(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20220106BHJP
H05H 1/26 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/26
(21)【出願番号】P 2017031474
(22)【出願日】2017-02-22
【審査請求日】2020-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 智
(72)【発明者】
【氏名】杉村 智
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-043467(JP,A)
【文献】特開2003-218099(JP,A)
【文献】特表2009-538391(JP,A)
【文献】特開平11-335868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
H05H 1/00- 1/54
A61L 2/00- 2/28
11/00-12/14
A61J 1/00-19/06
A61M 3/00- 9/00
31/00
39/00-39/28
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生成するためのケースと、
このケースに設けられるとともに、このケース内で生成されたプラズマを噴出する噴出口と、
上記ケースに圧縮気体を供給する圧縮気体供給源とを備え、
上記噴出口からワークの処理対象面側に噴出され、この噴出されたプラズマ流で上記処理対象面を改質する表面処理装置であって、
上記噴出口から噴出されたプラズマ流を上記処理対象面に沿って吸引するとともに、このプラズマ流を上記処理対象面の端部まで誘導する吸引力が備えられた吸引手段が設けられるとともに、
上記処理対象面が、筒の内面であり、
上記吸引手段の吸引口が、上記筒の端部に対応する位置に設けられるとともに、
上記吸引口の中心が上記筒の軸線上に設けられ、
上記処理対象面を、上記噴出口から噴出されたプラズマ流を上記処理対象面に沿う方向に導くガイドとして機能させ
る表面処理装置であって、
上記ワークには、小径部と大径部とが設けられ、その小径部の内面が上記処理対象面であり、
上記大径部の内面に接触して当該大径部をふさぐ搬送治具を備え、
上記搬送治具には軸方向に貫通する流通孔が形成され、この流通孔の一端が上記小径部に接続されるとともに、他端が上記吸引手段に接続されたことを特徴とする表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケース内で生成したプラズマを、圧縮気体とともにプラズマ流としてケースからワークに向かって噴出させるいわゆるプラズマトーチ方式の表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして、特許文献1に記載された表面処理装置が従来から知られている。
この従来の表面処理装置は、一対の電極を設けたケースに圧縮気体である処理ガスを供給する供給源が接続される。そして、上記電極間で生成されたプラズマは、ケースに設けた噴出口から処理ガスとともに噴出され、ワークの処理対象面に吹き付けられる。
さらに、上記噴出口にほぼ隣接する位置に排気流路を設け、プラズマを発生させる過程で生成する窒素酸化物やオゾンを排気できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにした従来の表面処理装置では、プラズマ流を噴出する噴出口に隣接する位置に、プラズマを発生させる過程で生成される窒素酸化物やオゾンを排気する排気流路を設けているので、プラズマ流の広がりをほとんど期待できない。そのため、処理面積が大きくて、その端部が上記排気流路からはみ出すようなときには、処理面積の端部まで表面処理ができないという問題があった。
【0005】
また、処理面積がプラズマ流の噴出口周りに限定されるので、処理対象面の面積が広いときには、上記噴出口側あるいは処理対象面側のいずれか一方を移動させなければ、処理対象面のすべてを改質処理できないという問題もあった。
【0006】
一方、
図8に示すように、ワークであるパイプWの内面1だけを改質処理する装置も従来から知られている。この従来の装置は、上記パイプWの開口側に、圧縮気体である処理ガスとともにプラズマを噴出させるノズル2を設け、このノズル2から噴出されたプラズマ流をパイプWの内面1に導く。このようにしてパイプW内に導かれたプラズマによって、上記内面1が改質処理される。
【0007】
ただし、この従来の装置では、パイプWの内面1のすべてを改質処理できない場合があったが、その理由は次の通りである。
