(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】接着性樹脂組成物、該組成物を用いたシート、蓋材、部材セット及び容器
(51)【国際特許分類】
C09J 131/04 20060101AFI20220106BHJP
C09J 123/06 20060101ALI20220106BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220106BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20220106BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C09J131/04
C09J123/06
C09J11/08
C09J7/30
B65D77/20 K
(21)【出願番号】P 2020106703
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2020-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】赤木 太亮
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-147672(JP,A)
【文献】特開2016-148003(JP,A)
【文献】特表平6-509528(JP,A)
【文献】特表平8-511744(JP,A)
【文献】特開2019-199497(JP,A)
【文献】特開2012-12033(JP,A)
【文献】特開昭59-86652(JP,A)
【文献】国際公開第2009/098976(WO,A1)
【文献】特開2020-40398(JP,A)
【文献】特開平3-41179(JP,A)
【文献】特開平11-35911(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
7/00- 7/50
9/00-201/10
B65D67/00- 79/02
81/18- 81/30
81/38
85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニル含有率が5~15質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)40~75質量%、メルトマスフローレイトが1~20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(B)10~45質量%、及び粘着付与樹脂(C)15~30質量%を含有する、接着性樹脂組成物
であって、前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有率が、20~30質量%である、接着性樹脂組成物。
【請求項2】
メルトマスフローレイトが1~20g/10分である、請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の示差走査型熱量計により測定した融点が80~120℃である、請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の示差走査型熱量計により測定した融点が90~150℃である、請求項1~3いずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂(C)の示差走査型熱量計により測定した融点が55~100℃である、請求項1~4いずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項6】
前記粘着付与樹脂(C)が、脂環族炭化水素樹脂及びテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5いずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項7】
基材上に、請求項1~
6いずれか1項に記載の接着性樹脂組成物の塗膜を備えるシート。
【請求項8】
請求項
7に記載のシートにより形成された蓋材。
【請求項9】
容器本体と、請求項
8に記載の蓋材とからなる、開封可能な容器用部材セット。
【請求項10】
容器本体の開口部が、請求項
8に記載の蓋材により密封された、開封可能な容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜性、易開封性、耐ボイル性に優れる接着性樹脂組成物、該接着性樹脂組成物を用いたシート、蓋材、密封容器用部材セット及び容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品包装や工業用包装として、耐熱性や断熱保温性に優れる観点から、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器が使用されている。そして、これらの容器に用いられる蓋材としては、適度なヒートシール強度を持ち、且つ易剥離性を有するフィルムが使用されている。
【0003】
このようなポリプロピレン容器やポリスチレン容器の蓋材に用いられるフィルムとして、例えば特許文献1には、酢酸ビニル含有率が3~15重量%でありメルトマスフローレイトが10~40g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体、粘着付与剤、及び低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物からなる接着剤層を備える易剥離性フィルムが開示されている。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の易剥離性フィルムは、接着剤層が低密度ポリエチレンを含むために、耐熱性に劣り、ボイル・レトルト処理ができないという課題がある。
【0006】
