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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】車両の給油管取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20220106BHJP
   B60R 16/06 20060101ALI20220106BHJP
   B60R 16/08 20060101ALI20220106BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220106BHJP
   F16L 3/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60K15/04 D
B60R16/06 Z
B60R16/08 L
F02M37/00 301M
F16L3/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017209329
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019081433
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】高村 秀治
(72)【発明者】
【氏名】家敷 敏光
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 博之
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-127676(JP,A)
【文献】特開2011-169384(JP,A)
【文献】特開2017-061262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04,
B60R 16/02,16/06-16/08,
F02M 37/00,
F16L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に非導電性の塗装が施された円筒状の金属製燃料給油管を車体に固定具を用いて取り付ける車両の給油管取付構造であって、
上記固定具は、上記車体側に接地される金属製の第1把持体と、
上記燃料給油管を上記第1把持体と径方向から挟んで把持する金属製の第2把持体と、
上記第1把持体と上記燃料給油管との間に圧縮した状態で配設され、圧縮方向に貫通する貫通孔が設けられた弾性体とを備え、
上記燃料給油管表面の上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第1非塗装部が上記弾性体に覆われるように設けられ、
上記第1把持体表面の少なくとも上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第2非塗装部が設けられ、
該第2非塗装部は、上記第1把持体及び上記第2把持体が上記燃料給油管を把持した際、上記貫通孔を介して直接的に上記第1非塗装部に圧接するよう構成されていることを特徴とする車両の給油管取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の給油管取付構造において、
上記第1把持体には、上記燃料給油管側に張り出す張出部が形成され、
当該張出部の先端面には、上記第2非塗装部が形成されていることを特徴とする車両の給油管取付構造。
【請求項3】
表面に非導電性の塗装が施された円筒状の金属製燃料給油管を車体に固定具を用いて取り付ける車両の給油管取付構造であって、
上記固定具は、上記車体側に接地される金属製の第1把持体と、
上記燃料給油管を上記第1把持体と径方向から挟んで把持する金属製の第2把持体と、
上記第1把持体と上記燃料給油管との間に圧縮した状態で配設されるとともに、導電可能部が設けられた弾性体とを備え、
上記燃料給油管表面の上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第1非塗装部が上記弾性体に覆われるように設けられ、
上記第1把持体表面の少なくとも上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第2非塗装部が設けられ、
該第2非塗装部は、上記第1把持体及び上記第2把持体が上記燃料給油管を把持した際、上記導電可能部を介して間接的に上記第1非塗装部に圧接するよう構成され、
上記第1把持体には、上記燃料給油管側に張り出す張出部が形成され、
当該張出部の先端面には、上記第2非塗装部が形成されていることを特徴とする車両の給油管取付構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両の給油管取付構造において、
上記第1把持体の上記弾性体に対応する位置には、当該弾性体が嵌合可能な嵌合凹部が形成され、
上記第2非塗装部は、上記嵌合凹部に形成されていることを特徴とする車両の給油管取付構造。
【請求項5】
請求項に記載の車両の給油管取付構造において、
