(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン粒子及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20220106BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220106BHJP
B29B 9/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C08G18/00 A
C08J3/12 Z CFF
B29B9/00
(21)【出願番号】P 2019548615
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 KR2018002843
(87)【国際公開番号】W WO2018164539
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2017-0030178
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0030179
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0119544
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0027628
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510244710
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ミン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ-ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン-ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ホ・リム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ハン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・ゴ
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0117782(KR,A)
【文献】特開2004-269598(JP,A)
【文献】特開2002-283341(JP,A)
【文献】特開2008-137377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0122132(US,A1)
【文献】特開昭59-226024(JP,A)
【文献】特表2007-535585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0207931(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0126517(KR,A)
【文献】特開2009-029860(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051104(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0227985(US,A1)
【文献】特開2000-313729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0099162(US,A1)
【文献】特開2012-224809(JP,A)
【文献】特開2005-097480(JP,A)
【文献】特開2014-047304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 3/00 - 3/28
B29B 27/00 - 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200ないし500μmの粒径を有する熱可塑性ポリウレタン粒子
であって、
下記計算式3:
(計算式3)
圧縮度=(圧縮バルク密度-弛緩バルク密度)/圧縮バルク密度×100
によって計算された圧縮度が10ないし20%であることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン粒子。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタン粒子の不純物含量は50ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)によって10℃/minの昇温分析で導き出されたDSC曲線に、ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)の間の温度で冷結晶化温度(Tcc)のピークが表れることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、下記計算式1によって計算された縦横比が1.00以上1.05未満で、
下記計算式2によって計算された球形度が0.95ないし1.00である請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子。
(計算式1)
縦横比(aspect ratio)=長軸(major axis)/短縮(minor axis)
(計算式2)
球形度(roundness)=4×面積(area)/(π×長軸^2)
【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、0.45ないし0.5g/cm3の圧縮バルク密度を有することを特徴とする請求項
1に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタン粒子は10ないし20秒の流下時間を有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子。
【請求項7】
請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法であって、
