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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アポリポタンパク質の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N33/53 V
G01N33/545
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018541536
(86)(22)【出願日】2016-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2016076457
(87)【国際公開番号】W WO2017076919
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-31
(31)【優先権主張番号】15382537.7
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518155328
【氏名又は名称】ビオクロス, エセ.エレ.
(73)【特許権者】
【識別番号】518155339
【氏名又は名称】インスティチュート デ サルード カルロス テルセーロ
(73)【特許権者】
【識別番号】518155959
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン ビオメディカ エン レッド デ エンフェルメダデス ネウロデヘネラティバス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス マルティン アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】カレロ ララ ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】カレロ ルイーダ オルガ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア アルベルト ルイス
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/031971(WO,A1)
【文献】特開平10-197528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0075317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するin vitro方法であって、
(i)前記サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面への前記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームの静電相互作用及び/又は疎水性相互作用による結合に好適な条件下で接触させることであって
(ii)工程(i)において形成される前記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームが静電相互作用及び/又は疎水性相互作用により結合した前記表面と該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを、前記抗体と前記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される前記複合体を検出することと、
を含み、前記ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を前記サンプルの接触前に処理しないか、又は前記サンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法。
【請求項2】
前記アポリポタンパク質のアイソフォームがapoE4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプル中のapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択される所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するin vitro方法であって、
(i)前記サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面への前記アポリポタンパク質の静電相互作用及び/又は疎水性相互作用による結合に好適な条件下で接触させることであって、
(ii)工程(i)において形成される前記アポリポタンパク質が静電相互作用及び/又は疎水性相互作用により結合した前記表面と、前記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及び前記サンプル中に存在する前記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることであって、該接触を前記第1の抗体と前記アポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び前記第2の抗体と前記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行うことと、
(iii)工程(ii)において形成される前記第1の複合体及び前記第2の複合体を検出することと、
(iv)工程(iii)において得られる前記第1の複合体及び前記第2の複合体のレベルに基づいて、総アポリポタンパク質含量に対する前記アイソフォームの相対量を決定することと、
を含み、前記ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を前記サンプルの接触前に処理しないか、又は前記サンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法。
【請求項4】
工程(i)において使用する前記表面が複数の実体により形成され、工程(ii)における前記第1の抗体及び前記第2の抗体との接触を別個の容器において行い、各容器が前記表面を形成する前記複数の実体の一部を含有し、工程(iii)における検出を各容器において別個に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アポリポタンパク質がapoEであり、前記アポリポタンパク質アイソフォームがapoE4である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
被験体におけるapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質のアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定する方法であって、
(i)前記アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来する前記被験体のタンパク質含有サンプルと、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面への前記アポリポタンパク質アイソフォームの静電相互作用及び/又は疎水性相互作用による結合に好適な条件下で接触させることであって、
(ii)工程(i)において形成される前記アポリポタンパク質が静電相互作用及び/又は疎水性相互作用により結合した前記表面と、該アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な少なくとも1つの抗体とを、該抗体と前記アポリポタンパク質アイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体の量と遺伝的変異体をコードする対立遺伝子の数とを相関させることによって、前記アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子量を決定することと、
を含み、前記ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を前記サンプルの接触前に処理しないか、又は前記サンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法。
【請求項7】
前記アポリポタンパク質アイソフォームをコードする前記遺伝的変異体が、アポリポタンパク質アイソフォームapoE4をコードする遺伝子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリスチレン表面を結合工程(i)の前にブロッキングし、前記アルブミンがウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリスチレン表面を結合工程(i)の後に洗浄溶液で処理する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
被験体に由来するサンプルにおいてapoE E4アイソフォームのレベルを請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって決定することを含む、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、apoE E4レベルが基準値を超える場合に前記被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示される、方法。
【請求項11】
被験体においてapoE E4アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を請求項6~10のいずれか一項に記載の方法によって決定することを含む、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、前記被験体のゲノムにおける1つ又は2つのapoE E4対立遺伝子の存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示され、前記被験体のゲノムにおけるapoE E4対立遺伝子の非存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が低いことが示される、方法。
【請求項12】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、ダウン症候群関連認知症、血管性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症及びクロイツフェルト-ヤコブ病からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に用いられる、キット。
【請求項14】
ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とアポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体とを含むキットであって、前記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な抗体を更に含み、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に用いられる、キット。
【請求項15】
apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するための、請求項13又は14に記載のキットの使用であって、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がアルブミンでブロッキングされる、使用。
【請求項16】
前記アルブミンがウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中のアポリポタンパク質及びそのアイソフォームを検出及び定量化する方法、並びに本発明の検出方法によって決定されるアポリポタンパク質レベルに基づいて神経変性疾患又は心血管疾患の発症の可能性を推定する予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポリポタンパク質E(apoE)は、脂質代謝に関与する34kDaの糖タンパク質である。このタンパク質をコードするヒトAPOE遺伝子は多型であり、19番染色体上に位置する。3つのapoEタンパク質アイソフォームであるE2、E3及びE4をコードする3つの共通した相互顕性対立遺伝子(ε2、ε3及びε4)が存在する。これらのアイソフォームは、アミノ酸残基112及び158で異なる。アイソフォームE2は両方の部位にシステイン残基を有し、E4は両方の部位にアルギニン残基を有するが、最もよく見られる形態であるE3は112位にシステインを有し、158位にアルギニンを有する。これらの差異は、apoEの生物学的機能に対して大きな影響を有する。これらのアイソフォームの脂質結合活性は異なる。E2及びE3は、優先的に高密度リポタンパク質(HDL)に結合するが、E4では超低密度リポタンパク質(VLDL)が優先される。これらの生化学的な差異は、アイソフォームと種々の病理過程との関連性に関与する可能性がある。アイソフォームE4は、より高レベルのコレステロール、並びに冠動脈性心疾患及びアルツハイマー病のリスクの増大と関連する。対照的に、アイソフォームE2はアルツハイマー病に対する保護作用を示すが、家族性III型高リポタンパク血症と関連する。このため、APOE遺伝子型又はapoEアイソフォームへの高い関心が疫学的研究、臨床試験及び予防のための患者の層別化及び高リスクの患者の同定について見られる。
【0003】
幾つかの方法が、3つの主要APOEハプロタイプの遺伝子型決定に一般に用いられている。より頻繁に用いられている方法は、PCR-RFLP(ポリメラーゼ連鎖反応-制限酵素断片長多型(Polymerase Chain Reaction-Restriction Fragment Length Polymorphism))、キャピラリー電気泳動、PCRに加えたシークエンシング又は質量分析、ARMS-PCR(増幅不応性突然変異系(Amplification Refractory Mutation System)-PCR)及びSSP-PCR(単純配列特異的プライマー(Simple Sequence Specific Primer)-PCR)、蛍光融解曲線によるリアルタイムPCR検出、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescent Resonance Energy Transfer))、対立遺伝子特異的RT-PCR、並びにTaqMan(登録商標)プローブである。しかしながら、これらのAPOE遺伝子ベースの方法は全て、DNA抽出及び遺伝情報の分析のためにインフォームドコンセントを必要とし、臨床分析ルーチンにおいて容易に実行することができない。
【0004】
主に研究目的で、幾つかの代替的な生化学的(非遺伝学的)方法が、apoEアイソフォームの高感度特性化に用いられている。等電点電気泳動法(IEF)及びサンドイッチELISAが最も一般的に用いられており、これらは血漿又はCSF等の体液に由来するapoEの特性化に基づく。apoEの分析的IEFについては、固定化pH勾配でのタンパク質の等電点電気泳動(isoelectrofocusing)に続いて、抗apoE抗体を用いた分離アイソフォームの免疫検出を行う。特定のapoEバンドパターンにより、サンプル中に存在する種々のapoEアイソフォームの検出が可能となる。この技法は、apoE E2、E3及びE4アイソフォーム以外の稀なapoE変異体を検出することができるという利点を有するが、技術的に要求が厳しく、時間がかかる。
【0005】
ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)法では、標的タンパク質を捕捉するために抗体を使用する。サンドイッチELISAは、apoE E4アイソフォームの存在を調べるために用いることができ、一方がE4アイソフォームに特異的である必要がある2つの抗体(捕捉抗体及びレポーター抗体)の使用に基づく。apoE E4の検出のための幾つかのELISAキットが市販されているが(例えば、ApoE4/pan-ApoE ELISA Kit、MBL #7635)、おそらくは固有の技術的限界のために、この方法論は臨床ルーチン状況では実行されていない。
【0006】
アポリポタンパク質レベルに基づいて疾患の発症を予測する方法が当該技術分野で記載されている。特許文献1は、PCRを用いたApoE対立遺伝子の遺伝子型決定に基づいて前立腺癌を発症する被験体の素因を評定する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5945289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現行の技術水準では、サンプル中のアポリポタンパク質の迅速で信頼性の高い決定を可能にする、アポリポタンパク質検出及びアポリポタンパク質アイソフォーム決定のための信頼性の高い正確な方法を開発することが依然として必要とされている。上記方法は、アポリポタンパク質又は特定のそのアイソフォームの存在又は非存在に関係する幾つかの疾患の発症を予測する上で関心が持たれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の著者らは、アポリポタンパク質及びそのアイソフォームを検出、定量化及び分析する方法論を開発した。この方法論は、表面、特にポリスチレン表面に対するアポリポタンパク質の特定の結合特性に基づき、検出又は定量化のための捕捉抗体の使用又は事前の単離手順の必要がない。著者らは、アポリポタンパク質、特にapoEがポリスチレン表面(ELISAプレート、luminexビーズ、又は比濁ビーズ(turbidimetric beads)を含む)によって特異的に捕捉されることを示した。apoE E4等の特定のアポリポタンパク質アイソフォームは、表面に結合した後に抗apoE4抗体によって検出することができるため、サンプル中のapoE4アイソフォームの検出及び定量化が達成される。この定量化は、ヘテロ接合性(ε2/ε4、ε3/ε4)又はホモ接合性(ε4/ε4)のいずれかのAPOE ε4遺伝子型の存在と相関させることができる。これらの結合特性が他のアポリポタンパク質と共通していることを考慮すると、この方法論はapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII及びapoJ(クラステリン)を含む他のアポリポタンパク質にも適用することができる。
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、サンプル中のapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームが結合した表面と該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを、抗体とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体を検出することと、
を含み、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルの接触前に処理しないか、又はサンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法に関する。
【0011】
更なる態様では、本発明は、サンプル中のapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択される所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質の結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質に特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及びサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることであって、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行うことと、
(iii)工程(ii)において形成される第1の複合体及び第2の複合体を検出することと、
(iv)工程(iii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量を決定することと、
を含み、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルの接触前に処理しないか、又はサンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、被験体におけるapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質のアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定する方法であって、
