(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】注射器具用の収容具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M5/32 510Z
A61M5/32 502
(21)【出願番号】P 2017246441
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】染川 剛
(72)【発明者】
【氏名】小川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰治
(72)【発明者】
【氏名】吉永 圭佑
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213681(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021650(WO,A1)
【文献】特開2017-189515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00-5/52
A61G 12/00
A61J 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己注射に用いる注射器具を収容する注射器具用の収容具であって、
開口が形成された箱本体と、
該箱本体の開口を塞ぐ蓋体とを備え、
前記蓋体は、
前記注射器具を構成するキャップ付きのシリンジから該キャップを引き抜くための引抜手段と、
前記シリンジを直接的又は間接的に保持する保持手段とを有し、
前記引抜手段は、
前記蓋体の表面から延出し且つ前記蓋体の表面側から前記キャップ付きのシリンジが挿入される
筒状の挿入部と、
該挿入部に挿入された前記キャップに係止する係止爪とを有し、
前記保持手段は、
少なくとも前記シリンジが挿し込まれる挿込部と、
該挿込部に挿し込まれた前記シリンジを直接的又は間接的に抜け止めするための抜止部とを有し、
前記蓋体には、前記シリンジを直接的又は間接的に保持可能な状態の前記保持手段が、
処方された投薬数と同数設けられている注射器具用の収容具。
【請求項2】
前記注射器具は、自己注射を補助すべく前記シリンジを取り付ける補助具を備え、
前記補助具は、前記シリンジに設けられている注射針の刺針深さを決定すべく、該注射針の周囲に配置されるガイド部を有し、
前記挿入部は、筒状であるとともに前記蓋体の表面上に立設されるように形成され且つ前記キャップ付きのシリンジが内部に挿入された状態で該シリンジと前記ガイド部との間に介在するように構成される
請求項1に記載の注射器具用の収容具。
【請求項3】
前記挿込部は筒状に形成され、
前記抜止部は、
前記挿込部の開口上に設けられる突出爪部を有し、
前記突出爪部には、前記シリンジを直接的又は間接的に載置可能な載置面と、
前記載置面の下方側で前記挿込部に挿し込まれた前記シリンジの上方側への移動を規制する規制部とが含まれている
請求項1又は請求項2に記載の注射器具用の収容具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己注射に用いる注射器具を収容する注射器具用の収容具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リウマチや糖尿病等の患者が自己注射に使用したシリンジを収容する収容具が提供されている。例えば、特許文献1に開示されている収容具(容器)は、容器本体と容器本体に離脱不能に嵌着される蓋と備えており、該蓋は、投入口が形成された蓋本体と、該投入口を開閉すべく蓋本体に設けられた副蓋とで構成されている。
【0003】
患者は、自己注射に使用したシリンジに対してキャップを取り付け、シリンジとキャップとをセットにした状態で投入口から容器本体内に投入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医師の処方通りに投薬が行われているかの管理(投薬管理)を行う場合、収容具に収容されている使用済みのシリンジの数を確認することがあるが、上記構成の収容具では、使用済みのシリンジが容器本体内へと投入されるため、使用済みのシリンジの数を目視で確認することが困難であった。
【0006】