前記製造方法は、
(1)熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出機へ供給して押出する段階;
(2)押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気をノズルに供給し、熱可塑性ポリウレタン樹脂と空気を接触させて熱可塑性ポリウレタン樹脂を粒子化した後、粒子化された熱可塑性ポリウレタン樹脂を吐出する段階;及び
(3)吐出された熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却器に供給して熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却した後、冷却された熱可塑性ポリウレタン粒子を収得する段階を含
み、
前記(2)段階で、ノズルの断面を基準にして空気は中心部と外郭部に供給され、押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂は空気が供給される中心部と外郭部の間に供給され、
ノズルの吐出部での断面を基準にして、外郭部に供給された空気、および空気が供給される中心部と外郭部との間へ供給された押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂の断面積の比は2:1ないし4:1であることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記(2)段階でノズルに供給される押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂は、0.5ないし20Pa・sの溶融粘度を有することを特徴とする請求項
7に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記(2)段階でノズルの内部は250ないし350℃で維持されることを特徴とする請求項
7に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記(2)段階でノズルの
末端部は、下記計算式4によって計算される温度で維持されることを特徴とする請求項
9に記載の熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法。
(計算式4)
末端部温度=ガラス転移温度(Tg)+(分解温度(Td)-ガラス転移温度(Tg))×A
前記計算式4において、ガラス転移温度及び分解温度は、熱可塑性ポリウレタンに対する値であり、前記Aは0.5ないし1.5である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月9日付韓国特許出願第10-2017-0030178号、2017年3月9日付韓国特許出願第10-2017-0030179号、2017年9月18日付韓国特許出願第10-2017-0119544号、及び2018年3月8日付韓国特許出願第10-2018-0027628号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン粒子及びこの製造方法、より具体的には200ないし500μmの粒径を有する熱可塑性ポリウレタン粒子及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリウレタン粒子は、化粧品用、塗料やコーティング剤のフィラー、ホットメルト接着剤、加熱成形品及び重合トナーなどの多様な産業分野に活用される。前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、特に、自動車用内装材の中でもインストルメントパネル(Instrument Panel、IP)またはドアトリムスキン(Door Trim Skin)に適用されてもよい。前記インストルメントパネルまたはドアトリムスキンは、パウダースラッシュ成形(Powder Slush Molding、PSM)工程によって製作される。
【0004】
前記パウダースラッシュ成形工程は、下記の4段階で構成される。第1段階では、パウダーボックスに粒子を満たした後、所望の立体形成を持って200ないし300℃に焼かれた金型を締結する。第2段階では、パウダーボックスを回転して金型に粒子がくっついた後、とけてスキンを形成する。第3段階では、パウダーボックスから金型を脱型して冷却させる。第4段階では、金型から形成されたポリウレタンスキンを取り出す。
【0005】
前記パウダースラッシュ成形工程において、熱可塑性ポリウレタン粒子が適切に活用されるためには、適した粒径などの粒子的特性が基本的に要求されるし、特に、前記パウダースラッシュ成形工程の第二段階は、成形品の品質を決める重要な段階であって、粒子がよく圧縮されるほど、粒子状態での流れ性が良いほどピンホール(Pin-hole)の発生が減って成形品の品質が高くなれる。
【0006】
熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法としては、凍結粉砕と代表される粉砕法;高温の溶媒に溶解した後で冷却して析出させたり、溶媒に溶解した後で貧溶媒を添加して析出させる溶媒溶解析出法;及び混合器内で熱可塑性樹脂及び非商用樹脂を混合して熱可塑性樹脂を分散相に、熱可塑性樹脂と非商用樹脂を連続相に有する組成物を形成させた後、非商用樹脂をとり除くことで熱可塑性樹脂粒子を得る溶融混練法などが存在する。
【0007】
前記粉砕法を通じて粒子を製造する場合、製造された熱可塑性ポリウレタン粒子の粒子均一性を確保しにくいという問題点がある。また、粉砕法の冷却時に液体窒素を使うので粒子収得工程に対比して高費用が必要となり、熱可塑性ポリウレタン樹脂原料に対して顔料、酸化防止剤などを添加するコンパウンディング工程が加えられる場合には配置式で勧められるため、連続的な粒子収得工程に比べて生産性が低くなる。前記溶媒溶解析出法及び溶融混練法を通じて粒子を製造する場合、熱可塑性樹脂粒子の他に溶媒など他の成分が不純物で検出されることがあるという問題点がある。前述した問題点によって従来の方法で熱可塑性ポリウレタン粒子を製造する場合、パウダースラッシュ成形工程などに活用される適した物性を有する熱可塑性ポリウレタン粒子を製造することができない。
【0008】
