(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】眼科用撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/13 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61B3/13 300
A61B3/13
(21)【出願番号】P 2018141250
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143282
【氏名又は名称】株式会社コーナン・メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 英和
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-220296(JP,A)
【文献】特開2014-217699(JP,A)
【文献】特開2018-038518(JP,A)
【文献】特開2000-350699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の前眼部を観察する前眼部観察光学系と、
被検眼に対して斜め前方から照明光を照射する照明光学系と、
前記照明光の被検眼からの反射光を撮影する撮影光学系と、を備えた眼科用撮影装置であって、
眼科用撮影装置内を仮想境界面により仕切られる第1空間部と第2空間部に分け、
第1空間部に、照明光学系と撮像光学系が少なくとも配置され、
第2空間部に、前眼部観察光学系の少なくとも一部が配置さ
れ、
前記仮想境界面にプレート状の支持体が配置され、この支持体の一方の面に照明光学系と撮像光学系が搭載され、他方の面に前眼部観察光学系の少なくとも一部が搭載されることを特徴とする眼科用撮影装置。
【請求項2】
前記前眼部観察光学系は、前眼部撮影カメラを含み、この前眼部撮影カメラへの光路を導くための開口部を前記支持体に形成したことを特徴とする請求項
1に記載の眼科用撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用撮影装置に関する。より詳細には、前眼部の検査に利用される眼科用撮影装置の小型化に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる眼科用撮影装置として、下記特許文献1や特許文献2に開示される装置が公知である。この眼科用撮影装置は、各文献の代表図面に示されるように、基本的な光学系の構成として、前眼部観察光学系と、照明光学系と、撮像光学系とを備えている。これらの光学系は、被検眼の中心(光学基準軸)に前眼部観察光学系が配置され、その左右両側に、照明光学系と撮像光学系が配置される。これらの光学系を構成するすべての部品は、プレート状の支持体(台板)の一方の面に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-55866号公報
【文献】特開2015-217140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、眼科用撮影装置を小型化したいという要望、特に装置の幅寸法を小さくしたいという要望がある。その理由は、病院内での配置スペースが限られているので、機器はなるべく小型化することを求められるからである。また、遠隔治療等で医療施設以外の場所に設置されることもあり、小型化や、持ち運び易さが求められる。
【0005】
従来、スペキュラー光学系の特徴である斜めからの反射光を撮影する光学系は、撮影光学系、照明光学系の光学部品が幅方向に広がり、幅寸法が大きくなってしまう傾向にあった。装置の省スペース化のために、架台部及びベース部の幅を押さえることは従来技術で比較的簡単にできるため、光学部の幅寸法を押さえる必要が出てきた。
【0006】
幅寸法を小さくするためには、照明光学系や撮像光学系を構成する部品を中央の観察光軸に近づくように配置すればよい。しかしながら、観察光軸や観察光軸から分岐した光路に沿って配置される部品には、前眼部撮影カメラのほかに、アライメント指標光学系や固視標投影光学系を構成する部品も存在する。従って、照明光学系や撮像光学系を構成する部品を光学基準軸に近づけて配置するための空間的余裕がなかった。そのため、幅寸法を小さくすることが困難であった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、幅寸法を従来に比べて小さくすることが可能な眼科用撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る眼科用撮影装置は、
被検眼の前眼部を観察する前眼部観察光学系と、
被検眼に対して斜め前方から照明光を照射する照明光学系と、
前記照明光の被検眼からの反射光を撮影する撮影光学系と、を備えた眼科用撮影装置であって、
眼科用撮影装置内を仮想境界面により仕切られる第1空間部と第2空間部に分け、
第1空間部に、照明光学系と撮像光学系が少なくとも配置され、
第2空間部に、前眼部観察光学系の少なくとも一部が配置されることを特徴とする眼科用撮影装置である。
【0009】
