(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】高い強度を備えた弾性片の製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
(21)【出願番号】P 2020080488
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508167760
【氏名又は名称】華龍國際科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】2F.,No.35,Chengtian Rd.,Tucheng Dist.,New Taipei City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 國基
(72)【発明者】
【氏名】李 進興
(72)【発明者】
【氏名】程 磊
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-058032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設置され、対応部材を該ハウジングに交換可能に取り付けるために用いられ
、弾性部材と、少なくとも1つの接触部材と、連接部材とを含み、
前記弾性部材が、少なくとも1つの支持棒と、該支持棒から延伸された少なくとも1つの弾性連接部と、該弾性連接部から延伸された少なくとも1つの弾性アームを備え、該弾性アームに、前記弾性連接部の弾性力により、前記支持棒に対する弾性的な回動及び復帰作用を付与し、
前記接触部材が前記対応部材と係脱し、
前記連接部材が射出成型で前記弾性アームと前記接触部材の間に形成され、該連接部材を介して前記接触部材が前記弾性アームに固定され、かつ前記接触部材が弾性的な回動及び復帰作用により位置決め位置と離脱位置の間で回動され、
前記接触部材は、常態で前記位置決め位置にあるとき、前記対応部材と係合して該対応部材が前記ハウジングに固定され、前記接触部材が前記対応部材により押し動かされて、前記位置決め位置から前記離脱位置へ回動したとき、前記対応部材が前記ハウジングから離脱する
高い強度を備えた弾性片の製造方法であって、第1成型工程と、第2成型工程とを含み、
前記第1成型工程では、まず第1金型を用意し、該第1金型が内部に第1成型空間を備え、該第1成型空間内に金属-プラスチック粉末が注入され、該第1成型空間内でビレットが形成され、次いで、該ビレットに対して焼結を行い、該ビレット内のプラスチック粉末を除去して、前記接触部材を形成し、
次いで、前記第2成型工程では、第2金型を用意し、該第2金型が内部に第2成型空間を備え、支持棒と、少なくとも1つの弾性連接部と、少なくとも1つの弾性アームを備えた弾性部材及び前記接触部材を前記第2金型内に入れ、前記弾性アームの一部と前記接触部材の一部を該第2成型空間内に露出させ、次に、前記第2成型空間内に成型材料を注入し、該成型材料が該第2成型空間内で冷却・成型されることにより、前記弾性アームと前記接触部材の間に連接された連接部材が形成され、前記弾性片が形成される、
ことを特徴とする、高い強度を備えた弾性片の製造方法。
【請求項2】
前記接触部材の硬度が、前記対応部材の硬度より大きい、ことを特徴とする、請求項1に記載の
高い強度を備えた弾性片の製造方法。
【請求項3】
前記対応部材がプラスチック材料より成る、ことを特徴とする、請求項2に記載の
高い強度を備えた弾性片の製造方法。
【請求項4】
前記接触部材の外面に、前記連接部材の外面に形成された第2嵌合部と嵌合可能な第1嵌合部が形成され、該第1嵌合部を前記第2成型空間内に露出させる、ことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の高い強度を備えた弾性片の製造方法。
【請求項5】
前記連接部材の一端に前記第2嵌合部が設けられ、かつ前記連接部材の他端が前記弾性アームの外側を被覆する、ことを特徴とする、請求項4に記載の高い強度を備えた弾性片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に設置して、対応部材を交換可能にハウジングに取り付けるために用いられる高い強度を備えた弾性片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1から
図3に従来の弾性片Aを示す。
この弾性片AはワイヤレスイヤホンのハウジングB内部に取り付けられ、イヤーピースCをハウジングBに迅速に交換できるように取り付けるために用いられる。
