(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】グラフェンナノ構造体を含む抗炎症用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/44 20060101AFI20220128BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220128BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220128BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220128BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220128BHJP
A23K 20/20 20160101ALI20220128BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K33/44
A61P1/00
A61P1/04
A61P37/00
A61P37/06
A61P43/00 111
A61K8/19
A61Q19/00
A23L33/10
A23K20/20
B82Y5/00
(21)【出願番号】P 2020546263
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(86)【国際出願番号】 KR2018014557
(87)【国際公開番号】W WO2019103541
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158752
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158753
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】520177275
【氏名又は名称】バイオグラフェン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOGRAPHENE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、キョン‐ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ビョン‐チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジニョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョン ボ
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529310(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0115671(KR,A)
【文献】特表2015-524793(JP,A)
【文献】特表2016-540033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216581(US,A1)
【文献】European Neuropsychopharmacology,Vol.26,Supplement 2,2016年,P.1.f.007,S211-212
【文献】Toxicology,2015年,Vol.327,p.62-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンナノ構造体(nano-structure)を有効成分として含む
炎症性腸疾患の予防又は治療用薬学的組成物であって、
前記グラフェンナノ構造体が、ナノサイズの酸化グラフェン(nano-sized graphene oxide;nano-GO)又はグラフェン量子ドット(graphene quantum dot;GQD)である、組成物。
【請求項2】
前記ナノサイズの酸化グラフェンが、12nm以下の厚さ及び15~50nmの平均直径を有するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グラフェン量子ドットが、1~10nmの平均直径及び0.5~3nmの厚さを有する粒子である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前炎症性サイトカインの発現又は分泌阻害、ミエロペルオキシダーゼ活性阻害、Th1分化又は反応抑制、T細胞活性促進、M2b大食細胞上向き調節又はこれらの組合せにより炎症を抑制するか又は減少させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記炎症性
腸疾患が、クローン病(Crohn’s disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)及び腸ベーチェット病(intestinal Behcet’s disease)よりなる群から選ばれる炎症性腸疾患である、 請求項
1に記載の組成物。
【請求項6】
前記炎症性腸疾患が、結腸の短縮(shortening of colon)、脱毛、活動性低下、体重減少、出血指数の上昇又は排便指数の上昇の症状を伴うものである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項7】
グラフェンナノ構造体(nano-structure)を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用化粧品組成物であって、
前記グラフェンナノ構造体が、ナノサイズの酸化グラフェン(nano-sized graphene oxide;nano-GO)又はグラフェン量子ドット(graphene quantum dot;GQD)である、化粧品組成物。
【請求項8】
グラフェンナノ構造体(nano-structure)を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用食品添加物であって、
前記グラフェンナノ構造体が、ナノサイズの酸化グラフェン(nano-sized graphene oxide;nano-GO)又はグラフェン量子ドット(graphene quantum dot;GQD)である、食品添加物。
【請求項9】
グラフェンナノ構造体(nano-structure)を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用飼料組成物であって、
前記グラフェンナノ構造体が、ナノサイズの酸化グラフェン(nano-sized graphene oxide;nano-GO)又はグラフェン量子ドット(graphene quantum dot;GQD)である、飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンナノ構造体(graphene nano-structure)を有効成分として含む抗炎症用組成物に関する。具体的に、前記組成物を含む炎症性疾患の予防又は治療用薬学的組成物、炎症性疾患の予防又は改善用化粧品組成物又は飼料組成物、及び前記組成物を用いた炎症性疾患を予防又は治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症(inflammation)は、組織の損傷、外部の刺激又は多様な感染源に対する生体組織の防御反応であって、血管と体液内の各種炎症媒介因子と多様な免疫細胞の有機的相互作用によって発生する複合的な病理現象である。一例として、細胞に外部刺激が加えられると、TNF-α(tumor necrosis factor-alpha)又はIL-6(interleukin-6)などの前炎症性サイトカイン(cytokine)が増加し、前記サイトカインは、iNOS(inducible nitric oxide systhase)又はCOX-2(cyclooxygenases-2)などの遺伝子の発現を刺激することによって、NO(nitric oxide)又はPGE2(prostaglandin E2)を生成させて、炎症反応が起こることになる。前記免疫反応と関連したIL-6、IL-8、TNF-α又はIFN-αなどのサイトカインは、大食細胞により合成され分泌され、サイトカインの種類によって大食細胞による発現が上向き調節されたり、又は下向き調節され得る(Cavaillon JM,Biomed.Pharmacother.1994;48(10):445-53)。
【0003】
NOは、体内防御機能、信号伝達機能、神経毒性、血管拡張などの多様な生理活性機能を有しているが、炎症状態でiNOSにより過剰生成されたNOは、血管透過性、浮腫、組織の損傷、遺伝子変移及び神経損傷などを誘発する。これにより、前記NOの過度な生成を抑制する物質を開発するための多くの研究が行われており、多様な天然物に由来したコーヒー酸、クロロゲン酸、ケイ皮酸、p-クマル酸、ヘスペリジン、ロスマリン酸などのフェニルプロパノイド化合物が皮膚炎症を抑制することができることが報告されたことがある(日本国特許公開第2000-319154号)。しかしながら、天然物由来成分に関する研究は、まだ初期段階に過ぎず、より多様な成分の開発が要求される。
【0004】
多様な炎症性疾患のうちクローン病(Crohn’s disease)と潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)と代表される炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)は、胃腸管を侵す原因が正確に明らかにされていない慢性的な炎症性疾患を意味する。大きく、前記クローン病と潰瘍性大腸炎の二種類に区分されるが、腸ベーチェット病(intestinal Behcet’s disease)を含ませることがある。黒人や東洋人よりは白人やユダヤ人において多く発見されるが、東洋人において発病する場合が次第に増加している。好発年齢は、15~35才の間であり、症状は、潰瘍性大腸炎の場合、下痢(血便及び粘液便)、渋り腹、腹痛、腹部圧痛、体重減少などが主に現れ、クローン病の場合には、体重減少、右下腹部痛、肛門周囲の異常、腹部圧痛などが現れる。腸ベーチェット病は、これらと類似に、下痢と腹痛などの症状を示し、それ以外のベーチェット病に準ずる症状を伴う。
【0005】
内科的治療が原則であるが、これが難しいか又は合併症が発病した場合には、外科的治療を行う。薬物治療を行ってはいるが、原因が明確に明らかにされていないので、これだと言える治療剤が開発されず、一般的な抗炎症剤、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤、抗生剤及びその他薬品を適切に併用して複合的に使用する傾向にある。炎症の種類、程度、部位、合併症などによって薬品の種類と量を調節して使用する。しかしながら、このような複合療法は、副作用が発生する可能性が高いという短所がある。したがって、効果的な炎症性腸疾患の治療のための治療剤の開発は、非常に重要である。