(i)アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来する上記被験体のタンパク質含有サンプルと、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質アイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、該アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な少なくとも1つの抗体とを、該抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体の量と上記遺伝的変異体をコードする対立遺伝子の数とを相関させることによって、アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子量を決定することと、
を含み、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルの接触前に処理しないか、又はサンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法に関する。
【0013】
別の態様では、本発明は、被験体に由来するサンプルにおいてapoE E4アイソフォームのレベルを本発明の方法のいずれかによる方法によって決定することを含む、該被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、apoE E4レベルが基準値を超える場合に被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示される、方法に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、被験体においてapoE4アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を本発明の方法のいずれかによる方法によって決定することを含む、該被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、被験体のゲノムにおける1つ又は2つのapoE4対立遺伝子の存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示され、被験体のゲノムにおけるapoE4対立遺伝子の非存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が低いことが示される、方法に関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、被験体に由来するサンプルにおいてアポリポタンパク質アイソフォームのレベルを本発明の方法のいずれかによる方法によって決定することを含む、該被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定する方法であって、該アポリポタンパク質アイソフォームのレベルが基準値を超える場合に被験体が心血管疾患を患う可能性が高いことが示される、方法に関する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、被験体においてアポリポタンパク質アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を本発明の方法のいずれかによる方法によって決定することを含む、該被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定する方法であって、被験体のゲノムにおける該アポリポタンパク質アイソフォームの1つ又は2つの対立遺伝子の存在により、該被験体が心血管疾患を患う可能性がより高いことが示され、被験体のゲノムにおける該アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子の非存在により、該被験体が心血管疾患を患う可能性がより低いことが示される、方法に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを含むキットであって、該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な第2の抗体を含まない、キットに関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化する上記のキットの使用であって、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がアルブミンでブロッキングされる、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】apoE4アイソフォームを含有しない157個の血漿サンプル及びapoE4を含有する73個のサンプルにおけるapoE E4アイソフォームの存在の分析を示す図である。
図2】遺伝子型に従って分配された、apoE E4を含有する73個のサンプル(図1)の吸光度ELISA読み取り値を示す図である。
図3】分析され、APOE遺伝子型に従って分配された230個のサンプルの平均吸光度読み取り値を示す図である。エラーバーは、平均の標準誤差を表す。
図4】APOE e4非キャリア(E3/E3)、並びにヘテロ接合性(E3/E4)及びホモ接合性(E4/E4)APOE e4キャリアにおける種々の血漿希釈率でのapoE E4/総apoE吸光度(4E4/pan-apoE)の比率を示す図である。
図5】ELISAプレートフォーマットでのポリスチレン表面への血漿サンプル(200倍)に由来するアポリポタンパク質の結合を示す図である。
図6】ELISAプレートへのApoEの結合に対する、塩(0M~2.4M NaCl)又は洗浄剤(0%~0.5%のポリソルベート20(Tween 20)又はTriton X-100)を含有する種々の緩衝液の影響を示す図である。濃い灰色及び薄い灰色のバーは、BSAベースのブロッキング溶液又はSuperblockブロッキング溶液でそれぞれブロッキングしたウェルにおいて分析したサンプルを表す。
図7】ELISAプレートへのApoEの結合に対するpH(2~10)の影響を示す図である。薄い灰色及び濃い灰色のバーは、BSAベースのブロッキング溶液又はSuperblockブロッキング溶液でそれぞれブロッキングしたウェルにおいて分析したサンプルを表す。
図8】ELISAプレートへのApoEの結合に対する厳しい条件の影響を示す図である。
図9】種々の時点でのLEITによるapoE e3/e3サンプル及びapoE e4/e4サンプルの予備分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の著者らは、体液に由来するアポリポタンパク質、特にアポリポタンパク質apoE、より特にapoEのアイソフォーム4(apoE E4)がポリスチレン表面に対して安定した高親和性結合能を有することを見出した。この特性に基づいて、本発明者らは、等電点電気泳動又は捕捉抗体を必要としないアポリポタンパク質を検出及び定量化する方法を開発した。本発明では、研究室内及び臨床分析状況で容易に実行することができる、単純で信頼性が高く、費用対効果の良い方法を記載する。アポリポタンパク質は心臓血管リスク及び神経血管リスク、並びに神経変性に関係付けられているため、本明細書で提供される方法は、患者の層別化並びにアルツハイマー病(AD)及び心血管障害のリスクが高い患者の特定についての有益な情報を与える。この方法論は、タンパク質バイオマーカーとしての他のアポリポタンパク質、すなわちapoCI、apoCII、apoCIII、apoAI及びクラステリンの特性化にも利用することができ、血液又は尿等の容易に利用可能な体液の分析に適切である。
【0021】
定義
本明細書で使用される「対立遺伝子」という用語は、遺伝子、遺伝子座又は遺伝的多型の2つ以上の形態の1つに関する。異なる対立遺伝子が異なる形質をもたらし得る場合もあるが、異なる対立遺伝子が遺伝子の発現において同じ結果を有する場合もある。殆どの多細胞生物は二つ一組の染色体を有し、すなわち2倍体である。これらの染色体は相同染色体と称される。2倍体生物は、各染色体上に各遺伝子(及び1つの対立遺伝子)の1つのコピーを有する。両方の対立遺伝子が同じである場合、これらはホモ接合体である。対立遺伝子が異なる場合、これらはヘテロ接合体である。
【0022】
本明細書で使用される「対立遺伝子量」という用語は、特定の対立遺伝子変異体のコピー数に関し、2倍体生物では0~2の範囲である。
【0023】
本明細書で使用される「アルツハイマー病」又は「AD」という用語は、進行性の記憶障害、錯乱、行動障害、自分では身の回りのことができないこと(inability to care for oneself)、段階的な身体的衰弱、最終的には死亡として臨床的に現れる、老人斑、神経のもつれ(neuritic tangles)及び進行性の神経細胞脱落を特徴とする特定の変性脳疾患と関連した精神機能の低下を指す。本明細書で使用される場合、この用語は全ての病期を含むことを意図したものである。
【0024】
「抗体」、「免疫グロブリン」という用語及び同様の用語は、分析物(抗原)を特異的に結合及び認識する、免疫グロブリン遺伝子(単数又は複数)又はそのフラグメントによって実質的にコードされるポリペプチドを指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκ又はλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ又はεに分類され、これにより免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEがそれぞれ規定される。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は2対のポリペプチド鎖から構成され、各々の対が1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50kD~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110アミノ酸以上の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれ指す。各重鎖のC末端は互いにジスルフィド結合しており、抗体の定常領域を形成する。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体を異なる「クラス」に割り当てることができる。5つの主要抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらの幾つかを「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に更に分類することができる。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDa又は約214アミノ酸)は、NH2末端の約1~10アミノ酸の可変領域と、COOH末端のκ又はλ定常領域とを含む。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDa又は約446アミノ酸)は同様に、可変領域(約116アミノ酸)と上述の重鎖定常領域又はクラスの1つ、例えばγ(約330アミノ酸)とを含む。種々の免疫グロブリンクラスのサブユニット構造及び三次元配置が既知である。
【0025】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質」という用語は、脂質に結合してリポタンパク質を形成するタンパク質に関する。このタンパク質は、組織におけるタンパク質の代謝及びそれらの取込みを調節する酵素補因子、受容体リガンド及び脂質輸送キャリアとして機能することができる。この用語は、以下のようなアポリポタンパク質の多数のクラスを包含する:apoA(アイソフォームapoA-I、apoA-II、apoA-IV及びapoA-Vを含む)、apoB(アイソフォームapoB48及びapoB100を含む)、apoC(アイソフォームapoC-I、apoC-II、apoC-III及びapoC-IVを含む)、apoD、apoE(apoE2、apoE3及びapoE4アイソフォームを含む)、apoH及びapoJ(クラステリン)、並びにapoF、apoG、apoL、apoM、apoN及びapoO。特定の実施形態では、アポリポタンパク質はapoEである。
【0026】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質A-I」又は「Apo A-I」又は「ApoAI」という用語は、血漿中の高密度リポタンパク質(HDL)の主要タンパク質構成成分であるタンパク質を指す。ApoAIは、殆どの血漿コレステリルエステルの形成に関与しているレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の補助因子である。ヒトにおいては、apoAIはAPOAI遺伝子によってコードされる。apoA-Iは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、apo A-Iは、UniProtアクセッション番号P026547(2014年5月16日公開)を有するヒトタンパク質である。
【0027】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質A-IV」又は「Apo A-IV」又は「ApoAIV」という用語は、306残基プロタンパク質の一次翻訳産物のタンパク質分解後に得られるタンパク質を指す。apo A-IVは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、Apo A-IVは、UniProtアクセッション番号P06727(2014年5月16日公開)を有するヒトタンパク質である。ヒトapoA-IVアイソフォームには、apoA-IV-1a(T347S)及びapoA-IV-2(Q360H)が含まれる。
【0028】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質C-I」又は「Apo C-I」又は「ApoCI」という用語は、リポタンパク質間のエステル化コレステロールの交換及び組織からのコレステロールの除去において重要な役割を有する、通常は血漿中に見られ、エステル化レシチンコレステロールの活性化に関与しているタンパク質を指す。ヒトにおいては、apoC-IはAPOC1遺伝子によってコードされる。Apo C-Iは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、apo C-Iは、UniProtアクセッション番号P02654(2014年5月16日公開)を有するヒトタンパク質である。ApoC-Iアイソフォームには、それらの算出される等電点に基づいて酸性(apoC-IA)及び塩基性(apoC-IB)のものが含まれる。
【0029】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質C-II」又は「Apo C-II」又は「Apo CII」という用語は、通常は血漿中に見られ、超低密度リポタンパク質(VLDL)及びカイロミクロンの構成成分であるタンパク質を指す。ヒトにおいては、apoC-IIはAPOC2遺伝子によってコードされる。apoC-IIは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、apoC-IIは、UniProtアクセッション番号P02655(2014年5月16日公開)を有するヒトタンパク質である。
【0030】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質C-III」又は「Apo C-III」又は「Apo CIII」という用語は、超低密度リポタンパク質(VLDL)の構成成分として見られるタンパク質を指す。ApoCIIIは、トレオニン-74でグリコシル化されることができる、79個のアミノ酸を含有する比較的小さなタンパク質である。ApoCIIIは、リポタンパク質リパーゼ及び肝性リパーゼを阻害する。ヒトにおいては、apo C-IIIはAPOC3遺伝子によってコードされる。Apo C-IIIは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、apo C-IIIは、UniProtアクセッション番号P02656(2014年5月16日公開)を有するヒトタンパク質である。ApoC-IIIは、タンパク質のオリゴ糖部分の末端のシアル酸分子の数(0~2)に応じてapoC-III、apoC-III及びapoC-IIIと呼ばれる3つのアイソフォームで存在する。各アイソフォームは、それぞれ循環血液中の総apoC-IIIレベルのおよそ10%、55%及び35%を占めることが示されている。
【0031】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質-E」又は「Apo-E」又は「ApoE」という用語は、高トリグリセリドリポタンパク質構成要素の正常な異化に不可欠なカイロミクロン及び中間密度リポタンパク質(IDL)中に見られるタンパク質を指す。ヒトにおいては、アポリポタンパク質Eは、アイソフォームApoE2(cys112、cys158)、ApoE3(cys112、arg158)及びApoE4(arg112、arg158)をコードする3つの主要対立遺伝子ε2、ε3及びε4を有する多型遺伝子である遺伝子ApoEによってコードされる。アポリポタンパク質Eは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、Apo Eは、UniProtアクセッション番号P02649(2014年5月16日公開)を有するヒトタンパク質である。
【0032】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質Eタイプ2アイソフォーム」又は「apo E2」という用語は、アミノ酸配列の112位及び158位におけるシステイン残基の存在によって規定されるタンパク質であるアポリポタンパク質EのアイソフォームE2を指す。
【0033】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質Eタイプ3アイソフォーム」又は「apo E3」という用語は、アミノ酸配列の112位におけるシステイン残基及び158位におけるアルギニン残基の存在によって規定されるタンパク質であるアポリポタンパク質EのアイソフォームE3を指す。
【0034】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質Eタイプ4アイソフォーム」又は「apo E cod変異体」又は「apo E4」という用語は、アミノ酸配列の112位及び158位におけるアルギニン残基の存在によって規定されるタンパク質であるアポリポタンパク質EのアイソフォームE4を指す。
【0035】
本明細書で使用される「アポリポタンパク質-J」又は「Apo-J」又は「ApoJ」又は「クラステリン」又は「補体溶解阻害因子(complement lysis inhibitor)」又は「CLI」又は「硫酸化糖タンパク質2」又は「SGP2」又は「SP-40,40」又は「テストステロン-抑制前立腺メッセージ2(testosterone-repressed prostate message 2)」又は「TRPM2」という用語は、免疫調節、細胞接着、形質転換、脂質輸送、組織リモデリング、膜リサイクリング及び細胞間相互作用に影響を与える分泌ヘテロ二量体糖タンパク質を指す。クラステリンは、Arg 227とSer 228との間の内部結合で翻訳後に切断される449アミノ酸ポリペプチドとして合成される。アポリポタンパク質Jは任意の起源、例えばヒト、ウシ、ネズミ、ウマ、イヌ等に由来し得る。特定の実施形態では、ApoJは、UniProtアクセッション番号P10909(2014年5月16日)を有するヒトタンパク質である。
【0036】
本明細書で使用される「心血管疾患」又は「心血管障害」という用語は、虚血、狭心症、浮腫状態、アテローム性動脈硬化、冠動脈性心疾患、LDL酸化、内皮細胞への単球の接着、泡沫細胞形成、脂肪線条の発生、血小板の付着及び凝集、平滑筋細胞増殖、再灌流傷害、高血圧、血栓症、不整脈(心房性若しくは心室性、又はその両方);心律動障害;心筋虚血;心筋梗塞;心臓瘤又は血管瘤;血管炎、脳卒中;四肢、器官又は組織の末梢閉塞性動脈症;脳、心臓、又は他の器官若しくは組織の虚血、内毒素性ショック、手術ショック又は外傷性ショック後の再灌流傷害;高血圧、心臓弁膜症、心不全、異常血圧;ショック;血管収縮(片頭痛を伴うものを含む);単一の器官又は組織に限られる血管の異常、炎症及び不全を含むが、これらに限定されない、心臓若しくは血管、若しくはその両方に影響を及ぼすか、又は心肺系及び循環系に関連する疾患に関する。
【0037】