また、患者の容体によっては自己注射に用いるシリンジからキャップを外すことが困難である、という問題も依然として起きている。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、取り扱いが容易であり投薬管理も簡単にできる注射器具の収容具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の注射器具用の収容具は、
自己注射に用いる注射器具を収容する注射器具用の収容具であって、
開口が形成された箱本体と、
該箱本体の開口を塞ぐ蓋体とを備え、
前記蓋体は、
前記注射器具を構成するキャップ付きのシリンジから該キャップを引き抜くための引抜手段と、
前記シリンジを直接的又は間接的に保持する保持手段とを有し、
前記引抜手段は、
前記蓋体の表面側から前記キャップ付きのシリンジが挿入される挿入部と、
該挿入部に挿入された前記キャップに係止する係止爪とを有し、
前記保持手段は、
少なくとも前記シリンジが挿し込まれる挿込部と、
該挿込部に挿し込まれた前記シリンジを直接的又は間接的に抜け止めするための抜止部とを有し、
前記蓋体には、前記シリンジを直接的又は間接的に保持可能な状態の前記保持手段が、処方された投薬数と同数設けられている。
【0009】
上記構成の注射器具用の収容具によれば、キャップ付のシリンジを挿入部に抜き差しするだけでキャップがシリンジから引き抜かれるため、患者がシリンジからキャップを簡単に取り外すことができる。
【0010】
さらに、前記注射器具用の収容具は、シリンジを直接的又は間接的に保持可能な状態の保持手段が処方された投薬数と同数蓋体に設けられており、また、自己注射に使用したシリンジを挿込部に挿し込めば、抜止部により該シリンジが蓋体に対して抜止されるように構成されているため、処方された投薬数と使用したシリンジの数とを一目で確認することができる。
【0011】
また、本発明の注射器具用の収容具において、
前記注射器具は、自己注射を補助すべく前記シリンジを取り付ける補助具を備え、
前記補助具は、前記シリンジに設けられている注射針の刺針深さを決定すべく、該注射針の周囲に配置されるガイド部を有し、
前記挿入部は、筒状であるとともに前記蓋体の表面上に立設されるように形成され且つ前記キャップ付きのシリンジが内部に挿入された状態で該シリンジと前記ガイド部との間に介在するように構成されていてもよい。
【0012】
上記構成の注射器具用の収容具によれば、挿入部にキャップを挿入した状態で注射器具が傾いた際に、ガイド部が挿入部の外周面に当接することにより、注射器具が過度に傾かないようにすることができる。従って、挿入部の軸線方向に対するシリンジの傾きを抑えることにより、注射針が曲がってしまったり、注射針が挿入部の内面に接触してしまうことを避けることができる。
【0013】
さらに、本発明の注射器具用の収容具において、
前記挿込部は筒状に形成され、
前記抜止部は、
前記挿込部の開口上に設けられる突出爪部を有し、
前記突出爪部には、前記シリンジを直接的又は間接的に載置可能な載置面と、
前記載置面の下方側で前記挿込部に挿し込まれた前記シリンジの上方側への移動を規制する規制部とが含まれていてもよい。
【0014】
上記構成の注射器具用の収容具によれば、載置面上に直接的又は間接的に載置した使用後のシリンジを押し込むと、規制部によりシリンジの上方側への移動が規制されるため、
簡単な操作で使用後のシリンジを蓋体に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の注射器具用の収容具は、取り扱いが容易であり投薬管理も簡単にできるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る注射器具用の収容具の斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る注射器具用の収容具の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III断面線における断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のV-V断面線における断面の斜視図である。
【
図7】
図7において、(a)は挿入部にキャップ付きシリンジを挿入した状態の説明図であり、(b)は挿入部内からシリンジを引き抜いている状態の説明図である。
【
図8】