【0006】
これより、本発明者らは、生物医学的治療剤としての活性を有するグラフェン誘導体を発掘するために鋭意研究に努力した結果、グラフェンナノ構造体、特に粒子サイズ及び形態が調節されたナノサイズのグラフェンが、炎症性因子の発現及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制し、大食細胞の特定の亜類型への分化を誘導する抗炎症活性を有することを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、グラフェンナノ構造体(graphene nano-structure)を有効成分として含む抗炎症用組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症性疾患を予防又は治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための一様態として、本発明は、グラフェンナノ構造体を有効成分として含む抗炎症用組成物を提供する。
【0010】
本発明は、グラフェンナノ構造体、特にその粒子サイズ及び形態が調節されたナノサイズのグラフェンが、炎症性因子の発現及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制し、大食細胞の特定の亜類型への分化を誘導して抗炎効果を示し、動物実験を通じて特に炎症性腸疾患を効果的に予防又は治療することができることを発見したことに基づく。
【0011】
本発明において、グラフェンナノ構造体は、ナノサイズのグラフェン誘導体を指すものであって、ナノサイズの酸化グラフェン(nano-sized graphene oxide;nano-GO)、及びグラフェン量子ドット(graphene quantum dot;GQD)を含む。
【0012】
本発明の用語「グラフェン」とは、複数個の炭素原子が互いに共有結合で連結されて、ポリサイクリック芳香族分子を形成したことを意味するものであって、前記共有結合で連結された炭素原子は、基本反復単位として六員環を形成するが、五員環及び/又は七員環をさらに含むことも可能である。
【0013】
本発明の用語「酸化グラフェン」とは、グラフェンオキサイド(graphene oxides)とも呼ばれ、「GOs」と略称され得る。グラフェン上にカルボキシル基、ヒドロキシ基、又はエポキシ基などの酸素原子を含有する官能基が結合された構造を含むことができるが、これに制限されない。
【0014】
本発明の用語「ナノサイズの酸化グラフェン(nano-sized graphene oxide;nano-GO)」とは、ナノメートル水準のサイズを有する粒子の形態で製造される酸化グラフェンを指すものであって、グラフェン上にカルボキシル基、ヒドロキシ基、又はエポキシ基などの酸素原子を含有する官能基が結合された構造を含むことができるが、これに制限されないことがある。前記ナノサイズの酸化グラフェンは、12nm以下の所定の厚さを有し、約15~50nmの平均直径を有する板状型の粒子を意味する。例えば、前記ナノサイズの酸化グラフェンは、酸化グラフェンに超音波を加えて(例えば、tip-sonificationにより)製造することができるが、これに制限されない。例えば、前記ナノサイズの酸化グラフェンは、15~45nm、15~27nm、25~35nm、35~45nm又は25~45nmの平均直径を有することができる。ひいては、前記ナノ粒子は、5~12nm、3~9nm、3~7nm、5~9nm,又は5~7nmの厚さを有する粒子でありうるが、これに制限されない。
【0015】
本発明の用語「グラフェン量子ドット(graphene quantum dot;GQD)」とは、ナノ-サイズ断片を有するグラフェンを意味するものであって、前記グラフェン量子ドットは、適切な加工を通じて製造される、数nm水準の横、縦及び高さを有するグラフェン粒子であり得、炭素繊維を熱酸化切断(thermo-oxidative cutting)して獲得することができるが、その製造方法は、これに制限されない。例えば、前記グラフェン量子ドットは、1~5nmの平均直径及び0.5~3nmの厚さを有する粒子でありうるが、これに制限されない。例えば、前記グラフェン量子ドットは、1~3nm又は3~5nmの平均直径を有しうる。ひいては、前記グラフェン量子ドットは、0.5~2.5nm、0.5~1.5nm、又は1.5~2.5nmの高さを有しうる。
【0016】
本発明の用語「抗炎症」とは、炎症を抑制したり減少させる作用を意味し、前記用語「炎症」は、生体組織が損傷を受けたとき、体内で起こる防御的反応であって、炎症性疾患を誘発する原因である。
【0017】
本発明において、上記の抗炎症用組成物は、炎症を抑制したり減少させる活性を示すことによって、炎症性疾患の予防、治療又は改善に用いられる。
【0018】
具体的に、本発明のグラフェンナノ構造体を含む前記組成物は、前炎症性サイトカインの発現又は分泌阻害、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase;MPO)活性阻害、Th1増殖、分化又は反応抑制、抑制性T細胞活性促進又はM2b大食細胞上向き調節することによって、炎症を抑制したり減少させることができる。
【0019】
例えば、本発明の組成物を処理することによって、代表的な前炎症性サイトカインであるIFNγ、TNF、IL-6及び/又はMCP-1の後続サイトカインの分泌又は発現を減少させることができる。又は、MPO活性を減少させることができ、これは、好中球の移動及び炎症を抑制することができることを示す。ひいては、腸炎で重要な役割をするものと知られたTh1細胞への分化及び/又はその増殖を抑制し、これに特異的な遺伝子発現をも減少させることができる。ひいては、炎症反応中にM1大食細胞をM2タイプに転換することによって、炎症を解消することができる。特に、M2亜類型のうちM2b大食細胞を上向き調節することによって、炎症性反応を弱めることができる。
【0020】
前記「発現」は、遺伝子発現又はタンパク質発現を全部含む。
【0021】
前記炎症性疾患は、炎症により引き起こされる疾患を意味するので、本発明の抗炎症組成物は、炎症性疾患の予防又は治療に用いられる。
【0022】
前記炎症性疾患は、本発明の薬学組成物により症状が緩和、軽減、改善又は治療され得る限り、特にこれに制限されないが、具体的な例として、紅斑、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、第1型糖尿、ループス、慢性疲労症候群、線維筋肉痛、甲状腺機能低下症と亢進症、強皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、ショーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、白斑症、又は全身性強皮症でありうるが、これに制限されない。
【0023】
具体的に、本発明によるグラフェンナノ構造体を含む薬学的組成物により治療可能な炎症性疾患は、炎症性腸疾患でありうる。前記炎症性腸疾患は、腸に発生する原因不明の慢性的な炎症を意味するものであって、通常、特発性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病を指すが、腸ベーチェット病も、これに含まれ得る。より広い意味としては、細菌性、ウイルス性、アメーバ性、結核性腸炎などの感染性腸炎と、虚血性腸疾患、放射線腸炎などすべての腸で発生する炎症性疾患を全部含むことができる。本発明の組成物は、前記広い意味の炎症性腸疾患、例えば、細菌性、ウイルス性、アメーバ性、結核性腸炎などの感染性腸炎と、虚血性腸疾患、放射線腸炎などすべての腸で発生する炎症性疾患の予防又は治療に制限なしに使用され得、好ましくは、クローン病、潰瘍性大腸炎及び腸ベーチェット病の予防又は治療に使用され得る。
【0024】
前記炎症性腸疾患の症状は、具体的な疾患によって異なるが、一般的に、腹痛、下腹部不快感、結腸の短縮(shortening of colon)、脱毛、活動性低下、体重減少、出血指数の上昇(出血)又は排便指数の上昇(下痢)の症状を示すことができる。同じ疾患であっても、病変の範囲や位置又は重症度によって異なる様相を示すことができる。
【0025】
前記炎症性疾患の予防又は治療は、炎症性サイトカインIL-23又はTGF-βの分泌及び/又はこれと関連した遺伝子の発現増加を減少させることによって行われ得る。
【0026】
前記IL-23は、ヘテロ二量体のサイトカインであって、免疫反応で重要な役割をする。樹枝状細胞(dendritic cell)、大食細胞(macrophage)及びその他免疫細胞で生産されるものであって、腸で耐性と免疫間の均衡に影響を与える主要な要素と見なされ、結腸で炎症を媒介することが確認された。前記TGF-βは、多様な組織で合成される要素であって、TGF-αと相乗的に作用する。胚芽発達、細胞分化、ホルモン分泌及び免疫機能に重要な役割をするものと知られている。特に炎症反応を誘発するものと知られている。
【0027】
本発明の用語「予防」とは、前記組成物の投与により炎症性疾患を抑制又は遅延させるすべての行為を意味する。
【0028】
本発明の用語「治療」とは、前記組成物の投与により炎症性疾患の症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0029】
前記本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。本発明の用語「薬学的に許容可能な」とは、前記組成物に露出する細胞やヒトに毒性がない特性を示すことを意味する。前記担体は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤、基剤、賦形剤、潤滑剤など当業界に公知となったものであれば、制限なしに使用することができる。本発明の薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。典型的に、膜を通過した移動を容易にする使用可能な界面活性剤としては、ステロイドから誘導されたものであるが、N-[1-(2,3-ジオレオイル)プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド](DOTMA)などのカチオン性脂質、又はヘミこはく酸コレステリルなどがある。
【0030】
前記目的を達成するための他の様態として、本発明は、前記薬学的組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症性疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0031】
