(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G02B27/01
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019119368
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2019-12-13
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519027213
【氏名又は名称】エンヴィシクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン クリスマス
(72)【発明者】
【氏名】メイト カーナー
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-272061(JP,A)
【文献】特開2015-068837(JP,A)
【文献】特開昭62-103230(JP,A)
【文献】特開2004-130892(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108227193(CN,A)
【文献】特開平09-267661(JP,A)
【文献】特開平04-249213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0224062(US,A1)
【文献】特開2017-129753(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115077(WO,A1)
【文献】特開平03-200427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用のヘッドアップディスプレイであって、
前記ヘッドアップディスプレイは、第1のハウジングを有し、
前記第1のハウジングは、
画像を出力するように構成された画像生成ユニットであって、光を放射するように構成された光源と、各画像に対応するホログラフィック再構成を形成するために、計算機合成光変調パターンを表示するように構成されているとともに、前記光源からの前記光を受けて、表示された前記計算機合成光変調パターンにしたがって、前記光を空間的に変調するように構成された空間光変調器とを含むものと、
各画像の虚像を形成するために、前記画像生成ユニットによって出力された前記画像を受けて、前記画像を中継するために光コンバイナを使用可能に構成された光学系であって、前記光コンバイナが、アイボックスをのぞいている人に結合された画像を提供するために、前記画像生成ユニットによって出力された光を実世界のシーンの光と結合するものと、を備え、
前記ヘッドアップディスプレイは、前記第1のハウジングと光コンバイナとの間に配置された第2のハウジングをさらに備え、
前記第2のハウジングは、前記第1のハウジングを保護するように構成されたほぼ平坦なカバーガラスと第1の層とを有し、前記第1の層は、ほぼ平面の光学素子を含み、
太陽光を受けるとともに、前記カバーガラスによって反射された太陽光が前記アイボックスから離れる
向きに偏向されるように、光の軌跡を変化させるよう構成されており、
前記第1の層は、湾曲した
カバーガラスと同一または同等の光学機能を前記太陽光に提供することで、前記太陽光の軌跡を変化させるように構成されている
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第1の層が、第1の角度範囲で入射する前記画像の光を透過し、第2の角度範囲で入射する他の波長の光をほぼ反射する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記第1の層が、前記カバーガラス上に配置される、請求項1
または2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記第1の層が、前記カバーガラスの構造化表面層である、請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記第1の層が、ホログラムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記第1の層が、凹面に対応するフレネル構造を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記第1の層が、メタマテリアルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
前記第1の層が、その中心からの距離によって屈折率が異なる、屈折率分布層を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項9】
前記第2のハウジングが、前記カバーガラスを太陽光から部分的に遮蔽するように構成された光トラップをさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項10】
前記第1の層が屈折力を有し、各計算機合成光変調パターンが、前記画像の計算機合成ホログラムと、前記第1の層の前記屈折力を相殺する屈折力を有する、ソフトウェアレンズ機能とを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項11】
前記第2のハウジングが、前記第1の層と同一の第2の層を有し、その結果、前記第1の層と前記第2の層とが平行面を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項12】
前記光コンバイナが、乗物のフロントガラスである、請求項1~11のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイに関する。より詳細には、本開示は、ヘッドアップディスプレイの上部ハウジングに関する。さらに詳細には、本開示は、ヘッドアップディスプレイのカバーガラスに関する。本開示は、ヘッドアップディスプレイ用の遮光体または防眩体、その他虚像を生成するシステムに関する。遮光体は、太陽光などの入射する光の反射を抑制する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱した光は、振幅情報および位相情報の両方を含む。この振幅情報および位相情報は、例えば、ホログラフィック記録、すなわち「ホログラム」を形成するためのよく知られている干渉技法である感光板で捕捉することができ、感光板は干渉縞を含む。ホログラムは、元の物体を表現する二次元または三次元のホログラフィック再構成を形成するため、あるいは画像を再生するために、適切な光を有する照明によって再構成されてもよい。
【0003】
計算機合成ホログラフィは、干渉工程を数値的にシミュレートしたものであってもよい。計算機合成ホログラム(CGH)は、フレネル変換、またはフーリエ変換などの数学的変換に基づく技法で計算されてもよい。この種のホログラムは、フレネルホログラム、またはフーリエホログラムと呼ばれる場合がある。フーリエホログラムは、物体のフーリエ領域表現、あるいは物体の周波数領域表現とみなされてもよい。CGHはまた、例えば、コヒーレント光線追跡、または点群の技法によって計算されてもよい。
【0004】
CGHは、入射光の振幅および/または位相を変調するように構成された、空間光変調器(SLM)上で符号化されてもよい。光変調は、例えば、電気的にアドレス可能な液晶、光学的にアドレス可能な液晶、またはマイクロミラーを用いて実現されてもよい。
【0005】
SLMは、個別にアドレス可能な複数の画素を含み得て、これはセルまたは素子と呼ばれてもよい。光変調方式は、バイナリ、多値変調、または連続変調であってもよい。あるいは、装置が連続していてもよく(すなわち、画素で構成されていない)、したがって光変調は、装置にまたがって連続していてもよい。SLMは反射型であってもよく、つまり、変調光は反射してSLMから出力されたものであってもよい。SLMは同様に透過型であってもよく、つまり、変調光は透過してSLMから出力されたものであってもよい。
【0006】
説明した技術を使用して、画像化するためのホログラフィックプロジェクタが設けられてもよい。このようなプロジェクタは、例えば、ニアアイ装置を含む、ヘッドアップディスプレイ「HUD」、頭部装着型ディスプレイ「HMD」などに用途を見出している。本明細書では、改善したHUDが開示される。