「界面活性剤」としても知られる、本明細書で使用される「洗浄剤」という用語は、液体に添加した場合に液体の表面張力を洗浄剤の非存在下の同じ液体と比較して低減する両親媒性表面活性剤に関する。洗浄剤は、タンパク質の凝集を防ぎ、対象のタンパク質への汚染物質の非特異的な相互作用又は結合を防ぐことも可能である。本発明による洗浄剤としては、限定されるものではないが、非イオン性(中性)、陰イオン性、陽イオン性又は両性イオン性洗浄剤が挙げられる。
【0038】
非イオン性又は中性洗浄剤の例としては、限定されるものではないが、Tween(登録商標) 20(ポリソルベート20)、Tween(登録商標) 21(ポリソルベート21)、Tween(登録商標) 40(ポリソルベート40)、Tween(登録商標) 60(ポリソルベート60)、Tween(登録商標) 61(ポリソルベート61)、Tween(登録商標) 65(ポリソルベート65)、Tween(登録商標) 80(ポリソルベート80)、Tween(登録商標) 81(ポリソルベート81)、Tween(登録商標) 85(ポリソルベート85)等のTweenシリーズ(ポリソルベート)の洗浄剤;Span(登録商標) 20等のSpan(登録商標)シリーズの洗浄剤;Tergitol Type 15-S-12等のTergitolシリーズの洗浄剤;Brij(登録商標) 35、Brij(登録商標) 56、Brij(登録商標) 72、Brij(登録商標) 76、Brij(登録商標) 92V、Brij(登録商標) 97、Brij(登録商標) 58P等のBrij(登録商標)シリーズの洗浄剤;Tween(登録商標) 20、Tween(登録商標) 21、Tween(登録商標) 40、Tween(登録商標) 60、Tween(登録商標) 61、Tween(登録商標) 65、Tween(登録商標) 80、Tween(登録商標) 81、Tween(登録商標) 85等のTweenシリーズの洗浄剤;Triton(登録商標) X-100、Triton(登録商標) X-114、Triton(登録商標) CF-21、Triton(登録商標) CF-32、Triton(登録商標) DF-12、Triton(登録商標) DF-16、Triton(登録商標) GR-5M、Triton(登録商標) X-102、Triton(登録商標) X-15、Triton(登録商標) X-151、Triton(登録商標) X-207、Triton(登録商標) X-165、Triton(登録商標) X-305、Triton(登録商標) X-405、Triton(登録商標) X-45、Triton(登録商標) X-705-70等のTriton(登録商標)シリーズの洗浄剤;又は上記洗浄剤の少なくとも1つの非イオン性の保守的な変形物(conservative variant)が挙げられる。
【0039】
陰イオン性洗浄剤の例としては、限定されるものではないが、コール酸及びその誘導体、タウロコール酸、Triton X-200、Triton W-30、Triton-30、Triton-770、ジオクチルスルホサクシネート、NN-ジメチルドデシルアミンN-オキシド、1-アルキルスルホン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン又は脂肪酸塩が挙げられる。
【0040】
陽イオン性洗浄剤の例としては、限定されるものではないが、モノメチル脂肪族アミン及びジメチル脂肪族アミン、アルキルトリチメルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミンアセテート、トリアルキルアンモニウムアセテート、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム及びアルキル(アルキル置換)ピリジニウム塩、アルキルチオメチルピリジニウム塩、アルキルアミドメチルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、N,N-アルキルメチルピロリドニウム塩、1,1-ジアルキルピペリジニウム塩、4,4-ジアルキルチアモルホリニウム塩、4,4-ジアルキルチアモルホリニウム-1-オキシド塩、メチルビス(アルキルエチル)-2-アルキルイミダゾリニウムメチルスルフェート(及び他の塩)、メチルビス(アルキルアミドエチル)-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルフェート(及び他の塩)、アルキルアミドプロピル-ジメチルベンジルアンモニウム塩、カルボキシアルキル-アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド、ポリ(ビニルメチルピリジニウム)塩、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリエチレンイミン、トリアルキルホスホニウムビカーボネート(及び他の塩)、トリアルキルメチルホスホニウム塩、アルキルエチルメチルスルホニウム塩及びアルキルジメチルスルホキソニウム塩が挙げられる。
【0041】
両性イオン性洗浄剤の例としては、限定されるものではないが、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)、N-(アルキルC10~C16)-N,N-ジメチルグリシンベタイン(EMPIGEN BB)、カプリリルスルホベタイン(SB3-10)、3-[N,N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホネート(アミドスルホベタイン-14;ASB-14)、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート(3-14 Detergent;ZWITTERGENT)、N-ドデシル-N,N’-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、N-オクタデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニウム-1-プロパンスルホネート、Mirataine CB、Mirataine BB、Mirataine CBR、Mirataine ACS、Miracare 2MHT及びMiracare 2MCAが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される「可能性を決定する」又は「可能性の予測」という表現又は同様の表現は、「可能性を評定する」又は「可能性の評定」という表現と同義であり、本発明により患者が疾患、特に神経変性疾患又は心血管疾患を発症する可能性を予測、推定又は評価することが可能となることを意味する。可能性の予測により、概して可能性が増大又は低下することのいずれかが示唆される。当業者に理解されるように、予測が評価される被験体の100%で正確であることが好ましいが、その必要はない。しかしながら、この用語では、統計的に有意な割合の患者を疾患、特に神経変性疾患又は心血管疾患を有する可能性が高いとして特定することができる必要がある。当業者は、被験体が統計的に有意であるかを様々な既知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値決定、スチューデントt検定、マン-ホイットニー検定等を用いることにより更なる面倒なしに決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見ることができる。好ましい信頼区間は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は0.05、0.025、0.001、0.0001又はそれ以下であるのが好ましい。
【0043】
本明細書で使用される「ハプロタイプ」という用語は、子孫が片方の親から受け継ぐ特定の遺伝子群を指す。特に、ハプロタイプは、一緒に受け継がれる可能性がある染色体上の特定の対立遺伝子の集合体を包含する。ハプロタイプは、2つ以上の対立遺伝子を含む場合もある。
【0044】
本明細書で使用される「免疫比濁法」という用語は、沈殿し、サンプルの濁度を増大させる分析物と抗体との抗体-抗原免疫複合体の形成を生じる、分析物と抗体との反応に基づいてサンプル中の分析物を検出する技法に関する。結果として、光を反応溶液に通した場合に、一部の光がサンプルによって散乱し、一部の光がサンプルによって吸収され、残りがサンプルを通過する。吸収される光の量は分析物濃度に正比例し、又は言い換えると、透過(transmittal)光シグナルが分析物濃度に正比例する。本発明によると、免疫比濁法により検出される分析物は、アポリポタンパク質又はそのアイソフォーム、特にapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質、並びにそのアイソフォーム、より特にapoE及び/又はapoEアイソフォームapoE2、apoE3及びapoE4、より好ましくはapoE4である。本発明の特定の実施形態では、免疫比濁アッセイは、LEIT(ラテックス増強免疫比濁法(Latex-Enhanced Immunoturbidimetry Technology))である。
【0045】
「神経変性疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、時間とともに機能不全又は身体障害を引き起こす、神経組織、特にニューロンの変性又は劣化に起因する疾患に関係する。変性という用語には、細胞生存能力の喪失、細胞機能の喪失及び/又は細胞(ニューロン又は他の細胞)の数の減少が含まれる。例示的な神経変性疾患の非限定的な例としては、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症等が挙げられる。特定の実施形態では、上記神経変性疾患はADである。
【0046】
本明細書で使用される「酸化剤」という用語は、レドックス(酸化-還元)反応において電子を別の種から取り去る化学種に関する。
【0047】
本明細書で使用される「ポリカーボネート」という用語は、それらの化学構造内にカーボネート基(-O-(C=O)-O-)を含有する熱可塑性ポリマーの群に関する。
【0048】
本明細書で使用される「ポリスチレン」という用語は、スチレンモノマーから作製される合成芳香族熱可塑性ポリマーに関する。ポリスチレンは固体であっても又は発泡していてもよい。
【0049】
「ペプチダーゼ」としても知られる、本明細書で使用される「プロテアーゼ」という用語は、タンパク質中のペプチド結合の加水分解を触媒する酵素を指す。例示的なプロテアーゼの非限定的な例としては、セリンペプチダーゼ、トレオニンペプチダーゼ、システインペプチダーゼ、アスパルチルペプチダーゼ、メタロペプチダーゼ及びグルタミルペプチダーゼが挙げられる。特定の実施形態では、プロテアーゼはペプシン、トリプシン又はキモトリプシンである。本明細書で使用される場合、「ペプシン」という用語は、疎水性アミノ酸、好ましくは芳香族アミノ酸、例えばフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンの間のペプチド結合の加水分解を触媒するプロテアーゼを指す。
【0050】
本明細書で使用される「還元剤」という用語は、レドックス(酸化-還元)化学反応において電子を別の化学種(酸化剤)へと失う化合物に関する。還元剤が電子を失うことで、その酸化が起こる。
【0051】
本明細書で使用される「基準値」という用語は、被験体から採取されるサンプルから得られた値又はデータを評価するための基準として用いられる所定の尺度に関する。基準値又は基準レベルは絶対値、相対値、上限若しくは下限を有する値、値の範囲、代表値(average value)、中央値、平均値、又は特定の対照若しくはベースライン値と比較した値であり得る。基準値は、個々のサンプルの値、例えば試験対象の被験体に由来するサンプルからのものであるが、先の時点で得られた値に基づくものであってもよい。基準値は、例えば暦年齢適合群の被験体の集団に由来する多数のサンプルに基づくものであっても、又は試験対象のサンプルを含めた若しくは除外したサンプルのプールに基づくものであってもよい。
【0052】
本明細書で使用される「塩」という用語は、イオン形態の、又は荷電し、対イオン(陽イオン又は陰イオン)と共役した、又は溶液中の任意の形態の化合物に関する。この定義には特に薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0053】
本明細書で使用される「サンプル」という用語は、被験体から単離された生体物質を指し、したがって生体サンプルを含む。上記サンプルは、所望のマーカーの検出に好適な任意の生体物質を含有していてもよく、被験体に由来する細胞及び/又は非細胞性物質を含んでいてもよい。概して、サンプルは、任意の好適な生体組織又は体液から単離することができる。本発明による特定の好ましいサンプルとしては、限定されるものではないが、、血液、血漿、血清、唾液、尿及び脳脊髄液(CSF)のサンプルが挙げられる。本発明の実施形態では、サンプルは血漿サンプルである。
【0054】
「被験体」又は「個体」又は「動物」又は「患者」という用語は、療法が所望される任意の被験体、特に哺乳動物被験体を含む。哺乳動物被験体にはヒト、家畜、農用動物及び動物園の動物又は愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛等が含まれる。特定の実施形態では、被験体はヒトである。
【0055】
本発明のアポリポタンパク質の検出及び定量化の方法
第1の態様では、本発明は、サンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームが結合した表面と該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを、抗体とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体を検出することと、
を含む、方法(本発明の第1の方法)に関する。
【0056】
特定の実施形態では、本発明は、サンプル中のapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームが結合した表面と該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを、抗体とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体を検出することと、
を含み、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルの接触前に処理しないか、又はサンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法に関する。
【0057】
本発明の第1の方法により検出及び/又は定量化されるアポリポタンパク質としては、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)が挙げられる。検出及び/又は定量化されるアポリポタンパク質アイソフォームとしては、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)のアイソフォームが挙げられる。特定の実施形態では、本発明の第1の方法により検出及び/又は定量化されるアポリポタンパク質はapoEである。特定の実施形態では、本発明の第1の方法により検出及び/又は定量化されるアポリポタンパク質アイソフォームは、apoE2、apoE3及びapoE4からなる群から選択されるapoEアイソフォームである。より特定の実施形態では、アポリポタンパク質はapoEであり、より特にアポリポタンパク質アイソフォームはapoE4である。
【0058】
このため、本発明の第1の方法の第1の工程では、サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該ポリスチレン表面又は該ポリカーボネート表面へのサンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させるが、上記表面は、それに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しない。
【0059】
サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面との接触は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面へのサンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下での直接的接触によって行うことができる。当業者により理解されるように、上記条件は、アポリポタンパク質又はそのアイソフォームとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面との相互作用に好適な条件、好ましくはアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面との静電相互作用及び/又は疎水性相互作用に好適な条件である。特定の好ましい実施形態では、表面はポリスチレン表面である。結合に好適な条件を当業者は決定することができ、適切な温度、インキュベーション時間、pH、サンプル濃度等が含まれる。特定の実施形態では、温度は4℃~40℃、特に10℃~35℃、より特に15℃~30℃、好ましくは20℃~25℃(室温)の範囲である。特定の実施形態では、上記接触工程中のpHはpH2~pH10、好ましくはpH4~pH10の範囲である。特定の実施形態では、サンプルを表面、好ましくはポリスチレン表面と接触させて少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。本発明によるアポリポタンパク質含有サンプルは、予め希釈することなく、又は少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、更により好ましくは少なくとも100倍、更により好ましくは少なくとも200倍の希釈率で希釈して表面、好ましくはポリスチレン表面と接触させることができる。当業者により理解されるように、種々の緩衝液がサンプルの希釈に好適である。特定のサンプルでは、サンプルの希釈はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は炭酸/重炭酸緩衝液、より好ましくはPBSで行う。
【0060】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質又はそのアイソフォームとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面との結合は、任意のペプチド、任意のポリペプチド、任意の脂質又は任意の架橋剤によって仲介されない。特に、結合を仲介しない上記ペプチドは、アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに結合することが可能なペプチドであり、アミロイドペプチドが挙げられるが、これに限定されない。アミロイドペプチドとしては、限定されるものではないが、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、β-アミロイドペプチド(Aβ(1-5)、Aβ(1-6)、Aβ(1-12)、Aβ(1-40)、Aβ(1-42)、Aβ(12-28)、Aβ(13-28)、Aβ(25-35)、Aβ(35-42)、Aβ(33-42)及びAβ(33-40)(ここで、Aβ(Χ-Y)という表現は、X位のアミノ酸からY位のアミノ酸までからなるβ-アミロイドペプチドに由来するペプチドを指す)、Aβ40及びAβ42を含む、アルツハイマー病患者の脳内に見られるアミロイド斑の主成分としてアルツハイマー病に大きく関与する36~43アミノ酸のペプチド)が挙げられる。結合を仲介しない脂質としては、限定されるものではないが、リン脂質及び脂肪酸が挙げられる。
【0061】
特定の実施形態では、決定及び/又は定量化されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを含有するサンプルは、生体サンプルである。本発明による生体サンプルとしては、限定されるものではないが、血液、血漿、血清、尿、唾液、尿及び脳脊髄液(CSF)等の体液が挙げられる。サンプルを単離する方法は、当業者に既知である。特定の実施形態では、サンプルは血漿サンプルである。本発明の第1の方法による血漿サンプルの好適な希釈率は10倍~100000倍、好ましくは100倍~1000倍の範囲であり、より好ましくは、血漿サンプルの希釈率は200倍である。
【0062】
