IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シバテックの特許一覧

<>
  • 特許-空調システムにおけるノズル吹出口構造 図1
  • 特許-空調システムにおけるノズル吹出口構造 図2
  • 特許-空調システムにおけるノズル吹出口構造 図3
  • 特許-空調システムにおけるノズル吹出口構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】空調システムにおけるノズル吹出口構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/065 20060101AFI20220106BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20220106BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20220106BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F24F13/065
F24F13/06 D
F24F13/06 E
F24F13/22 221
F24F13/14 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020033717
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135028
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2020-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520070644
【氏名又は名称】株式会社シバテック
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】菅野 不二雄
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-331208(JP,A)
【文献】実開平05-054948(JP,U)
【文献】実開平07-026645(JP,U)
【文献】中国実用新案第207123048(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1036678(KR,B1)
【文献】特開平07-318152(JP,A)
【文献】実公昭39-023699(JP,Y1)
【文献】特公昭49-000264(JP,B1)
【文献】特開昭53-115909(JP,A)
【文献】実開平07-032444(JP,U)
【文献】実開平06-002047(JP,U)
【文献】特開2006-046689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/065
F24F 13/06
F24F 13/22
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置と、ノズル形状の吹出口を備えた球殻本体及び球殻本体を可動自在に支承する支承枠体で形成され、室内の天井等に取り付ける薄金属板製のパンカールーバーと、前記空調装置とパンカールーバーとの間に設けた送風路で構成される空調システムにおいて、
内周面に断熱被覆を施した金属製筒体からなる通風路形成部材でパンカールーバーの球殻体内に断熱構造の通風路を形成するものであって、
前記通風路形成部材に、中間部分の外周面に突設した断熱材からなる支持部と、下方開口部を外周面に断熱被覆を施した下方断熱筒部を形成し、前記下方断熱筒部の先端部分が球殻本体の吹出口により突出する状態で通風路形成部材を球殻本体に嵌合装着し、
前記通風路形成部材に断熱構造とした送風路端部を連結してなることを特徴とする空調システムにおけるノズル吹出口構造。
【請求項2】
通風路形成部材の上方開口部の外周部分に断熱被覆を施して上方断熱筒部に形成し、前記上方断熱筒部に送風路端部を連結してなる請求項1記載の空調システムにおけるノズル吹出口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンカールーバーを使用する空調システムのノズル吹出口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場、倉庫等の広い室内空間に対する冷暖房を実現する空調システムは、空調装置と、目的方向に冷暖風を吹き出すパンカールーバーと、空調装置とパンカールーバーとの間に設けた送風ダクトで構成されている。
【0003】