【0007】
遠位に虚像を生成するHUDは通常、画像生成ユニットから画像を中継するための光学系を備える。実装に応じて、光学系の光学素子は、ガラス/プラスチックのレンズ、ミラー、またはこの両方の組み合わせからなっていてもよい。太陽光によって、ディスプレイ装置を含むHUDの構成部品が損傷する場合があるが、本開示は、HUDシステムの構成部品からの太陽光反射に関し、その理由は、そのような反射が画像品質を害する場合があるためである。太陽光反射の問題は、特にHUDシステムにおいて顕著であり、例えば、乗物のフロントガラスにフレアが生じる可能性がある。反射防止コーティングのない、ガラス表面からのわずか数パーセントの太陽光反射が、運転者を眩惑する可能性は十分ある。
【0008】
太陽の位置はさまざまに異なるが、限られた範囲内にあるので、ダッシュボードにあるHUDの配向を最適化すれば、この範囲を狭めることができる。範囲内の太陽光をすべて遮断する必要はないが、風防ガラスに反射する可能性のある太陽光を遮断することが必要になる。例えば、車の内部の屋根で反射した太陽光の一部は許容することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、太陽光反射の問題により、通常はスペースが非常に限られているダッシュボードに、HUDを一体化することが著しく制限される。
【0010】
このような太陽光曝露の問題を軽減するために、さまざまな解決策が試みられてきた。例えば、太陽光を防ぐためにシャッターやバッフルが使用されてきたが、なおシステムに侵入する。システム内の太陽光の強度、特に、ディスプレイ装置に到達する有害な波長の強度を低減するために、通常は光中継システムのミラーの1つである、光学部品はコーティングされることができる。知られている例は、光中継システムで、いわゆる「コールド」ミラーを使用することである。ホットスポットを削減するために、ディスプレイ装置に熱排出層を使用してもよく、HUDは、システム内で集束された太陽光のスポットサイズを大きくするために、デコリメート(de-collimate)することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、システムの設計を著しく複雑にしたり、システムの体積を大幅に増加させたりすることなく、太陽光曝露の影響を低減する機能を含む、改善されたHUDが開示される。
【0012】
本開示の態様は、添付の特許請求の範囲の独立クレームで定義される。
【0013】
本開示は、表示用の画像を生成するために、レーザーに基づくシステム、より詳細には、画像のホログラムを計算することによって画像を生成し、これをSLMに表示して、表示されたホログラムをコヒーレント光で照明する、画像生成装置を使用する。しかしながら、説明される技術は、自動車用のHUDに対して特に好都合であるが、任意の種類のヘッドアップディスプレイに適用可能なことが、以下の記述から当業者には理解されよう。
【0014】
説明されるHUDは、ホログラフィックプロジェクタに基づき、動的に再構成可能である。複数の表示されたホログラムを使用して、異なる焦点面深度に、対応する複数の二次元画像を形成してもよく、その結果、これらの画像は、見る人の目から異なる距離に表示される。例えば、2D画像はそれぞれ、異なるレンズ度数でホログラフ的に符号化されてもよい。このようにして、HUDは、見る人の目から異なる実効距離で、ほぼ二次元の画像を表示することができる。画像平面は、色または色の組み合わせが異なっていてもよく、色の異なる画像を異なる深度で符号化するために2つの異なるホログラムを使用することによって、これらをSLMに連続的に表示し、光源の色を同期して制御する。より重要な画像(コード)を前景に配置したり、色を使って強調したりできるので、異なる色で、かつ/または異なる視覚的奥行きで画像を表示する性能は有用である。
【0015】
本明細書では、乗物用のヘッドアップディスプレイが提供される。ヘッドアップディスプレイは、第1のハウジングと、第2のハウジングとを有する。第1のハウジングは、画像生成ユニットと、光学系とを備える。第2のハウジングは、ほぼ平坦なカバーガラスと、層とを備える。画像生成ユニットは、画像を出力するように構成される。画像生成ユニットは、光源と、空間光変調器とを備える。光源は、光を放射するように構成される。空間光変調器は、各画像に対応するホログラフィック再構成を形成するために、光源から光を受けて、空間光変調器に表示された計算機合成光変調パターンにしたがって、光を空間光変調するように構成される。光学系は、画像生成ユニットによって出力された画像を受け、各画像の虚像を生成するために、光コンバイナを使用して画像を中継(または画像化)するように構成される。光コンバイナは、アイボックスをのぞいている人に結合された画像を表示するように、画像生成ユニットによって出力された光を実世界のシーンの光と結合する。第2のハウジングは、第1のハウジングと、光コンバイナとの間に配置される。ほぼ平坦なカバーガラスは、第1のハウジングを保護するように構成される。層は、光の軌跡を変化させて、カバーガラスによって反射された太陽光が、偏向してアイボックスから離れるように構成される。
【0016】
層は、ほぼ平面の光学素子、または素子の一部であり、光の軌跡を変化させて、カバーガラスによって反射された太陽光を、直接的または間接的にアイボックスに到達させないように構成される。層は薄くてもよく、例えば、5mm未満または2mm未満など、厚さが10mm未満であってもよい。カバーガラスによって反射された太陽光が、結果的にアイボックスに到達する場合がある、2つの臨界光路がある。第1の臨界光路は、カバーガラスによって、直接アイボックスの中に反射された太陽光に相当する。直接的という言葉は、第1の臨界光路が、そのカバーガラスからアイボックスまでの光路上に、いかなる別の反射、または中間の反射も含まないことを示すために使用される。第2の臨界光路は、カバーガラスからアイボックスへ間接的に反射された太陽光に相当する。より詳細には、第2の臨界光路は、カバーガラスによって光コンバイナ(例えば、フロントガラス)に反射されてから、光コンバイナによってアイボックスの中に反射される太陽光に相当する。間接的という言葉は、第2の臨界光路が、そのカバーガラスからアイボックスまでの光路上に、光コンバイナからの別の反射、または間接的な反射を含むことを示すために使用される。特に、第2のハウジングは、光の軌跡を変化させるように構成された層を有し、その結果、第2の臨界光路には太陽光が入らない。具体的には、第2の臨界光路に入ろうとする太陽光は、アイボックスと交差しない別の光路に偏向される。言い換えれば、層によって、カバーガラスで反射されてから光コンバイナで反射される太陽光線を、確実にアイボックスから離す方向に導く。層によって、第2のハウジングへの太陽光入射が、カバーガラスおよび光コンバイナで反射して、アイボックスに入ることがないようにする。層は、カバーガラスで反射されてから光コンバイナで反射される太陽光線が、偏向してアイボックスから離れるように、カバーガラスからの太陽光の反射角度を小さくしてもよい。本開示によれば、カバーガラス、および光コンバイナによって反射されて、見る人の方に向かう太陽光線は、アイボックスと交差しない。
【0017】
湾曲したカバーガラスを、本開示による(ほぼ)平坦なカバーガラスと層とに置き換えることに関しては、少なくとも2つの非常に大きい利点がある。第一に、HUDにおけるヘッドアップディスプレイが占める体積が小さくなる。具体的には、カバーガラス下部の体積(自動車産業において重要なメトリックとなる)が削減される。第二に、平坦な表面を加工したり、または平坦な表面に層を配置したりするほうが、より容易である。具体的には、平坦なカバーガラスは構造化表面層を有するように加工でき、あるいは層は、例えば堆積またはコーティングして、容易に配置することができる。
【0018】
層は、第1の角度範囲で入射する画像の光を透過し、第2の角度範囲で入射する他の波長の光をほぼ反射する。
【0019】
