(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】包装材、及びリサイクル基材製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220106BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20220106BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220106BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B32B27/00 H
C09J175/06
B32B7/06
B65D65/40 D BRH
(21)【出願番号】P 2020207358
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019230856
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】染田 忠
(72)【発明者】
【氏名】門田 昌久
(72)【発明者】
【氏名】早坂 結科
(72)【発明者】
【氏名】山上 朋恵
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112567(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188335(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/104639(WO,A1)
【文献】特開2018-172492(JP,A)
【文献】特開2020-094154(JP,A)
【文献】特許第6642688(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/027609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
C09J 175/00-175/16
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、第1の基材を脱離させて第1の基材をリサイクルするための第1の脱離層と、並びに、
第2の基材と、第2の基材を脱離させて第2の基材をリサイクルするための第2の脱離層と、を備えた包装材であって、
前記第1の脱離層は、
アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質の蒸着層であり、
前記第2の脱離層は、第2の脱離層形成組成物(B)から形成さ
れ、
前記第2の脱離層形成組成物(B)は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む接着剤組成物であり、前記ポリイソシアネート成分が、脂肪族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分を含み、かつ、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物の酸価が、5mgKOH/g以上であり、
ポリオール成分が、少なくとも下記3つのポリエステルポリオール成分のうちの2つを含
み、
第1のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール
第2のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール
第3のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール
第1のポリオール成分の含有量が、ポリエステルポリオール成分全量に対して50質量%以上である、包装材。
【請求項2】
ポリオール成分が、少なくとも下記3つのポリエステルポリオール成分を含む、請求項
1に記載の包装材。
第1のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール
第2のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール
第3のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール
【請求項3】
前記第2の脱離層形成組成物(B)が、リンの酸素酸又はその誘導体を、前記第2の脱離層形成組成物(B)の固形分を基準として、0.01~5質量%含む、請求項1
又は2に記載の包装材。
【請求項4】
前記第2の脱離層形成組成物(B)が、平均粒子径が1~10μmである微粒子を含む、請求項1~
3いずれかに記載の包装材。
【請求項5】
前記微粒子の含有量が、前記第2の脱離層形成組成物(B)の固形分を基準として、0.1~10質量%である、請求項
4に記載の包装材。
【請求項6】
少なくとも一部が、請求項1~5いずれかに記載の包装材で形成されている包装容器。
【請求項7】
請求項1~
5いずれかに記載の包装材
又は請求項6に記載の包装容器を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリサイクル可能な基材を含む包装材、及びリサイクル基材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は、海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類等の海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮され、当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
【0003】
上記プラスチック製品としては、プラスチック基材を使用した食品包装パッケージ等が主として挙げられる。当該パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル(PET)基材、ナイロン(NY)基材、ポリプロピレン(PP)基材等、種々のプラスチック基材が使用されている。これらプラスチック基材は、グラビアインキ、フレキソインキ、その他の印刷インキにより印刷層が施され、更に接着剤等を介して熱溶融樹脂基材(シーラント基材ともいう)と貼り合わされ、積層体としたのちに、当該積層体をカットして熱融着されてパッケージとなる。
【0004】
上記マイクロプラスチックを削減する試みとしては、上記パッケージにおいて(1)プラスチック基材を紙に代替する、(2)プラスチック基材を同種のみの使用に限定して(モノマテリアル化という)リサイクルを簡易化する、(3)不純物を除去してプラスチックをリサイクルする、等が挙げられる。
【0005】
上記(1)は、安全性・リサイクル性の面で有望だが、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性等、従来のプラスチック基材と比較して性能的に劣る面が多々ある。
上記(2)としては、バリアコート剤等の機能性コーティング剤でポリオレフィンの弱点をカバーする技術が開発されつつあるが、レトルト適性や遮光性等、従来のプラスチック基材と比較して性能的に劣るため、ポリオレフィンへの置き換えは容易ではない。さらに、ポリオレフィン基材間のインキ、機能性コーティング剤及び接着剤等は、ポリオレフィンをリサイクルする上で不純物となる課題もある。
【0006】
上記(3)としては、リサイクル過程において不純物となる、パッケージ外表面の印刷層を塩基性水溶液で除去する試みが行われてきた。
例えば引用文献1には、プラスチック基材上にアクリル系樹脂やスチレンマレイン酸系樹脂からなる下塗り層を設け、下塗り層上に配置された印刷層を塩基性水溶液により除去する技術が開示されている。また、特許文献2には、酸性基を有するポリウレタン樹脂やアクリル樹脂をバインダー樹脂とするインキを表刷り印刷し、同じく塩基性水溶液により当該印刷層を除去する技術が開示されている。
しかしながら、これらはパッケージ外側の表刷りインキを除去するのみの技術であって、ラミネート積層体中のインキ層を除去し、基材同士を剥離させるまでには至っていない。
【0007】
プラスチックリサイクルのために表刷りインキ層の除去に加え、ラミネート積層体におけるインキ層を除去する技術は、プラスチックリサイクルを進めるうえで、環境保全のために産業上利用できる重要な技術となる。しかしこの両方を成しえた技術は未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-131484号公報
【文献】特開平11-209677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明の課題は、包装材として必要な基材接着性に優れ、かつ、パッケージ外側の印刷層だけでなく内側の印刷層の除去が可能で、包装材を構成する2種両方の基材の脱離性に優れた、プラスチックリサイクルに適した包装材及びリサイクル基材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明は、第1の基材と、第1の基材を脱離させて第1の基材をリサイクルするための第1の脱離層と、並びに、第2の基材と、第2の基材を脱離させて第2の基材をリサイクルするための第2の脱離層と、を備えた包装材であって、
前記第1の脱離層は、第1の脱離層形成組成物(A)から形成され、
前記第2の脱離層は、第2の脱離層形成組成物(B)から形成され、
前記第1の脱離層形成組成物(A)は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる無機物質を少なくとも一種含み、かつ、前記無機物質は、第1の脱離層形成組成物(A)総量の10重量%以上であり、
前記第2の脱離層形成組成物(B)は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む接着剤組成物であり、前記ポリイソシアネート成分が、脂肪族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分を含み、かつ、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物の酸価が、5mgKOH/g以上であり、
