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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】エアゾール容器用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/20 20060101AFI20220106BHJP
   B65D 47/42 20060101ALI20220106BHJP
   B65D 83/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B65D83/20
B65D47/42
B65D83/28 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020502009
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035669
(87)【国際公開番号】W WO2019163183
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018030772
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(73)【特許権者】
【識別番号】000141118
【氏名又は名称】株式会社丸一
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山科 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松村 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅之
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-208425(JP,A)
【文献】特公昭48-009105(JP,B1)
【文献】実開昭53-035753(JP,U)
【文献】特開2000-025860(JP,A)
【文献】特開2001-240163(JP,A)
【文献】特開2014-105027(JP,A)
【文献】特開2003-118761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/20
B65D 47/42
B65D 83/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の外表面を有する転動体と、
球状の内表面を有する凹部内に前記転動体を、その一部分が露出する状態で転動可能に保持するホルダーと、
を具備して、
内容物が加圧充填されたエアゾール容器に装着され、
前記エアゾール容器に突設されたステムの押込みによって噴出する前記内容物が前記ホルダーの凹部内に供給されて前記転動体の外表面に付着するように構成された
ロールオン型のエアゾール容器用アクチュエータにおいて、
前記ホルダーの底部に前記内容物の導出路を有するステム接続部が設けられて、
前記ステム接続部が前記ステムに嵌装されるとともに、
前記導出路が前記凹部内に形成された噴出孔に連通され、
前記導出路には、
前記ステムの外径に合致する内径の大径孔部と、
前記大径孔部に段部を介して接続する、前記ステムの孔径よりも細い中径孔部と、
前記中径孔部に段部を介して接続するテーパ孔部と、
前記テーパ孔部の縮径端に、該縮径端と同径で接続する小径孔部と、
が設けられ、
前記小径孔部が前記凹部内に開口して噴出孔となされているとともに、
前記凹部における底部近傍の内表面と、前記凹部の開口縁に沿う内表面とに、それぞれ複数個ずつの球面状隆起が、隆起高さを揃えて互いに離隔して設けられた、
ことを特徴とするエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアゾール容器用アクチュエータにおいて、
前記凹部の底部近傍に形成される球面状隆起は、前記噴出孔を中心とする仮想円に沿って等間隔で配置されている、
ことを特徴とするエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載されたエアゾール容器用アクチュエータにおいて、
前記凹部の底部近傍に形成される球面状隆起は、前記凹部の開口面に直交して前記凹部の球心を通る軸線と前記凹部の内表面との交点を中心とする仮想円に沿って等間隔で配置されている、
ことを特徴とするエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載されたエアゾール容器用アクチュエータにおいて、
前記ホルダーは、前記凹部の内表面全体が前記噴出孔を除いて隙間なく液密的に連続するように一体成形されている、
