(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】製麺用粉末組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20220106BHJP
【FI】
A23L7/109 A
(21)【出願番号】P 2017134834
(22)【出願日】2017-07-10
【審査請求日】2020-06-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)掲載年月日 平成29年1月18日 掲載アドレス http://www.flour-net.com/season/2017/01/post-166.html (2)掲載年月日 平成29年2月4日 掲載アドレス http://www.flour-net.com/health/2017/02/post-3.html (3)発行年月日 平成29年1月10日 刊行物 米麦日報 平成29年1月10日付け第2面 発行者名 食品産業新聞社 (4)発行年月日 平成29年1月11日 刊行物 米麦日報 平成29年1月11日付け第8面 発行者名 食品産業新聞社 (5)発行年月日 平成29年1月20日 刊行物 麺業新聞 平成29年1月20日付け第8面 発行者名 麺業新聞社
(73)【特許権者】
【識別番号】302037928
【氏名又は名称】吉原食糧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】吉原 良一
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253150(JP,A)
【文献】特開平07-203884(JP,A)
【文献】特開2002-186458(JP,A)
【文献】特開2016-182059(JP,A)
【文献】実開平06-086491(JP,U)
【文献】特開2005-287496(JP,A)
【文献】特開平01-047358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともa)小麦粉、b)平均粒径50μm以下の
炭酸カルシウム粉末及びc)平均粒径20μm以下の
酸化マグネシウム粉末を含む製麺用粉末組成物を製造する方法であって、
(1)前記小麦粉の一部と、前記
酸化マグネシウム粉末を乾式で混合することにより第1混合粉末を得る第1工程、
(2)前記第1混合粉末と、少なくとも前記小麦粉の残り及び前記
炭酸カルシウム粉末とを乾式混合することにより第2混合粉末を得る第2工程、
を含むことを特徴とする製麺用粉末組成物の製造方法。
【請求項2】
第1工程において混合する小麦粉の重量が、第1工程で小麦粉と混合される
酸化マグネシウム粉末の重量の0.5~5倍である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
製麺用粉末組成物中における
酸化マグネシウム粉末の含有量がマグネシウム含有量として0.1~0.5重量%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
製麺用粉末組成物中における
炭酸カルシウム粉末の
カルシウム含有量がマグネシウム含有量の1.5~2.5倍である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
かんすいを配合する工程を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な製麺用粉末組成物の製造方法に関する。特に、本発明は、小麦粉、カルシウム成分及びマグネシウム成分を含む製麺用原料粉末を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康に対する関心の高まり等を背景として、各種の栄養成分を積極的に補給できるように、これらの各種成分そのものをサプリメントとして提供するほか、栄養成分を食品に配合した製品が開発・販売されるに至っている。これらの製品としては、特に菓子類、清涼飲料水、乳製品、麺類等の加工食品を中心に種々のものが知られている。
【0003】
多くの栄養成分の中でも、ミネラル成分も重要であり、その中でもカルシウム成分及びマグネシウム成分の役割も大きい。例えばマグネシウムは筋肉の弛緩、カルシウムは筋肉の収縮にそれぞれ関わっており、これらの相互的な働きによって、筋肉が瞬時に弛緩・収縮できる結果、円滑な動きができるようになる。従って、例えばマラソン、トライアスロン、サイクリング等の持久系スポーツの愛好者が増える中、栄養バランスの優れた「アスリート食」への関心も高まっているが、これらの愛好者(アスリート)にとってもカルシウム成分及びマグネシウム成分の摂取は重要である。このような機能の他にも、カルシウム成分は、体内のイオンバランスの維持、抗アレルギー作用、体内の浸透圧の保持等において重要な役割を担っている。マグネシウム成分は、エネルギー代謝の促進、体温及び血圧の保持等において重要な役割を果たしている。
