先行技術が一般的共通知識の一部を形成しているという認識や任意の形態の暗示ではなく、またそのように解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞のアロマターゼ発現に対するBPAおよび10-HDAの効果を示す。通常条件下で、SH-SY5Y細胞は、小胞体中の膜結合タンパク質であるアロマターゼを発現し、免疫組織化学によって細胞内で最終的に分散された緑の斑点状の染色として示される。25μg/LのビスフェノールAの存在下で、アロマターゼは凝集体になった。ビスフェノールAの効果は、10-HDAの添加によって改善することが可能である。(a)+0μg/L BPA(ビヒクル)-アロマターゼ(緑)の明瞭な染色が、ごく微小な「ドット」として、細胞質中および神経突起に沿って均一に分散される。多数の正常細胞はカバーガラスの表面領域に均一に分散している。Bチューブリン(赤)は、細胞質と神経突起の全体にわたって高度に発現される。(b)+25μg/L BPA-細胞のいくつかの集合は、それらの神経突起を失い始めている(黄色の矢印)。β-チューブリン発現の減少も、神経突起を失ったほとんどの細胞において観察された。アロマターゼ凝集体は、それらの神経突起(アステリックスasterix)を失ったこれらの細胞において生じ始めている。(c)+25μg/L BPA+1mM10ーHDA - 細胞質の全体にわたる良好な神経突起成長および均一なアロマターゼ分算が観察された。10-HDAの添加は、アロマターゼと神経突起の発現パターンに対するBPAの効果を改善する。
【0024】
図2】ArKOおよびBPAを暴露した雄のマウスの自閉症様の行動A.社会的相互関係研究;B.超音波発声;C.雄のグルーミング頻度;D.雄のグルーミング持続時間;E.雄のホイール走行動作、およびF.BPAを暴露した子孫の社会的相互関係研究
【0025】
図3】標準ステレオロジー法によって計数した、子宮内でアロマターゼ-GFP陽性の神経細胞に対するBPA暴露の効果。
【0026】
図4】BPAを暴露したマウスの社会的相互関係および電気生理学/樹状突起の長さに対する10-HDAの効果の研究A.離乳後のBPAを暴露した雄のマウスに対し、10-HDAを毎日注射;B.10-HDA処置の中止後3か月;C.最初の中止後、続けて10-HDAを再投与したもの;D.3週の10-HDA処置後にBPAを暴露した雄の子孫において観察された過度のグルーミング。E.対照(BPAおよびBPE+10-HDA処置マウス)における内側の扁桃体における神経細胞の抵抗性、およびF.対照(BPAおよびBPE+10-HDA処置マウス)における神経細胞の樹状突起の基本長さ。
【0027】
図5】雄マウスの初期の胎児の最初の皮質細胞培養物における、インビトロでのBPAおよび10-HDAの効果の分析
【0028】
図6】雄マウスの初期の胎児の最初の皮質細胞培養物における、インビトロでのBPAおよび10-HDAの効果の分析
【0029】
図7】雄マウスの初期の胎児の最初の皮質細胞培養物における、インビトロでのBPAおよび10-HDAの効果の分析
【0030】
図8】雄マウスの初期の胎児の最初の皮質細胞培養物における、インビトロでのBPAおよび10-HDAの効果の分析
【0031】
図9】雄マウスの初期の胎児の最初の皮質細胞培養物における、インビトロでのBPAおよび10-HDAの効果の分析
【0032】
図10】有毒BPA曝露からのNSC-34細胞の保護における、シスおよびトランス10-HDA活性の比較を示す棒グラフ:DMSOは、DMSOビヒクルのみに暴露された細胞を反映し、-veは、10-HDAがない状態で、BPAに暴露された細胞の陰性対照細胞を反映する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、有効な量の10-HDAをそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、中枢神経系の疾患または障害を処置する方法に関する。
【0034】
本発明の方法は、神経障害の中核的症状、特にASDのような神経発生性障害と関連づけられる症状の有益的な低減を提供する。いくつかの様相において、本発明方法は、自閉症、例えば社会的相互関係の欠乏の症状の重症度における有益的な低減を提供する。
【0035】
化合物が予防的な意味において投与されてもよいが、好ましくは、人はそのような処置法を必要とする。
【0036】
「神経発生性疾病」、「神経発生性障害」または「神経発生性疾患」と言う場合、これらは交換可能に使用され、神経学に基づいた認知障害、情緒的および行動的障害によって特徴づけられる疾病を指すものとして理解されるべきである。
【0037】
1つの実施形態において、前記神経発生性疾病は、自閉症を含むASDの1以上の症状によって特徴づけられる疾病である。
【0038】
本明細書で使用されるような自閉症スペクトラム障害(ASD)の用語は、当業者において明らかであり、2013年5月に発行されたthe Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5(DSM-5)で規定されたように、自閉性障害、アスペルガー症候群、幼年期崩壊性障害および特定御不能な広汎性発達障害(PDD-NOS)およびレット症候群を含む。The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5は、3つのキーとなる診断の基準によるASDの診断を概説する:
a)阻害された社会生活機能:社会集団からの脱落または忌避;
b)コミュニケーション欠乏:発話の発達障害、常同的または遅発的な反復言語の使用、および会話維持の困難性;および
c)反復的常同性行動:過度で冗長な動作。
【0039】
「ASDの症状特徴」という言葉は、ASDを患う個体において生じ得る1以上の任意の疾病を指すものと理解されるべきである。これらの症状は、疾患の過程を通じ全体で明らかであるか、または、単に一時的か定期的に明らかであり得る。例えば、個体は、特定の環境的なきっかけやストレスに反応して、著しく阻害された社会的機能を示すかもしれない。同様に、患者の症状は、ASDを患うにすべての個人によって必ずしも示されないかもしれないことが理解されねばならない。例えば、一部の個人は、発話のスピーチの発達障害のようなコミュニケーション障害を患う。しかしながら、本発明の目的において、任意のそのような症状も、ASD患者がこれまで実際に所定の疾病をどれだけ多くまたは少なく示したかに関係なく、この定義によって包含される。本発明を任意の1つの理論または作用様式に限定することなく、ASDに最も一般的に関連している疾病は、阻害された社会的機能およびコミュニケーション障害を含む。
【0040】
ASDの阻害された社会的機能特徴の例は、限定的でなく、下記を含む:
・12月の月齢までに名前に返事しない;
・アイコンタクトの忌避;
・ひとり遊びの嗜好;
・他人と興味を共有しない;
・所望の目的を達成するための単一の相互作用;
・平面的または不適当な表情の保有;
・個人空間境界を理解しない;
・肉体的接触の忌避または抵抗;
・苦痛中は他人によって慰められない;または
・他人の感情に対する理解または自己の感情の取り扱いの困難性
【0041】
ASDのコミュニケーション障害の特徴の例は、限定的でなく、以下を含む:
・会話及び言語能力の遅滞;
・単語またはフレーズの何回もの反復(反響言語);
・逆代名詞(例えば、「わたし」の代わりに「あなた」と言う);
・質問に対する無関係に回答する;
・指示をしない、または指示に反応しない;
・身振りをほとんどまたは全く使用しない(例えば、さようならで手を振らない);
・発話において、平板的、ロボット的、単調な声である;
・遊びにおいて、振りを使わない(例えば、人形を「渡す」振りをしない);または
・冗談、風刺またはからかいを理解しない。
【0042】
