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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ガスケット及び密封構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20220106BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16L21/02 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017024107
(22)【出願日】2017-02-13
(65)【公開番号】P2018132078
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】森 大
(72)【発明者】
【氏名】川端 友樹
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0192348(US,A1)
【文献】特開昭62-274164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/00-15/14
F16L17/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材の中空筒形状の先端部の外周面と、第2部材の中空筒形状の内周面とが軸方向に嵌め合い状態とされ、その嵌め合い部分における前記外周面に形成された入隅状で且つ径方向内方側に凹んだ段差面と前記内周面との間に装着される弾性材製のガスケットであって、
前記軸方向の一端部側が前記段差面の径方向の面を構成する断壁部と前記段差面の軸方向の面を構成する前記外周面とに密着して当接した状態で前記外周面に外嵌される内周部分と、前記第2部材の前記内周面側に配される外周部とを有する環状のガスケット本体部と、
前記内周部分よりも前記径方向内方側に突出し且つ前記第1部材の前記先端部側に傾斜するよう延出されて記段差面に弾性変形を伴い当接する環状リップ部と、
前記ガスケット本体部の前記外周部に径方向外方側に突出し且つ前記環状リップ部とは径方向反対側に配され、前記第2部材の前記内周面に弾性変形を伴い当接する環状突部と、を備え、
前記嵌め合い部分では、前記環状リップ部の前記段差面に対する当接と、前記環状突部の第2部材における前記内周面に対する当接との2箇所でシールすることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットを前記嵌め合い部分における前記外周面に形成された入隅状で且つ径方向内方側に凹んだ段差面と前記内周面との間に装着し当該嵌め合い部分を密封する密封構造であって、
前記嵌め合い部分における前記第2部材の先端部は開口し、前記第1部材及び前記第2部材の嵌め合い状態では、前記ガスケットの前記環状突部が前記第2部材の前記内周面に当接し、且つ、前記第1部材の前記軸方向の先端面が前記第2部材の前記嵌め合い部分における前記軸方向の基端側で且つ当該軸方向に直交する基端面に当接することを特徴とする密封構造。
【請求項3】
請求項2に記載の密封構造において、
前記段差面は、前記第1部材の前記外周面に径方向内方側に凹むよう形成された第1段差面と該第1段差面より前記第2部材に対する前記軸方向の先側においてさらに径方向内方側に凹むように連接された第2段差面とによる2段形状面とされ、
前記ガスケットは、前記第1部材に対し、前記ガスケットにおける前記ガスケット本体部の一端部側が前記第1段差面に外嵌し、且つ、前記環状リップ部が前記第2段差面に当接するよう装着されることを特徴とする密封構造。
【請求項4】
請求項3に記載の密封構造において、
前記第1部材における前記第1段差面及び前記第2段差面は、傾斜面を介して連接され ていることを特徴とする密封構造。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の密封構造において、
前記第2部材における前記内周面には、当該第2部材の前記先端部側に径方向外方側に凹む段差面が連接されていることを特徴とする密封構造。
【請求項6】
請求項5に記載の密封構造において、
前記第2部材における前記段差面は、前記内周面に対して傾斜面を介して連接されていることを特徴とする密封構造。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の密封構造において、
