(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】体液の採取診断装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20220106BHJP
G01N 33/493 20060101ALI20220106BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220106BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N33/493 B
G01N33/50 R
G01N1/00 101F
(21)【出願番号】P 2018543474
(86)(22)【出願日】2016-11-06
(86)【国際出願番号】 IL2016051199
(87)【国際公開番号】W WO2017081675
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-10-31
(32)【優先日】2015-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】518159441
【氏名又は名称】ノヴァメッド リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】カッツ、エミーユ
(72)【発明者】
【氏名】ポラト、ガディ
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-513897(JP,A)
【文献】特表2015-503762(JP,A)
【文献】特表2009-524063(JP,A)
【文献】特表2007-511771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0206829(US,A1)
【文献】特表2002-536641(JP,A)
【文献】国際公開第2015/164113(WO,A1)
【文献】特表2009-513967(JP,A)
【文献】特表2012-508892(JP,A)
【文献】特開平05-249122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を診断するための装置であって、前記装置は、
a)上部が下部に向かって垂直にスライド可能である、上部及び下部と、
b)流体を採取するのに適する上方主分室と、
c)一時保存分室と、
d)1以上の診断ストリップを有する下方診断分室と、
e)診断段階が開始される前において前記一時保存分室と前記下方診断分室の間の流体接続を塞ぐのに適し、かつ、診断段階が開始されたときは前記一時保存分室と前記上方主分室の間の流体接続を塞ぐのに適する弁と、
f)前記体液が前記診断ストリップと接触した後で前記下方診断分室からの前記体液を収容するための底部の分室と
を有する装置。
【請求項2】
前記体液は尿である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記下方診断分室の壁は少なくとも部分的に透明であり、これにより前記診断ストリップ内における色の変化の目視検査を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記診断ストリップは1以上の区画を有し、各々の前記区画はそれぞれ異なる物質の層で被覆され、かつ、各々の前記層は前記体液の特定物質または組成に対してそれぞれ異なる反応を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記体液の供与量は、前記一時保存分室の容積によって事前決定されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記下方診断分室における前記診断ストリップは水平である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
実質的に円筒形状である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記下方診断分室の一部が部分的に平坦であり、スキャナによる前記診断ストリップの読み取りを容易にする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記一時保存分室は、前記診断ストリップに作用するのに十分な比較的少量の液体を保持するのに適している、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記下方診断分室と前記底部の分室の間の流量が、前記下方診断分室と前記底部の分室の間にある流量調整弁によって調節されており、前記流量調整弁は、開口、通路、フィルタ、スポンジおよび浮きから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記流量調整弁は小径の開口または通路である、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記流量調整弁は、前記診断ストリップの全長に液体が流れる時間を7秒を超えない期間に制限するのに適している、請求項