反復運動に関し、これらには、何度も繰り返して反復され得る動作を含む。それらは、身体の一部もしくは全身、または、対象物もしくは玩具でさえも含み得る。例えば、ASDを有する人は、繰り返し腕を叩いたり、または左右に揺れたりするのに、多くの時間を費やし得る。彼らは繰り返して、光を付けたり消したりし、あるいはおもちゃの自動車の車輪を回転させたりし得る。これらのタイプの動作は、自己刺激または「スティミング(stimming)」と記述される。
【0043】
ASDの人々は、しばしばルーチンに生きがいを持つ。1日の通常パターンの変化は、ASDに患う個人に対し、非常に混乱させる可能性がある。彼らは、特に環境が未知の場合、「制御を失い」、「メルトダウン」して癇癪を起こし得る。
【0044】
ASDに患う個人は、ルーチンを、それが普通ではない又は不必要であると認識され得るまで発達させ得る。例えば、ASDに患う個人は、その人が建物のそばを歩くときに、すべての窓の中を見ようとしたり、またはビデオは常に始めから終わりまで、予告編とクレジットタイトルを含めて、見たいと思うことがあり得る。これらのタイプのルーチンからの逸脱は、著しい欲求不満および癇癪を引き起こし得る。
【0045】
ASD患者が示す症状において、彼らの間で非常に大きな差異があるという事実に加えて、これらの1つ以上の症状によっても特徴づけられる、他の神経発生性疾病および障害があるということも理解されねばならない。ASD患者によって示される社会的障害およびコミュニケーション障害は、例えば、胎児性アルコール・スペクトラム症候群またはダウン症候群を持った患者においても共通して観察された。従って、ASDの1以上の症状特徴によって特徴づけられる疾病については、これらの疾病の1以上の存在によって特徴づけられる任意の神経発生性疾病を指すものとして理解されねばならない。
【0046】
1つの実施形態において、前記疾病は、ASDの1以上の症状によって特徴づけられる疾病である。
【0047】
他の実施形態において、前記疾病は自閉症である。
【0048】
本発明は部分的に、アロマターゼ発現はASD患者において低下したという最近の報告に基づく。この観点から、および理論によって限定されることなく、アロマターゼ・ノックアウトマウス(ArKO)モデルは、例えばASD類似の行動障害を含む、ASDの行動および症状のキーとなる診断の一部を反映する行動表現型を示し得る、と仮定した。発明者らは、雄のアロマターゼ・ノックアウトマウス(ArKO)マウスにおいて、通常の機能するアロマターゼの欠損はASD類似の行動障害を促進させることを実証した。これは、人口母集団内でASDが女性よりも男性においてよく見られるという観察と一致している。
【0049】
オスのArKOマウスによって示された行動の表現型は、さらなる比較試験の基礎として使用された。特に発明者は、ポリカーボネート・プラスチックおよびエポキシ樹脂の調製で使用される、ビスフェノールA(BPA)の環境暴露の、自閉的類似の行動の続発に対する役割を同様に調べた。この目的のため、ASD類似の特徴を示すArKOマウスが、BPAとの接触の影響を検討するための比較用ツールとして提供された。
【0050】
本明細書で使用される用語「哺乳動物」は、人間、霊長類、家畜動物(例えば馬、牛、羊、豚、ロバ)、実験用動物(例えばマウス、ラット、モルモット)、愛玩用動物(例えば犬、猫)、および捕獲用野生動物(例えばカンガルー、鹿、狐)を含む。好ましくは、哺乳動物は人間である。
【0051】
上述の疾病のうちのあるものは、本発明方法は、急性の症状の緩和のためと同様に、予防的に使用されてもよいことが明らかである。従って、本明細書で述べる「処置」および類似のものには、例えば、急性疾病の処置と同様に、予防療法が含まれる。
【0052】
本明細書で使用される用語「症状がある」とは、ある患者と、同一のまたは同様の臨床症状または処置に対する反応が存在するか、まはは存在する可能性がある患者の群または集合体との密接な関係または関与を意味する。例えば、ASDの臨床症状は、ASD症状に包含される。
【0053】
当業者は、抗うつ病効果が見られる前の、処置の初期段階における遅滞期および高められた不安を含む、従来の抗精神病および抗うつ病薬物の投与における困難性について精通している。したがって、ある実施形態において、本明細書に記載される10-HDA、その薬学的に許容可能な塩または10-HDAを含む組成物が、従来の薬物の代替品または置換物として、それらを必要とする人に投与されることが意図される。他の実施形態において、10-HDA、薬学的に許容可能な塩または10-HDAを含む組成物が、従来の薬物に対する補助または添加物として、それらを必要とする人に投与されることが意図される。さらに別の実施形態において、10-HDAまたは10-HDAを含む組成物またはそれらの薬学的に許容可能な塩が、補助療法を欠く場合に、それらを必要とする人に投与されることが意図される。さらに別の実施形態において、10-HDAまたは10-HDAを含む組成物またはそれらの薬学的に許容可能な塩が、行動または認知療法と関連して、又は添加物として、それらを必要とする人に投与されることが意図される。
【0054】
10-HDAを従来の薬物と置換すると、10-HDAを含む組成物、または薬学的に許容可能な塩類は、特に、従来の薬物が1以上の悪影響(例えば眠気、震え、不安症、自殺念慮など)に関連づけられる場合において有利である。薬物の例は、当業者に公知であり、限定的ではなく、選択的セロトニン再摂取阻害剤(SSRI)、抗精神病剤、抗うつ剤、リチウムおよび他の精神安定剤を含む。
【0055】
他の実施形態において、本願化合物は、それを必要とする被験者に、従来の処置法を継続する一方で、本発明の抽出され単離された化合物を用いた処置を中止するという選択肢も含めて、従来の薬物と一緒に不連続な期間、精神病、憂鬱病または不安症のような症状に対処するために投与される。さらに別の実施形態において、それを必要とする人を、処置期間の間、本明細書に記載の化合物と1以上の従来の薬物との両方の化合物で処置してもよい(連続的にまたは組合せて投与される)。そのような併用療法は特に、例えば、付加的または相乗効果的な処置効果が所望される場合に、有用であり得る。
【0056】
障害または疾患に関連する「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」の語は、障害または疾患の原因及び/又は結果を緩和または除去することを指す。本明細書において使用される用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」および「処置(treatment)」は、疾病の進行、程度及び/又は持続時間の低減または改善、または前記疾病の1以上の症状(例えば1以上の識別可能な疾病)の改善(すなわち、疾病を「処置」せずに「制御する」こと)を指し、これらは、1以上の処置(例えば、本発明の化合物または組成物のような1以上の治療薬)の投与から得られる。特定の実施形態において、用語「処置」、「処置」および「処置法」は、本明細書に記載される疾病の少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善を指す。他の実施形態において、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」および「処置(treatment)」は、本明細書に記載される疾病の進行の阻害、物理的、例えば識別可能な疾病の安定化、または生理学的、例えば身体的なパラメータの安定化、のいずれか、または両方を指す。
【0057】
所望の処置活性または効果は、典型的には処置され疾病に依存する。例えば、患者が統合失調症の処置を受けている場合、処置効果は、限定的ではないが、不安症、自殺思考、認識機能障害、食欲不振、気分、及び/又は無気力を含む、統合失調症の少なくとも1つの臨床疾病の低減である。患者がASDのための処置を受けている場合、処置効果は、限定的ではないが、阻害された社会的機能、常同症、反復行動およびコミュニケーション障害の低減を含む、ASDの少なくとも1つの臨床疾病の低減である。