前記第2部材における前記段差面の前記先端部側には、さらに径方向外方側に向け漸次凹む第2傾斜面が連接されていることを特徴とする密封構造。
【請求項8】
請求項2~請求項7のいずれか一項に記載の密封構造において、
前記第1部材における前記第2部材に対する前記軸方向の先端部は開口していることを特徴とする密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、配管同士の繋ぎ部分における環状の内外嵌め合い部分に装着される弾性材製のガスケット及びこのガスケットを用いた密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、前記のようなガスケット及び密封構造の例が記載されている。特許文献1には、円筒部とテーパ部とを備えたパッキング(ガスケット)を、2個の管部材における環状の内外嵌め合い部分に介在させて両管部材の嵌め合い部分を密封する密封構造が開示されている。また、特許文献2にも基本構成が特許文献1と共通する密封構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第2504083号公報
【文献】特開2001-27374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び特許文献2に記載されたガスケット及び密封構造の場合、いずれも、ガスケットが、嵌め合い部分で外側に位置する一方の管部材に対して、その円筒部を当該一方の管部材の内周面に密着するように装着される。また、嵌め合い部分で内側に位置する他方の管部材は、一方の管部材に装着された状態のガスケットにおけるテーパ部の内径部に差し込まれる。このとき、他方の管部材の外径は、ガスケットのテーパ部の最小内径より大とされているから、他方の管部材はテーパ部を押し広げるようにしてガスケットの内周部内に差し込まれる。ガスケットの円筒部は、一方の管部材の内周面に密着しているため、他方の管部材を差し込む際に、差し込み力及び押し広げ力がテーパ部に作用し、これによる内部応力が、テーパ部の基部(付け根部)に集中する。そのため、テーパ部の基部に亀裂等が生じることが懸念される。このような亀裂等を生じさせないためには、テーパ部と他方の管部材との締め代を小さくする(組付け荷重を小さくする)ことが有効であるが、一方の管部材と他方の管部材との芯ぶれや、加工公差によっては、テーパ部による周方向の均一なシール性が得られなくなることが予想される。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、組付け荷重が低いながらも、良好なシール性を保持することができるガスケットと、ガスケットの組付け安定性に優れた密封構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るガスケットは、第1部材の中空筒形状の先端部の外周面と、第2部材の中空筒形状の内周面とが軸方向に嵌め合い状態とされ、その嵌め合い部分における前記外周面に形成された入隅状で且つ径方向内方側に凹んだ段差面と前記内周面との間に装着される弾性材製のガスケットであって、前記軸方向の一端部側が前記段差面の径方向の面を構成する断壁部と前記段差面の軸方向の面を構成する前記外周面とに密着して当接した状態で前記外周面に外嵌される内周部分と、前記第2部材の前記内周面側に配される外周部とを有する環状のガスケット本体部と、前記内周部分よりも前記径方向内方側に突出し且つ前記第1部材の前記先端部側に傾斜するよう延出されて記段差面に弾性変形を伴い当接する環状リップ部と、前記ガスケット本体部の前記外周部に径方向外方側に突出し且つ前記環状リップ部とは径方向反対側に配され、前記第2部材の前記内周面に弾性変形を伴い当接する環状突部と、を備え、前記嵌め合い部分では、前記環状リップ部の前記段差面に対する当接と、前記環状突部の第2部材における前記内周面に対する当接との2箇所でシールすることを特徴とする。
【0007】
本発明のガスケットによれば、ガスケット本体部の一端部側が密封対象の第1部材における外周面の段差面に外嵌し、環状リップ部が第1部材の同段差面に当接し、さらに、環状突部が密封対象の第2部材の内周面に当接するよう構成されている。即ち、当該ガスケットを介した第1部材及び第2部材の嵌め合い部分では、環状リップ部の第1部材における前記段差面に対する当接部及び環状突部の第2部材における内周面に対する当接部の2箇所でシールがなされる。したがって、当該ガスケットの組付け荷重を低くおさえることができ、安定したシール性能が保持される。しかも、ガスケット本体部の外周部が嵌め合い方向の全幅に亘って第2部材の内周面に密着することがないので、組付け時に環状リップ部にかかる内部応力がガスケット本体部の変形により緩和される。これによって、環状リップ部の基部に応力の集中による亀裂が生じる懸念も少なくなる。また、ガスケット本体部の一端部が前記段差面に外嵌されることにより、ガスケット本体部が第1部材に対して一体化されて第1部材に対する装着状態が安定する。