図8において、(a)は保持手段にシリンジを載置している状態の説明図であり、(b)は使用後のシリンジが保持手段に固定されている状態の説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係る注射器具用の収容具の斜視図である。
【
図10】
図10は、同実施形態に係る注射器具用の収容具の平面図である。
【
図16】
図16において、(a)は挿入部にキャップ付きシリンジを挿入した状態の説明図であり、(b)は挿入部内からシリンジを引き抜いている状態の説明図である。
【
図17】
図17において、(a)は保持手段に補助具を載置している状態の説明図であり、(b)は保持手段に補助具が固定されている状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一実施形態にかかる注射器具用の収容具(以下、収容具と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
収容具の説明に先立ち、注射器具の説明を行う。注射器具は、
図6に示すように、キャップ80が取り付けられたシリンジ81(以下、キャップ付きシリンジ8と称する)と、該シリンジ81を取り付けて自己注射を補助する補助具9と、を備えている。
【0019】
シリンジ81は、薬剤等の液体が充填されるバレル810と、該バレル810内の液体を吐出させるためのプランジャ811とを備えている。
【0020】
バレル810は、筒状部810aと、該筒状部810aの軸線方向における一端(前端)に設けられているノズルであって、注射針N(
図7(b)参照)が設けられるノズルと、該筒状部810aの軸線方向における他端(後端)の外周全周から外方(筒状部810aの径方向外方)に向かって延出するフランジ810bとを有する。
【0021】
キャップ80は、注射針Nを覆って保護するものであり、バレル810の前端部に対して該バレル810の軸線方向で着脱(抜き差し)可能である。また、バレル810にキャップ80を装着している状態においては、キャップ80とバレル810(バレル810の先端側)との間に隙間Sが形成されるようになっている。
【0022】
補助具9は、シリンジ81を横たわった状態で収容可能な収容凹部900が形成された補助具本体90と、シリンジ81に設けられている注射針Nの刺針深さを決定すべく、該注射針Nの周囲に配置されるガイド部91とを備えている。
【0023】
ガイド部91は、補助具本体90の前端に設けられている。また、ガイド部91の前面は、自己注射時に患者の皮膚に当接する部分である。なお、本実施形態に係るガイド部91は、補助具本体90よりも外形が大きくなっている。
【0024】
図1に示すように、収容具1は、開口が形成された箱本体2と、箱本体2の開口を塞ぐ蓋体3とを備えている。
【0025】
箱本体2は、
図3に示すように、底面部20と、該底面部20の外周縁部全周から起立する立壁部21と、底面部20上に立設された筒状の収容筒部22と、を有する。そのため、箱本体2の開口は、立壁部21の上端全周によって形成されている。
【0026】
蓋体3は、
図2に示すように、注射器具を構成するキャップ付きシリンジ8から該キャップ80を引き抜くための引抜手段30と、シリンジ81を保持する保持手段31とを有する。
【0027】
引抜手段30は、
図4に示すように、蓋体3の表面側からキャップ付きシリンジ8が挿入される挿入部300と、該挿入部300に挿入されたキャップ80に係止する係止爪301と、挿入部300周りに広がる受面部302と、該受面部302の外周縁部全周から起立する周壁部303とを有する。
【0028】
引抜手段30では、受面部302と周壁部303とが一つの凹部を形成するように構成されており、該凹部は、蓋体3の天面32(蓋体3の最も上方側で広がる面)から下方側に凹状となるように形成されている。
【0029】
挿入部300は、筒状であり、内部にキャップ付きシリンジ8を挿入可能となるように構成されている。挿入部300は、受面部302に貫設されており、一方の開口端が受面部302の上方に位置し、他方の開口端が受面部302の下方に位置するように形成されている。
【0030】
なお、挿入部300の内径はキャップ80の外径よりも大きくなっており、また、挿入部300の厚みはキャップ80の外面とガイド部91との間の隙間寸法よりも小さくなっている。
【0031】