【0058】
本明細書で使用される用語「防止」および「予防」は、疾患または障害の1以上の症状の出現を回避または妨害するために、医薬を前もって投与する工程を指す。医学の技術における当業者であれば、用語「防止」は、絶対的な用語でないことを認識する。
医学の技術において、疾病または疾病の症状の可能性または重大性を実質的に縮小するための薬の予防的な投与を指すことが理解され、これが、本明細書の開示で意図する意味である。この分野での標準テキストである医師用添付文書集において使用されたように、障害または疾患に関連する用語は「防止する」、「防止すること」および「防止」は、疾患または障害それ自体が完全に現われる前に、疾患または障害の原因、影響、症状または進行を回避することを指す。
【0059】
本発明の化合物は、治療上有効な量においてそれを必要とする人に投与される。いくつかの実施形態において、治療上有効な量は、治療学上有効な量または予防的に有効な量である。本明細書に使用される用語「治療学上有効な量」は、研究者、獣医、医学博士、または他の臨床医によって要求されている、組織、システム、動物または人間における生物学的または医薬的な反応を誘発する活性化合物の量を意味する。投与される化合物の治療学上有効な量は、そのような考察によって決定され、疾患または障害または1つ以上のその症状を改善、修復、処置するのに必要な最低量である。用語「予防的に有効な量」は、疾患または障害を獲得する見込みを防止または実質的に減少させるか、あるいは疾患または障害を獲得する前に、その重症度を低減させるか、あるいは1以上の症状が発展する前に、その症状が重症化を低減するのに有効な量を指す。概略的に、予防手段は、原発性の予防(疾患または症状の発現を防止)と、続発予防(疾患または症状が既に進行している場合において、患者が病状の悪化から保護すること)とに分割される。
【0060】
本明細書で使用されるように、用語「有効な量」は、所望の投与量のレジメンに従って投与された場合に、所望の処置活性を提供する化合物の量に関連する。投与は、分、時間、日、週、月、もしくは年、または、これらの期間のうちのいずれか1つの期間にわたり連続的にの間隔で行ってもよい。適切な投与量は、投与量1回当たり、体重1kgにつき約0.1 ngから体重1kgにつき100gまでの範囲内に定められる。投与量は、投与量1回当たり体重1kgにつき1μgから10gまでの範囲、たとえば投与量1回当たり、体重1kgにつき1mgから1000mgの範囲であり得る。1つの実施形態において、投与量は、投与量1回当たり体重1kgにつき1mgから500mgまでの範囲であり得る。他の実施形態において、投与量は、投与量1回当たり体重1kgにつき1mgから250mgまでの範囲であり得る。さらに他の実施形態において、投与量は、投与量1回当たり体重1kgにつき1mgから200mgまでの範囲、たとえば投与量1回当たり個体あたり50mgまでであり得る。
【0061】
本発明の化合物、組成物または製剤との関連において、用語「投与する」、「投与すること」または「投与」は、処置を必要とする動物のシステム内へ化合物を導入することを意味する。本発明の化合物が、1以上の他の活性薬剤と併用して提供される場合、「投与」およびその変形はそれぞれ、化合物と他の活性薬剤との同時的及び/又は連続的な導入を含むものと理解される。
【0062】
ある実施形態において、70kgの成人に1日当たり1回以上投与する際の化合部の有効な量は、単位投与剤形あたりの化合物の約0.0001mg~約4000mg、約0.0001mg~約3000mg、約0.0001mg~約200mg、約0.001mg~約1500mg、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約1000mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mgまたは約100mg~約1000mgを含む。
【0063】
ある実施形態において、本発明の抽出物及び/又は化合物は、所望の処置効果を得るため、1日1回以上、1日につき患者の体重あたり、約0.001mg/kgから約100mg/kgまで、約0.01mg/kgから約50mg/kgまで、約0.1mg/kgから約40mg/kgまで、約0.5mg/kgから約30mg/kgまで、約0.01mg/kgから約10mg/kgまで、約10mg/kgに対して約0.1mg/kgから、および約1mg/kgから約25mg/kgまでを送達するのに十分な投与量レベルであり得る。
【0064】
適切な投与量および投与レジメンは、主治医によって決定することができ、処置されている特定疾病、疾病の程度、および患者の一般老化、健康および体重に依存し得る。本明細書で記載されるような用量範囲は、成人に対し提供される医薬品組成物の投与のためにガイダンスを提供することが認識されるだろう。例えば小児やティーンエイジャーに投与される量は、開業医または当業者によって決定することができ、成人に投与される量よりも少ないかまたは同量とすることができる。
【0065】
本発明の化合物は一回投与または一連の投与で投与され得る。化合物は単独で投与されることが可能であるが、いくつかの実施形態において、組成物、好ましくは医薬品組成物としてそれを提供することが望ましいであろう。そのような組成物の製剤は、当業者に公知である。そのような組成物は、任意の適切なキャリヤー、賦形剤または添加剤を含んでもよい。これらはすべての従来の溶媒、分散メディア、賦形剤、固体のキャリヤー、コーティング、抗真菌剤および抗菌物質、皮膚透過剤、界面活性剤、等張剤および吸着剤などを含む。本発明の組成物は同様に、他の補助生理活性剤を含んでもよいことが理解されるだろう。
【0066】
本発明の化合物および関連する医薬品組成物は、1以上の添加処置薬との併用療法において使用されてもよい。1つ以上の活性薬剤との併用療法のため、活性薬剤が別々の投与剤形である場合、活性薬剤は、別々にまたは合体させて投与されてもよい。さらに、1つの要素の投与は、別の薬剤の投与の前、同時、または後であってもよい。
【0067】
他の薬剤と共同投与される場合、例えば、他の抗精神病剤、抗痙攣性または抗うつ性の薬物が共同投与される場合、第2の薬剤の「有効な量」は、使用される薬のタイプに依存する。適切な投与量は認可された薬剤に対し公知であり、当業者が、患者の疾病、処置される疾病のタイプ、および使用される化合物、抽出物または組成物の量に応じて調節することが可能である。量が明示されない場合、有効な量は想定されるべきである。例えば、本明細書で記載される化合物は、1日当たり体重1kgにつき約0.01から約10,000mg/kg、 1日当たり体重1kgにつき約0.01から約5,000mg/kg、 1日当たり体重1kgにつき約0.01から約3,000mg/kg、 1日当たり体重1kgにつき約0.01から約1,000mg/kg、 1日当たり体重1kgにつき約0.01から約500mg/kg、 1日当たり体重1kgにつき約0.01から約300mg/kg、 1日当たり体重1kgにつき約0.01から約100mg/kg、の用量範囲で、患者に投与することができる。
【0068】
本明細書で使用される語句「併用療法」は、10-HDAの第1の量、本明細書に記載したような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩、および追加の適切な処置薬の第2の量を使用する、有効な量の投与を指すものと理解される。
【0069】
ある実施形態において、10-HDA、本明細書に記載したような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩、および追加の処置薬は、それぞれ有効な量(すなわち、単独で投与される場合、それぞれ治療学上有効な量で)で投与される。