よって、当該技術分野ではパウダースラッシュ成形工程に適するよう、粒子的特性が改善された熱可塑性ポリウレタン粒子が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本特開2001-288273号公報
【文献】日本特開2000-007789号公報
【文献】日本特開2004-269865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出し、押出された樹脂を空気と接触させて微粒化した後、これを冷却して熱可塑性ポリウレタン粒子を製造することにより、粒子内で樹脂成分を除いた不純物の混入が効果的に防止され、既存の方法によっては収得することができなかったパウダースラッシュ成形工程などに活用するに適した物性を有する熱可塑性ポリウレタン粒子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1側面によれば、
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂から連続的なマトリックス(matrix)相に形成され、200ないし500μmの粒径を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂を提供する。
【0012】
本発明の一具体例において、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)によって10℃/minの昇温分析で導き出されたDSC曲線に、ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)間の温度で冷結晶化温度(Tcc)のピークが表れる。
【0013】
本発明の一具体例において、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、縦横比が1.00以上1.05未満で、球形度が0.95ないし1.00である。
【0014】
本発明の一具体例において、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、圧縮度が10ないし20%である。
【0015】
本発明の第2側面によれば、
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出機へ供給して押出する段階;押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気をノズルに供給し、熱可塑性ポリウレタン樹脂と空気を接触させて熱可塑性ポリウレタン樹脂を粒子化した後、粒子化された熱可塑性ポリウレタン樹脂を吐出する段階;及び吐出された熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却器に供給して熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却した後、冷却された熱可塑性ポリウレタン粒子を収得する段階を含む、熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出した後、空気と接触させて微粒化して製造されることで、基本的に粒子内には溶媒などの不純物が存在しない。また、本発明の粒子は200ないし500μmの大口径を持ちながらも均一な粒子分布を示し、10ないし20%の高い圧縮度を有する。
前述した物性を有する熱可塑性ポリウレタン粒子をパウダースラッシュ成形工程などに活用する場合、不良品の発生を最小化して成形品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の熱可塑性ポリウレタン粒子の形状を概略的に示すイメージである。
【
図2】本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法を概略的に示す工程フロー図である。
【
図3】本発明の具体例によってノズルに熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気の供給位置を示すノズル吐出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によって提供される具体例は下記の説明によって全て達成されることができる。下記の説明は、本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解しなければならず、本発明が必ずこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0019】
以下、明細書における数値範囲に対して、「ないし」の表現は範囲の上限と下限をいずれも含む意味で使われ、上限または下限を含まない場合には、含むか否かを具体的に示すために「未満」、「超」、「以下」または「以上」の表現が使われる。
【0020】
本発明は、従来の粒子製造方法では収得できなかったパウダースラッシュ成形工程などに活用するに適した物性を有する熱可塑性ポリウレタン粒子を提供する。以下では、本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子について具体的に説明する。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン粒子
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出した後、空気と接触させて微粒化することで製造された熱可塑性ポリウレタン粒子を提供する。本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法は、既存の粉砕法、溶媒溶解析出法、及び溶融混練法に比べて改善された方法であって、具体的な製造方法は、下記の「熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法」部分で説明する。
【0022】
本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は、200ないし500μmの粒径を持つ。200μm未満または500μm超の粒径を持つ熱可塑性ポリウレタン粒子の場合、パウダースラッシュ成形シートを成形する時、粒子の流れ性を邪魔する要因で作用するため、一般的にパウダースラッシュ成形工程では適用することができない。前記サイズの粒径は一般的微粒子に比べて大口径にあたるが、粒子が大口径であるほど製造過程で粒子の形状を制御することが難しい。しかし、本発明は製造過程で粒子の形状を制御しやすくて、大口径の粒子ながらも球形度が高く、粒子の大きさの分布も比較的に均一に形成される。