また、箱本体2に蓋体3が取り付けられている状態においては、挿入部300が収容筒部22の上方に配置されるように構成されている。
【0032】
そのため、本実施形態に係る収容具1は、引抜手段30によりシリンジ81から引き抜かれたキャップ80が挿入部300から収容筒部22内へと落下するように構成されている。なお、収容筒部22の底部から突出部301bまでの寸法は、処方された投薬数(保持手段31の数)と同数のキャップ80を積み重ねた高さと同一又は略同一に設定されている。
【0033】
係止爪301は、挿入部300の上端から上方に延出する延出部301aと、該係止爪301から挿入部300の軸線方向に対して直交する径方向における内側、すなわち、挿入部300の径内方向に対応する方向に向けて突出する突出部301bとを有する。
【0034】
延出部301aは、可撓性を有しており、挿入部300の前記径方向に力が作用すると撓むように構成されている。
【0035】
受面部302は、補助具9のガイド部91が突き当てられる部分である。また、本実施形態では、受面部302の上面(蓋体3の表面の一部を構成する面)から突出部301bまでの寸法が、ガイド部91の前面からキャップ80とバレル810の間の隙間Sまでの寸法と対応するように設定されている。
【0036】
周壁部303は、ガイド部91の周囲を取り囲むように形成されている。
【0037】
保持手段31は、
図5に示すように、少なくともシリンジ81が挿し込まれる挿込部310と、該挿込部310に挿し込まれたシリンジ81を直接的又は間接的に抜け止めするための抜止部311と、抜止部311の周囲を取り囲むように形成された環状壁部312とを有する。
【0038】
また、蓋体3には、シリンジ81を保持可能な状態の保持手段31が、処方された投薬数と同数設けられている。
【0039】
挿込部310は、筒状であり、一方の開口端が蓋体3の表面側で開口し、他方の開口端が蓋体3の裏面側で開口している。
【0040】
抜止部311は、挿込部310の周囲で起立する起立部311aと、該起立部311aから内側に突出する突出爪部311bとを有する。なお、突出爪部311bの上面は、シリンジ81(フランジ810b)を載置するための載置面311cとして構成されており、内側になるにつれて徐々に下方側に向かうように傾斜している。また、突出爪部311bの下面は、挿込部310に挿し込まれたシリンジ81(フランジ810b)の上方側への移動を規制するための規制部として構成されており、フランジ810bの上面に係合する係合するように構成されている。
【0041】
本実施形態に係る収容具1の構成は、以上の通りである。続いて、収容具1の使用方法について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0042】
自己注射を行う場合、まず、キャップ付きシリンジ8を補助具9に取り付ける。そして、
図7(a)に示すように、補助具9に取り付けたキャップ付きシリンジ8を引抜手段30の挿入部300内に挿入し、ガイド部91の前面を受面部302に当接させる。これに伴い、キャップ80とバレル810との間の隙間Sに突出部301bが入り込み、この状態で、
図7(b)に示すように、キャップ付きシリンジ8を補助具9ごと引き上げると、キャップ80に突出部301bが係合するため、シリンジ81からキャップ80が引き抜かれる。なお、シリンジ81から引き抜かれたキャップ80は、収容筒部22内に落下する。
【0043】
また、収容筒部22の底部から突出部301bまでの寸法(高さ)が、処方された投薬数と同数のキャップ80を収容可能な寸法積み重ねた高さ寸法と同一又は略同一となっているため、処方された投薬数の投薬が完了したことが一目で確認でき、また、新たなキャップ80を係止爪301に係合させることができないようにすることで、処方された投薬数以上のキャップ80が引抜手段30を利用して外されてしまうことを防ぐことができる。
【0044】
自己注射を終えたのち、補助具9からシリンジ81を取り外し、該シリンジ81を先端側から挿込部310内に挿し込む。そして、
図8(a)に示すように、シリンジ81のフランジ810bを突出爪部311b上に重ねた後、さらにプランジャ811を下方側に押し込むと、