【0070】
他の実施形態において、10-HDA、本明細書に記載したような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩、および追加の処置薬は、それぞれ単独では処置効果を提供しないような量(処置量未満)で投与される。さらに他の実施形態において、追加の処置薬は処置量未満で投与されるが、10-HDA、本明細書に記載したような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩は、有効な量で投与することができる。さらに他の実施形態において、追加の処置薬は有効な量で投与されるが、10-HDA、本明細書に記載したような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩は、処置量未満で投与することができる。
【0071】
本明細書で使用されたような用語「併用」または「共同投与」は、2つ以上の処置法(例えば1以上の予防薬及び/又は処置薬)の使用を指すものとして、相互交換可能に使用することができる。用語の使用は、薬剤(例えば予防薬及び/又は処置薬)を、それらを必要とする人に投与する処置において、順序を限定しない。
【0072】
共同投与は、例えば第1の量と第2の量との固定比率を有するカプセルもしくはタブレットなどの単一の医薬組成物のような、または各々に対し別々のカプセルやタブレットの複合のような、本質的に同時的な態様で、処置化合物の第1および第2の量を投与することを包含する。さらに、そのような共同投与は、いずれかの順序で連続的な態様で各化合物を使用することも包含する。共同投与が、10-HDA、本明細書に記載されるような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩の第1の量と、追加処置薬の第2の量との別々の投与を含む場合、それらは、所望の処置効果を有するように、十分に接近した時間内に投与される。例えば、所望の処置効果をもたらすことができる各投与間の時間間隔は、分から時間まで及ぶことができ、力価、溶解度、生体有用性、血漿半減期および力学上のプロフィールのような各化合物の特性を考慮して決定することができる。例えば、10-HDA、本明細書に記載したような10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩、および第2の処置薬は、それぞれを約24時間以内に、それぞれを約16時間以内に、それぞれを約8時間以内に、それぞれを約4時間以内に、それぞれを約1時間以内に、または それぞれを約30分以内に、任意の順序で投与することができる。
【0073】
本発明における10-HDA、10-HDAを含む組成物、またはその薬学的に許容可能な塩は、腸(例えば経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、鞘内、皮下、脳室内、経皮的、相互皮膚、直腸、膣内、腹腔内、局所的(粉体、軟膏、クリーム及び/又は液滴によるものとして)、粘膜、鼻型、頬、舌下;及び/又は口内噴霧、鼻内噴霧、及び/又はエアロゾルとして、気管内の点滴注入、気管支の点滴注入、及び/又は吸入によるもの;を含む任意の経路で投与され得る。特に、意図する経路は、経口投与、静脈内投与(例えば全身性の静脈注射)、血液及び/又はリンパ供給を通じた局所的投与、及び/又は障害を受けた部位へ直接投与である、一般に、最も適切な投与経路は、薬剤の性質(例えば胃腸管の環境内での安定性)、及び/又は患者の疾病(例えば、患者が経口投与を我慢することができるか)を含む様々な要因に依存する。特定実施形態において、10-HDA、または本発明の10-HDAを含む組成物は、経口で投与される。
【0074】
有効な量を達成するのに必要な正確な量の化合物は、例えば、人種、年齢、患者の一般疾病、副作用または障害の重症度、特定化合物の同一性、投与の方式などに依存して、患者の間で変化するであろう。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日ごと、1週ごと、2週ごと、3週ごと、または4週ごとの送達であり得る。ある実施形態において、所望の投与量は、複数の投与(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上投与)を使用して送達することができる。
【0075】
担体が使用される場合、担体は、組成物の他の成分と適合するという意味において薬学的に「許容可能」でなければならず、かつ、患者に対し有害であってはならない。組成物は、経口、直腸、鼻、局所的(頬と舌下を含む)、膣、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、真皮内)の投与に対し適切なものを含む。組成物は、単位用量の剤形で便利なように提示されてもよく、薬学の技術分野において公知の任意の方法によって調製されてもよい。そのような方法は、有効成分を1以上の副成分を構成する担体に関連づける工程を含む。一般に、組成物は、有効成分を、液体担体、または微細に分割された固体担体、またはこれら両方と、生成物の賦形が必要な場合に、一様かつ密接に関連づけることにより調製される。
【0076】
薬学的に許容可能な添加剤は、所望される特定剤形に適するように、溶媒、賦形剤、または他の液体ビヒクル、分散剤、懸濁補助剤、界面活性剤、等張薬剤、濃縮または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などの任意またはすべてを含む。医薬組成物薬剤の調合及び/又は製造における一般的な考察は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)、および Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition(Lippincott Williams & Wilkins,2005)に見出すことができる。
【0077】
本明細書に記載される医薬品組成物は、薬理学の技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調剤方法は、本発明の化合物(「有効成分」)を1以上の担体及び/又は他の副成分と関連付け、そして必要か及び/又は所望される場合は、 生成物を所望の単一投与単位または多重投与単位に成形及び/又はパッケージする工程を含む。
【0078】
医薬品組成物は、単一ユニット用量として、及び/又は複数の単一ユニット用量として、調剤し、パッケージし、及び/又は大量販売することが可能である。本明細書で使用されるように、「単位用量」は、有効成分の所定量を含む医薬品組成物の個別の量である。有効成分の量は一般に、患者に対する投与量及び/又は、例えば、そのような投与量の2分の1または3分の1などのような、投与量の便利な画分であり得る、有効成分の投与量と等しい。
【0079】
