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特許6994710伸縮性金属光沢糸及びそれを用いた撚り糸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】伸縮性金属光沢糸及びそれを用いた撚り糸
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/12 20060101AFI20220106BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220106BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220106BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
D02G3/12
B32B15/08 H
B32B27/40
B32B15/095
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017141044
(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2019019432
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593160105
【氏名又は名称】泉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511181186
【氏名又は名称】カタニ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080126
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 惇逸
(72)【発明者】
【氏名】福永 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】大濱 亮平
(72)【発明者】
【氏名】新地 隆裕
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特公昭40-022014(JP,B1)
【文献】特開昭61-041335(JP,A)
【文献】特開平11-350279(JP,A)
【文献】特開2004-076177(JP,A)
【文献】特開2001-234442(JP,A)
【文献】特開2001-123349(JP,A)
【文献】特開平08-238703(JP,A)
【文献】特開2007-136689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層と、前記ベースフィルム層表面に形成された金属薄膜層と、前記金属薄膜層表面に形成された薄膜保護層とからなる積層構造を内包する金属光沢糸であって、前記ベースフィルム層がポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなると共に前記金属薄膜層が不連続金属薄膜からなり、さらに前記薄膜保護層が前記ベースフィルム層、金属薄膜層及び薄膜保護層以外の他の層構成部材を含めて透明であり且つ伸縮性を有することを特徴とする伸縮性金属光沢糸。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮性金属光沢糸において、ベースフィルム層の外側に第一着色層が形成されると共に金属薄膜層表面に薄膜保護層を兼ねる第二着色層が形成された層構成を有する伸縮性金属光沢糸。
【請求項3】
請求項1に記載の伸縮性金属光沢糸において、金属薄膜層が二層のベースフィルム層の間に挟まれた層構成を有する伸縮性金属光沢糸。
【請求項4】
請求項3に記載の伸縮性金属光沢糸において、第一ベースフィルム層表面に形成された金属薄膜層の表面に薄膜保護層を兼ねる第二ベースフィルム層が形成された層構成を有する伸縮性金属光沢糸。
【請求項5】
請求項4に記載の伸縮性金属光沢糸において、第一ベースフィルム層表面に前処理用アンダーコート層を兼ねる第一着色層を介して金属薄膜層が形成されると共に前記金属薄膜層表面に薄膜保護層を兼ねる第二着色層を介して第二ベースフィルム層が形成された層構成を有する伸縮性金属光沢糸。
【請求項6】
請求項3に記載の伸縮性金属光沢糸において、ベースフィルム層表面に金属薄膜層が形成されてなる二組の積層体が各金属薄膜層を内側にして接着層を介して貼り合わされると共に前記接着層が各積層体における薄膜保護層を兼ねるようにした層構成を有する伸縮性金属光沢糸。
