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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電磁飛翔体加速装置
(51)【国際特許分類】
   F41B 6/00 20060101AFI20220106BHJP
   H05H 1/54 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F41B6/00
H05H1/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017217964
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019090551
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.研究発表会 平成29年8月26日 Micro/Nano Technology Center International Symposium 2017/東海大学「Organization committee of MNTC International Symposium 2017」東海大学大学院 湘南キャンパス 19号館 19-311教室 2.要約書配布 平成29年8月26日「”AMATERAS” The New Type Rail-Gun System」 福岡 英将 東海大学大学院 湘南キャンパス 19号館 3.ポスターセッション 平成29年8月27日 Micro/Nano Technology Center International Symposium 2017/東海大学「Organization committee of MNTC International Symposium 2017」東海大学大学院 湘南キャンパス 17号館 ネクサスホール
(73)【特許権者】
【識別番号】517396076
【氏名又は名称】福岡 英将
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】福岡 英将
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-508731(JP,A)
【文献】特開2006-329575(JP,A)
【文献】米国特許第05844161(US,A)
【文献】特開平4-93599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 6/00
H05H 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対をなす導電レールと、該一対をなす導電レール間を導電接続し、プラズマアーマチャを生成する導電部とを有し、前記一対をなす導電レール間に流れる電流により前記導電部に発生するローレンツ力によって、前記一対をなす導電レールに配置された飛翔体を加速させる電磁飛翔体加速装置であって、
前記一対をなす導電レール間の幅方向の距離は、前記飛翔体の加速方向に向けて狭められている
ことを特徴とする電磁飛翔体加速装置。
【請求項2】
前記飛翔体は、前記加速方向に向けてテーパ形状をなし、
前記飛翔体の外周面の傾きは、前記導電レールの内周面の傾きに比して大きいことを特徴とする請求項1に記載の電磁飛翔体加速装置。
【請求項3】
前記一対をなす導電レールは、前記飛翔体の発射位置から平行配置され、前記飛翔体の後方にプラズマアーマチャが生成される領域以降、前記一対をなす導電レール間の幅方向の距離を前記加速方向に向けて狭められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁飛翔体加速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体を加速する場合におけるプラズマアークの漏れに起因するエネルギーロスを低減することができる電磁飛翔体加速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛翔体を加速させる装置として、レールガンなどの電磁飛翔体加速装置が知られている。この電磁飛翔体加速装置は、原理的に飛翔体の速度を制限する要素がないため、飛翔体を超高速度にまで加速することが可能である。レールガンは、一対をなす金属レールの間に飛翔体を配置するとともに、該飛翔体の後部に導電部が形成される。かかる一対をなす金属レールに電流が流れると、電流方向が異なる一対をなす金属レールを流れる電流によって一対をなす金属レール間に磁場が形成され、この磁場中に配置された導電部に電流が流れることによって導電部にローレンツ力が発生し、飛翔体が加速される。