有効成分の相対量、薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は本発明の医薬品組成物中の任意の添加成分は、同一性、サイズ、及び/又は処置される患者の疾病に依存し、さらに投与される組成物の経路に依存して変化する。実施例によれば、組成物は、0.1%と100%(w/w)との間で有効成分を含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDAが経口投与向けである場合、有効成分の所定量を各々含んでいるカプセル剤、小包装またはタブレットのような個別のユニットとして;粉体または粒状物として;水性か非水性の液体中の溶液または懸濁液として;または水中油型の液体エマルジョンまたは油中水型の液体エマルジョンとして調製されてもよい。10-HDAは、もボーラス、舐剤またはペーストとして提示されてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、10-HDAがタブレットとして処方される場合、タブレットは圧縮または鋳造によって、随意的に1以上の副成分とともに、製作されてもよい。圧縮錠剤は、粉体または粒状物のような自由流動形態の有効成分を、バインダー(例えば不活性の希釈剤、保存力のある崩壊剤(例えばナトリウム・デンプン・グリコラート、架橋されたポリビニルピロリドン、架橋されたカルボキシルメチルセルロースナトリウム))、表面活性剤または分散剤と随意に混合されて、適切な機械において圧縮することにより、調製され得る。成型されるタブレットは、適切な機械において、不活性液希釈剤で湿らせた粉体化合物の混合物を、成型することにより製作され得る。タブレットは随意に被覆されたり切れ目をつけられたりしてもよく、さらに、例えば所望の放出特性を提供するため比率を変化させた(ヒドロキシプロピルメチル)セルロースを使用して、有効成分の放出を遅くするまたは制御するように調剤されてもよい。タブレットは、胃以外に腸の部分出の放出を提供するため、腸溶性被覆を有するものが随意的に提供され得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDA、または10-HDAを含む組成物は、1以上の添加剤を有するマイクロカプセルの形態でもよい。タブレット、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および果粒剤の固体の剤形は、腸溶性外皮、放出制御性被覆、および薬剤製造の技術において公知の他の被覆のような、コーティングおよび外殻を有するように調製され得る。そのような固体の剤形において有効成分は、スクロース、ラクトースまたはデンプンのような、少なくとも1つの不活性の希釈剤と混合することができる。そのような剤形は、通常の手法として、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースのような、タブレット潤滑剤および他のタブレット補助剤などの、不活性賦形剤以外の添加物質を含み得る。カプセル剤、タブレットおよび丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含見得る。それらは随意に、乳白剤を含むことができ、優先的に胃管のある部分で、随意に遅延方式で、有効成分のみを放出する組成物であり得る。使用可能な組成物が埋め込まれた実施例は、高分子物質とワックスを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDAが経口および非経口投与の投与ための液体剤形として投与される場合、そのような剤形は、薬学的に許容可能な乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤を含み得る。有効成分に加えて、液体剤形は、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1、3ーブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば綿の実、落花生類、鶏眼、胚芽、オリーブ、キャスターおよび胡麻の油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物のような、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの、一般にこの技術分野において使用される不活性の希釈剤を含み得る。不活性の希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁剤、スイートニング、調味料および芳香剤のような、補助剤を含み得る。非経口投与のためのある実施形態において、本発明の10-HDAは、Cremophor(商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマーおよびこれらの混合物のような、可溶化剤と混合される。
【0084】
いくつかの実施形態において、10-HDA、または本発明の10-HDAを含む組成物が、口腔内に局所的に投与される場合、適切な剤形は、通常、スクロースおよびアラビアゴムまたは、トラガカントゴムである風味づけられた基剤中に有効成分を含むロゼンジ;ゼラチン、グリセリン、またはスクロースおよびアカシアゴムのような不活性の基剤中に有効成分を含む薬用ドロップ;および適切な液体担体中に有効成分を含む口内洗浄液を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDA、または10-HDAを含む組成物が皮膚に局所的に投与される場合、適切な剤形は、任意の適切な担体または基剤中に抽出物または構成化合物を溶解または懸濁したものを含三言ができ、ローション、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏剤およびこれらと同様の形態であり得る。適切な担体は、鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ろう、ソルビタンモノステアリン酸塩、ポリソルベート60、セチル・エステル・ワックス、セテアリルアルコール、2ーオクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含む。経皮的な貼付剤が、本発明の抽出物または構成化合物を投与するために使用されてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDA、または10-HDAを含む組成物は、直腸内適用向けであり、適切な剤形は、例えばココアバター、グリセリン、ゼラチンまたはポリエチレングリコールなどを含む、適切な基剤を有する坐薬を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDA、または10-HDAを含む組成物が、膣内投与向けである場合、適切な剤形は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、有効成分に加えて、この技術分野において公知の適切な担体を含む泡状または噴霧上の調剤を含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明の10-HDA、または10-HDAを含む組成物が、非経口投与向けである場合、適切な剤形は、酸化防止剤を含み得る水性・非水性の等張の無菌の注射液、バッファ、殺菌剤、および意図した受容体の血液と等張の組成物を示す溶質;および沈澱防止剤と粘稠化剤とを含み得る水性・非水性の無菌の懸濁液を含み得る。化合物は、例えばアンプルやバイアルなどの、容器に封入された単位用量または多重用量で提供されてもよく、および、使用直前に例えば注射剤用の水などの無菌の液体担体の添加だけを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で保存されてもよい。即席の注射液および懸濁液が、前に述べた種類の無菌の粉体、果粒剤およびタブレットから調製されてもよい。注射可能な調製は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、無毒な非経口的で許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射剤溶液、懸濁液またはエマルジョンであり得る。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒のうちには、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩水が含まれる。さらに無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として、従来から使用されている。この目的のため、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の種類の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が、注射可能な調剤において使用される。注射製剤は、例えば、バクテリアを保持するフィルタを通じた濾過によって、または、使用に先立って滅菌水または他の無菌注射剤媒体に溶解または分散させることが可能な滅菌剤を、無菌の固体の組成物の形で組込むことによって、殺菌可能である。