本発明において、用語「個体」とは、炎症性疾患が発病したり発病しうるヒトを含むすべての動物を意味し、本発明の薬学的組成物を個体に投与することによって、前記炎症性疾患を効果的に予防又は治療することができる。本発明の薬学的組成物は、既存の炎症性疾患治療剤と併用してして投与され得る。
【0032】
本発明の用語「投与」とは、適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、目的組織に到達しうる限り、いかなる一般的な経路を通じて投与され得る。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与され得るが、これに制限されない。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記組成物以外に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート、スクロース、又はラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製する。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。しかしながら、経口投与時に、ペプチドは、消化されやすいので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり、胃での分解から保護されるように剤形化することが好ましい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプソル、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。ペプチドの安定性や吸収性を増加させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどのカーボハイドレート、アスコルビン酸、グルタチオンなどの抗酸化剤、キレート物質、低分子タンパク質又は他の安定化剤を使用することができる。
【0033】
また、本発明の薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動しうる任意の装置により投与されることもできる。好ましい投与方式及び製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。注射剤は、生理食塩液、リンゲル液などの水性溶剤、植物油、高級脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶剤などを用いて製造することができ、変質防止のための安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、微生物の発育を阻止するための保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレソール、ベンジルアルコールなど)などの薬学的担体を含むことができる。
【0034】
一方、本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。前記用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスクの割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさないほどの量を意味し、有効用量水準は、患者の性別、年齢、体重、健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路、及び排出比率、治療期間、配合又は同時に使用される薬物を含む要素及びその他医学分野におけるよく知られた要素によって当業者により容易に決定され得る。一般的に、活性物質を約0.01mg/kg/日~1000mg/kg/日の用量で投与することができる。経口投与する場合、50~500mg/kgの範囲が適合であり、1日に1回以上投与することができる。
【0035】
本発明の組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次又は同時に投与され得る。そして、単一又は多重投与され得る。前記要素を全部考慮して副作用なしに最小の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者により容易に決定され得る。
【0036】
また、本発明において、上記の抗炎症用組成物は、炎症性疾患の予防又は改善用化粧品組成物でありうる。
【0037】
本発明の化粧品組成物は、総組成物の重量に対して本発明のグラフェンナノ構造体を0.0001~50重量%で含むことができ、具体的に0.01重量%~10重量%で含むことができるが、これに制限されない。前記範囲内で本発明の優れた効果を示す利点があり、組成物の剤形が安定化される利点がある。
【0038】
前記本発明の化粧品組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーよりなる群から選ばれる剤形で製造することができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
前記本発明の化粧品組成物は、一般皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を1種以上さらに含むことができ、通常の成分として、例えば油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合することができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
前記本発明の化粧品組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、化粧料組成物の剤形によって多様である。
【0041】
本発明の剤形が軟膏、ペースト、クリーム又はジェルである場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが利用され得るが、これに制限されるものではない。これらは、単独で使用されるか、2種以上混合されて使用され得る。
【0042】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダーなどが用いられ、特にスプレーである場合には、さらに、クロロフルオロハイドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進剤を含むことができるが、これに制限されるものではない。これらは、単独で使用されたり、2種以上混合されて使用され得る。
【0043】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤などが用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルなどが用いられ、特に、綿実油、ピーナッツ油、とうもろこし胚芽油、オリーブ油、ひまし油及びゴマ油、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが用いられるが、これに制限されるものではない。これらは、単独で使用されたり、2種以上混合されて使用され得る。
【0044】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガ又はトラカントなどが用いられるが、これに制限されるものではない。これらは、単独で使用されたり2種以上混合されて使用され得る。
【0045】
本発明の剤形が石鹸である場合には、担体成分として脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、脂肪酸タンパク質ヒドロリゼート(hydrolysate)、イセチオン酸、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセロール、糖などが用いられるが、これに制限されるものではない。これらは、単独で使用されたり2種以上混合されて使用され得る。
【0046】
本発明の剤形が界面-活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオン酸、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシテート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性オイル、ラノリン誘導体又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられるが、これに制限されるものではない。これらは、単独で使用されたり2種以上混合されて使用され得る。
【0047】
ひいては、本発明において、上記の抗炎症用組成物は、炎症性疾患の予防又は改善用食品添加物又は健康機能食品でありうる。本発明の組成物を食品添加物として使用する場合、前記グラフェンナノ構造体をそのまま添加したり他の食品又は食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康又は治療的処置)によって好適に決定され得る。
【0048】
本発明の用語「健康機能食品」は、健康補助の目的で特定の成分を原料としたり、食品原料に入っている特定の成分を抽出、濃縮、精製、混合などの方法で製造、加工した食品を言い、前記成分により生体防御、生体リズムの調節、疾患の防止と回復など生体調節機能を生体に対して十分に発揮することができるように設計され加工された食品を言うものであって、前記健康食品用組成物は、疾患の予防及び疾患の回復などに関連した機能を行うことができる。
【0049】
また、本発明の組成物が使用され得る健康食品の種類には制限がない。なお、本発明のペプチド又はその食品学的に許容可能な塩を活性成分として含む組成物は、当業者の選択によって健康機能食品に含有され得る適切なその他補助成分と公知の添加剤を混合して製造することができる。添加しうる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲み物、お茶、ドリンク剤、アルコール飲み物及びビタミン複合剤などがあり、本発明によるグラフェンナノ構造体を抽出物を主成分として製造した汁、お茶、ゼリー及びジュースなどに添加して製造することができる。
【0050】
ひいては、本発明において、上記の抗炎症用組成物は、炎症性疾患の予防又は改善用飼料組成物でありうる。
【0051】
本発明の用語「飼料」は、動物が食べたり、摂取したり、消化させるための、又はこれに適当な任意の天然又は人工規定食、一片食など又は前記一片食の成分であって、本発明のグラフェンナノ構造体を有効成分として含む飼料は、当業界における公知となった多様な形態の飼料で製造可能であり、具体的に、濃厚飼料、粗飼料及び/又は特殊飼料が含まれ得る。