【0004】
かかる見地より、炭水化物の供給源となる加工食品の代表例である麺類においても、カルシウム成分及びマグネシウム成分を小麦粉に配合したものが提案されている。例えば、即席麺等の食品に添加してカルシウム及び/又はマグネシウムを強化するための添加物として、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及びドロマイトからなる群から選ばれた少なくとも1種(A)100重量部に対し、加工デンプン(B)を0.1~80重量部含有させてなることを特徴とする食品添加剤スラリー組成物が知られている(特許文献1)。
【0005】
また例えば、材料となる粉に、水、岩塩、及び所要の添加物を加え、これを捏ねて延ばすことにより麺生地を形成し、その麺生地を細長く成形することを特徴とする製麺方法において、上記岩塩にはミネラル成分のカルシウム又はマグネシウムが食塩の2倍以上含まれていることを特徴とする方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-29218
【文献】特開2006-6138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食品の中でも特に麺類は、沸騰水中で茹でる工程があるため、カルシウム成分及びマグネシウム成分として水溶性化合物を含有させると、前記工程でこれらの成分が茹で汁に大量に溶出してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、これら成分の溶出を防ぐため、カルシウム成分及びマグネシウム成分として水難溶性化合物を用いることが考えられる。これによると、茹でる工程で溶出しにくくなるが、同時に体内での吸収も行われにくくなる。また、水難溶性であるがゆえに製造された麺の中に水難溶性化合物の粒子が固形分として存在するが、大きな粒子のカルシウム化合物又はマグネシウム化合物を用いると、食感が悪くなってしまう。このため、製麺用の原料としては、より微細な粒子からなる水難溶性化合物を用いる必要がある。
【0009】
しかしながら、カルシウム成分又はマグネシウム成分として微細な粒子からなる粉末を使用すると、小麦粉と混合する工程において十分に混合することが困難になることがある。すなわち、微細な粉末からなるカルシウム化合物又はマグネシウム化合物を小麦粉と乾式にて混合しようとすると、小麦粉に混入することなく粉塵として滞留したり、そのままミキサー等の容器に付着することにより、カルシウム化合物又はマグネシウム化合物の仕込み量の一部しか小麦粉と混合できなくなり、組成がうまく制御できなくなるという問題がある。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、微細な粉末からなるカルシウム化合物又はマグネシウム化合物の所定量をより確実に含有させることができる製麺用粉末組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の工程を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の製麺用粉末組成物の製造方法に係る。
1. 少なくともa)小麦粉、b)平均粒径50μm以下の水難溶性カルシウム化合物粉末及びc)平均粒径20μm以下の水難溶性マグネシウム化合物粉末を含む製麺用粉末組成物を製造する方法であって、
(1)前記小麦粉の一部と、前記水難溶性マグネシウム化合物粉末の一部又は全部とを乾式で混合することにより第1混合粉末を得る第1工程、
(2)前記第1混合粉末と、少なくとも前記小麦粉の残り及び前記水難溶性カルシウム化合物粉末とを乾式混合することにより第2混合粉末を得る第2工程、
を含むことを特徴とする製麺用粉末組成物の製造方法。
2. 第1工程において混合する小麦粉の重量が、第1工程で小麦粉と混合される水難溶性マグネシウム化合物粉末の重量の0.5~5倍である、前記項1に記載の製造方法。
3. 製麺用粉末組成物中における水難溶性マグネシウム化合物粉末の含有量がマグネシウム含有量として0.1~0.5重量%である、前記項1に記載の製造方法。
4. 製麺用粉末組成物中における水難溶性カルシウム化合物粉末の含有量がマグネシウム含有量の1.5~2.5倍である、前記項3に記載の製造方法。