【0089】
ある実施形態において、単位用量の組成物は、1日用量またはユニット、本明細書で前述したような毎日の低用量、または有効成分の適切な画分を含むものとする。
【0090】
活性薬剤10-HDAに加えて、本発明の10-HDAを含む組成物は、当該組成物のタイプと関連する、この技術分野における従来の他の薬剤、例えば、経口投与に適しているものは、さらに結合剤、甘味料、増粘剤、調味薬剤、崩壊剤、コーティング剤、保存剤、滑沢剤及び/又は時間遅延剤のような薬剤を含み得ると理解されるべきである。適切な甘味料は、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンを含む。適切な崩壊剤は、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天を含む。
適切な調味薬剤は、薄荷油、サリチル酸メチル、桜、オレンジまたはラズベリー香味料を含む。適切なコーティング剤は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーまたはコポリマー及び/又はそれらのエステル、ワックス、脂肪族アルコール、ゼイン、セラック、またはグルテンを含む。適切な保存剤は、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、αトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、またはナトリウム両亜硫酸塩を含む。適切な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたは滑石を含む。適切な時間遅延剤は、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンを含む。
【0091】
本明細書で使用される語句「薬学的に許容可能な塩」は、提供される化合物の、薬学的に許容可能な有機または無機の塩を指す。医学で使用するため、提供される化合物の塩は、薬学的に許容可能な塩類であるものとする。しかしながら、他の塩類は、提供される化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩の調製において、有用であり得る。薬学的に許容可能な塩は、この技術分野においてよく知られている。例えば、Bergeらは、J.Pharm Sci.(1977)66:1-19において、薬学的に許容可能な塩について詳細に記述しており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。薬学的に許容可能な塩は、酢酸イオン、スクシナート・イオンまたは他の対イオンのような、他の分子を含む。対イオンは、親化合物上の電荷を安定させる任意の有機または無機の部分であり得る。さらに、薬学的に許容可能な塩は、その構造物中の1つを超える帯電原子を有し得る。複数の帯電原子が親薬物中に存在する場合、その薬学的に許容可能な塩は、複数の対イオンを有し、これらは、同じ対イオンまたは異なる対イオンのいくつかの例となり得る。従って、薬学的に許容可能な塩は、親化合物及び/又は1以上の対イオンにおいて、1以上の帯電原子を有し得る。
【0092】
本明細書に記載される化合物の薬学的に許容可能な塩は、適切な無機および有機の酸および塩基に由来するものを含む。いくつかの実施形態において、塩類は、化合物の最終単離および精製中に、その場所で調製することができる。他の実施形態において、塩類は、別々の合成工程において、化合物の自由形態から調製することができる。
【0093】
提供される化合物が酸性か、十分に酸性のバイオ同配体を含んでいる場合、適切な「薬学的に許容可能な塩」は、無機塩基と有機塩基を含む薬学的に許容可能な無毒な塩基から調製された塩類を指す。無機塩基に由来する塩類は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄酸、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン酸塩類、亜マンガン酸、カリウム、ナトリウム、亜鉛、およびその他同種のものを含む。特定の実施形態では、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩を含む。薬学的に許容可能な有機の無毒な塩基に由来する塩類は、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N、N’ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2つのジエチルアミノエタノール、2つのジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミントリプロピルアミン、およびその他同種のもののような、第1級、第2級および第3級アミンの塩類、自然発生的に置換されたアミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基イオン交換樹脂を含む。N+(C1-4アルキル)4のような第4級アンモニウム塩も含まれる。
【0094】
前述の薬学的に許容可能な塩、および他の典型的な薬学的に許容可能な塩の調製は、Berge et al. ”Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1-19において、より詳細に記述される。
【0095】
本明細書に記載した10-HDA、または10-HDAを含む組成物の調剤は、キットに含まれてもよい。キットは、2つ以上の薬剤の単一または複数回投与を含むことができ、それぞれ個々にパッケージされたまたは調剤されるか、また2種以上の薬剤の単一または複数回投与分が組み合わされてパッケージされまたは調剤される。したがって、1以上の薬剤は第1の包装容器に存在させることができ、キットは、随意に第2の包装容器に1以上の薬剤を含むことができる。1つまたは複数の包装容器はパッケージ内に配置され、パッケージは随意に投与または投与量の指示を含むことができる。キットは、希釈剤や調剤のための他の手段と同様に、薬剤を投与するための注射器または他の手段のような追加要素を含むことができる。したがって、キットは下記を含むことができる:
a)本明細書で記載された化合物、および薬学的に許容可能な担体、ビヒクルまたは希釈剤を含む医薬品組成物;および
b)包装容器またはパッケージ
キットは、本明細書で記載された1以上の方法(例えば、本明細書に記載した1以上の疾患および障害の防止または処置)において、医薬品組成物を使用する方法を記述する指示を随意み得る。キットは随意に、併用処置の使用のための本明細書に記載される1以上の追加薬剤、薬学的に許容可能な担体、ビヒクルまたは希釈剤を含む第2の医薬品組成物を含み得る。10-HDAとキットに含まれている第2の医薬品組成物とを含む医薬品組成物は、随意に同じ医薬品組成物内で組み合わされていてもよい。
【0096】