【請求項7】
請求項6に記載の伸縮性金属光沢糸において、各ベースフィルム層に前処理用アンダーコート層を兼ねる着色層を介して金属薄膜層が形成された層構成を有する伸縮性金属光沢糸。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の伸縮性金属光沢糸において、不連続金属薄膜からなる金属薄膜層が真空蒸着法により形成された伸縮性金属光沢糸。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の伸縮性金属光沢糸において、不連続金属薄膜からなる金属薄膜層の形成にインジウム(In)及びスズ(Sn)から選ばれた一種の金属が使用された伸縮性金属光沢糸。
【請求項10】
請求項1~の何れかに記載の伸縮性金属光沢糸が無芯巻き又は他の糸との合撚で撚られてなる撚り糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮しても金属光沢を良好且つ安定に維持し得る伸縮性金属光沢糸及びそれを用いた撚り糸に関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢糸として、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムからなるベースフィルム層と、前記ベースフィルム層表面にアルミニウム、純銀その他の金属を用いて真空蒸着法等により形成された金属薄膜層と、前記金属薄膜層表面に形成された薄膜保護層とからなる積層構造を有する平箔糸やこれを用いた撚り糸が従来周知であり、これらは織物、編物、刺繍物、縫製物等の素材に光輝な金属光沢を付与するために広く使用されている。
【0003】
しかしながら、従来の前記金属光沢糸の場合、これが一度引き伸ばされるとその金属薄膜に多数の不可逆的なクラックが入ってしまい、前記引き伸ばし時のみならず引き伸ばしの解除後も、即ち伸縮何れの状態の時も金属光沢や光輝性が著しく鈍化することから、このような金属光沢糸を、昨今成長の著しい服飾分野である、ストレッチ性のある衣服類等の素材に適用することが困難であった。
【0004】
前記問題に対しては、例えば、特開昭60-59146号公報に、ラメ糸のような光沢扁平糸にポリウレタン系弾性繊維等の弾性糸を伸長させた状態で巻き付けた後、弾性糸の弾性収縮により前記光沢扁平糸を波状に屈曲するよう縮ませて、これに弾性糸が絡みついた状態とし、それによって伸縮性を付与された装飾糸が既に開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、特開平10-1833号公報には、ポリウレタン系弾性繊維等の弾性糸からなる芯糸に、これを一定長に伸ばした状態で、金銀糸やラメ糸等の箔糸を一方向に巻き付けて撚糸し、その上から他の糸を逆方向に巻き付け、或いは一定長に伸ばした状態の弾性糸と金銀糸やラメ糸等の箔糸とを引き揃えてなる芯糸に他の糸を巻き付けてなり、芯糸として使用した弾性糸の伸長を解いた状態で弾性糸の周囲に金銀糸やラメ糸等の箔糸がループを形成するようにすることにより伸縮自在となるようにした意匠糸が既に開示されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、従来公知の前記伸縮性装飾糸等は、金属光沢と伸縮性の両要素を確保するために、金銀糸やラメ糸等の箔糸とポリウレタン系弾性繊維等の弾性糸の一方を他方に絡ませ或いは巻き付ける等して合撚したものであることから、各々特有の風合いを発揮し得るとしても、金属光沢や光輝性の不足は免れず、ごわつき感もあり、またそれらの問題点のために用途も大きく限定されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-59146号公報
【文献】特開平10-1833号公報
【文献】特許第5294312号公報
【文献】特許第5783048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、前記問題点に鑑み、ごわつき感がなく、伸縮しても優れた金属光沢や光輝性を維持し得る伸縮性金属光沢糸及びそれを用いた撚り糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る伸縮性金属光沢糸は、請求項1に記載のように、ベースフィルム層と、前記ベースフィルム層表面に形成された金属薄膜層と、前記金属薄膜層表面に形成された薄膜保護層とからなる積層構造を内包する金属光沢糸であって、前記ベースフィルム層がポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなると共に前記金属薄膜層が不連続金属薄膜からなり、さらに前記薄膜保護層が前記ベースフィルム層、金属薄膜層及び薄膜保護層以外の他の層構成部材を含めて透明であり且つ伸縮性を有することを特徴としている。
