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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】輸液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M5/142 504
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019506982
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011478
(87)【国際公開番号】W WO2018174181
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2017056410
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503366841
【氏名又は名称】株式会社アイカムス・ラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】赤井 良一
(72)【発明者】
【氏名】秋冨 慎司
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017123(JP,A)
【文献】特開平09-310684(JP,A)
【文献】米国特許第05340290(US,A)
【文献】特表2014-521886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
F04B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の輸液チューブを押圧する輸液チューブ押圧部と、
前記輸液チューブを押圧する際に、受け面となる輸液チューブ受け面と、を有し、
前記輸液チューブ押圧部及び前記輸液チューブ受け面で前記輸液チューブを挟むようにして押圧しながら、複数の前記輸液チューブ押圧部を前記輸液チューブ受け面に沿って前記輸液チューブの長手方向に順次移動させることによって前記輸液チューブ内の液体を一方方向に向けて送給する輸液ポンプであって、
前記輸液チューブ押圧部の相互間には、前記輸液チューブ押圧部とともに前記輸液チューブ受け面に沿って移動し、前記輸液チューブ押圧部によって押圧された後の前記輸液チューブを両側から押圧する復元機構が設けられ
前記復元機構は、前記輸液チューブが通る間隔を有する輸液チューブ挿通部を有し、
前記輸液チューブ挿通部は、第一挿通部と、前記輸液チューブが通る間隔が前記第一挿通部よりも小さい第二挿通部とを有し、
前記第一挿通部及び前記第二挿通部は、前記輸液チューブに対して、前記第一挿通部が通過した後に、前記第二挿通部が通過するように配置されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
可撓性の輸液チューブを押圧する輸液チューブ押圧部と、
前記輸液チューブを押圧する際に、受け面となる輸液チューブ受け面と、を有し、
前記輸液チューブ押圧部及び前記輸液チューブ受け面で前記輸液チューブを挟むようにして押圧しながら、複数の前記輸液チューブ押圧部を前記輸液チューブ受け面に沿って前記輸液チューブの長手方向に順次移動させることによって前記輸液チューブ内の液体を一方方向に向けて送給する輸液ポンプであって、
前記輸液チューブ押圧部の相互間には、前記輸液チューブ押圧部とともに前記輸液チューブ受け面に沿って移動し、前記輸液チューブ押圧部によって押圧された後の前記輸液チューブを両側から押圧する復元機構が設けられ、
前記輸液チューブ受け面の長手方向であって、前記輸液チューブ受け面を挟んで両側となる部位には、前記輸液チューブを把持する一対の輸液チューブ把持部が設けられ、
前記輸液チューブ押圧部及び前記輸液チューブ受け面は、相互間隔が広がった状態に移動することが可能であり、
前記一対の輸液チューブ把持部は、前記輸液チューブ押圧部及び輸液チューブ受け面の相互間隔が広がった状態から、前記輸液チューブ押圧部と前記輸液チューブ受け面とで前記輸液チューブを押圧する状態へとなる前に、前記輸液チューブを把持した状態で互いに遠ざかる方向に移動することを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