上記嵌合凹部の開口周縁には、上記第1把持体及び上記第2把持体が上記燃料給油管を把持した際に上記燃料給油管に圧接する環状把持部が設けられていることを特徴とする車両の給油管取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の給油管取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の燃料給油管は、表面に防錆塗装を施して錆対策を行うだけでなく、その内部に流れる燃料の流動によって帯電するおそれがあるので、火花放電による燃料への引火を防ぐための接地箇所を設けるのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている燃料給油管は、表面に防錆塗装が施されていて、その中途部における一部表面には、塗装の施されていない非塗装部が設けられている。燃料給油管表面の非塗装部に対応する部分には、カーボンを含有する導電性のチューブが密着するように巻き付けられている。そして、導電性を有する2つのブラケットで燃料給油管におけるチューブが巻き付けられた部分を挟んで把持するとともに、アース用固定ボルトによって両ブラケットを車体に固定することにより、非塗装部、導電性チューブ及び各ブラケットを介して燃料給油管を車体に接地させて帯電させないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-127676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の燃料給油管は、生産時及び車体に組み付ける際、表面に防錆塗装が施された燃料給油管にチューブを非塗装部に対応するように外装した後、ドライヤー装置等を用いてチューブに対して温風を吹き付けてチューブを熱収縮させることによって非塗装部を覆うように燃料給油管に密着させ、その後、各ブラケット及びアース用固定ボルトを用いて燃料給油管を車体に取り付けるといった手順を踏まなければならない。したがって、塗装工程及び取付工程の他に熱収縮工程が必要となり、作業工程が増えて生産性が低下するとともにコストが嵩んでしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料給油管の帯電を防止できるとともに、生産性が良く、しかも、低コストな車両の給油管取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、燃料給油管を車体に固定する固定具と燃料給油管との間に燃料給油管の非塗装部を覆うように弾性体を介在させるとともに、固定具と燃料給油管との間で導電可能となるような工夫を弾性体に設けたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、表面に非導電性の塗装が施された円筒状の金属製燃料給油管を車体に固定具を用いて取り付ける車両の給油管取付構造において、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上記固定具は、上記車体側に接地される金属製の第1把持体と、上記燃料給油管を上記第1把持体と径方向から挟んで把持する金属製の第2把持体と、上記第1把持体と上記燃料給油管との間に圧縮した状態で配設され、圧縮方向に貫通する貫通孔が設けられた弾性体とを備え、上記燃料給油管表面の上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第1非塗装部が上記弾性体に覆われるように設けられ、上記第1把持体表面の少なくとも上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第2非塗装部が設けられ、該第2非塗装部は、上記第1把持体及び上記第2把持体が上記燃料給油管を把持した際、上記貫通孔を介して直接的に上記第1非塗装部に圧接するよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記第1把持体には、上記燃料給油管側に張り出す張出部が形成され、当該張出部の先端面には、上記第2非塗装部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、表面に非導電性の塗装が施された円筒状の金属製燃料給油管を車体に固定具を用いて取り付ける車両の給油管取付構造であって、上記固定具は、上記車体側に接地される金属製の第1把持体と、上記燃料給油管を上記第1把持体と径方向から挟んで把持する金属製の第2把持体と、上記第1把持体と上記燃料給油管との間に圧縮した状態で配設されるとともに、導電可能部が設けられた弾性体とを備え、上記燃料給油管表面の上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第1非塗装部が上記弾性体に覆われるように設けられ、上記第1把持体表面の少なくとも上記弾性体に対応する位置には、塗装の施されていない第2非塗装部が設けられ、該第2非塗装部は、上記第1把持体及び上記第2把持体が上記燃料給油管を把持した際、上記導電可能部を介して間接的に上記第1非塗装部に圧接するよう構成され、上記第1把持体には、上記燃料給油管側に張り出す張出部が形成され、当該張出部の先端面には、上記第2非塗装部が形成されていることを特徴とする。
の発明では、第1からいずれか1つの発明において、上記第1把持体の上記弾性体に対応する位置には、当該弾性体が嵌合可能な嵌合凹部が形成され、上記第2非塗装部は、上記嵌合凹部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