【0052】
本発明の飼料組成物に含まれるグラフェンナノ構造体の含量は、飼料の使用目的及び使用条件によって変わり、一例として、家畜飼料組成物の総重量に対して0.01~100重量%、より具体的には、1~80重量%で含まれ得るが、これに制限されない。
【0053】
また、他の一つの様態として、本発明は、炎症性疾患の予防又は治療のための前記グラフェンナノ構造体の用途を提供する。
【0054】
また、他の一様態として、本発明は、炎症性疾患の予防又は治療に使用するための前記グラフェンナノ構造体を含む組成物を提供する。
【0055】
また、他の一様態として、本発明は、炎症性疾患の予防又は治療のための薬剤の製造において前記グラフェンナノ構造体の用途を提供する。
【0056】
前記グラフェンナノ構造体及び炎症性疾患に関する具体的な内容は、前記で説明した通りである。
【0057】
本発明の組成物、治療方法、用途で言及された事項は、互いに矛盾しない限り、同一に適用される。
【発明の効果】
【0058】
本発明による組成物は、ナノサイズのグラフェン誘導体、すなわちグラフェンナノ構造体を含むことによって、前炎症性サイトカインの分泌及び/又は発現を抑制し、炎症性反応に関与する細胞の分化を調節することによって、炎症性疾患、特に、炎症性腸疾患の治療に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、ナノ-GOsの合成方法及び特性を示す図である。(A)は、本発明によるナノ-GOsの合成方法を概略的に示す。(B)は、本発明によるナノ-GOsの代表的なTEMイメージとこれから算出した粒子サイズ分布を示す。(C)は、本発明によるナノ-GOsの代表的なAFMイメージ及びラインプロファイル分析結果を示す。(D)は、本発明によるナノ-GOsの代表的なラマンスペクトルを示す。
【
図2】
図2は、グラフェン量子ドット(graphene quantum dots;GQDs)の合成方法及び特性を示す図である。(A)は、本発明によるGQDsの合成方法を概略的に示す。(B)は、本発明によるGQDsの代表的なTEMイメージとこれから算出した粒子サイズ分布を示す。(C)は、本発明によるGQDsの代表的なAFMイメージ及びラインプロファイル分析結果を示す。(D)は、本発明によるGQDsの代表的なラマンスペクトルを示す。
【
図3】
図3は、ナノ-GOsの腹腔内注射によるDSS-誘導大腸炎マウスでの保護効果を示す図である。(A~D)は、マウスに3%DSS含有飲料水を7日間投与して大腸炎を誘導したマウスに対する実験結果を示す。DSS投与後1日目にナノ-GOsを腹腔内投与した(300μg/head)。臨床評価のために(A)生存率、(B)体重減少率及び(C)大腸炎重症度に対する疾患活性指数(disease activity index;DAI)をモニターした。(D)には、腸の損傷を決定するために、DSSで大腸炎誘導後10日に致死したマウスから摘出した結腸の形態及び長さを示した。n=17~20マウス/群。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図4】
図4は、GQDsの腹腔内注射によるDSS-誘導大腸炎マウスでの保護効果を示す図である。(A~D)は、マウスに3%DSS含有飲料水を7日間投与して大腸炎を誘導したマウスに対する実験結果を示す。DSS投与後1日目にGQDsを腹腔内投与した(300μg/head)。臨床評価のために(A)生存率、(B)体重減少率及び(C)大腸炎重症度に対する疾患活性指数(disease activity index;DAI)をモニターした。(D)には、腸の損傷を決定するために、DSSで大腸炎誘導後10日に致死したマウスから摘出した結腸の形態及び長さを示した。n=17~20マウス/群。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図5】
図5は、腹腔(abdominal cavity)でナノ-GOsの蓄積を示す図である。DSSで大腸炎誘導及びナノ-GOs投与後14日にマウスを致死した。ナノ-GOsは、脾臓及び結腸近所で観察された。
【
図6】
図6は、腹腔でGQDsの蓄積を示す図である。DSSで大腸炎誘導及びGQDs投与後14日にマウスを致死した。GQDsは、脾臓及び結腸近所で観察された。
【
図7】
図7は、DSS誘導後、マウスでナノ-GOsによる結腸及び全身炎症減少効果を示す図である。DSSで大腸癌誘導後、ナノ-GOsを腹腔内投与したマウスを10日目に致死させて実験に使用した。(A)の左側は、結腸断面の代表的なH&E染色されたイメージを示し、右側は、リンパ球浸潤(lymphocyte infiltration)及び腸の損傷により行われた組織病理学的評価結果を示す。スケールバー=1mm(上端)及び500μm(下端)。(B)の左側は、線維化を評価するための結腸のマッソントリクローム染色結果を、右側は、線維症領域(fibrotic area)の定量的分析結果を示す。スケールバー=1mm(上端)及び500μm(下端)。大腸炎マウスから血清を収集してサイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析を利用して表示したサイトカインの分泌水準を測定して(C)に示した。(D)は、結腸組織で測定したミエロペルオキシダーゼ(MPO)を示す。
【
図8】
図8は、DSS誘導後、マウスでGQDsによる結腸及び全身炎症減少効果を示す図である。DSSで大腸癌誘導後、GQDsを腹腔内投与したマウスを10日目に致死させて実験に使用した。(A)の左側は、結腸断面の代表的なH&E染色されたイメージを示し、右側は、リンパ球浸潤及び腸の損傷により行われた組織病理学的評価結果を示す。スケールバー=1mm(上端)及び500μm(下端)。(B)の左側は、線維化を評価するための結腸のマッソントリクローム染色結果を、右側は、線維症領域(fibrotic area)の定量的分析結果を示す。スケールバー=1mm(上端)及び500μm(下端)。大腸炎マウスから血清を収集してサイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析を利用して表示したサイトカインの分泌水準を測定して(C)に示した。(D)は、結腸組織で測定したミエロペルオキシダーゼ(MPO)を示す。
【
図9】
図9は、大腸炎誘導後、ナノ-GOsによる結腸組織のCBA分析結果を示す図である。CBA分析を行って結腸組織で表示したサイトカインの分泌水準を測定した。
【
図10】
図10は、ナノ-GOsの最適試験管内濃度を決定するための実験結果を示す図である。(A)の左側は、ヒト臍帯血(human umbilical cord blood;hUCB)から分離して表示した濃度のナノ-GOs存在下にコンカナバリンA(concanavalin A)により活性化した単核球細胞(mononuclear cells;MNCs)を、右側は、hUCBから精製し表示した濃度のナノ-GOs存在下に培養したCD4
+T細胞を示す。(B及びC)は、20μg/mlのGOsを2日間Th1細胞に添加して得た結果であって、(B)は、BrdUアッセイによる増殖を、(C)は、各群からのTh1細胞の代表的なイメージを示す。
【
図11】
図11は、GQDsの最適試験管内濃度を決定するための実験結果を示す図である。(A)の左側は、ヒト臍帯血(hUCB)から分離して表示した濃度のGQDs存在下にコンカナバリンAにより活性化した単核球細胞(MNCs)を、右側は、hUCBから精製し表示した濃度のGQDs存在下に培養したCD4
+T細胞を示す。(B及びC)は、20μg/mlのGQDsを2日間Th1細胞に添加して得た結果であって、(B)は、BrdUアッセイによる増殖を、(C)は、各群からのTh1細胞の代表的なイメージを示す。
【
図12】
図12は、ナノ-GOsのTh1分化した細胞の活性に対する抑制効果を示す図である。CD4
+T細胞をhUCBから分離してナノ-GOs存在下に組み換えIL-12及びIFN-γと組合せで抗-CD3及びCD28ビーズを使用してTh1細胞への分化を誘導した。(A)は、ビオチン標識されたナノ-GOs処理してTh1分化した細胞での局所化(localization)を示す。ビオチン標識されたナノ-GOsを検出するために抗GFP-ビオチンを使用した。右側は、ナノ-GOs処理されたTh1細胞のZ-スタックイメージを示す。スケールバー=10μm。(B)は、hUCBから分離してナノ-GOsと共にコンカナバリンAで刺激したMNCsを示す。MNCsを2日間培養し、BrdUアッセイで測定した。(C)は、ナノ-GOs存在下に2日間培養されたTh1細胞の増殖をBrdUアッセイで評価した結果である。(D)は、Th1細胞の細胞死滅をAnnexin V細胞死滅検出キットで分析した結果である。(E)は、P.I.(Propidium iodide)染色を利用してTh1細胞で行った細胞周期分析結果である。(F)は、IFN-γ発現CD4
+T細胞の百分率を流動細胞分析法で分析した結果である。(G)は、表示したTh1特異的マーカーに対する各群Th1細胞のmRNA発現を確認した結果である。(H)は、CBA分析によりTh1細胞上澄み液中の標識したTh1特異的サイトカインを分析した結果である。
【
図13】
図13は、GQDsのTh1分化した細胞の活性に対する抑制効果を示す図である。CD4
+T細胞をhUCBから分離してGQDs存在下に組み換えIL-12及びIFN-γと組合せで抗-CD3及びCD28ビーズを使用してTh1細胞への分化を誘導した。(A)は、ビオチン標識されたGQDs処理してTh1分化した細胞での局所化を示す。ビオチン標識されたGQDsを検出するために抗GFP-ビオチンを使用した。右側は、GQDs処理されたTh1細胞のZ-スタックイメージを示す。スケールバー=10μm。(B)は、hUCBから分離してGQDsと共にコンカナバリンAで刺激したMNCsを示す。MNCsを2日間培養し、BrdUアッセイで測定した。(C)は、GQDs存在下に2日間培養されたTh1細胞の増殖をBrdUアッセイで評価した結果である。(D)は、Th1細胞の細胞死滅をAnnexin V細胞死滅検出キットで分析した結果である。(E)は、P.I.(Propidium iodide)染色を利用してTh1細胞で行った細胞周期分析結果である。(F)は、IFN-γ発現CD4
+T細胞の百分率を流動細胞分析法で分析した結果である。(G)は、標識したTh1特異的マーカーに対する各群Th1細胞のmRNA発現を確認した結果である。(H)は、CBA分析によりTh1細胞上澄み液中の標識したTh1特異的サイトカインを分析した結果である。
【
図14】
図14は、生体内CD4
+CD25
+FoxP3
+調節T細胞比率のナノ-GOsによる間接的な増加を示す図である。ナノ-GOs投与したマウスを15日目に致死させて、その後、生体外実験のために結腸と脾臓を収集した。結果は、各群当たり5~6匹のマウスから取得した。CD4
+CD25
+FoxP3
