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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220106BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018189535
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020044301
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2019-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】518302427
【氏名又は名称】株式会社USKテクノロジー
(72)【発明者】
【氏名】萩原 守
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516514(JP,A)
【文献】特開2017-147432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0112952(US,A1)
【文献】特開2018-125368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0155215(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107921157(CN,A)
【文献】特開2014-233712(JP,A)
【文献】特表2013-514642(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043357(WO,A3)
【文献】特開2002-043629(JP,A)
【文献】国際公開第2017/202508(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象となる流体が流れる殺菌用流路を構成する殺菌管と、
前記殺菌管の端部と対向して配置され、前記殺菌用流路を流れる流体に紫外光を照射する光源ユニットと、を備え、
前記光源ユニットは、
紫外光を発光する複数の発光ダイオードチップと、
前記複数の発光ダイオードチップがサブマウント基板を介して、あるいは直接搭載される基板と、
前記複数の発光ダイオードチップが搭載された基板を収容する収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた開口を塞ぎ、前記ハウジングの外部空間と前記収容室とを区画するように設けられ、前記発光ダイオードチップからの紫外光を透過する窓部材と、
前記発光ダイオードチップの劣化を抑制するチップ劣化抑制手段と、を有し、
前記窓部材は、前記発光ダイオードチップ毎にそれぞれ形成され、対応する前記発光ダイオードチップからの紫外光を集光する複数のレンズ部を一体に有し、
前記複数の発光ダイオードチップは、パッケージに封入されておらず、
前記チップ劣化抑制手段が、前記ハウジングに設けられ前記収容室を気密に封止する気密封止手段である、
流体殺菌装置。
【請求項2】
前記窓部材は、板状に形成された板状部と、前記板状部から前記収容室側に突出するように形成された前記複数のレンズ部と、を一体に有する、
請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記窓部材は、合成石英からなる、
請求項1または2に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記各レンズ部は、TIRレンズとして構成されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
紫外光の出射側から見た正面視における前記レンズ部の直径が、15mm以下である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記収容室には、水分が0.01%以下のドライエアーが封入されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
前記収容室に封入されるドライエアーは、酸素を1%以上含んでいる、
請求項6に記載の流体殺菌装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水等の流体に紫外光を照射して殺菌(あるいは不活化)を行う流体殺菌装置が知られている。このような流体殺菌装置では、一般に、紫外光を発光する発光ダイオードチップをパッケージに封入した発光装置(発光デバイス、あるいは単に発光ダイオードと呼称される場合もある)を光源として用いている。発光ダイオードチップは湿気に弱いため、パッケージ内に封入し気密状態を維持することで、発光ダイオードチップの寿命を向上させることが可能である。