よって本発明の課題は、成膜性に優れるだけでなく、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に対して易開封性に優れ、且つ耐ボイル性に優れる接着性樹脂組成物、並びにそれを用いたシート、蓋材、部材セット及び容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定の酢酸ビニル含有率を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、特定のメルトマスフローレイトを有する直鎖状低密度ポリエチレン(B)、及び粘着付与樹脂(C)を所定の配合比で組み合わせることで、前記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明は、酢酸ビニル含有率が5~15質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)40~75質量%、メルトマスフローレイトが1~20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(B)10~45質量%、及び粘着付与樹脂(C)15~30質量%を含有する、接着性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明は、メルトマスフローレイトが1~20g/10分である、上記接着性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明は、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の示差走査型熱量計により測定した融点が80~120℃である、上記接着性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明は、前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の示差走査型熱量計により測定した融点が90~150℃である、上記接着性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明は、前記粘着付与樹脂(C)の示差走査型熱量計により測定した融点が55~100℃である、上記接着性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明は、前記粘着付与樹脂(C)が、脂環族炭化水素樹脂及びテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記接着性樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は、前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有率が、20~30質量%である、上記接着性樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明は、基材上に、上記接着性樹脂組成物の塗膜を備えるシートに関する。
【0016】
本発明は、上記シートにより形成された蓋材に関する。
【0017】
本発明は、容器本体と、上記蓋材とからなる、開封可能な容器用部材セットに関する。
【0018】
本発明は、容器本体の開口部が、上記蓋材により密封された、開封可能な容器に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、成膜性に優れるだけでなく、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に対して易開封性に優れ、且つ耐ボイル性に優れる接着性樹脂組成物、並びにそれを用いたシート、蓋材、部材セット及び容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の接着性樹脂組成物は、酢酸ビニル含有率が5~15質量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)40~75質量%、メルトマスフローレイトが1~20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(B)10~45質量%、及び粘着付与樹脂(C)15~30質量%を含有することを特徴とする。
特定の酢酸ビニル含有率を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、特定のメルトマスフローレイトを有する直鎖状低密度ポリエチレン(B)、及び粘着付与樹脂(C)を所定の配合比で組み合わせることで、易開封性と耐熱性に優れボイル処理が可能な接着性樹脂組成物を提供することが可能となる。
以下に、本発明について、詳細に説明する。
【0021】
<エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(A)>
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、エチレンと酢酸ビニルとを共重合した熱可塑性樹脂であり、本発明で用いられるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、酢酸ビニル含有率が5~15質量%であり、上記を満たすものであれば特に制限なく用いることができる。このようなエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いることで、押出しラミネート加工性、低温シール性、インフレーション加工適性に優れた接着性樹脂組成物となる。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の含有量は、接着性樹脂組成物の全量を基準として、40~75質量%であることが重要であり、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の含有量が40質量%以上であると、開封強度を損なうことなく、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に十分に接着する。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の含有量が75質量%以下であると、塗加工適性と接着性とのバランスに優れるだけでなく、容器のフランジにおける樹脂残りや糸曳きが発生しない。
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の含有量は、易開封性、剥離感の観点から好ましくは45~55質量%である。
【0023】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の示差走査型熱量計により測定した融点は、好ましくは80~120℃であり、より好ましくは90~110℃である。上記の範囲内であると、直鎖状低密度ポリエチレン(B)との相溶性が向上し、塗加工適性が向上するだけでなく、開封強度を損なうことなく十分に接着できる点で好ましい。