【0023】
本発明において、粒子の形状は下記の縦横比(aspect ratio)及び球形度(roundness)で評価され、縦横比及び球形度が1に近いほど粒子の形状は球形に近いものと解釈される。前記縦横比は、下記計算式1によって計算される。
(計算式1)
縦横比(aspect ratio)=長軸(major axis)/短縮(minor axis)
【0024】
また、前記球形度は下記計算式2によって計算される。
(計算式2)
球形度(roundness)=4×面積(area)/(π×長軸^2)
【0025】
前記計算式について具体的に説明するために、熱可塑性ポリウレタン粒子を概略的に図示した
図1を提供する。
図1によれば、前記計算式1及び2における「長軸」は、前記熱可塑性ポリウレタン粒子の2Dイメージ(断面)の平行な二つの接線間の垂直距離(d)の中で最も長い距離を意味し、「短縮」は前記熱可塑性ポリウレタン粒子の2Dイメージ(断面)の平行な二つの接線間の垂直距離(d)の中で最も短い距離を意味する。また、前記計算式2における「面積」は、前記熱可塑性ポリウレタン粒子の長軸を含む断面積を意味する。
図1は、前記熱可塑性ポリウレタン粒子の平行な二つの接平面間の垂直距離(d)が長軸の場合の例示で、面積(A)を図示したものである。
【0026】
本発明の一具体例によれば、本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は1.00以上1.05未満、より具体的には1.02以上1.05未満の縦横比を有してもよく、0.95ないし1.00、より具体的には0.98ないし1.00の球形度を有してもよい。前記熱可塑性ポリウレタン粒子の形状が前述した縦横比及び球形度の範囲を充たす場合、熱可塑性ポリウレタン粒子の流れ性及び均一度が高くなってパウダースラッシュ成形工程に適用するに当たり粒子の取り扱いが容易であり、前記粒子を使用してパウダースラッシュ成形工程を通じて製造された製品も内部空隙などの欠陷が抑制されて品質が向上される。
【0027】
前記計算式1及び2による数値は、熱可塑性ポリウレタン粒子のイメージをImageJ(National Institutes of Health(NIH))を使ってイメージ処理-Binaryイメージに変換した後で個別粒子の球形度合いを数値化-することで測定可能である。
【0028】
本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は、熱可塑性ポリウレタン樹脂から連続的なマトリックス(matrix)相に形成された粒子である。熱可塑性ポリウレタン樹脂から連続的なマトリックス相に形成されるということは、熱可塑性ポリウレタン樹脂を追加成分なしに連続的に密集された構造を形成することを意味する。熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出し、溶融した後で溶融物を空気に粒子化することで、熱可塑性ポリウレタン粒子は密集した構造を有して連続的に生成される。これと違って、従来の製造方法によれば、追加成分を投入して粒子が形成されたり、冷却・粉砕の不連続的過程を通して粒子が形成されるため、連続的なマトリックス相に粒子が形成されない。
【0029】
熱可塑性ポリウレタン樹脂から連続的なマトリックス相に形成された粒子は、基本的に粒子の製造過程で不純物が混入されないため、高純度である。ここで、「不純物」は、粒子を製造する時に混入されることがある熱可塑性ポリウレタン以外の成分を意味する。例示的な不純物として、熱可塑性ポリウレタン樹脂を分散させるための溶媒、粉砕またはグラインディング過程で含まれる重金属成分、及び重合過程で含まれる未反応単量体などがある。本発明の一具体例によれば、本発明の熱可塑性ポリウレタン粒子の不純物含量は50ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは5ppm以下であってもよい。
【0030】
また、前記粒子は、純度だけでなく他の特性をさらに有することができる。このような特性の一つとして、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)によって10℃/minの昇温分析で導き出されたDSC曲線で、ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)の間の温度で冷結晶化温度(Tcc)のピークが表れる。熱可塑性ポリウレタン粒子は、常温で球形の固体粒子である。このような粒子を示差走査熱量計を利用して昇温分析する場合、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)の間の温度で冷結晶化温度(Tcc)のピークが表れるようになり、これは、つまり前記熱可塑性ポリウレタン粒子が溶融される前に発熱する特性を有することを意味する。本明細書で冷結晶化温度(Tcc)のピークは、熱可塑性高分子粒子を最初に昇温分析する時に表れる冷結晶化温度(Tcc)のピークのみを意味し、この後の反復的な昇温によって粒子の内部構造が変形されることによって発生し得る冷結晶化温度(Tcc)のピークは、本明細書で説明している粒子の特性には含まれない。反復的な昇温によって冷結晶化温度(Tcc)のピークを持てば、反復的な昇温のためのエネルギーが消耗されるので、粒子を加工する時にエネルギー側面で利点を持つことができない。本発明の一具体例によれば、前記冷結晶化温度(Tcc)は、ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)の間の30%ないし70%区間で表れる。前記区間で0%はガラス転移温度(Tg)で、100%は融点(Tm)である。また、前記DSC曲線によれば、前記熱可塑性高分子粒子は吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差(△H1-△H2)の値が3ないし100J/gであってもよい。このような特徴によって前記熱可塑性ポリウレタン粒子を利用してパウダースラッシュ成形工程を行う場合、従来に同種の熱可塑性ポリウレタン粒子の加工温度に比べて低温で加工可能な利点を得ることができる。