ことを特徴とするエアゾール容器用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールオン型のエアゾール容器用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
体臭抑制剤やサンスクリーン剤等の皮膚外用剤を、球状の転動体を介して皮膚に塗布するロールオン型の皮膚外用製品が市販されている。この種の皮膚外用製品によれば、内容物を所望の部位に手を汚すことなく的確に塗布することができるとともに、皮膚の押圧によるマッサージ効果も得られる。この種の皮膚外用製品に用いられるロールオン型の塗布用具は、ノンエアゾール式とエアゾール式の2種類に大別することができる。
【0003】
ノンエアゾール式の塗布用具は、球状の転動体を転動可能に保持するホルダーが容器本体の開口部に嵌合されており、容器本体の傾斜や揺れによって内容物が転動体の外表面に供給されるようになっている。その転動体を皮膚に押付けて転動させることで、内容物を対象部位に塗布することができる。したがって、ノンエアゾール式の塗布用具にあっては、内容物が外気に露出することを防ぐため、少なくとも不使用時に転動体とホルダーとの隙間を閉じる手段が必要になる。
【0004】
一方、エアゾール式の塗布用具は、球状の転動体と、その転動体を回動可能に保持するホルダーとを備えたアクチュエータが、アルミやブリキ等の金属製耐圧容器(以下、「エアゾール容器」という。)から突出するステムに嵌装されるようにしてエアゾール容器に取り付けられている。そのアクチュエータがステムを押込むとエアゾールバルブが開弁され、エアゾール容器に充填された内容物がステムから噴出し、ホルダーに設けられた噴出孔を通って転動体の外表面に付着する。その転動体を皮膚に押当てて転動させることで、内容物を対象部位に塗布することができる。
【0005】
このようなアクチュエータを具備するエアゾール式の塗布用具によれば、エアゾール容器のバルブによって内容物が噴出することは防がれているので、ノンエアゾール式の塗布用具のように、少なくとも不使用時に転動体とホルダーとの隙間を閉じる必要はない。そのため、アクチュエータの設計上の自由度が高くなる。しかし、そのようなアクチュエータについても、例えば転動体の転動性をさらに向上させるとか、内容物の噴出量を一定にして液垂れを防ぐ、あるいは噴出の勢いで転動体が飛び出すのを防ぐ、等々の課題をきめ細かく改善することが求められており、それらを十分に満足し得るアクチュエータは未だ実用化されていないのが現状である。
【0006】
例えば特許文献1には、構成部品の耐久性を向上させつつ、使用後の廃棄処理が容易で、快適なマッサージ効果が得られるとともに、不用意な液垂れを防止することを解決課題としたエアゾール容器が提案されている。そのエアゾール容器には、球状の転動体(ボール)を、その一部を露出させた状態で転動可能に保持するホルダーと、耐圧容器から突出するステムに係合して転動体をホルダーとの協働下で弾性的に支持する受座とが取り付けられている。受座には、ステム先端の噴出孔の領域を除いて、ステムを転動体から離隔させる弾性隔壁が設けられている。弾性隔壁は上向きに凸となる断面アーチ状の受面を有しており、その上面には複数の突起が弾性隔壁と一体に形成されている。このような構成によれば、弾性隔壁が、その受面および突起によって転動体を弾性的に支持するから、転動体の上下運動が大きく確保されて、快適なマッサージ効果が得られるとともに、不用意な液垂れを防止する効果も得られる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-240163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示されたエアゾール容器は、転動体がホルダーと受座との間に収容され、受座に設けられた弾性隔壁の弾性変形によって上下に大きく動き得る状態で保持される。つまり、転動体の押圧具合によって、ホルダーの内表面と転動体の外表面との隙間が様々に変化することになる。そのため、拡がった隙間に内容物が過剰に供給され過ぎて、ホルダーの開口縁から内容物が溢れたり、転動体を強く押込むと弾性隔壁が大きく変形し、ステム先端の噴出孔周りの隙間が塞がれて内容物が十分に供給されなかったりするなど、内容物の供給量にムラが生じるおそれがある。また、ホルダー内での転動体の偏りによって弾性隔壁から受ける付勢力にバラつきが生じ、転動体の転動性が不規則に変化してしまうことも懸念される。弾性隔壁による付勢力が強すぎると、転動体がホルダーから飛び出してしまうおそれもある。
【0009】
さらに、受座は、ホルダーよりも弾性変形し易い樹脂材料によってホルダーとは別体に成形されることになるので、ホルダーと受座との接合箇所を液密的に封止することが難しくなり、その隙間から液垂れが生じるおそれもある。