【0024】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)のメルトマスフローレイト(以下、MFR)は、好ましくは0.5~50g/10分であり、より好ましくは0.5~20g/10分であり、特に好ましくは0.5~10g/10分である。なお、本明細書におけるメルトマスフローレイトとは、JIS.K7210に準拠して測定した190℃、21.168Nにおける値である。
【0025】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の密度は、好ましくは0.90~0.95であり、より好ましくは0.92~0.94である。なお、本明細書における密度とは、JIS.K7112にピクノメーター法に準拠して測定した値である。
【0026】
<直鎖状低密度ポリエチレン(B)>
直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、繰り返し単位のエチレンと若干量のα‐オレフィンを共重合させた、熱可塑性樹脂であり、本発明で用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、メルトマスフローレイトが1~20g/10分であり、上記を満たすものであれば特に制限なく用いることができる。このような直鎖状低密度ポリエチレン(B)を用いることで、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に対する接着性が高まり、耐ボイル性に優れた接着性樹脂組成物となる。直鎖状低密度ポリエチレンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有率は、接着性樹脂組成物の全量を基準として、10~45質量%であることが重要であり、直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が10質量%以上であると、接着強度の維持性に優れたものとなる。直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が45質量%以下であると、溶融膜割れが発生しにくく、押出しラミネート加工性に優れる。
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量は、接着性や高温環境下での接着強度維持性、耐ボイル性の観点から、好ましくは15~40質量%であり、より好ましくは20~30質量%である。
【0028】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の示差走査型熱量計により測定した融点は、好ましくは90~150℃であり、より好ましくは100~130℃である。上記の範囲内であると、適度な接着強度を発現し、低温シール性がより優れたものとなるため好ましい。
【0029】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の密度は、好ましくは0.85~0.95であり、より好ましくは0.90~0.95である。
【0030】
<粘着付与樹脂(C)>
本発明における粘着付与樹脂(C)は特に制限されず、シーラント樹脂分野において公知の粘着付与樹脂から適宜選択することができる。
このような粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類が挙げられ、ポリテルペン樹脂としては、α-ピネン、β-ピネンなどの単独重合又は共重合体、及びそれらを水添した水添テルペン樹脂を使用することができる。
中でも、粘着付与樹脂(C)は、脂環族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂及びテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは脂環族炭化水素樹脂及びテルペン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
これらの粘着付与樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
粘着付与樹脂(C)の含有量は、接着性樹脂組成物の全量を基準として、15~30質量%であることが重要である。粘着付与樹脂(C)の含有量が10質量%以上であると、開封強度を損なうことなく、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に十分に接着することができる。粘着付与樹脂(C)の含有量が30質量%以下であると、溶融膜割れが発生しにくく、押出しラミネート加工性に優れる。
粘着付与樹脂(C)の含有量は、成膜性、易開封性、剥離感の観点から、好ましくは20~30質量%である。
【0032】
粘着付与樹脂(C)の軟化点は、ヒートシール時の接着性、即ち易開封性の観点から、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100~120℃である。なお、本明細書における軟化点とは、JIS.K 6863に準拠して求めることができる。
【0033】
粘着付与樹脂(C)の示差走査型熱量計により測定した融点は、好ましくは55~100℃であり、より好ましくは60~80℃である。
【0034】
<接着性樹脂組成物>
本発明の接着性樹脂組成物は、前述のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)及び粘着付与樹脂(C)を公知の方法で混合し、製造することができる。このような製造法としては例えば、各成分をヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーなどの混合装置に投入し、ブレンド時間5~20分間で混合した後、押出機に入れ、加熱混練した後、押し出す方法が挙げられる。押出工程は、通常150~200℃で行われる。押出物は通常ペレット形状とされ、後の工程で利用される。押出機としては、二軸押出機が好適に用いられるが、これに限られるものではない。
【0035】
本発明の接着性樹脂組成物における、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)及び粘着付与樹脂(C)の合計量は、接着性樹脂組成物を基準として、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である。
【0036】
接着性樹脂組成物のメルトマスフローレイトは、好ましくは1~20g/10分の範囲であり、より好ましくは1~15g/10分の範囲である。上記範囲であると、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に対して接着性に優れる点で好ましい。