【0031】
本発明の熱可塑性ポリウレタン粒子は、従来の熱可塑性ポリウレタン粒子に比べて高い圧縮度を持つ。前記圧縮度は、下記計算式3によって計算されることができるが、本発明の一具体例によれば、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は10ないし20%の圧縮度を有する。
【0032】
(計算式3)
圧縮度=(P-A)/P×100
前記計算式3において、Pは圧縮バルク密度を意味し、Aは弛緩バルク密度を意味する。
【0033】
前述したように、本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は流れ性が良いので、粒子の間の空隙をよく埋めることができ、これによって別の製造方法によって製造された熱可塑性ポリウレタン粒子より圧縮度が高い数値で維持される。熱可塑性ポリウレタン粒子の圧縮度は、粒子を通じた成形品の製造時に成形品の品質に影響を及ぼすことがあるし、本発明のように一定以上の圧縮度を有する熱可塑性ポリウレタン粒子を使用する場合、成形品でピンホールの発生が減って成形品の品質が高くなる。本発明の一具体例によれば、前記熱可塑性ポリウレタン粒子は、0.45ないし0.5g/cm3の圧縮バルク密度を有する。前記圧縮バルク密度は、別の製造方法によって製造された熱可塑性ポリウレタン粒子より低い数値を有するが、これは高い球形度と均一な粒子の大きさの分布を有する本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子が圧縮後も粒子の間に一定大きさの空隙を有することができるためである。
【0034】
本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は、10ないし20秒の流下時間を持つ。前記流下時間は粉体の流動性を表す数値である。前記流下時間が短いということは、粒子間の摩擦抵抗が少ないことを意味し、粒子間の摩擦抵抗が少ないと前記粒子を扱うこと容易である。本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子は、流下時間の側面でも優秀な水準を保つことができ、粒子を適用するにあたり粒子の取り扱いが容易である。
【0035】
前述した特徴を有する熱可塑性ポリウレタン粒子は、下記の製造方法によって製造される。以下では、本発明による熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法について具体的に説明する。
【0036】
熱可塑性ポリウレタン粒子の製造方法
図2は前記製造方法に対する工程フロー図を概略的に示す。前記製造方法は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出機へ供給して押出する段階(S100);押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気をノズルに供給し、熱可塑性ポリウレタン樹脂と空気を接触させて熱可塑性ポリウレタン樹脂を粒子化した後、粒子化された熱可塑性ポリウレタン樹脂を吐出する段階(S200);及び吐出された熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却器へ供給して熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却した後、冷却された熱可塑性ポリウレタン粒子を収得する段階(S300)を含む。以下では、前記製造方法の各段階について具体的に説明する。
【0037】
本発明によって熱可塑性ポリウレタン粒子を製造するために、先ず原料である熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出機へ供給して押出する。熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出することで、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ノズルでの粒子加工に適する物性を有する。原料で使われる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、製造された粒子の適正な物性を考慮して10,000ないし200,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することが好ましいことがある。
【0038】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が供給される押出機は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を加熱及び加圧して熱可塑性ポリウレタン樹脂の粘度などの物性を調節する。ノズルで粒子化するのに適する物性で調節可能であれば、前記押出機の種類は特に限定されない。本発明の一具体例によれば、前記押出機は効率的な押出のために二軸スクリュー押出機が使われてもよい。前記押出機の内部は150ないし300℃、好ましくは170ないし270℃、より好ましくは200ないし250℃に維持されることが好ましい。前記押出機の内部温度が150℃未満であれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の粘度が高くてノズルでの粒子化に適しないだけでなく、押出機内で熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れ性が低くて押出に効率的ではない。また、前記押出機の内部温度が300℃超であれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れ性が高くて効率的な押出が可能であるが、ノズルで熱可塑性ポリウレタン樹脂が粒子化される時、細かい物性調節が難しい。
【0039】