前記輸液チューブ受け面の長手方向であって、前記輸液チューブ受け面を挟んで両側となる部位に、前記輸液チューブを把持する一対の輸液チューブ把持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記輸液チューブ受け面には、前記輸液チューブに当接する部分に前記輸液チューブの相対移動を阻止する凹凸が施してあることを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の輸液ポンプ。
【請求項5】
回転軸を中心として回転可能に配設され、前記回転軸を中心とした円周上に前記複数の輸液チューブ押圧部を支持するとともに、前記輸液チューブ押圧部の相互間に前記復元機構を支持したロータユニットと、
前記輸液チューブ押圧部と前記輸液チューブ受け面とで前記輸液チューブを押圧した際に、前記輸液チューブ受け面が前記ロータユニットの前記回転軸を中心とした円弧状を成すように形成された輸液チューブ受け部材とを備えたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の輸液ポンプ。
【請求項6】
前記ロータユニットを回転させるモータを備え、
前記モータと前記ロータユニットの間には、サンギヤの回転軸が前記ロータユニットの前記回転軸と平行となるように遊星歯車減速機構が備えられていることを特徴とする請求項5に記載の輸液ポンプ。
【請求項7】
前記ロータユニットを回転させるモータと、
前記モータの回転速度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ロータユニットを回転させて前記複数の輸液チューブ押圧部を前記輸液チューブに沿って順次移動させることによって送液を行う際には、前記モータの動作時間が経つにつれて前記モータの回転速度が上がるように制御することを特徴とする請求項5に記載の輸液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体内に薬液の注入を行うための輸液ポンプがある(特許文献1参照)。この輸液ポンプは、複数のローラーを有したロータユニットを備え、ロータユニットを回転させることにより、可撓性の輸液チューブをローラーによって順次押圧し、送液を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-128014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の輸液ポンプに適用する輸液チューブとしては、ローラーに押圧された後、弾性的に元の形状に復元するものである必要がある。このため従来では、シリコン製の輸液チューブや、塩化ビニル製の輸液チューブが適用されている。しかしながら、シリコン製の輸液チューブは、専用に作成する必要があるため、コストの面で好ましいとはいえない。
【0005】
一方、塩化ビニル製の輸液チューブは、点滴用としては広く普及しているため安価であるものの、復元性の点で必ずしも良好とはいえない。このため、上述のように、ローラーによって繰り返し押圧力を受けた場合には、潰れたままの状態となり、流量が大きく変化する等の問題を生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安価で広く普及されている塩化ビニル製の輸液チューブであっても、好適に使用することのできる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る輸液ポンプは、可撓性の輸液チューブを押圧する輸液チューブ押圧部と、前記輸液チューブを押圧する際に、受け面となる輸液チューブ受け面と、を有し、前記輸液チューブ押圧部及び前記輸液チューブ受け面で前記輸液チューブを挟むようにして押圧しながら、複数の前記輸液チューブ押圧部を前記輸液チューブ受け面に沿って前記輸液チューブの長手方向に順次移動させることによって前記輸液チューブ内の液体を一方方向に向けて送給する輸液ポンプであって、前記輸液チューブ押圧部の相互間には、前記輸液チューブ押圧部とともに前記輸液チューブ受け面に沿って移動し、前記輸液チューブ押圧部によって押圧された後の前記輸液チューブを両側から押圧する復元機構が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、前記復元機構は、前記輸液チューブが通る間隔を有する輸液チューブ挿通部を有し、前記輸液チューブ挿通部は、第一挿通部と、前記輸液チューブが通る間隔が前記第一挿通部よりも小さい第二挿通部とを有し、前記輸液チューブに対して、前記第一挿通部が通過した後に、前記第二挿通部が通過するように配置されているとよい。