ほぼ平坦なカバーガラスを提供することによって、層が別の機能を持つことが可能になる。層は、波長選択的、および/または角度選択的であってもよい。層の第1の(底)面は、明確に画定された第1の角度範囲で、画像の光を受けるように構成される。層は、第1の角度範囲で受けた画像の光をほぼ透過するように設計されてもよい。層の第2の(上)面は、第2の角度範囲で太陽光を受けるように構成される。第2の範囲は、第1の範囲よりも大きくてもよい。第1の範囲は、第2の範囲のサブセットであってもよい。層は、第2の角度範囲で受けた他の波長をほぼ反射するように設計されてもよい。層は、第2の角度範囲で受けた赤外光をほぼ反射してもよい。したがってカバーガラスは、太陽光がミラーまたは画像生成ユニットの損傷などの問題を引き起こさないように、受けた太陽光の少なくとも一部が第1のハウジングに入らないよう防いでもよい。HUDから出る有効角度に角度選択を適用することによって、投射画像がほとんど影響を受けないようにできる一方で、入射する太陽光線は、反射してHUDから離れるようにすることができる。例えば、ホログラムその他の回折性の光学素子は、1組の色のうちの1つ以上に対して、ある角度範囲を通過するように容易に構成することができる。
【0020】
層は、カバーガラス上に配置されてもよい。例えば、層は、カバーガラスに堆積させたコーティングであってもよく、あるいは層に接着された別の部品であってもよい。あるいは層は、非固定でカバーガラス上に配置されてもよい。画像は仮想性であるため、層を画像平面から離れた平面に配置して、目に見えないようにすることが可能になる。
【0021】
あるいは、層は、カバーガラスの構造化表面層であってもよい。したがって、カバーガラスと層とは一体的な構造であり、ヘッドアップディスプレイを構築する際に便利である。このような例では、カバーガラスが構造化表面層を有すると言ってもよい。
【0022】
層は、ホログラム、フレネル構造、メタマテリアル、または屈折率分布層を含むグループから、少なくとも1つを選択したものであってもよい。ホログラムは、媒体内に固定された記録物であってもよい。より詳細には、ホログラムは、記録媒体に記録された、固定された回折パターンであってもよい。ホログラムは、波長選択性および/または角度選択性など、回折パターンに本質的に含まれ得る付加的な機能がある点が有利であろう。例えば、ホログラムは、体積ホログラムであってもよい。ホログラムは、フーリエ変換ホログラムであってもよい。この場合、各光変調パターンは、画像の計算機合成フーリエ変換ホログラムと、ソフトウェアレンズ機能との合計を含む。ホログラムは、フレネルホログラムであってもよい。この場合、各計算機合成光変調パターンは、ソフトウェアレンズ機能を組み込んだ、計算機合成フレネル変換ホログラムを含む。ソフトウェアレンズ機能は、1~10ジオプトリなど、1~20ジオプトリの屈折力を有してもよい。ソフトウェアレンズ機能は、バイナリまたは多値変調、振幅または位相フレネルレンズ機能などの、フレネルレンズ機能であってもよい。あるいは、層は、凹面に対応するフレネル構造であってもよい。フレネル構造は、波長選択性および/または角度選択性を提供するために、コーティングされてもよい。屈折率分布層は、その中心からの距離によって異なる屈折率を有してもよい。
【0023】
第2のハウジングは、カバーガラスを太陽光から部分的に遮蔽するように構成された、光トラップをさらに備えてもよい。つまり、光トラップは、入射する太陽光線を遮断するように構成される。したがって、直接的かつ間接的にカバーガラスで反射した太陽光は、アイボックスに到達しない。好適には、ほぼ平坦なカバーガラスが光トラップを備えることにより、層に課される要件が小さくなる。特に、必要とされる層の複雑性、そして厚さが低減される。光トラップは、カバーガラスにほぼ隣接していてもよい。
【0024】
層は、正の屈折力などの屈折力を有してもよい。各計算機合成光変調パターンは、画像の計算機合成ホログラム、およびソフトウェアレンズ機能を含む。ソフトウェアレンズ機能は、層の屈折力を相殺する屈折力を有してもよい。アイボックスから離れるようにステアリングするのに必要な偏向量を減少させるために、カバーガラスによって反射された太陽光に対応する、光のフットプリントの大きさを減少させれば好適であろう。しかしながら、層に付与された屈折力は、HUD画像に影響を及ぼす。したがって、層の屈折力を相殺するために、計算機合成ホログラムに追加するなどして、ソフトウェアレンズ機能が計算機合成ホログラムと組み合わされてもよい。層は正の屈折力を有してもよく、ソフトウェアレンズ機能は、負の屈折力を有してもよい。層の屈折力は、ソフトウェアレンズ機能の屈折力と等しくてもよく、かつ逆であってもよい。
【0025】
あるいは、第1の層を補うために、第2の層を備えてもよい。第1の層と第2の層とが、カバーガラスの平行面のような平行な層を形成するように、第2の層は第1の層と同一であってもよい。層が平行なことにより、HUD画像に屈折力が付与されないことが確実になり、そのためHUD画像を修正する必要がなくなる。言い換えれば、光学系によって形成された像の画像は、層の屈折力に影響されない。第1の層がカバーガラスの第1の主面の第1のフレネル構造であり、第2の層がカバーガラスの第2の主面の第2のフレネル構造であってもよく、第1および第2のフレネル構造は、等しくかつ平行である。
【0026】
光コンバイナは、乗物のフロントガラスまたは風防ガラスであってもよい。この場合、ヘッドアップディスプレイと乗物のフロントガラスとを備える、ヘッドアップディスプレイシステムが提供される。あるいは光コンバイナは、ヘッドアップディスプレイの構成部品であってもよい。
【0027】
異なる実施形態、および一群の実施形態が、以下の詳細な説明の中で個別に開示される場合があるが、任意の実施形態または一群の実施形態の任意の特徴は、任意の実施形態または一群の実施形態の他の特徴、または特徴の組み合わせと結合されてもよい。つまり、本開示で開示された特徴のあらゆる可能な組み合わせ、および変更が予想される。
【0028】
本開示の全体を通じて、波長選択性および角度選択性を含む、光に対するさまざまな種類の「選択性」について言及される。「選択性」という用語は、光に反応する構成要素を示すために使用され、波長または角度などの、受けた光を特徴付ける少なくとも1つのパラメータに依存する。「レーザーライン」という用語は、中心波長、および30nm未満、任意で15nm未満、さらに任意で5nm未満の半値全波(full-wave half-maximum)を有する、狭帯域を指すために使用される。
【0029】
「画像の光」という用語は、ここでは画像を形成して受光面から出る(例えば、散乱する)光を指すために使用される。言い換えれば、「画像の光」は、画像を形成する光である。「画像の光」は、光学系とフロントガラスとによって画像化される。「画像の光」は、単色または多色であってもよい。「画像の光」は、混成色であってもよい。例えば、「画像の光」は、赤色光、緑色光、および青色光を含んでもよい。「画像の光」は、偏光されてもよい。
【0030】
「コーティング」について言及しているが、波長選択性を与えるコーティングなどの各コーティングは、複数の誘電体層または個別の誘電体コーティングなどの、複数の層または個別のコーティングを有してもよいことが当業者にはよく知られている。
【0031】
「ホログラム」という用語は、物体に関する振幅情報および/または位相情報を含む、記録物を指すのに用いられる。「ホログラフィック再構成」という用語は、ホログラムを照明することによって形成される、物体の光学的再構成を指すのに用いられる。「再生平面」という用語は、ここではホログラフィック再構成が完全に形成される空間内の平面を指すために使用される。「再生フィールド」という用語は、ここでは空間光変調器から空間的に変調された光を受けることができる、再生平面の副領域を指すために使用される。「画像」および「画像領域」という用語は、ホログラフィック再構成を形成する光で照明される、再生フィールドの領域を指す。実施形態では、「画像」は、「画像画素」と呼ばれる場合がある、離散したスポットを含んでもよい。
【0032】
「符号化」、「書き込み」、または「アドレス」という用語は、各画素の変調レベルをそれぞれ決定する、それぞれの複数の制御値を、SLMの複数の画素に提供する工程を述べるのに用いられる。SLMの画素は、複数の制御値を受けることに応じて、光変調分布を「表示する」ように構成されると言ってもよい。
【0033】
許容可能な品質のホログラフィック再構成は、元の物体に関する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成できることがわかっている。このようなホログラフィック記録物は、位相限定ホログラムと呼ばれてもよい。実施形態は位相限定ホログラムに関連しているが、本開示は、振幅限定ホログラフィにも同等に適用可能である。