【0003】
導電部の種類には、金属片などをプラズマ化したプラズマアーマチャと金属を固体状態のまま用いるソリッドアーマチャとがある。プラズマアーマチャは、電流の通電によって固体状態の金属片がプラズマ化された流体となるため、プラズマ化されないソリッドアーマチャに比して、飛翔体の加速時に、一対をなす金属レールと飛翔体との接触不良が生じ難くなるという利点がある。
【0004】
なお、特許文献1の第7図には、平行配置された2本のレール状電極間に飛翔体を配置し、飛翔体の背後に配置された金属板あるいは金属箔に大電流を流してプラズマを生成し、このプラズマによるローレンツ力によって飛翔体を加速するレールガンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2571863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の電磁飛翔体加速装置の一対をなす導電レールは、飛翔体の加速方向に向かって平行に配置され、一対をなす導電レール間の幅方向の距離は一定であった。そして、プラズマアーマチャを用いる電磁飛翔体加速装置の飛翔体は、通電後、飛翔体の後部に形成された導電部のローレンツ力によって加速され、飛翔体の加速途中で導電部はプラズマ化したプラズマアーマチャとなる。飛翔体は、このプラズマアーマチャへの導電によるローレンツ力で加速を続ける。
【0007】
しかしながら、一対をなす導電レールに流れる電流方向は互いに異なる方向であるため、各導電レールには一対をなす導電レール間の幅方向の距離を広げる反発力が作用する。したがって、飛翔体と一対をなす導電レールとの間に間隙が生じ易くなる。この状態で、飛翔体の後方にプラズマアーマチャが生成されると、金属粉が、固体状態時より単位体積あたりの質量が軽いプラズマアーマチャに強いローレンツ力が発生する。これにより、飛翔体後方から発生したプラズマアーマチャが、導電レールとの間隙より飛翔体を追い越すことで、飛翔体と一対をなす導電レールとの間隙を介して飛翔体の前方に漏れプラズマアークが発生する。また銃尾を閉じた場合は、この現象の他にプラズマ発生による高い圧力が発生し、飛翔体の後方に発生した高圧のプラズマアーマチャから、飛翔体と一対をなす導電レールとの間隙を介して飛翔体の前方に漏れプラズマアークが発生する。この漏れプラズマアークの発生は、プラズマアーマチャの量を減少させ、プラズマアーマチャのローレンツ力を小さくし、飛翔体の加速を小さくしてしまう。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点(課題)を解決するためになされたものであって、飛翔体を加速する場合におけるプラズマアークの漏れに起因するエネルギーロスを低減することができる電磁飛翔体加速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、一対をなす導電レールと、該一対をなす導電レール間を導電接続し、プラズマアーマチャを生成する導電部とを有し、前記一対をなす導電レール間に流れる電流により前記導電部に発生するローレンツ力によって、前記一対をなす導電レールに配置された飛翔体を加速させる電磁飛翔体加速装置であって、前記一対をなす導電レール間の幅方向の距離は、前記飛翔体の加速方向に向けて狭められていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記飛翔体は、前記加速方向に向けてテーパ形状をなし、前記飛翔体の外周面の傾きは、前記導電レールの内周面の傾きに比して大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記一対をなす導電レールは、前記飛翔体の発射位置から平行配置され、前記飛翔体の後方にプラズマアーマチャが生成される領域以降、前記一対をなす導電レール間の幅方向の距離を前記加速方向に向けて狭められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飛翔体を加速する場合におけるプラズマアークの漏れに起因するエネルギーロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施例に係る電磁飛翔体加速装置の概要を説明するための説明図である。
図2図2は、図1に示した飛翔体の変形例を示す図である。
図3図3は、図1に示した電磁飛翔体加速装置を用いた飛翔体の加速動作を説明する説明図である。