すなわち、ノズル2から噴出されたプラズマ流の一部が、矢印Aで示すように、パイプWの開口周囲に跳ね返されてしまうので、その分、内面1に導かれるプラズマ量が少なくなる。
【0008】
パイプWの内面1に導かれるプラズマ量が少なくなれば、プラズマ流の下流にいけばいくほどプラズマの活性度が低くなる。
そのために、パイプWが長いときには、
図8に示した仮想線Xを境にして改質処理ができない領域ができてしまう。
【0009】
また、パイプWの長さが長いと、プラズマ流がパイプWの先端から終端にいたるまでに時間がかかってしまう。ところが、プラズマの活性度は時間とともに減衰するので、もし、プラズマ流が、パイプWの先端から終端にいたる過程で時間がかかり過ぎれば、プラズマ流の下流側におけるプラズマの活性度が低くなり、その分、上記仮想線Xを境にして改質処理ができない領域ができてしまう。
【0010】
そのために、パイプの長さが長いときには、内面1の改質処理に2工程を必要としていた。すなわち、先ず、パイプWの一方の開口をノズル2側に位置させてプラズマ流を内面1に誘導する。次に、パイプWをひっくり返して、その他方の開口をノズル2側に位置させてプラズマ流を内面1に誘導する。したがって、長いパイプWの内面1の改質処理の場合には、2工程を必要とするという問題があった。
【0011】
一方、上記したようにノズル2から噴出されたプラズマ流の一部が、矢印Aで示すように、パイプWの開口周囲に跳ね返されるということは、その開口周囲も表面処理されてしまうことを意味する。もし、パイプWの内面だけを表面処理したいとき、その内面以外の箇所を表面処理してしまうと色々な不都合が発生してしまう。
【0012】
この発明の目的は、プラズマ流の噴出口とワークの処理対象面とを相対移動させなくても、その処理対象面の全面を効率よく改質処理できる表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、ケースに設けられた噴出口から噴出されたプラズマ流をワークの処理対象面に沿って吸引するとともに、このプラズマ流を上記処理対象面の端部まで誘導する吸引力が備えられた吸引手段を設けている。
【0014】
したがって、例えばワークがパイプで、その内面を処理対象面にしたときには、パイプの一方の開口を噴出口側に向け、他方の開口を吸引手段側に向ける。そして、吸引手段を作動させれば、その吸引力が大きいので、上記パイプの一方の開口周囲の外気もパイプ内に引き込まれる。このように外気を引き込む流れが、噴出口から噴出するプラズマ流に対して随伴流になるので、プラズマ流がパイプの開口周囲に当たることなく、そのほとんどがパイプ内に誘導される。
【0015】
また、吸引手段には、噴出口から噴出されるプラズマ流を上記処理対象面の端部まで誘導する吸引力が備えられているので、例えば長いパイプでも、プラズマの活性度を維持したまま、全長にわたって改質処理をすることができる。
【0020】
さらに、処理対象面である筒の内面を、処理対象面に沿った上記ガイドとして機能させたので、特別にガイドを設けることなく、噴出口から噴出されたプラズマ流を吸引手段に誘導することができる。
【0021】
そして、上記ワークに小径部と大径部とが設けられ、その小径部の内面が上記処理対象面であり、上記大径部の内面に接触して当該大径部をふさぐ搬送治具を備え、上記搬送治具には軸方向に貫通する流通孔が形成され、この流通孔の一端が上記小径部に接続され、他端が上記吸引手段に接続されている。
このように小径部と大径部とを備えたワークとして、例えば、注射器のシリンダ等が考えられる。注射器のシリンダは、針を連結する部分が小径部となり、液体を収容する部分が大径部になる。
そして、注射器の小径部の直径はかなり小さいので、小径部の外側からプラズマ流を吹き付けても、プラズマが小径部に入っていかないが、この発明のように、大径部側から吸引すれば、上記小径部の内面にもプラズマ流が流入する。
【0022】
さらに、上記搬送治具によって、ワークを連続的に搬送させながら、小径部の内面を表面処理することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、プラズマ流を噴出させる噴出口とワークとを相対移動させなくても、ワークの処理対象面の全面を効率よく改質処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、この発明の
第6実施形態と、この発明の参考例である
第1,第2,第3,第4,第5
,第7実施形態を説明する。