【0008】
第2の発明に係る密封構造は、前記ガスケットを前記嵌め合い部分における前記外周面に形成された入隅状で且つ径方向内方側に凹んだ段差面と前記内周面との間に装着し当該嵌め合い部分を密封する密封構造であって、前記嵌め合い部分における前記第2部材の先端部は開口し、前記第1部材及び前記第2部材の嵌め合い状態では、前記ガスケットの前記環状突部が前記第2部材の前記内周面に当接し、且つ、前記第1部材の前記軸方向の先端面が前記第2部材の前記嵌め合い部分における前記軸方向の基端側で且つ当該軸方向に直交する基端面に当接することを特徴とする。
【0009】
これによれば、ガスケット本体部の一端部側が、第1部材における段差面に外嵌されるから、当該ガスケットの組付け性が安定し、また、環状リップ部が段差面に当接するから、この部分のシール性が確立される。さらに、ガスケット本体部における環状リップ部とは反対側の外周部には、第2部材の内周面に当接する環状突部が設けられているから、組付け荷重が小さいながらも、第1部材及び第2部材間のガスケットを介した面圧が高くなり、当該ガスケットによるシール性が良好に保持される。加えて、環状リップ部の基部への応力の集中も生じ難くなる。また、第1部材と第2部材との嵌め合い状態では、第1部材における前記嵌め合い方向の先端面が第2部材の嵌め合い部分における前記嵌め合い方向の基端側で且つ当該嵌め合いに直交する基端面に当接するから、第1部材及び第2部材の相互の嵌め合いが所定の位置に的確に位置決めされる。また、2部材内に密封対象としての媒体等が流通する場合、当該媒体の内圧が環状リップ部にかかり難く、環状リップ部の反転の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の密封構造において、前記段差面は、前記第1部材の前記外周面に径方向内方側に凹むよう形成された第1段差面と該第1段差面より前記第2部材に対する前記軸方向の先側においてさらに径方向内方側に凹むように連接された第2段差面とによる2段形状面とされ、前記ガスケットは、前記第1部材に対し、前記ガスケットにおける前記ガスケット本体部の一端部側が前記第1段差面に外嵌し、且つ、前記環状リップ部が前記第2段差面に当接するよう装着されるものとしてもよい。
【0011】
これによれば、ガスケット本体部の一端部側が、第1部材における2段形状の外周面の第1段差面に外嵌されるから、当該ガスケットの組付け性が安定する。また、環状リップ部が第2段差面に当接するから、2部材内に密封対象としての媒体等が流通する場合、当該媒体の内圧が環状リップ部にかかっても、第1段差面と第2段差面との間の段差部によって阻止され、環状リップ部の反転がより生じ難くなる。
【0012】
本発明の密封構造において、前記第1部材における前記第1段差面及び前記第2段差面は、傾斜面を介して連接されているものとしてもよい。
これによれば、当該ガスケットは、ガスケット本体部の一端部側を第1段差面に外嵌させる際にガスケット本体部の一端部側を傾斜面に沿わせることによって、円滑に第1部材に装着することができる。
【0013】
本発明の密封構造において、前記第2部材における前記内周面には、当該第2部材の前記先端部側に外方側に凹む段差面が連接されているものとしてもよい。
これによれば、当該ガスケットを介した第1部材及び第2部材の嵌め合いの際に、環状突部が第2部材の内周面に抵抗少なく当接し易くなる。
この場合、前記第2部材における前記段差面は、前記内周面に対して傾斜面を介して連接されているものとしてもよい。
これによれば、当該ガスケットを介した第1部材及び第2部材の嵌め合いの際、環状突部の第2部材における内周面に対する当接がより抵抗少なく円滑になされる。
また、前記第2部材における前記段差面の前記先端部側には、さらに外方側に向け漸次凹む第2傾斜面が連接されているものとしてもよい。
これによれば、第1部材と第2部材との嵌め合いの際に、第2傾斜面がガイド面として機能し、当該嵌め合いが円滑になされる。
【0014】
本発明の密封構造において、前記第1部材における前記第2部材部材に対する嵌め合い方向の先端部は開口しているものとしてもよい。