弾性片Aは、概ねS字形を呈する弾性部材A1と、弾性部材A1上にそれぞれ設置された2つの固定部材A2を含む。弾性部材A1は中央に支持棒A3を備え、支持棒A3の両側に弾性アームA4が設置され、各弾性アームA4と支持棒A3の間が弾性連接部A5により連接される。2つの弾性アームA4は、支持棒A3の両側で弾性連接部A5を通じてそれぞれ弾性復帰作用を発揮する。また、各固定部材A2が弾性アームA4上にそれぞれ設置される。
【0003】
弾性片AがハウジングBの内部に設置されたとき、各固定部材A2がハウジングBの外部まで突出される。
イヤーピースCに嵌合部材C1が設けられ、嵌合部材C1がハウジングBに嵌合される。また、嵌合部材C1の各固定部材A2と対応する位置に嵌合溝C2がそれぞれ設けられる。各嵌合溝C2は各固定部材A2を嵌置するために用いられ、それによりイヤーピースCをハウジングBに固定することができる。
【0004】
イヤーピースCを交換するときは、イヤーピースCを上に引っ張るだけで嵌合部材C1をハウジングBから徐々に離脱させ、嵌合溝C2を該固定部材A2の嵌置から徐々に離脱させることができる。
このとき、固定部材A2が嵌合部材C1により押圧されて、ハウジングBの内部に向かって移動し、かつ同時に弾性アームA4を動かしてハウジングB内で回動を生じさせ、イヤーピースCの交換を達成することができる。
【0005】
言及すべきは、弾性片Aの固定部材A2は射出成型で弾性アームA4上に直接形成されるのであるが、固定部材A2はプラスチック材料で製造され、嵌合部材C1も同様にプラスチック材料で製造されるため、嵌合部材C1と固定部材A2が長期間の摩擦を経たときに磨損し、イヤーピースCをハウジングBに効果的に固定できなくなる点である。
【0006】
また、従来のワイヤレスイヤホンは、防水要求を達成するために、ハウジングB自体を密封構造としているので、弾性片Aが交換不能にハウジングB内部に設置されることになる。さらに、固定部材A2が磨損すると、イヤーピースCをハウジングBに効果的に固定できなくなり、ワイヤレスイヤホン全体が使用できなくなる。これでは資源の浪費が生じるだけでなく、使用上の利益も満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ハウジング内に設置して、対応部材を交換可能にハウジングに取り付けるために用いられ、かつ使用寿命が長い、高い強度を備えた弾性片の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は、ハウジング内に設置され、対応部材を該ハウジングに交換可能に取り付けるために用いられ、弾性部材と、少なくとも1つの接触部材と、連接部材と、を含み、前記弾性部材が、少なくとも1つの支持棒と、該支持棒から延伸された少なくとも1つの弾性連接部と、該弾性連接部から延伸された少なくとも1つの弾性アームを備え、該弾性アームに、前記弾性連接部の弾性力により、前記支持棒に対する弾性的な回動及び復帰作用を付与し、前記接触部材が前記対応部材と係脱し、前記連接部材が射出成型で前記弾性アームと前記接触部材の間に形成され、該連接部材を介して前記接触部材が前記弾性アームに固定され、かつ前記接触部材が弾性的な回動及び復帰作用により位置決め位置と離脱位置の間で回動され、前記接触部材は、常態で前記位置決め位置にあるとき、前記対応部材と係合して該対応部材が前記ハウジングに固定され、前記接触部材が前記対応部材により押し動かされて、前記位置決め位置から前記離脱位置へ回動したとき、前記対応部材が前記ハウジングから離脱する高い強度を備えた弾性片の製造方法であって、第1成型工程と、第2成型工程とを含み、前記第1成型工程では、まず第1金型を用意し、該第1金型が内部に第1成型空間を備え、該第1成型空間内に金属-プラスチック粉末が注入され、該第1成型空間内でビレットが形成され、次いで、該ビレットに対して焼結を行い、該ビレット内のプラスチック粉末を除去して、前記接触部材を形成し、次いで、前記第2成型工程では、第2金型を用意し、該第2金型が内部に第2成型空間を備え、支持棒と、少なくとも1つの弾性連接部と、少なくとも1つの弾性アームを備えた弾性部材及び前記接触部材を前記第2金型内に入れ、前記弾性アームの一部と前記接触部材の一部を該第2成型空間内に露出させ、次に、前記第2成型空間内に成型材料を注入し、該成型材料が該第2成型空間内で冷却・成型されることにより、前記弾性アームと前記接触部材の間に連接された連接部材が形成され、前記弾性片が形成される。
【0009】
一実施形態において、前記接触部材の硬度が、前記対応部材の硬度より大きい。
【0010】
一実施形態において、前記対応部材がプラスチック材料より成る。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