【0009】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、前記輸液チューブ受け面の長手方向であって、前記輸液チューブ受け面を挟んで両側となる部位に、前記輸液チューブを把持する一対の輸液チューブ把持部が設けられているとよい。
【0010】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、前記輸液チューブ押圧部及び前記輸液チューブ受け面は、相互間隔が広がった状態に移動することが可能であり、前記一対の輸液チューブ把持部は、前記輸液チューブ押圧部及び輸液チューブ受け面の相互間隔が広がった状態から、前記輸液チューブ押圧部と前記輸液チューブ受け面とで前記輸液チューブを押圧する状態へとなる前に、前記輸液チューブを把持した状態で互いに遠ざかる方向に移動するとよい。
【0011】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、前記輸液チューブ受け面には、前記輸液チューブに当接する部分に前記輸液チューブの相対移動を阻止する凹凸が施してあるとよい。
【0012】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、回転軸を中心として回転可能に配設され、前記回転軸を中心とした円周上に前記複数の輸液チューブ押圧部を支持するとともに、前記輸液チューブ押圧部の相互間に前記復元機構を支持したロータユニットと、前記輸液チューブ押圧部と前記輸液チューブ受け面とで前記輸液チューブを押圧した際に、前記輸液チューブ受け面が前記ロータユニットの前記回転軸を中心とした円弧状を成すように形成された輸液チューブ受け部材とを備えているとよい。
【0013】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、前記ロータユニットを回転させるモータを備え、前記モータと前記ロータユニットの間には、サンギヤの回転軸が前記ロータユニットの前記回転軸と平行となるように遊星歯車減速機構が備えられているとよい。
【0014】
また、本発明に係る輸液ポンプにおいて、前記ロータユニットを回転させるモータと、前記モータの回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ロータユニットを回転させて複数の前記輸液チューブ押圧部を前記輸液チューブに沿って順次移動させることによって送液を行う際には、前記モータの動作時間が経つにつれて前記モータの回転速度が上がるように制御するとよい。
【発明の効果】
【0015】
これらの構成によれば、輸液ポンプに、輸液チューブ押圧部によって押圧された後の輸液チューブを両側から押圧する復元機構が設けられているので、復元性の弱い塩化ビニル製の輸液チューブであっても、輸液チューブ押圧部によって押圧され、押しつぶされた輸液チューブの形状を復元することができ、塩化ビニル製の輸液チューブであっても、安定した送液を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る輸液ポンプの蓋部を開いた状態を示した斜視図である。
図2図2は、図1に示した輸液ポンプの正面図である。
図3図3は、図1に示した輸液ポンプの蓋部を閉じた状態を示す正面図である。
図4図4は、図1に示した輸液ポンプの引き込み部とロータユニットを示す正面図である。
図5図5は、図1に示した輸液ポンプの引き込み部とロータユニットを示す背面図である。
図6図6は、図1に示した輸液ポンプのロータユニットを示す側面図である。
図7図7は、図1に示した輸液ポンプのロータユニットの天板を外した状態を示す正面図である。
図8図8は、図1に示した輸液ポンプの要部を示す斜視図である。
図9図9は、図1に示した輸液ポンプの輸液チューブ受け部材を示す斜視図である。
図10図10は、図2に示したA-A線部分断面図である。
図11図11は、図10に示した輸液ポンプの蓋部を閉じる途中の部分断面図である。
図12図12は、図11に示した輸液ポンプにおいて、蓋部を閉じる方向へさらに移動させた状態を示す部分断面図である。