10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して体液の診断用の医療装置及び検査装置に関する。より具体的には、本発明は、主に、尿その他の体液を診断するための2つの分室を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血液、尿、汗、水分、排泄物、栄養分等の様々な体液は、健康上の問題を診断し決定するための、あるいは重大な健康上の問題に発展するかもしれない症候を早期に発見するための貴重な資源である。本発明の装置が尿の採取と診断に特に有用であるため、以下の説明は特定の目的に焦点を置いているが、それを本発明に対する限定と解釈するべきではない。なぜなら、装置の簡単な調節により、あるいはそのような調節を要さずに、他の体液を試験するために同じ装置を同様に使用し得るからである。
【0003】
現在使用されている尿診断装置では、患者は、典型的には採尿カップ内に排尿し、カップを適切な蓋で覆い、検査診断を受けるために医療スタッフに提出する。検査室では一般に、検査室助手が、典型的には蓋を開け、1以上の専用の診断試薬スティックを尿検体に浸す。各診断スティックは、尿の特定の組成に反応する1以上の特定物質層によって少なくとも部分的に覆われている。典型的な一例では、尿の特定の組成に基づいて物質層が変色する。類似の他のケースでは、尿の様々な特徴、物質または組成を個別に診断するために、1本のスティックが複数の診断層を有する。そうして得られた結果が、患者の健康状態を決定するための医師用の予備診断ツールとして利用される。
【0004】
多くの場合、「朝一番の尿」が尿診断に好まれて要求されるので、その目的のために患者は、自宅から医療機関まで尿入りのカップを持って行くか、あるいは医療機関でカップに排尿しなければならない。そして、実際の診断手順が排尿時から数時間以内に行われなければならない。さらに、診断スティックの尿への暴露時から検査時までの最長期間も2~3分を超えてはならない。これらの手順を行うために、検査室助手または看護師は、カップの蓋を開けて、不衛生で不快な方法、即ち、開けたカップの中に診断スティックをちょっと浸して出すという方法で、作業しなければならない。
【0005】
また他の先行技術の装置では、診断前にカップに試験管付きの専用蓋をして、カップ内の尿から試験管内に検体を吸い取る。その後、試験管内の尿またはその一部を診断スティック上に流すか、またはスティックを液体に浸して、上記と同様の方法で検査結果を得る。
【0006】
既存の尿診断装置及び手順には、以下のようないくつかの内在的な問題がある。
i.診断カップの手順は、医療スタッフや公衆を危険に曝す衛生上の汚染や尿の汚染を伴う。クリニックやラボのスタッフが、手で使用するストリップ(紙片)を口の開いた採尿カップにちょっと浸して出すという作業のない手順と装置の提供が望ましい。
ii.上述のように、診断スティックを尿に浸している状態の、スティックの検査を完了させるまでの期間は短く、2~3分を超えてはならない。この期間を延長することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の尿診断用装置は、作業者にとって概して使い勝手が悪く、かつ不快なものである。したがって、低コスト、かつ、操作が(自宅その他の場所における)患者と医療助手の両方にとって簡単で、スタッフによって自動的に運転される装置を提供することが強く望まれる。
【0008】
本発明の目的は、先行技術の装置に比べてより衛生的な条件で作動する装置を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、診断スティックを尿に浸していられる、スティックの検査を完了させるまでの短い期間を延長することである。
【0010】
本発明の他の目的と利点は、説明が進むにつれて明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、体液を診断するための、組み合わせた2つの分室を有する装置に関し、該装置は、(a)体液を採取し、かつ保存するための上方分室と、(b)診断段階において体液を診断するための、診断ストリップを有する下方診断分室と、(c)該診断段階の直前まで適切な弁によって封鎖が維持される、該上方分室と該下方分室の間の底壁の開口と、(d)該開口の該封鎖を解放するための機構であって、これにより体液の該下方分室への流れを可能にし、かつ、該診断ストリップと接触させてそれに応じた作用を診断ストリップにもたらす機構とを有する。