+調節T細胞の(A)結腸浸潤及び(B)脾臓浸潤を流動細胞分析法で測定した。(C)は、FoxP3(緑色)に対する免疫染色により結腸内で観察される調節T細胞を示す、スケールバー=50μm。FoxP3
+細胞を▼で表示した。結腸溶解物のIL-10発現を(D)ウェスタンブロットと(E)CBA分析で確認した。(F)は、結腸でTGF-β1の分泌水準をELISAで分析した結果を示す。(G)は、流動細胞分析法によるTreg細胞の偏向化及びCD4
+CD25
+FoxP3
+細胞を分析した結果を示す。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図15】
図15は、生体内CD4
+CD25
+FoxP3
+調節T細胞比率のGQDsによる間接的な増加を示す図である。GQDs投与したマウスを15日目に致死させて、その後、生体外実験のために結腸と脾臓を収集した。結果は、各群当たり5~6匹のマウスから取得した。CD4
+CD25
+FoxP3
+調節T細胞の(A)結腸浸潤及び(B)脾臓浸潤を流動細胞分析法で測定した。(C)は、FoxP3(緑色)に対する免疫染色により結腸内で観察される調節T細胞を示す、スケールバー=50μm。FoxP3
+細胞を▼で表示した。結腸溶解物のIL-10発現を(D)ウェスタンブロットと(E)CBA分析で確認した。(F)は、結腸でTGF-β1の分泌水準をELISAで分析した結果を示す。(G)は、流動細胞分析法によるTreg細胞の偏向化及びCD4
+CD25
+FoxP3
+細胞を分析した結果を示す。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図16】
図16は、M1大食細胞の選択的に活性化したM2類型細胞への転換でナノ-GOsの役割を示す図である。CD14
+細胞をhUCBから分離してナノ-GOs存在下に培養した。(A)は、CD14
+大食細胞類似細胞をビオチン標識されたナノ-GOsで処理して局部化を観察した結果である。右側は、ナノ-GOs処理されたCD14
+細胞のZ-スタックイメージである。スケールバー=10μm。分離したCD14
+細胞をナノ-GOs存在下に類型-特異的誘導サイトカイン(inducer cytokines)でM0,M1及びM2類型細胞に偏向化した。培養7日後、(B)は、CCK-8アッセイにより細胞の増殖を確認した。類型-特異的細胞表面CDマーカーを(C)流動細胞分析法と(D)免疫細胞化学法で分析した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図17】
図17は、M1大食細胞の選択的に活性化したM2類型細胞への転換でGQDsの役割を示す図である。CD14
+細胞をhUCBから分離してGQDs存在下に培養した。(A)は、CD14
+大食細胞類似細胞をビオチン標識されたGQDsで処理して局部化を観察した結果である。右側は、GQDs処理されたCD14
+細胞のZ-スタックイメージである。スケールバー=10μm。分離したCD14
+細胞をGQDs存在下に類型-特異的誘導サイトカインでM0、M1及びM2類型細胞に偏向化した。培養7日後、(B)は、CCK-8アッセイにより細胞の増殖を確認した。類型-特異的細胞表面CDマーカーを(C)流動細胞分析法と(D)免疫細胞化学法で分析した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図18】
図18は、ナノ-GOsによる大食細胞の分化能力はもちろん、細胞形態及び生存率変化を示す図である。(A)の上端は、ナノ-GOsと共に培養したRaw264.7細胞の位相差(phase-contrast)イメージを示す。スケールバー=100μm。下端は、MTTアッセイで決定した細胞生存率を示す。分離したCD14
+細胞をナノ-GOs存在下に類型-特異的誘導サイトカインでM0、M1及びM2類型細胞に偏向化した。(B)は、位相差イメージ(スケールバー=200μm)を、(C)は、流動細胞分析法によるドットプロットイメージを示す。***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図19】
図19は、GQDs媒介されたM2偏向化された細胞のうちM2b大食細胞が主な亜類型であることを示す図である。分離したCD14
+細胞をGM-CSFと共に2日間培養し、次の5日間、IFN-γ及びLPSと培養してM1類型大食細胞に分化させた。7日間培養した後、細胞と培養された培地を回収してさらに分析した。(A)は、流動細胞分析法で確認したCD163の発現を示す。(B)は、CBA分析法で測定したTNF、IFN-γ及びIL-6分泌水準を示す。(C)は、M1及びM2類型-特異的遺伝子発現をqRT-PCRで分析した結果である。
【
図20】
図20は、ナノ-GOs媒介されたM2偏向化された細胞のうちM2b大食細胞が主な亜類型であることを示す図である。分離したCD14
+細胞をGM-CSFと共に2日間培養し、次の5日間、IFN-γ及びLPSと培養してM1類型大食細胞に分化させた。7日間培養した後、細胞と培養された培地を回収してさらに分析した。(A)は、流動細胞分析法で確認したCD163の発現を示す。(B)は、CBA分析法で測定したTNF、IFN-γ及びIL-6分泌水準を示す。(C)は、M1及びM2類型-特異的遺伝子発現をqRT-PCRで分析した結果である。M2亜類型偏向化のために、CD14
+細胞をM-CSFと共に2日間培養し、特異的サイトカイン組合せ(M2a、IL-4及びIL-13;M2b、Poly I:C、IL-1β及びLPS;M2c、IL-10及びTGF-β1)と共に次の5日間培養した。(D)は、M2亜類型特異的CDマーカーの発現を流動細胞分析法で検出した結果を示す。(E)はCBA分析法により測定したTNF及びIL-6分泌水準を示す。(F)は、IL-1β及びIL-10の遺伝子発現をqRT-PCRで確認した結果である。*P<0.05、**P<0.005、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【
図21】
図21は、ナノ-GOs処理に対するM2亜類型大食細胞の反応を示す図である。CD14
+細胞をM-CSFと共に2日間培養し、特異的サイトカイン組合せと共に次の5日間培養した。(A)は、流動細胞分析法によるドットプロットイメージを示す。(B)は、M2a亜類型特異的遺伝子発現をqRT-PCRで確認した結果である。*P<0.05、**P<0.005、***P<0.001。結果は、平均±SEMで示した。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例を通じて本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
製造例1:ナノサイズの酸化グラフェン(GO)の製造及びビオチン化
改善されたハマー方法(Hummer’s method)を通じて汚染されない(pristine)酸化グラフェン(graphene oxides;GOs)を合成した。ナノサイズのGOsを製造するために、収得したGOsの蒸留水溶液(3mg/ml)を3時間の間激しく超音波処理し(tip-sonicated)、硝酸セルロース膜フィルター(cellulose nitrate membrane filter、0.45μm、GE Healthcare)で真空-濾過した。
【0062】
また、EDCカップリングによりナノ-GOsをビオチン化した。まず、10mgのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(N-(3-Dimethylaminopropyl)-N’-ethylcarbodiimide hydrochloride,EDC reagent,Sigma)を10mlのナノ-GOs溶液(3mg/ml)に添加して、末端のカルボキシル基(edge carboxyl groups)をEDC試薬で置換した。30分後、20mgのアミン-PEG3-ビオチン(Thermo Scientific)を前記溶液に添加して24時間の間反応させて、ナノ-GOの活性化した末端とビオチンの反応性アミド基との間にアミド結合を形成するようにした。前記ナノサイズのGOs製造方法と同様に適切な透析及び濾過過程後、粉末の形態で最終生成物を収得した。
【0063】
製造例2:グラフェン量子ドットの製造及びビオチン化
硫酸及び硝酸(SAMCHUN化学社)の3:1混合溶液に80℃で1日間反応させることによって、炭素繊維(carbon fibers,Carbon Make,South Korea)の熱酸化切断(thermo-oxidative cutting)によりグラフェン量子ドット(graphene quantum dots;GQDs)を合成した。前記溶液を希釈し、MWCO 1kDニトロセルロース膜(Fisher Scientific)で透析して、非常に小さい切れ(fragments)と余分の酸(remaining acid)を除去した後、無機膜フィルター(inorganic membrane filter,Whatman-Anodisc 47,GE Healthcare)で真空-濾過した。凍結乾燥して、最終生成物を粉末の形態で収得した。
【0064】
また、前記製造例1のナノサイズの酸化グラフェンと同じ方法でGQDsをビオチン化し、適切な透析及び濾過過程後、粉末の形態で最終生成物を収得した。
【0065】
実験例1:TEMイメージング
300メッシュレース型炭素(lacey carbon)がコーティングされた銅格子(copper grids)(Ted Pella,Inc.)に前記製造例によって準備した各試料を分散させた溶液(10μg/ml)を30分間吸着させた。イメージングに先立って、前記格子を数滴の蒸留水で洗浄し、デシケーターで完全に乾燥させた。このように準備した試料を高解像度透過電子顕微鏡(high resolution-transmission electron microscope;HR-TEM,JEM-3010,JEOL Ltd.)で分析し、顕微鏡に結合させたGatanデジタルカメラ(MSC-794)でイメージを収集した。
【0066】
実験例2:ラマン分光測定
ラマンスペクトル測定のために、前記製造例によって準備した粉末状態の生成物をSiO2基材上に準備した。514.5nm Ar励起レーザーを具備したRenishawマイクロ-ラマン分光器でスペクトルを測定した。
【0067】
実験例3:FT-IR分光測定
フーリエ-変換赤外線スペクトル(Fourier-transform infrared(FT-IR)spectra)測定に先立って、粉末状態の試料をデシケーターで完全に乾燥して、所望しない酸素含有ピーク(oxygen containing peaks)を排除した。通常のKBRペレット法(Nicolet 6700,Thermo Scientific)でスペクトルを測定した。
【0068】
実験例4:実験動物