ポリオール成分が、少なくとも下記3つのポリエステルポリオール成分のうちの2つを含む、包装材に関する。
第1のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール
第2のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール
第3のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール
【0011】
[2]また、本発明は、ポリオール成分が、ポリエステルポリオール成分を含み、下記第1のポリオール成分の含有量が、ポリエステルポリオール成分全量に対して50質量%以上である[1]記載の包装材に関する。
第1のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール
【0012】
[3]また、本発明は、ポリオール成分が、少なくとも下記3つのポリエステルポリオール成分を含む、[1]又は[2]記載の包装材に関する。
第1のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール
第2のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール
第3のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール
【0013】
[4]また、本発明は、第2の脱離層形成組成物(B)が、リンの酸素酸又はその誘導体を、第2の脱離層形成組成物(B)の固形分を基準として、0.01~5質量%含む、[1]~[3]いずれかに記載の包装材に関する。
【0014】
[5]また、本発明は、第2の脱離層形成組成物(B)が、平均粒子径が1~10μmである微粒子を含む、[1]~[4]いずれかに記載の包装材に関する。
【0015】
[6]さらに、本発明は、微粒子の含有量が、第2の脱離層形成組成物(B)の固形分を基準として、0.1~10質量%である、[5]に記載の包装材に関する。
【0016】
[7]また、本発明は、[1]~[6]いずれかに記載の包装材を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~10質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、包装材として必要な基材接着性に優れ、かつ、パッケージ外側の印刷層だけでなく内側の印刷層の除去が可能で、包装材を構成する2種両方の基材の脱離性に優れた、プラスチックリサイクルに適した包装材及びリサイクル基材製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0019】
本発明の包装材は、少なくとも、第1の基材と、第1の基材を脱離させて第1の基材をリサイクルするための第1の脱離層と、並びに、第2の基材と、第2の基材を脱離させて第2の基材をリサイクルするための第2の脱離層(以下、接着剤層ともいう)とを備えること特徴とする。
本発明において「脱離」とは、脱離層が塩基性水溶液により中和若しくは溶解し剥離することにより、第1の基材及び第2の基材が、包装材から脱離することを指し、(1)脱離層が溶解して基材が脱離する場合、(2)脱離層が溶解しなくとも、中和・膨潤等により剥離し、基材が脱離する場合、の両方の形態を含む。
この場合、第1の脱離層の脱離挙動と、第2の脱離層の脱離挙動は異なっていてもよい。すなわち、例えば、第1の基材が剥離するまでの時間と、第2の基材が剥離するまでの時間は、同じであっても、異なっていてもよい。
なお、本発明の包装材において、基材のリサイクルに支障のない範囲で、第1の基材の外側(第1の脱離層とは反対側)に層があってもよいし、第2の基材の外側(第2の脱離層とは反対側)に層があってもよい。
また、第1の脱離層と第2の脱離層とは同一組成であってもよい。また、第1の脱離層と第2の脱離層は、一体となっていてもよい。
また、第1の脱離層と第2の脱離層との間に層があってもよい。この場合、両方の基材が剥離していれば、剥離後、第1の脱離層と第2の脱離層とが層を介して一体となっていてもよい。
また、基材1又は基材2の外側、あるいは、基材1と基材2との間に、リサイクルすべき第3の基材があってもよい。
本発明の包装材の、具体的な層構成の詳細については後述する。
【0020】
当該包装材は、両方の脱離層が塩基性水溶液等により溶解・剥離することで、両方の基材が脱離し、両方の基材を分離・回収することが可能である。したがって、本発明の包装材は、両方の基材を分離・回収するために用いられる包装材に該当する。
以下に本発明について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
<第1の基材>
第1の基材は、リサイクル可能な基材であり、包装材に一般的に用いられるフィルム上又はシート状のプラスチック基材が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムが挙げられ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
【0022】
より詳細には、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;リスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体;等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムの厚みは、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
第1の基材は、ポリビニルアルコール等の有機層を有するプラスチック基材等であってもよい。
【0023】
第1の基材が積層体である場合、基材同士は接着剤層を介して積層されていることが好ましい。該接着剤層の形成方法は制限されず、公知の接着剤を用いて公知の方法で形成することができる。
第1の基材は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤を含有してもよく、基材表面が、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
【0024】
リサイクル基材として再利用する観点から、第1の基材は、ポリエチレン、二軸延伸ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂フィルムを含むことが好ましい。
【0025】
<第1の基材を脱離するための第1の脱離層、第1の脱離層形成組成物(A)>
本発明における第1の脱離層は、第1の脱離層形成組成物(A)から形成され、第1の基材と接触する形で配置され、塩基性水溶液を用いた溶解・剥離等により第1の基材を脱離するための層である。
第1の脱離層形成組成物(A)は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる無機物質を少なくとも一種含み、かつ、前記無機物質は、第1の脱離層形成組成物(A)総量の10重量%以上である。
当該無機物質を含有する形態としては、第1の脱離層は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質の蒸着層を有する層、又は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質及びバインダー樹脂を含有する層、であることが好ましい。
【0026】
(アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質からなる蒸着層)
第1の脱離層は、蒸着層であることが好ましい。蒸着層は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質から構成され、従来公知の方法により形成することができ、その組成及び形成方法は特に限定されない。蒸着層は、非結晶性(アモルファス)の層からなることが好ましい。また、可視光透過性の観点から酸化アルミニウム及び/又はシリカであることが好ましい。遮光性を示す形態とするためにはアルミニウムであることが好ましい。ただし、蒸着の際、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカ以外の元素若しくは化合物を存在することを排除しない。
第1の脱離層は、蒸着層を2層以上有してもよい。蒸着層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。なお、包装材が、蒸着層を有する場合、塩基性水溶液を用いて脱離を行う前は、酸素及び/又は水蒸気バリア層としても機能する。
【0027】
酸化アルミニウム、シリカからなる蒸着層は、それぞれAl2O3、SiO2を含む形態が好ましい。例えば、酸化アルミニウムをAlOn、シリカをSiOn、等のような形態で表した場合、nの値としては、酸化アルミニウムは0.5~1.5の範囲、シリカは1~2の範囲であればよく、Al2O3、SiO2以外の酸化アルミニウムやシリカの形態を除外するものではない。一方で、アルミニウムから形成される蒸着層は遮光性の点から実質的にアルミニウムのみから形成された蒸着膜であることが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる蒸着膜の厚みとしては、通常、1~400nmの範囲であればよく、5~300nmの範囲であることが好ましく、10~200nmの範囲であることがより好ましい。
【0029】
蒸着層がアルミニウムである場合、厚みは5~300nmであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましく、10~60nmであることが更に好ましい。また、蒸着層が酸化アルミニウム及び/又はシリカである場合、厚みは5~300nmであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましく、10~60nmであることが更に好ましい。