【0003】
流体殺菌装置に用いる光源ユニットでは、紫外光を発光する発光装置を搭載した基板をハウジングの収容室内に収容し、ハウジングの開口に設けた窓部材を介して、発光装置からの紫外光を流体に照射する。発光装置に用いられる発光ダイオードは配光角(照射角)が広いので、光源ユニットでは、紫外光を効率よく流体に照射するために、レンズを用いた集光が行われる場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-233712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の発光装置はパッケージを有しているために発光ダイオードチップ単体に比較してサイズが大きく、これに伴って使用するレンズも大型となってしまう。そのため、複数の光源を狭い領域に集約することが困難であった。なお、レンズによる集光の効果を高めるには、発光装置に個々にレンズを設けることが望ましく、複数の発光装置に1つのレンズを設けることは好ましくない。
【0006】
例えば、小型の流体殺菌装置では、殺菌対象となる流体が流れる流路が細く(流路断面積が小さく)なり、流体の流速が早くなるため、照射する紫外光の光量を大きくして確実に殺菌効果を得ることが望まれる。このような場合、狭い領域に複数の光源を設けることが要求される場合があるが、従来技術では対応が困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、レンズによる十分な集光効果が得られ、かつ狭い領域に複数の光源を配置可能な流体殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、殺菌対象となる流体が流れる殺菌用流路を構成する殺菌管と、前記殺菌管の端部と対向して配置され、前記殺菌用流路を流れる流体に紫外光を照射する光源ユニットと、を備え、前記光源ユニットは、紫外光を発光する複数の発光ダイオードチップと、前記複数の発光ダイオードチップがサブマウント基板を介して、あるいは直接搭載される基板と、前記複数の発光ダイオードチップが搭載された基板を収容する収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに設けられた開口を塞ぎ、前記ハウジングの外部空間と前記収容室とを区画するように設けられ、前記発光ダイオードチップからの紫外光を透過する窓部材と、前記発光ダイオードチップの劣化を抑制するチップ劣化抑制手段と、を有し、前記窓部材は、前記発光ダイオードチップ毎にそれぞれ形成され、対応する前記発光ダイオードチップからの紫外光を集光する複数のレンズ部を一体に有し、前記複数の発光ダイオードチップは、パッケージに封入されておらず、
前記チップ劣化抑制手段が、前記ハウジングに設けられ前記収容室を気密に封止する気密封止手段である、流体殺菌装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズによる十分な集光効果が得られ、かつ狭い領域に複数の光源を配置可能な流体殺菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の断面図である。
図2図1の排出管近傍を拡大した拡大断面図である。
図3図1の流入管近傍を示す断面図である。
図4】光源ユニットを示す図であり、(a)は断面図、(b)はそのA部拡大図である。
図5】光源ユニットの一変形例を示す断面図である。
図6】光源ユニットの一変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
(流体殺菌装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置の断面図である。図2は、図1の排出管近傍を拡大した拡大断面図であり、図3図1の流入管近傍を示す断面図である。
【0014】
図1乃至図3に示すように、流体殺菌装置1は、殺菌対象となる流体に紫外光を照射することで、流体の殺菌を行うものである。なお、本明細書において殺菌とは、細菌を殺すことのみならず、細菌を不活化すること(増殖能力を奪った状態にすること)を含んでいる。
【0015】
流体殺菌装置1は、殺菌対象となる流体が流れる流路2と、流路2を流れる流体に紫外光を照射する光源ユニット3と、を備えている。殺菌対象となる流体は、例えば水であり、殺菌後の水は、例えば医療用途や飲用用途に用いられる。
【0016】