【0010】
前記伸縮性金属光沢糸は、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなるベースフィルム層と、前記ベースフィルム層表面に形成された、不連続金属薄膜からなる金属薄膜層と、前記金属薄膜層表面に形成された透明且つ伸縮性の薄膜保護層とからなる積層構造を内包する金属薄膜形成フィルムを細幅に裁断して製造される。
【0011】
前記伸縮性金属光沢糸の層構成として、ベースフィルム層、金属薄膜層及び薄膜保護層からなる積層構造を内包する種々の層構成が実施可能である。ベースフィルム層を一層備えた層構成として、例えば、ベースフィルム層と、前記ベースフィルム層表面に形成された金属薄膜層と、前記金属薄膜層表面に形成された薄膜保護層からなる通常の層構成や該層構成の範囲内で一部態様を変形させた層構成を採用することができる。また、前記層構成のものに着色された金属光沢を与えるために、例えば、請求項2に記載のように、前記層構成におけるベースフィルム層の外側に第一着色層が形成されると共に前記金属薄膜層表面に薄膜保護層を兼ねる第二着色層が形成された層構成や該層構成の範囲内で一部態様を変形させた層構成を採用することができる。なお、前記ベースフィルム層への第一着色層の形成に代えて、ベースフィルム層自体に所要の染色を施すことも可能である。
【0012】
また、前記伸縮性金属光沢糸の層構成として、請求項3に記載のように、金属薄膜層等が二層のベースフィルム層の間に挟まれた層構成を採用することができる。前記層構成として、例えば、請求項4に記載のように、第一ベースフィルム層表面に形成された金属薄膜層の表面に薄膜保護層を兼ねる第二ベースフィルム層が形成された層構成や該層構成の範囲内で一部態様を変形させた層構成を採用することができる。また、前記層構成のものに着色された金属光沢を与えるために、例えば、請求項5に記載のように、第一ベースフィルム層表面に前処理用アンダーコート層を兼ねる第一着色層を介して金属薄膜層が形成されると共に前記金属薄膜層表面に薄膜保護層を兼ねる第二着色層を介して第二ベースフィルム層が形成された層構成や該層構成の範囲内で一部態様を変形させた層構成を採用することができる。なお、前記第一着色層及び第二着色層の形成に代えて、第一ベースフィルム層自体及び第二ベースフィルム層自体に各々所要の染色を施すことも可能である。
【0013】
さらに、前記金属薄膜層等が二層のベースフィルム層の間に挟まれた別態様の層構成として、例えば、請求項6に記載のように、ベースフィルム層表面に金属薄膜層が形成されてなる二組の積層体が各金属薄膜層を内側にして接着層を介して貼り合わされると共に前記接着層が各積層体における薄膜保護層を兼ねるようにした層構成や該層構成の範囲内で一部態様を変形させた層構成を採用することができる。また、前記層構成のものに着色された金属光沢を与えるために、請求項7に記載のように、各ベースフィルム層に前処理用アンダーコート層を兼ねる着色層を介して金属薄膜層が形成された層構成や該層構成の範囲内で一部態様を変形させた層構成を採用することができる。なお、前記各ベースフィルム層への着色層の形成に代えて、各ベースフィルム層自体に所要の染色を施すことも可能である。
【0014】
前記ベースフィルム層への金属薄膜形成に際しては、必要に応じて、前記のようなアンダーコート層の下地塗布の他、コロナ放電その他のプラズマ表面処理等が前処理として施される。また、トップコート層としての前記薄膜保護層や着色層等の形成に、必要に応じて、例えば溶液コーティングやドライラミネート等が使用される。
【0015】
前記不連続金属薄膜からなる金属薄膜層は、金属薄膜形成工程において金属原子を被形成体である前記ベースフィルム層表面やアンダーコート層表面に付着させて核成長させる際に、成長中の各核どうしが未だ接触せずに連続していない核成長の初期段階で薄膜形成操作を止めることにより形成され、この層はベースフィルム層の伸縮に際してもクラックを生じることなく柔軟に追従、対応することが可能である。前記不連続金属薄膜からなる金属薄膜層は、種々の金属薄膜形成法により形成され得るが、例えば、請求項8に記載のように、公知の真空蒸着法により好適に形成される。前記不連続金属薄膜からなる金属薄膜層には、例えば、請求項9に記載のように、インジウム(In)及びスズ(Sn)から選ばれた一種の金属が好適に使用されるが、特にインジウム(In)を使用すると、明るく白みがかった不連続金属薄膜が得られる。