一実施形態において、前記接触部材の外面に、前記連接部材の外面に形成された第2嵌合部と嵌合可能な第1嵌合部が形成され、該第1嵌合部を前記第2成型空間内に露出させる。
【0017】
一実施形態において、前記連接部材の一端に前記第2嵌合部が設けられ、かつ前記連接部材の他端が前記弾性アームの外側を被覆する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対応部材と係脱する接触部材が、弾性アーム及び連接部材と一体ではないため、接触部材の硬度のみを対応部材の硬度より大きくすることにより、接触部材は長期的に使用しても磨損を生じず、より高い強度及び耐久性を備えた弾性片を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】従来のワイヤレスイヤホンのイヤーピース取り付け状態における断面図である。
【
図3】従来のワイヤレスイヤホンのイヤーピース離脱状態における断面図である。
【
図4】本発明の実施形態を示す弾性片の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態を示す弾性片の分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るワイヤレスイヤホンの弾性片が位置決め位置にあるときの断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るワイヤレスイヤホンの弾性片が離脱位置にあるときの断面図である。
【
図8】本発明の実施形態を示す弾性片の製造工程のフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る第1金型の断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る第2金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図4から
図7は、本発明
に係る弾性片10を示す。
弾性片10は、ハウジング50内に取り付けられ、対応部材60をハウジング50に迅速に交換可能に取り付けるために用いられる。本実施形態において、ハウジング50はワイヤレスイヤホンのハウジングであり、対応部材60はイヤーピースである。
弾性片10は、弾性部材20と、少なくとも1つの接触部材30と、少なくとも1つの連接部材40を含む。
対応部材60は、嵌合部材61と、嵌合部材61に形成されたプラグ部62を含んでおり、対応部材60は嵌合部材61を通じて弾性片10によりハウジング50に対して迅速に交換できる。
【0021】
弾性部材20は、支持棒21と、支持棒21から延伸された少なくとも1つの弾性連接部22と、弾性連接部22から延伸された少なくとも1つの弾性アーム23を備えている。本実施形態では、支持棒21の二端から弾性連接部22がそれぞれ延伸され、かつ各弾性連接部22から該弾性アーム23がそれぞれ延伸される。弾性部材20は金属棒体で一体として形成される。各弾性アーム23は、各弾性連接部22の弾性により、支持棒21に対して弾性的に回動及び復帰作用が付与される。
【0022】
接触部材30はハウジング50の外部まで延伸され、対応部材60をハウジング50に迅速に交換できるよう取り付けるために用いられる。接触部材30の硬度は対応部材60の嵌合部材61の硬度より大きい。本実施形態において、接触部材30は金属射出成型方式(Metal Injection Molding、略称MIM)を利用して形成され、嵌合部材61はプラスチック材料で製造される。
【0023】
連接部材40は、射出成型方式で各弾性アーム23と各接触部材30の間に成型され、各接触部材30を各弾性アーム23に固定する。
図5では、説明を容易にするために、連接部材40、弾性アーム23及び接触部材30を分解して示しているが、実際には、連接部材40は弾性アーム23と接触部材30の間に直接成型される。
そして、各連接部材40及び各弾性アーム23の弾性復帰作用により、各接触部材30を位置決め位置W1と離脱位置W2の間で回動させることができる。
【0024】
ここで言及すべきは、接触部材30と連接部材40の間を効果的に結合させるために、各接触部材30と各連接部材40の間はそれぞれ嵌合構造70を利用して相互に結合される点である。
嵌合構造70は、接触部材30の外面に形成した第1嵌合部71と、連接部材40の外面に形成した第2嵌合部72を含み、第1嵌合部71と第2嵌合部72は相互に嵌合でき、連接部材40を接触部材30と嵌合させることができる。