流体殺菌装置1は、流入流路21aを構成する流入管21と、殺菌用流路22aを構成する殺菌管22と、排出流路23aを構成する排出管23と、を有している。流入管21と殺菌管22とは、流入側接続部4を介して接続されており、殺菌管22と排出管23とは、排出側接続部5を介して接続されている。流入側接続部4内には、流入流路21aと殺菌用流路22aとを連通する接続流路4aが形成されている。排出側接続部5内には、殺菌用流路22aと排出流路23aとを連通する冷却用流路5aが形成されている。流路2は、流入流路21a、接続流路4a、殺菌用流路22a、冷却用流路5a、及び排出流路23aを順次接続して構成されている。
【0017】
殺菌管22は、円筒状の直管であり、その中空部が殺菌対象となる流体が流れる殺菌用流路22aである。殺菌管22としては、紫外光を反射する材質からなるものを用いるとよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるものを用いることができる。PTFEは、紫外光で劣化しにくく溶出性も低いため、殺菌管22として好適である。殺菌管22の端部で流体の流れが滞留してしまうことがないよう、殺菌管22の両端部において、内周面と端面との間の角部には面取り加工(あるいは丸め加工)が施されている。
【0018】
流入側接続部4は、壁部411と周壁部412とに囲まれた凹部413を有する流入側管接続部材41と、凹部413内に挿入される凸部421を有し、凹部413を塞ぐように設けられる蓋部材42と、を有している。流入側管接続部材41及び蓋部材42は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の樹脂からなる。PVDFは、紫外光で劣化しにくく、かつ成型加工が可能であり、流入側管接続部材41及び蓋部材42として好適である。
【0019】
流入側管接続部材41は、板状の壁部411の周縁部から壁部411と直交する方向に環状の周壁部412を一体に形成して構成されている。本実施の形態では、壁部411が円板状に形成されると共に、周壁部412が円筒状に形成されている。壁部411の中央部(壁部411と直交する方向から見た際の中心部分)には、壁部411を貫通する殺菌管挿入穴411aが形成されており、この殺菌管挿入穴411aに殺菌管22の端部が挿入され固定されている。また、周壁部412には、周壁部412を貫通する流入管挿入孔412aが形成されており、この流入管挿入孔412aに流入管21が挿入され固定されている。なお、流入管21は、その一部が周壁部412と一体に構成されていてもよい。
【0020】
本実施の形態においては、流入管21の軸方向と、殺菌管22の軸方向とが交差(ここでは直交)している。本実施の形態では、殺菌管22の出口側の端部から紫外光を照射するが、例えば、殺菌管22と平行となるように流入管21を接続すると、紫外光が流入管21に照射されることとなり、流入管21が紫外光により劣化するおそれが生じる。そのため、流入管21として紫外光に対する耐性を有する材料を用いたり、紫外光を遮る斜光部材を別途設けたりする必要が生じ、コスト増加の原因となる。本実施の形態のように、流入管21の軸方向と、殺菌管22の軸方向とを交差(望ましくは直交)させることで、容易に流入管21に紫外光が照射されない構造とすることができ、流入管21を紫外光に対する耐性が低い低コストの材料で構成することが可能になる。
【0021】
蓋部材42は、凹部413内に挿入される円柱状の凸部421と、凸部421の軸方向における一方の端部から径方向外方に突出するフランジ部422と、を一体に有する。フランジ部422は、周壁部412の端部に水密に固定される。凸部421を凹部413内に挿入した状態において、凸部421の外面(外周面及び先端面)と、凹部413の内面(周壁部412の内周面、及び壁部411の凹部413側の面)との間には隙間が形成されるようになっている。この隙間が、流入管21から殺菌管22に流体を導く接続流路4aとなっている。
【0022】
接続流路4aにおいて、凸部421の外周面に沿う部分から、凸部421の先端面に沿う部分へと流体が流れる際に、流体の流れが滞留してしまうことがないように、凸部421の外周面と先端面との間の角部には面取り加工(あるいは丸め加工)が施されている。
【0023】