すべての動物実験は、ソウル大学校動物実験倫理委員会(IACUC No.SNU-170523-4)の承認された指針に従って行った。6週齢の雄性C57BL/6マウス(Orientbio,Sungnam,Republic of Korea)を無作為でグループ化し、7日間飲用水に3%DSSを提供した(グループ当たり16匹)。1日目(Day1)、すなわち、DSS誘導後1日に、マウスに前記製造例によって準備したナノ-GOs及びGQDsを15g/kg用量で腹腔内投与した。マウスの体重を毎日測定し、体重減少、活性度、排便一貫性(stool consistency)、出血及び毛髪状態で構成される疾患活性指数(disease activity index;DAI)を7日目(Day7)と10日目(Day10)に評価した。マウスを致死させた後、さらなる体外検査(ex vivo examinations)のために脾臓(spleen)、大腸(large intestine)及び血液試料を収集した。
【0069】
実験例5:組織病理学的評価
収集した結腸(colon)試料を、エタノールで脱水化、キシレンで透明化(clearing with xylene)及びパラフィンでワックス浸潤(wax infiltration with paraffin)を含む通常の方法によって、10%ホルマリンに固定した。パラフィン内蔵されたブロックを厚さ5μmに切断し、H&E又はマッソントリクローム(Masson’s trichrome)で染色した。杯細胞(goblet cells)の損失、充血(hyperemia)/浮腫(edema)、免疫細胞の浸潤(infiltration)、陰窩膿瘍(crypt abscesses)の存在及び上皮(epithelium)の損失をH&E染色による組織病理学的指数(histopathological index)で記録した。線維症組織(fibrotic tissue)領域をマッソントリクローム染色で測定し、ImageJソフトウェア(version 1.46r、US National Institute of Health,Bethesda,MD,USA)を使用して定量化した。
【0070】
実験例6:サイトカイン生成
多様なサイトカインの分泌水準を決定するために、血液から分離した血清、結腸溶解物(lysate of colon)及び細胞の培養上澄み液を準備した。生体内炎症の程度を測定するために、マウス炎症に対するサイトメトリックビーズアレイ(Cytometric Bead Array;CBA)キット(BD Bioscience,San Jose,CA,USA)及びMPO及びTGF-β1に対するELISAキット(それぞれR&D Systems,Minneapolis,MN,USA及びThermo Fisher Scientific,San Jose,CA,USA)を製造業者のプロトコルによって使用した。試験管内(in vitro)免疫細胞の誘導されたサイトカイン分泌を評価するためには、Th1/Th2/Th17に対するCBAキット(BD Bioscience,San Jose,CA,USA)とTGF-β1に対するELISAキット(Thermo Fisher Scientific,San Jose,CA,USA)を使用した。結果は、流動細胞分析法(flow cytometry)と分光光度計を使用して検出した。
【0071】
実験例7:hMNCsの分離及び培養
ヒト臍帯血(human umbilical cord blood;hUCB)又は臍帯血-由来細胞(UCB-derived cells)と関連したすべての実験過程は、韓国ボラメ病院医学研究倫理審議委員会(Boramae Hospital Institutional Review Board(IRB))とソウル大学校IRBの承認された指針に従って行った。公知の方法でヒト臍帯血-単核球細胞(human umbilical cord blood-mononuclear cells;hUCB-MNCs)を分離して培養した。具体的に、事前同意(informed consent)及び保護者の承認(parent approval)下に、出産直後、UCB試料を収集した。収集したUCB試料は、HetaSep溶液(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)と5:1の割合で混合して、室温で1時間の間インキュベーションした。その後、Ficollで上澄み液を収集し、2,500rpmで20分間遠心分離して、単核球細胞を分離した。分離した細胞は、PBSで2回洗浄した。以上のように分離した細胞で以後に試験管内分析でさらに行われる実験を進めた。
【0072】
実験例8:T細胞の分離及び偏向化(polarization)
製造メーカの指示(instruction)によってヒト純粋CD4+T細胞分離キットII(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)で純粋な(naive)CD4+T細胞を新鮮に分離したhUCB-MNCsから分離した。分離したCD4+T細胞は、T細胞亜型(subsets)の増殖に必須の、10%FBS(Fetal Bovine Serum)、抗-CD3/28ビーズ活性剤(activator)及び20ng/mlのIL-2を含むRPMI1640(Gibco BRL,Grand Island,NY,USA)に培養した。細胞をT細胞亜型に分化させるために、類型-特異的サイトカイン(type-specific cytokines)(1型ヘルパーT細胞に対して20ng/mlのIFN-γ及び20ng/mlのIL-12、及びTreg細胞に対して20ng/mlのTGF-β1)を成長培地に添加して、ナノ-GOs又はGQDsの存在/不在下に湿式5%CO2大気で37℃に5日間培養した。偏向した(polarized)Th1及びTreg細胞を類型-特異的染色及び流動細胞分析法で確認した。Th1細胞に対しては、CD4抗体で表面染色後、IFNγで細胞内そめた。Treg分析には、CD4、CD25及びIL-4抗体を使用した。
【0073】
実験例9:大食細胞の分離及び偏向化
公知の方法で大食細胞を分離して培養した。具体的に、製造メーカの指示によってヒトCD4+T細胞分離キット(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)で新鮮に分離したhUCB-MNCsから大食細胞を分離した。分離したCD14+細胞を10%FBSを含むRPMI1640に培養した。大食細胞亜型に細胞を偏向化するために、類型-特異的サイトカイン(M1細胞に対して20ng/mlのIFN-γ及び1μg/mlのLPS、及びM2細胞に対して20ng/mlのIL-4及び20ng/mlのIL-13)を成長培地に添加して、ナノ-GOs又はGQDsの存在/不在下に湿式5%CO2大気で37℃に5日間培養した。偏向した大食細胞を確認するために、類型-特異的染色及び流動細胞分析法を利用した。汎大食細胞マーカー(pan macrophage marker)としてCD14抗体を使用し、M1及びM2亜型に対する特異的マーカーとしてCD86及びCD206を適用した。
【0074】
実験例10:細胞増殖分析
細胞増殖を測定するために、細胞増殖ELISAキット(Roche,Indianapolis,IN,USA)及びCCK-8キット(Dojindo,Kumamoto,Japan)を製造メーカの指示によって使用した。ブロモデオキシウリジン(bromodeoxyuridine;BrdU)細胞増殖アッセイのために、公知の方法を使用した。具体的に、細胞を100μMのBrdU標識試薬(labeling reagent)と共に湿式5%CO2大気で37℃に2時間の間インキュベーションした。提供されたFixDenat溶液で30分間固定した後、細胞を抗-BrdU抗体溶液で90分間、そして室温で提供された基質(tetramethyl-benzidine;TMB)溶液に5~30分間インキュベーションした。各ウェルに停止液(stop solution)を注いだ後、450nm及び690nm波長で吸光度を測定して、細胞増殖水準を定量化した。
【0075】
実験例11:定量的RT-PCR
TRIzol(Invitrogen)を使用して製造メーカの指示によって総(total)RNAを抽出した。収得したRNAをスーパースクリプトファースト-ストランド合成システム(Superscript First-Strand Synthesis System,Invitrogen)によるcDNA合成に使用した。標的mRNAの相対的発現水準はSYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems,Foster City,USA)を使用してABI 7300検出システムで測定した。各遺伝子に対して最小3回の独立的な分析を行った。
【0076】
実験例12:細胞周期分析
公知のプロトコルによって細胞周期分析(cell cycle assay)を行った。具体的に、細胞を氷冷の70%エタノールで-20℃で30分以上固定した。固定された細胞は、PBSで洗浄し、400μlのRNase A含有PBS(7.5μg/ml)及びヨウ化プロピジウム(propidium iodide;PI、50μg/ml)と共に37℃で30分間インキュベーションした。細胞周期は、Cell Questソフトウェア(BD Bioscience,San Jose,CA,USA)を使用するFACScalibur上で行う流動細胞分析で分析した。
【0077】
実験例13:細胞死滅分析
公知の方法で細胞死滅分析(apoptosis assay)を行った。具体的に、細胞を細胞死滅検出キット(Apoptosis Detection Kits,BD Bioscience,San Jose,CA,USA)中の5μlのFITC annexin Vと5μlのPIで染色した。混合物を軽くボールテックスで撹拌し、室温の暗室で15分間インキュベーションした。その後、400μlの1×結合緩衝液(binding buffer)を前記混合物に添加し、すべての試料は、Cell Questソフトウェアを使用するFACScalibur上で行う流動細胞分析で分析した。
【0078】
実験例14:免疫蛍光分析
細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde;PFA)PBS溶液に室温で15分間固定し、0.25% Triton X-100(Sigma)で10分間処理して透過性を高めた(permeablilized)。固定された細胞は、遮断溶液(blocking solution、5%正常ヤギ血清(normal goat serum))と共に1時間の間室温でインキュベーションし、一次抗体と4℃で一晩中インキュベーションした。その後、細胞をAlexa Fluor 594(Invitrogen)で標識された二次抗体とインキュベーションし、DAPI(Sigma)染色を5分間行って、核を染色した。
【0079】