本発明によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面、好ましくは、ポリスチレン表面は、それに結合し、検出及び/又は定量化が行われるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な任意の抗体を含有しない。本発明によるポリスチレン表面には、サンプル、特に生体サンプルと接触させることが可能な任意のポリスチレン表面が含まれ、限定されるものではないが、プレート、チューブ、ビーズ及びアレイ(その全てが市販されている)、並びに概してマイクロ流体ベースのアッセイに好適な任意のポリスチレン表面が挙げられる。特定の実施形態では、ポリスチレン表面はELISAプレート、比濁ビーズ、luminexビーズ、又は概してマイクロ流体ベースのアッセイに好適な任意のポリスチレン表面により構成される。本発明によるポリカーボネート表面には、サンプル、特に生体サンプルと接触させることが可能な任意のポリスチレン表面が含まれ、限定されるものではないが、プレート、チューブ、ビーズ及びアレイ(その全てが市販されている)が挙げられる。いずれの場合にも、上記ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、該表面に結合するアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しない。
【0063】
本発明によるポリスチレンプレートとしては、例えばNunc、Fisher Scientific、VWR、Greiner及びCorningから市販されているELISAポリスチレンプレートが挙げられる。
【0064】
本発明によるポリスチレンビーズとしては、限定されるものではないが、Sigma Aldrichから市販されているビーズが挙げられる。特定の実施形態では、ポリスチレンビーズは50nm~1μm、好ましくは100nm~500nm、より好ましくは150nm~400nm、更により好ましくは200nm~300nmの範囲の平均粒径を有する。特定の実施形態では、ポリスチレンビーズはアミン修飾ポリスチレンビーズである。特定の代替的な実施形態では、ポリスチレンビーズはカルボキシレート修飾ポリスチレンビーズである。本発明によるポリスチレンビーズとしては、限定されるものではないが、luminex(登録商標)ビーズ及び比濁ビーズが挙げられる。Luminexビーズは、Luminexから市販されているミクロスフェアである。
【0065】
特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前に処理しない。代替的な好ましい実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前にブロッキングする。すなわち、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を本発明の第1の方法の結合工程(i)の前にブロッキングする。特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を、結合工程の前にアポリポタンパク質以外のタンパク質及び/又は洗浄剤によりブロッキングする。表面、好ましくはポリスチレン表面を結合工程の前にブロッキングするのに好適なタンパク質としては、限定されるものではないが、ウシ血清アルブミン(BSA)等のアルブミン、カゼイン及びゼラチン、並びにSuperblock(Pierce)等の市販のブロッキング溶液が挙げられる。ブロッキングに特に好ましいタンパク質はBSA、カゼイン及びゼラチン、より好ましくはBSA、更により好ましくは1%~3%の範囲のBSA、より好ましくは1%BSAである。特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前にアルブミンでブロッキングし、より好ましくはアルブミンがBSAである。特定の実施形態では、表面を1%BSAによりブロッキングする。アポリポタンパク質以外のタンパク質に加えて又はその代わりに、表面、好ましくは、ポリスチレン表面は、結合工程前に洗浄剤によりブロッキングされる。ポリスチレン表面を結合工程の前にブロッキングするのに好適な洗浄剤としては、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン-40(PVP-40)、ポリソルベート20(Tween 20)、Nonidet-P40及びTriton X-100が挙げられる。特定の実施形態では、洗浄剤はポリソルベート20である。特定の実施形態では、表面をポリソルベート20によりブロッキングする。
【0066】
本発明の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面、好ましくはポリスチレン表面をサンプルとの接触後に洗浄溶液で処理する。すなわち、表面を本発明の第1の方法の結合工程(i)の後に洗浄溶液で処理する。洗浄溶液での表面の処理は、本発明の第1の方法の結合工程(i)の後かつ工程(ii)の前に行うのが好ましい。特定の実施形態では、洗浄溶液は1つ以上の塩を含有する。洗浄溶液が含有する塩はNaClであり、トリス緩衝液(TBS)又はリン酸緩衝液(PBS)により構成されるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は少なくとも1つの洗浄剤を含有する。洗浄剤は、ポリソルベート20(Tween 20)及びTriton X-100からなる群から選択されるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は酸を含有する。酸はHCl及びギ酸からなる群から選択されるのが好ましい。より好ましくは、酸は2M HCl及び70%ギ酸から選択される。付加的又は代替的には、洗浄溶液は塩基を含有する。好ましくは、塩基はNaOH、より好ましくは2M NaOHである。付加的又は代替的には、洗浄溶液は還元剤を含有する。還元剤は2-メルカプトエタノールであるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は酵素洗浄剤(プロテアーゼ等)、酸化試薬(次亜塩素酸ナトリウム等)又はそれらの組合せを含有しない。
【0067】
本発明の第1の方法の第2の工程では、方法の第1の工程の結果としてアポリポタンパク質又はそのアイソフォームが結合したポリスチレン表面又はポリカーボネート表面、好ましくはポリスチレン表面を、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面に結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体と接触させる。この工程は、抗体とポリスチレン表面又はポリカーボネート表面に結合したアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で行う。
【0068】
アポリポタンパク質に特異的な抗体は当業者に既知であり、市販されている。本発明において使用することができる非限定的な抗体の例としては、以下のものが挙げられる:
apoAIの検出及び/又は定量化については、Santa Cruz Biotechnology製のapoAIに対するウサギポリクローナル抗体(FL-267、カタログ番号#sc-30089)、Santa Cruz Biotechnology製のマウスモノクローナル抗apoAI抗体(069-01、カタログ番号#sc-58230)、Santa Cruz Biotechnology製のマウスモノクローナル抗apoAI抗体(B10、カタログ番号#sc-376818)、Abcam製のウサギポリクローナル抗apoAI抗体(カタログ番号#ab64308)及びAbcam製のヤギポリクローナル抗apoAI抗体(カタログ番号#ab7613)。
apoAIIの検出及び/又は定量化については、LifeSpan Biosciences製のマウスモノクローナル抗apoAII抗体(カタログ番号#LS-B4281)及びOriGene製のウサギポリクローナル抗apoAII抗体(カタログ番号#TA328111)。
apoAIVの検出及び/又は定量化については、Abcam製のヤギポリクローナル抗ヒトapoAIV(カタログ番号#ab59036)及びSigma-Aldrich製のウサギポリクローナル抗ヒトapoAIV(カタログ番号#HPA001352)。
apoCIの検出及び/又は定量化については、Abcam製のウサギポリクローナル抗apoCI抗体(カタログ番号#ab20793)及びAbcam製のヤギポリクローナル抗apoCI抗体(カタログ番号#ab104446)。
apoCIIの検出及び/又は定量化については、Abcam製のウサギポリクローナル抗apoCII抗体(カタログ番号#ab76452)、Sigma-Aldrich製のウサギポリクローナル抗apoCII抗体(カタログ番号#SAB1300917)及びNovus-Biologicals製のマウスモノクローナル抗apoCII抗体(3E4、カタログ番号#H00000344-M01)。
apoCIIIの検出及び/又は定量化については、Abcam製のヤギポリクローナル抗apoCIII抗体(カタログ番号#ab7619)及びSigma-Aldrich製のウサギポリクローナル抗apoCIII抗体(カタログ番号#A0734)。
apoEの検出及び/又は定量化については、全apoEに対するウサギポリクローナル抗体(SantaCruz Biotechnology, Inc.、#sc-98573)、及びTaKaRa Clontech製のウサギIgG抗ヒトapoE(カタログ番号#18171A及び#18171B)、及びAbcam製のウサギポリクローナル抗ヒトapoE抗体(カタログ番号#ab72398)。
apoE2アイソフォームの検出及び/又は定量化については、Biolegend製のマウスモノクローナル抗ヒトapoE2(3C2クローン、カタログ番号#815001;クローン8G3、カタログ番号#812701)。
apoE3アイソフォームの検出及び/又は定量化については、Preprotech製のウサギポリクローナル抗ヒトapoE3(カタログ番号#350-02)。
apoE4アイソフォームの検出及び/又は定量化については、Merck Millipore製のマウスモノクローナル抗ヒトapoE4(クローン4E4、カタログ番号#MABN43)、BioLegend製のマウスモノクローナル抗ヒトapoE4(クローン5B5、カタログ番号#811601)、apoE E4に特異的なマウスモノクローナル抗体、クローン4E4(Novus Biologicals、#NBP1-49529)、apoE E4に特異的なマウスモノクローナル抗体、クローン5B5(IBL #10025)、apoE E4に特異的なマウスモノクローナル抗体、クローン1F9(MBL、#M067-3)及びThermo Scientific製のマウスモノクローナル抗体抗apoE4、クローン4E4(カタログ番号#MA5-16146)。
apoJの検出及び/又は定量化については、Abcam製のマウスモノクローナル抗apoJ抗体(CLI-9、カタログ番号#ab16077)及びSigma-Aldrich製のヤギポリクローナル抗apoJ抗体(カタログ番号#SAB2500251)。
【0069】
工程(i)の結果としてアポリポタンパク質又はそのアイソフォームが結合した表面と、該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体との接触は、抗体とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で行う。上記複合体の形成に好適な条件を当業者は決定することができ、適切な温度、インキュベーション時間及びpHが含まれる。特定の実施形態では、温度は4℃~40℃、特に10℃~35℃、より特に15℃~30℃、好ましくは20℃~25℃(室温)の範囲である。好ましい実施形態では、本発明の第1の方法の工程(i)及び(ii)における温度は実質的に同じである。特定の実施形態では、pHはpH2~pH10、好ましくはpH4~pH10の範囲である。好ましい実施形態では、本発明の第1の方法の工程(i)及び(ii)におけるpHは実質的に同じである。特定の実施形態では、抗体を、表面に結合したアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとともに少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。
【0070】
本発明の第1の方法の第3の工程では、方法の第2の工程の結果である、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面に結合したアポリポタンパク質又はそのアイソフォームと該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体との複合体を検出する。
【0071】
アポリポタンパク質又はそのアイソフォームは単独で検出可能な分子ではないため、特定の実施形態では検出可能な分子又は複合体を用いて検出工程を行う。アポリポタンパク質-抗体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体は、当業者に既知の種々の方法によって検出することができる。本発明の特定の実施形態では、アポリポタンパク質-抗体の複合体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体の検出は、アポリポタンパク質-抗体の複合体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体に特異的に結合する検出可能な試薬を用いて行うが、検出可能な試薬は、測定することができるシグナルを生成することによって複合体の検出を容易にする。ポリペプチド及び抗体等の生体分子を標識化する方法は、当該技術分野で既知である。
【0072】
広範な検出可能な試薬のいずれかを本発明の実施において使用することができる。好適な検出可能な試薬としては、様々なリガンド、放射性核種、蛍光色素、化学発光剤、微小粒子(例えば、量子ドット、ナノ結晶、蛍光体等)、酵素(例えば、ELISAに使用されるもの、すなわちホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ等)、比色標識、磁気標識及びビオチン、ジゴキシゲニン、又は抗血清若しくはモノクローナル抗体が利用可能な他のハプテン及びタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
光学イメージングのために検出可能な試薬としては、例えばフルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーンの誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーンの誘導体、エオシン、エリトロシン、テキサスレッド、テキサスレッドの誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールド(nanogold)スルホスクシンイミジルエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、dapoxyl染料、及び様々な他の蛍光化合物、例えばCy3、Cy2、Cy5、Alexa Fluor(登録商標)蛍光標識ファミリー(Molecular Probes, Inc.)、カルボキシフルオレセイン(FAM)及びフルオレセインイソチオシアネート(FITC)が挙げられる。
【0074】
特定の実施形態では、検出可能な試薬はタンパク質である。本発明における「タンパク質」という用語は、1つ以上のアミノ酸鎖からなる巨大分子を指す。タンパク質は、他の分子に特異的に結合するそれらの能力に基づく様々な細胞機能群の実行に関与している。タンパク質は、他のタンパク質及び小基質分子に結合することができる。検出可能な試薬として好適なタンパク質の非限定的な例としては、限定されるものではないが、酵素、蛍光タンパク質、発光タンパク質及び抗原が挙げられる。
【0075】
好ましい実施形態では、タンパク質は酵素である。本発明における「酵素」という用語は、高選択性触媒として働き、それが特異的な代謝反応の速度及び特異性の両方を加速するタンパク質を指す。本発明に好適な酵素の非限定的な例としては、限定されるものではないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼが挙げられる。当業者に理解されるように、本発明への使用に好適な酵素は比色法、化学発光法又は蛍光法によって検出可能な化合物中の基質の修飾を触媒するそれらの能力の結果として間接的に検出可能である。好適な基質の例としては、限定されるものではないが、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸](ABTS)、o-フェニレンジアミン(OPD)及び3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)が挙げられる。
【0076】
生物発光タンパク質又はフォトプロテイン(photoproteins)は、事前に励起する必要なしにそれらの特異的な補欠分子族の化学反応を行い、発光を生じることが可能である酸化酵素の特殊な例である。生物発光タンパク質の非限定的な例としては、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ及びイクオリンが挙げられる。
【0077】
別の実施形態では、タンパク質は蛍光タンパク質である。本発明における「蛍光タンパク質」という用語は、励起に好適な波長で励起された場合に発光する能力を有するタンパク質を指す。本発明の複合体において使用することができる蛍光タンパク質の非限定的な例としては、限定されるものではないが、GFP、GFPuv、BFP、CFP、YFP、EBFP2、mCerulean、mCerulean3、mVenus、mTurquoise、T-Sapphire、citrine、amFP486、zFP506、zFP538、drFP、DsRed、mCherry、dTomate、mTFP1、TagRFP-T、mKO2、mRuby、mKate、mAmetrine、REACh、R-フィコエリトリン(R-PE)及びアロフィコシアニン(APC)が挙げられる。
【0078】
別の実施形態では、タンパク質は発光タンパク質である。本発明における「発光タンパク質」という用語は、励起に好適な波長で励起された場合に発光することが可能なタンパク質を指す。
【0079】
別の実施形態では、タンパク質は抗原である。本発明における「抗原」という用語は、体内で免疫応答を誘導する分子を指す。したがって、抗原はそれを認識し、それに特異的に結合する抗体を生成するために使用することができる。抗原の非限定的な例としては、特に腫瘍抗原、例えば癌胎児性抗原(CEA)、HER2、前立腺特異抗原(PSA)、及び組織プラスミノーゲン活性化因子、及びActivase(登録商標)等のその組換え変異体、並びに細菌抗原、アレルゲン等が挙げられる。当業者に理解されるように、本発明での使用に好適な抗原は、抗体によって特異的に認識されるそれらの能力の結果として間接的に検出可能である。
【0080】
別の実施形態では、検出可能な試薬はハプテンである。本発明における「ハプテン」という用語は、抗原性であるが、単独では特異的免疫反応を誘導することができない、小さな分子サイズ(10000Da未満)を有する化学化合物の群を指す。キャリアと呼ばれる大きな免疫原性タンパク質へのハプテンの化学共役により、特異的免疫反応を誘導することが可能なハプテン-免疫原性キャリアコンジュゲートが生成する。ビタミンの非限定的な例としては、ビオチン(ビタミンB7)、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)及びニトロ-ヨードフェノール(NIP)が挙げられる。特定の実施形態では、ビタミンはビオチンである。本発明における「ビオチン」という用語は、これまでの記載で最も高いKd=10M~15Mという親和性でアビジンに特異的に結合することを特徴とする、ビタミンH及びビタミンB7とも称される、水及びアルコールに可溶性の熱安定性ビタミンを指す。当業者に理解されるように、ビオチンはアビジン、又はストレプトアビジン及びニュートラアビジン等のその変異体によって特異的に認識されるその能力の結果として間接的に検出可能である。
【0081】
検出可能な試薬の検出は、当業者に既知であるように、試薬のタイプ及びサンプルのタイプに好適な装置を使用する蛍光法又は比色法を用いて行うことができる。
【0082】
例としては、複合体のアポリポタンパク質が表面、好ましくはポリスチレン表面に付着したアポリポタンパク質-抗体の複合体を、予めアポリポタンパク質と複合させた抗アポリポタンパク質抗体に特異的な第2の抗体(レポーター抗体)とインキュベートする。したがって、本発明の第1の方法の特定の実施形態では、方法の工程(ii)において形成されるアポリポタンパク質-抗体の複合体は、抗アポリポタンパク質抗体に特異的なレポーター抗体を用いて検出される。特定の実施形態では、抗アポリポタンパク質抗体及びレポーター抗体は同じ抗体である。好ましい実施形態では、第2の抗体(レポーター抗体)を、表面とアポリポタンパク質とのインキュベーション及び/又はアポリポタンパク質に特異的な抗体と表面に結合したアポリポタンパク質とのインキュベーションの条件と同様の条件で酵素とコンジュゲートさせる。表面に結合した抗体-アポリポタンパク質の複合体は、酵素によって、例えば蛍光顕微鏡での蛍光法を用いて又は分光光度計での比色法により検出可能な生成物へと変換される基質を添加することで検出される。代替的な実施形態では、検出は、検出可能な試薬で適切に標識されたアポリポタンパク質に特異的なプローブの使用により同じように行うことができる。