かかる構成による眼科用撮影装置の作用・効果は、以下の通りである。すなわち、眼科用撮影装置における光学系の部品配置をするときに、装置内部を仮想境界面により仕切られる第1空間部と第2空間部に分ける。従来の装置では、一方の空間部にすべての光学系が配置されていた。一方、本発明では、第1空間部に、照明光学系と撮像光学系が少なくとも配置され、第2空間部に、前眼部観察光学系の少なくとも一部が配置される。従って、第1空間部には、前眼部観察光学系のすべてが配置されないので、空間的な余裕が生じる。その結果、照明光学系や撮像光学系を構成する部品を中央側に近づけて配置することが可能になり、装置の幅寸法を抑制することが可能になった。
【0010】
本発明において、前記仮想境界面にプレート状の支持体が配置され、この支持体の一方の面に照明光学系と撮像光学系が搭載され、他方の面に前眼部観察光学系の少なくとも一部が搭載されることが好ましい。
【0011】
第1空間部に配置される光学系と、第2空間部に配置される光学系を共通の支持体に搭載することで、光学系を配置する際の位置精度を保ちつつ、幅方向を小さくすることができる。
【0012】
本発明に係る前記仮想境界面の平面視において、前眼部観察光学系の少なくとも一部を構成する部品は、第1空間部に配置される光学系を構成する部品と、重なりを有することが好ましい。
【0013】
仮に、一方の空間部のみに部品を配置する場合は、重なり部を有するような配置はできないが、第1空間部と第2空間部の二層構造にすることで重なり部を有するような部品配置ができ、その分、幅寸法を小さくして装置の小型化に寄与することができる。
【0014】
本発明に係る前記前眼部観察光学系は、前眼部撮影カメラを含み、この前眼部撮影カメラへの光路を導くための開口部を前記支持体に形成したことが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、前眼部撮影カメラと、このカメラに像を導くための光路を空間的余裕をもって配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本実施形態に係る角膜撮影装置の主要な光学部品配置を示す模式的な平面図
【
図3】本実施形態に係る角膜撮影装置の主要な光学部品配置を示す模式的な裏面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態を
図1~
図4を用いて説明する。
図1は、本発明に係る眼科用撮影装置の一例である角膜撮影装置の使用状態を示し、被検者との位置関係を示す模式図である。
図2は、
図1に示す角膜撮影装置の主要な光学部品配置を示す平面図である。
図3は、
図2に示す角膜撮影装置の裏面図である。
図4は、
図2に示す角膜撮影装置(以下、本装置1と省略)の中心部にある観察光軸で切断した断面図である。
【0018】
本装置1は、XYZ架台2に搭載され、さらにこのXYZ架台2はベース3の上に搭載されている。XYZ架台2により、本装置1は、X方向(被検者から見て左右方向)、Y方向(被検者から見て上下方向)、Z方向(被検者から見て前後方向)に不図示の機構により移動させることができる。
【0019】
図1に示すように、本装置1は、被験者が額当て部70に額を当て、さらに顎乗せ台71に顎をのせることで、被検者の顔10を固定した状態で利用される。
【0020】
次に、
図2~
図4を利用して本装置1の内部の光学系を説明する。これらの図に示す構成は、あくまでも一実施形態を示すものであり、この構成に限定されるものではない。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の本装置1には、内部に撮像光学系20、照明光学系30、前眼部撮影光学系40を備えている。前眼部撮影光学系40は、さらにアライメント指標光学系50と、固視標投影光学系60を有している。撮像光学系20の光軸(以下、撮影光軸L1)と、照明光学系30の光軸(以下、照明光軸L2)とが交差しており、この交点が撮像光学系20の合焦点Pに対応する。合焦点Pは、XYZのアライメントにより角膜内皮上に位置する。
【0022】
前眼部観察光学系40の光軸(以下、観察光軸L3)が、撮影光軸L1と照明光軸L2を二分する位置となるように、各光学系が配置されている。すなわち、観察光軸L3が中心部に位置している。
【0023】
これらの光学系は、台板4(プレート状の支持体に相当)の上に搭載されている。台板4の形状は、例えば、平面視で正方形あるいは長方形であり、金属や樹脂等の適宜の素材により形成される。ただし、特定の形状や素材に限定されるものではない。
【0024】
撮像光学系20は、照明光学系30により放射された光が、被検眼の角膜面で反射された光を受光する光学系である。被検眼に近い側から、撮影光軸L1に沿って、対物レンズ21、マスク22、折り曲げミラー23、折り曲げミラー24、調整ガラス25、上皮分離フィルター26、折り曲げミラー27、リレーレンズ28、リレーレンズマスク29、赤外カットフィルター200、内皮撮影カメラ201の順に配置されている。対物レンズ21は、台板4から被検眼側に飛び出したレンズ鏡筒210の内部に保持されている。
【0025】
撮影光軸L1と照明光軸L2の交点、すなわち、合焦点Pを被検眼の角膜上に一致させたとき、角膜面で反射した光が撮像光学系20の光路を介して内皮撮影カメラ201により撮影される。
【0026】
照明光学系30は、被検眼に対して斜め前方から照明光を照射する。被検眼に近い側から、照明光軸L2に沿って、対物レンズ31、折り曲げミラー32、照明スリット33、集光レンズ34、照明光束マスク35、内皮撮影用LED36(照明光源)の順に配置されている。対物レンズ31は、台板4から被検眼側に飛び出したレンズ鏡筒310の内部に保持されている。この構成により、内皮撮影用LED36からのスリット光が角膜表面に照射され、その反射光が内皮撮影カメラ201により撮影される。