図13図13は、図1に示した輸液ポンプの第一把持部を示す正面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る輸液ポンプの好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、輸液ポンプを示した斜視図である。図2は、輸液ポンプを示した正面図である。輸液ポンプ1は、携帯型の輸液ポンプであり、図1図5に示すように、輸液ポンプ本体2と、引き込み部3と、蓋部4と係止機構5とを備えている。輸液ポンプ本体2は、ケース11と、ロータユニット12と、モータ13と、制御部14と、を備えている。ケース11は、直方体箱状に形成されている。ケース11の表面には、操作部11aとしてタッチパネル式のパネルが配設されている。このパネルを操作することにより、モータ13を駆動させたり、送液速度や、送液量を調節できるようになっている。
【0018】
ロータユニット12は、回転軸21を中心にケース11に対して回転可能に配設され、図6及び図7に示すように、ロータ本体22と、複数の輸液チューブ押圧部23と、複数の復元機構24と、を備えている。ロータ本体22は、円形状の底板31と、底板31と同心円状で底板31よりも短径の円柱部32と、底板31と同径同心円状で円柱部32を介して底板31と対向する天板33と、を有している。円柱部32の中心軸がロータ本体22の回転軸21となっている。
【0019】
輸液チューブ押圧部23は、可撓性の輸液チューブ41を押圧するものであり、回転軸21を中心とした円周上に等間隔で配置されている。輸液チューブ押圧部23は、円柱状の回転軸42の周りを円筒状部分43が回転するように構成された円筒形状のローラーであり、回転軸21と平行である。輸液チューブ押圧部23は、その外周が、ロータ本体22の天板33及び底板31の外周と一致するように配設されている。輸液チューブ押圧部23同士の間隔は、ロータユニット12を回転させた際に、後述する輸液チューブ受け部材73との間で必ず1つの輸液チューブ押圧部23が輸液チューブ41を押圧した状態となるように設定されている。輸液チューブ押圧部23の円筒状部分43の延在方向の長さは、輸液チューブ41を潰した時の外径よりも大きく形成されている。
【0020】
復元機構24は、輸液チューブ押圧部23の相互間に配置され、輸液チューブ押圧部23とともに後述する輸液チューブ受け面81に沿って移動し、輸液チューブ押圧部23によって押圧された後の輸液チューブ41を両側から押圧するものである。復元機構24は、輸液チューブ41が通る輸液チューブ挿通部51を有している。輸液チューブ挿通部51は、第一挿通部52と、輸液チューブ41が通る間隔が第一挿通部52よりも小さい第二挿通部53とを有している。第一挿通部52及び第二挿通部53は、輸液チューブ押圧部23が通過した後の輸液チューブ41を、第一挿通部52が通過した後に、第二挿通部53が通過するように配置されている。
【0021】
第一挿通部52及び第二挿通部53は、輸液チューブ押圧部23と同一の円周上に配置された一対の円筒形状のローラーから構成されている。第一挿通部52のローラーである第一ローラー54は、第一ローラー54同士の間隔が輸液チューブ41の平常時の外径と同等の幅を持って配設されている。第二挿通部53のローラーである第二ローラー55は、第二ローラー55同士の間隔が輸液チューブ41の平常時の外径より狭い幅を持って配設されている。第一及び第二ローラー54,55は、円柱状の回転軸56の周りを円筒状部分57が回転するように構成されている。第一及び第二ローラー54,55は、その回転軸56がロータユニット12の回転軸21と略直交し、かつ天板33の係方向に沿うように配設されている。第一及び第二ローラー54,55は、輸液チューブ押圧部23よりも短径のローラーである。第一及び第二ローラー54,55は、同径に形成されている。
【0022】
モータ13は、ロータユニット12を回転させるものであり、電池を駆動源として回転軸61が回転するようになっている。モータ13は、その回転軸61がロータユニット12の回転軸21と平行となるように配設されている。また、モータ13とロータユニット12の間には、遊星歯車減速機構62が配設されている。遊星歯車減速機構62は、図には示していないが、サンギヤとプラネタリギヤを備え、サンギヤの回転軸63がロータユニット12及びモータ13の回転軸21,61と平行となるように配設されている。
【0023】