前記のパンカールーバーは、一般的に薄金属板(アルミ合金)で形成されており、外周面に装着板部を周設した環状の支承枠体に、球殻部と吹出用のノズル部からなる球殻本体を装着したもので、送風ダクトの出口に設けた適宜な取付部に固着している。
【0004】
上記のパンカールーバーは、冷房使用時の表面温度と雰囲気温度との相違によって結露が生ずるので、従前より結露防止手段として断熱材を組み込むことが提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、球殻部のダクト側の開口箇所とノズル部の開口箇所との間を断熱鍔付筒体で連通して断熱通風路を形成したパンカールーバーが開示されており、特許文献2には、球殻本体の内面全体に内側断熱部を設けると共に、球殻本体の外周面に当接して送風ダクトに嵌合される外側断熱部材を付設したパンカールーバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平6-2047号公報。
【文献】特開2006-46689号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷暖風の吹出口にパンカールーバーを使用する空調システムにおいて、パンカールーバーの結露防止手段として断熱材を使用することが提案されているが、単にパンカールーバー内の通風路が断熱構成されていたとしても、送風ダクトが金属製であると、支承枠体を通じて可動部材の表面が冷却され結露が生ずる。このため特許文献2に開示されているように外側断熱部材を付加しなければならなく、全体構造が嵩張り且つ設置工事も煩瑣となる。
【0008】
またパンカールーバー内の通風路が断熱構造であっても、冷風はノズル部から必ずしも整流状態で吹き出されるものではなく、ノズル部の開口箇所周縁においては乱流(反流)となる。このためこの乱流によってノズル部の開口箇所の外周縁部分が冷やされ、結露が生ずることになる。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構造で結露防止を完全に達成する新規な空調システムにおけるノズル吹出口構造を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載に係る空調システムにおけるノズル吹出口構造は、
空調装置と、ノズル形状の吹出口を備えた球殻本体及び球殻本体を可動自在に支承する支承枠体で形成され、室内の天井等に取り付ける薄金属板製のパンカールーバーと、前記空調装置とパンカールーバーとの間に設けた送風路で構成される空調システムにおいて、内周面に断熱被覆を施した金属製筒体からなる通風路形成部材でパンカールーバーの球殻体内に断熱構造の通風路を形成するものであって、前記通風路形成部材に、中間部分の外周面に突設した断熱材からなる支持部と、下方開口部を外周面に断熱被覆を施した下方断熱筒部を形成し、前記下方断熱筒部の先端部分が球殻本体の吹出口により突出する状態で通風路形成部材を球殻本体に嵌合装着し、前記通風路形成部材に断熱構造とした送風路端部を連結してなることを特徴とするものである。
【0011】
而して前記のノズル吹出口構造は、空調機からの冷風がダクトやパイプ等の送風路を通過し、パンカールーバーの球殻本体内の通風路を通って吹出口より噴出されるもので、特に断熱構造の送風路端部と断熱通風路とが接続されるので、パンカールーバーが冷風による冷却がなされず、パンカールーバー全体が室温状態に維持され、また吹出口より吹き出した冷風が吹出口周縁において乱流(反流)となっても、吹出口周縁の乱流が生ずる範囲が断熱構造となっているので、前記の乱流によって結露が生じない。
【0012】
更に本発明は、特に内周面に断熱被覆を施した金属製筒体からなる通風路形成部材を球殻体内に嵌合装着して断熱通風路を形成すると共に、通風路形成部材の吹出口部分の内外周面を断熱構造の下方断熱筒部とし、球殻体のノズル口端より下方断熱筒部の先端部分を突出させてなるもので、通風路形成部材を既存のパンカールーバーに装着することで、容易に結露防止がなされているノズル吹出構造を構築できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成は上記の通りで、パンカールーバーを使用するノズル吹出口構造において断熱構造の送風路端部をパンカールーバー内の断熱通風路に接続するという簡単な構成で通風ダクトを対象とする球殻本体の外周面の断熱部を設けることなくパンカールーバーの冷却を阻止し、且つ吹出口周縁箇所を断熱構造にすることによって、冷風の吹出箇所の乱流によるパンカールーバー吹出口近傍の冷却を阻止し、簡易な構造で結露発生を完全に阻止したものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のパンカールーバーの分解図。
図2】同支承体と球殻本体の断面図。