凸部421の外周面であって、流入管21との対向位置には、凸部421の周方向に沿うように、凹状の整流溝421aが形成されている。整流溝421aを形成することで、図3に示すように、流入管21から流入した流体(図示白抜き矢印)は、接続流路4aに流れ込んだ際に、まず、比較的流路断面積が広い(流体抵抗が低い)整流溝421aの位置で凸部421の全周に回り込み(図示破線矢印)、その後、流路断面積が狭い(流体抵抗が高い)殺菌管22側の接続流路4aへと流れ込む(図示実線矢印)。整流溝421aが無い状態では、流入管21の接続側の接続流路4aばかりに流体が流れてしまい、接続流路4aの周方向において流体の流れが均一とならない場合がある。本実施の形態のように整流溝421aを形成することで、周方向のいずれの場所においても接続流路4aを流体が均一に流れるようになる。これにより、接続流路4aの下流の殺菌用流路22aにおいても、流体の流れを均一にすることが可能になる。なお、殺菌用流路22aでの流体の流れが均一でないと、流速が早い部分で紫外光の照射時間が短くなり、十分な殺菌効果が得られなくなる場合がある。整流溝421aは、凸部421の外周面に沿った接続流路4aを流れる流体の整流を行うものであるから、流入管21との対向位置、または当該対向位置よりも下流側(殺菌管22側)の凸部421の外周面に形成されていればよい。
【0024】
凸部421の先端部(フランジ部422と反対側の端部)には、反射材収容凹部421bが形成されており、この反射材収容凹部421bに、紫外光を反射する反射材43が設けられている。反射材43は、光源ユニット3から照射された紫外光を殺菌用流路22a内に反射させることで、殺菌効果を向上させるためのものであり、殺菌管22の端部と対向するように設けられている。
【0025】
排出側接続部5は、壁部511と周壁部512とに囲まれた凹部513を有し、壁部511に殺菌管22の端部が接続された排出側管接続部材51と、凹部513内に挿入される凸部321を有し、凹部513を塞ぐように設けられる光源ユニット3と、を有しており、排出側管接続部材51と光源ユニット3間に冷却用流路5aが形成されている。
【0026】
排出側管接続部材51は、流入側管接続部材41と同じ形状となっており、これにより、部品点数の削減及び低コスト化が図られている。すなわち、排出側管接続部材51は、板状の壁部511の周縁部から壁部511と直交する方向に環状の周壁部512を一体に形成して構成されている。本実施の形態では、壁部511が円板状に形成されると共に、周壁部512が円筒状に形成されている。壁部511の中央部(壁511と直交する方向から見た際の中心部分)には、壁部511を貫通する殺菌管挿入穴511aが形成されており、この殺菌管挿入穴511aに殺菌管22の端部が挿入され固定されている。
【0027】
また、周壁部512には、周壁部512を貫通する排出管挿入孔512aが形成されており、この排出管挿入孔512aに排出管23が挿入され固定されている。このように、本実施の形態においては、排出管23の軸方向と、殺菌管22の軸方向とが交差(ここでは直交)している。換言すれば、排出流路23aは、その冷却用流路5aから流体を排出する方向が、殺菌管22を流体が流れる方向に対して交差する方向となっている。排出管23は、その端部が光源ユニット3(ハウジング32)の外周面と対向するように設けられることになる。また、流入管21の流入側接続部4からの延出方向と、排出管23の排出側接続部5からの延出方向とは同じ方向となっている。排出側管接続部材51は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の樹脂からなる。
【0028】
(光源ユニット3)
図4は、光源ユニット3を示す図であり、(a)は断面図、(b)はそのA部拡大図である。図1,2及び図4に示すように、光源ユニット3は、殺菌管22の端部(ここでは殺菌用流路22aの出口)と対向して配置され、殺菌用流路22aを流れる流体(ここでは水)に紫外光を照射するものである。光源ユニット3は、全体として略円筒状に形成されており、その軸方向が殺菌用流路22aを流体が流れる方向(殺菌管22の軸方向)と一致するように配置されている。
【0029】
光源ユニット3は、紫外光を発光する光源としての複数の発光ダイオードチップ(LEDチップ)31と、複数の発光ダイオードチップ31がサブマウント基板311を介して搭載されている基板としての回路基板36と、複数の発光ダイオードチップ31が搭載された回路基板36を収容する収容室32aを有するハウジング32と、ハウジング32に設けられた開口32bを塞ぎ、ハウジング32の外部空間(冷却用流路5a)と収容室32aとを区画するように設けられ、発光ダイオードチップ31からの紫外光を透過する窓部材33と、発光ダイオードチップ30の劣化を抑制するチップ劣化抑制手段としての気密封止手段34と、を有している。なお、本明細書において「気密」とは、厳密に密封された状態のみならず、空気中の水分の侵入を抑制できる程度に空気を通りにくくした状態を含むものとする。
【0030】
(ハウジング32)