キットは医薬品組成物を含むための包装容器またはパッケージングを含むとともに、分割されたボトルまたは分割されたホイルパケットのような分割された包装容器を含んでもよい。例えば、包装容器は、紙またはボール紙の箱、ガラスまたはプラスチックのボトルまたはジャー、再封可能な袋(例えば、異なる包装容器の中への配置するための「詰め替え」用タブレットを保持するための)、または、処置スケジュールに従ってパックから押し出すための個別投与量人を有するブリスターパックであり得る。単一の剤形で販売するために、1つを超える包装容器が、単一のパッケージ内で、ともに使用可能にすることが実現可能である。例えば、タブレットはボトルに収容され、ついで箱内に収容され得る。
【0097】
キットの例はいわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは、包装産業でよく知られており、製薬の単位用量形態(タブレット、カプセル剤など)のパッケージングで広く使用されている。ブリスターパックは一般に、好ましくは透明プラスチック物質のフォイルで被覆された1枚の比較的堅い材料から成る。包装工程中、凹部がプラスチックのフォイル内に形成される。凹部は、パックされる個々のタブレットまたはカプセル剤のサイズおよび形状を有し、パックされる複数のタブレット及び/又はカプセル剤を収容するためのサイズおよび形状を有してもよい。次に、タブレットまたはカプセル剤は、凹部に応じて配置され、比較的堅い材料のシートは、凹部が形成された方向とは反対側のフォイル表面で、プラスチック・フォイルに対して密閉される。結果として、タブレットまたはカプセル剤は、プラスチック・フォイルとシートの間の凹部に、所望のとおりに、個別に密閉されるか集合的に密閉される。好ましくは、シートの強度は、開口部が凹部の位置でシートに形成されているために、凹部に人が圧力をかけることによって、タブレットまたはカプセル剤をブリスターパックから除去し得るような程度である。その後、タブレットまたはカプセルは前記開口部から取り出すことができる。
【0098】
薬物を服用する際の医師、薬剤師または患者の注意のための情報及び/又は指示を含む記述された記憶補助を提供することが望まれ得る。「日用量」は単一のタブレットもしくはカプセル、または、所定の日に服用される複数のタブレットもしくはカプセルであり得る。キットが分離構成を含む場合、キットの1以上の組成物の日用量は、1つのタブレットまたはカプセルから構成し得る一方で、キットの他の1以上の組成物の日用量は、いくつかのタブレットまたはカプセル剤から構成し得る。キットは、それらの意図された使用順序で一度に日用量を投薬するように設計されたディスペンサの形態をとることができる。ディスペンサは、レジメンへのコンプライアンスをさらに容易にできるように、補助記憶装置を装備することができる。そのような記憶補助の一例は、投薬された日用量の数を示す機械的計数器である。そのような記憶補助の他の例は、例えば、最後の日用量が服用された日付を読出す及び/又は次の用量が服用されることになっている日付を思い出させる液晶表示器または可聴の注意信号と結び付けられた電池式のマイクロのチップ記憶装置である。
【0099】
10-HDAのプロドラッグである任意の化合物も、同様に本発明の精神の範囲内であることが認識されるだろう。用語「プロドラッグ」はその最も広い意味において使用され、生体内で本発明の化合物に変換される派生物を包含する。そのような派生物は、容易に当業者が想到し得る。
【0100】
更に、10-HDAは遊離した化合物としてまたは溶媒和物(例えば水化物)としていずれかの結晶形態であり得ることが認識され、両方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、本技術分野において一般に知られている。
【0101】
その構成に照らし、さらに、本発明に従う10-HDAは、互変異性を受け入れ得ることが認識される。従って、本発明の10-HDAのあらゆる互変異性体は、本発明の範囲内および精神内のものである。
【0102】
本明細書で使用されるように、用語「由来」は、特定の完全体または完全体の群がは指定された種から生起するが、必ずしも指定された起源から直接的に獲得されなくてもよいことを示すものとして理解されるべきである。例えば、10-HDAはローヤルゼリーを起源とするが、 必ずしも指定された起源から直接的に獲得されるものではないと理解される。さらに、本明細書で使用する、「a」「and」「the」は、もし文脈で明白に他の意味を規定しない限り、複数のものも含む。
【0103】
当業者であれば、本明細書に記載した本発明は、詳細説明に記述した以外の変化および修飾を対象とすることは理解される。本明細書に記載した本発明が、そのような変化および修飾をすべて含むことは理解されるであろう。本発明は同様に、この明細書で個別的または総体的に言及されまたは表示された、そのような工程、特徴、方法、組成物および化合物のすべて、および前記工程または特徴のうちの任意の2つ以上の任意または全ての組合せを含む。
【0104】
この明細書および後述の特許請求の範囲の全体にわたり、文脈上、他の意味が要求されない限り、「含む(comprise)」という語、およびその変形である「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、述べられた完全体または工程、または完全体または工程の群を包含し、 任意の他の完全体または工程、または完全体または工程の群を除外しないことを意味するものとして理解されるであろう。
【0105】
本発明の特定の実施形態が、下記の実施例を参照して、ここで記載される。それらは、例証のみを目的とするものであり、これまでに記載した一般原理の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0106】
実施例1
ヒトニューロンの細胞上でのアロマターゼ発現に対するBPAおよび10-HDAの効果
ヒト神経芽細胞腫SHY-SY-5Y細胞が、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、1%ペニシリンおよび1%L-グルタミンを添加した、ダルベッコの修正イーグル培地において、37℃で、95%空気および5%CO2の湿潤雰囲気で培養された。これらの細胞のアロマターゼの局在化は、アロマターゼに特異的な抗体を有する免疫組織化学を使用して検出することができる。通常条件下では、アロマターゼは、小胞体中の膜結合タンパク質であるので、細胞全体に斑点状の染色として現われる。ビスフェノールA(BPA)の25μg/L存在下において、アロマターゼは凝集体を形成し、その機能を失う。10-HDAの添加は、アロマターゼへのビスフェノールAの変性効果に対し保護することができる。これらの結果は、細胞内のアロマターゼの悪影響、およびアロマターゼに対する10-HDAの保護効果を実証した。
【0107】
実施例2:生体内のマウス・モデル
アロマターゼは、マウス内側扁桃体中で高レベルに発現し、同じ領域が、未知のマウスとの相互作用によって活性化される。人においても、アロマターゼが扁桃体において高度に発現され、fMRI研究は、扁桃体が、対照と比べて、ASDを有する人においてあまり活性化されないことを示唆する。アロマターゼ・ノックアウトマウス(ArKO)モデルは、例えばASD類似の行動障害を含む、ASDのキーとなる診断的行動および症状の一部を反映する行動表現型を示し得ると仮定された。
【0108】
従って、発声障害、強制的なグルーミング、および社会的相互関係障害を含む自閉的類似の中核的特徴を示す、アロマターゼ欠損マウスモデル(ArKO)を発展させた(図2AーE参照)。アロマターゼを失活させた場合、テストステロンがArKOマウスの血清に蓄積し、エストロゲン受容体アゴニストによって低下させることができなくなる。
【0109】
特に発明者は、通常の機能するアロマターゼの欠乏は、雌のArKOマウスではなく、雄のArKO(アロマターゼ・ノックアウト)マウスにおいて、下記のASD類似の行動障害を促進することを発見した:
i)異常な社会的相互関係(図2A):
若い雄(生後4週)のArKOマウスは、未知のマウスを調べるのに費やす時間が、野生型の雄マウス(WT)と比べて、著しくより少ないことが分かった。反対に、雌ArKOおよびWTマウスは、未知のマウスに対し、同様の時間量を費やすことが分かった。
ii)超音波発声障害(図2B):
生後9日の雄の子供のArKOマウスは、同腹子から分離された時に、雄のWT同腹子と比べて、発声が著しく少ない。
iii)反復行動:
水のミストを吹付けた後20分間測定したように、雄のArKOマウスは、WTおよび雌のArKOマウスと比較した場合に、より頻繁(図2C)かつより長い時間(図2D)、グルーミングすることが分かった。雄のArKOマウスは、WTおよび雌のArKOマウスと比較した場合に、走行ホイール上で著しくより多くの時間を費やすこと分かった(図2E)。
【0110】
発明者は、ビスフェノールA(BPA)(ポリカーボネート・プラスチックおよびエポキシ樹脂の調製において使用される)が、インビトロでアロマターゼの変性させることが可能であることを実証した(図1)。そこで、自閉症様の行動の続発におけるビスフェノールA(BPA)への環境暴露の役割を調べるために、詳細な検討が行なわれた。BPAへの曝露の影響を検討する詳細研究において、ASD類似の中核的特徴を提示する、ArKOマウスが、比較として使用された。
【0111】
BPA(50μg/kg)が、妊娠中期(すなわち胚日数10.5-14.5日)の妊娠しているマウスに投与された。結果として得られるWTの雄の子孫は、雄のArKOマウスの行動に類似する、ASD類似の行動を示すことが分かった(図2F)。特に、雄の子孫は、対照の雄の子孫(暴露されたビヒクル)またはBPAを暴露した雌の子孫のいずれかと比較して、未知のマウスに対し費やす時間が著しく少ない。付け加えると、BPAに暴露された雄の子孫は、内側の扁桃体中において神経細胞の13.5%が減少したことが分かった。これは、ポストモーテム立体解析学によって検出されたように、青年期および成人の自閉的の脳の扁桃体において観察された、ニューロン数の15%までの減少に一致する。詳細研究が、子宮内におけるアロマターゼ-GFP陽性の神経細胞の個数に対する、BPA曝露の影響を検討するために行なわれた(図3)。内側の扁桃体は、社会的相互関係と、高度に発現したアロマターゼと関連する。標準ステレオロジー方法によって計数されたように、BPAへの曝露後、アロマターゼ-GFPの陽性の神経細胞の数が著しく減少したことが分かった。
【0112】
実施例4:10-HDAで処置したインビボ・マウス・モデル
実施例2で記載されるように、自閉的類似の行動を有するマウスは、雌の野生型FVBNマウスと雄のCYP19-GFPマウスとを交尾させ、続けて、妊娠期間10.5ー14.5日に50μg/kg/日のBPAを皮下注射することによって、産出させた。
【0113】
離乳後、対照およびBPAを暴露した子供に、6週間の最大期間、腹膜腔内注射によって、毎日10-HDAが投与された(0および500μg/kg/日;生理食塩水に溶解)。6匹の同腹子が、3週間、毎日の不安症、記憶、社会的相互関係(図4A)および無意識的グルーミングの処置後、最初に研究された。
【0114】
データ収集は、すべての所定の動物それぞれについての遺伝子型または処置法について知らされていない調査者によって行なわれた。2つの基準が行動研究の基礎として評価された;社会的相互関係、および無意識的なグルーミング活動。
【0115】
社会的相互作用研究に関して、試験マウスは、社会性試験ボックス、すなわち隔壁に各部屋へのアクセスを可能にする戸口を有する、3室の透明なプラスチックボックスに配置された。各側室は、金網かごを含む。試験マウスは、3回のセッションにわたり評価された。セッション1において、試験マウスは中央の部屋に配置され、10分間、3つの部屋をすべて探索することを可能にされた。セッション2において、不知の同性の高齢のマウス(未知個体1)が、中央の部屋の一方側の金網かご内に閉じ込められ、試験マウスが、10分間、社会性試験ボックス全体を探索することを可能にされた。セッション3において、新しい不知のマウスが、前回空であった金網かごに配置され、試験マウスは、第1の、現在は既知である、既に調べたマウス(未知個体1)と、新しい不知のマウス(未知個体2)との間で選択肢を持つようになされた。マウスの動作は、TopScanビデオ追跡システムを使用して、記録され追跡された。各部屋の滞在時間、各金網かごの匂いを嗅ぐのに費やされた時間、および部屋間の移動の回数が分析された。
【0116】
無意識的グルーミング活動は、反復活動の測定値として使用された。マウスの無意識的グルーミングは、前述した3部屋研究のセッション1中に、TopScanビデオ追跡システムによって記録された。グルーミングの継続時間および頻度が、測定値のパラメータであり、肉眼によらずに分析された。
【0117】
行動試験の後、全ての処置を3か月間中止し、前記動物の行動が、再試験された(図4B)。それにより、10HDA処置の中止は、BPA暴露した雄動物において、社会的相互関係障害の出現をもたらすことが示された。雄動物は次いで、3週間、ビヒクルまたは前記の10-HDAのいずれかが再投与され、再度、行動研究に供された(図4C)。BPA50μg/kg/日が暴露された雄の子孫において観察された過度のグルーミングは、10-HDA処置によって改善された(図4D)。この結果は、BPAが暴露された動物において、10-HDAが、社会的相互関係障害および自閉症様の行動を改善し得たことを実証した。
【0118】
行動研究後、動物は処置され、扁桃体中のアロマターゼ細胞のパッチクランプによる脳切片から、電気生理学的データが収集された。それによれば、BPA曝露は神経細胞の抵抗性を減少させ、10-HDA処置が通常まで抵抗性を回復させることが実証された(図4E)。10-HDA処置は、体性感覚皮質において、神経細胞の樹状突起の長さも正規長まで回復させた(図4F)。
【0119】
実施例5:雄マウスの初期の胎児の最初の皮質細胞培養における、インビトロでのBPAおよび10-HDAの影響の分析
最初の皮質培養が、胚日数15.5日雄のマウス胎児から調製された。特に、樹状突起の長さおよび針密度に対するBPAおよび10-HDAの影響が評価された。BPAで処置されたマウス、10-HDAで処置されたマウス、BPAと10-HDAで処置されたマウス、およびビヒクル対照、の4つの試験グループが評価された。結果は、BPAは、針密度を神経細胞の樹状突起の長さと同様に減少させたことを示した。結果を図5-9に示す。結果は、10-HDAが神経突起および針形成を刺激する能力を有することを実証した。自閉症に関連するほとんどの遺伝子が、神経突起伸長の調整に関係していることを考えると、これは重大である。(“A noise-reduction GWAS analysis implicates altered regulation of neurite outgrowth and guidance in autism”,Hussman JP,et al,Mol Autism.2011 Jan 19;2(1):1.)
【0120】
実施例6:トランス10-HDAおよびシス10-HDA活性の比較
トランスおよびシス10-HDAそれぞれの活性を比較するため、シスまたはトランス10-HDAそれぞれの1mMが、BPA500ng/mlの存在下(毒性量)で、分化したマウスの運動ニューロンNSC-34細胞に加えられた。細胞生存は、72時間後にMTTアッセイによって決定された。結果は、シス10-HDAが、BPの毒性に対して防御しないことを示し、トランス10-HDAが神経保護的効果を有することを示した。
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図10