蒸着膜の厚みは、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の蛍光X線分析装置(機種名、EA6000VXやEA8000)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法により測定することができる。
【0030】
(蒸着層の形成)
上記蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法);プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法);が好適な方法として挙げられる。
当該蒸着層を有するプラスチック基材の市販品としては、例えば、第1の基材上に、アルミナ等の蒸着層が積層された、「GL FILM」(凸版印刷社製)や、IB-FILM(大日本印刷社製)が挙げられる。
【0031】
上記蒸着層は更に易接着層を有していてもよい。易接着層としては例えば、ポリウレタン樹脂層、アクリル樹脂層、ポリエステル樹脂及びポリビニルアルコールから選ばれる樹脂からなる易接着層であることが好ましく、水性である前記樹脂から構成される易接着層であることがより好ましい。易接着層は印刷その他の公知の方法により形成できる。
【0032】
(アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質及びバインダー樹脂を含有する層)
第1の脱離層は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質及びバインダー樹脂を含有する層である場合も好ましい。このような層の厚みとしては、1~10μmであることが好ましく、1~6μmであることが好ましい。
また、バインダー樹脂と無機物質との質量比(バインダー樹脂/無機物質)は、90/10~20/80であることが好ましい。
【0033】
前記無機物質の中では、酸化アルミニウム(Al2O3)を含む場合が好ましく、α粒子結晶及び/又はγ粒子結晶であることが好ましい。酸化アルミニウムの平均粒子径としては、0.1~4μmであることが好ましい。当該平均粒子径とは、動的光散乱測定による累積頻度50%(D50)の値をいう。
無機物質とバインダー樹脂を含有する層に含まれるアルミニウムは、当該層全体の80質量%以上であることが好ましい。また、当該層に含まれる酸化アルミニウムは、当該層全体の10質量%以上であることが好ましい。また、当該層に含まれるシリカは、当該層全体の10質量%以上であることが好ましい。
本発明の包装材は、後述する印刷層が、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカを含むことを排除しないが、印刷層に含まれるアルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカの量は、第1の脱離層よりも少ない。
【0034】
(バインダー樹脂)
無機物質とバインダー樹脂は、上記易接着層の場合と同様の種類である樹脂が好適に挙げられ、水性樹脂であってもよいし、有機溶剤に可溶な樹脂であってもよい。例えば、ポリウレタン樹脂層、アクリル樹脂層、ポリエステル樹脂及びポリビニルアルコールから選ばれる樹脂であることが好ましい。これらは、複数種組み合わせて使用してもよい。
【0035】
無機物質とバインダー樹脂を含む第1の脱離層は、第1の基材上に当該無機物質、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる第1の脱離層形成組成物(A)を用いて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法その他の印刷方法あるいは公知の塗布方法により形成することができる。
【0036】
前記組成物は、その総質量中に、無機物質及びバインダー樹脂を合計で5~60質量%で含有することが好ましい。8~50質量%で含有することがなお好ましい。
上記有機溶剤としてはイソプロピルアルコール(IPA)、エタノール及びノルマルプロパノールその他のアルコール系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルその他のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンその他のケトン系有機溶剤、並びに、トルエン、キシレンその他の芳香族有機溶剤等が好適に挙げられる。二種以上の混合溶剤として使用することが好ましい。
【0037】
(無機物質、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる組成物の製造)
無機物質、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる組成物は、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物質、並びに、バインダー樹脂を有機溶剤液中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。
例えば、酸化アルミニウム粒子及びポリウレタン樹脂有機溶剤中に分散させておき、無機物質分散体に、ポリウレタン樹脂、必要に応じて有機溶剤、その他樹脂や添加剤等を配合することによりかかる組成物を製造することができる。また、組成物の粘度等は分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、金属粒子分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。サンドミルその他のビーズミルを用いて製造することが好ましい。
【0038】
(添加剤)
無機物質、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる組成物は、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、例えば、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分を使用することができる。
【0039】
<印刷層>
本発明における印刷層は、第1の脱離層の第1の基材と反対の側に、第1の脱離層に接して設けられた層であり、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、例えば、第1の脱離層と接着剤層との間に設けることができ、第1の脱離層の全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。
印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、顔料や染料を含む印刷インキを用いて形成してもよく、その形成方法は特に限定されない。印刷層は、単層あるいは複数の層から形成されていてもよい。また、印刷層はアンカーコート(AC)層を含んでもよく、顔料や染料を含む層と顔料や染料を含まない層とを両方有するものであってもよい。
印刷層の厚みは、好ましくは0.1μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0040】
印刷層を形成するための印刷インキとしては、例えば、顔料、バインダー樹脂、溶剤又は水等の媒体を含む印刷インキが挙げられる。印刷インキのバインダー樹脂としては、印刷層の除去を容易にするため、塩基性水溶液中で印刷層が溶解又は微細に分散することを抑制する組成であることが好ましい。バインダー樹脂としては、例えば、ニトロセルロース系、セルロースアセテートプロピオネート等の繊維素材、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系及びアクリルウレタン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、環化ゴム系、塩化ゴム系あるいはそれらを適宜併用したバインダーを用いることができる。
【0041】
[顔料]
本発明で用いられる印刷層を含む包装材は、2cm×2cmに切り出したものを70℃の2質量%水酸化ナトリウム水溶液50mlに2時間浸漬させた後の、水溶液の可視光領域中(400~760nm)の最大吸収波長における透過率が、75%以上であることが好ましい。当該透過率を下げる大きな要因は、印刷層に含まれるインキの顔料が、水酸化ナトリウム水溶液に溶出することによる。
包装材をリサイクルした基材は、一般的に着色する場合があり、着色を問題としない用途に使われることが多いが、着色していないリサイクル基材が得られれば、その用途の幅を広がることが期待される。リサイクル基材が着色するかしないかの指標である、当該透過率の規定を満たすことは意義がある。
顔料が、当該透過率の規定を満たすためには、当該顔料がアルカリ耐性を有することが、必要となる。顔料のアルカリ耐性は、概ね顔料骨格・構造で推定できる。アルカリ水溶液に溶解する染料由来のものや、アルカリ水溶液で分解するものは、アルカリ耐性を有しないといえる。
さらに、顔料そのものは、アルカリ耐性を有していても、顔料に含まれる副成分が、透過率を下げることもあり、この場合も着色を問題とする用途においては、好ましくない。
例えば、アルカリ耐性のある顔料としては、無機顔料、P.B.15、P.Y.83等が挙げられる。
【0042】
印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
【0043】
<第2の基材>
本発明の包装材は、第1の基材を下側とした場合、第2の基材が包装材の最も上側に位置する形態であるが、必要に応じて、第2の基材のさらに上側に保護層等が設けられていてもよい。
第2の基材は、例えば、上述の第1の基材で挙げた基材、又は、シーラント基材が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。第2の基材として好ましくはシーラント基材であり、ポリオレフィンを含むものである。第2の基材は、シリカ、アルミナ等の蒸着膜を有していてもよい。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