の発明では、第の発明において、上記嵌合凹部の開口周縁には、上記第1把持体及び上記第2把持体が上記燃料給油管を把持した際に上記燃料給油管に圧接する環状把持部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、燃料給油管がその表面に形成された第1非塗装部と第1把持体の第2
非塗装部とによって弾性体を介さずに直接的に車体に接地されているので、帯電による引火を確実に防ぐことができる。また、燃料給油管の表面における第1非塗装部の外周部分はその周方向に亘って弾性体が密着しており、第1非塗装部に水などの腐食性媒体が付着しないので、燃料給油管が防錆塗装のない第1非塗装部を起因として錆びるのを確実に防ぐことができる。さらに、第1及び第2把持体で燃料給油管を把持する組立作業を行う際、第1把持体と燃料給油管との間に弾性体を挟み込むだけでよく、特許文献1の熱収縮工程の如き作業工程を増やす必要が無いので、生産性が良くて低コストな車両への給油管取付構造にできる。
【0014】
第2の発明では、第1及び第2把持体で燃料給油管を把持したときに、第1非塗装部と第2非塗装部との間の接触圧が高くなる。したがって、もし仮に燃料給油管が帯電したとしても、静電気を確実に車体側へ流すことができる。
【0015】
の発明では、第1及び第2把持体で燃料給油管を把持する際、弾性体が嵌合凹部に嵌合するので、第1把持体に対する弾性体の位置がずれなくなる。したがって、燃料給油管と第1把持体との間に弾性体を挟み込むのが簡単になり、車体への燃料給油管の取付作業にかかる時間を短くすることができる。
【0016】
の発明では、第1及び第2把持体で燃料給油管を把持したときの燃料給油管と第1把持体との間の接触面積が狭くなる。したがって、第1及び第2把持体による燃料給油管を把持する把持力が強くなって燃料給油管を車体にしっかりと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1における給油管取付構造が適用された車両の燃料給油管周りを示す斜視図である。
図2図1の取付構造部分を拡大した図である。
図3】本発明の実施形態1における給油管取付構造の分解斜視図である。
図4図2のIV-IV線における断面図である。
図5図2のV-V線における断面図である。
図6】本発明の実施形態2における図4相当図である。
図7】本発明の実施形態2における図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0019】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る給油管取付構造が適用された車両の燃料給油管1周りを示す。該燃料給油管1は、一端に給油口1aを有する一方、他端が車両の燃料タンク(図示せず)に接続されていて、給油口1aに注がれたガソリンや軽油等の燃料を燃料タンクまで案内するようになっている。
【0020】
燃料給油管1は、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性になっているが、図3に示すように、中途部に一か所だけ円形状の第1非塗装部1bが形成されている。
【0021】
燃料給油管1の側方には、図1に示すように、一端が燃料給油管1の給油口1a寄りの位置に接続される一方、他端が燃料タンク(図示せず)に接続された細長い円筒状をなすブリーザ管2が並設されている。
【0022】
該ブリーザ管2は、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性になっており、燃料給油管1を用いて燃料を燃料タンクに給油する際において、気化した燃料を含む空気を燃料タンクから燃料給油管1の給油口1a側に抜くようになっている。
【0023】
燃料給油管1は、図2乃至図4に示すように、固定具3を用いて車体10の所定位置に取り付けられるようになっている。
【0024】
固定具3は、燃料給油管1及びブリーザ管2を把持する把持具4と、該把持具4を車体10に固定する金属性の固定ボルト5と、中央に貫通孔6aが形成された厚みを有する円板状のゴム部材6(弾性体)とを備え、該ゴム部材6は、その厚み方向に圧縮可能になっている。
【0025】
すなわち、ゴム部材6の貫通孔6aは、その圧縮方向に貫通形成されている。
【0026】
把持具4は、燃料給油管1の径方向で、且つ、燃料給油管1及びブリーザ管2の並設方向と直交する方向に対向配置されたブラケット7(第1把持体)及びカバーパネル8(第2把持体)を備えている。
【0027】
ブラケット7は、帯状の金属プレートをプレス成形することにより得たものであり、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性となっている。
【0028】
ブラケット7の長手方向一端中央には、図4に示すように、カバーパネル8の反対側に折り曲げて形成された断面略L字状の係合爪71が設けられている
ブラケット7の長手方向一端側における係合爪71に連続する部分には、カバーパネル8の反対側に窪むように湾曲する第1把持部72が形成され、該第1把持部72は、燃料給油管1の外周面に対応する形状をなしている。
【0029】