【0010】
本発明は、これらの問題に着目してなされたものであり、転動体が常時、一定の感触で軽快に転動するとともに、内容物が一定の供給量で安定的に供給され、さらに、転動体の飛び出しも確実に防止し得るエアゾール容器用アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するため、本発明のエアゾール容器用アクチュエータは、球状の外表面を有する転動体と、球状の内表面を有する凹部内に前記転動体を、その一部分が露出する状態で転動可能に保持するホルダーと、を具備して、内容物が加圧充填されたエアゾール容器に装着され、前記エアゾール容器に突設されたステムの押込みによって噴出する前記内容物が前記ホルダーの凹部内に供給されて前記転動体の外表面に付着するように構成されたロールオン型のエアゾール容器用アクチュエータにおいて、前記ホルダーの底部に前記内容物の導出路を有するステム接続部が設けられて、前記ステム接続部が前記ステムに嵌装されるとともに、前記導出路が前記凹部内に形成された噴出孔に連通され、前記凹部における底部近傍の内表面と、前記凹部の開口縁に沿う内表面とに、それぞれ複数個ずつの球面状隆起が、隆起高さを揃えて互いに離隔して設けられた、との基本的構成を採用する。
【0012】
この基本的構成によれば、ホルダーの凹部における底部近傍の内表面と、開口縁に沿う内表面とに、それぞれ同じ隆起高さで複数個ずつ設けられた球面状隆起の働きで、凹部の内表面と転動体の外表面との隙間が、凹部内全体にわたって常時、一定に保持される。これにより、内容物の噴出量が安定し、転動体の外表面に対する内容物の付着量が均等化される。また、球面状隆起は、その形状から、押しつぶす向きにはきわめて弾性変形しにくいので、転動体を強く押込んだ場合でも、転動体が凹部内の噴出孔を塞栓して内容物が噴出しにくくなるのを防ぐことができる。
【0013】
球面状隆起と転動体の外表面とは緩い凸曲面同士の点接触になるので、これによって転動体の転動が妨げられることはなく、転動体は常に一定の軽快さで円滑に転動する。球面状隆起には方向性がないから、転動方向による転動性の不均等も生じない。さらに、凹部の開口縁に沿って設けられた球面状隆起は、転動体が凹部の開口面から飛び出すことを防ぐ作用もなす。
【0014】
この発明において、凹部の底部近傍に形成される球面状隆起は、前記噴出孔を中心とする仮想円上に等間隔で配置されているのが好ましい。あるいは、前記凹部の開口面に直交して前記凹部の球心を通る軸線と前記凹部の内表面との交点を中心とする仮想円上に等間隔で配置されているのが好ましい。
【0015】
さらに本発明のエアゾール容器用アクチュエータは、前記導出路に、前記ステムの外径に合致する内径の大径孔部と、前記大径孔部に段部を介して接続する、前記ステムの孔径よりも細い中径孔部と、前記中径孔部に段部を介して接続するテーパ孔部と、前記テーパ孔部の縮径端に、該縮径端と同径で接続する小径孔部と、が設けられ、前記小径孔部が前記凹部内に開口して噴出孔となされている、との構成も具備する
【0016】
すなわち、この構成は、エアゾール容器に突設されたステムと、ホルダーに形成した噴出孔とを接続する導出路に減圧のためのミドルオリフィスを設けたものである。このミドルオリフィスの作用により、内容物がステムから噴出する際の勢いが弱められて、転動体の飛び出しを、より確実に防ぐことができる。
【0017】
さらに、本発明は、前記ホルダーにおける前記凹部の内表面全体が前記噴出孔を除いて隙間なく液密的に連続するように一体成形されている、との付加的構成を採用する。これにより、凹部内からアクチュエータの内側へ内容物が漏出することも防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
前述のように構成される本発明のエアゾール容器用アクチュエータによれば、転動体を保持するホルダーの凹部の内表面に設けられた複数個の球面状隆起が、凹部の内表面と転動体の外表面との隙間を常時、一定に保持するので、内容物の噴出量が安定して、転動体の外表面に対する内容物の付着量が均等化される。また、球面状隆起と転動体の外表面との点接触によって転動体の転動性が向上する。さらに、凹部の開口縁に沿って設けられた球面状隆起は、転動体が凹部の開口面から飛び出すのを防止する。
【0019】
また、本発明のエアゾール容器用アクチュエータは、エアゾール容器に突設されたステムとホルダーに形成した噴出孔とを接続する導出路に、内容物の噴出圧力を減じるミドルオリフィスが形成されるように構成されているので、これにより、転動体の飛び出しが一層、生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータの外観斜視図である。
図2】前記エアゾール容器用アクチュエータの縦断面図である。