リサイクル性の観点から、第2の基材は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
レトルト耐性の観点では、好ましくはポリプロピレンであり、ヒートシール性の観点では、好ましくは無延伸ポリプロピレンである。
【0044】
第2の基材の厚みは特に限定されず、包装容器への加工性又はヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10μm以上150μm以下であり、より好ましくは20μm以上70μm以下である。第2の基材に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与することができる。
第2の基材を積層する方法は特に限定されず、例えば、第1の基材、第1の脱離層及び印刷層を有する積層フィルムの印刷面と、第2の基材とを、ラミネート接着剤を用いて貼り合わせる方法;第2の基材を構成する樹脂を溶融させて、印刷層上に押出し、冷却固化する方法;等が挙げられる。
【0045】
以下に、本発明の包装材の構成の一例を挙げるが、これらに限定されない。前述のとおり、第1の基材及び第2の基材は、複数の基材が積層された積層体であってもよい。
・第1の基材/第1の脱離層/接着剤層/第2の基材
・第1の基材(積層体)/第1の脱離層/印刷層/接着剤層/第2の基材
・第1の基材/第1の脱離層/印刷層/接着剤層/第2の基材
・第1の基材/第1の脱離層/印刷層/接着剤層/第2の基材(積層体)
【0046】
<第2の脱離層形成組成物(B)(以下、接着剤組成物ともいう)>
本発明における第2の脱離層は、第2の脱離層形成組成物(B)から形成され、第2の基材と接触する形で配置され、塩基性水溶液を用いた溶解・剥離等により第2の基材を脱離するための層である。
前記第2の脱離層形成組成物(B)は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む2液硬化型の接着剤組成物からなり、前記ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とは、ウレタン結合を生成して硬化後、反応物となる。第2の脱離層を、接着剤層ともいう。
【0047】
[ポリオール成分]
ポリオール成分は、ポリエステルポリオール成分を含む。当該ポリエステルポリオール成分は、従来公知のポリオール成分から選択することができるが、少なくとも下記3つのポリエステルポリオール成分のうちの2つを含むものである。
第1のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール
第2のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール
第3のポリオール成分:酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール。
【0048】
(ポリエステルポリオール)
ポリオール成分は、塩基性水溶液との親和性が高いエステル結合を有すると脱離性が向上するため、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
ポリエステルポリオールは、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシ基成分ともいう)と、
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)と、
を反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシ基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記ポリエステルポリオールは、ウレタン結合を有していることが好ましく、例えば、さらにジイソシアネートを反応させたポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。また、ポリエステルポリオール及びポリエステルポリウレタンポリオールは、さらに酸無水物を反応させたものであってもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0050】
中でも、ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリウレタンポリオールの酸無水物変性物を含むことが好ましい。ポリエステルポリオールがウレタン結合を有することで、優れた耐熱性、接着性を発揮することができる。ポリエステルポリオールが酸無水物変性物であると、酸価の細かい制御が可能となり、後述に示すような好適な酸価範囲のポリエステルポリオールを容易に得ることができるため好ましい。
【0051】
本発明におけるポリオール成分は、酸価10.0mgKOH/g以上のポリエステルポリオール(第1のポリオール成分ともいう)を含むことが好ましく、第1のポリオール成分は、ポリエステルポリオール成分全量に対して50質量%以上であることが好ましい。
この場合、第1のポリオール成分に、さらに、酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール(第2のポリオール成分ともいう)、及び/又は酸価10.0mgKOH/g未満かつ、数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール(第3のポリオール成分ともいう)を用いることが好ましい。
【0052】
第2の脱離層形成組成物(B)である接着剤組成物は、酸価を有していることが好ましい。接着剤組成物が酸価を有していると、塩基性化合物との中和作用により、塩基性水溶液での第2の基材の剥離が容易になる。そのため、ポリオール成分は酸価を有していることが好ましく、ポリオール成分の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上である。
【0053】
ポリオール成分が複数のポリオールを含む場合、ポリオール成分の酸価は、各々のポリオールの酸価とその質量比率から求めることができる。
【0054】
ポリオール成分は、数平均分子量5,000~15,000のポリオールを含むことが好ましく、さらに、基材密着性を向上させるために、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
【0055】
(アクリルポリオール)
ポリオール成分として、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを単重合、若しくは他の(メタ)アクリルモノマー若しくはビニルモノマーと共重合してなる、ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂も好適に用いることができる。
【0056】
(その他ポリオール)
第2の脱離層形成組成物(B)である接着剤組成物は、上記ポリエステルポリオール以外のその他ポリオールを含有してもよい。ポリエステルポリオール以外に含有してもよいポリオールは、特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオールが挙げられる。これらは単独で使用、又は2種類以上を併用してもよい。
【0057】
[ポリイソシアネート成分]
ポリイソシアネート成分は、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分を含むものであれば、特に制限されない。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0058】
(脂肪族ポリイソシアネート)
脂肪族ポリイソシアネートは、以下に限定されるものではないが、周知の脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートから誘導された化合物を用いることができる。
本発明で用いることができる脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;上記脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートから誘導された、アロファネートタイプ、ヌレートタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;が挙げられる。
誘導体として好ましくは、ヌレートタイプ、アダクトタイプの誘導体であり、特に好ましくはアダクトタイプである。
脂肪族ポリイソシアネートとして好ましくは、脱離性とラミネート物性のバランスが確保しやすいヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)から誘導されたポリイソシアネートである。
【0059】
(芳香脂肪族ポリイソシアネート)
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネートであればよく、周知の芳香脂肪族ジイソシアネートから誘導された化合物を用いることができる。
本発明で用いることができる芳香脂肪族ポリイソシアネートとして は、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;上記芳香脂肪族ジイソシアネートの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;が挙げられる。
【0060】
<接着剤組成物の製造>
第2の脱離層形成組成物(B)である接着剤組成物は、さらに、その他成分を含有してもよい。その他成分は、ポリオール成分又はポリイソシアネート成分のいずれに配合してもよいし、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合する際に添加してもよい。
【0061】
[その他成分]
(シランカップリング剤)