【0027】
アライメント指標光学系50は、アライメント指標光の光源としての赤外LED47が設けられている。アライメント指標光学系50の光軸L4は、観察光軸L3でもあり、被検眼に近い側から、観察光軸L3,光軸L4に沿って、前面防塵ガラス41、ハーフミラー42、固視灯レンズ43、コールドミラー44、絞り45、集光レンズ46、赤外LED47の順に配置されている。
【0028】
アライメント指標光学系50を徹照撮影用の投影光学系として利用し、前眼部撮影カメラ52で徹照像を撮影可能に構成することもできる。
【0029】
アライメント指標光は、被検眼の前眼部にその正面から照射される。アライメント指標光の角膜面における反射像であるプルキンエ像は、後述の前眼部撮影カメラ52(
図3、
図4参照)により撮影される。
【0030】
図4は、前眼部撮影カメラ52までの光学系の部品配置を示す。観察光軸L3は、ハーフミラー42の位置で分岐し、台板4の下方に設定された光軸L6に沿って光学系が配置される。被検眼に近い側から、観察光軸L3と光軸L6に沿って、前面防塵ガラス41、ハーフミラー42、折り曲げミラー48、光学フィルター49、結合レンズ53、防塵ガラス51、前眼部撮影カメラ52の順に配置される。光軸L6に沿って配置される部品は、台板4の裏面に搭載される。また、台板4には開口部4aが形成され、ハーフミラー42で分岐した光路を前眼部撮影カメラ52まで導くようにしている。
【0031】
光軸L6に沿って配置される部品(前眼部観察光学系を構成する部品の少なくとも一部に相当)は、従来、台板4の表面側に搭載されていた部品である。これらの部品が台板4の下面に搭載することで、その分、台板4の表面にスペースが生じる。前眼部観察光学系を構成する部品の残りはAの領域に配置される。
【0032】
前眼部撮影カメラ52は、撮像光学系20及び照明光学系30の前部(被検者側)に固定配置された前眼部照明用のLED(不図示)からの照明によって照明された被検眼の前部画像も撮影する。前眼部撮影カメラ52で撮影された画像は、不図示のモニターに送られ、前眼部観察光学系40で撮影された前眼部像が、前述のプルキンエ像と共に表示される。プルキンエ像が前眼部撮影カメラ52の表示画面上の所定位置に達するように、XYZ架台2をXYZ方向に移動させることで観察光軸L3を角膜頂点に一致させる(アライメント動作)。
【0033】
図2に戻り、固視標投影光学系60は、被検者に対して被検眼を固視させるための指標光を発する基準固視灯61を有する。固視標投影光学系60は、コールドミラー44により、光軸L4から分岐した光路に沿って、絞り62、基準固視灯61が配置される。コールドミラー44は、赤外LED47からの赤外光を透過させ、基準固視灯61からの可視光を反射させる。
【0034】
コールドミラー42で反射された指標光は、固視灯レンズ43、ハーフミラー42を通り、被検眼に投影される。基準固視灯61は、被験者の視線を正面方向に維持させるために利用される。
【0035】
以上の構成において、本装置1の内部は仮想境界面により第1空間部と第2空間部に分けられており、仮想境界面に台板4が配置される。第1空間部に配置されるのは、アライメント指標光学系50、固視標投影光学系60などの前眼部観察光学系40の一部であり、残りの前眼部観察光学系40の一部が第2空間部に配置される。このような配置構成により、装置の幅寸法(
図2にWで示す)を小さくすることが可能になる。
【0036】
中央部に位置する観察光軸L3に沿って配置される光学系の部品が少なくなるので、その分スペース的に余裕ができる。その結果、撮像光学系20や照明光学系30を構成する部品を、観察光軸L3や光軸L4に近い側に配置することができる。例えば、折り曲げミラー32や折り曲げミラー23の位置を、より中央側に近づけて配置することで、幅Wを小さくすることができる。
【0037】
本実施形態では、台板4の表面に配置される内皮撮影カメラ201、赤外カットフィルター200と、台板4の裏面に配置される前眼部撮影カメラ52は、台板4の平面視で重なりを生じている。この重なり面積を大きくとれるほど、幅Wの小型化に寄与できることになる。
【0038】
また、台板4の表裏面にすべての光学系部品を搭載しているので、表面側の光学部品と裏面側の光学部品の取り付け位置精度も保持することができる。
【0039】
本実施形態では、前眼部撮影カメラ52等が、第2空間部に配置される構成であったが、これに代えて、アライメント指標光学系50や固視標投影光学系60の部品を第2空間部に配置する構成を採用してもよい。
【0040】
本発明に係る眼科用撮影装置は角膜内皮撮影用の装置であるが、被検眼の斜め前方から照明光を照射して反射光を撮影する構成の装置、例えばレーザーフレアセルメーター、前眼部断面撮影装置にも適用できる。
【0041】
本発明に係る眼科用撮影装置は照明光学系と撮影光学系とが水平面に配置される構成であるが、鉛直方向に配置される装置にも適用できる。その場合は鉛直方向の小型化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0042】
L1 撮影光軸
L2 照明光軸
L3 観察光軸
1 角膜撮影装置
4 台板
4a 開口部
20 撮像光学系
30 照明光学系
40 前眼部観察光学系
50 アライメント指標光学系
60 固視標投影光学系