(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】太陽電池コンバータシステム、電源モジュールの結合方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20220106BHJP
G05F 1/67 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H02M3/07
G05F1/67 A
(21)【出願番号】P 2018020127
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(73)【特許権者】
【識別番号】500352258
【氏名又は名称】ウインテスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 将年
(72)【発明者】
【氏名】奈良 彰治
(72)【発明者】
【氏名】樋口 真康
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0310128(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0289337(US,A1)
【文献】特表2014-524228(JP,A)
【文献】特開2014-157996(JP,A)
【文献】特許第3858893(JP,B2)
【文献】Yuanmao Ye他,Topology, Modeling, and Design of Switched-Capacitor-Based Cell Balancing Systems and Their Balancing Exploration,IEEE Transactions on Power Electronics,32巻、6号,IEEE,2017年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/07
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池モジュールが直列接続され、前記太陽電池モジュールの各々に対応して設けられ一端が前記太陽電池モジュールの両端の間にそれぞれスイッチ素子を介して接続された複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサの他端が接続される共通ラインと、が用いられ、前記スイッチ素子のオン・オフが繰り返し制御されることによってスイッチトキャパシタ型の動作を行う太陽電池コンバータシステムであって、
複数の前記太陽電池モジュールは、連続する複数の前記太陽電池モジュール毎に複数のグループに区分され、
単一のグループ内における複数の前記太陽電池モジュールと、当該太陽電池モジュールに対応した前記コンデンサ及び前記スイッチ素子と、当該コンデンサの他端が接続される前記共通ラインとを具備する太陽電池コンバータユニットが前記グループ毎に形成され、
隣接する2つの前記太陽電池コンバータユニットは、
相対する側において、隣接する前記太陽電池モジュールの端子同士を接続させ、かつ各々における前記共通ラインを容量結合する接続回路を介して結合されたことを特徴とする太陽電池コンバータシステム。
【請求項2】
前記接続回路は、隣接する2つの前記共通ラインの間に介在される直列接続された2つの結合コンデンサと、隣接する前記太陽電池モジュールの端子同士を接続したノードと2つの前記結合コンデンサの間のノードとを接続するインダクタ又は抵抗素子を具備することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池コンバータシステム。
【請求項3】
前記太陽電池コンバータユニットにおいて、
前記太陽電池モジュールが直列接続された構成のうちのノードの一つと、前記共通ラインとが抵抗素子又はインダクタで接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池コンバータシステム。
【請求項4】
複数の電源モジュールを直列接続し、前記電源モジュールの各々に対応して設けられ一端が前記電源モジュールの両端の間にそれぞれスイッチ素子を介して接続された複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサの他端が接続される共通ラインと、を用いて、前記スイッチ素子のオン・オフを繰り返し制御することによってスイッチトキャパシタ型の動作を行わせる電源モジュールの結合方法であって、