接着剤組成物は、耐熱水性を高めるため、さらにシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、接着剤組成物の固形分を基準として0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。
【0062】
(リンの酸素酸又はその誘導体)
接着剤組成物は、耐酸性を高めるため、さらにリンの酸素酸又はその誘導体を含有することができる。リンの酸素酸又はその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール;が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸又はその誘導体の添加量は、接着剤組成物の固形分を基準として0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
【0063】
また、接着剤組成物は、第2の脱離層の脱離性を向上させリサイクル性を高めるため、上述のリンの酸素酸又はその誘導体を含有することができる。包装材の強度と脱離性の観点から、リンの酸素酸又はその誘導体の含有量は、接着剤組成物の固形分を基準として好ましくは0.01~5質量%である。すなわち、第2の脱離層は、リンの酸素酸又はその誘導体を、第2の脱離層の質量を基準として、好ましくは0.01~5質量%の範囲で含むものである。
より詳細には、リンの酸素酸の配合量は、接着剤組成物の固形分を基準としてより好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。配合量が0.01質量%以上であると、包装材の強度を維持しつつ、より脱離性が向上する。1質量%以内であると、包装材としての強度により優れる。
【0064】
リン酸誘導体の配合量は、接着剤組成物の固形分を基準として好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。配合量が0.01質量%以上であると、包装材の強度を維持しつつ、より脱離性が向上する。5質量%以内であると、包装材としての強度により優れる。
【0065】
(レベリング剤又は消泡剤)
接着剤組成物は、積層体の外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0066】
(反応促進剤)
接着剤組成物は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等の金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミン等の反応性3級アミン;が挙げられ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上を使用できる。
【0067】
接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等が例示できる。
【0068】
(平均粒子径が1~10μmである微粒子)
また、接着剤組成物は、第2の脱離層の脱離性を向上させリサイクル性を高めるため、上述の添加剤として、平均粒子径が1~10μmである微粒子を含有することができる。このような微粒子を含むことで、基材への投錨効果により包装材の強度が維持されつつ、接着剤組成物と基材の接触面積が減少するため脱離性が向上すると推察される。
平均粒子径が1μm以上であると、包装材の強度を維持しつつ、より脱離性が向上する。平均粒子径が10μm以内であると、包装材としての強度が維持できる。なお、本明細書における平均粒子径は、レーザー回折・散乱法を用いた粒子径分布測定装置で測定したときのメジアン径を意味する。
前記平均粒子径が1~10μmである微粒子としては、特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤のほか、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ゼオライト、及びアクリルビーズやウレタンビーズ等の樹脂ビーズが挙げられる。
【0069】
前記微粒子の配合量は、包装材の強度と脱離性の観点から、接着剤組成物の固形分を基準として、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5.0質量%である。すなわち、本発明における第2の脱離層は、平均粒子径が1~10μmである微粒子を、第2の脱離層の質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%の範囲で含むものであり、より好ましくは0.5~5.0質量%の範囲で含むものである。配合量が0.5質量%以上であると、包装材の強度が維持しつつ、より脱離性が向上する。5.0質量%以内であると、包装材としての強度により優れる。
【0070】
第2の脱離層は、前記リンの酸素酸又はその誘導体と、前記平均粒子径が1~10μmである微粒子と、を両方含むことが好ましい。両方を含むことで、より脱離性や除去率が向上する。
【0071】
接着剤組成物は、その粘度が常温~150℃、好ましくは常温~100℃で100~10,000mPa・s、好ましくは100~5,000mPa・sの場合は、無溶剤型で用いることができる。接着剤組成物の粘度が上記範囲より高い場合は、有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系のような、ポリイソシアネート成分に対して不活性なものが好適に用いられ、適宜選択して使用できる。
【0072】
第2の脱離層形成組成物(B)中のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上であり、より好ましくは7mgKOH/g以上、更に好ましく10mgKOH/g以上、特に好ましくは20mgKOH/g以上である。酸価が5mgKOH/g以上であると、塩基性水溶液での第2の基材の剥離が容易になる。
【0073】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合する際は、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.3~5.0になるよう配合することが好ましい。より好ましくは0.3~2.0であり、特に好ましくは、0.5~1.5である。
【0074】
第2の脱離層を形成する方法としては、一般的に印刷層がある場合は、第1の基材上に無機層を介して印刷層を形成し、該印刷層上に上記接着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥工程を経て有機溶剤を揮散させた後、ラミネーターを用いて第2の基材と貼り合せ、常温又は加温下に硬化させて第2の脱離層を形成する方法が挙げられる。
接着剤組成物の乾燥後塗布量は制限されず、通常0.001~6g/m2の範囲であり、好ましくは、無溶剤型では1~2.5g/m2、溶剤型では1~6g/m2の範囲である。
また、接着剤層の厚みは制限されず、通常0.001~5μmの範囲であり、好ましくは、無溶剤型では1~2μm、溶剤型では1~5μmの範囲である。
【0075】
<包装容器>
本発明の包装材は、単独で、袋状、筒状等に加工して用いることができるが、他の包装材と組み合わせて、包装容器として用いることができる。当該包装容器は、少なくとも一部が、前記包装材で形成されているものであるから、前記包装材部分から、主に印刷基材として用いられた第1の基材がリサイクルできる包装容器が得られる。
本発明の包装材及び前記包装容器の種類及び用途は、特に限定されるものではないが、例えば、食品容器、洗剤容器、化粧品容器、医薬品容器に好適に用いることができる。包装容器の形状としては限定されず、内容物に応じた形状に成形することができ、パウチ等に好適に用いられる。
【0076】
<リサイクル基材製造方法>
本発明のリサイクル基材製造方法は、少なくとも、第1の基材、第1の基材を脱離するための第1の脱離層、第2の基材、第2の基材を脱離するための第2の脱離層を備える包装材を、塩基性水溶液に浸漬する工程により、第1の基材及び第2の基材が、包装材より脱離し、第1の基材及び第2の基材をリサイクルすることができる。
【0077】
本発明は、脱離後のそれぞれの基材を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的としているため、それぞれの基材から、それぞれの脱離層をできる限り多く除去した態様が好適である。具体的には、それぞれの脱離層100質量%のうち、面積や膜厚方向において少なくとも50質量%以上が脱離していることが好ましい。より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上が脱離している態様が好ましい。
【0078】
塩基性水溶液に使用する塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好適に用いられるが、これらに限定されない。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~20質量%含むことが好ましく、より好ましくは1~15質量%、特に好ましくは3~10質量%含む。濃度が上記範囲内にあることで、塩基性水溶液は、それぞれの脱離層を溶解又は膨潤により剥離させて、それぞれの基材を脱離させるのに充分な塩基性を保持することができる。
【0079】
塩基性水溶液は、包装材又は包装容器の端部分から浸透してそれぞれの脱離層に接触し、溶解又は膨潤することで、それぞれの基材とそれぞれの脱離層とを脱離する。したがって効率的に脱離工程を進めるために、包装材又は包装容器は、裁断又は粉砕され、塩基性水溶液に浸漬する際に、断面にそれぞれの脱離層が露出している状態であることが好ましい。このような場合、より短時間でそれぞれの基材層を脱離することができる。
【0080】