制御部14は、モータ13の回転速度を制御するものであり、ロータユニット12を回転させて複数の輸液チューブ押圧部23を輸液チューブ41に沿って順次移動させることによって送液を行う際には、モータ13の動作時間が経つにつれてモータ13の回転速度が上がるようにモータ13の回転速度を制御する。また、この制御部14によって、輸液チューブ41を流れる液体の流量の制御を行う際には、予め、輸液ポンプ1を使用して輸液を行う際に使用する輸液チューブ41による時間と流量の関係を実験により求め、関数化し、その関数に基づいて制御を行うとよい。
【0024】
引き込み部3は、ケース11に備えられた一対のネジ71に挿通され、ロータユニット12に近づく方向と遠ざかる方向にスライド移動可能となっている。引き込み部3は、バネ71aによって、図4における矢印方向、即ち、ロータユニット12から遠ざかる方向に付勢されている。引き込み部3の内側には、蓋部4と当接する蓋当接部72が形成されている。引き込み部3は、輸液チューブ受け部材73と、一対の輸液チューブ把持部74と、クレンメ装着部75と、を備えている。
【0025】
輸液チューブ受け部材73は、輸液チューブ押圧部23によって輸液チューブ41を押圧する際に、受け面となる輸液チューブ受け面81を有している。この輸液チューブ受け面81と輸液チューブ押圧部23とで輸液チューブ41を挟むようにして押圧しながら、複数の輸液チューブ押圧部23を輸液チューブ受け面81に沿って輸液チューブ41の長手方向に順次移動させることによって輸液チューブ41内の液体を一方方向に向けて送給する。
【0026】
輸液チューブ受け面81は、凹状に形成され、ロータユニット12に対向するように配置されている。輸液チューブ受け面81は、引き込み部3がロータユニット12に最も近付いた際、即ち、輸液チューブ押圧部23と輸液チューブ受け面81とで輸液チューブ41を押圧した際に、ロータユニット12の回転軸21を中心とした円弧状となるように形成されている。引き込み部3は、輸液チューブ押圧部23と輸液チューブ受け面81とで輸液チューブ41を押圧した際に、輸液チューブ41が閉塞されるまで、ロータユニット12に近付くようになっている。
【0027】
輸液チューブ受け面81は、輸液チューブ受け面81にロータユニット12が輸液チューブ41を介して嵌るように形成されている。輸液チューブ受け面81は、輸液チューブ押圧部23と同程度の幅寸法を有している。輸液チューブ受け面81は、図9に示すように、輸液チューブ41の相対移動を阻止する凹凸81aを有している。
【0028】
一対の輸液チューブ把持部74は、輸液チューブ41を把持して輸液チューブ41の長手方向の移動を阻止するものである。一対の輸液チューブ把持部74は、輸液チューブ受け面81の長手方向であって、図8に示すように、輸液チューブ受け面81の両側に備えられている。即ち、輸液チューブ把持部74は、輸液チューブ受け部材73を挟んで上流側と下流側に備えられている。輸液チューブ受け面81及び輸液チューブ押圧部23は、相互間隔が広がった状態に移動することが可能であり、一対の輸液チューブ把持部74は、輸液チューブ押圧部23及び輸液チューブ受け面81の相互間隔が広がった状態から、輸液チューブ押圧部23と輸液チューブ受け面81とで輸液チューブ41を押圧する状態へとなる前に、輸液チューブ41を把持した状態で互いに遠ざかる方向に移動可能に配設されている。
【0029】
一対の輸液チューブ把持部74は、輸液チューブ41の上流側を把持する第一把持部82と、輸液チューブ41の下流側を把持する第二把持部83とを備えている。第一把持部82及び第二把持部83は、ベース部84と、回転体85とを備えている。第一把持部82のベース部84は、図5に示すように、引き込み部3に形成され、輸液チューブ受け部材73の長手方向に延在した移動用溝86に嵌っており、輸液チューブ41の延在方向に移動可能に配設されている。第一把持部82のベース部84は、バネ87によって、第二把持部83に近づく方向に付勢されている。第一把持部82は、第一把持部82と第二把持部83との間の間隔の約10%増えるように移動することが可能である。第一把持部82及び第二把持部83のベース部84は、回転体85を軸支する回転体支持部90と、輸液チューブ41に当接する底面91aを備えた底面部91と、輸液チューブ41に当接する第一側面92aを備えた第一側面部92と、輸液チューブ41に当接する第二側面93aを備えた第二側面部93と、を有している。
【0030】