【0034】
本開示はまた、元の物体に関する振幅情報と位相情報とを使用する、ホログラフィック再構成の形成にも同等に適用可能である。いくつかの実施形態では、これは元の物体に関する振幅情報および位相情報の両方を含む、いわゆる完全複素ホログラム(fully complex hologram)を使用する複素変調によって実現される。このようなホログラムは、ホログラムの各画素に割り当てられた値(グレーレベル)が振幅成分および位相成分を有するため、完全複素ホログラムと呼ばれてもよい。各画素に割り当てられた値(グレーレベル)は、振幅成分および位相成分の両方を有する複素数で表されてもよい。いくつかの実施形態では、完全複素計算機合成ホログラムが計算される。
【0035】
計算機合成ホログラム、または空間光変調器の位相値、位相成分、位相情報、あるいは単に画素の位相を、「位相遅延」の省略表現として参照してもよい。つまり、説明される位相値はいずれも、実際には、その画素によって提供される位相遅延の量を表す、(例えば、0~2πの範囲の)数字である。例えば、π/2の位相値を有するものとして説明される空間光変調器の画素は、受けた光の位相をπ/2ラジアン変化させる。いくつかの実施形態では、空間光変調器の各画素は、複数の可能な変調値(例えば、位相遅延値)のうちの1つで動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の使用可能な変調レベルを指すのに用いられてもよい。例えば、異なる位相レベルが異なるグレーの諧調を提供しない場合であっても、「グレーレベル」という用語は、位相限定変調器において、複数の使用可能な位相レベルを指すのに便宜上使用されてもよい。また、「グレーレベル」という用語は、複素変調器における、複数の使用可能な複素変調レベルを指すのに便宜上用いられてもよい。
【0036】
異なる実施形態、および一群の実施形態が、以下の詳細な説明の中で個別に開示される場合があるが、任意の実施形態または一群の実施形態の任意の特徴は、任意の実施形態または一群の実施形態の他の特徴、または特徴の組み合わせと結合されてもよい。つまり、本開示で開示された特徴のあらゆる可能な組み合わせ、および変更が予想される。
【0037】
特定の実施形態について、添付の図面を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】スクリーンにホログラフィック再構成を生成する、反射型SLMの概略図である。
【
図2A】例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの第1反復を示す。
【
図2B】例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの、第2反復および後続の反復を示す。
【
図2C】例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの、代替的な第2反復および後続の反復を示す。
【
図5】例示的な「ホット/コールドミラー」の光学性能を示す。
【
図6B】湾曲したカバーガラス、およびカバーガラスによって反射された太陽光の2つの臨界光路を示す。
【
図7】ほぼ平坦なカバーガラスを備える、本開示の実施形態を示す。
【
図8A】いくつかの実施形態による、例示的なフレネル構造を示す。
【
図8B】いくつかの実施形態による、例示的な別のフレネル構造を示す。
【0039】
全図面を通じて、同じ部品、または類似の部品を参照するために同じ参照符号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、以下で説明される実施形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。つまり、本発明は、異なる形態で具体化されてもよく、説明されている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、これらの実施形態は、例示の目的で提示されているものである。
【0041】
別の構造の上部/下部に形成される、または他の構造の上/下に形成されると説明されている構造は、構造が互いに接触している場合、およびさらにこれらの間に第3の構造が配置される場合を含むと解釈されるべきである。
【0042】
時間関係の説明において、例えば、事象の時間的順序が「後」、「後続の」、「次の」、「前」などと記載されているときは、特に明記しない限り、本開示は連続的、および非連続的な事象を含むと解釈されるべきである。例えば、「ちょうど」、「即時に」、または「直接的に」などの言葉が使用されていない限り、この記述は連続的でない場合を含むと解釈されるべきである。
【0043】
様々な要素を説明するために、「第1の」、「第2の」などの用語が本明細書で使用されている場合があるが、このような要素は、これらの用語によって限定されるものではない。このような用語は、1つの要素を別の要素と区別するために使用されているにすぎない。例えば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶ場合があり、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶ場合がある。
【0044】
異なる実施形態の特徴は、部分的または全体的に、互いに結合される、あるいは組み合わされてもよく、互いに様々に相互運用されてもよい。いくつかの実施形態は、互いに独立して実施されてもよく、あるいは共依存の関係でともに実施されてもよい。
【0045】
光学配置
【0046】
図1は、計算機合成ホログラムが、単一の空間光変調器で符号化される実施形態を示す。計算機合成ホログラムは、再構成のための物体のフーリエ変換である。したがって、ホログラムは、物体のフーリエ領域表現、または周波数領域表現、あるいはスペクトル領域表現と言われる場合がある。この実施形態では、空間光変調器は、シリコン上の反射型液晶(liquid crystal on silicon、LCOS)装置である。ホログラムは、空間光変調器で符号化され、ホログラフィック再構成は、再生フィールド、例えば、スクリーンまたはディフューザなどの受光面で形成される。
【0047】
光源110、例えば、レーザーまたはレーザーダイオードは、コリメーティングレンズ111を介してSLM140を照明するように配置される。コリメーティングレンズにより、SLMに入射する、ほぼ平面の光の波面が生じる。
図1では、波面の方向はオフノーマルである(例えば、透明層の平面に対する真の直角から2度または3度離れている)。しかしながら、他の実施形態では、ほぼ平面の波面は垂直入射で提供され、入力光路と出力光路とを分離するために、ビームスプリッタ構成が用いられる。
図1に示す実施形態では、光源からの光がSLMの反射裏面で反射されて光変調層と相互作用して、出口波面112を形成する構成になっている。出口波面112は、フーリエ変換レンズ120を含む光学素子に印加され、スクリーン125で焦点を結ぶ。より詳細には、フーリエ変換レンズ120は、SLM140から変調光のビームを受けて周波数-空間変換を行い、スクリーン125でホログラフィック再構成を生成する。
【0048】
特に、この種のホログラフィでは、ホログラムの各画素が再構成全体に寄与する。再生フィールドの特定の点(または画像画素)と、特定の光変調素子(またはホログラム画素)との間に、一対一相関は存在しない。言い換えれば、光変調層を出る変調光は、再生フィールド全体に分散される。
【0049】
このような実施形態では、空間におけるホログラフィック再構成の位置は、フーリエ変換レンズのジオプトリ度数(集束力)によって決定される。
図1に示す実施形態では、フーリエ変換レンズは、物理レンズである。つまり、フーリエ変換レンズは光学的なフーリエ変換レンズであり、フーリエ変換は光学的に行われる。どのようなレンズでもフーリエ変換レンズとして機能できるが、レンズの性能によって、行うフーリエ変換の精度が制限される。当業者であれば、光学的なフーリエ変換を行うためのレンズの使用方法について理解しているであろう。
【0050】
ホログラム計算
【0051】
いくつかの実施形態では、計算機合成ホログラムはフーリエ変換ホログラム、すなわち単にフーリエホログラム、またはフーリエに基づくホログラムであり、正レンズのフーリエ変換特性を使用することによって、画像が遠視野に再構築される。フーリエホログラムは、再生平面の所望のライトフィールドをフーリエ変換して、レンズ平面に戻すことによって計算される。計算機合成フーリエホログラムは、フーリエ変換を用いて計算されてもよい。