複数の前記電源モジュールを、連続する複数の前記電源モジュール毎に複数のグループに区分し、
単一のグループ内における複数の前記電源モジュールと、当該電源モジュールに対応した前記コンデンサ及び前記スイッチ素子と、当該コンデンサの他端が接続される前記共通ラインとを具備するコンバータユニットを形成し、
隣接する2つの前記コンバータユニットを、
相対する側において、隣接する前記電源モジュールの端子同士を接続させ、かつ各々における前記共通ラインを容量結合する接続回路を介して結合させることを特徴とする電源モジュールの結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの直列接続を用いて電力を発生させる太陽電池コンバータシステム、あるいはこれと同様に電源モジュールを結合させる際の電源モジュールの結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池によって発電を行う太陽電池コンバータシステムにおいては、高電圧を発生させるために、各々が独立して発電を行う複数の太陽電池モジュールが直列接続された構成(太陽電池ストリング)を具備する。発電のための実効的な面積を確保するために、実際には個々の太陽電池モジュールは2次元配列される。この際、全ての太陽電池モジュールが一様に太陽光で照射される場合には全体として大きな電力が得られるが、実際には、気象条件やその他の条件により、一部の太陽電池モジュールが影(部分影)になり、この太陽電池モジュールから出力が得られなくなる場合がある。
【0003】
太陽電池モジュールを単純に直列接続した場合には、他の太陽電池モジュールで十分な出力があっても、このように部分影となった太陽電池モジュールを介しては電流が流れないため、全体の出力が大きく低下する。例えば太陽電池モジュールと並列にバイパスダイオードを設けることによって、このように出力が得られない太陽電池モジュールをバイパスさせて電流を流すことができるため、他の太陽電池モジュールの出力を積算して得ることができる。
【0004】
しかしながら、実際には、部分影となった太陽電池モジュールにおいても、他の太陽電池モジュールと比べて小さいながらも一定の出力が得られる場合が多い。上記のように単純にバイパスダイオードを用いた場合には、こうした場合においては部分影となった太陽電池モジュールの出力を用いることが全くできず、発電能力を十分に生かすことができない。こうした点を改善することによって、部分影が生じた場合でも太陽電池コンバータ全体の出力をより高くし、その出力を安定化させることができる。
【0005】
こうした動作が可能な太陽電池コンバータシステムが提案されており、例えば、特許文献1には、こうした動作を複雑な制御を行うことなしに実現する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術においては、各種のDC-DCコンバータを用いることによって、部分影となり出力の低下した太陽電池モジュール側へ補償電流を供給することができるために、安定した出力が得られる。
【0006】
また、各太陽電池モジュールに対応させてコンデンサを設け、出力が低下した太陽電池モジュールが発生した場合に、このコンデンサからの放電電流をこの太陽電池モジュールに対して用いることによって、全体の出力の低下を抑制する構成も知られている。この場合、コンデンサは予め定められたデューティ比でスイッチング動作される。こうした構成は、スイッチトキャパシタ方式として知られており、例えば非特許文献1に記載されている。
図3(a)は、4つの太陽電池モジュール(PV1~PV4)を接続した場合において、このスイッチトキャパシタ方式を採用した太陽電池コンバータ91の構成を示す回路図である。コンデンサC1~C4の各々の左側端子(一端)は、ハイサイド側でスイッチ素子S1A~S4A、ローサイド側でスイッチ素子S1B~S4Bでスイッチングされることにより、太陽電池モジュールPV1~PV4の各々の両端子に切り替えて接続される。コンデンサC1~C4の各々の右側端子(他端)は共通ラインMに接続される。なお、
図3(a)において、各スイッチ素子の制御に関わる構成の記載は省略されている。
【0007】
この構成によって、動作時にコンデンサC1~C4の各々を充電させることができ、太陽電池モジュールPV1~PV4のいずれかの出力が低下した場合には、コンデンサC1~C4の放電電流を流すことができるために、全体としての出力の低下が軽減される。スイッチトキャパシタをこのように太陽電池コンバータシステムに用いる際の回路構成には、非特許文献1に記載のように複数の種類があるが、