【0083】
このため、本発明によると、アポリポタンパク質-抗体の複合体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体は、上記のように検出可能な分子又は複合体を用いて検出することができる。本発明の代替的な実施形態では、アポリポタンパク質-抗体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体は比濁法によって、特に免疫比濁アッセイを用いて検出される。アポリポタンパク質-抗体の複合体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体の形成は、該アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質アイソフォームが分析対象のサンプル中に存在する場合に、アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質アイソフォームを含まないサンプルの濁度と比較して濁度の増大をもたらし、該濁度変動を(例えば、分光光度計を用いて)測定することができる。本発明の好ましい実施形態では、免疫比濁アッセイはLEIT(ラテックス増強免疫比濁法)である。
【0084】
特定の実施形態では、複合体の検出はELISAによって行う。代替的な実施形態では、複合体の検出は免疫比濁アッセイによって行う。
【0085】
アポリポタンパク質アイソフォームの相対量を決定する方法
本発明の発明者らは、特定のアポリポタンパク質アイソフォームが被験体内に存在するか否かを、被験体に由来する血漿サンプルの二重ELISAアッセイに基づいて決定する方法であって、一方のアッセイにより特定のアポリポタンパク質アイソフォームのレベルを決定し、他方のアッセイにより総アポリポタンパク質のレベルを決定する、方法を開発した。次いで、アポリポタンパク質アイソフォーム/総アポリポタンパク質の比率を算出する。実施例1の「血漿サンプルにおけるヘテロ接合性/ホモ接合性APOE ε4キャリアの識別」及び図4を参照されたい。apoEのアポリポタンパク質アイソフォーム含量も免疫比濁アッセイによって決定した。実施例2の「比濁アッセイによるApoE4検出」を参照されたい。
【0086】
このため、別の実施形態では、本発明は、サンプル中の所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、表面へのアポリポタンパク質の結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質に特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及びサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることであって、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行うことと、
(iii)工程(ii)において形成される第1の複合体及び第2の複合体を検出することと、
(iv)工程(iii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量を決定することと、
を含む、方法(本発明の第2の方法)に関する。
【0087】
特定の実施形態では、本発明は、サンプル中のapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択される所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質の結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質に特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及びサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることであって、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行うことと、
(iii)工程(ii)において形成される第1の複合体及び第2の複合体を検出することと、
(iv)工程(iii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量を決定することと、
を含み、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルの接触前に処理しないか、又はサンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法に関する。
【0088】
本発明の第2の方法により決定されるアポリポタンパク質アイソフォームとしては、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)のアイソフォームが挙げられる。特定の実施形態では、決定されるアポリポタンパク質アイソフォームはapoE2、apoE3及びapoE4からなる群から選択されるapoEアイソフォーム、好ましくはapoE4である。より特定の実施形態では、アポリポタンパク質はapoEであり、アポリポタンパク質アイソフォームはapoE4である。
【0089】
本発明の第2の方法の第1の工程では、サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのサンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させるが、上記表面は、それに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しない。
【0090】
ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面、好ましくはポリスチレン表面へのサンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件は、本発明の第1の方法において上述されており、本明細書の一部をなす。
【0091】
特定の実施形態では、決定されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを含有するサンプルは、生体サンプルである。好適な生体サンプルは、本発明の第1の方法において言及されており、本明細書の一部をなす。好ましいサンプルとしては血液、血漿、血清、尿、唾液、尿及び脳脊髄液(CSF)等の体液が挙げられる。特定の実施形態では、サンプルは血漿サンプルである。血漿サンプルの好適な希釈率は10倍~100000倍、好ましくは100倍~1000倍の範囲であり、より好ましくは、血漿サンプルの希釈率は200倍である。
【0092】
本発明によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、それに結合し、検出が行われるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な任意の抗体を含有しない。本発明によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、上述されており、本明細書の一部をなす。特定の実施形態では、ポリスチレン表面はELISAプレート、luminexビーズ又は比濁ビーズによって構成される。いずれの場合にも、上記ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、該表面に結合するアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しない。
【0093】
特定の実施形態では、本発明の第2の方法によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、唯一の実体によって、該唯一の実体がアポリポタンパク質の結合に必要とされる表面、例えば単一ELISAプレート又はELISAプレート内の単一ウェル等の単一プレートをもたらすように形成される。この実施形態が、第1の抗体及び第2の抗体を、各抗体により生じるシグナルが第2の抗体によってもたらされるシグナルにより干渉されることなく決定することができるように異なる検出可能なマーカーを用いて検出する場合に用いられ得ることが理解される。代替的な実施形態では、本発明の第2の方法によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は複数の実体、すなわち上記表面へのアポリポタンパク質の結合に利用可能な表面をもたらす少なくとも2単位の実体、例えばluminexビーズ又は比濁ビーズ等の複数のビーズによって形成される。本発明の第2の方法の特定の実施形態では、表面への上記サンプル中のアポリポタンパク質の結合に好適な条件下でサンプルと接触させるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、複数の実体によって形成される。上記表面は、luminexビーズ又は比濁ビーズによって形成されるのが好ましい。この実施形態は、工程(i)において形成される複合体を、両方の抗体を各々の検出可能な試薬によりもたらされるシグナルによって区別することを可能にする検出可能な試薬で更に処理しない場合に有用である。例えば、比濁検出の場合、アポリポタンパク質と抗体との複合体の形成は、サンプルの濁度の増大によって検出される。この場合、濁度の増大がアポリポタンパク質アイソフォームと第1の抗体との複合体の形成によるものか、又は全アポリポタンパク質と第2の抗体との複合体によるものかを決定することは可能でない。この場合、各々の抗体型と接触する実体を、それらを異なる容器に入れることによって別個に検出することができるように、接触を複数の実体(例えば、微小粒子の形態)によって形成される表面を用いて行う必要がある。
【0094】
特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前に処理しない。代替的な好ましい実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前にブロッキングする。すなわち、表面を本発明の第2の方法の結合工程(i)の前にブロッキングする。特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を、結合工程の前にアポリポタンパク質以外のタンパク質及び/又は洗浄剤によりブロッキングする。本発明による表面のブロッキングに好適なタンパク質及び洗浄剤は上記されており、引用することにより本明細書の一部をなす。ブロッキングに特に好ましいタンパク質はBSA、カゼイン及びゼラチン、より好ましくはBSA、更により好ましくは1%~3%の範囲のBSA、より好ましくは1%BSAである。表面を結合工程の前にブロッキングするのに好適な洗浄剤としては、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン-40(PVP-40)、ポリソルベート20(Tween 20)、Nonidet-P40及びTriton X-100が挙げられる。
【0095】
特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触後に洗浄溶液で処理する。すなわち、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を本発明の第2の方法の結合工程(i)の後に洗浄溶液で処理する。洗浄溶液でのポリスチレン表面又はポリカーボネート表面の処理は、本発明の第2の方法の結合工程(i)の後かつ工程(ii)の前に行うのが好ましい。好適な洗浄溶液は上述されており、本明細書の一部をなす。特定の実施形態では、洗浄溶液は1つ以上の塩を含有する。洗浄溶液が含有する塩はNaClであるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は少なくとも1つの洗浄剤を含有する。洗浄剤は、ポリソルベート20(Tween 20)及びTriton X-100からなる群から選択されるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は酸を含有する。酸はHCl及びギ酸からなる群から選択されるのが好ましい。より好ましくは、酸は2M HCl及び70%ギ酸から選択される。付加的又は代替的には、洗浄溶液は塩基を含有する。好ましくは、塩基はNaOH、より好ましくは2M NaOHである。付加的又は代替的には、洗浄溶液は還元剤を含有する。還元剤は2-メルカプトエタノールであるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は酵素洗浄剤(プロテアーゼ等)、酸化試薬(次亜塩素酸ナトリウム等)又はそれらの組合せを含有しない。
【0096】
本発明の第2の方法の第2の工程では、工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及びサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させ、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成に好適であり、かつ第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適である条件下で行う。
【0097】
アポリポタンパク質に特異的な抗体及び特定のアポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体は、上記の本発明の第1の方法において引用されており、本明細書の一部をなす。
【0098】
本発明の第2の方法によると、工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と第1の抗体及び第2の抗体とを接触させるが、第1の抗体は、決定されるアポリポタンパク質アイソフォームに特異的であり、第2の抗体は、上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能である。特定の実施形態では、アポリポタンパク質を結合させ、第1の抗体と接触させる表面は、アポリポタンパク質を結合させ、第2の抗体と接触させるのと同じ表面である。すなわち、接触を単一容器、例えばELISAプレート等のプレートの単一ウェルにおいて行う。したがって、アポリポタンパク質が結合した表面と第1の抗体との接触を、第2の抗体との接触が行われるものと同じ容器において行う。代替的な実施形態では、アポリポタンパク質が結合した第1の表面を第1の抗体と接触させ、アポリポタンパク質が結合した第2の表面を第2の抗体と接触させ、上記第1の表面及び第2の表面は異なる表面、例えばプレート(ELISAプレート等)における異なるウェル、異なるビーズ(luminexビーズ又は比濁ビーズ等)又は異なる粒子である。したがって、アポリポタンパク質が結合した表面と第1の抗体との接触を、アポリポタンパク質が結合した表面と第2の抗体との接触を行う容器とは異なる容器において行う。すなわち、別個の容器を使用する。より特定の実施形態では、別個の容器を使用する場合、該容器の各々が複数の実体、例えば2つの別個のビーズ(luminexビーズ又は比濁ビーズ等)の組又は2つの別個の粒子の組を含む。
【0099】
本発明の第2の方法の好ましい実施形態では、工程(i)において使用する表面は、複数の実体により形成され、工程(ii)における第1の抗体及び第2の抗体との接触は、各々が表面を形成する複数の実体の一部を含有する別個の容器において行われる。
【0100】
工程(i)の結果としてアポリポタンパク質アイソフォームが結合した表面と、該アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及び上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体との接触は、第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行う。上記複合体の形成に好適な条件を当業者は決定することができ、適切な温度、インキュベーション時間及びpHが含まれる。特定の実施形態では、温度は4℃~40℃、特に10℃~35℃、より特に15℃~30℃、好ましくは20℃~25℃(室温)の範囲である。好ましい実施形態では、本発明の第2の方法の工程(i)及び(ii)における温度は実質的に同じである。特定の実施形態では、pHはpH2~pH10、好ましくはpH4~pH10の範囲である。好ましい実施形態では、本発明の第2の方法の工程(i)及び(ii)におけるpHは実質的に同じである。特定の実施形態では、第1の抗体を、表面に結合した決定されるアポリポタンパク質アイソフォームとともに少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。特定の実施形態では、第2の抗体を、表面に結合した決定されるアポリポタンパク質のアイソフォームとともに少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。
【0101】
本発明の第2の方法の第3の工程では、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体を検出する。
【0102】
上述のように、アポリポタンパク質を結合させ、第1の抗体と接触させる表面は、アポリポタンパク質を結合させ、第2の抗体と接触させる表面と同じであっても、又は異なっていてもよい。特定の実施形態では、上記表面が異なる表面であり、接触を別個の容器において行う場合、本発明の第2の方法の工程(iii)における検出は、各容器において別個に行われる。
【0103】
本発明の第2の方法の好ましい実施形態では、工程(i)において使用される表面は、複数の実体によって形成され、工程(ii)における第1の抗体及び第2の抗体との接触は、各々が表面を形成する複数の実体の一部を含有する別個の容器において行われ、工程(iii)における検出は、各容器において別個に行われる。この実施形態は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がビーズ、好ましくはluminexビーズ又は比濁ビーズによって構成され、検出が免疫比濁法を用いて行われる場合に特に好ましい。このため、本発明のこの実施形態によると、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体は比濁法によって、特に免疫比濁アッセイを用いて検出される。アポリポタンパク質(その全てのアイソフォーム)-抗体の複合体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体の形成は、該アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質アイソフォームが分析対象のサンプル中に存在する場合に、アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質アイソフォームを含まないサンプルの濁度と比較して濁度の増大をもたらし、該濁度変動を(例えば、分光光度計を用いて)測定することができる。本発明の好ましい実施形態では、免疫比濁アッセイはLEITである。
【0104】
特定の代替的な実施形態では、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体を、検出可能な試薬を用いて検出する。本発明において好適な検出可能な試薬は、本発明の第1の方法において上述されており、本明細書の一部をなす。好ましい実施形態では、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体を、抗アポリポタンパク質抗体及び/又は抗アポリポタンパク質アイソフォーム抗体に特異的なレポーター抗体を用いて検出する。好ましい実施形態では、第2の抗体(レポーター抗体)を、表面とアポリポタンパク質アイソフォームとのインキュベーション及び/又はアポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体と表面に結合したアポリポタンパク質アイソフォームとのインキュベーションの条件と同様の条件で酵素とコンジュゲートさせる。この実施形態は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がプレート、好ましくはELISAプレートによって構成され、検出がELISAアッセイを用いて行われる場合に特に好ましい。
【0105】
本発明の第2の方法の第4の工程では、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量を、工程(iii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて決定する。
【0106】