図8(b)に示すように、該フランジ810bが突出爪部311bを外方に押し広げながら下方側に移動する。そして、フランジ810b全体が突出爪部311bの下方側に移動すると、該突出爪部311bが元の位置に戻るため(内側に移動するため)、フランジ810bの上面と突出爪部311bの下面とが係合する。これにより、シリンジ81の上方への移動が突出爪部311bにより規制される。すなわち、シリンジ81が蓋体3に対して抜け止め(固定)される。
【0045】
そして、全ての保持手段31に対してシリンジ81が固定された状態になれば、処方された投薬数と同数のシリンジ81を使用して自己注射を行ったことを確認することができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の収容具1によれば、キャップ80付のシリンジ81を挿入部300に抜き差しするだけでキャップ80がシリンジ81から引き抜かれるため、患者がシリンジ81からキャップ80を簡単に取り外すことができ、また、自己注射に使用したシリンジ81を挿込部310に挿し込めば、抜止部311により該シリンジ81が蓋体3に対して抜止されるように構成されているため、処方された投薬数と使用したシリンジ81の数とを一目で確認することができる。
【0047】
従って、本実施形態に係る収容具1は、取り扱いが容易であり投薬管理も簡単にできるという優れた効果を奏し得る。
【0048】
また、本実施形態に係る収容具1では、抜止部311が挿込部310の開口上に設けられる突出爪部311bを有し、該突出爪部311bに、シリンジ81を直接載置可能な載置面311cと、載置面311cの下方側で挿込部310に挿し込まれたシリンジ81の上方側への移動を規制する規制部(本実施形態では、突出爪部311bの下面)とが含まれているため、載置面311c上に載置したシリンジ81を押し込むと、規制部によりシリンジ81の上方側への移動が規制される。従って、簡単な操作で使用後のシリンジ81を蓋体3に固定することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る収容具1は、挿入部300にキャップ80を挿入した状態で注射器具が傾いた際に、ガイド部91が周壁部303の内周面と挿入部300の外周面に当接することにより、注射器具が過度に傾かないようにすることができる。従って、挿入部300の軸線方向に対するシリンジ81(注射針Nの向き)の傾きを抑えることにより、注射針Nが曲がってしまったり、注射針Nが挿入部300の内面に接触してしまうことを避けることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る収容具1においては、環状壁部312が上端側から下端側になるにつれて内径が徐々に小さくなるように形成されており、さらに、該環状壁部312の下端側に抜止部311が設けられているため、シリンジ81のフランジ810bを抜け止めしている突出爪部311bをこじることによって、該フランジ810bと突出爪部311bとの係合状態を解除することを防止できる。従って、投薬管理の正確性を高めることもできる。また、環状壁部312の上端側の方が下端側よりも内径が大きくなっているため、プランジャ811を押し込もうとする使用者の指が蓋体3に干渉し難くなる。従って、挿込部310に挿し込んだシリンジ81のプランジャ811を押し込み易くなる。
【0051】
さらに、引抜手段30、保持手段31の上端の位置が何れも蓋体3の天面32よりも低くなっているため、不用意に手が触れたりすること等を防止することもできる。
【0052】
続いて、本発明の第二実施形態にかかる注射器具用の収容具(以下、収容具と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0053】
本実施形態に係る収容具4は、
図9に示すように、開口が形成された箱本体5と、箱本体5の開口を塞ぐ蓋体6と、蓋体6の上面を開閉するカバー体7とを備えている。なお、本実施形態の収容具4は、キャップ付きシリンジ8を補助具9に取り付けた状態で仮置きし、また、使用後のシリンジ81を補助具9に取り付けた状態で蓋体6に対して抜け止めできるように構成されている。
【0054】
なお、本実施形態の補助具9には、補助具本体90から外方に突出する突出片部901が設けられている(
図14参照)。
【0055】
箱本体5は、
図11に示すように、底面部50と、該底面部50の外周縁部全周から起立する立壁部51と、底面部50上に立設された筒状の収容筒部52と、を有する。そのため、箱本体5の開口は、立壁部51の上端全周によって形成されている。