【0016】
前記不連続金属薄膜からなる金属薄膜層については、従来、非導電性且つ電波反射性を有すると共に光沢に深みを持たせる加飾効果を奏すること等が知られていたが(特許文献3及び4)、本発明は、この層が、ベースフィルム層の伸縮に際してもクラックを生じることなく柔軟に追従、対応し、優れた金属光沢や光輝性を維持し得る点に着目することにより完成されたものである。
【0017】
前記ベースフィルム層としては、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムが好適に使用される。前記薄膜保護層、アンダーコート層、着色層等には、例えば、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等の種々の樹脂やラックニス、油性ワニス、ラッカー等の塗料から透明であり且つ伸縮性を有するものが適宜選択される。
【0018】
前記伸縮性金属光沢糸は、従来の平金銀糸や平箔糸等と同様の態様で使用可能であり、例えば、そのまま平箔の状態で、或いは請求項10に記載のように、無芯巻きで、又は他の伸縮性金属光沢糸、弾性糸、フィラメント糸、撚り糸等の糸と、丸撚り、蛇腹撚り、たすき撚り、羽衣撚りその他の種々の態様で合撚して撚られた撚り糸として使用される。前記伸縮性金属光沢糸が特に他の伸縮性金属光沢糸や弾性糸等の伸縮性糸と合撚して撚られた撚り糸は、伸縮性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、ごわつき感がなく、伸縮しても優れた金属光沢や光輝性を維持し得る伸縮性金属光沢糸を提供することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、一層のベースフィルム層を備えた層構成を有する伸縮性金属光沢糸に着色された金属光沢を与えることができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、薄く脆弱な金属薄膜層等が二層のベースフィルム層の間に挟まれて保護される層構成を有することから、摩擦堅牢度や耐薬品性等に優れた伸縮性金属光沢糸を提供することができる。請求項4に係る発明によれば、前請求項に記載の層構成を容易に実現することができる。請求項5に係る発明によれば、前請求項に記載の層構成を有する伸縮性金属光沢糸に着色された金属光沢を与えることができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、請求項3に係る発明の層構成を効果的に実現することができる。請求項7に係る発明によれば、前請求項に記載の層構成を有する伸縮性金属光沢糸に着色された金属光沢を与えることができる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、不連続金属薄膜からなる金属薄膜層を周知の金属薄膜形成法である真空蒸着法により形成することができる。請求項9に係る発明によれば、不連続金属薄膜からなる金属薄膜層の形成に好適な金属としてインジウム(In)又はスズ(Sn)を用いた伸縮性金属光沢糸を提供することができる。
【0024】
請求項10に係る発明によれば、前記伸縮性金属光沢糸を用いた種々の態様の撚り糸として幅広い用途に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明に係る伸縮性金属光沢糸が内包する基本的な積層構造を示す断面図である。
図2図2(A)及び(B)は、本発明の実施例1に係る、ベースフィルム層を一層備えた伸縮性金属光沢糸における着色層なし及び着色層ありの各状態の層構成を示す断面図である。
図3図3(A)及び(B)は、本発明の実施例2に係る、金属薄膜層が二層のベースフィルム層の間に挟まれた伸縮性金属光沢糸における着色層なし及び着色層ありの各状態の層構成を示す断面図である。