特定の実施形態では、本発明の第2の方法の工程(iii)において検出される第1の複合体及び第2の複合体の検出に由来するシグナル間の比率を算出する。結果として、特定のアポリポタンパク質のアイソフォームの該アポリポタンパク質の総含量に対する相対量が決定される。当業者に認識されるように、比率は0(特定のアポリポタンパク質アイソフォームが分析対象のサンプル中に存在しない場合)から1(特定のアポリポタンパク質アイソフォームが、分析対象のサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の唯一のアイソフォームである場合)の範囲であり得る。
【0107】
本発明の対立遺伝子量の決定方法
本発明の発明者らは、被験体が特定のアポリポタンパク質アイソフォームのホモ接合性又はヘテロ接合性キャリアであるかを、被験体のサンプルの二重アッセイに基づいて決定する方法であって、一方のアッセイにより特定のアポリポタンパク質アイソフォームのレベルを決定し、他方のアッセイにより総アポリポタンパク質のレベルを決定する、方法を開発した。次いで、アポリポタンパク質アイソフォーム/総アポリポタンパク質の比率を算出し、この比率から対立遺伝子量を推測することができる。実施例1を参照されたい。アポリポタンパク質アイソフォーム含量も免疫比濁アッセイによって決定した。実施例2を参照されたい。
【0108】
このため、更なる態様では、本発明は、被験体におけるアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定する方法であって、
(i)アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来する上記被験体のタンパク質含有サンプルと、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、表面へのアポリポタンパク質アイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な少なくとも1つの抗体とを、抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体の量と上記遺伝的変異体をコードする対立遺伝子の数とを相関させることによって、アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子量を決定することと、
を含む、方法(本発明の第3の方法)に関する。
【0109】
特定の実施形態では、本発明は、被験体におけるapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質のアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定する方法であって、
(i)アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来する上記被験体のタンパク質含有サンプルと、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、表面へのアポリポタンパク質アイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な少なくとも1つの抗体とを、抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体の量と上記遺伝的変異体をコードする対立遺伝子の数とを相関させることによって、アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子量を決定することと、
を含み、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルの接触前に処理しないか、又はサンプルの接触前にアルブミンでブロッキングする、方法に関する。
【0110】
本発明の第3の方法により決定されるアポリポタンパク質アイソフォームとしては、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)のアイソフォームが挙げられる。特定の実施形態では、本発明の第3の方法により決定されるアポリポタンパク質アイソフォームはapoE2、apoE3及びapoE4からなる群から選択されるapoEアポリポタンパク質アイソフォームである。より特定の実施形態では、本発明の第3の方法により決定されるアポリポタンパク質アイソフォームは、apoE4である。
【0111】
本発明の第3の方法の第1の工程では、アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来する被験体のタンパク質含有サンプルと、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、表面へのサンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させるが、上記表面は、それに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しない。
【0112】
ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面、好ましくはポリスチレン表面へのサンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件は、本発明の第1の方法において上述されており、本明細書の一部をなす。
【0113】
サンプルは、アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来するタンパク質含有サンプルである。好適なサンプルとしては、上述のように血液、血漿、血清、尿、唾液、尿及び脳脊髄液(CSF)等の体液が挙げられる。特定の実施形態では、サンプルは血漿サンプルである。血漿サンプルの好適な希釈率は10倍~100000倍、好ましくは100倍~1000倍の範囲であり、より好ましくは、血漿サンプルの希釈率は200倍である。
【0114】
本発明によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、それに結合し、検出が行われるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な任意の抗体を含有しない。本発明によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、上述されており、本明細書の一部をなす。特定の実施形態では、ポリスチレン表面はELISAプレート、luminexビーズ又は比濁ビーズによって構成される。いずれの場合にも、上記ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、該表面に結合するアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しない。
【0115】
特定の実施形態では、本発明の第3の方法によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、唯一の実体によって、該唯一の実体がアポリポタンパク質の結合に必要とされる表面、例えば単一ELISAプレート等の単一プレートをもたらすように形成される。代替的な実施形態では、本発明の第3の方法によるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は複数の実体、すなわち上記表面へのアポリポタンパク質の結合に利用可能な表面をもたらす少なくとも2単位の実体、例えばluminexビーズ又は比濁ビーズ等の複数のビーズによって形成される。本発明の第3の方法の特定の実施形態では、表面への上記サンプル中のアポリポタンパク質の結合に好適な条件下でサンプルと接触させるポリスチレン表面又はポリカーボネート表面は、複数の実体によって形成される。上記表面は、luminexビーズ又は比濁ビーズによって形成されるのが好ましい。
【0116】
特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前に処理しない。代替的な好ましい実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触前にブロッキングする。すなわち、表面を本発明の第3の方法の結合工程(i)の前にブロッキングする。特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を、結合工程の前にアポリポタンパク質以外のタンパク質及び/又は洗浄剤によりブロッキングする。本発明による表面のブロッキングに好適なタンパク質及び洗浄剤は上記されており、本明細書の一部をなす。ブロッキングに特に好ましいタンパク質はBSA、カゼイン及びゼラチン、より好ましくはBSA、更により好ましくは1%~3%の範囲のBSA、より好ましくは1%BSAである。表面を結合工程の前にブロッキングするのに好適な洗浄剤としては、限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン-40(PVP-40)、ポリソルベート20(Tween 20)、Nonidet-P40及びTriton X-100が挙げられる。
【0117】
特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面をサンプルとの接触後に洗浄溶液で処理する。すなわち、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を本発明の第3の方法の結合工程(i)の後に洗浄溶液で処理する。洗浄溶液でのポリスチレン表面又はポリカーボネート表面の処理は、本発明の第3の方法の結合工程(i)の後かつ工程(ii)の前に行うのが好ましい。好適な洗浄溶液は上述されており、本明細書の一部をなす。特定の実施形態では、洗浄溶液は1つ以上の塩を含有する。洗浄溶液が含有する塩はNaClであるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は少なくとも1つの洗浄剤を含有する。洗浄剤は、ポリソルベート20(Tween 20)及びTriton X-100からなる群から選択されるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は酸を含有する。酸はHCl及びギ酸からなる群から選択されるのが好ましい。より好ましくは、酸は2M HCl及び70%ギ酸から選択される。付加的又は代替的には、洗浄溶液は塩基を含有する。好ましくは、塩基はNaOH、より好ましくは2M NaOHである。付加的又は代替的には、洗浄溶液は還元剤を含有する。還元剤は2-メルカプトエタノールであるのが好ましい。付加的又は代替的には、洗浄溶液は酵素洗浄剤(プロテアーゼ等)、酸化試薬(次亜塩素酸ナトリウム等)又はそれらの組合せを含有しない。
【0118】
本発明の第3の方法の第2の工程では、工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な少なくとも1つの抗体とを、抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させる。
【0119】
特定の好ましい実施形態では、本発明の第3の方法の第2の工程は、表面とサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることを更に含み、該接触を、第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行う。
【0120】
アポリポタンパク質に特異的な抗体及び特定のアポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体は、上記の本発明の第1の方法において引用されており、本明細書の一部をなす。
【0121】
第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件を当業者は決定することができ、上述のように適切な温度、インキュベーション時間及びpHが含まれる。特定の実施形態では、温度は4℃~40℃、特に10℃~35℃、より特に15℃~30℃、好ましくは20℃~25℃(室温)の範囲である。好ましい実施形態では、本発明の第3の方法の工程(i)及び(ii)における温度は、実質的に同じである。特定の実施形態では、pHはpH2~pH10、好ましくはpH4~pH10の範囲である。好ましい実施形態では、本発明の第3の方法の工程(i)及び(ii)におけるpHは、実質的に同じである。特定の実施形態では、第1の抗体を、表面に結合した決定されるアポリポタンパク質アイソフォームとともに少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。特定の実施形態では、第2の抗体を、表面に結合した決定されるアポリポタンパク質のアイソフォームとともに少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも30分間、更により好ましくは少なくとも60分間インキュベートする。
【0122】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質を結合させ、第1の抗体と接触させる表面は、アポリポタンパク質を結合させ、第2の抗体と接触させるのと同じ表面である。すなわち、接触を単一容器、例えばELISAプレート等のプレートの単一ウェルにおいて行う。したがって、アポリポタンパク質が結合した表面と第1の抗体との接触を、第2の抗体との接触が行われるものと同じ容器において行う。代替的な好ましい実施形態では、アポリポタンパク質が結合した第1の表面を第1の抗体と接触させ、アポリポタンパク質が結合した第2の表面を第2の抗体と接触させ、上記第1の表面及び第2の表面は異なる表面、例えばプレート(ELISAプレート等)における異なるウェル、異なるビーズ(luminexビーズ又は比濁ビーズ等)又は異なる粒子である。したがって、アポリポタンパク質が結合した表面と第1の抗体との接触を、アポリポタンパク質が結合した表面と第2の抗体との接触を行う容器とは異なる容器において行う。すなわち、別個の容器を使用する。より特定の実施形態では、別個の容器を使用する場合、該容器の各々が複数の実体、例えば2つの別個のビーズ(luminexビーズ又は比濁ビーズ等)の組又は2つの別個の粒子の組を含む。
【0123】
本発明の第2の方法の好ましい実施形態では、工程(i)において使用する表面は、複数の実体により形成され、工程(ii)における前記第1の抗体及び前記第2の抗体との接触は、各々が表面を形成する複数の実体の一部を含有する別個の容器において行われる。
【0124】
本発明の第3の方法の第3の工程では、工程(ii)において形成される複合体の量と、上記遺伝的変異体をコードする対立遺伝子の数とを相関させることによって前記アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子量を決定する。
【0125】
特定の実施形態では、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量の決定は、工程(ii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて行い、アポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を、(iii)において決定された相対量から決定する。
【0126】
特定の実施形態では、工程(ii)において検出される第1の複合体及び第2の複合体の検出に由来するシグナル間の比率を算出する。結果として、特定のアポリポタンパク質のアイソフォームの該アポリポタンパク質の総含量に対する相対量が決定される。当業者に認識されるように、比率は0(特定のアポリポタンパク質アイソフォームが分析対象のサンプル中に存在しない場合)から1(特定のアポリポタンパク質アイソフォームが、分析対象のサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の唯一のアイソフォームである場合)の範囲であり得る。このため、ゼロに等しい比率は、分析サンプルにおけるアポリポタンパク質アイソフォームの非存在に関する。1に等しい比率(ここで、1は任意単位の任意の値である)は、アポリポタンパク質アイソフォームについてホモ接合性の被験体に関する。0.5に等しい比率(ここで、0.5は任意単位の任意の値である)は、アポリポタンパク質アイソフォームについてヘテロ接合性の被験体に関する。複合体を検出する方法は上述されており、本明細書の一部をなす。
【0127】
本発明の第2の方法の好ましい実施形態では、工程(i)において使用される表面は、複数の実体によって形成され、工程(ii)における第1の抗体及び第2の抗体との接触は、各々が表面を形成する複数の実体の一部を含有する別個の容器において行われ、工程(iii)における検出は、各容器において別個に行われる。この実施形態は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がビーズ、好ましくはluminexビーズ又は比濁ビーズによって構成され、検出が免疫比濁法を用いて行われる場合に特に好ましい。このため、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体は比濁法によって、特に免疫比濁アッセイを用いて検出される。アポリポタンパク質(その全てのアイソフォーム)-抗体の複合体又はアポリポタンパク質アイソフォーム-抗体の複合体の形成は、該アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質アイソフォームが分析対象のサンプル中に存在する場合に、アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質アイソフォームを含まないサンプルの濁度と比較して濁度の増大をもたらし、該濁度変動を(例えば、分光光度計を用いて)測定することができる。本発明の好ましい実施形態では、免疫比濁アッセイはLEITである。
【0128】
特定の代替的な実施形態では、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体を、検出可能な試薬を用いて検出する。本発明において好適な検出可能な試薬は、上述されており、本明細書の一部をなす。好ましい実施形態では、方法の第2の工程において形成される第1の複合体及び第2の複合体を、抗アポリポタンパク質抗体及び/又は抗アポリポタンパク質アイソフォーム抗体に特異的なレポーター抗体を用いて検出する。好ましい実施形態では、第2の抗体(レポーター抗体)を、表面とアポリポタンパク質アイソフォームとのインキュベーション及び/又はアポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体と表面に結合したアポリポタンパク質アイソフォームとのインキュベーションの条件と同様の条件で酵素とコンジュゲートさせる。この実施形態は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がプレート、好ましくはELISAプレートによって構成され、検出がELISAアッセイを用いて行われる場合に特に好ましい。
【0129】
結果として、ゼロに等しい比率により、分析サンプルにおけるアポリポタンパク質アイソフォームの非存在が特定される。すなわち、遺伝的変異体をコードする特定の対立遺伝子の量はゼロである。1に等しい比率は、アポリポタンパク質アイソフォームについてホモ接合性の被験体に関する。すなわち、遺伝的変異体をコードする特定の対立遺伝子の量は2である。0.5に等しい比率は、アポリポタンパク質アイソフォームについてヘテロ接合性の被験体に関する。すなわち、1という量の遺伝的変異体をコードする特定の対立遺伝子が存在する。
【0130】
本発明の第3の方法の特定の好ましい実施形態では、工程(i)において使用される表面は複数の実体によって形成され、工程(ii)は、表面とサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることを更に含み、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行い、第1の抗体及び第2の抗体との接触を、各々が表面を形成する複数の実体の一部を含有する別個の容器において行い、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量の決定を、工程(ii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて行い、アポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を、工程(iii)において決定される相対量から決定する。
【0131】
神経変性疾患の発症を予測する方法
被験体における19番染色体上のApoE ε4遺伝子の存在は、該被験体においてアルツハイマー病(AD)を発症するリスクを増大することが知られている。したがって、被験体における1つのapoE4対立遺伝子の存在が、apoE4対立遺伝子を保有しない被験体と比べたAD発症の可能性の4倍の増大に関係し、被験体における2つのapoE4対立遺伝子の存在が、apoE4対立遺伝子を保有しない被験体と比べたAD発症の可能性の15倍~20倍の増大に関係していると決定された。したがって、apoE4を含むアポリポタンパク質アイソフォームを決定する本発明の方法を、被験体におけるAD発症の予測に適用することができる。