第一把持部82及び第二把持部83の回転体85は、図10及び図11に示すように、直方体状の第一本体部101と、第一本体部101の一端から第一本体部101と直交する方向に突出する直方体状の第二本体部102と、第二本体部102の先端から第一本体部101と同じ方向に突出する先端部103と、から構成されている。第一本体部101は、ケース11に回転可能に軸支され、回転体85が輸液チューブ41を挟持する方向(閉じ方向)と、輸液チューブ41を解放する方向(開方向)とに回転可能となっている。また、第一本体部101は、開方向に付勢されている。
【0031】
第二本体部102には、輸液チューブ41が当接する天面104が形成されている。先端部103は、回転体85を閉じ方向に回動させた際に、第二側面部93の輸液チューブ41と当接する第二側面93aとは反対側の面に当接し、第二側面部93を輸液チューブ41に当接する方向に押圧するようになっている。
【0032】
底面部91と第一側面部92と第二側面部93と第二本体部102とによって矩形状の断面を持つチューブ挿通孔105が構成される。底面91aと第一側面92aと第二側面93aと天面104は、輸液チューブ41に当接する部分であり、第一側面92aと第二側面93aには、輸液チューブ41の相対移動を阻止する凹凸106が施されている。
【0033】
クレンメ装着部75は、クレンメ111が装着される部分である。クレンメ装着部75は、引き込み部3において輸液チューブ受け部材73よりも下流側に形成された凹部であり、クレンメ111が嵌合されるようになっている。
【0034】
蓋部4は、前面に開口した窓部を有し、輸液ポンプ本体2に配設された回転軸を中心に回動することにより輸液ポンプ本体2に対し開閉するものである。蓋部4は、図1において、ケース11の右側方部を覆う様に形成されている。蓋部4の内側には、引き込み部3の蓋当接部72に当接し、引き込み部3を移動させる、当接部112が形成されている。当接部112は、蓋部4の内側に突出するように形成されている。
【0035】
係止機構5は、蓋部4と、輸液ポンプ本体2とを係止するものであり、係止状態からスライド移動することにより、係止が解かれるようになっている。係止機構5は、蓋部4に設けられたスライド部113と、輸液ポンプ本体2に設けられた被係止部114とから構成されている。スライド部113は、操作者が操作する操作部115と、被係止部114と係合する係止部116とから構成されている。係止機構5は、蓋部4を閉じると、係止部116と被係止部114が係合し、蓋部4が開かないようになる。係止機構5は、操作部115をスライド移動すると、係止部116と被係止部114が係合された状態から解放され、蓋部4を開けることができるようになっている。
【0036】
このように形成される携帯型の輸液ポンプ1は、図2及び図10に示すように、蓋部4を開けた状態で、輸液チューブ41を輸液チューブ把持部74に装着する。この状態では、輸液チューブ把持部74の回転体85は、直立状態となっている。そして、図11に示すように、蓋部4を閉じ方向に移動させると、蓋部4の当接部112が、引き込み部3の蓋当接部72に当接し、引き込み部3のロータユニット12側への移動を開始する。この際には、輸液チューブ把持部74の回転体85が、ケース11の天井部130に当接し、輸液チューブ41を把持する方向へ回転を始める。更に、蓋部4を閉じ方向に回転させると、図12に示すように、引き込み部3がロータユニット12側へ更に移動し、回転体85も更に回転し、輸液チューブ把持部74が輸液チューブ41を把持した状態となる。この時、輸液チューブ把持部74の先端部103は、第二側面部93の輸液チューブ41の当接面である第二側面93aとは反対側の面に当接し、第二側面部93を輸液チューブ41に当接する方向に押圧した状態となっている。従って、この状態で、輸液チューブ41は、第一側面92aと第二側面93aとによって挟持された状態となる。また、この時、輸液チューブ把持部74の第二本体部102は、ケース11の天井部130に押圧され、第二本体部102の天面104が輸液チューブ41に押し当てられるようになっている。従って、輸液チューブ41は、天面104と底面91aによって挟持された状態となる。
【0037】
また、蓋部4を閉じる際であって、輸液チューブ41が輸液チューブ把持部74に確実に把持された後には、図13に示すように、輸液チューブ把持部74の第一把持部82のカム当接部122が、ケース11に備えられたカム部121に当接し、カム部121に押圧されて、第一把持部82が輸液チューブ41の引き伸ばし方向(図中の矢印方向)に移動するようになっている。この結果、輸液チューブ41が引き伸ばされる。