【0012】
本発明のある実施態様において、体液は尿である。
【0013】
本発明のある実施態様において、下方分室の壁は少なくとも部分的に透明であり、これにより診断ストリップ内における色の変化の目視検査を可能にする。
【0014】
本発明のある実施態様において、診断ストリップは1以上の区画を有し、各々の該区画はそれぞれ異なる物質の層で被覆され、かつ、各々の該層は体液の特定物質または組成に対してそれぞれ異なる反応を示す。
【0015】
本発明のある実施態様において、開口の封鎖は、上方分室と下方分室の間の1以上の弁によって起こる。
【0016】
本発明のある実施態様において、弁の各々は、突出した形状またはピストン弁を有する。
【0017】
本発明のある実施態様において、封鎖中、封鎖に関わる弁は開口に対して弾性的に押し付けられている。
【0018】
本発明のある実施態様において、上記封鎖は、下方分室と上方分室の間に相対的回転を生じさせることによって解放され、これにより開口から弁を取り除く。
【0019】
本発明のある実施態様において、上方分室と下方分室の間の上記相対的回転は、2つの「閉弁状態(closed-valve states)」の間に「開弁状態(open valve state)」という限られた期間を規定し、これにより「開弁状態」の間に下方分室に流入する体液の供与量を規定する。
【0020】
本発明のある実施態様において、上記相対的回転は、1以上のストッパによってまたは制限スロットによって制限されている。
【0021】
本発明のある実施態様において、体液の下方分室への流れは重力の結果として生ずる。
【0022】
本発明のある実施態様において、供与量は、2つの分室間における開口の寸法または流れを開放する期間によって事前決定されている。
【0023】
本発明のある実施態様において、供与量の事前決定は、2つの弁の間の距離によってなされる。
【0024】
本発明のある実施態様において、装置は、体液が診断ストリップと接触していた一定期間の経過後に該体液を吸収するための、下方分室における吸収要素を有する。
【0025】
本発明のある実施態様において、下方分室における診断ストリップは、垂直または水平である。
【0026】
本発明のある実施態様において、装置は、実質的に円筒形状である。
【0027】
本発明のある実施態様において、下方分室の一部が部分的に平坦であり、スキャナによる診断ストリップの読み取りが可能である。
【0028】
本発明のある実施態様において、装置は、さらに、上方分室において、体液の供与量を真空試験管(Evacuated Test Tube)または他の試験装置内に、装置の蓋を開けることなく取り出すための手段を有する。
【0029】
本発明のある実施態様において、上記上方分室は一時保存分室(temporary compartment)であり、かつ、装置はさらに主分室と弁とを有するものであって、診断前段階の間は、弁が一時保存分室と診断分室の間の液体通路の開口を塞ぐとともに、主分室と一時保存分室の間の液体通路を開き、かつ、診断段階の間は、弁を移動させて、これにより一時保存分室と診断分室の間の通路を開くとともに、主分室と一時保存分室の間の開きを塞ぐ。
【0030】
本発明のある実施態様において、一時保存分室は、診断ストリップに作用するのに十分な比較的少量の液体を有する。
【0031】
本発明のある実施態様において、装置は、さらに、底部の分室を有しており、診断分室と底部の分室の間の流量が流量調整弁によって調節されている。
【0032】
本発明のある実施態様において、流量調整弁は、小径の開口、フィルタ、オープンセルスポンジ、または浮きである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面の簡単な説明
添付の図面には以下の図が含まれる。
【
図1】
図1a及び
図1bは、本発明の1実施態様に従う尿の採取診断装置の全体構造を示す。
【
図2-1】
図2a~
図2dは、本発明の実施態様に従う装置の内部構造を示す。
【
図2-2】
図2a~
図2dは、本発明の実施態様に従う装置の内部構造を示す。
【
図2-3】
図2a~
図2dは、本発明の実施態様に従う装置の内部構造を示す。
【
図3-1】
図3aは、複数の区画を有する診断ストリップが円形の表面上に配置されている装置の外観を示す。
【
図3-2】
図3bは、複数の区画を有する診断ストリップが平坦な表面上に配置されている装置の外観を示す。
【
図5】
図5a及び
図5bは、装置の上部と下部の間に、差し込みピン(bayonet)型の係合部のための傾斜した案内スロットを有する、本発明の装置の第2の実施態様を示す。
【
図6-1】