熱可塑性ポリウレタン樹脂の押出量は、押出機のサイズを考慮して熱可塑性ポリウレタン樹脂の物性調節が容易であるように設定されてもよい。本発明の一具体例によれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂は1ないし10kg/hrの速度で押出される。押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂の粘度は0.5ないし20Pa・s、好ましくは1ないし15Pa・s、より好ましくは2ないし10Pa・sであってもよい。熱可塑性ポリウレタン樹脂の粘度が0.5Pa・s未満であれば、ノズルで粒子を加工しにくいし、熱可塑性ポリウレタン樹脂の粘度が20Pa・s超であれば、ノズルで熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れ性が低くて加工効率が落ちる。押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂の温度は150ないし250℃であってもよい。
【0040】
押出機で押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂はノズルに供給される。前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とともに、空気もノズルに供給される。前記空気はノズル内で熱可塑性ポリウレタン樹脂と接触して熱可塑性ポリウレタン樹脂を粒子化する。熱可塑性ポリウレタン樹脂の物性を適切に維持させるために、ノズルには高温の空気が供給される。本発明の一具体例によれば、前記空気の温度は250ないし450℃、好ましくは260ないし400℃、より好ましくは270ないし350℃であってもよい。前記空気の温度が250℃未満であるか、または450℃超であれば熱可塑性ポリウレタン樹脂で熱可塑性ポリウレタン粒子が製造される時、空気と接触した表面の物性が好ましくない方向に変化させることがあって問題になる。特に、空気の温度が450℃を超えると空気との接触面に過度な熱が供給され、粒子の表面で熱可塑性ポリウレタンの分解現象が発生することがある。
【0041】
ノズルに供給される熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気は、熱可塑性ポリウレタン粒子が適切な大きさ及び形状を有してもよく、形成された粒子が均一に分散されるように供給位置が設定される。
図3はノズル吐出部の断面図を示し、本発明の一具体例による熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気の供給位置は、
図3を通して具体的に説明される。本明細書で具体的に説明するために、ノズルの位置を「注入部」、「吐出部」、及び「末端部」などで表現する。ノズルの「注入部」はノズルが始まる位置を意味し、ノズルの「吐出部」はノズルが終わる位置を意味する。また、ノズルの「末端部」はノズルの3分の2地点から吐出部までの位置を意味する。ここで、ノズルの0地点はノズルの注入部であり、ノズルの1地点はノズルの吐出部である。
【0042】
図3で図示されたように、熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気の流れ方向と垂直の断面は円形である。前記空気は、前記円形の中心に供給される第1の空気の流れ40と前記円形の外郭部に供給される第2の空気の流れ20を通して供給され、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂は、第1の空気の流れ40と第2の空気の流れ20の間に供給される。熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気がノズルの注入部に供給される時からノズルの吐出部直前まで各供給の流れ(熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れ30、第1の空気の流れ40及び第2の空気の流れ20)は、ノズル内部の構造によって分離される。ノズル吐出部の直前で熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れと第2の空気の流れが合されて熱可塑性ポリウレタン樹脂と空気が接触し、これによって熱可塑性ポリウレタン樹脂は粒子化される。これと違って、第1の空気の流れは、熱可塑性ポリウレタン樹脂及び空気がノズルから吐出されるまで熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れ及び第2の空気の流れとはノズルの内部構造によって分離される。第1の空気の流れは、第2の空気の流れによって粒子化された熱可塑性ポリウレタン樹脂の粒子がノズルの吐出部で粘着されることを防止し、ノズルで吐出した後、冷却器に供給される前に吐出された粒子を均一に分散させる役目をする。
【0043】
押出機で押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂は、全て前述したノズルの位置に供給され、ノズルに供給される空気の流量は押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂の流量によって調節されてもよい。本発明の一具体例によれば、前記空気は1ないし300m3/hr、好ましくは30ないし240m3/hr、より好ましくは60ないし180m3/hrの流量でノズルに供給される。前記空気の流量範囲内で空気は第1の空気の流れと第2の空気の流れに分離して供給される。前述したように、熱可塑性ポリウレタン樹脂は第2の空気の流れによって粒子化されるが、第2の空気の流れの温度だけでなく、熱可塑性ポリウレタン樹脂と第2の空気の流れの割合が粒子の物性を決めることができる。本発明の一具体例によれば、ノズルの吐出部断面を基準にして第2の空気の流れと熱可塑性ポリウレタン樹脂の断面積の比は2:1ないし4:1、好ましくは2.5:1ないし3.5:1であってもよい。前記範囲内で第2の空気の流れと熱可塑性ポリウレタン樹脂の割合が調節される場合、パウダースラッシュ成形工程に活用性の高い適正の大きさ及び形態の熱可塑性ポリウレタン粒子を製造することができる。
【0044】