これによれば、嵌め合い部分における第2部材の第1部材に対する嵌め合い方向の先端部も開口しているので、第1部材及び第2部材のガスケットを介した嵌め合い状態では、第1部材及び第2部材の内部が互いに連通する。したがって、第1部材及び第2部材内を特定の媒体が流通する場合、この嵌め合い部分がガスケットによって密封されているから、嵌め合い部分から外部に当該媒体が漏出することがない。また、外部から嵌め合い部分を経て第1部材及び第2部材内に他の外部媒体が浸入することもない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組付け荷重が低く、良好なシール性を保持することができるガスケット、及び、当該ガスケットの組付け安定性に優れた密封構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るガスケット及びこれを用いた密封構造の第1の実施形態を示す部分破断縦断面図である。
図2図1のX部の拡大図である。
図3】本発明に係るガスケット及びこれを用いた密封構造の第2の実施形態を示す部分破断縦断面図である。
図4図3のY部の拡大図である。
図5】同実施形態の変形例を示す図4と同様図である。
図6】同実施形態の別の変形例を示す図4と同様図である。
図7】同実施形態のさらに別の変形例を示す図3と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2は、合成樹脂製の配管同士の繋ぎ部分に本発明を適用した例であって、この繋ぎ部分における環状の内外嵌め合い部分に装着される弾性材製のガスケット及びこのガスケットを用いた密封構造の第1の実施形態を示している。本実施形態におけるガスケット1は、密封対象の2部材としての第1配管(第1部材)2及び第2配管(第2部材)3における環状の内外嵌め合い部分4に装着される弾性材製のガスケットである。また、本実施形態における第1配管2及び第2配管3は、ともに中空円筒形で、嵌め合い部分4を介して軸Lに沿って同心的に接合される。
【0018】
ガスケット1は、ガスケット本体部10と、環状リップ部11と、環状突部12とを備え、ゴム等のエラストマーからなる。ガスケット本体部10は、嵌め合い部分4で内側に位置する第1配管2の外周面20に内方側(求心側)に凹むよう形成された段差面21に軸L方向に沿った一端部10a側が外嵌される形状とされている。また、環状リップ部11は、ガスケット本体部10の内周部10bから内方側且つ軸L方向に沿った他端部10c側に傾斜するよう延出されて、第1配管2の段差面21に当接する形状とされている。さらに、環状突部12は、ガスケット本体部10の外周部10dに形成されて、嵌め合い部分4で外側に位置する第2配管3の内周面30に当接する形状とされている。環状リップ部11は、第1配管2の段差面21に弾性変形を伴い当接する形状とされ、図2における2点鎖線部は、環状リップ部11が弾性変形する前の原形状を示している。
【0019】
本実施形態の密封構造において、前記ガスケット1は、第1配管2に対し、ガスケット本体部10の一端部10a側が前記段差面21に外嵌し、且つ、環状リップ部11が段差面21に当接するよう装着される。そして、嵌め合い部分4における第2配管3の第1配管2に対する軸Lに沿った嵌め合い方向aの先端部3aは開口し、また、第1配管2における第2配管3に対する軸Lに沿った嵌め合い方向bの先端部2aは開口し、第1配管2と第2配管3とは、双方の管内が互いに連通するよう嵌め合わされる。第1配管2及び第2配管3の嵌め合い状態では、ガスケット1の環状突部12が第2配管の内周面30に当接し、且つ、第1配管2の第2配管3に対する前記嵌め合い方向bの先端面2aaが第2配管3における前記嵌め合い方向aの基端側で且つ当該嵌め合い方向aに直交する基端面3bに当接する。本実施形態では、第2配管3の内周面30には、傾斜面31を介して、第2配管3の先端部3a側に外方側(遠心側)に凹む段差面32が連接されている。また、段差面32の先端部3a側には、さらに外方側に向け漸次凹む拡開したテーパ状の第2傾斜面33が連接されている。本実施形態においては、第1配管2及び第2配管3の内径及び外径はともに同じとされるが、嵌め合い部分4における第1配管2の先端部2a側部分は、他の部分より小径とされている。また、嵌め合い部分4における第2配管3は、他の部分より大径とされている。このように、嵌め合い部分4における第1配管2の外径及び第2配管3の内径の径差による空間部S内にガスケット1が収納されるように構成される。
【0020】