第1把持部72には、図4及び図5に示すように、カバーパネル8の反対側に窪む嵌合凹部72aが形成され、該嵌合凹部72aの底面は略矩形状をなしている。
【0030】
嵌合凹部72aの底面中央には、燃料給油管1側に略半球状に張り出す張出部72bが形成され、該張出部72bの先端面には、塗装が施されずに金属部分が剥き出しとなった第2非塗装部72cが形成されている。
【0031】
そして、嵌合凹部72aには、張出部72bを貫通孔6aに対応させた状態でゴム部材6を嵌合可能になっている。すなわち、嵌合凹部72aは、ブラケット7におけるゴム部材6に対応する位置に形成されていて、第2非塗装部72cは、嵌合凹部72aに形成されている。
【0032】
また、ブラケット7における嵌合凹部72aの開口周縁は、矩形枠状をなす環状把持部72dを構成しており、該環状把持部72dは、ブラケット7を燃料給油管1に近づけると、その外周面に接するようになっている。
【0033】
ブラケット7の中途部における第1把持部72に連続する部分には、図3及び図4に示すように、ブラケット7の長手方向に延びる長孔73が形成され、ブラケット7におけるカバーパネル8の反対側には、座金付きの取付ナット9aが長孔73に対応するように溶着されている。
【0034】
また、ブラケット7の長手方向他端側には、カバーパネル8の反対側に窪むように湾曲する第2把持部74が形成され、該第2把持部74は、ブリーザ管2の外周面に対応する形状をなしている。
【0035】
カバーパネル8は、図2及び図3に示すように、ブラケット7側に開放する断面が幅広な略U字状をなすプレス部品であり、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性になっている。
【0036】
カバーパネル8は、燃料給油管1及びブリーザ管2の並設方向に対向する一対の立壁部81と、該両立壁部81の一方の縁部同士を繋ぐ略矩形板状のカバー部82とを備えている。
【0037】
立壁部81の他方の各縁部には、互いに離れる方向に突出し、且つ、燃料給油管1に沿って延びるフランジ部83がそれぞれ形成され、該各フランジ部83には、カバーパネル8を車体10に取り付けるための取付孔83aが形成されている。
【0038】
また、一方の立壁部81には、図4に示すように、ブラケット7の係合爪71が係合可能な係合孔81aが形成されている。
【0039】
カバー部82における燃料給油管1の延長方向一側中央には、図2乃至図4に示すように、ブラケット7側に窪む凹陥部84が形成されている。
【0040】
該凹陥部84の底面には、平坦部84aが形成され、該平坦部84aの中央には、ボルト差込孔84bが形成されている。
【0041】
平坦部84aにおけるブラケット7の反対側のボルト差込孔84b周縁には、図3及び図4に示すように、塗装が施されていない第3非塗装部84cが形成され、ボルト差込孔84bに取付ボルト9bをブラケット7の反対側から挿通させると、取付ボルト9bの頭部が第3非塗装部84cに接触するようになっている。
【0042】
カバー部82における一方の立壁部81と凹陥部84との間には、図3に示すように、ブラケット7の反対側に窪むように湾曲する第3把持部85が形成され、該第3把持部85は、燃料給油管1の外周面に対応する形状をなしている。
【0043】
一方、カバー部82における他方の立壁部81と凹陥部84との間には、ブラケット7の反対側に窪むように湾曲する第4把持部86が形成され、該第4把持部86は、ブリーザ管2の外周面に対応する形状をなしている。
【0044】
そして、把持具4は、図4に示すように、ブラケット7の嵌合凹部72aにゴム部材6を嵌合させた状態において、ブラケット7の第1把持部72とカバーパネル8の第3把持部85との間に燃料給油管1を配置するとともに、ブラケット7の第2把持部74と第4把持部86との間にブリーザ管2を配置し、且つ、係合爪71を係合孔81aに係合させるとともにブラケット7とカバーパネル8とを互いに接近させてブラケット7とカバーパネル8とで燃料給油管1及びブリーザ管2を各々の径方向から挟んで把持するようになっている。
【0045】
ブラケット7とカバーパネル8とで燃料給油管1及びブリーザ管2を把持した状態で取付ボルト9bをボルト差込孔84b及び長孔73に順に通過させるとともに取付ナット9aに螺合させると、ブラケット7及びカバーパネル8によって燃料給油管1及びブリーザ管2を把持する状態が維持されるようになっている。そして、燃料給油管1の第1非塗装部1bとブラケット7の第2非塗装部72cとがゴム部材6に対応する位置となり、ゴム部材6はブラケット7と燃料給油管1との間に圧縮した状態で配設されていて、第1非塗装部1bを覆うとともに第2非塗装部72cを覆うようになっている。
【0046】
このとき、ブラケット7は、取付ナット9aのブラケット7への溶着部分、取付ナット9aに螺合する取付ボルト9b、取付ボルト9bが接触するカバーパネル8の第3非塗装部84c、及び、固定ボルト5によって車体10側に接地されるようになっている。
【0047】
また、ブラケット7及びカバーパネル8が燃料給油管1を把持した際、張出部72bが貫通孔6aを通過した状態になって第2非塗装部72cが第1非塗装部1bに圧接するようになっている。つまり、第2非塗装部72cは、貫通孔6aを介して直接的に第1非塗装部1bに圧接するよう構成されている。