図3図2の要部を部分的に拡大した断面図である。
図4図3の要部をさらに拡大して導出路の構成を示した断面図である。
図5】前記エアゾール容器用アクチュエータの転動体を取り除いてホルダーの内面を表した斜視図である。
図6】前記エアゾール容器用アクチュエータのA-A断面図である。
図7】前記エアゾール容器用アクチュエータにおける、球面状隆起の配置形態に係る変形例を示すA-A断面図である。
図8図7のエアゾール容器用アクチュエータのB-B断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータの外観斜視図である。
図10】前記エアゾール容器用アクチュエータの縦断面図である。
図11図10の要部を部分的に拡大した断面図である。
図12】前記エアゾール容器用アクチュエータの転動体を取り除いてホルダーの内面を表した斜視図である。
図13】前記エアゾール容器用アクチュエータのC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1図6は、本発明の第1実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」という。)を示す。このアクチュエータ1は、内容物が加圧充填されたエアゾール容器2の上部に装着されている。なお、以下の説明において、部位・部材の位置関係や向きを示す際には、エアゾール容器2を直立させた図1に示す状態を基準にして、上下方向および水平方向を特定することとする。
【0023】
エアゾール容器2は、図2に示すように、容器本体21の上部にマウンテンカップ22をクリンチして密封されている。マウンテンカップ22の内側中央部にはエアゾールバルブを内蔵したハウジング(図示せず)が固定され、そのハウジング内に筒状のステム23が挿入されて、ステム23の上部がエアゾール容器2の上方に付勢状態で突設されている。このステム23をエアゾール容器2の内側に押込むとエアゾールバルブが開栓されて、エアゾール容器2内に充填された内容物がステム23の上端開口から噴出する。
【0024】
なお、本発明は、エアゾール容器2の加圧機構やエアゾールバルブの詳細な構造等を要部とするものではないので、それらに関しては従来公知の技術的手段を適宜、組み合わせるなどして実施することができる。また、エアゾール容器2に充填される内容物としては、例えば体臭抑制剤やサンスクリーン剤、消炎鎮痛剤等が想定されるが、内容物の種類や組成に関しても、本発明は特にそれを限定するものではない。
【0025】
例示のアクチュエータ1は、球状の滑らかな外表面を有する転動体3と、その転動体3を転動自在に保持するホルダー4と、ホルダー4を転動体3の押圧に応じて上下動可能に保持する肩カバー5と、肩カバー5の上方に被せられてホルダー4および転動体3を覆うキャップ6と、の4部材によって構成されている。
【0026】
ホルダー4には、球状の滑らかな内表面を有する凹部41が、上向きに開口するように形成されている。この凹部41は、内表面全体が後述する噴出孔77を除いて隙間なく液密的に連続するように一体成形されている、この凹部41内に転動体3が圧入され、転動体3の一部分が上方に露出する状態で、転動可能に保持される。
【0027】
ホルダー4の底部には、内容物の導出路7を有するステム接続部42と、転動体3の押圧によるホルダー4の上下動を安定させる短円筒状の遊挿筒部43とが設けられている。導出路7の詳細な構成については後述する。
【0028】
また、ホルダー4の側部には、ホルダー4を肩カバー5に対して離脱しないように留め付けるための係合突起44が、ホルダー4の周方向における4個所から下向きに突設されている。
【0029】
一方、肩カバー5には、ホルダー4の遊挿筒部43に外側から挿装されてホルダー4の上下動を案内する短円筒状のガイド筒部51と、その外側を包囲する内側周壁部52と、さらにその外側を包囲する外側周壁部53とが設けられている。そして、内側周壁部52の下縁がマウンテンカップ22の外周縁に嵌装されて、肩カバー5がエアゾール容器2に固定される。
【0030】
内側周壁部52と外側周壁部53との間には係合溝54が形成されており、この係合溝54にホルダー4の係合突起44部が挿入されて、上下動可能に、かつ、容易には抜け出さないように保持される。この状態で、ホルダー4のステム接続部42がステム23に嵌装され、転動体3およびホルダー4の押下げに応じてステム23が押込まれるようになる。
【0031】
本発明の要部は、ホルダー4のステム接続部42に設けられた導出路7の形状と、凹部41の内表面の複数箇所に設けられた球面状隆起8にある。それらの詳細を図3図6に示す。
【0032】