図4図4は、一対をなす導電レールを平行配置した従来の電磁飛翔体加速装置を用いた場合における漏れプラズマアークの発生を説明する説明図である。
図5図5は、本実施例の変形例1にかかる電磁飛翔体加速装置の構成の一部を示す図である。
図6図6は、本実施例の変形例2にかかる電磁飛翔体加速装置の構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る電磁飛翔体加速装置の好適な実施例を詳細に説明する。以下に示す実施例では、プラズマアーマチャを用いて飛翔体を加速するレールガンに本発明を適用した場合を示すこととする。
【実施例
【0015】
<電磁飛翔体加速装置の概要>
まず、本実施例に係る電磁飛翔体加速装置の概要について説明する。図1は、本実施例に係る電磁飛翔体加速装置の概要を説明するための説明図である。図1に示すように、この電磁飛翔体加速装置は、一対をなす導電レール1a及び1b(以下、「一対をなす導電レール1」と総称する)と、一対をなす導電レール1に電流を供給する電源部10と、飛翔体2とを有する。飛翔体2の後端部には、一対の導電レール1に対して電気的に接続される固体状態の導電部が設けられ、導電部は、飛翔体2の加速に伴ってプラズマ化した導電部であるプラズマアーマチャ30となる。
【0016】
一対をなす導電レール1は、図1に示した飛翔体2の加速方向Aに向けて、一対をなす導電レール1間が狭められて配置される。一対をなす導電レール1には加速方向Aに対して異なる方向に電流が流れる。例えば、導電レール1aには加速方向Aに向けて電流が流れ、導電レール1bには加速方向Aとは反対方向に電流が流れる。図1では、導電レール1aと導電レール1bとの間はプラズマアーマチャ30を介して電気的に接続される。導電レール1a、プラズマアーマチャ30及び導電レール1bに囲まれた領域には、右ネジの法則に従って、例えば、図1に示すように図面下側に向いた磁場Bが形成される。ここで、プラズマアーマチャ30には、導電レール1aから導電レール1b側に向けて電流が流れるので、プラズマアーマチャ30には加速方向Aに向いたローレンツ力Fが発生し、飛翔体2を加速方向Aに加速する。
【0017】
飛翔体2は、加速方向Aに向けて先細りしたテーパ形状をなし、外周面の傾斜は一対をなす導電レール1の内周面の傾きと同じにしている。なお、図示を省略したが、飛翔体2の先端形状は、例えば卵形などのラウンドノーズ形状等にしてもよい。また、この飛翔体2は、図2(a)~図2(c)に示すような形状とすることもできる。なお、ここでは飛翔体の形状の一例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、銃口から発射することができる飛翔体であれば、どのような形状であってもよい。
【0018】
飛翔体2の材料は、例えば絶縁体であり、耐衝撃性及び耐熱性に優れた材料(例えばポリカーボネート)を用いることができる。プラズマをアーマチャとして用いるレールガンでは、射撃ごとのレール損傷の激しさゆえに、一般的に軍用には向かないと言われている。しかしながら、プラズマより密度の高い個体をアーマチャとして用いる方式に比べて、飛翔体をより高速に加速することが可能なため、スペースデブリ研究等の科学実験分野で使用されている。このため、実験のために高速を得るよう、通常は軽量で耐衝撃性に優れたポリカーボネートが使用されるが、飛翔体の材料は、加速に耐えうるだけの耐衝撃性が得ることができれば、軍用のレールガンにみられるように金属等の他の材料を用いることもできる。ただし、飛翔体に導電性のある物質を使用する場合は、アーマチャの他に飛翔体にもローレンツ力が発生することになる。
【0019】
電源部10は、放電スイッチ11、コンデンサバンク12及びトランス13を有する。放電スイッチ11は、トリガパルスの入力で放電するパルススイッチである。コンデンサバンク12は、電気エネルギーを蓄積するコンデンサである。蓄積される電気エネルギーは、例えば数百kJとなる。ただし、コンデンサバンク12に蓄積される電気エネルギーはこれに限定されるものではなく、飛翔体を加速して飛翔させることができる程度の電気エネルギーをコンデンサバンク12に蓄積すれば足りる。トランス13は、一対をなす導電レール1側に対する電圧比を小さくして一対をなす導電レール1側への電流増幅を行っている。トランス13の出力側コイルの一端は、導電レール1aの基端に接続され、他端は導電レール1bの基端に接続される。
【0020】