図6a~6dは、本発明の第2の実施態様に従う装置のより詳細な構造を示す。
【
図6-2】
図6a~6dは、本発明の第2の実施態様に従う装置のより詳細な構造を示す。
【
図7a】
図7a~7dは、本発明の第3の実施態様に従う装置の構造を示す。
【
図7b】
図7a~7dは、本発明の第3の実施態様に従う装置の構造を示す。
【
図7c】
図7a~7dは、本発明の第3の実施態様に従う装置の構造を示す。
【
図7d】
図7a~7dは、本発明の第3の実施態様に従う装置の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、尿の採取診断装置であって、主に、分離した2つの分室である(a)採尿分室と(b)尿診断分室とを有する装置に関する。後述するように、採尿と尿診断の両機能は、ともに本発明の装置1台の内部で行われる。
【0035】
図1aは、本発明の1実施態様に従う尿の採取診断装置10の全体構造を示し、
図1bは、同じ装置の蓋を取り外した状態を示す。装置10は、上方の採取分室11と、下方の診断分室12とを有している。後述するように、これら2つの分室11及び12は、診断が行われない限り、液体の流れの点において分離されている。排尿の間、尿は上方分室11内に蓄積されて診断時までそこに留まる。
図1から見ることはできないが、底部の分室12の外壁は、少なくとも部分的に透明であり、かつ、尿診断ストリップを有し、さらにこの尿診断ストリップが、先行技術の1以上の診断スティックに見られるものと同様の1以上の診断区画であって、その各々が異なる層または複数層の複合体に覆われている診断区画を有する。診断ストリップ、とりわけストリップの様々な診断区画は、下方分室12の透明な壁越しに医療助手が見ることができるので、これにより、尿との接触によって色その他の区画の外観に何らかの変化が生じれば、助手が容易に見ることができる。矢印31は、診断段階を開始させるために上方分室が下方分室に対して回転されるべき方向を示している。
【0036】
また、上述したように、尿は診断手順の直前まで上方分室11内に封じ込められている。その目的のために、例えば、蓋16が備えられて排尿後のカップを覆い、かつ、ネジ山29によって分室11に係合されているので、尿を衛生的な条件に保つ。診断手順を開始させるために、助手が、上方分室11と下方分室12との間の仕切り壁における(それまで封鎖されていた)開口を開く動作を行って、上方分室11内の尿の少なくとも一部が下方分室12内に流れ込んで診断ストリップの様々な区画と接触するようにする。そして、これら様々な区画の反応(色の変化等)が、当該分野で既知の方法で分析されて診断結果が提供される。
【0037】
図2aは、本発明の実施態様に従う上方分室11の構造を示す斜視図である。
図2bは、上方分室と下方分室の断面図である。
図4は、下方分室の上部の全体構造を示す。
【0038】
本発明のある実施態様において、下方分室12は、不動部分21(即ち、上方分室に対して動かない部分)によって上方分室11に取り付けられているが、底部の分室12は、さらに、分室12の外壁に取り付けられた回転機構22(即ち、上方分室と不動部分21に対して回転可能な部分)を有する。より具体的には、下方分室12は回転機構22を有し、これにより上方分室11から下方分室12への尿の通路を最初は封鎖して、診断の開始が望ましくなった時になって初めてこの液体通路を一時的に開いて上方分室11から下方分室12に尿の供与量が流れるようにする。ある実施態様において、上方分室11と下方分室12の間の開口15は、該開口に対して弾性的に押し付けられている弁(突出部)17aによって封鎖されている。追加の突出部17bは、開口に対する位置に置かれていないので非作用状態である。診断を開始するために、下方分室の外壁と上方分室の外壁の間で制限された角回転を行って、第1の突出部17aがそれまで置かれていた開口15に対する位置から離れるようにし、かつ第2の突出部17bが開口15に対して弾性的に押し付けられるようにすると、上方分室11から下方分室12への尿の通路が再び封鎖される。従って、尿の流れが起こるのは、開いている時間(opening time)Tの間、即ち、突出部17aによる先の封鎖と突出部17bによる後の封鎖の間である。典型的には、時間Tの間に、
図2bに示す下方分室12内に尿の特定の供与量Dが流れ込む。したがって、供与量は、実際には突出部17aと突出部17bの間の距離に比例する。上方分室11の底部表面における停止用突出部18は、特定の最大回転角(例えば25°)に各変位を制限するために使用される。
【0039】
ある実施態様において、供与量Dが下方分室12を(
図4、
図2c、及び