本実施形態において、第1嵌合部71は接触部材30の外面から弾性アーム23の方向に突出して延伸され、第2嵌合部72は連接部材40の外面に凹設される。このため、連接部材40を射出成型方式で弾性アーム23と接触部材30の間に直接成型するとき、連接部材40で第1嵌合部71を被覆し、連接部材40に第2嵌合部72を形成することができ、接触部材30が第1嵌合部71と第2嵌合部72の間の相互嵌合を通じて連接部材40に固定される。
【0025】
弾性片10をハウジング50内部に設置したとき、常態では接触部材30がハウジング50の外部に突出するよう付勢され、対応部材60が嵌合部材61を通じてハウジング50に固定される。
嵌合部材61の各接触部材30と対応する位置に接触部材30を嵌置させることができる嵌合溝63がそれぞれ設けられ、各接触部材30を各嵌合溝63内にそれぞれ嵌置させて、対応部材60をハウジング50に固定することができる。このとき、接触部材30は、位置決め位置W1に位置してハウジング50の外部に突出され、嵌合溝63内に嵌合される。
【0026】
対応部材60の交換を行うときは、対応部材60を上へ持ち上げれば、嵌合部材61を上に動かして、嵌合溝63を接触部材30から徐々に離脱させ、嵌合部材61が接触部材30を押してハウジング50内部に向かって回動させることで、接触部材30を離脱位置W2まで回動させた後、対応部材60をハウジング50から離脱させ、対応部材60の交換を行うことができる。
【0027】
以下、
図5と
図8から
図10を参照して弾性片の製造方法を説明する。
弾性片の製造方法は、第1成型工程S1と、第2成型工程S2を含む。
第1成型工程S1では、上述の接触部材30を成型する。
前述のように、接触部材30は金属射出成型方式(Metal Injection Molding、略称MIM)で形成される。
本実施形態においては、まず内部に第1成型空間81を備えた第1金型80を用意し、さらに金属-プラスチック粉末を第1成型空間81内に注入してビレットを形成し、その後、成型されたビレットを取り出して高温焼結し、ビレット内部のプラスチック粉末を溶融させて接触部材30を形成し、かつ接触部材30に第1嵌合部71を形成する。弾性片10の全体体積は小さいため、金属射出成型方式を利用して、体積がより小さい接触部材30を得ることができる。
【0028】
次いで、第2成型工程S2では、連接部材40を成型する。
第2成型工程は、
図9に示すように、まず内部に第2成型空間91を備えた第2金型90を用意し、さらに上述の弾性部材20及び接触部材30を第2成型空間91内に同時に入れ、弾性部材20の弾性アーム23の一部と接触部材30の第1嵌合部71を第2成型空間91内に露出させ、さらに成型材料(本実施形態ではプラスチック材料を成型材料とする)を第2成型空間91内に注入し、第2成型空間91内で弾性アーム23の一部と第1嵌合部71を成型材料で被覆させ、連接部材40を形成すると共に、第1嵌合部71と相互に嵌合される第2嵌合部72を形成する(
図5参照)。
成型材料が第2成型空間91内部で冷却成型されるのを待てば、弾性片10が形成される。
【0029】
上述をまとめると、接触部材30が金属材料で成り、弾性アーム23と連接部材40を通じて接触部材30をハウジング50内で位置決め位置W1と離脱位置W2間で回動させるとき、接触部材30の硬度が嵌合部材61の硬度より大きいため、接触部材30は長期的に使用しても磨損を生じず、より高い強度及び耐久性を備えた弾性片10を提供することができる。
長期的に使用して嵌合部材61の磨損が生じたとしても、比較的廉価な対応部材60のみを交換すればよい。対応部材60の磨損後も、弾性片10が損壊することはなく、弾性片10の使用寿命を延長することができる。
【0030】
以上は、本発明の実施態様の説明にすぎず、これを以って本発明の権利範囲を限定することはできない。本発明の要旨を逸脱しない修飾や変化はいずれも本発明の権利範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
A 弾性片
A1 弾性部材
A2 固定部材
A3 支持棒
A4 弾性アーム
A5 弾性連接部
B ハウジング
C イヤーピース
C1 嵌合部材
C2 嵌合溝
10 弾性片
20 弾性部材
21 支持棒
22 弾性連接部
23 弾性アーム
30 接触部材
40 連接部材
50 ハウジング
60 対応部材
61 嵌合部材
62 プラグ部
63 嵌合溝
70 嵌合構造
71 第1嵌合部
72 第2嵌合部
80 第1金型
81 第1成型空間
90 第2金型
91 第2成型空間
W1 位置決め位置
W2 離脱位置
S1 第1成型工程
S2 第2成型工程