図4図4(A)及び(B)は、本発明の実施例3に係る、金属薄膜層が二層のベースフィルム層の間に挟まれた別態様の伸縮性金属光沢糸における着色層なし及び着色層ありの各状態の層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る伸縮性金属光沢糸MYは、図1に示すように、ベースフィルム層1、前記ベースフィルム層1表面に形成された金属薄膜層2及び前記金属薄膜層2表面に形成された薄膜保護層3からなる積層構造LSを内包してなり、前記ベースフィルム層1がポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなると共に前記金属薄膜層2が不連続金属薄膜からなり、さらに前記薄膜保護層3が前記ベースフィルム層1、金属薄膜層2及び薄膜保護層3以外の他の層構成部材を含めて透明であり且つ伸縮性を有している。なお、前記以外の他の層構成部材に属する例えば着色層や接着層等は、以下の実施例において現出することになる。
【0027】
本発明に係る伸縮性金属光沢糸MYは、以下の実施例に示すように、前記の基本的な積層構造に基づいて種々の層構成が実施可能である。なお、以下の実施例において、各種の層構成部材の形成に必要に応じてドライラミネートが使用されるが、その場合の層構成部材は図面の複雑化を避けるために一層のみの状態で図示され、接着層の図示は省略される。
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例1に係る伸縮性金属光沢糸MY1は、図2(A)に示すように、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなるベースフィルム層1と、前記ベースフィルム層1表面に形成された不連続金属薄膜からなる金属薄膜層2と、前記金属薄膜層2表面に形成された透明且つ伸縮性の薄膜保護層3とから構成される。
【0029】
前記伸縮性金属光沢糸MY1に着色を施した伸縮性金属光沢糸MY2は、図2(B)に示すように、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなるベースフィルム層1と、前記ベースフィルム層1外側に形成された透明且つ伸縮性の第一着色層4aと、前記ベースフィルム層1表面に形成された不連続金属薄膜からなる金属薄膜層2と、前記金属薄膜層2表面に形成された、薄膜保護層を兼ねる透明且つ伸縮性の第二着色層4bとから構成される。
【0030】
前記金属薄膜形成に際しては、必要に応じて、前記ベースフィルム層1に、前処理用アンダーコート層の下地塗布やコロナ放電その他のプラズマ表面処理等が前処理として施される。また、前記薄膜保護層3、第一着色層4a及び前記薄膜保護層を兼ねる第二着色層4b等の形成には、溶液コーティングやドライラミネート等が好適に使用される。
【0031】
なお、前記ベースフィルム層1外側への第一着色層4aの形成に代えて、該ベースフィルム層1表面に、前処理用アンダーコート層を兼ねる第一着色層4aを介して不連続金属薄膜からなる金属薄膜層2を形成することも可能である。また、前記ベースフィルム層1外側又は内側への第一着色層4aの形成に代えて、ベースフィルム層1自体に所要の染色を施すことも可能である。
【実施例2】
【0032】
本発明の実施例2に係る伸縮性金属光沢糸MY3は、図3(A)に示すように、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第一ベースフィルム層1aと、前記第一ベースフィルム層1a表面に形成された不連続金属薄膜からなる金属薄膜層2と、前記金属薄膜層2表面に形成された、薄膜保護層を兼ねるポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第二ベースフィルム層1bとから構成される。
【0033】
前記伸縮性金属光沢糸MY3に着色を施した伸縮性金属光沢糸MY4は、図3(B)に示すように、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第一ベースフィルム層11aと、前記第一ベースフィルム層11a表面に前処理用アンダーコート層を兼ねる透明且つ伸縮性の第一着色層14aを介して形成された、不連続金属薄膜からなる金属薄膜層2と、前記金属薄膜層2表面に薄膜保護層を兼ねる透明且つ伸縮性の第二着色層14bを介して形成されたポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第二ベースフィルム層11bとから構成される。
【0034】
本実施例に係る伸縮性金属光沢糸MY3~4は、薄く脆弱な金属薄膜層2や第一着色層14a及び第二着色層14bが第一ベースフィルム層1a、11aと第二ベースフィルム層1b、11bの間に挟まれて保護される層構成を有することから、摩擦堅牢度や耐薬品性等に優れたものとなる。
【0035】