なお、一対をなす導電レール1間には飛翔体2が通過する円錐状又は方錐状のボアが形成される。このボアは、加速方向Aに向かって先細りする形状である。また、ボアは、一対をなす導電レール1及び一対をなす導電レール1間の絶縁体によって形成される。そして、飛翔体2は、ローレンツ力によってこのボア内を加速方向Aに摺動しつつ加速する。
【0021】
<飛翔体の加速動作>
次に、飛翔体2の加速動作について説明する。図3は、図1に示した電磁飛翔体加速装置を用いた飛翔体2の加速動作を説明する説明図である。図3(a)に示すように、加速開始前の飛翔体2は、一対をなす導電レール1の基端側の発射位置P1に配置される。一対をなす導電レール1の基端側は、一対をなす導電レール1間の幅方向の距離が先端側に比して広がっている。加速開始前の飛翔体2の後端には、固体状態の導電部3が設けられている。なお、固体状態の導電部3は、飛翔体2の後端に取り付けられている。導電部3は、飛翔体2の加速前では溶融せず、プラズマ化しておらず、発射位置P1で一対をなす導電レール1に電気的に接触している。
【0022】
飛翔体2及び導電部3の外周面2sは、一対をなす導電レール1の内周面1cに接触している。また、外周面2sと内周面1cの傾きは同じである。
【0023】
この状態で、一対をなす導電レール1及び導電部3に電流が流れると、一対をなす導電レール1の基端部側から導電部3までの間に磁場Bが形成される。そして、導電部3に加速方向Aへのローレンツ力Fが発生する。これにより、図3(b)に示すように、飛翔体2は加速方向Aに加速されて移動する。この加速途中、例えば加速途中位置P2で、飛翔体2の外周面2sと一対をなす導電レール1の内周面1cとの間には摩擦が生じるとともに、飛翔体2は圧縮され、加速方向Aに垂直な幅方向の寸法が小さくなる。また、飛翔体2の後方側の一対をなす導電レール1は、一対をなす導電レール1に流れる電流によって生じる磁界によって幅方向の反発力F1が生じて広げられる。
【0024】
さらに飛翔体2が加速されると、図3(c)に示すように、加速途中位置P3で導電部3が完全にプラズマ化したプラズマアーマチャ30を生成する。プラズマアーマチャ30は、流体であるため、飛翔体2の外周面2sと一対をなす導電レール1の内周面1cとの間に、摩擦による飛翔体2の幅方向寸法の縮小や反発力F1によって隙間が生じても電気的に接続する作用がある。この結果、プラズマアーマチャ30は、ローレンツ力Fによって飛翔体2を加速し続ける。
【0025】
ここで、プラズマアーマチャ30の生成によって高温高圧の流体が発生する。プラズマアーマチャ30が生成する圧力は、一対をなす導電レール1を幅方向に広げる力が生じ、上記の摩擦による飛翔体2の幅方向寸法の縮小や反発力F1に加えて、飛翔体2の外周面2sと一対をなす導電レール1の内周面1cとの間には隙間が生じやすい。
【0026】
しかし、本実施例では、一対をなす導電レール1間の幅方向の距離は、加速方向Aに向けて狭められている。したがって、飛翔体2が加速方向Aへ移動するに伴って、一対をなす導電レール1間の幅方向の距離は狭くなり、隙間が埋められることになる。これにより、飛翔体2の後方に生じたプラズマアーマチャ30のプラズマアークが隙間を介して飛翔体2の前方に漏れることがなくなる。すなわち、隙間を介した漏れプラズマアーク31の発生が抑制される。この漏れプラズマアーク31の発生の抑制は、プラズマアーマチャ30のプラズマの量の減少を抑えるので、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する際のエネルギーロスを小さくすることができる。
【0027】
なお、図4は、一対をなす導電レールを平行配置した従来の電磁飛翔体加速装置を用いた場合における漏れプラズマアーク31の発生を説明する説明図である。図4に示すように、平行配置した従来の電磁飛翔体加速装置では、飛翔体102の外周面102sと一対をなす導電レール101(101a,101b)の内周面101cとの間に、一対をなす導電レール101の反発力、及びプラズマアーマチャ30の発生による圧力によって隙間が発生し、漏れプラズマアーク31が発生する。従来の電磁飛翔体加速装置では、この漏れプラズマアーク31の発生により、エネルギーロスが生じ、飛翔体102の加速が失速することになる。
【0028】
これに対し、本実施例では、飛翔体2の外周面2sと一対をなす導電レール1の内周面1cとの間に隙間が発生しないため、漏れプラズマアーク31が発生せず、エネルギー効率の良い電磁飛翔体加速装置を実現できることになる。
【0029】
<変形例1>