図3(a)の回路構成は、構成要素が少なく構成が単純であり、直列接続される太陽電池モジュールの数が多い場合に特に好ましく用いることができる。
【0008】
実際に
図3(a)の回路構成の太陽電池コンバータシステム91を用いる場合において、これを安定に動作させるためには、共通ラインMの電位を安定化させることが好ましいが、
図3(a)の回路では共通ラインMにはコンデンサC1~C4のみが接続されているために、電位が安定しない。このため、実際には、
図3(b)に示される太陽電池コンバータ92のように、共通ラインMにおけるノードAが高抵抗の抵抗素子Rを介して太陽電池モジュールPV1~PV4の直列接続(太陽電池ストリング)中の一点となるノードBと接続される場合が多い。これによって、この回路を安定して動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】「Topology、Modeling、 and Design of Switched-Capacitor-Based Cell Balancing Systems and Their Balancing Exploration」、Yuanmao Ye、Ka Wai E Cheng、 Yat Chi Fong、 Xiangdang Xne、 and Jiongkang Lin、IEEE Transactions on Power Electronics vol.32、No.6 p.4444(2017年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図3(b)の回路構成において、コンデンサC1~C4の充電時にこれらに印加される最大電圧は、各々の位置に応じて定まる。コンデンサC1~C4の耐圧(種類、仕様)は、この最大電圧に応じて定められる。
【0012】
図3(b)の構成において、例えば太陽電池モジュールPV1~PV4の各々の最大出力電圧が40Vである場合には、最も下側のコンデンサC1の左側端子(スイッチ素子S1A、S1B側)の電位は、スイッチング動作のデューティ比を50%とした場合には、PV1の出力40Vの半分の20Vとなる。その上側のコンデンサC2の左側端子の電位は、PV2による上記と同様の20Vに加えて、下側のPV1の最大出力40Vが加わるため、60Vとなる。同様に、コンデンサC3、C4の左側端子の電位は、それぞれ100V、140Vとなる。
【0013】
一方、コンデンサC1~C4の右側端子の電位は共通ラインMの電位と等しく、この電位は前記の抵抗素子Rの存在によりノードBの電位と等しく、PV1、PV2の最大電圧の和となる80Vとなる。このため、コンデンサC1~C4に印加される最大電圧は、上記の左側端子と右側端子の電位差として、それぞれ60V、20V、20V、60Vとなる。すなわち、この最大電圧はコンデンサにより異なり、抵抗素子R(ノードB)から離れたコンデンサにおいて高くなる。
【0014】
図4は、
図3(b)の構成を拡張し、8つの太陽電池モジュールPV1~PV8とコンデンサC1~C8、スイッチ素子S1A~S8A、S1B~S8Bを用い、太陽電池モジュールPV1~PV8の中間点に抵抗素子Rを設置した太陽電池コンバータシステム93の構成を示す。この場合においては、コンデンサC1~C8に印加される最大電圧は、上記と同様の計算により、それぞれ140V、100V,60V、20V、20V、60V、100V、140Vとなる。すなわち、抵抗素子R(ノードB)から離れるに従ってこの最大電圧は大きくなり、最も最大電圧の小さなコンデンサC4、C5の最大電圧は
図3(b)の場合と同様の20Vであるにも関わらず、最も最大電圧の大きなコンデンサC1、C8では最大電圧は140Vとなり、
図3(b)の場合よりも大幅に上昇する。すなわち、両端のコンデンサに印加される電圧は、直列接続数に応じて大きくなる。
【0015】
また、
図3(b)、
図4の回路構成においては、抵抗素子Rが太陽電池モジュールの直列接続における中間点に接続されたために、構成がこの中間点の上下で対称となるため、上記のようにコンデンサに印加される最大電圧も中間点の上下で対称となる。抵抗素子Rをこのような中間点以外の箇所に設けた場合には、各コンデンサに印加される最大電圧が上下で対称とならず、最大電圧は上記の値よりも高くなる場合がある。あるいは抵抗素子Rを設けない場合には、これに加え、動作が安定しない場合がある。