図1に示した第1実施形態は、ケースCに図示していない一対の電極を設け、これら電極間でプラズマを生成するようにしている。そして、このケースCには、圧縮気体である処理ガスをケースCに供給する圧縮気体供給源Pを接続している。
さらに、上記ケースCには、ケースCに供給された処理ガスとともにプラズマを噴出する噴出口10を設けている。
【0026】
なお、上記噴出口10は、ケースCに孔を直接開けてもよいし、ケースCとは別部品であるノズルを取り付けてもよい。要するに、ケースC内のプラズマ及び処理ガスを噴出する機能さえ備えていれば、その構成は問わない。
【0027】
上記のようにした噴出口10には、噴出口10から噴出したプラズマ流の飛散を防止し、そのプラズマ流を目的の方向に導くガイド11を設けている。そして、このガイド11の周囲には、プラズマ流を、後で説明するワークWの処理対象面12に誘導する誘導片11aを設けている。
【0028】
一方、噴出口10と対向間隔を保った位置に吸引手段Vを設けているが、この吸引手段Vは図示していないエアポンプあるいは電動ファン等を主要素にしてなる。また、この吸引手段Vには吸引口13を設け、噴出口10から噴出されたプラズマ流や、窒素酸化物、オゾン等を集束して吸引できるようにしている。
【0029】
上記のようにしたガイド11と吸引口13との間に、パイプからなるワークWをセットするための空間を設けているが、この空間を、ワークWが横断できる大きさを有する移動可能領域Eとしている。したがって、図示していないロボット等のワーク保持手段にワークを保持させて、ワークWをセットすることができる。
【0030】
次に、パイプからなるワークWの内面である処理対象面12を改質処理する場合について説明する。
なお、ワークWが上記のようにパイプからなる場合には、少なくともパイプの全長に相当する移動可能領域Eを確保しておく。
【0031】
そして、図示していないロボット等のワーク保持手段をこの移動可能領域Eに導入して、ワークWの一方の開口12aを噴出口10側に向け、他方の開口12bを吸引手段V側に向けるとともに、ロボットを静止させる。
このとき、上記吸引口13の中心が上記ワークWの軸線上に位置するようにする。
ワークWを上記の状態に保ったまま、噴出口10から処理ガスとともにプラズマを噴出させると同時に吸引手段Vを駆動して吸引力を発揮させる。
【0032】
そして、吸引手段Vは、上記処理ガスを含んだプラズマ流を少なくとも一方の開口12aから他方の開口12bまで吸引する吸引力を有するので、噴出口10から噴出されたプラズマ流は、上記開口12a,12b間に行き渡る。なお、上記他方の開口12bがこの発明の処理対象面の端部nになる。
また、噴出口10の噴出力と、吸引手段Vの吸引力とが相まって、一方の開口12a側における処理ガスを含んだプラズマ流Fの流速を大きくできるで、一方の開口12aには外気も吸い込まれる。この外気がプラズマ流に対して随伴流Bとなるので、従来のようにプラズマが開口12aの周囲に当たったりしなくなる。
【0033】
しかも、ガイド11には、プラズマ流をワークWの処理対象面12に誘導する誘導片11aを設けているので、この誘導片11aも機能してプラズマの飛散を防止できる。
また、吸引手段Vの吸引口13の開口径は、上記内面12の内径に等しいか、それよりもわずかに大きいのが理想的である。なぜなら、上記開口径が大きすぎると、吸引手段Vの吸引力が、外気を吸引するために消費され、プラズマ流に対する吸引力が弱くなるからである。
【0034】
いずれにしても、噴出口10から噴出されたプラズマ流は、上記開口12a,12b間に行き渡るので、パイプの内面である処理対象面12の全面が改質処理される。
また、プラズマ生成過程で生成される窒素酸化物やオゾンも噴出口10から噴出されるが、それらは吸引手段Vで吸引される。ただし、窒素酸化物やオゾンは比重が大きいので、特に、吸引手段Vの吸引力を大きくしなくても、最終的には吸引口13側に沈んで吸引手段Vに吸引される。しかし、この実施形態では吸引手段Vの吸引力で窒素酸化物やオゾンを積極的に吸引するようにしている。
【0035】
したがって、上記した第1実施形態は、噴出口10から噴出されたプラズマ流を処理対象面12に沿って吸引するとともに、このプラズマ流を一方の開口12aから他方の開口12bまで誘導する吸引力を備えた吸引手段Vを備えることによって、処理対象面12の全面を一度に改質処理すると同時に、窒素酸化物やオゾンを積極的に吸引する点に特徴を有する。
また、処理対象面12以外の不必要な部分まで、表面処理させないようにした点も特徴の1つである。言い換えると、処理対象面12に対するプラズマ流のコントロールが可能になった点が特徴となる。
【0036】