【0052】
フーリエ変換ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムを用いて計算されてもよい。さらに、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、(写真などの)空間領域における振幅限定情報から、フーリエ領域におけるホログラム(すなわち、フーリエ変換ホログラム)を計算するために使用されてもよい。物体に関する位相情報は、空間領域における振幅限定情報から効率的に「検索」される。いくつかの実施形態では、計算機合成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム、またはその変形を用いて、振幅限定情報から計算される。
【0053】
Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、平面AおよびBのそれぞれにおける、光ビームの輝度断面IA(x,y)およびIB(x,y)が知られていて、IA(x,y)およびIB(x,y)が、1つのフーリエ変換によって関連付けられるときの状況を考慮する。所与の輝度断面で、平面AおよびBにおける位相分布のそれぞれの近似値、ΨA(x,y)およびΨB(x,y)が求められる。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムでは、反復過程に従うことによって、この問題の解決策が見つかる。より詳細には、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、空間領域とフーリエ(スペクトルまたは周波数)領域との間で、IA(x,y)およびIB(x,y)を表すデータセット(振幅および位相)を繰り返し転送している間に、空間制限およびスペクトル制限を反復的に適用する。スペクトル領域における、対応する計算機合成ホログラムは、アルゴリズムを少なくとも1回反復することによって得られる。アルゴリズムは、入力画像を表現するホログラムを生成するように収束され構成される。ホログラムは、振幅限定ホログラム、位相限定ホログラム、または完全複素ホログラムであってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、位相限定ホログラムは、例えば、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、英国特許第2,498,170号明細書、または英国特許第2,501,112号明細書で説明されている、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを用いて計算される。しかしながら、本明細書で開示される実施形態は、単なる例として、位相限定ホログラムの計算について説明する。このような実施形態では、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、既知の振幅情報T[x,y]を生じさせるデータセットの、フーリエ変換の位相情報Ψ[u,v]を検索し、振幅情報T[x,y]は、対象画像(写真など)を表す。大きさ(magnitude)および位相は、フーリエ変換では本来組み合わされるので、変換された大きさおよび位相は、計算されたデータセットの精度についての有用な情報を含む。したがって、アルゴリズムは、振幅情報および位相情報の両方のフィードバックを伴って、反復的に使用されてもよい。しかしながら、このような実施形態では、画像平面で対象画像のホログラフィック表現を形成するために、位相情報Ψ[u,v]のみがホログラムとして用いられる。ホログラムは、位相値のデータセット(2D配列など)である。
【0055】
他の実施形態では、完全複素ホログラムを計算するために、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムが用いられる。完全複素ホログラムは、大きさ成分と位相成分とを有するホログラムである。ホログラムは、複素データ値の配列を含む、(2D配列などの)データセットであり、各複素データ値は、大きさ成分と位相成分とを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムは複素データを処理し、フーリエ変換は複素フーリエ変換である。複素データは、(i)実数成分および虚数成分、または(ii)大きさ成分および位相成分を含むものとみなされてもよい。いくつかの実施形態では、複素データの2つの成分は、アルゴリズムの多様な段階で異なって処理される。
【0057】
図2Aは、位相限定ホログラムを計算するためのいくつかの実施形態による、アルゴリズムの第1反復を示す。アルゴリズムに対する入力は、画素の2D配列、またはデータ値を含む入力画像210であり、各画素またはデータ値は、大きさ、すなわち振幅値である。つまり、入力画像210の各画素またはデータ値は、位相成分を有していない。入力画像210は、したがって、大きさ限定分布、すなわち振幅限定分布、あるいは輝度限定分布とみなされてもよい。入力画像210などの例は、写真、またはフレームの時系列を含む、1フレームの動画である。アルゴリズムの第1反復は、開始複素データセット(starting complex data set)を形成するために、ランダム位相分布(またはランダム位相シード)230を用いて、入力画像の各画素にランダム位相値を割り当てることを含む、データ形成ステップ202Aから開始し、セットの各データ素子は、大きさおよび位相を含む。開始複素データセットは、空間領域における入力画像を表すと言ってもよい。
【0058】
第1の処理ブロック250は、開始複素データセットを受けて複素フーリエ変換を行い、フーリエ変換された複素データセットを形成する。第2の処理ブロック253は、フーリエ変換された複素データセットを受けて、ホログラム280Aを出力する。いくつかの実施形態では、ホログラム280Aは、位相限定ホログラムである。このような実施形態では、第2の処理ブロック253は、各位相値を量子化し、各振幅値を1に設定して、ホログラム280Aを形成する。各位相値は、空間光変調器の画素で表現され得る位相レベルに従って量子化され、空間光変調器は、位相限定ホログラムを「表示する」ために用いられる。例えば、空間光変調器の各画素が、256の異なる位相レベルを提供する場合、ホログラムの各位相値は、256の可能な位相レベルのうち1つの位相レベルに量子化される。ホログラム280Aは、入力画像を表現する、位相限定フーリエホログラムである。他の実施形態では、ホログラム280Aは、受けたフーリエ変換複素データセットから得られた、(それぞれが振幅成分および位相成分を含む)複素データ値の配列を含む、完全複素ホログラムである。いくつかの実施形態では、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために、各複素データ値を、複数の許容可能な複素変調レベルうちの1つに制限する。制限するステップは、各複素データ値を、複素平面内の最も近い許容可能な複素変調レベルに設定することを含んでもよい。ホログラム280Aは、スペクトル領域、またはフーリエ領域、あるいは周波数領域における入力画像を表現すると言ってもよい。いくつかの実施形態では、アルゴリズムはこの時点で停止する。
【0059】
しかしながら、他の実施形態では、アルゴリズムは、
図2Aの点線矢印で示されているように継続する。言い換えれば、
図2Aの点線矢印に従ったステップは任意である(すなわち、すべての実施形態で必須というわけではない)。
【0060】
第3の処理ブロック256は、第2の処理ブロック253から修正された複素データセットを受けて逆フーリエ変換を行い、逆フーリエ変換された複素データセットを形成する。逆フーリエ変換された複素データセットは、空間領域における入力画像を表すと言ってもよい。
【0061】