包装材を浸漬する時の塩基性水溶液の温度は、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~120℃、特に好ましくは30~80℃である。塩基性水溶液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、好ましくは1分間~6時間である。塩基性水溶液の使用量は、包装材の質量に対して、好ましくは100~100万倍量であり、脱離効率を向上させるために、塩基性水溶液の撹拌又は循環等を行うことが好ましい。回転速度は、好ましくは80~250rpm、より好ましくは80~200rpmである。
【0081】
包装材から、それぞれの基材を脱離・回収した後、それぞれの基材を水洗・乾燥する工程を経て、それぞれのリサイクル基材を得ることができる。それぞれの基材の表面における印刷層の除去率は、脱離前の包装材の面積に対して、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0082】
したがって、本発明によれば、好ましくは、包装材又は包装容器を塩基性水溶液に浸漬する工程、包装材又は包装容器からそれぞれの脱離層を溶解若しくは剥離させてそれぞれの基材を脱離する工程、それぞれの基材を回収する工程、それぞれの基材を水洗及び乾燥する工程、を経ることで、それぞれの基材のリサイクル基材を得ることができる。また、得られたリサイクル基材は、押出機等によりペレット状に加工し、再生樹脂として再利用することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0084】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)>
数平均分子量、重量平均分子量は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。測定では、溶媒としてテトロヒドロフランを用い、標準ポリスチレン換算した値を求めた。
【0085】
<酸価の測定>
酸価の測定方法は以下の通りである。まず、共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解し、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0086】
<印刷インキの製造>
[製造例A](印刷インキR1)
PU(荒川化学社製 KL-593:ポリエステルポリエーテル併用系ポリウレタン樹脂、固形分濃度30%、酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶液)30部、PVC(日信化学社製 ソルバインTAO:固形分濃度30%、酢酸エチル溶液)10部、藍顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG7330)10部、及び、NPACとIPAの混合溶剤20部を撹拌混合して、サンドミルを用いて20分間分散処理を行った。その後、NPACとIPAの混合溶剤30部を撹拌混合して印刷インキR1を得た。
【0087】
[製造例B~E](印刷インキR2~R5)
表1に示した原料及び配合比率を使用した以外は、製造例Aと同様の手法により、印刷インキR2~R5を得た。
【0088】
【0089】
以下に、表1中の略称を示す。
・PU:ポリウレタン樹脂溶液(荒川化学社製 KL-593:ポリエステルポリエーテル併用系ポリウレタン樹脂、固形分濃度30%、酢酸エチルとイソプロパノールの混合溶液)
・PVC:塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液(日信化学社製 ソルバインTAO:固形分濃度30%、酢酸エチル溶液)
・NC:ニトロセルロース樹脂溶液(窒素含有量11.5%、Mw50,000のニトロセルロース、固形分濃度30%溶液)
・PAM:ポリアミド樹脂溶液(ダイマー酸由来構造を有するポリアミド樹脂、固形分濃度30%溶液)
・AC:アクリル樹脂溶液(Mw40,000、酸価60mgKOH/gのスチレン-アクリル共重合樹脂の固形分濃度30%溶液)
・藍顔料:トーヨーカラー社製、リオノールブルーFG7330
・NPAC:酢酸ノルマルプロピル
・IPA:イソプロピルアルコール
・硬化剤B:HDI系ポリイソシアネート(旭化成社製 デュラネートP301-75E:酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈した溶液)
【0090】
<アンカーコート層組成物の製造>
[製造例F](アンカーコート層組成物S1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で、窒素ガスを導入しながら、PPA(プロピレングリコールとアジピン酸の重縮合物からなる、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール)147.9部、PPG(ポリプロピレングリコールからなる、数平均分子量2,000のポリエーテルポリオール)14.8部、2,2-ジメチロールプロパン酸(以下、DMPA)25.2部、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)96.8部、酢酸ノルマルプロピル(以下、NPAC)200部を仕込み、90℃で5時間反応させて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(以下、AEA)15.4部、イソプロピルアルコール(以下、IPA)350部を混合したものを、室温で60分間かけて滴下した後、70℃で3時間反応させて、油性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂溶液に、NPACを加えて固形分を調整し、固形分濃度30%、質量平均分子量29,000、Mw/Mn=3.2、酸価35.1mgKOH/gの油性ポリウレタン樹脂P1の溶液を得た。
さらに、ポリウレタン樹脂P1の溶液87部、酢酸エチル(以下、EA)5部、IPA5部、シリカ粒子(水澤化学社製P-73:平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、アンカーコート層組成物S1を得た。
【0091】
<ポリオールの製造>
(合成例1)ポリエステルポリオール(A-1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジエチレングリコール830部、アジピン酸870部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら240℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。次いで不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量2,300、酸価0.7mgKOH/gのポリエステルポリオール(A-1)の溶液を得た。
【0092】
(合成例2)ポリエステルポリオール(A-2)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール279部、ネオペンチルグリコール242部、1,6-ヘキサンジオール189部、テレフタル酸81部、イソフタル酸710部、アジピン酸218部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート2部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に無水トリメリット酸を2.5部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量6,000、酸価14.6mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(A-2)の溶液を得た。
【0093】
(合成例3)ポリエステルポリオール(A-3)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール142部、ジエチレングリコール156部、ネオペンチルグリコール148部、1,6-ヘキサンジオール350部、テレフタル酸437部、イソフタル酸437部、アジピン酸192部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に無水トリメリット酸を0.5部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量7,500、酸価3.1mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(A-3)の溶液を得た。
【0094】
(合成例4)ポリエステルポリオール(A-4)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール95部、ネオペンチルグリコール632部、イソフタル酸498部、アジピン酸474部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート4.0部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量12,000、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオール(A-4)の溶液を得た。
【0095】
【0096】
<ポリイソシアネートの調整>
(調製例1)ポリイソシアネート(C-1)
コロネート2785(ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO含有率9.6%に調整し、ポリイソシアネート(C-1)の溶液を得た。
【0097】
(調製例2)ポリイソシアネート(C-2)
ベスタナートT1890/100(イソホロンジイソシアネートから誘導されるヌレート型ポリイソシアネート、エボニックコーポレーション製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO含有率8.7%に調整し、ポリイソシアネート(C-2)の溶液を得た。
【0098】
(調製例3)ポリイソシアネート(C-3)