図3】同通風路形成部材の断面図。
図4】同吹出口構造全体の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した本発明のノズル吹出口構造に使用されるパンカールーバー01は、従前から採用されているアルミ合金製の支承枠体1及び球殻本体2と、前記球殻本体2に組み込まれる通風路形成部材3で構成される。
【0016】
支承枠体1は、球殻本体2の球殻部21を可動自在に抱持する環状の枠部11と、前記枠部11の外周に周設した装着板部12とで形成されてなる。
【0017】
球殻本体2は、球殻の上下部分を切除した球殻部21と、球殻部21の上方開口部22の反対側に下方開口部(ノズル口)23を備えたに嘴状のノズル部24からなり、球殻部21を前記枠部11に抱持させたものである。
【0018】
通風路形成部材3は、前記球殻体2内に収まる形状で、球殻部21の上方開口部22と下方開口部23と対応する内径を備えた金属製筒体31をベースとして、内周面全体に断熱層(断熱被覆)32を設けて断熱通風路Aを形成する。また上方部分には前記上方開口部22よりも小径となる外径を備えた上方断熱筒部33を設け、下方部分には、下方開口部23と密嵌する外径の下方断熱筒部34を設け、更に通風路形成部材3を球殻本体2に組み込んだ際に球殻本体2の内周面と金属製筒体31の外周面との間に介在する断熱素材で形成した支持部35を突設してなる。
【0019】
前記の通風路形成部材3は、球殻本体2内に嵌合装着するもので、特に下方断熱筒部34を下方開口部23から少なくとも15mm以上(目安として20mm)突出させて露出外周面が断熱構造である断熱吹出口34aに形成してなるものである。さらにノズル部24と下方断熱筒部34を、両者を貫通する樹脂製ビス4を装着して両者を一体化する。
【0020】
本発明のノズル吹出口構造は、上記のパンカールーバー01を空調対象室の天井02に装着し、パンカールーバー01の上方断熱筒部33に空調装置(図示せず)と連結した断熱構造のフレキシブルダクト(送風路B)03とを連結して構築する。
【0021】
具体的には、上記パンカールーバー01を従前と構築手段と同様に、天井02の所定箇所に適宜な透孔を穿ち、天井裏における天井下地桟04に前記透孔と対応するパンカールーバー装着孔を備えた扁平箱型の取付板05を固着し、パンカールーバー01の枠部11を前記装着孔に嵌め込み、装着板部12を取付板05に天井02を貫通するビス06で固定してなされる。
【0022】
また断熱フレキシブルダクト(送風路B)03は、既製品として広く普及しているもので、前記の断熱フレキシブルダクト(送風路B)03の端部を上方開口部22と上方断熱筒部33の間に嵌入して送風路Bと断熱通風路Aを接続する。
【0023】
而して前記のノズル吹出口構造においては、空調機からの冷風Cがフレキシブルダクト03を通過して断熱通風路Aに流入する際に、冷風Cがパンカールーバー01の支承枠体1及び球殻本体2に直接接触することが無いので、金属製のパンカールーバー01を冷却されず、空調対象室内の空気と接触しても結露が生じない。
【0024】
また断熱通風路A内を通過した冷風Cは、断熱吹出口34aから室内に吹き出され室内の冷房を実現するが、前記の断熱吹出口34aの外周縁では冷風が整流状態で吹き出されとは限らず、室内空気との衝突で一部が乱流(反流)C1となる場合があり、当該乱流C1がパンカールーバー01と接触しても、接触範囲は断熱吹出口34aが形成されている範囲内であるので、ノズル部24の外周面に接触することが無く、ノズル部24が冷却されず結露は生じない。
【0025】
従って本ノズル吹出口構造は、冷風Cの吹き出しによって結露を全く生じさせず、冷房時の室内への結露滴下が発生しないものである。
【0026】
なお前記実施形態においては断熱通風路A及び断熱吹出口34aの形成に通風路形成部材3を採用したが、本発明は前記手段に限定されるものではなく、球殻本体そのものに所定の処理を施しても良い。例えば球殻部21及びノズル部24の全内周面おいて、断熱被覆を施すと共に、ノズル口の外周面の所定の範囲に断熱処理を施すか、あるいは断熱筒体を装着し、送風路端部をパンカールーバーに送風による冷却作用を遮断する構造で連結すれば良い。
【符号の説明】
【0027】
1 支承枠体
11 枠部
12 装着板部
2 球殻本体
21 球殻部
22 上方開口部
23 下方開口部(ノズル口)
24 ノズル部
3 通風路形成部材
31 金属製筒体
32 断熱層(断熱被覆)
33 上方断熱筒部
34 下方断熱筒部
34a 断熱吹出口
35 支持部
4 樹脂製ビス
01 パンカールーバー
02 天井
03 断熱フレキシブルダクト(送風路B)
04 天井下地桟
05 取付板
06 ビス
A 断熱通風路
B 送風路
C 冷風
図1
図2
図3
図4