5. 水難溶性マグネシウム化合物粉末が酸化マグネシウム粉末である、前記項1に記載の製造方法。
6. 水難溶性カルシウム化合物粉末が炭酸カルシウム粉末である、前記項1に記載の製造方法。
7. かんすいを配合する工程を含まない、前記項1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微細な粉末からなるカルシウム化合物又はマグネシウム化合物の所定量をより確実に含有させることができる製麺用粉末組成物の製造方法を提供することができる。
【0014】
このようにして得られる製麺用粉末組成物では、カルシウムとマグネシウムを所定量(特に重量比Mg:Caでおよそ1:2程度)含ませることができ、なおかつ、それから得られる麺を茹でる際にも溶出しにくいので、持久系スポーツのアスリートに必要なカルシウム成分及びマグネシウム成分をバランス良く摂取することができる。
【0015】
また、特にマグネシウム化合物として酸化マグネシウム、カルシウム化合物として炭酸カルシウムを用いると、これらが水に触れると強アルカリ性となってラーメンのように黄色い麺となり、弾力の強い食感、風味等をもつ麺に仕上ることができる。その結果、かん水を使用しなくても、所望の特性をもつ麺を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.製麺用粉末組成物
本発明の製麺用粉末組成物(本発明粉末組成物)は、a)小麦粉、b)平均粒径50μm以下の水難溶性カルシウム化合物粉末及びc)平均粒径20μm以下の水難溶性マグネシウム化合物粉末を含むことを特徴とする。
【0017】
小麦粉は、通常は強力粉を主成分とするものであれば良いが、必要に応じて例えば薄力粉、中力粉等が含まれていても良い。本発明で使用する小麦粉自体は、公知又は市販のものを使用することもできる。また、市販品では、麺用小麦粉、中華麺小麦粉、そばつなぎ用小麦粉等も好適に用いることができるが、他の用途の小麦粉(例えば菓子用小麦粉)等も配合しても良い。従って、市販のミックス粉等も使用することができる。なお、本発明において「主成分」とは、その含有率が50重量%以上であることをいう。
【0018】
小麦粉の原料となる小麦の種類も限定的でなく、製造する麺の種類、所望の性質等に応じて、例えば硬質小麦、中間質小麦、軟質小麦、デュラム小麦等の中から1種又は2種以上適宜選択することができる。
【0019】
また、小麦粉の平均粒径も、特に限定されず、公知又は市販の小麦粉が有する粒径の範囲内であれば良い。従って、例えば平均粒径150μm以下(好ましくは30~120μm程度)の市販品を使用することができるが、これに制限されない。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法による値である。
【0020】
本発明粉末組成物中における小麦粉の含有量は、通常は90~99重量%程度とすれば良く、特に95~98重量%とすることが好ましい。
【0021】
水難溶性マグネシウム化合物粉末は、水に難溶性のマグネシウム化合物であり、例えば酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。本発明では、コスト等の点で酸化マグネシウムを好適に用いることができる。なお、本発明において「難溶性」とは、水(20℃)に対する溶解度が0.1g/L以下のものをいう(以下同じ。)。
【0022】
水難溶性マグネシウム化合物粉末は、その平均粒径が通常20μm以下であり、特に15μm以下であることが好ましく、さらに10μm以下であることがより好ましい。平均粒径が20μmを超える場合は、特に本発明粉末組成物を製麺化した場合の食感が低下するおそれがある。なお、前記平均粒径の下限値は、限定的ではないが、通常は1μm程度とすれば良い。水難溶性マグネシウム化合物粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱法(特に測定装置「9320HRA」日機装株式会社製)による値である。
【0023】
本発明粉末組成物中における水難溶性マグネシウム化合物粉末の含有量は、限定的ではないが、マグネシウムとして通常0.1~0.5重量%程度とし、好ましくは0.2~0.4重量%とすれば良い。
【0024】
水難溶性カルシウム化合物粉末は、水に難溶性のカルシウム化合物であり、例えば炭酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等が挙げられる。本発明では、コスト等の点で炭酸カルシウムを好適に用いることができる。
【0025】