前記のように構成されるガスケット1及びこれを用いた第1配管2及び第2配管3の嵌め合い部分4の密封構造においては、ガスケット1が、第1配管2と第2配管3との環状の内外嵌め合い部分4に装着される。このガスケット1の装着に際しては、先ず、ガスケット1が第1配管2の段差面21に外嵌される。具体的には、ガスケット1が、嵌め合い方向aに沿って、ガスケット本体部10の一端部10a側を介して第1配管2の段差面21に外嵌される。この段差面21に対する外嵌は、ガスケット本体部10の一端部10a側が段差面21の断壁部210に当接するようになされる。したがって、ガスケット1が第1配管2に対して一体化された安定した状態で外嵌される。また、この外嵌の際に、環状リップ部11が第1配管2の段差面21に弾性変形を伴った状態で当接する。このとき、環状リップ部11は、ガスケット本体部10の内周部10bから内方側且つ他端部10c側に傾斜するよう延出されている(2点鎖線部参照)から、段差面21に対する弾性変形を伴った当接が抵抗少なくなされる。
【0021】
次いで、第2配管3が、第1配管2に対して嵌め合い方向aに沿って嵌め合わされる。この嵌め合いに際して、第2配管の先端部3a側には内周面30に連なるテーパ形状の第2傾斜面33が形成されているから、この第2傾斜面33がガイド面として機能し、嵌め合いの初期操作が円滑になされる。そして、嵌め合い操作をさらに進めると、ガスケット1に形成された環状突部12が、段差面32及び傾斜面31を経て内周面30に対して抵抗が抑制された状態で円滑に当接する。また、この嵌め合い操作は、第1配管2の第2配管3に対する嵌め合い方向bの先端面2aaが第2配管3の嵌め合い部分4における嵌め合い方向aの基端側で且つ当該嵌め合い方向aに直交する基端面3に当接するようになされる。これによって、第1配管2及び第2配管3の相互の嵌め合いが所定の位置に的確に位置決めされる。また、第1配管2及び第2配管3内に密封対象としての媒体等が流通する場合、当該媒体の内圧が環状リップ部11にかかり難く、環状リップ部11の前記内圧による反転の発生が効果的に抑制される。
なお、ガスケット1の装着は、第2配管3の内周面に内嵌してから、第1配管2を嵌め合せることによって、行ってもよい。
【0022】
このようなガスケット1を介した第1配管2及び第2配管3の嵌め合い部分4では、環状リップ部11の第1配管2における段差面21(内周面20)に対する当接部及び環状突部12の第2配管3における内周面30に対する当接部の2箇所でシールがなされる。したがって、当該ガスケット1の組付け荷重を低くおさえながら、両配管2,3内を流通する媒体等の外部漏出が防止され、また外部媒体の両配管2,3内への浸入が防止され、安定したシール性能が保持される。特に、組付け荷重が低いことにより、合成樹脂製であるにも拘わらず第1配管2及び第2配管3の嵌め合い部分4での変形が生じ難く、極めて有益である。しかも、ガスケット本体部10の外周部が嵌め合い方向a(b)の全幅に亘って第2配管3の内周面30に密着することがないので、組付け時に環状リップ部11にかかる内部応力がガスケット本体部10の変形により緩和される。これによって、環状リップ部11の基部に応力の集中による亀裂が生じる懸念も少なくなる。さらに、ガスケット本体部10における環状リップ部11とは反対側の外周部10dには、第2配管3の内周面30に当接する環状突部12が設けられているから、組付け荷重が小さいながらも、第1配管2及び第2配管3間のガスケット1を介した面圧が高くなり、当該ガスケット1によるシール性が良好に保持される。
【0023】
図3及び図4は、本発明に係るガスケット及びこのガスケットを用いた密封構造の第2の実施形態を示している。本実施形態では、第1配管2の外周面20に形成される段差面21が、第1配管2の外周面20に内方側(求心側)に凹むよう形成された第1段差面21aと第1段差面21aより第2配管3に対する嵌め合い方向bの先側においてさらに内方側に凹むように連接された第2段差面21bとによる2段形状面とされている。そして、ガスケット1は、第1配管2に対し、ガスケット本体部10の一端部10a側が第1段差面21aに外嵌し、且つ、環状リップ部11が第2段差面21bに当接するよう構成されている。本実施形態では、さらに、第1段差面21a及び第2段差面21bは、傾斜面22を介して連接されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0024】