ハウジング32は、上述の流入側接続部4における蓋部材42と略同じ外形に形成されている。ハウジング32は、凹部513内に挿入される円筒状の凸部321と、凸部321の軸方向における一方の端部から径方向外方に突出するフランジ部322と、を一体に有する。フランジ部322は、周壁部512の端部に水密に固定される。ハウジング32の前面(殺菌管22側)には、開口32bが設けられており、この開口32bを塞ぐように窓部材33が設けられている。冷却用流路5aにおいて、凸部321の先端面及び窓部材33に沿う部分から凸部321の外周面に沿う部分へと流体が流れる際に、流体の流れが滞留してしまうことがないように、凸部321の外周面と先端面との間の角部には面取り加工(あるいは丸め加工)が施されている。
【0031】
凸部321を凹部513内に挿入した状態において、凸部321の外面(外周面)及び窓部材33と、凹部413の内面(周壁部412の内周面、及び壁部411の凹部413側の面)との間には隙間が形成されるようになっている。この隙間が、殺菌管22から排出管23に流体を導きつつ、光源ユニット3の冷却を行う冷却用流路5aである。冷却用流路5aは、殺菌用流路22aの出口と接続されると共に、排出流路23aに接続されており、光源ユニット3の前面(紫外光照射側)及び側周を囲むように形成される。
【0032】
冷却用流路5aを流れる流体は、光源ユニット3のハウジング32の外周面に接触する。ハウジング32は、収容室32aに収容された発光ダイオードチップ31で発生した熱を伝導し、冷却用流路5aを流れる流体に放熱する熱伝導部材としての役割を果たす。そのため、ハウジング32は、熱伝導性の高い材質で構成されることが望ましい。また、ハウジング32は殺菌対象となる流体に接触するため、例えば殺菌後の流体を医療用途等に用いる場合には、ハウジング32としてアルミニウムや銅等の溶出性の材料を用いることはできない。そこで、本実施の形態では、ハウジング32として、SUS304等のステンレス鋼からなるものを用いた。なお、これに限らず、ハウジング32として、PVDF等の樹脂からなるものを用いることも可能である。
【0033】
凸部321の外周面であって、排出管23との対向位置には、凸部321の周方向に沿うように、凹状の整流溝321aが形成されている。整流溝321aを形成することで、流入側の整流溝421aと同様に、殺菌管22から排出管23の接続側の冷却用流路5aで流速が早くなってしまうことを抑制し、冷却用流路5a内を流体が均一に流れるようになる。その結果、殺菌用流路22aにおいても流体の流れを均一にすることができ、十分な殺菌効果を維持することが可能になる。整流溝321aは、排出管23との対向位置、または当該対向位置よりも上流側のハウジング32の外周面に形成されていればよい。
【0034】
また、ハウジング32は、円筒状の凸部321の先端部において内周面から径方向内方に延出する円環状の庇部323を有する。庇部323は、窓部材33を支持して窓部材33を補強する役割と、後述する窓部材用シール部材341を保持する役割と、を兼ねた部材である。また、庇部323は、殺菌管22と排出側管接続部材51の境界部分に紫外光が照射されることを抑制し、殺菌管22と排出側管接続部材51との間に設けられるシール部材(不図示)が劣化することを抑制する役割も果たしている。庇部323の窓部材33側(収容室32a側)の面には、窓部材用シール部材341を収容する環状のシール収容溝323aが形成されている。
【0035】
(発光ダイオードチップ31)
本実施の形態では、光源ユニット3の光源として、紫外光を発光する複数の発光ダイオードチップ31を用いる。ここでは4つの発光ダイオードチップ31を用いる場合を示しているが、発光ダイオードチップ31の数は2つ、3つ、あるいは5個以上であってもよく、流体の流量や各発光ダイオードチップ31の発光強度、波長(殺菌能力)等を考慮して、適宜選択するとよい。一般に、波長265nm近傍において殺菌効果が高まるため、発光ダイオードチップ31としては、発光波長が265nm程度のものを使用するとよい。ただし、発光波長を265nm程度とした場合には十分な発光強度が得られない場合もあるため、発光波長と発光強度の組み合わせを考慮し、最も殺菌効果が高くなる発光ダイオードチップ31を光源として用いることがより望ましい。
【0036】
本実施の形態では、サブマウント基板311に発光ダイオードチップ31が搭載されたチップ・オン・サブマウントと呼称される構造の光源を用いた。ただし、これに限らず、サブマウント基板311を省略して発光ダイオードチップ31を直接回路基板36に搭載したチップ・オン・ボードと呼称される構造となっていてもよい。このように、本実施の形態では、発光ダイオードチップ31がパッケージに封入された構造となっていない。発光ダイオードチップ31をパッケージに封入した発光装置は、例えば一辺の長さが略3mm程度の直方体形状であるが、発光ダイオードチップ31は、一辺の長さが略1mm程度の直方体形状であり、発光装置と比べてサイズが非常に小さい。
【0037】