【0037】
本発明の接着性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)及び粘着付与樹脂(C)以外の樹脂や添加剤を配合してもよい。
【0038】
さらに含有してもよい樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂及びその酸化物やマレイン酸変性物;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体のようなエチレン-不飽和モノカルボン酸共重合体及びその金属塩;高密度ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、酸化ワックス、マレイン酸変性ワックスのようなワックス類;が挙げられる。このような樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
さらに含有してもよい添加剤は、熱劣化、熱分解、ブロッキング等を防止する目的、及び、フィルム加工、押出ラミネート加工等の加工適正を確保する目的で用いることができる。このような添加剤としては、例えば、エルカ酸アミド等の有機滑剤、炭酸カルシウム等の無機滑剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、その他ブロッキング防止剤、帯電防止剤、充填剤、防曇剤、非晶質アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素が挙げられる。
【0040】
これら樹脂及び添加剤は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)及び粘着付与樹脂(C)を混合する際に配合してもよいし、予めエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)又は粘着付与樹脂(C)のいずれかに配合してもよい。
【0041】
<シート>
次に、基材上に、本発明の接着性樹脂組成物の塗膜(以下、接着剤層ともいう)が配置されたシートについて説明する。接着性樹脂組成物の基材への配置方法としては、特に制限されず、例えば、前述のようにペレット化された接着性樹脂組成物をインフレーション法又はキャスト法などによりフィルム化し、得られたフィルムと基材と積層する方法、又は、混練された接着性樹脂組成物を直接基材に被覆する方法が挙げられる。フィルムと基材とは、別の接着剤層を介して積層されていてもよい。
【0042】
基材としては、長尺及びカットされた短尺のフィルム、シートを包含し、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルムといった単層フィルムのほか、樹脂ラミネートされたような複数の層を有する積層物であってもよい。例えば、ポリエチレン系樹脂を予めラミネートされている基材を用いる場合、接着性樹脂組成物をダイレクトに押出しラミネートしてシートを製造することができる。また、接着性樹脂組成物を、ポリエチレンやポリプロピレン等との共押出しで多層フィルムとし、ドライラミネーション又はサンドラミネーションにより、基材フィルムと積層することでシートを得ることができる。
基材と接着性樹脂組成物の被膜との接着性を向上させるために、基材表面が、火炎処理、オゾン処理、コロナ放電処理又はアンカーコート剤のような処理を行われていてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物の被膜の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
【0043】
本発明のシートは、後述の蓋材として用いることができるだけでなく、シーラントフィルムとして接着性樹脂組成物の被膜を内面としてシールする製袋品にも好適に使用できる。
【0044】
<蓋材>
基材上に接着性樹脂組成物の塗膜が積層された本発明のシートは、密封対象である容器本体の開口形状に合わせて裁断され蓋材として好適に用いられる。
本発明のシートを蓋材として用いる場合、基材としては種々の基材を用いることができる。使用される基材としては、例えば、紙、アルミニウム、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン又はシリカ蒸着ポリエステルが挙げられる。このような基材は、単層である必要はなく、二層以上の積層物であっても良い。
また、本発明のシートにより蓋材を形成する場合、好ましい基材としては、例えば、厚み5~20μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PET)と、厚み5~30μmのポリエチレンとの積層フィルムが挙げられる。
また、蓋材としては、前記積層フィルムのポリエチレン面に、本発明の接着性樹脂組成物から形成される厚み5~40μmの被膜を積層したものが好ましい。
【0045】
<容器用部材セット、容器>
容器本体と上記蓋材とを組み合わせたものが容器用部材セットであり、容器本体の開口部が、上記蓋材により密封されたものが容器であり、本発明における容器は開封可能なものである。上記容器は、特に制限されないが、好ましくはプラスチック樹脂製の容器、若しくは内面がプラスチック樹脂で覆われた容器である。なかでも、本発明の接着性樹脂組成物は、ポリプロピレン容器やポリスチレン容器に対する易開封性及び耐ボイル性に優れるため、ポリプロピレン樹脂製若しくはポリスチレン樹脂製の容器本体、又は、内面がポリプロピレン樹脂若しくはポリスチレン樹脂で覆われた容器本体に対して、好適に用いられる。
すなわち、本発明の容器として好ましくは、ポリプロピレン樹脂製若しくはポリスチレン樹脂製の容器本体、又は、内面がポリプロピレン樹脂若しくはポリスチレン樹脂で覆われた容器本体の開口部が、上記蓋材により密封されたものである。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0047】
[メルトマスフローレイト(MFR)]
MFRは、JIS.K7210に準拠し、メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)の内径9.55mm、長さ162mmのシリンダにサンプルを充填し、190℃で溶融した後、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーを使用して均等に荷重をかけ、シリンダの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより単位時間あたりに押出される樹脂量(g/10分)から求めた。