タケネートD-110NB(キシリレンジイソシアネート(以下、XDI)から誘導されるトリメチロールプロパンアダクト型ポリイソシアネート、三井化学社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO含有率7.9%に調整し、ポリイソシアネート(C-3)の溶液を得た。
【0099】
(調製例4)ポリイソシアネート(C-4)
コロネートL(トルエンジイソシアネート(以下、TDI)から誘導されるトリメチロールプロパンアダクト型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO含有率8.8%に調整し、ポリイソシアネート(C-4)の溶液を得た。
【0100】
<接着剤組成物の製造>
(接着剤T1~T5及びTT1~TT3)
上記合成例1~4で得られたポリオール溶液、及び上記調整例1~4で得られたポリイソシアネート溶液を、表3に示す割合(質量比)で配合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%の接着剤溶液を調整した。
【0101】
【0102】
(接着剤T6~T17)
上記合成例1~2で得られたポリオール溶液、上記調整例1で得られたポリイソシアネート溶液、リンの酸素酸又はその誘導体、及び平均粒子径が1~10μmである微粒子を、表5に示す割合(質量比)で配合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%の接着剤溶液を調整した。
【0103】
【0104】
表5中の略称を以下に示す。
リン酸:85%リン酸水溶液
リン酸誘導体:フォスファノールRL-310、東邦化学工業株式会社製
水酸化アルミニウム1:BF013、日本軽金属株式会社製、平均粒子径1μm
水酸化アルミニウム2:BX103、日本軽金属株式会社製、平均粒子径5μm
水酸化アルミニウム3:BF083、日本軽金属株式会社製、平均粒子径10μm
アクリル樹脂ビーズ:アートパールJ-7P、根上工業株式会社製、平均粒子径6μm
【0105】
<包装材の製造>
以下の包装材の製造において、アンカーコート層組成物及び印刷インキの印刷には、以下のグラビア版を用いた。印刷速度は70m/分とした。
アンカーコート層組成物S1:レーザー175線/インチ、25μmベタのグラビア版
印刷インキR1~R5:レーザー175線/インチ、25μmベタのグラビア版
また、アンカーコート層及び印刷層の厚みは、いずれも0.8μmとした。第2の脱離層である接着剤層の塗工には、120線/インチ、60μmのグラビア版を用いた。ラミネート速度は200m/分とした。また接着剤層の厚みは、いずれも3μmとした。
【0106】
(使用した蒸着基材について)
・基材a:酸化アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層(30nm)を有するポリエチレンテレフタレート(PET)基材、厚み12μm
・基材b:シリカがアモルファス状に蒸着された蒸着層(30nm)を有するPET基材、厚み12μm
・基材c:酸化アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層(30nm)を有する2軸延伸ポリプロピレン基材(OPP)基材、厚み20μm
・基材d:アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層(50nm)を有するOPP基材、厚み20μm
・基材e:アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層(50nm)を有する無延伸ポリプロピレン基材(CPP)基材、厚み25μm
(以上の基材a~基材eは、第1の基材/第一の脱離層に相当し、第一の脱離層は蒸着層に相当する。)
【0107】
(蒸着層の膜厚)
以下の実施例において、アルミニウム、酸化アルミニウム及びシリカの厚みは、日立ハイテクサイエンス社製の蛍光X線分析装置(機種名:EA6000VX)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法により測定した。
【0108】
[実施例1](包装材L1-1)
印刷インキR1を、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、ザーンカップ#3、25℃で15秒になるように希釈した。
基材aの蒸着面に対し、希釈した印刷インキR1を、グラビア版を備えたグラビア2色印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して、第一の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/印刷層の構成である積層体を得た。
次いで、得られた積層体の印刷層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み25μmのCPPフィルムと貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、第1の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/印刷層/第2の脱離層/第2の基材(CPP)の構成である包装材L1-1を得た。
【0109】
[実施例2~5、比較実施例1~3](包装材L1-2~L1-5、LL1~3)
表4に記載の接着剤を用いた以外は、包装材L1-1と同様の手法により、包装材L1-2~L1-5、LL1~3を得た。
【0110】
[実施例6~9](包装材L1-6~L1-9)
表4に記載の印刷層を用いた以外は、包装材L1-1と同様の手法により、包装材L1-6~L1-9を得た。
【0111】
[実施例10](包装材L2)
基材bを用いた以外は、包装材L1-1と同様の手法により、包装材L2を得た。
【0112】
[実施例11](包装材L3)
基材cを用いた以外は、包装材L1-1と同様の手法により、包装材L3を得た。
【0113】
[実施例12](包装材L4)
基材dの蒸着面に対し、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み25μmのCPPフィルムの蒸着面と貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、第1の基材(OPP)/第1の脱離層(アルミ蒸着)/第2の脱離層/第2の基材(CPP)の構成である包装材L4を得た。
【0114】
[実施例13](包装材L5)
アンカーコート層組成物S1を、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、ザーンカップ#3、25℃で15秒になるように希釈した。
基材dの蒸着面に対し、希釈したアンカーコート層組成物S1を、グラビア版を備えたグラビア2色印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して、第1の基材(OPP)/第1の脱離層(アルミ蒸着)/アンカーコート層の構成である積層体を得た。次いで、得られた積層体のアンカーコート層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み25μmのCPPフィルムと貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、第1の基材(OPP)/第1の脱離層(アルミ蒸着)/アンカーコート層/第2の脱離層/第2の基材(CPP)の構成である包装材L5を得た。
【0115】
[実施例14](包装材L6)
OPP基材(第2の基材)に対し、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、基材eの蒸着面と貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、第1の基材(CPP)/第1の脱離層(アルミ蒸着)/第2の脱離層/第2の基材(OPP)の構成である包装材L6を得た。
【0116】
[実施例15](包装材L7)
印刷インキR1を、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、ザーンカップ#3、25℃で15秒になるように希釈した。
基材dの蒸着面に対し、希釈した印刷インキR1を、グラビア版を備えたグラビア2色印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して、第1の基材(OPP)/第1の脱離層(アルミ蒸着)/印刷層の構成である積層体を得た。次いで、得られた積層体のOPP基材面に対して、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み25μmのCPPフィルムと貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、印刷層/第1の脱離層(アルミ蒸着)/第1の基材(OPP)/第2の脱離層/第2の基材(CPP)の構成である包装材L7を得た。
【0117】
[実施例16](包装材L8)
印刷インキR1を、EA/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、ザーンカップ#3、25℃で15秒になるように希釈した。
基材aの蒸着面に対し、希釈した印刷インキR1を、グラビア版を備えたグラビア2色印刷機を用いて印刷し、50℃で乾燥して、第1の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/印刷層の構成である積層体を得た。次いで、得られた積層体の印刷層上に、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み15μmの両処理NYフィルムの片面と貼り合せて、第一の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/印刷層/接着剤層/第3の基材(NY)の構成である積層体を得た。