ノズルで熱可塑性ポリウレタン樹脂は粒子化になるので、ノズルの内部は熱可塑性ポリウレタン樹脂が粒子化されるに適した温度に調節される。急激な温度の上昇は熱可塑性ポリウレタンの構造を変化させることができるため、押出機からノズルの吐出部までの温度は段階的に上昇されてもよい。よって、ノズルの内部温度は平均的に押出機の内部温度より高い範囲で設定される。ノズルの末端部に対する温度は以下で別に定義しているので、本明細書でノズルの内部温度は特に言及しない限り、ノズルの末端部を除いたノズルの残り部分の平均温度を意味する。本発明の一具体例によれば、ノズルの内部は250ないし350℃で維持されることができる。ノズルの内部温度が250℃未満であれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂に、粒子化時に物性を充たせるための十分な熱が伝達されないし、ノズルの内部温度が350℃超であれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂に過度な熱が供給されて熱可塑性ポリウレタン構造を変化させることができる。
【0045】
ノズルの末端部は、生成された粒子の外的及び内的物性を向上させるためにノズル内部の平均温度より高い温度で維持されてもよい。ノズル末端部の温度は熱可塑性ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)と熱分解温度(Td)の間で決まってもよいが、具体的には下記計算式4によって決まってもよい。
【0046】
(計算式4)
末端部温度=ガラス転移温度(Tg)+(熱分解温度(Td)-ガラス転移温度(Tg))×A
【0047】
ここで、前記Aは0.5ないし1.5、好ましくは0.65ないし1.35、より好ましくは0.8 ないし1.2であってもよい。前記Aが0.5未満であれば、ノズル末端部の温度上昇による粒子の外的及び内的物性の向上を期待しがたいし、前記Aが1.5超であればノズルの末端部で熱可塑性ポリウレタンに実質的に伝達される熱が過度に増加して熱可塑性ポリウレタンの構造が変形されることがある。前記ガラス転移温度及び熱分解温度は、高分子の種類、重合度、構造などによって変わることがある。本発明の一具体例によれば、本発明の熱可塑性ポリウレタンは-40ないし-20℃のガラス転移温度を有し、250ないし350℃の熱分解温度を有する熱可塑性ポリウレタンが使われてもよい。ノズルの末端部はノズルの平均温度より高く維持されるので、場合によってノズルの末端部にはさらなる加熱手段が備えられてもよい。
【0048】
ノズルで吐出された熱可塑性ポリウレタン粒子は冷却器に供給される。ノズルと冷却器は離隔して位置させてもよく、この場合、吐出された熱可塑性ポリウレタン粒子が冷却器に供給される前に周辺空気によって1次的に冷却される。ノズルでは熱可塑性ポリウレタン粒子だけでなく高温の空気も一緒に排出されるが、ノズルと冷却器を離隔させることで、高温の空気を冷却器ではない外部へ排出することができるので、冷却器で冷却効率を高めることができる。本発明の一具体例によれば、冷却器はノズルと100ないし500mm、好ましくは150ないし400mm、より好ましくは200ないし300mm離隔して位置する。前記距離より離隔距離が短い場合は、冷却チャンバ内に多量の高温の空気が注入されるため冷却効率が低く、前記距離より離隔距離が長い場合は、周辺空気によって冷却する量が多くなるため冷却チャンバによる急速冷却ができない。また、ノズルで熱可塑性ポリウレタン粒子を吐出する時の噴射角は10ないし60゜であってもよいが、当該角度で熱可塑性ポリウレタン粒子を吐出する場合、ノズルと冷却器の離隔による効果を倍加することができる。
【0049】
冷却器は、冷却器の内部に低温の空気を供給して前記空気と熱可塑性ポリウレタン粒子を接触させることで、熱可塑性ポリウレタン粒子を冷却することができる。前記低温の空気は冷却器内で回転気流を形成するが、前記回転気流によって冷却器内で熱可塑性ポリウレタン粒子の滞留時間を十分確保することができる。冷却器に供給される空気の流量は、熱可塑性ポリウレタン粒子の供給量によって調節されることができ、本発明の一具体例によれば、前記空気は1ないし10m3/minの流量で冷却器に供給されることができる。前記空気は-30ないし-20℃の温度を有することが好ましい。冷却器に供給される熱可塑性ポリウレタン粒子と比べて極低温の空気を冷却器内に供給することで、熱可塑性ポリウレタン粒子が急速に冷却されて吐出する時、高温の熱可塑性ポリウレタン粒子の内部構造を適当に維持することができる。熱可塑性ポリウレタン粒子は、製品を製造するために実際適用する時に再加熱されるが、この時再加熱された熱可塑性ポリウレタンは加工に有利な物性を有する。低温の空気によって冷却された熱可塑性ポリウレタン粒子は40℃以下に冷却されて排出され、排出された粒子はサイクロンまたはバッグフィルターを通して捕集する。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を理解しやすくするための好ましい実施例を示すが、下記実施例は本発明を容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されることではない。
【0051】
実施例
実施例1:本発明の製造方法による熱可塑性ポリウレタン粒子の製造
熱可塑性ポリウレタン樹脂(Lubrizol、PearlthaneTM D91M80、Mw:約160,000g/mol、ガラス転移温度(Tg):約-37℃、熱分解温度(Td):約290℃)100重量%を二軸スクリュー押出機(直径(D)=32mm、長さ/直径(L/D)=40)に供給した。前記二軸スクリュー押出機は、約220℃の温度条件及び約5kg/hrの押出量条件に設定して押出した。押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂は、約5Pa・sの粘度を有し、前記押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂を約300℃の内部温度及び約350℃の末端部温度(計算式4によるA値は約1.18である)に設定されたノズルに供給した。また、約350℃の空気を約1m3/minの流量でノズルに供給した。前記空気はノズル断面の中心部と外郭部に供給され、前記押出された熱可塑性ポリウレタン樹脂は空気が供給されるノズルの中心部と外郭部の間に供給された。外郭部に供給された空気と、空気が供給された中心部と、外郭部との間に供給された押出された熱可塑性ポリウレタンの断面積の比は約2.9:1であった。ノズルに供給された熱可塑性ポリウレタン樹脂は高温の空気と接触して微粒化され、微粒化された粒子がノズルから噴射された。ノズルからの噴射角は約45゜で、噴射された粒子はノズルから約200mm離隔された冷却チャンバ(直径(D)=1,100mm、長さ(L)=3,500mm)に供給された。また、前記冷却チャンバは噴射された粒子が供給される前から-25℃の空気を約6m3/minの流量で注入して回転気流を形成するように調節した。冷却チャンバ内で40℃以下に充分冷却された粒子は、サイクロンまたはバッグフィルターを通して捕集された。