水難溶性カルシウム化合物粉末は、その平均粒径が通常50μm以下であり、特に30μm以下であることが好ましく、さらに15μm以下であることがより好ましい。平均粒径が50μmを超える場合は、特に本発明粉末組成物を製麺化した場合の食感が低下するおそれがある。なお、前記平均粒径の下限値は、限定的ではないが、通常は1μm程度とすれば良い。水難溶性カルシウム化合物粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱法(特に測定装「SALD-2000J」島津製作所製)による値である。
【0026】
本発明粉末組成物中における水難溶性カルシウム化合物粉末の含有量は、カルシウムとして通常0.1~2重量%とし、好ましくは0.2~0.8重量%とすれば良い。特に、マグネシウムに対する比率(重量)として、カルシウム含有量がマグネシウム含有量の1.5~2.5倍(特に1.7~2.2倍)のカルシウム含有量となるように設定することが望ましい。これにより、持久系スポーツのアスリート等にとって必要なカルシウム成分及びマグネシウム成分をバランス良く摂取できる組成物を提供することができる。
【0027】
本発明粉末組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて公知又は市販の麺類に配合されている食品添加物を含有させることもできる。例えば、グルテン(小麦粉グルテン)、食用色素、食塩、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらも市販品を使用することができる。
【0028】
本発明粉末組成物は、製麺の原料としてそのまま用いることができるほか、他の原料とブレンドして製麺用原料として使用することもできる。
【0029】
本発明粉末組成物を製麺化する場合は、公知の方法に従えば良い。例えば、1)本発明粉末組成物及び水を含む混練物を製造する工程及び2)前記混練物を用いて製麺化する工程を含む製造方法を採用することができる。製麺する際の条件は、特に限定されず、公知又は市販の製麺用粉末を使用する場合の条件と同様にして実施すれば良い。
【0030】
本発明粉末組成物は、各種の麺類の製造原料として有用であり、例えばうどん、中華麺、そうめん、ひやむぎ、そば、パスタ等に用いることができる。また、例えば生麺、茹で麺、乾麺、揚げ麺(即席麺)等のいずれの製品形態にも適用することができる。特に、カルシウム含有量がマグネシウム含有量の1.5~2.5倍(特に1.7~2.2倍)の比率でカルシウム及びマグネシウムを含む麺類を製造するための原料として好適に用いることができる。
【0031】
2.製麺用粉末組成物の製造方法
本発明の製麺用粉末組成物の製造方法は、少なくともa)小麦粉、b)平均粒径50μm以下の水難溶性カルシウム化合物粉末及びc)平均粒径20μm以下の水難溶性マグネシウム化合物粉末を含む製麺用粉末組成物を製造する方法であって、
(1)前記小麦粉の一部と、前記水難溶性マグネシウム化合物粉末の一部又は全部とを乾式で混合することにより第1混合粉末を得る第1工程、
(2)前記第1混合粉末と、少なくとも前記小麦粉の残り及び前記水難溶性カルシウム化合物粉末とを乾式混合することにより第2混合粉末を得る第2工程、
を含むことを特徴とする。従って、本発明では、かんすいを配合する工程を含まないことも特徴の一つである。
【0032】
第1工程
第1工程では、前記小麦粉の一部と、前記水難溶性マグネシウム化合物粉末の一部又は全部とを乾式で混合することにより第1混合粉末を得る。
【0033】
第1工程を実施することによって、微細な水難溶性マグネシウム化合物粉末の所定量をより確実に小麦粉と混合することができる。その結果、第2工程においても、水難溶性マグネシウム化合物粉末の粉塵を生じさせることなく、残りの小麦粉と確実に混合することが可能となる。その理由は定かではないが、水難溶性マグネシウム化合物粉末の微細粒子が小麦粉の粒子に付着したり、小麦粉の粒子と凝集することにより、小麦粉に前記微細粒子が固定されるためと考えられる。
【0034】
このような見地から、第1工程において混合すべき水難溶性マグネシウム化合物粉末量は、その全仕込み量の80重量%以上であることが好ましく、特に90重量%以上であることがより好ましく、さらには99重量%以上であることが最も好ましい。従って、水難溶性マグネシウム化合物粉末の全部を第1工程で配合することもできる。
【0035】
第1工程で混合する小麦粉の量は、限定的でなく、水難溶性マグネシウム化合物粉末量等に応じて適宜設定することができる。特に、第1工程で混合される水難溶性マグネシウム化合物粉末の重量の0.5~5倍程度であることが好ましく、その中でも0.8~3倍であることがより好ましい。これによって、より確実に水難溶性マグネシウム化合物粉末を本発明粉末組成物中に取り込むことができる。