全組織免疫蛍光(whole tissue immunofluorescence)のために、パラフィンスライドのパラフィンを除去し(deparaffinized)、5%正常ヤギ血清含有PBSで遮断した。断片(sections)を一次抗体と一晩中インキュベーションした後、Alexa Fluor 594とインキュベーションと、DAPI染色した。イメージは、共焦点顕微鏡(confocal microscope,Eclipse TE200,Nikon,Japan)で収集した。
【0080】
実験例15:ウェスタンブロット分析
結腸試料をPro-Prep(Intron Biotechnology Co.,Sungnam,Republic of Korea)で溶解させて、組織からタンパク質を抽出した。収得したタンパク質試料は、10%SDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)で分離し、ニトロセルロース膜に移した。3%BSA(Bovine Serum Albumin)溶液で遮断した後、膜上のタンパク質をIL-10日目抗体と共に4℃で12時間以上インキュベーションし、二次抗体とインキュベーションした。タンパク質と抗体複合体は、ECLウェスタンブロッティング検出試薬及び分析システムを通じて検出した。
【0081】
実験例16:統計的分析
すべての結果の平均値は、平均(mean)±SEM(standard error of mean)で表現した。統計的分析は、GraphPad Prism version 5.0(GraphPad Software,San Diego,CA,USA)を利用する多重グループ比較(multigroup comparisons)を大切にして、スチューデント両側t-検定(Student’s 2-tailed t-test)又はボンフェローニポストホック検定(Bonferroni post-hoc test)に続く一員ANOVA(one-way ANOVA)を使用して行った。統計的有意性は、図面に対する説明に示した。
【0082】
実施例1.ナノ-酸化グラフェン及びGQDの特性分析
本発明に使用したナノ-GOs及びGQDsの合成方法をそれぞれ
図1A及び
図2Aに概略的に示した。ナノ-GOs及びGQDsのサイズと形態を同定するために、TEMイメージ及び制限視野電子回折(selected area electron diffraction;SAED)パターン分析を使用して粒子を分析した(それぞれ、
図1B、1C及び
図2B及び2C)。合成されたナノ-GOs及びGQDsの特性は、原子力顕微鏡(atomic force microscopy;AFM)で評価した(それぞれ、
図1C及び
図2C)。また、ナノ-GOs及びGQDsのラマンスペクトルを測定した(それぞれ、
図1D及び
図2D)。ナノ-GOs及びGQDsを免疫細胞内に位置させるために、ビオチン化された(biotinylated)ナノ-GOs及びGQDsをそれぞれ製造した。ナノ-GOs及びGQDsのビオチンへの改質後、FT-IRスペクトルは、アミンの振動ピークを示した。
【0083】
実施例2.マウスモデルでグラフェンナノ構造体のDSS-誘導結腸炎改善効果
DSS-誘導大腸炎(DSS-induced colitis)マウスでグラフェンナノ構造体の治療的効果を確認するために、前記ナノ-GOs及びGQDsをそれぞれ大腸炎誘導後1日目に腹腔内注射し、体重、生存率及び活動性を2週間モニターした。その結果、ナノ-GOs及びGQDsがいずれも増加した生存率及び減少した体重で決定される、重症大腸炎(severe colitis)からマウスを保護する効果を示した(
図3A、B及び
図4A、B)。ひいては、7日目及び10日目に、疾患活性指数を測定して大腸炎の経過を確認した。生存率及び体重からの結果と同様に、ナノ-GO-処理マウス及びGQDs-処理マウスは、いずれも顕著に減少した疾患活性指数を示した(
図3C及び
図4C)。大腸炎誘導後14日目に、各グループから結腸を収集し、その長さを測定した。ナノ-GOs及びGQDsは、大腸炎により誘導された結腸長さの減少を顕著に遮断した(
図3D及び
図4D)。グラフェンナノ構造体は、内臓器官(visceral organs)近所と隣接した腹膜(omentum)で発見された(
図5及び
図6)。ナノ-GOs及びGQDsの位置特異的蓄積(region specific accumulation)機序は、まだ明らかにされていない。総合的に、このような結果は、グラフェンナノ構造体がマウスで結腸の炎症を減少させることを示すものである。
【0084】
実施例3.グラフェンナノ構造体によるDSS-結腸炎誘導炎症反応に対する損傷
結腸の組織学的分析は、DSSが上皮(epithelium)の破壊、粘膜下浮腫(submucosal edema)、陰窩膿瘍(crypt abscesses)及びリンパ球浸潤(lymphocytic infiltration)を誘導することを示した(
図7A図8A)。ナノ-GO-処理マウス及びGQDs-処理マウスで、炎症病変(inflammatory lesions)は、PBS-処理マウスに比べてほとんど現れないか又は緩和されることが観察された。ひいては、大腸炎により誘導された結腸の粘膜及び粘膜下で線維症を評価するために、マッソントリクローム染色を行った。PBS-処理マウスは、青色染色により確認されるコラーゲン沈着を示した。ナノ-GOs及びGQDsは、コラーゲン蓄積をも減少させた。GQDsの注入は、結腸の短縮(shortening)を遮断した。全身炎症(systemic inflammation)を評価するために、CBA分析を利用して血清から分泌された前炎症性(proinflammatory)サイトカインの水準を測定した。クローン病で比重を占める主なサイトカインであるIFNγの誘導(induction)は、ナノ-GO-処理マウス及びGQDs-処理マウスで阻害された(
図7C及び
図8C)。また、ナノ-GOs及びGQDsの処理は、IFN-γ、TNF、IL-6及びMCP-1の後続サイトカイン(downstream cytokines)を減少させた。好中球顆粒成分(neutrophil granule constituent)であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、移動した好中球(migrated neutrophils)の数に比例すると知られている。ナノ-GOs-処理マウス及びGQDs-処理マウスは、結腸組織でPBS-処理マウスに比べて減少したMPO活性を示し、これは、グラフェンナノ構造体が好中球の移動及び炎症を抑制することを示すものである(
図7D及び
図8D)。したがって、このような結果は、クローン病モデルでグラフェンナノ構造体が免疫-抑制特性を有することを示す。
【0085】
実施例4.グラフェンナノ構造体のCD4
+T細胞活性抑制効果
Th1細胞が腸炎で重要な役割をすることを考慮して、CD4
+T細胞でグラフェンナノ構造体の直接的な効果を確認した。まず、適正濃度を決定するために、MNCs及び一次CD4
+T細胞にナノ-GOs及びGQDsを多様な濃度で処理した(
図10A及び
図11A)。20μg/mlのナノ-GOs及びGQDsは、MNCs及びT細胞の増殖を毒性なしに効果的に抑制した(それぞれ、
図10B、10C及び
図11B、11C)。CD4
+T細胞内にグラフェンナノ構造体を位置させるために、GFP-ビオチン抗体を利用してビオチン-標識されたナノ-GOs又はGQDsを処理した後、CD4
+Th1細胞を免疫染色した(
図12A及び
図13A)。ビオチン-標識されたナノ-GOs及びGQDsは、T細胞内で検出された。これは、物質が細胞内に内在化され得ることを示すものである。免疫細胞の増殖に対するグラフェンナノ構造体の効果を確認するために、hUCB-由来MNCs及びCD4
+T細胞をナノ-GOs又はGQDsで処理した後、培養した(それぞれ、
図12B、C及び
図13B、C)。グラフェンナノ構造体は、MNCs及びCD4
+T細胞の増殖を効果的に抑制した。グラフェンナノ構造体のTh1抑制特性は、クローン病モデルで治療効果を示す主な機序でありうる。annexin V分析は、ナノ-GOs及びGQDsが細胞死滅経路に影響を与えないことを示した(
図12D及び
図13D)。しかしながら、ナノ-GOs及びGQDsは、細胞周期でG1期を多少増加させ、これは、細胞周期の進行を抑制することを示す(
図12E及び
図13E)。グラフェンナノ構造体のTh1細胞に対する特異的な効果を確認するために、hUCBからCD4
+T細胞を精製し、ナノ-GOs又はGQDsの存在下にTh1タイプに分化させた(
図12F及び
図13F)。その結果、ナノ-GOs及びGQDsは、いずれもTh1分化を顕著に抑制した。Th1偏向した条件で培養されたCD4
+T細胞でTh1特異的遺伝子発現を分析した(
図12G及び
図13G)。ナノ-GOs/GQDs-処理されたCD4
+T細胞は、顕著に抑制されたTh1遺伝子発現を示した。ナノ-GOs/GQDs-処理されたTh1細胞で機能的変化を分析するために、細胞培養上澄み液に分泌されたサイトカインの濃度を測定した(
図12H及び
図13H)。ナノ-GOs/GQDs-処理された細胞でIFNγ、TNF及びIL-2の分泌は顕著に減少した。一方、ナノ-GOs/GQDs-処理されたTh1細胞でIL-6、IL-4及びIL-10の水準は増加した。このような結果は、グラフェンナノ構造体がTh1反応の抑制及び調節T細胞活性の促進により大腸炎を緩和させることを示すものである。
【0086】
実施例5.グラフェンナノ構造体による生体内調節T細胞浸潤増加
本発明者らは、先行研究を通じて実験的大腸炎の回復が調節T細胞の拡張及び浸潤を伴うことを確認したことがあった。これより、本発明者は、グラフェンナノ構造体の投与がTreg細胞の局所化に影響を与えるかを流動細胞分析法で確認した。具体的に、ナノ-GOs又はGQDsの投与は、CD4
+CD25
+FoxP3
+Treg細胞の結腸浸潤(colonic infiltration)及び脾臓偏向化(splenic polarization)を増加させた(
図14A及び
図15A)。ナノ-GOs又はGQDs処理されたマウスでTreg細胞の増加した結腸浸潤を免疫組織化学(immunohistochemistry)でも確認した(
図14及び
図15)。次に、Treg密度(population)の主な誘導体及び生成物であり、Treg-媒介大腸炎の緩和で重要な役割をする、IL-10及びTGF-β1の発現を決定した。IL-10発現水準は、ナノ-GOs処理されたマウスの結腸で顕著に増加した。また、グラフェンナノ構造体が直接的にTreg細胞の偏向化に影響を与えるかを確認するために、ナノ-GOs又はGQDsの存在下に純粋なCD4
+細胞を調節T細胞系統(lineage)で誘導した。その結果、ナノ-GOs及びGQDsは、Treg偏向化に対する増加効果を有しなく、かえって干渉した。
【0087】