【0052】
比較例1:冷凍粉砕方式にしたがう熱可塑性ポリウレタン粒子の製造
実施例1と同一な熱可塑性ポリウレタン樹脂をホッパーを通してスクリュー供給期へ供給した。スクリューを通して原料を移動させながら水分をとり除いた後、-130℃の液体窒素が供給される粉砕機へ原料を投入した。前記粉砕機は、ピンクラッシャー(Pin Crusher)タイプの粉砕機が使われた。粒子の大きさは粉砕サイズ決定ピンを通じて調節された。粉砕機を通じて微粒化された粒子は、サイクロンを通して捕集された。
【0053】
実験例1:粒子の物性評価
前記実施例1と比較例1によって製造された粒子の物性を測定して下記表1に示す。
【0054】
【0055】
1)常温でImageJ(National Institutes of Health(NIH))を使って粒子の集合体である粉末の平均粒径を導き出す。粒子それぞれの長軸を粒径にし、粒子の集合体に対してそれぞれの粒径の数平均値を平均粒径とする。
2)、3)同一装置を使用してイメージ処理-Binaryイメージに変換した後、個別粒子の球形度を数値化-することで粒子形成を分析し、計算式1及び2によって縦横比及び球形度を導き出す。
4)弛緩バルク密度:100mlのシリンダーに粒子を静かに充填させた時の質量を測定して単位体積あたり質量を計算する(5回繰り返して測定した平均値)
5)圧縮バルク密度:前記1)によって粒子が充填されたシリンダーを一定の力で10回叩いて任意に圧縮させた後、質量を測定して単位体積あたり質量を計算する(5回繰り返して測定した平均値)
6)圧縮度(%)=(P-A)/P×100、P:粒子圧縮バルク密度、A:粒子弛緩バルク密度
7)流下時間:100mlのシリンダーに粒子を充填させた後、KSM3002の見掛比重測定装置漏斗に注いだ後、出口を開けて試料が完全に出るまでかかる時間を測定する(5回繰り返して測定した平均値)
【0056】
前記表1によれば、実施例1の粒子は、比較例1の粒子と比べて大口径でありながら均一な粒子分布を有する。また、実施例1の粒子は比較例1の粒子と比べて高い球形度を有し、これによって圧縮する時に一定空間を確保することができて低い圧縮バルク密度を有する。実施例1の粒子は低い圧縮バルク密度を有しながらも圧縮度が高いため、前記粒子を製品に適用する時にピンホールの発生を最小にすることができる。また、実施例1の粒子は短い流下時間を通して確認することができるよう、流動性が高くて粒子の取り扱い及び加工が容易である。
【0057】
実験例2:DSC分析
前記実施例1と比較例1によって製造された粒子をDSC分析して下記表2に示す。具体的に、示差走査熱量計(DSC、Perkin-Elmer、DSC8000)を利用して10℃/minの昇温速度下で0℃から200℃まで昇温してDSC曲線を得た。それぞれのDSC曲線からガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、冷結晶化温度(Tcc)及び吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差を導き出した。
【0058】
【0059】
前記実施例1の熱可塑性ポリウレタン粒子は36℃で冷結晶化温度ピークが表れる一方、前記比較例1の熱可塑性ポリウレタン粒子はこのような冷結晶化温度ピークが表れないことを確認することができた。さらに、実施例1の場合、吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差が約5.5J/gと表れる一方、比較例1の場合に吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差が約10J/gと表れることを確認することができた。これは実施例1の熱可塑性ポリウレタン粒子が冷結晶化現象によって粒子が溶融される前に発熱する特性を有するため、相対的に高い発熱量を持つと理解される。
【0060】
実施例1のように、熱可塑性ポリウレタン粒子が冷結晶化温度ピークを有する場合、このような粒子を利用してパウダースラッシュ成形工程を施す場合、比較例1の熱可塑性ポリウレタン粒子の加工温度に比べて低温で加工可能な利点を持つことができる。
【0061】
比較例2:溶媒重合方式にしたがう熱可塑性ポリウレタン粒子の製造
ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)溶媒にエステルまたはエーテル系ポリオールを入れて撹拌した後、ジイソシアネートを投入してプレポリマーを合成した。この後、80℃の温度で反応性単分子であるジオールまたはジアミン系の鎖延長剤を入れて最終的に400μm大きさの熱可塑性ポリウレタン粒子を製造した。
【0062】
実験例3:粒子内の不純物分析
前記実施例1と比較例2によって製造された粒子の不純物含量を分析して下記表3に示す。具体的に、粒子内の残留溶媒は、GC/FID装置(製造社:Agilent、モデル:7890A)を通して測定され、粒子内の重金属はICP/MS装置(製造社:Perkinelmer、モデル:Nexion300)を通して測定された。下記表3の不純物含量は、粒子内の残留溶媒の含量と重金属含量を合わせた値である。
【0063】
【0064】
前記表3によれば、比較例2の粒子は粒子を製造する時に溶媒が使われるので、粒子内の残留溶媒などによって実施例1の粒子と比べて顕著に高い含量の不純物が確認された。これと違って、実施例1の粒子は、粒子の製造過程で装置から流入される微量の不純物を除いた残留溶媒などの不純物はほとんど存在しなかった。
【0065】
本発明の単純な変形ないし変更は、全て本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。
【符号の説明】
【0066】
d:平行な二つの接平面の垂直距離
A:面積
10:ノズル
20:第2の空気の流れ
30:熱可塑性ポリウレタン樹脂の流れ
40:第1の空気の流れ