【0132】
このため、更なる態様では、本発明は、被験体に由来するサンプルにおいてapoE4アイソフォームのレベルを上述の本発明の方法(第1、第2及び第3の方法)のいずれかによって決定することを含む、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、apoE4レベルが基準値を超える場合に被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示される、方法に関する。
【0133】
神経変性疾患の発症の可能性を決定する本発明の方法による基準値は、apoE4対立遺伝子を保有しない被験体に由来するサンプルにおいて決定されるapoE4のレベルである。
【0134】
本発明の方法による基準値又は基準レベルは絶対値、相対値、上限及び/又は下限を有する値、値の範囲、代表値、中央値、平均値、又は特定の対照若しくはベースライン値と比較した値であり得る。基準値は、個々のサンプルの値、例えば試験対象の被験体に由来するサンプルからのものであるが、先の時点で得られた値に基づくものであってもよい。基準値は、例えば暦年齢適合群の被験体の集団に由来する多数のサンプルに基づくものであっても、又は試験対象のサンプルを含めた若しくは除外したサンプルのプールに基づくものであってもよい。マーカーの基準値を決定する際に様々な検討事項が考慮される。かかる検討事項には、患者の年齢、体重、性別、全身的な身体状態等が含まれる。例えば、好ましくは上述の検討事項、例えば様々な年齢区分に従って分類された少なくとも2人、少なくとも10人、少なくとも100人から好ましくは1000人を超える被験体の同数の群が参照群とみなされる。
【0135】
神経変性疾患を発症する高い可能性は、被験体が時間とともに上記疾患を発症する又は患う少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%の可能性を示す状況で見られる。特定の実施形態では、高い可能性は少なくとも100%である。他の実施形態では、高い可能性は少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%及び少なくとも1000%である。しかしながら、当業者により本発明を特徴付けるのに好適であるとみなされる他のカットオフ又は範囲も企図され、これらも本発明の範囲内である。本発明の予測方法によると、被験体が神経変性疾患を発症する高い可能性は、該被験体のゲノムにおける1つ又は2つのapoE4対立遺伝子の存在に関係しており、該apoE4対立遺伝子の決定は、上述のように本発明の第1、第2又は第3の方法のいずれかによって行われる。
【0136】
神経変性疾患を発症する低い可能性は、被験体が時間とともに上記疾患を発症しない又は患わない少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%の可能性を示す状況で見られる。特定の実施形態では、低い可能性は少なくとも100%である。他の実施形態では、低い可能性は少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%及び少なくとも1000%である。しかしながら、当業者により本発明を特徴付けるのに好適であるとみなされる他のカットオフ又は範囲も企図され、これらも本発明の範囲内である。本発明の予測方法によると、被験体が神経変性疾患を発症する低い可能性は、該被験体のゲノムにおけるapoE4対立遺伝子の非存在に関係しており、該apoE4対立遺伝子の決定は、上述のように本発明の第1、第2又は第3の方法のいずれかによって行われる。
【0137】
特定の実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、ダウン症候群関連認知症、血管性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症及びクロイツフェルト-ヤコブ病からなる群から選択される。より特定の実施形態では、神経変性疾患はアルツハイマー病(AD)である。
【0138】
更なる態様では、本発明は、被験体においてApoE4アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を本発明の第3の方法によって決定することを含む、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、被験体のゲノムにおける1つ又は2つのApoE4対立遺伝子の存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示され、被験体のゲノムにおけるApoE4対立遺伝子の非存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が低いことが示される、方法に関する。
【0139】
特定の実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、ダウン症候群関連認知症、血管性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症及びクロイツフェルト-ヤコブ病からなる群から選択される。好ましい実施形態では、神経変性疾患はアルツハイマー病(AD)である。
【0140】
心血管疾患の発症を予測する方法
アポリポタンパク質欠損は、心血管疾患の発症に関連付けられている。したがって、アポリポタンパク質及びアポリポタンパク質アイソフォームを決定する本発明の方法を、心血管疾患の発症リスクの予測にも適用することができる。
【0141】
このため、別の態様では、本発明は、被験体に由来するサンプルにおいてアポリポタンパク質アイソフォームのレベルを上述の本発明の方法(第1、第2及び第3の方法)のいずれかによって決定することを含む、被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定する方法であって、アポリポタンパク質アイソフォームレベルが基準値を超える場合に被験体が心血管疾患を患う可能性が高いことが示される、方法に関する。
【0142】
別の態様では、本発明は、被験体においてアポリポタンパク質アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を本発明の第3の方法によって決定することを含む、被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定する方法であって、被験体のゲノムにおける上記アポリポタンパク質アイソフォームの1つ又は2つの対立遺伝子の存在により、該被験体が心血管疾患を患う可能性がより高いことが示され、被験体のゲノムにおける上記アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子の非存在により、該被験体が心血管疾患を患う可能性がより低いことが示される、方法に関する。
【0143】
本発明の心血管疾患予測方法の実施形態では、決定されるアポリポタンパク質アイソフォームは、特にapoEアイソフォームapoE E2、apoE E3及びapoE E4からなる群から選択されるapoEアイソフォームであり、心血管疾患は、III型高リポタンパク血症(脂質、特にコレステロール及びトリグリセリドの不適切な代謝を特徴とし、体内での脂質の異常蓄積又は高脂血症を引き起こす稀な遺伝性障害である、異常βリポタンパク質血症又はブロードβ病(broadbetadisease)としても知られる)、アポリポタンパク質e-dの欠損に起因する異常βリポタンパク質血症、家族性高βリポタンパク質血症(血液中の低密度リポタンパク質又はβ-リポタンパク質の蓄積の増大)及びプレβリポタンパク質血症(prebetalipoproteinemia)(血液中の過剰な超低密度リポタンパク質又はプレβリポタンパク質)、高脂血症を伴う家族性高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症性黄色腫症を伴う高脂血症(体内での高コレステロール蓄積の沈着)、ブロードβリポタンパク質血症(broad-betalipoproteinemia)(身体の種々の部位における過剰脂肪領域の発生を特徴とし、脂肪が手掌、手指、膝、肘及び脇を含む全身の異常な位置に蓄積される病態)、浮性βリポタンパク質血症及び冠動脈疾患(アテローム性動脈硬化症、更には狭心症又は心臓発作を引き起こす心筋に血液を供給する動脈の硬化及び狭窄)からなる群から選択される。
【0144】
本発明の心血管疾患予測方法の別の実施形態では、決定されるアポリポタンパク質はapoAIであり、心血管疾患は、低αリポタンパク質血症(常染色体優性形式で受け継がれるHDL欠損症)である。
【0145】
本発明の心血管疾患予測方法の別の実施形態では、決定されるアポリポタンパク質はapoCIIであり、心血管疾患は、Ib型高リポタンパク血症(高レベルのカイロミクロンを特徴とする、低apoCIIレベルに起因する稀な遺伝性病態)である。
【0146】
本発明の心血管疾患予測方法の別の実施形態では、決定されるアポリポタンパク質はapoCIIIであり、心血管疾患は、高トリグリセリド血症(トリグリセリドの血中レベルの増大)と関連したapoCIII欠損症である。
【0147】
本発明のキット及びその使用
更なる態様では、本発明は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを含むキットであって、該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な第2の抗体を含まない、キットに関する。
【0148】
このため、本発明のキットの第1の要素は、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面である。本発明によるポリスチレン表面及びポリカーボネート表面は、本発明の第1の方法において上述されており、本明細書の一部をなす。表面はポリスチレン表面であるのが好ましい。特定の実施形態では、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面はELISAプレート、luminexビーズ、比濁ビーズ又はタンパク質アレイによって構成される。特定の好ましい表面は、限定されるものではないが、ELISAプレート等のプレート、luminexビーズ及び比濁ビーズ等のビーズ、並びに粒子を含むポリスチレン表面である。
【0149】
本発明のキットの第2の要素は、アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体である。本発明のキットによるアポリポタンパク質としては、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)が挙げられる。本発明のキットによるアポリポタンパク質アイソフォームとしては、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)のアイソフォームが挙げられる。アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体は、上述されており、本明細書の一部をなす。特定の実施形態では、アポリポタンパク質はapoEであり、抗体は抗apoE抗体である。特定の実施形態では、アポリポタンパク質アイソフォームはapoE2、apoE3及びapoE4からなる群から選択されるapoEアイソフォームであり、抗体は抗apoE2、抗apoE3及び抗apoE4抗体からなる群から選択される。
【0150】
特定の実施形態では、本発明のキットのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面、好ましくはポリスチレン表面に結合させる。
【0151】
本発明のキットは、キットにより構成される抗体が特異的な特定のアポリポタンパク質又は特定のそのアイソフォームに特異的な第2の抗体を含まない。しかしながら、特定の実施形態では、キットにより構成される抗体が特定のアポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体である場合、キットは、該特定のアポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体を更に含んでいてもよい。
【0152】
特定の実施形態では、本発明のキットはレポーター抗体を更に含み、該レポーター抗体は、上記キットにより構成されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体に特異的である。特定の代替的な実施形態では、本発明のキットのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体は、検出可能な試薬を含む。本発明において好適な検出可能な試薬は、本発明の第1の方法において上述されており、本明細書の一部をなす。
【0153】
更なる実施形態では、本発明は、サンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するか、サンプル中の所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するか、被験体におけるアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定するか、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定するか、又は被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定するための上記のキットの使用に関する。特定の実施形態では、本発明は、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するための上記のキットの使用に関する。更に特定の実施形態では、本発明は、apoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化する上に記載のキットの使用であって、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がアルブミンでブロッキングされ、更に好ましくはアルブミンがBSAである、使用に関する。これらの決定の特定の詳細は本明細書において記載されており、本明細書の一部をなす。
【0154】
したがって、本発明は以下の態様に関する:
1. サンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質又はそのアイソフォームが結合した表面と該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを、抗体とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体を検出することと、
を含む、方法。
2. アポリポタンパク質がapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択される、態様1による方法。
3. サンプル中の所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するin vitro方法であって、
(i)サンプルとポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質の結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質に特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な第1の抗体及びサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることであって、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行うことと、
(iii)工程(ii)において形成される第1の複合体及び第2の複合体を検出することと、
(iv)工程(iii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量を決定することと、
を含む、方法。
4. 工程(i)において使用する表面が複数の実体により形成され、工程(ii)における第1の抗体及び第2の抗体との接触を別個の容器において行い、各容器が表面を形成する複数の実体の一部を含有し、工程(iii)における検出を各容器において別個に行う、態様3による方法。
5. アポリポタンパク質アイソフォームがapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質のアイソフォームである、態様3又は4による方法。
6. アポリポタンパク質がapoEであり、apoEアイソフォームがapoE2、apoE3及びapoE4からなる群から選択される、態様5による方法。
7. 被験体におけるアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定する方法であって、
(i)アポリポタンパク質アイソフォームが発現される組織に由来する上記被験体のタンパク質含有サンプルと、ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とを、該表面へのアポリポタンパク質アイソフォームの結合に好適な条件下で接触させることであって、表面がそれに結合した上記アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な抗体を含有しないことと、
(ii)工程(i)において形成されるアポリポタンパク質が結合した表面と、該アポリポタンパク質アイソフォームに特異的な少なくとも1つの抗体とを、該抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとの複合体の形成に好適な条件下で接触させることと、
(iii)工程(ii)において形成される複合体の量と遺伝的変異体をコードする対立遺伝子の数とを相関させることによって、アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子量を決定することと、
を含む、方法。
8. 工程(i)において使用する表面が複数の実体により形成され、工程(ii)が、表面とサンプル中に存在する上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体とを接触させることを更に含み、該接触を第1の抗体とアポリポタンパク質アイソフォームとを含む第1の複合体の形成及び第2の抗体と上記アポリポタンパク質の全アイソフォームとを含む第2の複合体の形成に好適な条件下で行い、第1の抗体及び第2の抗体との接触を、各々が表面を形成する複数の実体の一部を含有する別個の容器において行い、総アポリポタンパク質含量に対するアイソフォームの相対量の決定を、工程(ii)において得られる第1の複合体及び第2の複合体のレベルに基づいて行い、アポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を、工程(iii)において決定される相対量から決定する、態様7の方法。
9. アポリポタンパク質アイソフォームをコードする遺伝的変異体がapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質のアイソフォームをコードする遺伝子である、態様7又は8による方法。
10. アポリポタンパク質アイソフォームをコードする遺伝子が、apoE4をコードする遺伝子である、態様9による方法。
11. サンプルが血液、血漿、血清、唾液、尿及び脳脊髄液(CSF)からなる群から選択される、前述の態様のいずれかによる方法。
12. サンプルが好ましくは10倍~100000倍、好ましくは100倍~1000倍、より好ましくは200倍の範囲の希釈率の血漿である、前述の態様による方法。
13. ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面を結合工程(i)の前にブロッキングする、前述の態様のいずれかによる方法。
14. 表面をアポリポタンパク質以外のタンパク質及び/又は洗浄剤によりブロッキングする、前述の態様による方法。
15. 表面をBSA、カゼイン及びゼラチンからなる群から選択されるタンパク質を用いてブロッキングし、洗浄剤がポリビニルピロリドン-40(PVP-40)、ポリソルベート20、Nonidet-P40及びTriton X-100からなる群から選択される、前述の態様による方法。
16. 表面をBSA、好ましくは1%BSAによりブロッキングする、前述の態様による方法。
17. ポリスチレン表面を結合工程(i)の後に洗浄溶液で処理する、前述の態様のいずれかによる方法。
18. 洗浄溶液が1つ以上の塩を含有する、前述の態様による方法。
19. 塩がNaClである、前述の態様による方法。