【0056】
蓋体6は、
図10に示すように、注射器具を構成するキャップ付きシリンジ8から該キャップ80を引き抜くための引抜手段60と、シリンジ81が取り付けられている補助具9を保持する保持手段61とを有する。
【0057】
なお、蓋体6には、天面62(蓋体6の最も上方側で広がる面)と、該天面62よりも下方側に位置するベース面63とが含まれており、天面62とベース面63とは段状につながるように形成されている。なお、本実施形態では、ベース面63の外周縁部から上方に延出し且つ上端が天面62に連続する面を蓋壁部64と称する。
【0058】
引抜手段60は、
図12に示すように、蓋体6の表面側からキャップ付きシリンジ8が挿入される挿入部600と、該挿入部600に挿入されたキャップ80に係止する係止爪601と、挿入部600周りに広がる受面部602と、該受面部602の外周縁部全周から起立する周壁部603とを有する。
【0059】
挿入部600は、筒状であり、内部にキャップ付きシリンジ8を挿入可能となるように構成されている。挿入部600は、受面部602に貫設されており、一方の開口端が受面部602の上方に位置し、他方の開口端が受面部602の下方に位置するように形成されている。
【0060】
なお、挿入部600の内径はキャップ80の外径よりも大きくなっており、また、挿入部600の厚みはキャップ80の外面とガイド部91との間の隙間よりも小さくなっている。
【0061】
また、箱本体5に蓋体6が取り付けられている状態においては、挿入部600が収容筒部52の上方に配置されるように構成されている。
【0062】
そのため、本実施形態に係る収容具4は、引抜手段60によりシリンジ81から引き抜かれたキャップ80が挿入部600から収容筒部52内へと落下するように構成されている。なお、収容筒部52の底部から突出部601bまでの寸法は、処方された投薬数(保持手段61の数)と同数のキャップ80を積み重ねた高さと同一又は略同一に設定されている。
【0063】
係止爪601は、挿入部600の上端から上方に延出する延出部601aと、該係止爪601から挿入部600の軸線方向に対して直交する径方向における内側、すなわち、挿入部600の径内方向に対応する方向に向けて突出する突出部601bとを有する。
【0064】
延出部601aは、可撓性を有しており、挿入部600の前記径方向に力が作用すると撓むように構成されている。
【0065】
受面部602は、補助具9のガイド部91が突き当てられる部分である。また、本実施形態では、受面部602の上面(蓋体6の表面の一部を構成する面)から突出部601bまでの寸法が、ガイド部91の前面からキャップ80とバレル810の間の隙間Sまでの寸法と対応するように設定されている。
【0066】
周壁部603は、ガイド部91の周囲を取り囲むように形成されている。
【0067】
保持手段61は、
図13に示すように、シリンジ81が取り付けられた補助具9が挿し込まれる挿込部610と、挿込部610上に位置する環状の環状壁部611と、該挿込部610に挿し込まれた補助具9を抜け止めするための抜止部612とを有する。
【0068】
また、蓋体6には、補助具9を保持可能な状態の保持手段61が、処方された投薬数と同数設けられている。
【0069】
挿込部610は、筒状であり、一方の開口端が蓋体6の表面側で開口し、他方の開口端が蓋体6の裏面側で開口している。
【0070】
環状壁部611の内径は、挿込部610の内径よりも大きくなっている。
【0071】
抜止部612は、環状壁部611の内面から内側に突出する突出爪部612aを有する。
【0072】
突出爪部612aの上面は、補助具9を載置するための載置面612bとして構成されており、内側になるにつれて徐々に下方側に向かうように傾斜している。また、突出爪部612aの下面は、挿込部610に挿し込まれた補助具9(突出片部901)の上方側への移動を規制するための規制部として構成されており、突出片部901の上面に係合するように構成されている。
【0073】
カバー体7は、蓋体6のベース面63上を開閉可能であり、
図9に示すように、閉状態において引抜手段60上を覆う引抜手段カバー部70と、閉状態において保持手段61上を覆う保持手段カバー部71とを有する。
【0074】
なお、カバー体7では、保持手段カバー部71が裏面側(閉状態において蓋体6に対向する一面側)に突出するように形成されている。