【0036】
混合方法は、実質的に乾式(粉末状態)で混合できる限り、その形式等は限定されず、公知又は市販のミキサー、攪拌機等を用いて実施することができる。また、密閉容器中に小麦粉と水難溶性マグネシウム化合物粉末とを装填し、密閉容器ごと振とうさせる方法等も好適に採用することができる。混合時間は、例えば1~60分程度(好ましくは5~30分)の範囲において、混合する水難溶性マグネシウム化合物粉末の量、用いる小麦粉の特性等に応じて適宜設定することができるが、上記範囲に限定されない。
【0037】
なお、第1工程では、本発明の効果を妨げない範囲内において、他の添加剤(グルテン、食用色素等)を添加しても良い。ただし、これら添加剤は、特に第2工程で配合することが望ましい。
【0038】
第2工程
第2工程では、前記第1混合粉末と、少なくとも前記小麦粉の残り及び前記水難溶性カルシウム化合物粉末とを乾式混合することにより第2混合粉末を得る。
【0039】
小麦粉の全仕込み量のうち、第1工程で混合した量を差し引いた量をすべて第2工程で混合する。第1混合粉末では、水難溶性マグネシウム化合物粉末が第1混合粉末中に封じ込められ、空中に舞い上がらないように制御されているので、第2工程の混合でも水難溶性マグネシウム化合物粉末を確実に混入された状態を確保することができる。
【0040】
第2工程では、小麦粉及び水難溶性カルシウム化合物粉末のほかに、前記で示した各種の添加剤を配合しても良い。添加剤の配合方法は、限定されず、小麦粉等と同時に配合する方法、小麦粉及び水難溶性カルシウム化合物粉末を一定時間混合した後に配合する方法、少量ずつ添加剤を配合する方法等のいずれも採用することができる。
【0041】
混合方法は、実質的に乾式(粉末状態)で混合できる限り、その形式等は限定されず、公知又は市販のミキサー、攪拌機等を用いて実施することができる。混合時間は、例えば1~60分程度(好ましくは5~30分)の範囲において、第1混合粉末量、用いる小麦粉の特性等に応じて適宜設定することができるが、上記範囲に限定されない。
【0042】
本発明では、このようにして得られた第2混合粉末をそのまま本発明粉末組成物として用いることができる。第2混合粉末は、必要に応じて所定の処理を施した後に本発明粉末組成物として用いることもできる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0044】
実施例1
原料として、中華麺用粉97.1重量部(製品名「天龍」吉原食糧株式会社製、平均粒径約40~70μm)、炭酸カルシウム粉末(製品名「ホワイトンF」白石カルシウム株式会社製、平均粒径約9.8μm)1.4重量部、酸化マグネシウム粉末(重質酸化マグネシウム、協和化学株式会社製、平均粒径約4.3μm)0.5重量部及び小麦グルテン1重量部の合計100重量部を用意した。
まず、酸化マグネシウム粉末0.5重量部(全量)と、ほぼ同じ重量(0.5重量部)の中華麺用粉を秤量し、両者を密閉された袋体中で乾式にて約5分間混合することにより、第1混合粉末を調製した。次いで、得られた第1混合粉末とともに残りの小麦粉、炭酸カルシウム粉末及び小麦グルテンをミキサーに装填し、乾式にて約10分間混合することにより、第2混合粉末として製麺用粉末組成物を得た。
【0045】
比較例1
実施例1の原料をすべてミキサーに装填し、これらの原料をすべて同時に乾式で約5分間混合することにより製麺用粉末組成物を得た。
【0046】
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた粉末組成物を用いて製麺化した。粉末組成物100重量部及び水40重量部を混合し、市販の製麺機により生麺を製造した。生麺を沸騰水中で茹でることにより茹で麺を得た。得られた茹で麺中及び茹で汁に含まれるマグネシウム含有量及びカルシウム含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
表1の結果からも明らかなように、実施例1の製造方法による原料を用いた麺は、マグネシウム含有量が比較例1よりも約10%多くなっている。すなわち、Mg/Caの含有割合という点においても、実施例1による麺の値(1/2.08)のほうが、比較例1(1/2.27)よりもMg:Ca仕込み率(1/1.87)に近い値であり、仕込み比率により近い組成を有する麺(特に茹で麺)を提供できることがわかる。
【0049】
さらに、実施例1は、比較例1とともに、特にマグネシウム成分として酸化マグネシウムを用いているので、茹で汁への溶出も効果的に抑制されていることがわかる。