このように構成される第2の実施形態においては、ガスケット本体部10の一端部10a側が、第1配管2における2段形状の段差面21を構成する第1段差面21aに外嵌されるから、当該ガスケット1の組付け性が安定する。また、環状リップ部11が2段形状の段差面21を構成する第2段差面21bに当接するから、第1配管2及び第2配管3内に密封対象としての媒体等が流通する場合、当該媒体の内圧が環状リップ部11にかかっても、第1段差面21aと第2段差面21bとの間の段差部(傾斜面22)によって阻止され、環状リップ部11の反転がより生じ難くなる。また、第1段差面21a及び第2段差面21bは、傾斜面22を介して連接されているから、当該ガスケット1を介した第1配管2及び第2配管3の嵌め合いの際に、ガスケット本体部10の一端部10a側を第1段差面21aに外嵌するとき、ガスケット本体部10の一端部10a側を傾斜面22に沿わせることによって、ガスケット1を第1配管2に円滑に装着させることができる。
その他の構成は、第1の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
【0025】
図5及び図6は、第2の実施形態の変形例及び別の変形例を示す。これらの変形例では、いずれも、第1配管2における第2配管3に対する嵌め合い方向bの先端部2aに、外向きの鍔状部2abが形成されている。両者は、鍔状部2abの形状が異なるだけで、鍔状部2abとしての後記する機能は同様に発揮される。即ち、図5の例では、鍔状部2abの下面(前記嵌め合い方向bに対向する面)が、嵌め合い方向bに沿って漸次径大化するテーパ面とされるのに対し、図6の例では、鍔状部2abが円板状に形成されている。このように、鍔状部2abが存在することにより、先端面2aaが前記例より幅広に形成され、これにより、第1配管2の先端面2aaと第2配管3の前記基端面3bとの当接面積が大となり、第1配管2及び第2配管3内に密封対象としての媒体等が流通する場合、当該媒体の内圧が環状リップ部11によりかかり難くなり、環状リップ部11の前記内圧による反転の発生を抑制する機能がより効果的に発揮される。
その他の構成は、第2の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
【0026】
図7は、第2の実施形態のさらに別の変形例を示す。この例では、第1配管2より第2配管3が大径とされ、第2配管3における嵌め合い部分4の外径面が、当該第2配管3の他の部分の外径面と面一とされ、嵌め合い部分4の内周面30から内向きの鍔状部3cが形成されている。この鍔状部3cの下面(嵌め合い方向a側の面)が前記と同様に嵌め合い方向aの基端面33caとされ、この基端面33caの下方部分に、ガスケット1を収納し得る空間部Sが形成されている。この基端面3caは、前記例と同様に、第1配管2と第2配管3との嵌め合い状態で、第1配管2の前記先端面2aaと当接する。したがって、第1配管2の先端面2aaと第2配管3の基端面3caとの当接関係によって、前記と同様の機能を奏する。
その他の構成は、第2の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明を割愛する。
【0027】
なお、前記実施形態では、第1部材及び第2部材を中空円筒形の第1配管2及び第2配管3としたが、これに限らず、一面が開口する筐体及びこの開口部を閉塞する蓋体とからなるものとしてもよい。また、第1部材及び第2部材や両部材の嵌め合い部分の形状(横断面形状)も円形に限らず、楕円形や略方形であってもよい。さらに、第1部材及び第2部材は、合成樹脂製に限らず、金属製であってもよく、或いは、一方が合成樹脂製で他方が金属製のような組み合わせでもよい。加えて、図5図7に示す例を第1の実施形態に適用することも、もとより可能である。その他、ガスケットの形状、嵌め合い部分の形状は、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の変更も可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ガスケット
10 ガスケット本体部
10a 一端部
10b 内周部
10c 他端部
10d 外周部
11 環状リップ部
12 環状突部
2 第1配管(第1部材)
2a 先端部
2aa 先端面
20 内周面
21 段差面
21a 第1段差面
21b 第2段差面
22 傾斜面
3 第2配管(第2部材)
3a 先端部
3b,3ca 基端面
30 内周面
31 傾斜面
32 段差面
33 第2傾斜面
4 嵌め合い部分
a 第2部材の第1部材に対する嵌め合い方向
b 第1部材の第2部材に対する嵌め合い方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7