【0075】
本実施形態に係る収容具4の構成は、以上の通りである。続いて、収容具4の使用方法について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0076】
保持手段61には、補助具9のみ(キャップ付きシリンジ8が取り付けられていない補助具9)が仮置きされる。本実施形態では、補助具9を保持可能な保持手段61のそれぞれに対して、補助具9の突出片部901を突出爪部612a上に重ねて補助具9を配置する。これにより、処方された投薬数と同数の補助具9が収容具4にセットされる。
【0077】
自己注射を行う際は、保持手段61から補助具9を引き出し、補助具9にキャップ付きシリンジ8を取り付け、続いて、補助具9に取り付けられているキャップ付きシリンジ8を引抜手段60の挿入部600内に挿入し、ガイド部91の前面を受面部602に当接させる。これに伴い、キャップ80とバレル810との間の隙間Sに突出部601bが入り込み、この状態でキャップ付きシリンジ8を補助具9ごと引き上げると、キャップ80に突出部601bが係合するため、シリンジ81からキャップ80が引き抜かれる。なお、シリンジ81から引き抜かれたキャップ80は、収容筒部52内に落下する。
【0078】
また、収容筒部52の底部から突出部301bまでの寸法(高さ)は、処方された投薬数と同数のキャップ80を収容可能な寸法積み重ねた高さと同一又は略同一となっているため、処方された投薬数の投薬が完了したことが一目で確認でき、また、新たなキャップ80を係止爪601に係合させることができないようにすることで、処方された投薬数以上のキャップ80が引抜手段60を利用して外されてしまうことを防ぐことができる。
【0079】
自己注射を終えたのち、補助具9からシリンジ81を取り外さずに、該補助具9を先端側から挿込部610内に挿し込む。そして、
図17(a)に示すように、補助具9の突出片部901を突出爪部612a上に重ねた後、さらにプランジャ811を下方側に押し込むと、該突出片部901が突出爪部612aを外方に押し広げながら下方側に移動する。そして、突出片部901全体が突出爪部612aの下方側に移動すると、該突出爪部612aが元の位置に戻るため(内側に移動するため)、
図17(b)に示すように、突出片部901の上面と突出爪部612aの下面とが係合する。これにより、シリンジ81及び補助具9の上方への移動が突出爪部612aにより規制される。すなわち、シリンジ81が間接的に蓋体6に対して抜け止め(固定)される。
【0080】
そして、全ての保持手段61に対して補助具9が固定された状態になれば、処方された投薬数と同数のシリンジ81を使用して自己注射を行ったことを確認することができる。
【0081】
以上のように、本実施形態の収容具4においても、キャップ80付きのシリンジ81を挿入部600に抜き差しするだけでキャップ80がシリンジ81から引き抜かれるため、患者がシリンジ81からキャップ80を簡単に取り外すことができ、また、自己注射に使用したシリンジ81及び補助具9を挿込部610に挿し込めば、抜止部612により該シリンジ81及び補助具9が蓋体6に対して抜止されるように構成されているため、処方された投薬数と使用したシリンジ81の数とを一目で確認することができる。
【0082】
従って、本実施形態に係る収容具4は、取り扱いが容易であり投薬管理も簡単にできるという優れた効果を奏し得る。
【0083】
また、本実施形態に係る収容具4では、抜止部612が挿込部610の開口上に設けられる突出爪部612aを有し、該突出爪部612aに、補助具9を直接載置可能な載置面612bと、載置面612bの下方側で挿込部610に挿し込まれた補助具9の上方側への移動を規制する規制部(本実施形態では、突出爪部612aの下面)とが含まれているため、載置面612b上に載置した補助具9を押し込むと、規制部により補助具9の上方側への移動が規制される。従って、簡単な操作で使用後のシリンジ81及び補助具9を蓋体6に固定することができる。
【0084】
さらに、本実施形態に係る収容具4は、挿入部600にキャップ80を挿入した状態で注射器具が傾いた際に、ガイド部91が周壁部603と挿入部600の外周面に当接することにより、注射器具が過度に傾かないようにすることができる。従って、挿入部600の軸線方向に対するシリンジ81(注射針Nの向き)の傾きを抑えることにより、注射針Nが曲がってしまったり、注射針Nが挿入部600の内面に接触してしまうことを避けることができる。