【0048】
さらに、ブラケット7及びカバーパネル8が燃料給油管1を把持した際、環状把持部72dが燃料給油管1の外周面に圧接するようになっている。
【0049】
以上より、本発明の実施形態1によると、燃料給油管1がその表面に形成された第1非塗装部1bとブラケット7の第2非塗装部72cとによってゴム部材6を介さずに直接的に車体10に接地されているので、帯電による引火を確実に防ぐことができる。また、燃料給油管1の表面における第1非塗装部1bの外周部分はその周方向に亘ってゴム部材6が密着しており、第1非塗装部1bに水などの腐食性媒体が付着しないので、燃料給油管1が防錆塗装のない第1非塗装部1bを起因として錆びるのを確実に防ぐことができる。さらに、ブラケット7及びカバーパネル8で燃料給油管1を把持する組立作業を行う際、ブラケット7と燃料給油管1との間にゴム部材6を挟み込むだけでよく、特許文献1の熱収縮工程の如き作業工程を増やす必要が無いので、生産性が良くて低コストな車両への給油管取付構造にできる。
【0050】
また、ブラケット7における燃料給油管1に接触する部分には、燃料給油管1側に張り出す張出部72bが形成されているので、ブラケット7及びカバーパネル8で燃料給油管1を把持したときに、第1非塗装部1bと第2非塗装部72cとの間の接触圧が高くなる。したがって、もし仮に燃料給油管1が帯電したとしても、静電気を確実に車体10側へ流すことができる。
【0051】
さらに、ブラケット7及びカバーパネル8で燃料給油管1を把持する際、ゴム部材6がブラケット7の嵌合凹部72aに嵌合するので、ブラケット7に対するゴム部材6の位置がずれなくなる。したがって、燃料給油管1とブラケット7との間にゴム部材6を挟み込むのが簡単になり、車体10への燃料給油管1の取付作業にかかる時間を短くすることができる。
【0052】
それに加えて、ブラケット7における嵌合凹部72aの周縁には、環状把持部72dが設けられているので、ブラケット7及びカバーパネル8で燃料給油管1を把持したときの燃料給油管1とブラケット7との間の接触面積が狭くなる。したがって、ブラケット7及びカバーパネル8による燃料給油管1を把持する把持力が強くなって燃料給油管1を車体10にしっかりと固定することができる。
【0053】
《発明の実施形態2》
図6及び図7は、本発明の実施形態2を示す。この実施形態2では、ゴム部材6の構造とブラケット7における張出部72bの一部構造とが実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0054】
実施形態2の張出部72bは、実施形態1の張出部72bに比べてカバーパネル8側に張り出す量が少なくなっており、ブラケット7及びカバーパネル8で燃料給油管1を把持したときに第1非塗装部1bと第2非塗装部72cとの間に隙間S1が形成されるようになっている。
【0055】
一方、実施形態2のゴム部材6は、導電性ゴムからなり、実施形態1の如き貫通孔6aが形成されていない。そして、ゴム部材6は、ブラケット7及びカバーパネル8で燃料給油管1を把持したときに第1非塗装部1bと第2非塗装部72cとの間において他の部分よりも圧縮されるようになっていて、当該圧縮部分が本発明の導電可能部6bを構成している。
【0056】
つまり、実施形態2の第2非塗装部72cは、ブラケット7及びカバーパネル8が燃料給油管1を把持した際、導電可能部6bを介して間接的に第1非塗装部1bに圧接するよう構成されている。
【0057】
以上より、本発明の実施形態2における給油管取付構造では、錆の発生の防止、生産性の向上及び低コスト化を実施形態1と同様に実現できるとともに、燃料給油管1がその表面に形成された第1非塗装部1bとブラケット7の第2非塗装部72cとによってゴム部材6を介して間接的に車体に接地されているので、帯電による引火を確実に防ぐことができる。
【0058】
尚、本発明の実施形態2では、嵌合凹部72aに張出部72bを設けているが、ゴム部材6を全体的に圧縮させて第1非塗装部1bと第2非塗装部72cとに接するようにしていれば張出部72bを設けるのは必須ではない。
【0059】
また、本発明の実施形態1,2では、ブラケット7の第2非塗装部72c以外の領域に非導電性の塗装が施されているが、ブラケット7の第2非塗装部72c以外の領域に非導電性の塗装を施すことは必須ではない。
【0060】
また、本発明の実施形態1,2では、嵌合凹部72aの底面が矩形状をなしているが、ゴム部材6の外形に対応するように円形状をなすようにしてもよい。
【0061】
また、本発明の実施形態1,2では、ゴム部材6が円板状をなしているが、これに限らず、例えば、矩形枠状をなす形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両の給油管取付構造に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料給油管
1b 第1非塗装部
3 固定具
6 ゴム部材(弾性体)
6a 貫通孔
6b 導電可能部
7 ブラケット(第1把持体)
8 カバーパネル(第2把持体)
10 車体
72a 嵌合凹部
72b 張出部
72c 第2非塗装部
72d 環状把持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7