なお、第1実施形態におけるワークWの処理対象面12は、プラズマ流を誘導するガイドとしても機能する。言い換えると、ワークWの処理対象面12をガイドとして機能させた点にも特徴を有する。
【0037】
図2に示した第2実施形態は、一対のプレートをワークW1,W2とするとともに、これらワークW1,W2を上記第1実施形態と同じ移動可能領域Eにおいて間隔を保って対向させ、その対向面を処理対象面14,15にした点が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じである。
【0038】
すなわち、この第2実施形態においても、一対の電極を備えたケースCに圧縮気体供給源Pを接続するとともに、ケースCに設けた噴出口10の周囲に、誘導片11aを備えたガイド11を設けている。また、上記噴出口10に対向する位置に、吸引口13を開口させた吸引手段Vを設けるとともに、噴出口10と吸引手段Vとの間に移動可能領域Eを設けている。
【0039】
したがって、処理ガスを含むプラズマ流を、ワークW1,W2の対向間隔に供給して処理対象面14,15の全面を一度に改質処理するとともに、窒素酸化物やオゾンを同時に吸引できる。
なお、この第2実施形態においても、一対のワークWの処理対象面14,15をガイドとして機能させるとともに、上記処理対象面14,15の下端を、この発明の処理対象面の端部n1,n2としている。
【0040】
図3に示した第3実施形態は、処理対象面16の面積が大きなプレートをワークWとするとともに、ワークWの側面も処理対象面16とした場合の実施形態である。したがって、第3実施形態における処理対象面16の端部nは、ワークWの側面であって
図3で示す下端に位置することになる。
そして、第3実施形態は、処理対象面16の平面の面積に合わせて、ガイド11と吸引口13の開口面積を対応させるようにしたもので、その他は第1,2実施形態と同じである。
【0041】
すなわち、この第3実施形態においても、一対の電極を備えたケースCに圧縮気体供給源Pを接続するとともに、ケースCに設けた噴出口10の周囲に、誘導片11aを備えたガイド11を設けている。また、上記噴出口10と対向する側に、吸引口13を開口させた吸引手段Vを設けるとともに、噴出口10と吸引手段Vとの間に移動可能領域Eを設けている。
【0042】
そして、上記ガイド11は、図示のようにワークWの処理対象面16との間に所定の間隔を保つとともに、処理対象面16の平面全部を覆っている。処理対象面16の平面全部を覆うガイド11の周囲には、プラズマ流を吸引口13に向かって誘導する誘導片11aを設けている。この誘導片11aは、ワークWの処理対象面16に対してわずかに外側に位置するとともに、その内径を吸引口13の内径とほとんど同じにしている。
【0043】
したがって、吸引手段Vを駆動して吸引力を発揮させつつ、噴出口10から処理ガスとともにプラズマ流を噴出すると、このプラズマ流は、噴出口10からの噴出力と、吸引手段Vの吸引力の相乗効果によって、ガイド11とワークWの処理対象面16との対向間隔に案内されて処理対象面16上で四方に拡散しながら流れるとともに、その流れが誘導片11aに当たって吸引手段V方向に転換する。
【0044】
このように誘導片11aで方向転換されたプラズマ流は、吸引手段Vの吸引力に引っ張られて吸引口13に向かい、プラズマ生成過程で生成された窒素酸化物やオゾンとともに吸引手段Vに吸引される。
上記のことからも明らかなように、この第3実施形態では、ガイド11とワークWとの間を通るプラズマ流でワークWの処理対象面16が表面改質されるとともに、窒素酸化物やオゾンもプラズマ流にともなって吸引手段Vに吸引されることになる。
また、ワークWのうち、プラズマ流が流れない裏面は表面処理されることはない。
【0045】
図4に示した第4実施形態は、ワークWをプレートにするとともに、その処理対象面16をワークWの一方の平面に限定した場合である。そして、ガイド11はワークWの上記処理対象面16と対向して所定の間隔を維持し、ガイド11と処理対象面16との間に形成される上記間隔をプラズマ流の誘導路としている。
【0046】
さらに、吸引手段Vの吸引口13は、ワークWの周囲と対向する部分を開口させるとともに、全体的にはドーナツ状にしたもので、上記誘導路からプラズマ流を直接吸引できるようにしている。
また、この第4実施形態では、ガイド11と対向する下方側が、この発明の保持手段の移動可能領域Eとなる。
【0047】
したがって、吸引口13の下方から図示していないロボット等のワーク保持手段を上昇させて、所定の位置でワークWをセットすることができる。
上記以外の構成は、第3実施形態と同じである。
すなわち、この第4実施形態においても、一対の電極を備えたケースCに圧縮気体供給源Pを接続するとともに、ケースCに設けた噴出口10の周囲に、上記誘導片11aを備えたガイド11を設けている。