【0048】
<接着性樹脂組成物の製造方法>
[実施例1~9及び比較例1~5]
(接着性樹脂組成物(S-1)~(S-14)の製造)
表1に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)、粘着付与樹脂(C)及び添加剤を、ヘンシェルミキサーで5分間プリブレンドした。ホッパーにプリブレンド物を投入し、スクリューフィーダーを用いて下記押出機に供給し、ペレット状の接着性樹脂組成物(S-1)~(S-14)を製造した。
≪押出機条件≫
押出機:アイ・ケー・ジー社製同方向回転二軸押出機PMT32-40.5
バレル温度:160℃(供給口150℃)
スクリュー回転速度:200rpm
供給速度:10kg/hr
【0049】
<接着性樹脂組成物の評価>
得られた接着性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[成膜性]
接着性樹脂組成物の成膜性は、PET12μm/ポリエチレン(PE)25μm基材のPE面に、下記加工条件において、接着剤層の厚みが20μmとなるように、樹脂温度を200~260℃のいずれかに調整した場合における塗工の可否と、得られた塗工物から膜厚計を用いて無作為に選択した10カ所の被膜厚みから、下記基準で評価した。
≪加工条件≫
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーターダイ直下樹脂温度:200~260℃(接着性樹脂組成物のMFR等により適宜調整した)
加工速度:30m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20℃
A:塗工可能、かつ、10カ所の被膜厚みが20±5μmの範囲内:良好
C:膜割れ若しくは膜切れのいずれかが発生し塗工不可、又は、塗工可能だが10カ所の被膜厚みが20±5μmの範囲外:不良
【0051】
[シート(蓋材)の作製方法]
得られた接着性樹脂組成物を、下記加工条件において、押出しラミネーターを用いて、PET12μm/PE25μmの基材のPE面に積層してシートを作製した。接着剤層の厚みは20μmであった。
≪加工条件≫
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーターダイ直下樹脂温度:200℃~250℃(接着性樹脂組成物のMFR等により適宜調整した)
加工速度:30m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20℃
【0052】
[易開封性]
得られた積層シート(蓋材)を90mm×90mmのサイズに裁断後、ゲージ圧0.3MPa、160℃、1秒間にて、ポリプロピレン容器(71mmΦ)及びポリスチレン容器(71mmΦ)それぞれに、接着性樹脂組成物の被膜面を熱接着し、密封を行なった。温度23℃湿度65%の恒温恒湿室に24時間放置し、同恒温恒湿室にて90°角剥離、引張速度200mm/分の条件で剥離強度の測定を行った。剥離強度の最大値を開封強度とし、易開封性を下記基準で評価した。
A:剥離強度の最大値が、10N以上15N未満:良好
B:剥離強度の最大値が、5N以上 10N未満:使用可能
C:剥離強度の最大値が、5N未満:不良
【0053】
[耐ボイル性]
ポリプロピレン容器(71mmΦ)及びポリスチレン容器(71mmΦ)それぞれに、40℃の水を充填し、該容器に、得られた積層シート(蓋材)の接着性樹脂組成物の被膜面を、ゲージ圧0.3MPa、180℃、1秒間にて熱接着し、密封を行った。得られた密封容器を90℃熱湯水中に浸漬し、30分後の破袋の有無を目視で観察し、下記基準で評価した。
A:破袋しない(耐ボイル性あり):良好
C:破袋する(耐ボイル性なし):不良
【0054】
【0055】
表1の略称を以下に示す。
A1:エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率12%)、密度0.931g/cm3、DSC融点95℃、MFR0.8g/10分
A2:エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率6%)、密度0.925g/cm3、DSC融点98℃、MFR8.5g/10分
【0056】
B1:直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.922g/cm3、DSC融点106℃、MFR15.0g/10分
B2:直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.936g/cm3、DSC融点124℃、MFR2.0g/10分
【0057】
C1:部分水添脂環族炭化水素樹脂、軟化点110℃、DSC融点71℃
C2:部分水添脂環族炭化水素樹脂、軟化点105℃、DSC融点63℃
C3:部分水添脂環族炭化水素樹脂、軟化点136℃、DSC融点92℃
C4:部分水添脂環族炭化水素樹脂、軟化点115℃、DSC融点69℃
C5:完全水添脂環族炭化水素樹脂、軟化点125℃、DSC融点77℃
【0058】
D1:低密度ポリエチレン、密度0.915g/cm3、DSC融点98℃、MFR145g/10分
【0059】
スリップ剤:エルカ酸アミド、DSC融点80℃
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ブロッキング防止剤:非晶質アルミノケイ酸塩
【0060】
表1の結果により、本発明の接着性樹脂組成物は、優れた成膜性と易開封性、耐ボイル性を示した。特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)45~70質量%、直鎖状低密度ポリエチレン(B)15~40質量%、及び粘着付与樹脂(C)15~30質量%であると成膜性に優れていた。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)45~70質量%、直鎖状低密度ポリエチレン(B)15~45質量%、及び粘着付与樹脂(C)15~30質量%であると、成膜性に優れ、かつポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチック容器に対して易開封性、剥離感及び耐ボイル性に優れていた。よって、特定の樹脂(A)~(C)を特定比率で含む本願発明の接着性樹脂組成物は、ポリプロピレン、ポリスチレンからなる容器向け蓋材用として最適である。