【0016】
このようにコンデンサに印加される最大電圧が高くなる場合、容量値を同等とした場合であっても、例えばコンデンサC4、C5としては耐圧が低く安価なセラミックコンデンサを用いることができるのに対し、コンデンサC1、C8としては、耐圧が高く大型で高価なフィルムコンデンサを用いることが必要となった。
【0017】
上記のように、太陽電池モジュールの直列接続数が多くなった場合には、上記の点はより顕著となり、耐圧がより高く大型で高価なフィルムコンデンサがより多く必要となった。このため、上記のようなスイッチトキャパシタ型の太陽電池コンバータシステムにおいては、太陽電池モジュールの直列接続数を多くした場合には、装置を小型化する、安価とすることが困難となった。
【0018】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の太陽電池コンバータシステムは、複数の太陽電池モジュールが直列接続され、前記太陽電池モジュールの各々に対応して設けられ一端が前記太陽電池モジュールの両端の間にそれぞれスイッチ素子を介して接続された複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサの他端が接続される共通ラインと、が用いられ、前記スイッチ素子のオン・オフが繰り返し制御されることによってスイッチトキャパシタ型の動作を行う太陽電池コンバータシステムであって、複数の前記太陽電池モジュールは、連続する複数の前記太陽電池モジュール毎に複数のグループに区分され、単一のグループ内における複数の前記太陽電池モジュールと、当該太陽電池モジュールに対応した前記コンデンサ及び前記スイッチ素子と、当該コンデンサの他端が接続される前記共通ラインとを具備する太陽電池コンバータユニットが前記グループ毎に形成され、隣接する2つの前記太陽電池コンバータユニットは、相対する側において、隣接する前記太陽電池モジュールの端子同士を接続させ、かつ各々における前記共通ラインを容量結合する接続回路を介して結合されたことを特徴とする。
本発明の太陽電池コンバータシステムにおいて、前記接続回路は、隣接する2つの前記共通ラインの間に介在される直列接続された2つの結合コンデンサと、隣接する前記太陽電池モジュールの端子同士を接続したノードと2つの前記結合コンデンサの間のノードとを接続するインダクタ又は抵抗素子を具備することを特徴とする。
本発明の太陽電池コンバータシステムは、前記太陽電池コンバータユニットにおいて、前記太陽電池モジュールが直列接続された構成のうちのノードの一つと、前記共通ラインとが抵抗素子又はインダクタで接続されたことを特徴とする。
本発明の電源モジュールの結合方法は、複数の電源モジュールを直列接続し、前記電源モジュールの各々に対応して設けられ一端が前記電源モジュールの両端の間にそれぞれスイッチ素子を介して接続された複数のコンデンサと、複数の前記コンデンサの他端が接続される共通ラインと、を用いて、前記スイッチ素子のオン・オフを繰り返し制御することによってスイッチトキャパシタ型の動作を行わせる電源モジュールの結合方法であって、複数の前記電源モジュールを、連続する複数の前記電源モジュール毎に複数のグループに区分し、単一のグループ内における複数の前記電源モジュールと、当該電源モジュールに対応した前記コンデンサ及び前記スイッチ素子と、当該コンデンサの他端が接続される前記共通ラインとを具備するコンバータユニットを形成し、隣接する2つの前記コンバータユニットを、相対する側において、隣接する前記電源モジュールの端子同士を接続させ、かつ各々における前記共通ラインを容量結合する接続回路を介して結合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以上のように構成されているので、スイッチトキャパシタ型のコンバータシステムにおいて、太陽電池モジュール(電源モジュール)の直列接続数を多くした場合でも、装置を小型化し安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池コンバータシステムの構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る太陽電池コンバータシステムの変形例の構成を示す回路図である
【
図3】従来の太陽電池コンバータシステムの一例の構成を示す回路図である。
【