前記金属薄膜形成に際しては、前記第一ベースフィルム層11a表面への前処理用アンダーコート層を兼ねる透明且つ伸縮性の第一着色層14aの形成に、溶液コーティング等が好適に使用される。また、前記薄膜保護層を兼ねる第二着色層14bの形成には、溶液コーティングやドライラミネート等が好適に使用され、第二ベースフィルム層11bの形成には、ドライラミネート等が好適に使用される。
【0036】
なお、前記第一ベースフィルム層11aへの第一着色層14aの形成や金属薄膜層2表面への第二着色層14bの形成に代えて、第一ベースフィルム層11a及び第二ベースフィルム層11b自体に所要の染色を施すことも可能である。
【実施例3】
【0037】
本発明の実施例3に係る伸縮性金属光沢糸MY5は、図4(A)に示すように、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第一ベースフィルム層1a表面に不連続金属薄膜からなる第一金属薄膜層2aが形成されてなる第一積層体と、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第二ベースフィルム層1b表面に不連続金属薄膜からなる第二金属薄膜層2bが形成されてなる第二積層体が各々の第一金属薄膜層2aと第二金属薄膜層2bを内側にして、透明且つ伸縮性の接着層5を介して貼り合わされると共に前記接着層5が第一積層体及び第二積層体における薄膜保護層を兼ねるようにして構成される。
【0038】
前記伸縮性金属光沢糸MY5に着色を施した伸縮性金属光沢糸MY6は、図4(B)に示すように、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第一ベースフィルム層11a表面に前処理用アンダーコート層を兼ねる第一着色層24aを介して不連続金属薄膜からなる第一金属薄膜層2aが形成されてなる第一積層体と、ポリウレタン系の透明伸縮性プラスチックフィルムからなる第二ベースフィルム層11b表面に前処理用アンダーコート層を兼ねる第二着色層24bを介して不連続金属薄膜からなる第二金属薄膜層2bが形成されてなる第二積層体が各々の第一金属薄膜層2aと第二金属薄膜層2bを内側にして、透明且つ伸縮性の接着層5を介して貼り合わされると共に前記接着層5が第一積層体及び第二積層体における薄膜保護層を兼ねるようにして構成される。
【0039】
本実施例に係る伸縮性金属光沢糸MY5~6もまた、薄く脆弱な第一金属薄膜層2a及び第二金属薄膜層2bや第一着色層24a及び第二着色層24b等が第一ベースフィルム層1a、11aと第二ベースフィルム層1b、11bの間に挟まれて保護される層構成を有することから、摩擦堅牢度や耐薬品性等に優れたものとなる。
【0040】
前記金属薄膜形成に際しては、前記第一ベースフィルム層11a及び第二ベースフィルム層11bへの前処理用アンダーコート層を兼ねる第一着色層24a及び第二着色層24bの形成に、溶液コーティング等が好適に使用される。また、前記第一積層体及び第二積層体における薄膜保護層を兼ねる接着層5の形成にも、溶液コーティング等が好適に使用される。
【0041】
また、前記第一ベースフィルム層11a及び第二ベースフィルム層11bへの第一着色層24a及び第二着色層24bの各形成に代えて、第一ベースフィルム層11a及び第二ベースフィルム層11b自体に所要の染色を施すことも可能である。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的と特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形、組合せ等による前記以外の多くの広範な実施態様が実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
MY 伸縮性金属光沢糸
MY1~6 伸縮性金属光沢糸
LS 積層構造
1 ベースフィルム層
1a 第一ベースフィルム層
1b 第二ベースフィルム層(兼薄膜保護層)
11a 第一ベースフィルム層
11b 第二ベースフィルム層
2 不連続金属薄膜からなる金属薄膜層
2a 不連続金属薄膜からなる第一金属薄膜層
2b 不連続金属薄膜からなる第二金属薄膜層
3 薄膜保護層
4a 第一着色層
4b 第二着色層(兼薄膜保護層)
14a 第一着色層(兼前処理用アンダーコート)
14b 第二着色層(兼薄膜保護層)
24a 第一着色層(兼前処理用アンダーコート)
24b 第二着色層(兼前処理用アンダーコート)
5 接着層(兼薄膜保護層)
図1
図2
図3
図4