【0085】
さらに、引抜手段60、保持手段61の上端の位置が何れも蓋体6の天面62よりも低くなっているため、不用意に手が触れたりすること等を防止することもできる。
【0086】
また、本実施形態に係る収容具4は、蓋体6の上面、より具体的には、蓋体6の引抜手段60、保持手段61を含む領域を覆うカバー体7を備えているため、カバー体7を閉状態にすると、保持手段61に仮置き、若しくは固定されているシリンジ81及び補助具9の脱落を防止できる。
【0087】
さらに、カバー体7では、保持手段カバー部71が裏面側に突出しているため、カバー体7を閉状態にした際に、該保持手段カバー部71を保持手段61に仮置き、若しくは固定されているシリンジ81や補助具9に当接させれば、収容具内でのシリンジ81や補助具9のガタつきを防止することもできる。
【0088】
なお、本発明に係る注射器具用の収容具は、上記第一実施形態及び第二実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0089】
上記第一実施形態、及び第二実施形態では、保持手段31、61が4つ形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、保持手段31、61は、3つ以下や、5つ以上であってもよい。
【0090】
上記第一実施形態において、特に言及しなかったが、載置面311c上には、使用前のキャップ付きシリンジ8を載置(仮置き)してもよい。
【0091】
なお、キャップ付きシリンジ8を保持手段31に仮置きしている状態においては、突出爪部311b上にシリンジ81のフランジ810bが載置され、使用後のシリンジ81を保持手段31で蓋体3に対して抜止している状態においては、突出爪部311bの下側にシリンジ81のフランジ810bが配置される。従って、フランジ810bと突出爪部311bとの配置関係を確認することでシリンジ81の使用状態を簡単に把握することができる。
【0092】
上記第二実施形態では、保持手段61に対して補助具9のみ(キャップ付きシリンジ8が取り付けられていない補助具9)を仮置きしていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、保持手段61には、キャップ付きシリンジ8が取り付けられた状態の補助具9が仮置きされていてもよい。
【0093】
この場合、使用前の補助具9を保持手段61に仮置きしている状態においては、突出爪部612a上に補助具9の突出片部901が載置され、使用後のシリンジ81及び補助具9を保持手段61で蓋体6に対して抜止している状態においては、突出爪部612aの下側に補助具9の突出片部901が配置される。従って、補助具9の突出片部901と突出爪部612aとの配置関係を確認することでシリンジ81の使用状態を簡単に把握することができる。
【0094】
上記第一実施形態において、特に言及しなかったが、収容具1は、収容具1のみで患者に提供されてもよいし、各保持手段31にキャップ付きシリンジ8を仮置きした注射器具セットとして患者に提供されていてもよい。
【0095】
また、第二実施形態の収容具4においては、収容具4のみで患者に提供されていてもよいし、キャップ付きシリンジ8を取り付けた補助具9を仮置きした注射器具セットとして患者に提供されていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,4…収容具、2,5…箱本体、3,6…蓋体、7…カバー体、8…シリンジ、9…補助具、20,50…底面部、21,51…立壁部、22,52…収容筒部、30,60…引抜手段、31,61…保持手段、32,62…天面、80…キャップ、81…シリンジ、8…シリンジ、90…補助具本体、91…ガイド部、300,600…挿入部、301,601…係止爪、301a,601a…延出部、301b,601b…突出部、302,602…受面部、303,603…周壁部、310,610…挿込部、311,612…抜止部、311a…起立部、311b,612a…突出爪部、311c…載置面、312…環状壁部、611…環状壁部、810…バレル、810a…筒状部、810b…フランジ、811…プランジャ、900…収容凹部、901…突出片部、N…注射針、S…隙間