図4】従来の太陽電池コンバータシステムの他の一例の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態に係る太陽電池コンバータシステム、あるいは本発明の実施の形態に係る電源モジュール結合方法が用いられた太陽電池コンバータシステムについて説明する。
図1は、この太陽電池コンバータ1の構成を示す回路図である。ここでは、
図4と同様に、太陽電池モジュールPV1~PV8が直列接続されている。また、スイッチング動作により充放電を行うコンデンサC1~C8も同様に用いられており、ハイサイドのスイッチ素子S1A~S8A、ローサイドのスイッチ素子S1B~S8Bも同様に設けられ、同様にスイッチトキャパシタとしての動作が行われる。
【0023】
ただし、ここでは、
図4の回路とは異なり、太陽電池モジュールは、PV1~PV4(下側)とPV5~PV8(上側)の、2つのグループに分割される。各グループ内に対応して、各々が
図3(b)と同様の回路となるユニットが形成される。すなわち、ここでは、太陽電池モジュールPV1~PV4が直列接続されたユニット(太陽電池コンバータユニット)U1と、太陽電池モジュールPV5~PV8が直列接続されたユニット(太陽電池コンバータユニット)U2が形成される。下側のユニットU1においては、太陽電池モジュールPV1~PV4がコンデンサC1~C4、スイッチ素子S1A~S4A、S1B~S4Bと組み合わされている。また、
図3(b)と同様に共通ラインM1が設けられ、共通ラインM1の電位を安定させるための抵抗素子R1が同様に設けられている。上側のユニットU2においては、太陽電池モジュールPV5~PV8がコンデンサC5~C8、スイッチ素子S5A~S8A、S5B~S8Bと組み合わされている。同様に共通ラインM2が設けられ、共通ラインM2の電位を安定させるための抵抗素子R2が同様に設けられている。
【0024】
このユニットU1、U2が、接続回路Xを用いて接続されている。接続回路Xは、ユニットU1(共通ラインM1)側の結合コンデンサCC1、ユニットU2(共通ラインM2)側の結合コンデンサCC2と、結合コンデンサCC1、CC2間のノードDとユニットU1、U2において相対して隣接する太陽電池モジュールPV4、PV5とを接続するインダクタLを具備する。
【0025】
図1の回路においても、
図4の回路と同様に、太陽電池モジュールPV1~PV8が直列接続され、コンデンサC1~C8をスイッチトキャパシタとした動作が行われる。このため、部分影が発生しても、太陽電池コンバータシステム全体としての出力の低下が抑制され、安定した出力が得られる。
【0026】
ここで、
図4の回路とは異なり、この構成においては、共通ラインM1、M2は、太陽電池モジュールPV1~PV8の全てに対して共通とはならず、各ユニット毎に独立となり、これらは接続回路Xで結合コンデンサCC1、CC2を介して容量結合される。このため、共通ラインM1、M2の電位は共通とはされない。
【0027】
この場合、コンデンサC1~C8に印加される最大電圧は、ユニットU1、U2毎に
図3(b)と同様の状況となる。すなわち、太陽電池モジュールPV1~PV8の最大出力電圧が40Vである場合には、これらが全て最大の出力をする際に、ユニットU1において共通ラインM1の電圧は80Vとなり、コンデンサC1、C2,C3、C4に印加される最大電圧は60V、20V、20V、60Vとなる。一方、ユニットU2においても同様に、共通ラインM1と独立の共通ラインM2の電圧は80V、コンデンサC5、C6、C7、C8に印加される最大電圧は60V、20V、20V、60Vとなる。
【0028】
これに対して、同様の場合に
図4の回路においてコンデンサC1~C8に印加される最大電圧は、前記の通り140V、100V,60V、20V、20V、60V、100V、140Vである。このため、使用されるコンデンサに印加される最大電圧が、
図4の回路においては140Vであったのに対し、
図1の回路においては60Vとなり、大幅に低下する。このため、使用するコンデンサに対して高い耐圧は要求されず、小型、安価なセラミックコンデンサ等を用いることができ、太陽電池コンバータユニット全体を小型化、安価とすることができる。
【0029】
なお、接続回路Xにおいて結合コンデンサCC1、CC2の容量値を同等とし、かつインダクタLを用いることによって、ノードDを境界とした上下の構成が対称となり、太陽電池コンバータシステムの動作を安定化させることができる。この点については、