第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットを受けて、大きさ値211Aの分布、および位相値213Aの分布を抽出する。必要に応じて、第4の処理ブロック259は、大きさ値211Aの分布を評価する。具体的には、第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットの大きさ値211Aの分布を入力画像210と比較してもよく、入力画像210は、それ自体が大きさ値の分布であることは言うまでもない。大きさ値211Aの分布と、入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aを許容できると判断してもよい。つまり、大きさ値211Aの分布と、入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが入力画像210を十分に正確に表現していると判断してもよい。いくつかの実施形態では、比較の目的のために、逆フーリエ変換された複素データセットの位相値213Aの分布は無視される。大きさ値211Aの分布と、入力画像210とを比較する別の方法がいくつか使用されてもよく、本開示がいかなる特定の方法にも限定されないことは理解されよう。いくつかの実施形態では、平均二乗偏差が計算され、平均二乗偏差が閾値未満の場合、ホログラム280Aは、許容されるものとみなされる。第4の処理ブロック259が、ホログラム280Aを許容できないと判断した場合、さらにアルゴリズムの反復が行われてもよい。しかしながら、この比較するステップは必須ではなく、他の実施形態では、行われるアルゴリズムの反復数は、予め決定されるか、または予め設定され、あるいはユーザによって定義される。
【0062】
図2Bは、アルゴリズムの第2反復、およびそれ以上のアルゴリズムの反復を示す。前述した反復の、位相値213Aの分布は、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値211Aの分布は、入力画像210の大きさ値の分布を優先して拒絶される。第1反復では、データ形成ステップ202Aは、入力画像210の大きさ値の分布を、ランダム位相分布230と結合することによって、第1の複素データセットを形成した。しかしながら、第2反復および後続の反復では、データ形成ステップ202Bは、(i)前述したアルゴリズムの反復からの位相値213Aの分布を、(ii)入力画像210の大きさ値の分布と結合することによって、複素データセットを形成することを含む。
【0063】
図2Bのデータ形成ステップ202Bによって形成された複素データセットは、次に、
図2Aを参照して説明した方法と同様の方法で処理されて、第2反復のホログラム280Bを形成する。処理の説明は、したがってここでは繰り返さない。アルゴリズムは、第2反復のホログラム280Bが計算されたときに停止してもよい。しかしながら、任意の回数で、アルゴリズムのさらなる反復が行われてもよい。第3の処理ブロック256は、第4の処理ブロック259が必要とされる場合、あるいはさらなる反復が必要とされる場合にのみ必要になることは理解されよう。出力ホログラム280Bは通常、反復されるごとに良好になる。しかしながら、実際には、目に見える改善がみられない時点や、処理時間が増えることの悪影響が、さらなる反復を行うことの利益を上回る時点に達することが多い。したがって、アルゴリズムは、反復的かつ収束的なものとして説明される。
【0064】
図2Cは、第2反復、および後続の反復の代替的な実施形態を示す。前述した反復の、位相値213Aの分布は、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値211Aの分布は、大きさ値の代替的な分布を優先して拒絶される。この代替実施形態では、大きさ値の代替的な分布は、前述した反復の大きさ値211の分布から得られる。具体的には、処理ブロック258は、入力画像210の大きさ値の分布を、前述した反復の大きさ値211の分布から差し引き、その差を利得係数αで拡大縮小し、拡大縮小された差を入力画像210から差し引く。これは以下の数式によって数学的に表され、下付きの文字および数字は、反復回数を示す。
ここで、
F´は、逆フーリエ変換、
Fは、順フーリエ変換、
R[x,y]は、第3の処理ブロック256による複素データセット出力、
T[x,y]は、入力画像または対象画像、
∠は、位相成分、
Ψは、位相限定ホログラム280B、
ηは、大きさ値211Bの新しい分布、
αは、利得係数である。
【0065】
利得係数αは、定数または変数であってもよい。いくつかの実施形態では、利得係数αは、入ってくる対象画像データの大きさおよび比率に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、利得係数αは、反復回数に依存する。いくつかの実施形態では、利得係数αは、単に反復回数の関数である。
【0066】
図2Cの実施形態は、他のすべての点において、
図2Aおよび
図2Bの実施形態と同じである。位相限定ホログラムΨ(u,v)は、周波数領域またはフーリエ領域に、位相分布を含んでいると言ってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、フーリエ変換は、空間光変調器を用いて行われる。具体的には、ホログラムデータは、屈折力を提供する第2のデータと組み合わされる。つまり、空間光変調用に書き込まれたデータは、物体を表すホログラムデータと、レンズを表すレンズデータとを含む。空間光変調器で表示され、光で照明されると、レンズデータは物理レンズを模倣する、つまり、対応する物理的光学素子と同じ方法で光を焦点に当てる。レンズデータは、したがって、屈折力、または集束力を提供する。このような実施形態では、
図1の物理フーリエ変換レンズ120は、省略されてもよい。レンズを表すデータを計算する方法は、計算機合成ホログラフィの分野において知られている。レンズを表すデータは、ソフトウェアレンズと呼ばれてもよい。例えば、位相限定レンズは、その屈折率のため、および光路長が空間的に異なるためにレンズの各点で生じる、位相遅延を計算することによって形成されてもよい。例えば、凸レンズの中央の光路長は、レンズの縁部の光路長よりも長い。振幅限定レンズは、フレネルゾーンプレートによって形成されてもよい。レンズを表すデータをホログラムと組み合わせる方法もまた、計算機合成ホログラフィの分野の当業者に知られており、その結果、物理フーリエレンズを必要とすることなく、ホログラムのフーリエ変換を行うことができる。いくつかの実施形態では、レンズデータは、単純なベクトル加算などの簡単な加算によって、ホログラムと結合される。いくつかの実施形態では、物理レンズがソフトウェアレンズと併用されてフーリエ変換が行われる。あるいは、他の実施形態では、ホログラフィック再構成が遠視野で行われるように、フーリエ変換レンズは完全に省略される。別の実施形態では、ホログラムは、同様の方法で回折格子データと結合される、つまりデータは、ビームステアリングなどの回折格子機能を実行するように構成される。これについても、このようなデータを計算する方法は、計算機合成ホログラフィの分野において知られている。例えば、位相限定回折格子は、ブレーズド回折格子の表面の各点で生じる、位相遅延をモデル化することによって形成されてもよい。振幅限定回折格子は、ホログラフィック再構成の角度ステアリングを行うために、単に振幅限定ホログラムに重ね合わせられてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、フーリエ変換は、物理フーリエ変換レンズと、ソフトウェアレンズとの共同によって行われる。つまり、フーリエ変換に寄与する屈折力の一部はソフトウェアレンズによって提供され、フーリエ変換に寄与する残りの屈折力は、1つまたは複数の物理光学素子によって提供される。
【0069】
いくつかの実施形態では、画像データを受けて、アルゴリズムを用いてホログラムをリアルタイムに計算するように構成された、リアルタイムエンジンが提供される。いくつかの実施形態では、画像データは、一連の画像フレームを含む動画である。他の実施形態では、ホログラムは、予め計算され、コンピュータのメモリに記憶され、SLMに表示するために必要に応じて再現される。つまり、いくつかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが提供される。
【0070】
実施形態は、単なる例として、フーリエホログラフィ、およびGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムに関する。本開示は、フレネルホログラフィ、ならびに点群方式に基づいたものなどの、他の技法で計算されたホログラムに同等に適用可能である。