図示していないが、回路基板36の表面には、紫外光を反射するコーティング材が塗布されるか、あるいはアルミニウム等からなる紫外光反射シートが設けられていることが望ましい。これにより、回路基板36の表面に照射された紫外光を窓部材33側へと反射して、流体に照射される紫外光の強度をより向上できる。
【0038】
(窓部材33)
窓部材33は、略円板状に形成された板状部331と、板状部331から収容室32a側に突出するように形成された複数のレンズ部332と、を一体に有する。レンズ部332は、発光ダイオードチップ31毎にそれぞれ形成され、対応する発光ダイオードチップ31からの紫外光を集光する。本実施の形態では、4つの発光ダイオードチップ31に対応して、4つのレンズ部332が形成されている。
【0039】
各レンズ部332は、TIR(Total Internal Reflection)レンズとして構成されている。より具体的には、各レンズ部332は、その表面332aが曲面を構成するように形成されており、その頂部(平面視における中央部)に板状部331側に凹む凹部332bが形成されている。凹部332bは、回路基板36側に開口しており、平面視で円形状に形成されている。各レンズ部332の凹部332bには、発光ダイオードチップ31の一部が収容される。凹部332bの底面332cは、発光ダイオードチップ31側に凸となる凸レンズ状に形成されている。なお、凹部332bの底面332cの形状は、凸レンズ状に限定されず、例えば平面状に形成されていてもよい。
【0040】
発光ダイオードチップ31から出射された紫外光の一部は、凸レンズ状の底面332cからレンズ部332に入射され、殺菌管22の軸方向に略平行な光に変換されて、板状部331から出射される。発光ダイオードチップ31から出射された紫外光の他の一部は、凹部332bの側面からレンズ部332内に入射され、レンズ部332の内部において表面332aで反射されることで殺菌管22の軸方向に略平行な光に変換されて、板状部331から出射される。レンズ部332をTIRレンズとすることで、発光ダイオードチップ31から側方に出射される光も集光することが可能となり、流体に照射される紫外光の強度をより高めて殺菌能力を高めることが可能になる。
【0041】
なお、ここでは、窓部材33と殺菌対象の流体である水との屈折率差が小さいため、板状部331の表面(レンズ部332と反対側の面)331aを平面上としているが、窓部材33と殺菌対象の流体との屈折率差が大きい場合には、板状部331と流体との境界となる表面331aで反射による損失が発生することが考えられる。よって、このような場合、板状部331の表面331aを曲面状として、反射による損失を抑制するようにしてもよい。
【0042】
例えば、発光ダイオードチップ31をパッケージに封入した発光装置を光源として用いた場合、発光装置が例えば一辺の長さが略3.5mm程度の直方体形状であるとすると、平面視におけるレンズ部332の直径は、略20mm程度と非常に大きくなってしまう。本実施の形態においては、光源として一辺の長さが略1mm程度の直方体形状である発光ダイオードチップ31を用いているため、レンズ部332の大きさを小さくすることができ、平面視におけるレンズ部332の直径を15mm以下とすることができ、例えば8mm程度にすることができる。よって、複数の光源(発光ダイオードチップ31及びレンズ部332)を狭い領域に配置することが可能になり、流体へ照射する紫外光の強度を向上させることができる。
【0043】
窓部材33としては、紫外光を透過するものであればよく、石英ガラス(SiO)、サファイアガラス(Al)からなるものを用いることができる。本実施の形態では、窓部材33として、合成石英からなるモールド成型品を用いた。モールド成型品は、研削加工により得られたものと比較して低コストである。しかし、現状の合成石英のモールド技術において、大きな凹凸を有する形状を成型する際には、凹凸の境界部分にクラックが入る等の問題が生じ易くなり、成型が非常に困難である。
【0044】
本実施の形態によれば、レンズ部332のサイズが小さくなり、凹凸が小さくなるために、現状の合成石英のモールド技術においても、成型が可能であることが確認された。つまり、発光ダイオードチップ31をそのまま光源として使用することで、レンズ部332のサイズを従来と比べて非常に小さくでき、レンズ一体型の窓部材33を、合成石英のモールド成型により形成することが可能になる。
【0045】
レンズ部332の凹部332bの内面(底面332c及び内周面)には、発光ダイオードチップ31からの紫外光の反射を抑制する反射防止膜(ARコート(Anti-Reflection Coating))が施されていることが望ましい。また、窓部材33の殺菌管22側の面、すなわち板状部331の殺菌管22側の面には、光触媒効果により窓部材33に汚れが付着することを抑制可能な酸化チタン膜を設けてもよい。酸化チタン膜の膜厚は、発光ダイオードチップ31からの紫外光の透過率を低下させずに光触媒の効果を得るために、数nm程度(例えば、1nm以上5nm以下)とすればよい。さらに、レンズ部332の表面332aには、表面332aでの反射率を高めるために、アルミニウム等からなる反射膜が形成されていてもよい。