図2dに示す)ストリップ25の様々な区画に作用するのに十分な、約7mmの高さの尿で満たすと、これが下方分室12の透明な壁の外側から見える。供与量Dは、尿の該供与量が下方分室12の底部のスポンジ26内に完全に吸収されるまでの限られた時間tの間、ストリップ25と接触する。したがって、実際には時間tの経過後は、ストリップ25はもはや尿に浸されていないので、表示は、その信頼性を保ったまま比較的長い期間(つまり、尿に診断スティックを浸した時点から最大数分間以内にスティックの表示を読み取らなければならない先行技術の手順における期間と比較して長い期間)見ることができる。
【0040】
図2bの断面図に示すさらに他の実施態様において、上方分室11は、吸引チューブを導入するための吸引分室33を有している。より具体的には、カップ外での診断のために追加の尿検体が必要なときは、分室33内の(図示しない)真空吸引ポンプをこの目的に使用することができる。
【0041】
図3a及び
図3bは、本発明の装置内に診断層を配置する2種類の様式を示している。
図3aの装置においては、診断ストリップ25は分室12の内部に、該分室の円形の内面上に配置される。
図3bの装置においては、診断ストリップ25は分室12の内部に、該分室の平坦な内面上に配置される。図に示すように、内部の平坦な表面29は、例えば、分室12の円形の壁からの延長部分に位置している。平坦な表面を使用すれば、自動スキャナによるストリップの結果の読み取りが可能になるので、有利な場合がある。
【0042】
図5a及び
図5bは、本発明の装置のさらに他の実施態様を示す。この実施態様において、装置50は、傾斜した案内スロット54と、スロット54内に常に維持される剛性の差し込みピン型ボタン56とを有する。したがって、上方分室51と下方分室52の間の相対的回転は、実際には下方分室52に対して上方分室51を上昇させて、これら2つの分室の間に間隙Gを形成する。
図5bは、上方分室51が(下方分室52と比較して)上昇状態にある装置を示しているので、間隙Gがはっきりと確認できる。このように、装置は、実際には(
図5bに示す)「上昇状態(elevated state)」と
図5aの「通常状態(normal state)」の2つの状態を有している。加えて、
図6a~
図6dに示すように、装置はさらに、上方弁62uと下方弁62lとを有する二重弁ユニット61を有している。これら2つの弁62uと弁62lは同軸であり、かつ、中心ロッド63によって接続されている。図に示すように、これら2つの弁62u及び62lは互いから間隔を置いて配置されている。上方弁62uは、上方分室51の表面に取り付けられているので、上方分室を下方分室52に対して回転させると上方分室が上方弁62uを上昇させる。より具体的には、装置がその「通常状態」(
図6a参照)にあるときは開口65が上方弁62uによって封鎖され、かつ、装置がその「上昇状態」(
図6c参照)にあるときは開口65が下方弁62lによって封鎖されるように、これら2つの弁は配置される。これら2つの弁の間はどの場所(
図6b参照)でも、上方分室51と下方分室52の間の通路が実際に(弁62u及び62lのそれぞれの直径よりもロッド63の直径が小さいために)開いているので、上方分室から下方分室への尿の流れを許容する。通常は、(上方弁による封鎖から下方弁による封鎖までの間の移行時間によって規定される)通路が開いている期間は比較的短く、かつ、特定量の尿の供与量が下方分室に流れるのを許容するように設計されている。装置50のその他の要素は基本的に装置10のものと同じである(例えば、診断層55は、第1の実施態様の診断層25に実質的に相当する)ので、ここで詳細には説明しない。
【0043】
さらに他の実施態様において、本発明の2つの分室を有する装置10は、アルコールや薬物の試験のためにも使用することが可能である。既に知られているように、アルコールや薬物の試験は、試験結果の信頼性確保のために、排尿後すぐに開始しなければならない。この目的のため、尿の温度をチェックして、実際に尿の温度が体温に十分近いことを確実にする。したがって、薬物やアルコールの試験のために、本発明の2つの分室を有する装置は、さらに(図示しない)サーモスタットを有していてもよい。さらに、従来の診断スティックを薬物の試験に使用するとき、スティックの下部だけを尿に浸し、尿は浸透し吸収されてスティックを「登る」。この先行技術の手順の特徴に適合させるために、ストリップ(25または55)は下方分室12内に垂直の配向で取り付けられていてもよい。
【0044】
図7a~
図7dは本発明の第3の実施態様に従う尿の採取診断装置100を示す。
図7aは、採取及び診断前段階における装置100の全体構造を示し、
図7bは、診断段階における同じ装置を示す。装置100は、主に下記の3つの部分、即ち、
(a)下部180と、
(b)下部に対して垂直にスライド可能な上部170と、
(c)装置の上部を覆う(かつ、選択によりシリンジを用いて尿の衛生的な取り出しを可能にする)蓋部116とを有する。