図3および図4に拡大して示すように、導出路7には、下から上に向かって順に、ステム23の外径に合致する内径の大径孔部71と、ステム23の軸方向に直交する平坦な段部72を介して大径孔部71に接続する、ステム23の孔径よりも細い中径孔部73と、中径孔部73に段部74を介して接続する、上向きに縮径するテーパ孔部75と、テーパ孔部75の縮径端(上端)に、その縮径端と同径で接続する小径孔部76と、が設けられており、小径孔部76が凹部41内に開口して噴出孔77となされている。
【0033】
このように、導出路7が段階的に縮径するように形成されていることで、ステム23から噴出する内容物の噴出圧力が低減される。噴出方向に直交するように設けられた2か所の段部72、74は、噴出流がぶつかる壁として作用し、噴出圧力の低減に効果的に寄与する。かかる効果が得られやすい小径孔部76の具体的な直径としては0.2~2.0mm、特に好ましくは0.3~1.0mm程度である。
【0034】
導出路7に連通された凹部41には、その底部近傍の内表面と、開口縁に沿う内表面とに、それぞれ複数個ずつの球面状隆起81、82が設けられている。
【0035】
個々の球面状隆起81、82は、正面形状が円形で、薄い半球状(レンズ状)の滑らかな隆起面を有している。具体的な寸法としては、直径が0.5~5.0mm、特に好ましくは1.0~2.5mm程度であり、隆起高さは、0.1~1.5mm、特に好ましくは0.2~0.8mm程度である。複数個、設けられている全ての球面状隆起81、82は、それらの隆起高さが揃えられているのが好ましいが、直径については必ずしもその限りではない。
【0036】
球面状隆起81、82は、ホルダー4を構成する合成樹脂材料と同一の材料によって、ホルダー4と一体的に成形されている。
【0037】
凹部41の開口縁に沿って設けられる球面状隆起81は、開口縁の周方向において略等間隔となるように例えば6個程度、配置されている。
【0038】
また、凹部41の底部近傍に設けられる球面状隆起82は、最底部に形成された噴出孔77を中心とする仮想円に沿って略等間隔で、3個程度配置されている。「底部近傍」に相当する仮想円の大きさは、凹部41の球心45と噴出孔77とを通る垂直軸線からの拡がり角θが4~20度、特に好ましくは5~15度程度になる大きさである。
【0039】
このようにしてホルダー4の凹部41の内表面に設けられた複数個の球面状隆起81、82は、凹部41の内表面と転動体3の外表面との隙間を、凹部41内全体にわたって常時、一定に保持する作用をなす。隙間の大きさが一定に保持されることで、噴出孔77から噴出される内容物は、球面状隆起81、82の間を通って凹部41の内表面に均等に拡がり、転動体3の外表面に好適に付着する。また、球面状隆起81、82は、押しつぶす向きにはきわめて変形しにくい形状を有しているから、転動体3を強く押込んだ場合でも、転動体3が凹部41内の噴出孔77を塞栓して内容物が噴出しにくくなるのを防ぐことができる。
【0040】
さらに、球面状隆起81、82と転動体3の外表面とは緩い凸曲面同士の点接触になるので、これによって転動体3の転動が妨げられることはなく、転動体3は常に一定の軽快さで円滑に転動する。球面状隆起81、82には方向性がないから、転動方向による転動性の不均等も生じない。さらに、凹部41の開口縁に沿って設けられた球面状隆起81は、転動体3が凹部41の開口面から飛び出すのを防ぐ作用もなす。
【0041】
球面状隆起81、82の配置については、凹部41の底部近傍と開口縁沿いのそれぞれにおいて、周方向に3個~9個ずつ配置されるのが好ましい。2個以下の場合は転動体3の安定性が失われて、転動性が悪化しやすい。一方、10個以上になると、噴出された内容物が凹部41の内表面に沿って拡がる際の妨げになりやすい。
【0042】
また球面状隆起81、82は、凹部41の底部近傍と開口縁沿いのそれぞれにおいて、略等間隔で配置されるのが好ましい。個々の間隔に多少のバラつきはあっても差し支えないが、内容物の拡がりを妨げないように、少なくとも互いに一定の距離以上、離れるのが好ましい。
【0043】
図7図8は、凹部41の底部近傍に設けられる球面状隆起82の配置形態に係る変形例を示す。球面状隆起82は、噴出孔77を中心とする内外二重の仮想円に沿って、それぞれ3個ずつ配置されている。内側の仮想円の大きさは、凹部41の球心45と噴出孔77とを通る垂直軸線からの拡がり角θ1が約6度になる大きさであり、外側の仮想円の大きさは、前記垂直軸線からの拡がり角θ2が約15度になる大きさである。内側および外側のいずれも、3個の球面状隆起が、噴出孔77を中心として上面視120度の中心角をなすように等間隔で配置されているが、内側の3個と外側の3個とは、噴出孔77を中心とする配置方向が互いに上面視60度ずつずれている。また、球面状隆起82の隆起高さは、内側、外側ともに同じであるが、直径は内側よりも外側のほうが大きくなっている。
【0044】