さらに、得られた積層体のNY面に対して、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み25μmのCPPフィルムと貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、第1の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/印刷層/接着剤層/第3の基材(NY)/第2の脱離層/第2の基材(CPP)の構成である包装材L8を得た。
【0118】
[実施例17](包装材L9)
印刷層と第3の基材との間の接着剤にTT2を使用した以外は、包装材L8と同様の手法により、包装材L9を得た。
【0119】
[実施例18](包装材L10)
基材aの蒸着面に対し、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み15μmの両処理NYフィルムの片面と貼り合せて、第1の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/接着剤/第3の基材(NY)の構成である積層体を得た。
さらに、得られた積層体のNY面に対して、ドライラミネート機を用いて接着剤T1を乾燥後塗布量が3g/m2になるように塗布・乾燥した後、厚み25μmのCPPフィルムと貼り合せた。得られた積層体を40℃で4日間保温し、第1の基材(PET)/第1の脱離層(アルミナ蒸着)/接着剤層/第3の基材(NY)/第2の脱離層/第2の基材(CPP)の構成である包装材L10を得た。
【0120】
[実施例19](包装材L11)
第1の脱離層と第3の基材との間の接着剤にTT2を使用した以外は、包装材L10と同様の手法により、包装材L11を得た。
【0121】
[実施例20~31](包装材L1-10~L1-21)
表6に記載の接着剤を用いた以外は、包装材L1-1と同様の手法により、包装材L1-10~L1-21を得た。
【0122】
<包装材の評価1>
得られた包装材L1-1~L1-9、L2~L11、LL1~3について、以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0123】
(透明基材の収率1)
得られた包装材を1cm×1cmの大きさに切り出したサンプル100枚と、水酸化ナトリウムの固形分濃度2%水溶液800gを1Lフラスコに入れ、70℃、回転速度200rpmで4時間撹拌した。サンプルを水洗・乾燥した後、目視で印刷層が80%以上除去されている透明なフィルムを回収し、枚数を数えた。透明基材の収率は、以下の計算式で求めた。
印刷層がない、又はアルミ蒸着でない等、目視で脱離判断が難しい包装材(L10、11)及び3層構成の第2基材と第3基材の間については、フィルム両面について、FT-IRを用いてフィルムの吸収ピーク違いによる脱離判断を行った。
収率=回収できた透明フィルムの枚数/元の包装材を構成するプラスチック基材の枚数
収率について、以下の基準で評価した。○、△は実用上問題がない範囲である。
○:透明基材の収率が80%以上(良好)
△:透明基材の収率が60%以上、80%未満(使用可能)
×:透明基材の収率が60%未満(使用不可)
【0124】
(脱離後基材の印刷層・接着剤層の除去率1)
得られた包装材を1cm×1cmの大きさに切り出したサンプル100枚と、水酸化ナトリウムの固形分濃度2%水溶液800gを1Lフラスコに入れ、70℃、回転速度200rpmで4時間撹拌した。サンプルを水洗・乾燥した後、印刷層の除去率については目視で確認した。得られたサンプルから透明なフィルムを回収し、フィルムの表裏5ヶ所について、FT-IRを用いて接着剤組成物の吸収ピークの有無を確認し、接着剤組成物の除去率を確認した。印刷層及び接着剤層の除去率について、以下の基準で評価した。○、△は実用上問題がない範囲である。
○:印刷層及び接着剤層の除去率が80%以上(良好)
△:印刷層及び接着剤層の除去率が60%以上、80%未満(使用可能)
×:印刷層及び接着剤層の除去率が60%未満(使用不可)
【0125】
(基材密着性: (1)PET基材/CPP基材構成の場合)
包装材L1-1~L1-9、L-2、LL1~3から15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、第1の基材と第2の基材との間の剥離強度(ラミネート強度、N/15mm)を測定した。基材密着性について、以下の基準で評価した。○、△は実用上問題がない範囲である。
○:ラミネート強度が2.0N/15mm以上
△:ラミネート強度が1.0N/15mm以上、2.0N/15mm未満
×:ラミネート強度が1.0N/15mm未満
【0126】
(基材密着性: (2)OPP基材/CPP基材構成の場合)
包装材L3~L7から15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、第1の基材と第2の基材との間の剥離強度(ラミネート強度、N/15mm)を測定した。基材密着性について、以下の基準で評価した。○、△は実用上問題がない範囲である。
○:ラミネート強度が1.0N/15mm以上
△:ラミネート強度が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満
×:ラミネート強度が0.5N/15mm未満
【0127】
(基材密着性: (3)PET基材/NY基材/CPP基材構成の場合)
包装材L8~L11から15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、第1の基材と第3の基材との間、第3の基材と第2の基材との間の剥離強度(ラミネート強度、N/15mm)を測定した。基材密着性について、以下の基準で評価した。○、△は実用上問題がない範囲である。
《第1の基材と第3の基材との間の剥離強度(表4中、基材密着性の左側)》
○:ラミネート強度が2.0N/15mm以上
△:ラミネート強度が1.0N/15mm以上2.0N/15mm未満
×:ラミネート強度が1.0N/15mm未満
《第3の基材と第2の基材との間の剥離強度(表4中、基材密着性の右側)》
○:ラミネート強度が5.0N/15mm以上
△:ラミネート強度が3.0N/15mm以上5.0N/15mm未満
×:ラミネート強度が3.0N/15mm未満
【0128】
(ラミネート外観)
得られた包装材の外観について、下記基準で目視評価を行なった。
〇:ハジキやムラがなく均一塗工できている(良好)
△:ハジキがないが、僅かなムラがある(使用可能)
×:ハジキやムラがある(使用不可)
【0129】
【0130】
以下に、表4中の略称を示す。
・第1の基材/第1の脱離層の略称
PET/アルミナ:アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み12μm(基材a)
PET/シリカ:シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み12μm(基材b)
OPP/アルミナ:アルミナ蒸着2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm(基材c)
OPP/アルミ:アルミ蒸着2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚み20μm(基材d)
CPP/アルミ:アルミニウムがアモルファス状に蒸着された蒸着層を有する無延伸ポリプロピレン基材、厚み25μm(基材e)
・第2の基材の略称
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み25μm
NY:両処理ナイロンフィルム、厚み15μm
【0131】
<包装材の評価2>
得られた包装材L1-1、L1-10~L1-21について、以下の評価を行った。結果を表6に示す。
【0132】
(透明基材の収率2)
得られた包装材を2cm×2cmの大きさに切り出したサンプル100枚と、水酸化ナトリウムの固形分濃度2%水溶液800gを1Lフラスコに入れ、70℃、回転速度100rpmで4時間撹拌した。サンプルを水洗・乾燥した後、目視で印刷層が80%以上除去されている透明なフィルムを回収し、枚数を数えた。収率は、以下の計算式で求めた。
収率=回収できた透明フィルムの枚数/元の包装材を構成するプラスチック基材枚数
収率について、以下の基準で評価した。◎、○、△は実用上問題がない範囲である。
◎:透明基材の収率が90%以上(非常に良好)
○:透明基材の収率が80%以上、90%未満(良好)
△:透明基材の収率が60%以上、80%未満(使用可能)
×:透明基材の収率が60%未満(使用不可)
【0133】
(脱離後基材の印刷層・接着剤層の除去率2)
得られた包装材を2cm×2cmの大きさに切り出したサンプル100枚と、水酸化ナトリウムの固形分濃度2%水溶液800gを1Lフラスコに入れ、70℃、回転速度100rpmで4時間撹拌した。サンプルを水洗・乾燥した後、印刷層の除去率については目視で確認した。得られたサンプルから透明なフィルムを回収し、フィルムの表裏5ヶ所について、FT-IRを用いて接着剤組成物の吸収ピークの有無を確認し、接着剤組成物の除去率を確認した。印刷層及び接着剤層の除去率について、以下の基準で評価した。◎、○、△は実用上問題がない範囲である。
◎:印刷層及び接着剤層の除去率が90%以上(非常に良好)
○:印刷層及び接着剤層の除去率が80%以上、90%未満(良好)
△:印刷層及び接着剤層の除去率が60%以上、80%未満(使用可能)
×:印刷層及び接着剤層の除去率が60%未満(使用不可)
【0134】
(基材密着性: (1)PET基材/CPP基材構成の場合)
<包装材の評価1>の(基材密着性: (1)PET基材/CPP基材構成の場合)と同様にして、第1の基材と第2の基材との間の剥離強度を測定し、評価を行った。
【0135】
(ラミネート外観)
<包装材の評価1>の(ラミネート外観)と同様にして、評価を行った。
【0136】
【0137】
表4及び表6の評価結果によれば、本発明の包装材は、第1の脱離層と第2の脱離層とを有することで、基材密着性及びラミネート外観を保持したまま、塩基性水溶液中での印刷層や接着剤層の脱離性が向上し、第1の基材及び第2の基材のリサイクル性を高めることができる。本発明の包装材及び該包装材を用いた包装容器は、プラスチックリサイクルに適した包装材及び包装容器として有用である。