20. 洗浄溶液が少なくとも1つの洗浄剤を含有する、態様17~19のいずれかによる方法。
21. 少なくとも1つの洗浄剤がポリソルベート20及びTriton X-100からなる群から選択される、前述の態様による方法。
22. 洗浄溶液が酸を含有する、態様17~21による方法。
23. 酸が2M HCl又は70%ギ酸である、前述の態様による方法。
24. 洗浄溶液が塩基を含有する、態様17~21のいずれかによる方法。
25. 塩基が2M NaOHである、前述の態様による方法。
26. 洗浄溶液が還元剤を含有する、態様17~25のいずれかによる方法。
27. 還元剤が2-メルカプトエタノールである、前述の態様による方法。
28. 洗浄溶液がプロテアーゼ、酸化試薬又はそれらの組合せを含有しない、態様17~27のいずれかによる方法。
29. ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がELISAプレート、luminexビーズ又は比濁ビーズにより構成される、前述の態様のいずれかによる方法。
30. 工程(iii)における複合体の検出をELISA又は免疫比濁アッセイによって行う、前述の態様のいずれかによる方法。
31. 免疫比濁アッセイがLEIT(ラテックス増強免疫比濁法)である、前述の態様による方法。
32. 工程(iii)において形成される複合体の検出を、抗アポリポタンパク質抗体に特異的なレポーター抗体を用いて行う、態様1~30のいずれかによる方法。
33. 被験体に由来するサンプルにおいてapoE4アイソフォームのレベルを態様1~32のいずれかによる方法によって決定することを含む、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、apoE4レベルが基準値を超える場合に被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示される、方法。
34. 被験体においてapoE E4アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を態様7~32のいずれかによる方法によって決定することを含む、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定する方法であって、被験体のゲノムにおける1つ又は2つのapoE4対立遺伝子の存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が高いことが示され、被験体のゲノムにおけるapoE4対立遺伝子の非存在により、該被験体が神経変性疾患を患う可能性が低いことが示される、方法。
35. 神経変性疾患がアルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、ダウン症候群関連認知症、血管性認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症及びクロイツフェルト-ヤコブ病からなる群から選択される、態様33又は34による方法。
36. 神経変性疾患がアルツハイマー病(AD)である、前述の態様による方法。
37. 被験体に由来するサンプルにおいてアポリポタンパク質アイソフォームのレベルを態様1~30のいずれかによる方法によって決定することを含む、被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定する方法であって、上記アポリポタンパク質アイソフォームのレベルが基準値を超える場合に被験体が心血管疾患を患う可能性が高いことが示される、方法。
38. 被験体においてアポリポタンパク質アイソフォームをコードするハプロタイプの対立遺伝子量を態様7~30のいずれかの方法によって決定することを含む、被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定する方法であって、被験体のゲノムにおける上記アポリポタンパク質アイソフォームの1つ又は2つの対立遺伝子の存在により、該被験体が心血管疾患を患う可能性がより高いことが示され、被験体のゲノムにおける上記アポリポタンパク質アイソフォームの対立遺伝子の非存在により、該被験体が心血管疾患を患う可能性がより低いことが示される、方法。
39. アポリポタンパク質アイソフォームがapoEアイソフォームであり、心血管疾患がIII型高リポタンパク血症、アポリポタンパク質e-dの欠損に起因する異常βリポタンパク質血症、家族性高βリポタンパク質血症及びプレβリポタンパク質血症、高脂血症を伴う家族性高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症性黄色腫症を伴う高脂血症、ブロードβリポタンパク質血症、浮性βリポタンパク質血症及び冠動脈疾患からなる群から選択される、態様37又は38による方法。
40. アポリポタンパク質アイソフォームがapoAIであり、心血管疾患が低αリポタンパク質血症である、態様37又は38による方法。
41. アポリポタンパク質アイソフォームがapoCIIであり、心血管疾患がIb型高リポタンパク血症である、態様37又は38による方法。
42. アポリポタンパク質アイソフォームがapoCIIIであり、心血管疾患が高トリグリセリド血症と関連したapoCIII欠損症である、態様37又は38による方法。
43. ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面とアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体とを含むキットであって、該アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な第2の抗体を含まない、キット。
44. キット内に存在する抗体がアポリポタンパク質アイソフォームに特異的である場合に、キットが上記アポリポタンパク質の全アイソフォームに結合することが可能な第2の抗体を更に含む、態様43によるキット。
45. アポリポタンパク質がapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択され、アポリポタンパク質アイソフォームがapoAI、apoAIV、apoCI、apoCII、apoCIII、apoE及びapoJ(クラステリン)からなる群から選択されるアポリポタンパク質のアイソフォームである、態様43又は44によるキット。
46. アポリポタンパク質がapoEであり、apoEアイソフォームがapoE2、apoE3及びapoE4からなる群から選択される、態様45によるキット。
47. ポリスチレン表面又はポリカーボネート表面がELISAプレート、luminexビーズ又は比濁ビーズにより構成される、態様43~46のいずれかによるキット。
48. レポーター抗体を更に含み、該レポーター抗体がキットのアポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体に特異的である、態様43~47のいずれかによるキット。
49. アポリポタンパク質又はそのアイソフォームに特異的な抗体が検出可能な試薬を含む、態様43~47のいずれかによるキット。
50. サンプル中のアポリポタンパク質又はそのアイソフォームを検出及び/又は定量化するか、サンプル中の所与のアポリポタンパク質のアイソフォームの相対量を、該アポリポタンパク質の総含量に対して決定するか、被験体におけるアポリポタンパク質アイソフォームの発現と関連したハプロタイプの対立遺伝子量を決定するか、被験体が神経変性疾患を発症する可能性を決定するか、又は被験体が心血管疾患を発症する可能性を決定するための態様43~49のいずれかによるキットの使用。
【0155】
本発明を以下の実施例を用いて下記に詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、単なる例示として解釈される。
【実施例
【0156】
実施例1. ELISAによるApoE4検出
材料及び装置
高結合ELISAプレート(Nunc MaxiSorp(登録商標)平底96ウェルプレート)。同様の結果をもたらす代替的なELISAプレートのタイプ及びブランドを使用することができる。
TBS中のSuperblock(Thermo-Fisher、#PI-37535)。特にゼラチン、BSA、カゼイン、Tween-20を含む、同様の結果をもたらす代替的なブロッキング試薬が使用されている。
apoE E4に特異的なマウスモノクローナル抗体、クローン4E4(NovusBiologicals、#NBP1-49529)。代替的なapoE E4に特異的な抗体が使用されている(apoE E4に特異的なマウスモノクローナル抗体、クローン5B5(IBL #10025);apoE E4に特異的なマウスモノクローナル抗体、クローン1F9(MBL、#M067-3))。
全apoEに対するウサギポリクローナル抗体(SantaCruzBiotechnology,Inc.、#sc-98573)
Sigma-Aldrich製のポリソルベート-20(Tween-20)
ペルオキシダーゼ結合抗マウスIgGポリクローナル抗体
TMB Peroxidase EIA Substrate(Biorad)
ELISA Wash Station(TECAN)
ELISA分光光度計(TECAN)
【0157】
検出方法
トリス緩衝生理食塩水(TBS)中のSuperblock(SB)を200μl添加することによって、室温(RT)で16時間ELISAプレートをブロッキングする。
ELISA Wash Stationにおいて300μlのTBS+0.1%Tween 20で2回洗浄する。
TBS+20%SB中の200倍希釈血漿100μlをRTで1時間インキュベートする。
ELISA Wash Stationにおいて300μlのTBS+0.1%Tween 20で4回洗浄する。
TBS+20%SBで2000倍希釈した50μlのレポーター抗体:4E4抗体とともにRTで45分間インキュベートする。
ELISA Wash Stationにおいて300μlのTBS+0.1%Tween 20で4回洗浄する。
TBS+20%SB中の抗マウスIgG-ペルオキシダーゼ(10000倍)50μlとともに30分間インキュベートする。
ELISA Wash Stationにおいて300μlのTBS+0.1%Tween 20で4回洗浄する。
100μlの(de)TMBを添加することによって暗条件で10分間展開させる。
100μlの2.15N HSOを添加することによって停止させる。
プレートを分光光度計において750nmを参照として450nmで読み取る。
【0158】
20倍~80000倍超の範囲の異なる希釈率の血漿サンプルを分析した。最良の識別結果が100倍~1000倍の範囲で得られる。本明細書により示されるアッセイについては、他に記述がない限り、用いる血漿希釈率は200倍である。
【0159】
代替的には、5B5及び1F9等のapoE E4に特異的な他のモノクローナル抗体を使用したが、最良の結果が4E4クローンで得られた。
【0160】
インキュベーション時間は、結果の重大な変動なしに短縮することができる。
【0161】
種々の体液を本明細書により記載されるプロトコルによって分析することができるが、サンプルの最適な希釈率を出発apoE濃度に応じて決定する必要がある。
【0162】
結果
血漿サンプルにおけるapoE E4の非存在/存在の識別
ApoE4の存在/非存在を、上記のプロトコルを用い、ポリスチレンプレート及びE4アイソフォームに特異的なモノクローナル抗体を使用することによって検出した。リアルタイムPCRによって予め遺伝子型決定した個体(e2/e3、n=16;e2/e4、n=4;e3/e3、n=141;e3/e4、n=59;e4/e4、n=10)に由来する230個の血漿サンプルを分析した。アッセイ(73個のApoE4キャリア、157個の非ApoE4キャリア)の検証により、リアルタイムPCRによるApoE遺伝子型決定との100%の一致が明らかとなった(図1及び表1を参照されたい)。
【0163】
【表1】
【0164】
表1及び図2に示す結果によると、ホモ接合性APOE e4/4に由来する血漿サンプルは、ヘテロ接合性APOE e3/e4及びe2/e4よりも高い吸光度読み取り値を有する傾向があり、e4ホモ接合性とヘテロ接合性とを区別することが可能であることが示唆されるが(図3を参照されたい)、群間に幾らかの重複が見られる。
【0165】
血漿サンプルにおけるヘテロ接合性/ホモ接合性APOE ε4キャリアの識別
代替的には、ヘテロ接合性サンプルとホモ接合性サンプルとの更なる識別は、一方がapoE E4に特異的であり、他方が総apoEレベルを決定するための二重ELISAアッセイを各サンプルについて行うことで達成することができる(レポーター抗体:pan-apoE抗体、例えばポリクローナル-pan-apo、SantaCruzBiotech.、H-223、#sc-98573)。図4に示されるように、apoE E4/総apoEの比率は、APOE ε4対立遺伝子量の良好な代用となる。識別力は、研究した3つの希釈率について良好である(図4)。
【0166】
ポリスチレン表面への種々のアポリポタンパク質の結合
ポリスチレン表面への他のアポリポタンパク質の結合を調査するために、或る特定のアポリポタンパク質に特異的な種々のレポーター抗体を使用して、上記のELISAプロトコルを行った。結果の分析により、apoCI、apoAI、apoCIII、総apoE及びクラステリンがapoE E4と同様にプレートに結合することが可能であることが示された(図5を参照されたい)。
【0167】
ポリスチレン表面へのapoEの安定した結合
apoE-ポリスチレン結合の性質を更に特性化するために、ポリスチレンプレートに結合したapoEを除去する、塩(0M~2.4M NaCl)又は洗浄剤(0%~0.5%のポリソルベート20又はTriton X-100)を含有する種々の緩衝液の能力を分析した。この目的で、血漿(200倍希釈)中に存在するapoEの結合後に、ウェルを対象の種々の緩衝液とともにRTで1時間インキュベートし、洗浄し、アッセイを上述のように継続した。図6に示されるように、漸増濃度のNaCl又は洗浄剤のいずれかの存在が、塩又は洗浄剤を含まない対照と比較してapoEの検出を向上させる。これらの結果により、結合が静電力及び疎水性力の両方の組合せによって仲介されることが示唆される(図6)。
【0168】
pH2~10の範囲のpHに応じたapoE-ポリスチレン結合の安定性も、BSAベースのブロッキング溶液又はSuperblockのいずれかでブロッキングしたウェルにおいて分析した(図7)。BSAでブロッキングしたポリスチレンウェルへのapoEの結合は、研究した範囲のpHの影響を殆ど受けなかった。興味深いことに、SuperblockでブロッキングしたポリスチレンウェルへのapoEの結合は、5未満のpHで不安定であり(図7)、BSAの存在がそれ自身の緩衝能のために、より安定した微小環境を維持するのに役立ち得ることが示唆された。したがって、BSA溶液でブロッキングしたウェル上で更なる安定性分析を行った。
【0169】
より厳しい条件も、以下のものによる56℃で1時間の処理によってアッセイした(図8を参照されたい):
強酸(2M HCl又は70%ギ酸)、
強塩基(2M NaOH)、
陰イオン性洗浄剤と還元剤との組合せ(2%SDS及び0.7%2-メルカプトエタノール、「ストリッピング緩衝液」)、
次亜塩素酸ナトリウム(20000ppm)、及び、
酵素洗浄剤(Coulter Clenz(登録商標)清浄剤、BeckmanCoulter)。
【0170】
興味深いことに、プレートに結合したapoEを完全に除去することが可能であった試薬は、消化(酵素洗浄剤)又は酸化(次亜塩素酸ナトリウム)のいずれかによりタンパク質を破壊する試薬のみである(図8)。
【0171】
これらの結果から、apoE-ポリスチレン結合相互作用が高度に安定し、強い洗浄剤、酸及び塩基洗浄に耐えることが示される。これらの特性により極めて厳しく、特異的な条件下での免疫測定、タンパク質-マイクロアレイ分析、比濁アッセイ等を行うことが可能であり、付加的な精製、分画又は濃縮手順の必要がなくなる。
【0172】
同様の結果が、ポリスチレンへの他のアポリポタンパク質の結合について観察された。したがって、同様の結論が異なるアポリポタンパク質についての他の手順にも当てはめられる。
【0173】
実施例2. 比濁アッセイによるApoE4検出
材料及び装置
血漿サンプル:11個のAPOE e3/e3サンプル及び6個のAPOE e4/e4サンプル
SuperblockでコーティングされたLEIT白色ミクロスフェア-NH2、Prot.20141222143CM、#143CM1
分光光度計、Ref.UV-3100PC(VWR)、コード:PDX-1004
Finnpipette F1 2μL~20μL、Ref.4641060(Thermoscientific、VWR)、コード:PDX-1009
Finnpipette F1 20μL~200μL、Ref.4641080(Thermoscientific、VWR)、コード:PDX-1010
MILI-Q ReferenceA+、Ref.Z00QSVC01
Combi fridge Liebherr、Ref.CN4056、コード:PDM-1000
Vortex Mixer、Ref.VX200(Labnet、Erabiotech)、コード:PDX-1013
Optima加熱循環浴、Ref.TC120-ST12(Grant、VWR)、コード:PDX-1028
【0174】
ラテックス増強免疫比濁法(LEIT)に基づく比濁アッセイは、ポリスチレンビーズの使用に基づく。したがって、本発明者らは、この技術を、ELISAプレートについて示されたようなポリスチレンとのそれらの高度に安定した高親和性相互作用を利用するapoE E4及び他のアポリポタンパク質の分析に用いた。
【0175】
LEITはELISAよりも感度が低いが、興味深いことに、アポリポタンパク質等の比較的高濃縮の分析物に対して大きな利点をもたらす。LEITにより、完全に自動化されたランダムアクセス汎用臨床化学分析装置での5分間~20分間のランニング試験が可能となる。LEITに使用されるELISAに対してより高い原料のコストは、時間の節約、臨床検査室における技術の容易さ及び有用性によって完全に埋め合わせられる。このため、LEITがapoE決定について有用な技法と考えられる。
【0176】
LEIT技術及びモノクローナル4E4を用いたAPOE e3/e3血漿サンプル及び6個のAPOE e4/e4血漿サンプルの予備分析により、手順によりAPOE e4キャリアと非キャリアとを区別することが可能であることが示された(図9)。
【0177】
検出方法(試験1)
希釈標準溶液の調製:
10mM PBS(pH7.3)中の0.176mg/mLモノクローナル抗体抗apoE 4溶液0.5mL。
88μLのモノクローナル抗体を412μLに溶解する。
プロトコル:
1. 14.6μLのLEIT白色ミクロスフェア-NH2をエッペンドルフチューブに移し、0.01%Tween 20を含む131.4μLのPBSを添加する。マイクロピペットで均質化し、37℃で2分間インキュベートする。
2. 3.85μLのapoEサンプル溶液を同じエッペンドルフチューブに添加し、マイクロピペットで均質化し、再び37℃で2分間インキュベートする。
3. 50μLのモノクローナル抗体溶液を添加し、マイクロピペットで均質化し、全量を石英キュベットに移す。
4. 5分間の最短時間かつ10分間の最長時間にわたって吸光度を読み取る。
【0178】
検出方法(試験2)
希釈標準溶液の調製:
10mM PBS(pH7.3)中の0.044mg/mLモノクローナル抗体抗apoE 4溶液0.5mL。
22μLのモノクローナル抗体を478μLに溶解する。
プロトコル:
1. 14.6μLのLEIT白色ミクロスフェア-NH2をエッペンドルフチューブに移し、0.01%Tween 20を含む131.4μLのPBS(#144CM1)を添加する。マイクロピペットで均質化し、37℃で2分間インキュベートする。
2. 3.85μLのapoEサンプル溶液を同じエッペンドルフチューブに添加し、マイクロピペットで均質化し、再び37℃で2分間インキュベートする。
3. 50μLのモノクローナル抗体溶液を添加し、マイクロピペットで均質化し、全量を石英キュベットに移す。
4. 5分間の最短時間かつ10分間の最長時間にわたって吸光度を読み取る。
【0179】
結果
試験1
異なる時点でのLEITによるapoE分析についての試験1及び試験2の結果を、表2及び表3にそれぞれ示す。
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
試験1によるデータから、本発明の著者らにより、LEITアッセイが、1つの3/4血漿サンプルを除いて異なるapoE血漿サンプルを区別することが可能であると結論付けられた(表2を参照されたい)。したがって、ApoE4ラテックス比濁アッセイに最適な以下の実験条件が開発された(表4を参照されたい):
試験当たり2.75μgの抗ApoE4
3.85μlの血漿サンプル
200μlの全アッセイ量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9