このような配置形態は、転動体3の押圧によって凹部41の底部近傍に圧力が集中するのを分散させるのに有利である。また、噴出孔77に近い内側の球面状隆起82の直径を、外側のそれよりも小さくすることで、噴出孔77から噴出される内容物が拡がる際の妨げになりにくくしている。
【0045】
(第2実施形態)
図9図13は、本発明の第2実施形態に係るアクチュエータ1を示す。このアクチュエータ1は、前述の第1実施形態に示したものと同じエアゾール容器2に装着されるものであるので、エアゾール容器2についての説明は省略する。そのほか、前述の第1実施形態と機能または作用が共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
【0046】
このアクチュエータ1は、前述の第1実施形態と同様に、球状の外表面を有する転動体3と、球状の内表面を有する凹部41内に転動体3を、その一部分が露出する状態で転動可能に保持するホルダー4と、ホルダー4を転動体3の押圧に応じて上下動可能に保持する肩カバー5と、を具備するが、ホルダー4の凹部41が斜め上向きに開口している点で第1実施形態と相違している。具体的には、ホルダー4の凹部41の開口面が、エアゾール容器2を直立させた状態において水平面に対し約10~80度、特に好ましくは20~45度程度、傾斜するように形成されている。
【0047】
ホルダー4は、その外側に突設されたヒンジアーム46の軸部47を、肩カバー5の内側周壁部52の内側に設けられたヒンジ受部55に軸着されることにより、上下方向に揺動し得るように保持されている。その状態で、ホルダー4の底部に設けられたステム接続部42がエアゾール容器2のステム23に嵌装され、転動体3およびホルダー4の押下げに応じてステム23が押込まれる。ステム接続部42に設けられる導出路7の詳細な構成は、第1実施形態(図4)と同様である。
【0048】
斜めに開口するホルダー4の外側を包囲するようにして、肩カバー5の上部にホルダーカバー9が取り付けられる。さらに、ホルダーカバー9にキャップ6が被せられて、転動体3の露出部分が覆われる。
【0049】
このアクチュエータ1においても、凹部41の内表面に複数個の球面状隆起81、82が設けられるが、ホルダー4の凹部41が斜め上向きに開口する関係で、球面状隆起81、82の配置が、第1実施形態とは多少、相違する。球面状隆起81、82の形状や寸法については、第1実施形態と共通である。
【0050】
斜めになった凹部41の開口縁には、その開口縁に沿って、例えば6個程度の球面状隆起81が略等間隔で配置される。また、凹部41の底部近傍に設けられる球面状隆起82は、最底部に形成された噴出孔77を中心とする仮想円ではなく、凹部41の開口面に直交して凹部41の球心45を通る軸線と凹部41の内表面との交点48を中心とする仮想円に沿って、例えば3個程度、略等間隔で配置されている。この形態でも、仮想円の大きさは、凹部41の球心45と前記交点48とを通る軸線からの拡がり角θが4~20度、特に好ましくは5~15度程度になる大きさである。
【0051】
このような実施形態によっても、ホルダー4の凹部41の内表面と転動体3の外表面との隙間が一定に保持されることとなるので、内容物の噴出量が安定して、転動体3の外表面への拡がりが良好になる。また、転動体3の転動性が向上し、さらに、転動体3が凹部41の開口面から飛び出すのも防ぐことができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を2種類、例示したが、本発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本発明の実施に際しては、請求の範囲において具体的に特定していない部材・部品の形状や構造、位置関係、接合形態等を、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜、改変して実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 アクチュエータ
2 エアゾール容器
21 容器本体
22 マウンテンカップ
23 ステム
3 転動体
4 ホルダー
41 凹部
42 ステム接続部
43 遊挿筒部
44 係合突起
45 球心
46 ヒンジアーム
47 軸部
48 交点
5 肩カバー
51 ガイド筒部
52 内側周壁部
53 外側周壁部
54 係合溝
55 ヒンジ受部
6 キャップ
7 導出路
71 大径孔部
72 段部
73 中径孔部
74 段部
75 テーパ孔部
76 小径孔部
77 噴出孔
81 球面状隆起
82 球面状隆起
9 ホルダーカバー
図1
図2
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図4
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