【0071】
光変調
【0072】
空間光変調器は、計算機合成ホログラムを含む、回折パターンを表示するために使用されてもよい。ホログラムが位相限定ホログラムの場合は、位相を変調する空間光変調器が必要になる。ホログラムが完全複素ホログラムの場合は、位相および振幅を変調する空間光変調器が使用されてもよく、あるいは位相を変調する第1の空間光変調器と、振幅を変調する第2の空間光変調器とが使用されてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、空間光変調器の光変調素子(すなわち画素)は、液晶を含むセルである。つまり、いくつかの実施形態では、空間光変調器は、光学活性成分が液晶の、液晶装置である。各液晶セルは、複数の光変調レベルを選択的に提供するように構成される。つまり、各液晶セルは、どの時点においても、複数の可能な光変調レベルから選択された1つの光変調レベルで動作するように構成される。各液晶セルは、複数の光変調レベルから、異なる光変調レベルに動的に再構成可能である。いくつかの実施形態では、空間光変調器は、シリコン上の反射型液晶(LCOS)空間光変調器であるが、本開示は、この種の空間光変調器に限定されない。
【0074】
LCOS装置は、(例えば、幅数センチメートルの)小開口内に、光変調素子または画素の密集配列を設ける。画素は、通常は約10ミクロン以下なので、回折角度が数度になり、光学系を小型にすることができる。他の液晶装置の大開口を照明するよりも、LCOSSLMの小開口を適切に照明するほうが容易である。LCOS装置は、通常は反射型であり、つまり、LCOS SLMの画素を駆動する回路は、反射面の下に埋め込むことができる。その結果、開口率が高くなる。言い換えれば、画素が密に詰まっており、画素間のデッドスペースが非常に小さいことを意味する。このことは、再生フィールドの光学ノイズが低減されるため有利である。LCOS SLMはシリコンバックプレーンを使用し、利点として画素が光学的に平坦である。このことは、位相変調装置にとって特に重要である。
【0075】
適切なLCOS SLMについては、
図3を参照しながら、単なる例として以下で説明する。LCOS装置は、単一の結晶シリコン基板302を用いて形成される。これは、平面形状が正方形のアルミニウム電極301の2D配列を有し、アルミニウム電極301はギャップ301aで離間され、基板の上面に配置されている。各電極301は、基板302に埋め込まれた回路302aを介してアドレスすることができる。各電極は、それぞれの平坦なミラーを形成する。配向層303が電極の配列上に置かれ、液晶層304が配向層303上に置かれる。第2の配向層305は、ガラスなどの平坦な透明層306上に置かれる。ITOなどの単一の透明電極307は、透明層306と、第2の配向層305との間に置かれる。
【0076】
各方形電極301は、透明電極307の上方の領域と、介在する液晶材料とともに、しばしば画素と呼ばれる、制御可能な位相変調素子308を画定する。有効画素領域、すなわちフィルファクタは、画素同士の間の空間301aを考慮に入れた、光学活性な総画素の割合である。透明電極307に対して、各電極301に印加される電圧を制御することによって、各位相変調素子の液晶材料の特性が変化する場合があり、これによって入射光に可変遅延がもたらされる。この効果は、波面に位相限定変調をもたらすものであり、すなわち振幅効果は生じない。
【0077】
説明したLCOS SLMは、空間的に変調された光を反射させて出力する。反射型LCOS SLMには、信号線、ゲート線、およびトランジスタが鏡面の下方にあることによって、フィルファクタが高く(通常は90%よりも高い)、かつ解像度が高くなるという利点がある。反射型LCOS空間光変調器を使用することの別の利点は、液晶層の厚さを、透過装置が用いられた場合に必要な厚さの半分にできることである。これにより、液晶のスイッチング速度が飛躍的に向上する(動画を投影するための大きな利点となる)。しかしながら、本開示の教示は、透過型LCOS SLMを使用して同等に実施されてもよい。
【0078】
ヘッドアップディスプレイ
【0079】
図4は、車などの乗物内にあるHUDを示す。乗物のフロントガラス430、およびボンネット(またはフード)435が、
図4に示されている。HUDは、画像生成ユニット「PGU」410と、光学系420とを備える。
図4に示す光学系420は、単なる例として、2つのミラーを備える。本開示は、ミラーが1つのみの場合を含む、任意の数のミラーを備える光学系に同等に適用可能である。
【0080】
PGU410は、光源と、受光面と、画像の画像内容をコンピュータ制御するように構成されたプロセッサ(またはコンピュータ)とを備える。PGU410は、受光面に画像、または画像シーケンスを生成するように構成される。受光面は、スクリーン、またはディフューザであってもよい。いくつかの実施形態では、受光面はプラスチックである(つまり、プラスチック製である)。
【0081】
光学系420は、入力ポートと、出力ポートと、第1のミラー421と、第2のミラー422とを備える。第1のミラー421、および第2のミラー422は、光学系の入力ポートから光学系の出力ポートへ光を導くように構成される。より詳細には、第2のミラー422は、PGU410から画像の光を受けるように構成され、第1のミラー421は、第2のミラー422から画像の光を受けるように構成される。第1のミラー421は、受けた画像の光を出力ポートに反射するようにさらに構成される。入力ポートから出力ポートまでの光路は、したがって入力から第2のミラー422までの第1の光路423(または第1の光路成分)と、第2のミラー422から第1のミラー421までの第2の光路424(または第2の光路成分)とを含む。第1のミラーから出力ポートまでの第3の光路(または光路成分)があることは言うまでもないが、これについては
図4で参照番号は振られていない。
図4に示す光学構成は、光路の形状によって「Z型」構成と呼ばれてもよい。
【0082】
HUDは、乗物内に構成されて配置され、その結果、光学系420の出力ポートからきた画像の光はフロントガラス430に入射して、フロントガラス430によって、少なくとも部分的にHUDのユーザ440に反射される。したがって、いくつかの実施形態では、光学系は、空間的に変調された光をフロントガラスから反射することによって、フロントガラスに各画像の虚像を形成するように構成される。HUDのユーザ440(例えば、車の運転者)は、フロントガラス430の画像の虚像450を見る。したがって、実施形態では、光学系は、乗物のフロントガラスに各画像の虚像を形成するように構成される。虚像450は、車のボンネット435に沿って下方に形成される。例えば、虚像はユーザ440から1~2.5メートルの距離にあってもよい。光学系420の出力ポートは、車のダッシュボードの開口と位置合わせされ、その結果、画像の光は、光学系420と、フロントガラス430とによってユーザ440に導かれる。この構成において、フロントガラス430は光コンバイナとして機能する。いくつかの実施形態では、光学系は、系に含まれる別の光コンバイナに、各画像の虚像を形成するように構成される。フロントガラス430、または含まれる場合は別の光コンバイナは、実世界のシーンの光を画像の光と結合する。したがって、HUDは、画像の虚像を含む、拡張現実を提供し得ることは理解されよう。例えば、拡張現実情報は、ナビゲーション情報、または自動車の速度に関する情報を含んでもよい。いくつかの実施形態では、画像を形成する光は、ブリュースター角(偏光角としても知られている)で、またはブリュースター角の2度以内などブリュースター角の5度以内で、フロントガラスに入射することによって出力される。
【0083】
いくつかの実施形態では、第1のミラー、および第2のミラーは、HUDの物理的な大きさを過度に増加させることなく光路長を長くするために、入力から出力まで光路を折り曲げるように形成される。
【0084】
PGU410の受光面に形成される画像は、幅および高さがわずか数センチメートルであってもよい。第1のミラー421、および第2のミラー422は、したがって集合的にまたは個別に、拡大を提供する。つまり、第1のミラー、および/または第2のミラーは、屈折力(つまり、屈折する能力、または焦点を合わせる能力)を有してもよい。ユーザ440は、したがって、PGUによって形成された画像の拡大された虚像450を見る。また、第1のミラー421、および第2のミラー422は、通常は複雑な曲面を有するフロントガラス430によって生じた歪みなどの、光学歪みを矯正してもよい。ミラーの折れ曲がった光路、および屈折力はともに、画像の虚像を適切に拡大することを可能にする。