【0038】
蓋部4を完全に閉じると、図4に示すように、ロータユニット12と輸液チューブ受け部材73が輸液チューブ41を介して当接するまで引き込み部3が移動し、輸液チューブ押圧部23と輸液チューブ受け面81とで輸液チューブ41が押圧され、輸液チューブ41が閉塞されるようになっている。この状態で、クレンメ111のローラーを輸液チューブ41の解放方向に移動させると、送液可能状態となる。そして、操作部11aを操作し、モータ13を駆動させると送液が行われるようになっている。
【0039】
上述した携帯型の輸液ポンプ1は、輸液チューブ押圧部23によって押圧された後の輸液チューブ41を両側から押圧する復元機構24が設けられているので、輸液チューブ押圧部23によって押圧され、変形した輸液チューブ41の形状を復元機構24により好適に復元することができる。従って、輸液ポンプ1に復元力がシリコン製のチューブより弱い塩化ビニル製の輸液チューブ41を使用したとしても安定した送液を行うことができる。
【0040】
また、復元機構24は、輸液チューブ41が通る間隔を有する輸液チューブ挿通部51を有し、輸液チューブ挿通部51は、第一挿通部52と、輸液チューブ41が通る間隔が第一挿通部52よりも小さい第二挿通部53とを有し、第一挿通部52及び第二挿通部53は、輸液チューブ押圧部23が通過した後の輸液チューブ41を、第一挿通部52が通過した後に、第二挿通部53が通過するように配置されているので、輸液チューブ押圧部23によって押圧され、変形した輸液チューブ41が第一挿通部で両側を押圧されることで、一定程度復元し、更に第二挿通部で両側を押圧されることにより、更に復元することができる。従って、変形した輸液チューブ41を好適に元の形に復元することができ、安定した送液が可能となっている。
【0041】
輸液ポンプ1で輸液を行う場合には、輸液チューブ押圧部23が輸液チューブ41を押圧しながら移動するので、輸液チューブ41が引き伸ばされる。輸液チューブ41が引き伸ばされる量が多いと、安定した送液の妨げとなる。しかしながら、上述の実施の形態では、蓋部4を閉じた際に、輸液チューブ把持部74が輸液チューブ41を把持した状態で、第一把持部82が第二把持部83から遠ざかる方向に移動し、輸液チューブ41を予め引き伸ばしているので、使用によって輸液チューブ41が引き伸ばされる量が減り、安定した送液の供給が可能となる。
【0042】
輸液チューブ受け面81には、輸液チューブ41に当接する部分に輸液チューブ41の相対移動を阻止する凹凸81aが施してあるので、輸液チューブ41の移動が好適に阻止され、安定した送液を行うことができる。
【0043】
モータ13とロータユニット12の間には、遊星歯車減速機構62が配設されているので、モータ13とロータユニット12の回転軸61,21を平行にすることができ、輸液ポンプ1の小型化を図ることができる。
【0044】
制御部14は、送液を行う際には、モータ13の動作時間が経つにつれてモータ13の回転速度が上がるように制御するので、時間が経つにつれ輸液ポンプ1の送液量が一定以上低下することを防止することができる。
【0045】
なお、輸液チューブ押圧部23は、ローラーでなくともよく、円柱部32から突出するように形成されていてもよい。輸液チューブ把持部74は、4つの面で輸液チューブ41を把持しているが、2つの面で把持してもよいし、3つの面で把持してもよい。相対移動を阻止する凹凸106は、輸液チューブ41に当接する面の内、少なくとも一つの面に形成されていればよい。相対移動を阻止する凹凸106は、輸液チューブ41に当接する面の内、2つの面に形成されているとよいし、2つ以上の面に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 輸液ポンプ
2 輸液ポンプ本体
3 引き込み部
4 蓋部
5 係止機構
11 ケース
11a 操作部
12 ロータユニット
13 モータ
14 制御部
22 ロータ本体
23 輸液チューブ押圧部
24 復元機構
41 輸液チューブ
81 輸液チューブ受け面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
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図13