次に、図1に示した電磁飛翔体加速装置の変形例1について説明する。図5は、本実施例の変形例1にかかる電磁飛翔体加速装置の構成の一部を示す図である。図5に示すように、本変形例1では、飛翔体2に対応する飛翔体22の外周面22sの傾きを、一対をなす導電レール1の内周面1cの傾きに比して大きくしている。
【0030】
本変形例1では、飛翔体22の外周面22sと一対をなす導電レール1の内周面1cとの間の接触領域が、実施例に比して小さくなる。したがって、飛翔体2の摩擦が小さくなり、エネルギーロスを小さくすることができる。
【0031】
なお、飛翔体22が加速方向Aに移動しても、一対をなす導電レール1は加速方向Aに向けて狭められているので、飛翔体22と一対をなす導電レール1との接触状態は維持でき、隙間が生じることはない。したがって、本変形例1でも実施例と同様に、漏れプラズマアーク31が発生せず、エネルギー効率の良い電磁飛翔体加速装置を実現できることになる。
【0032】
<変形例2>
次に、図1に示した電磁飛翔体加速装置の変形例2について説明する。図6は、本実施例の変形例2にかかる電磁飛翔体加速装置の構成の一部を示す図である。図6に示すように、本変形例2では、発射位置P1からプラズマアーマチャ30が発生する加速途中位置P3までの間、一対をなす導電レール1を平行配置して一対をなす導電レール1の幅方向の距離を一定とし、加速途中位置P3以降の一対をなす導電レール1の幅方向の距離を加速方向Aに向けて狭めている。
【0033】
本変形例2では、加速途中位置P3までの間、一対をなす導電レール1が平行配置されるため、飛翔体2と一対をなす導電レール1との間の摩擦を軽減することができる。
【0034】
なお、飛翔体2の外周面2sの傾斜は、一対をなす導電レール1の内周面1cの傾斜と同じであってもよいし、変形例1と同様に、飛翔体2の外周面2sの傾きを、一対をなす導電レール1の内周面1cの傾きに比して大きくしてもよい。また、一対をなす導電レール1の加速途中位置P3から内周面1cの傾きは、飛翔体2の外周面2sの傾きと同じであってもよいし、小さくてもよい。
【0035】
また、一対をなす導電レール1の内周面1cは、加速途中位置P3で傾きを急激に変化させるのではなく、加速途中位置P3を中心とした近傍領域で緩やかに変化させてもよい。
【0036】
なお、上記の実施例及び変形例1,2は、導電部3が飛翔体2の後端に取り付けられているが、これに限らず、固体状態の導電部3が飛翔体2と分離して設けられ、一対をなす導電レール1への通電後、導電部3がプラズマアーマチャ30になった後に飛翔体2が加速される電磁飛翔体加速装置にも適用される。
【0037】
上記の実施例及び変形例1,2では、少なくとも加速途中位置P3以降は、一対をなす導電レール1の幅方向の距離を加速方向Aに向けて狭めているので、飛翔体2と一対をなす導電レール1との間に隙間が発生し難くなり、漏れプラズマアーク31が生成されないため、エネルギー効率の良い電磁飛翔体加速装置を実現することができる。
【0038】
上記の変形例1では、飛翔体22の外周面22sの傾きを、一対をなす導電レール1の内周面1cの傾きに比して大きくしているので、飛翔体22と一対をなす導電レール1との間の摩擦が減少してエネルギーロスを減少させることができる。
【0039】
上記の変形例2では、一対をなす導電レール1が、飛翔体2の発射位置P1から平行配置され、飛翔体2の後方にプラズマアーマチャ30が生成される領域以降、一対をなす導電レール1間の幅方向の距離を前記加速方向に向けて狭めているので、飛翔体2と一対をなす導電レール1との間の摩擦を減少することができるとともに、漏れプラズマアーク31の発生を抑えることができるので、一層、エネルギーロスを減少することができる。
【0040】
なお、上記の実施例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る電磁飛翔体加速装置は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換するエネルギー効率を高める場合に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1,1a,1b,101,101a,101b 導電レール
1c,101c 内周面
2,22 飛翔体
2s,22s 外周面
3 導電部
10 電源部
11 放電スイッチ
12 コンデンサバンク
13 トランス
30 プラズマアーマチャ
31 プラズマアーク
A 加速方向
B 磁場
F ローレンツ力
F1 反発力
P1 発射位置
P2,P3 加速途中位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6