【0048】
上記のようにした第4実施形態では、吸引手段Vを駆動して吸引力を発揮させつつ、噴出口10から処理ガスとともにプラズマ流を噴出すると、このプラズマ流は、噴出口10からの噴出力と、吸引手段Vの吸引力の相乗効果によって、ガイド11とワークWの処理対象面16との対向間隔に形成される誘導路に案内されて処理対象面16上で四方に拡散しながら流れるとともに、この誘導路から、吸引口13に直接吸引されることになる。
【0049】
このように誘導片11aで方向転換されたプラズマ流は、吸引手段Vの吸引力に引っ張られて吸引口13に向かい、プラズマ生成過程で生成された窒素酸化物やオゾンとともに吸引手段Vに吸引される。
そして、ガイド11とワークWとの間の誘導路を通るプラズマ流でワークWの処理対象面16が表面改質されるとともに、窒素酸化物やオゾンもプラズマ流にともなって吸引手段Vに吸引されることになる。なお、この第4実施形態においても、処理対象面16の外周縁が、この発明における処理対象面の端部nになる。
【0050】
図5に示した第5実施形態は、第4実施形態と同様に、ワークWをプレートにするとともに、その処理対象面19をワークWの一方の平面に限定した場合である。そして、ガイド11はワークWの上記処理対象面19のほぼ全面と対向して所定の間隔を維持し、ガイド11と処理対象面19との間に形成される上記間隔をプラズマ流の誘導路としている。
【0051】
さらに、吸引手段Vの吸引口13は、全体的には円形にするとともに、ワークWの処理対象面19の端部nと対向させたもので、上記誘導路に誘導されたプラズマ流を直接吸い上げるようにしたものである。
また、この第5実施形態では、ワークWの下方側が、この発明の保持手段の移動可能領域Eとなり、第4実施形態と同様にロボット等のワーク保持手段を用いてワークWを自動的にセットできる。
【0052】
したがって、吸引手段Vを駆動して吸引力を発揮させつつ、噴出口10から処理ガスとともにプラズマ流を噴出すると、このプラズマ流は、噴出口10からの噴出力と、吸引手段Vの吸引力の相乗効果によって、ガイド11とワークWの処理対象面19との対向間隔形成された誘導路に案内されて、処理対象面19上で四方に拡散しながら流れるとともに、その流れが誘導片11aに当たって吸引口13の方向に転換して、プラズマ生成過程で生成された窒素酸化物やオゾンとともに吸引手段Vに吸引される。
【0053】
図6に示した第6実施形態は、ワークWが注射器のシリンダのように小径部20と大径部21とを備え、その小径部20の内面を処理対象面22としたものである。
そして、上記大径部21内には、棒状の搬送用治具23を挿入し、表面処理工程において、ワークWが搬送用治具23とともに搬送されるようにしている。
【0054】
上記のようにした搬送用治具23は、その軸中心に沿って流通孔24を形成し、この流通孔24の一端を小径部20内に接続させ、他端を各実施形態と同様の吸引口13に接続している。
【0055】
したがって、搬送用治具23とともにワークWを移動して、小径部20とケースCに設けた噴出口10とを対応させるとともに搬送用治具23の流通孔24を吸引口13に対応させて吸引手段Vを駆動すれば、噴出口10から噴出されたプラズマ流は、噴出口10からの噴出力と吸引手段Vの吸引力との相乗効果によって小径部20内に導かれ、処理対象面22が表面処理されることになる。
【0056】
上記のように小径部20内の処理対象面22の表面処理が終了したら、搬送用治具23とともにワークWを次の工程に移動する。
なお、
図6において、符号Pは圧縮気体供給源で、各実施形態と同様に圧縮気体である処理ガスをケースCに供給するためのものである。
【0057】
図7に示した第7実施形態は、搬送用治具25を、第6実施形態と相違させたものである。すなわち、この第7実施形態の搬送用治具25はキャップ状にしたもので、その凹部25aに大径部21を嵌めて大径部21の開口をふさぐようにしている。そして、この搬送用治具25に形成した流通孔26を吸引口13に連通させている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
噴出口を固定しながら処理対象面を表面改質するプラズマトーチ方式の表面処理装置に適している。
【符号の説明】
【0059】
C…ケース、10…噴出口、P…圧縮気体供給源、11…ガイド、11a…誘導片、W,W1,W2…ワーク、13…吸引口、12,14~19,22…処理対象面、V…吸引手段、E…移動可能領域、F…プラズマ流、n…端部、20…小径部、21…大径部、23,25…搬送用治具、24,26…流通孔