【0045】
上部170は、上方主分室111と一時保存分室126とを有する。下部は、下方診断分室112を有しており、そこに1以上の診断ストリップが配置される。採取及び診断前という第1段階の間、尿は、(典型的には70~100ミリリットルまでの液体を含む)主分室111内、及び(典型的には約9~10ミリリットルの液体を含む)一時保存分室126内に維持されており、これら両分室の接続は、この段階ではフリーフロー(free flow;自由な流れ)である。上方分室111及び126は、診断段階が開始されない限り、液体の流れの点において下方分室112から分離されている。排尿の間、尿は上方分室111及び126内に蓄積されて診断時までそこに留まる。
図7a及び7bから見ることはできないが、底部の分室112の外壁は、少なくとも部分的に透明であり、かつ、尿診断ストリップを有し、さらにこの尿診断ストリップが、1以上の診断区画であって、その各々が異なる層または複数層の複合体に覆われている診断区画を有する。診断ストリップ、とりわけストリップの様々な診断区画は、下方分室112の透明な壁越しに医療助手が見ることができるので、これにより、尿との接触によって色その他の区画の外観に何らかの変化が生じれば、助手が容易に見ることができる。
【0046】
蓋116が備えられて排尿後のカップを覆い、かつ、(
図7cに示す)ネジ山129によって上部170に係合されているので、尿を衛生的な条件に保つ。
【0047】
図7aに示すように、診断前段階の間は、尿は主分室111内及び一時保存分室126内に封じ込められている。弁141は、開口142を経由する一時保存分室126から診断分室112への尿の通路を塞ぐ。留め具127は、「診断前」段階では、上部が下部180に対して下向きにスライドするのを防ぐ。診断手順を開始させるために、助手は、まず、留め具127を90°回転させて
図7bに示す「診断」状態にする。次に、蓋116(及び実際には上部170も)を下向きに押して
図7bに示す「診断」位置、即ち、上部170のストッパ143が下部180の上面144に係合する位置にする。(
図7aに示す)診断前状態から(
図7bに示す)診断状態への装置の移行は、実際には、尿が流れるための開口142を開き、かつ、主分室111と一時保存分室126の間の開口145を塞ぐ。したがって、一方では一時保存分室126の内容物が診断分室112内に流れ込むが、他方で主分室の全内容物は(もはや一時保存分室126内に流れ込むことができないので)主分室内に維持される。一時保存分室における限られた量の尿は、いまや診断分室112内に流れ出て(垂直または水平に関わらず)診断ストリップに作用するのに十分である。診断分室180は、さらに、その底部に(図示しない)小径の開口、フィルタ、オープンセルスポンジまたは浮き等の流量調整弁を有しており、これが底部の分室181内部に尿が流れる速度を制限する。より具体的には、流量調整弁は、実際には(図示しない)ストリップを尿に約3~7秒間という限られた期間において接触させるようにし、かつ、以前は一時保存分室112内に封じ込められていた尿は今や完全に底部の分室181に封じ込められているので、その期間の満了までに尿はストリップとの接触から完全に取り除かれて、ストリップを自然に乾かして表示を提供できる。その一方で、尿の大部分は、例えば、外部の診断が必要になるとき等、将来の必要に備えて上方分室170内に残る。
【0048】
図7dは、本発明の装置の分解図を示す。図に示すように、蓋116は、ネジ山129によって上部に取り付けられる。蓋は、衛生的な方法で主分室111から尿をくみ上げる、本技術分野において一般に知られる真空尿試験管(例えば、真空採尿管の「Vacutainer採尿用」等。http://www.bd.com/vacutainer/products/urine/を参照)との連結のため、さらに開口147と、シリンダ149と主分室に導くチューブ153とを有する。
図7aに示すように、初期状態ではゴム製のスリーブで覆われている針154が、チューブ153と流体接続され、かつ、実際には主分室111とも同様に接続される。ただし、初期状態では、上記のゴム製の覆いがあるためにチューブ153内及び針154からシリンダ149に尿は流れない。更なる試験が必要になって初めて、真空尿試験管がゴム製スリーブを突いて、これにより、分室111からチューブ153と針154を経由して、尿を更なる試験のために試験管、即ち真空尿試験管に集める。
【0049】
本発明のいくつかの実施態様について図を用いて説明したが、本発明は、様々に改変させたり、派生させたり、あるいは適応させたりすることによっても、また、当業者に可能な範囲の非常に多くの均等物または代替的手段を用いても、本発明の精神を逸脱することなく、または特許請求の技術的範囲を超えることなく実施できることは自明である。