【0046】
(ヒートシンク35)
光源ユニット3は、その背面側でかつ冷却用流路5aに覆われていない部分に設けられたヒートシンク35を有している。ヒートシンク35は、回路基板36が載置される基台351と、基台351の背面から突出するように形成された複数の放熱フィン352と、を一体に有している。基台351は、ハウジング32の背面側の開口32cを塞ぐように設けられている。ヒートシンク35としては、熱導電性の高い材質からなるものを用いることが望ましい。ヒートシンク35は、流体と接触しないため、銅やアルミニウム等の溶出性の金属からなるものを使用することも可能である。なお、空冷式のヒートシンク35に代えて、例えば、冷却水を導入し冷却水によって光源ユニット3を冷却する水冷ジャケット等を設けてもよい。
【0047】
図示していないが、ヒートシンク35とハウジング32との間には、放熱シートあるいは放熱グリスが設けられるとよい。つまり、ヒートシンク35とハウジング32とは、放熱シートあるいは放熱グリスを介して接触しているとよい。これにより、ヒートシンク35とハウジング32間に隙間が発生して放熱効果が低下することを抑制でき、ハウジング32からヒートシンク35に効率よく熱を伝達して、放熱効果を高めることができる。
【0048】
また、図示していないが、ヒートシンク35に外気を送るファンユニットを光源ユニット3に一体に設けてもよい。これにより、冷却効果をより向上させることができる。回路基板36への配線については、例えば、ハウジング32やヒートシンク35にコネクタを設ける等して、当該コネクタを介して光源ユニット3の背面側に引き出されるとよい。
【0049】
(気密封止手段34)
気密封止手段34は、ハウジング32に設けられ、収容室32aを気密に封止するものであり、本発明のチップ劣化抑制手段の一態様である。上述のように、「気密」とは、厳密に密封された状態である必要はなく、空気中の水分の侵入を抑制できる程度に空気が通りにくくなっていればよい。気密封止手段34は、窓部材33とハウジング32間をシールする窓部材用シール部材341を有している。窓部材用シール部材341は、庇部323のシール収容溝323aに収容されている。窓部材用シール部材341としては、例えばフッ素ゴム(FKM)からなるOリングを用いることができる。
【0050】
また、気密封止手段34は、ヒートシンク35と窓部材33(板状部331の縁部)との間に介設されたスペーサ342を有している。ヒートシンク35をハウジング32にボルト固定等により固定する際に、スペーサ342を介して窓部材33を庇部323側に押し付けることで、窓部材用シール部材341が潰されて収容室32a内の気密が維持される。なお、図示していないが、気密封止手段34は、ヒートシンク35とハウジング32(凸部321の内周面)との間をシールする部材をさらに有していてもよい。
【0051】
ところで、収容室32a内の気密が維持されていても、光源ユニット3における収容室32a内に湿った空気が存在すると、流体の冷却効果によって窓部材33等に結露が発生してしまう。結露により発生した水滴が回路基板36に付着すると、ショートを起こして故障が発生するおそれがある。さらに、収容室32a内に湿った空気が存在すると、発光ダイオードチップ31が劣化しやすくなり、寿命が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、収容室32aには、水分が0.01%以下のドライエアーが封入され、外部から独立した雰囲気となるように構成されている。
【0052】
このように、収容室32a内は、結露による不具合を抑制するために、光源の形態にかかわらず、気密が維持される必要がある。光源として発光ダイオードチップ31をパッケージに封入したものを用いる場合、パッケージによる気密封止と、収容室32aの気密封止とが重なって行われることになり、無駄である。そこで、本実施の形態では、パッケージを省略して、収容室32aの気密封止のみで発光ダイオードチップ31の封止を行うようにしている。
【0053】
また、収容室32aに封入されるドライエアーは、酸素を1%以上含んでいることが望ましい。発光ダイオードチップ31として窒化ガリウムを含むものを用いる場合、収容室32a内を酸素雰囲気とすることにより、発光ダイオードチップ31の経年劣化(使用期間が長くなるにしたがって発光量が低下する現象)を抑制することができる。すなわち、収容室32a内を酸素を1%以上含む雰囲気とすることにより、経年劣化が小さく長寿命な光源ユニット3を実現できる。