図3(b)において抵抗素子Rを設けたことと同様である。しかしながら、ユニットU1、U2毎の動作が安定に行われる限りにおいて、インダクタLは不要である。この場合においては、結合コンデンサCC1、CC2を一体化した単一の結合コンデンサを代わりに用いてもよい。すなわち、接続回路によって共通ラインM1、M2が容量結合されていればよい。また、ユニットU1、U2内における抵抗素子R1、R2と同様に、インダクタLの代わりに抵抗素子を用いてもよい。
【0030】
また、従来例である
図3(b)、
図4の構成を含め、上記の例では、共通ラインの電位は、抵抗素子を設けることにより太陽電池側の電池と等しくされた。しかしながら、
図3(a)のように抵抗素子を設けなくとも、共通ラインの電位が、ユニット内でスイッチトキャパシタとして動作する各コンデンサの右側端子(他端側)の共通の電位となる点は同様であり、コンデンサの左側端子(一端側)がスイッチング動作されるという動作も同様であるため、各コンデンサに印加される電圧の不均一という問題は同様に発生する。このため、各ユニット内における抵抗素子の有無に関わらず、上記のような接続回路Xを用いることは有効である。
【0031】
また、ユニットU1、U2内の抵抗素子R1、R2の代わりにインダクタを用いても、同様の効果が得られることは明らかである。このような、各ユニット内、接続回路X内において、共通ライン側と太陽電池モジュール側を抵抗素子、インダクタのどちらを用いて結合するかは、要求されるバイアス能力、価格等を考慮して適宜設定される。各ユニット内においては、要求されるバイアス能力は高くないため、上記のように小型、安価な抵抗素子を用いることが特に好ましい。一方、接続回路X内においては、各ユニット内においてよりも高いバイアス能力が要求されるため、上記のようにインダクタを用いることが特に好ましい。
【0032】
また、上記のように各ユニットを構成し、接続回路Xを用いることによって、直列接続される太陽電池モジュールの数を更に増やすこともできる。
図2は、こうした構成の一例となる太陽電池コンバータユニット2の回路構成を示す。この回路においては、
図1の回路の上側において、ユニットU1、U2と同様の構成を具備するユニットU3が、新たに接続回路Xを介して更に上側に接続されている。
【0033】
この場合においては、太陽電池モジュールPV1~PV12が直列接続された構成が得られるため、全体として
図1の構成よりも大きな出力を得ることができる。一方、ユニットU1~U3の構成は同様であり、各ユニット内のコンデンサに印加される最大電圧は、前記と同様であり、
図3(b)の場合と同様である。すなわち、
図2の構成では太陽電池モジュールの総数は12個に増えているにも関わらず、太陽電池モジュールの総数が8個である
図1の構成、あるいは太陽電池モジュールの総数が4個である
図3(b)の構成と変わらない。このため、太陽電池モジュールの直列接続数を多くした場合でも、スイッチトキャパシタとして用いられるコンデンサに印加される最大電圧を小さくすることができる。
【0034】
このように、太陽電池モジュールの直列接続数を多くして太陽電池コンバータシステムの出力を高めた場合において、上記のように各ユニットを構成し、接続回路Xを用いることは特に有効である。これによって、スイッチトキャパシタ動作に用いられるコンデンサとして、耐圧の低い小型、安価なものを用いることができるため、太陽電池コンバータシステムを小型、安価とすることができる。
【0035】
上記においては、多数の太陽電池モジュールが直列接続されて用いられる際に、上記の接続回路Xが用いられた。しかしながら、上記の太陽電池モジュールの代わりに、電力を発生する他の装置(電源モジュール:例えば蓄電池等)を直列接続して同様に用い、これに対して上記と同様にスイッチトキャパシタ方式の動作を行わせることができる。こうした場合においても、上記のように電源モジュールをグループ分けして各コンバータユニットを構成し、コンバータユニット間を上記の接続回路Xで接続することによって、同様の効果を奏することが明らかである。すなわち、上記の発明は、太陽電池コンバータユニットには限定されず、電源モジュールを直列接続して用いるコンバータシステムにおいて、上記と同様のスイッチトキャパシタ型の動作を行わせる際に有効である。
【符号の説明】
【0036】
1、2、91~93 太陽電池コンバータシステム
PV1~PV12 太陽電池モジュール
S1A~S8A、S1B~S8B スイッチ素子
C1~C8 コンデンサ
CC1、CC2 結合コンデンサ
L インダクタ
M、M1、M2 共通ライン
R、R1、R2 抵抗素子
U1~U3 ユニット(太陽電池コンバータユニット)