総合的に、前記の結果は、グラフェンナノ構造体が生体内で調節T細胞の数及びこれと関連したサイトカインを増加させ、これは、Treg偏向化に対する直接的な効果により媒介されないことを示すものである。
【0088】
実施例6.グラフェンナノ構造体による免疫反応中にM1大食細胞のM2タイプへの転換
実施例6-1.ナノ-GOsによる免疫反応中にM1大食細胞のM2タイプへの転換
腸大食細胞(intestinal macrophages)の免疫寛容性(tolerogenic)及び保護的な免疫反応の間の不均衡により結腸炎症が発生し得、これは、Treg細胞及びその分泌性サイトカインを募集する役割をする、選択的に活性化した(alternatively activated)M2類型大食細胞により改善され得る。これにより、ナノ-GOsの処理が大食細胞の細胞運命の決定に影響を及ぼすかを確認した。ナノ粒子の内在化(internalization)がビオチン化された炭素ナノ構造体及び免疫組織化学により確認された(
図16A)。ナノ-GOs処理時に、マウス大食細胞細胞株であるRaw264.7細胞の増殖は増加し、拡大した細胞形態が観察された(
図18A)。Raw264.7細胞と同様に、一次的に分離された(primarily isolated)CD14
+細胞も、ナノ-GOsと共にM0及びM2類型細胞に培養されたとき、増加した増殖を示した。反面、ナノ-GOsはM1類型細胞には、いかなる有効な変化も示さなかった(
図16B及び
図18B)。
【0089】
大食細胞類型-特異的偏向化に対するナノ-GOsの効果を流動細胞分析法を利用した細胞表面マーカー分析を通じて確認した。前記グラフェンナノ構造体は、いずれも純粋なCD14
+細胞を他の追加されるサイトカインなしに大食細胞の前炎症性類型(classical type)に誘導する傾向を示した。M2-類型大食細胞と関連して、ナノ-GOs処理は、CD14
+CD86
+細胞及びCD14
+CD206
+細胞すべての増加を誘導した。CD14
+細胞上でCD206表面マーカーの発現は、免疫組織化学により確認された(
図16D)。このような結果は、ナノ-GOsが前炎症性に活性化した大食細胞のM1-類似特性を下向き調節し、M2類型を転換することによって、炎症解消(inflammatory resolution)に役割をすることを示すものである。
【0090】
実施例6-2.GQDsによる免疫反応中にM1大食細胞のM2タイプへの転換
GQDsの処理が大食細胞の細胞運命の決定に影響を及ぼすかを確認した。ナノ粒子の内在化がビオチン化された炭素ナノ構造体及び免疫組織化学により確認された(
図17A)。一次的に分離されたCD14
+細胞は、GQDsと共にM0類型細胞に培養されたとき、増加した増殖を示す反面、M1及びM2類型細胞には、いかなる有効な変化も示さなかった(
図17B)。
【0091】
大食細胞類型-特異的偏向化に対するGQDsの効果を流動細胞分析法を利用した細胞表面マーカー分析を通じて確認した。GQD処理が前炎症性に活性化したM1類型の大食細胞を抗-炎症性M2亜類型に転換することを確認するために、追加に他のM2類型特異的特性の発現を確認した。その結果、ヘモグロビンスカベンジャー受容体(hemoglobin scavenger receptor)CD163の発現は、GQDs存在時に増加した(
図19A及び
図19C)。代表的な前炎症性サイトカインであるTNFの分泌水準は多少減少したが、IL-6水準には、いかなる有意的な変化も現れなかった(
図19B)。ひいては、GQDs処理は、IL-12、IL-23、TNFα及びM1類型特異的転写因子であるIRF5のmRNA発現を抑制した。一方、GQDs処理は、CLEC7A及びIL-1raの発現を維持又は多少増加させる傾向があった(
図19C)。
【0092】
このような結果は、GQDsが前炎症性に活性化した大食細胞のM1-類似特性を下向き調節し、M2類型を転換することによって、炎症解消に役割をすることを示すものである。
【0093】
実施例7.ナノ-GOsにより誘導された大概に活性化した大食細胞のうち主な亜類型であるM2b
ナノ-GOs処理が古典的に活性化したM1類型大食細胞を抗-炎症性M2亜類型(subtypes)に転換することを確認するために、追加に他のM2類型特異的特性の発現を確認した。ヘモグロビンスカベンジャー受容体CD163の発現は、ナノ-GOsの存在時に増加した(
図20A及び20C)。代表的な前炎症性サイトカインであるTNF及びIFN-γの分泌水準は、顕著に減少したが、IL-6水準には、いかなる有意的な変化も現れなかった(
図20B)。ひいては、ナノ-GOs処理は、IL-12、IL-23、TNFα及びM1類型特異的転写因子であるIRF5のmRNA発現を抑制した。反面、M2大食細胞の最も重要なマーカーであるIL-10の水準は増加した。しかしながら、ナノ-GOs処理は、CLEC7A及びIL-1raの発現を向上させなく、かえって阻害した(
図20C)。
【0094】
M2大食細胞は、免疫体系で明確な役割を有する三つ又はそれ以上の亜類型に区分され得る。IL-10の分泌は増加した反面、M2aマーカーであるCLEC7A及びIL-1raは減少したところ、これに基づいてナノ-GOsが他のM2亜類型細胞を上向き調節することを仮定した。これを立証するために、M2a、M2b及びM2c大食細胞を誘導し、グラフェンナノ構造体の役割を確認した。以前の結果に示されたように、M2a大食細胞のCD163及びCD206発現は、ナノ-GOs存在時に顕著に減少した(
図20D及び
図21A)。また、マーカー遺伝子CLEC7A及びIL-1ra、転写因子IRF4の発現は減少した(
図21B)。M2c亜類型と関連して、何らの目につくほど変化も現れなかった。M2b亜類型大食細胞の比率は、ナノ-GOs処理により増加した(
図20D及び
図21A)。また、ナノ-GOs処理されたM2b大食細胞は、莫大な量のTNF及びIL-6を分泌し、より多くのIL-1β及びIL-10を発現した(
図20E及び
図20F)。このような結果は、ナノ-GOsが、M2aやM2cでなく、M2b大食細胞を上向き調節することによって、炎症性反応を弱化させることができることを示すものである。
【0095】
<結論>
本発明では、ナノサイズのグラフェン誘導体、すなわちグラフェンナノ構造体の実験的大腸炎に対する保護効果及びその作用機序を分析した。
【0096】
本発明者らは、先天性免疫細胞と適応免疫細胞に対するグラフェンナノ構造体の総合的な影響を識別するために一連の試験管内実験を行った。ナノ-GOs又はGQDsは、一次的に分離したTh1細胞及びCD14+大食細胞類似細胞により多量摂取された。前炎症性サイトカイン、特に、IL-2、IL-12、IFN-γ及び転写因子T-betが1型ヘルパーT細胞の作用(commitment)に重要な役割をするものと知られている。反面、Th2及びTregに対する代表的なサイトカインであるIL-4とIL-10、ひいては前炎症性サイトカインであるIL-6は、Th1発達阻害を媒介した。グラフェンナノ構造体は、免疫性環境(immunogenic milieu)を調節するのに効果を示し、これは、サイトカイン生成と確認された。また、GQDsが類似にCD4+T細胞の増殖を抑制するが、Th1細胞の発達には相異に影響を及ぼすことを糾明した。
【0097】
調節T細胞は、過度な炎症から組織を保護し、活性化した免疫細胞を抑制することによって組織の治癒過程を助ける。IL-10及びTGF-β1は、Tregの発達、拡張及び特異的役割に関与された。本発明では、細胞の運命に直接的に影響を与えないにも関わらず、ナノ-GOsの投与がIL-10及びTGF-β1の増加した生成を通じて調節T細胞の結腸及び脾臓浸潤(colonic and splenic infiltration)を向上させることを確認し、GQDsの投与がT細胞の結腸浸潤を向上させることを確認した。
【0098】
大食細胞は、特異的な可塑性(distinctive plasticity)を示し、環境的刺激によってその性質を調節する。腸大食細胞は、免疫寛容(immune tolerance)の主な調節子(regulator)として腸(gut)の恒常性を調節し、調節T細胞の機能性を維持することによって、過度な免疫反応に対して組織を保護する。また、代わりに(alternatively)活性化したM2大食細胞も、組織復旧及びTh2反応に重要な役割をする。これにより、M0、M1及びM2状態の細胞にナノ粒子を処理することによって、グラフェンナノ構造体が大食細胞の偏向化にどのような影響を及ぼすかを確認した。
【0099】
結果として、ナノ-GOs及びGQDがM0細胞を活性化してM1類型細胞に偏向化し、M2類型細胞を抑制することを確認した。また、ナノ-GOs-処理又はGQDs-処理が、M1からM2大食細胞への転換を誘導することによって、潜在的免疫抑制性薬物でありうることを確認した。
【0100】
炎症反応中に結腸Treg及びM2類型大食細胞の浸潤が増加することを考慮する時、本願のグラフェンナノ構造体がIL-10及びTGF-β1信号伝達(signaling)を通じてTreg及び腸大食細胞の調節ループを形成するのに重要な役割をすることが分かる。
【0101】
M2大食細胞は、遺伝子プロファイル及び多様なサイトカイン生産により媒介される区別される機能などの多様な細胞的特性を有する、少なくとも3種類以上の亜類型に分類される。そのうちM2a及びM2bは、免疫調節活性(immunoregulatory activities)を示し、Th2反応を誘導し、M2cは、免疫抑制能(immunosuppressive capacity)と組織-リモデリングに関与する。これらの大食細胞の亜類型とグラフェン誘導体の間の相互作用は、まだ明らかにされていない。本発明では、M1誘導中に、M1類似特性が減少する反面、M2類型細胞を誘導するIL-6水準は変化しなかった。また、IL-10のような代表的なM2関連因子(related factors)は、ナノ-GOs存在時に顕著に増加した。M2a関連遺伝子であるCLEC7A及びIL-1Raは、細胞マーカーの発現が減少するにつれて下向き調節され、M2c細胞は、いかなる有効な変化も示さなかった。かえって、M2b亜類型細胞及びその関連生成物の比率は、ナノ-GOs処理に反応して増加した。このような結果は、ナノ-GOsがTLR媒介信号伝達の増加に関与することを示すものであり、したがって、M2類型細胞のうち、M2b大食細胞は、本願のグラフェンナノ構造体により直接的に影響を受け、炎症状態下の結腸でTregの移動に関与した。
【0102】
結論的に、本発明では、ナノサイズのグラフェン誘導体、具体的に、ナノサイズの酸化グラフェン(ナノ-GOs)及びGQDsが1型ヘルパーT細胞を抑制すると同時に、腸大食細胞と調節T細胞の間の調節ループ(regulatory loop)を活性化することによって、実験的大腸炎に対する保護効果を有することを確認した。ひいては、このような治療的効果は、ナノ粒子サイズ及び形態によって変化しうることを確認した。