【0054】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る流体殺菌装置1では、光源ユニット3は、紫外光を発光する複数の発光ダイオードチップ31と、複数の発光ダイオードチップ31が搭載された回路基板を収容する収容室を有するハウジング32と、ハウジング32に設けられた開口32bを塞ぎ、ハウジング32の外部空間と収容室32aとを区画するように設けられ、発光ダイオードチップ31からの紫外光を透過する窓部材33と、ハウジング32に設けられ、収容室32aを気密に封止する気密封止手段34と、を有し、窓部材33は、発光ダイオードチップ31毎にそれぞれ形成され、対応する発光ダイオードチップ31からの紫外光を集光する複数のレンズ部332を一体に有している。
【0055】
パッケージに封入されていない発光ダイオードチップ31を光源として用いることで、レンズ部332のサイズを小さくすることが可能になる。その結果、パッケージを用いた従来と比較して、狭い領域に複数の発光ダイオードチップ31及びレンズ部332を集約して配置することが可能になる。つまり、本実施の形態によれば、発光ダイオードチップ31毎に個別にレンズ部332を形成してレンズ部332による十分な集光効果が得られつつも、狭い領域に複数の光源を配置可能となる。その結果、殺菌効果を向上でき、流体殺菌装置1全体の小型化に寄与する。
【0056】
また、レンズ部332のサイズを小さくすることで、窓部材33を合成石英のモールド成型品で形成することが可能になる。窓部材33を研削加工により形成した場合には非常に高価となり、製品化することが現実的ではないが、窓部材33を合成石英のモールド成型品で形成可能となることにより、現実的に製品化が可能なレベルにまで低コスト化が可能となる。さらに、本実施の形態ではパッケージを使用しないため、さらなる低コスト化も期待できる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。
【0058】
さらに、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、殺菌用流路22aの下流側に光源ユニット3を設ける場合について説明したが、殺菌用流路22aの上流側に光源ユニット3を設けてもよい。この場合、図1において、流体の流れを上記実施の形態と反対向きにし、流体を排出流路23a側から流入流路21a側に流した場合と同じ構成になる。また、殺菌用流路22aの上流側と下流側の両方に光源ユニット3を設けてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、庇部323の収容室32a側に窓部材33を設ける場合について説明したが、これに限らず、図5に示すように、庇部323の殺菌管22側(壁部511側)に窓部材33を設けてもよい。この場合、排出側管接続部材51には、窓部材33と対向する冷却用流路5aの内周面(壁部511)から突出し、窓部材33を背面側へと押し付ける複数の柱状突起511bが形成されているとよい。殺菌管22からの流体は、柱状突起511bの間を通って整流溝321a側へと流れていくことになる。また、図5に示されるように、気密封止手段34は、ヒートシンク35とハウジング32との間をシールするヒートシンク側シール部材343をさらに有していてもよい。ヒートシンク側シール部材343としては、例えばフッ素ゴム(FKM)からなるOリングを用いることができる。
【0060】
また、上記実施の形態では、流体殺菌装置1用の光源ユニット3について説明したが、光源ユニット3は、流体殺菌装置1以外の装置にも適用可能である。例えば、光源ユニット3は、紫外光硬化樹脂を硬化させるための樹脂硬化装置等に適用可能である。この際、例えば、図6に示すように、ヒートシンク35やフランジ部322を省略した光源ユニット3を用いてもよい。
【0061】
上記実施の形態では、チップ劣化抑制手段が気密封止手段34で構成されている場合を説明したが、例えば、チップ劣化抑制手段は、収容室32a内の水分を吸着するシリカゲル等の吸湿剤を含んでもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…流体殺菌装置
22…殺菌管
22a…殺菌用流路
3…光源ユニット
31…発光ダイオードチップ
311…サブマウント基板
32…ハウジング
32a…収容室
32b…開口
33…窓部材
331…板状部
332…レンズ部
34…気密封止手段(チップ劣化抑制手段)
36…回路基板(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6