【0085】
本開示のPGU410は、ホログラフィックプロジェクタと、スクリーンまたはディフューザなどの受光面とを備える。上述した本開示によれば、ホログラフィックプロジェクタは、光源と、空間光変調器と、ホログラムプロセッサとを備える。空間光変調器は、空間光変調器に表示されたホログラムにしたがって、光を空間的に変調するように構成される。ホログラムプロセッサは、計算機合成ホログラムを提供するように構成される。いくつかの実施形態では、ホログラムプロセッサは、複数の計算機合成ホログラムを含むリポジトリ(例えば、メモリ)から、出力する計算機合成ホログラムを選択する。他の実施形態では、ホログラムプロセッサは、計算機合成ホログラムをリアルタイムに計算して出力する。いくつかの実施形態では、PGU410によって形成された各画像は、受光面上のホログラフィック再構成である。つまり、いくつかの実施形態では、各画像は、受光面において空間的に変調された光の干渉を受けることによって形成される。
【0086】
HUDにはフロントガラスまでの光路(好ましくは遮るもののない光路)が必要なために、乗物のダッシュボードは開口を有する。しかしながら、フロントガラスとHUDとの間のこの光路により、太陽光460などの環境光も同様にHUDに侵入可能になる。これにより、本明細書で説明する様々な問題が生じる。HUDはしたがって、通常は太陽光対策を有する上部ハウジング470をさらに備え、これについては
図6および
図7を参照して以下でさらに詳しく説明する。例において、第1のミラーは、赤外線を除去するように構成されたコールドミラーでもある。コールドミラーは、可視光を反射するが、赤外線(IR)の光は透過し得る。他の例では、第1のミラー421は、いわゆるホット/コールドミラーであり、少なくとも部分的にIRおよび紫外線(UV)の光を除去する。
図5は、例示的なホット/コールドミラーの反射(y軸)を、光波長(x軸)の関数として示す。
【0087】
図6Aは、フロントガラス630とダッシュボード680とを備える乗物の、ヘッドアップディスプレイの光学系を含む、下部(または第1の)ハウジング625を示す。下部ハウジングは、少なくとも光学系の第1のミラー621、ならびに図を簡素にするために図示されていない、その他の構成部品を備える。ヘッドアップディスプレイは、太陽光対策を有する上部(または第2の)ハウジング670を含む。具体的には、上部ハウジング670は、光トラップ674と、カバーガラス672とを備える。カバーガラス672は反射性で、一般に放物線状に、または楕円形に湾曲している。太陽光対策の機能については、
図6Bを参照すればよりよく理解されよう。
【0088】
図6Bは、ヘッドアップディスプレイのいわゆるアイボックス690を示し、これは、HUD画像(画像の虚像)が表示され得る空間領域である。見る人がアイボックスの中をのぞくと、HUD画像が見える。見る人がアイボックスをのぞいていない場合は、HUD画像は見えない。アイボックス690は、運転者の背丈が高くても低くても十分に適応することができ、運転中に平常通りに頭を動かすことができる。
図6Bは、HUD画像を形成する、下部ハウジング625からくる光線を収容する、体積685を示す。また、
図6Bは、フロントガラス630を通過してカバーガラス672に到達する太陽光線Aなどの太陽光線が、フロントガラスの内面に反射して運転者の目に入らないように、カバーガラス672が湾曲していることを示す。従来は、カバーガラス672の曲率は、カバーガラス672、およびフロントガラスの内面から反射した太陽光線Aなどの太陽光線が、
図6Bに示すように、運転者の胸部領域に向かって下方に導かれるような曲率である。フロントガラスの内面からの反射は、4%未満であっても(フロントガラスがコーティングされていれば、おそらくわずか0.1%であっても)、HUDにおいては、太陽光のピーク強度によってこのような反射が問題になることは理解されよう。カバーガラス672を湾曲させることにより、製造時の複雑性が増し、HUDの体積が増加する。
【0089】
上部ハウジングの第2の構成部品は、光トラップ674である。光トラップ674は、HUDの他の構成部品を太陽光からいくらか遮断する、物理的なバッフルである。特に、光トラップ674は、通常は、比較的浅い太陽光(つまり、日没付近など太陽が空の比較的低い位置にあるとき、例えば太陽光線B)を遮断し、その結果、太陽光がカバーガラス672に到達することはない。
【0090】
図7は、カバーガラス772Aがほぼ平坦で、湾曲したカバーガラスの曲率を模倣または複製した層772Bが設けられている、本開示の実施形態を示す。つまり、層772Bは、カバーガラス672などの湾曲したカバーガラスと同等の、または同一の光学機能を提供する。層772Bは、カバーガラス772A上に配置された平坦な層であってもよく、あるいは層772Bは、カバーガラス772Aの構造化表面層であってもよい。カバーガラス772Aの構造化表面層は、例えば、加工、プレス、エッチングなどを行って、カバーガラス772Aの表面を処理することによって形成されてもよい。カバーガラス772Aと層772Bとは、一体であってもよい。カバーガラス772Aと層772Bとは、一体的に形成されてもよい。このような実施形態では、カバーガラス772Aが層772Bを含むと言ってもよい。あるいは、層772Bは、カバーガラス772Aと一体化されなくてもよい。層772Bは、カバーガラス772Aに取り付けられた、または固定された、個別に形成された部品であってもよい。いくつかの実施形態では、層772Bは、カバーガラス772Aのコーティングである。構造化表面層は、裸眼では見えないという特徴を有していてもよい。いくつかの実施形態では、層772Bは、受けた太陽光を回折または屈折させることによって、湾曲したカバーガラスの湾曲の機能を提供する。つまり、層772Bは、回折し、反射し、かつ/または屈折する構造になっている。カバーガラス672はガラスと呼ばれているが、かならずしもガラス製でなくともよいことは理解されよう。より一般的には、カバーガラス772Aは、光波長においてほぼ透明な光学窓である。
【0091】
層772Bは主として、比較的大きい仰角を有する太陽光の反射によって生じる可能性がある問題を軽減するように構成される。このような太陽光は、カバーガラスで反射してから光コンバイナの内面で反射して、アイボックスの中に入る場合がある。仰角とは、光線が地平線に対してなす角度である。層772Bは通常、閾値仰角よりも大きい仰角を有する第1の太陽光線を処理するために配置される。より詳細には、層772Bは、カバーガラス772Aで反射してから光コンバイナ630で反射した太陽光線を偏向させて、アイボックスと交差しないようにするために配置される。光トラップ674は通常、比較的小さい仰角を有する太陽光線によって生じる可能性がある問題を軽減するように構成される。より詳細には、光トラップ674は通常、閾値仰角よりも小さい仰角を有する、第2の太陽光線を処理するように構成される。光トラップ674は、HUD画像を形成する、下部ハウジング625からくる光線を収容する体積685を遮断することなく、カバーガラス772Aを太陽光から可能な限り遮蔽する。反射した太陽光の影響を軽減するために層772Bに課される要件を最小化する目的で、光トラップ674の大きさを最大にすることが優先されてもよい。いくつかの実施形態では、光トラップ674とカバーガラス672とはほぼ隣接している、または結合されている、あるいはほぼ連続した構造を形成している。光トラップ674、およびカバーガラス672の大きさ、形状、および位置によって、乗物、ダッシュボード、およびアイボックスのパラメータの大半が決定される。個々の使用事例に応じて、カバーガラス672、光トラップ674、および層772Bの臨界パラメータを決定するために、光線追跡が使用される。実際には、第2のハウジングには重大な要件が課され、広範な角度にわたって入射する太陽光の反射を処理しなければならない。層772Bによって、カバーガラス772Aで反射してアイボックスの中に入る、太陽光の直接的または間接的な光線路を確実になくす。
【0092】
いくつかの実施形態では、層772Bは、ホログラムである。ホログラムは、媒体内で固定されたホログラフィック記録であってもよく、画像生成ユニットの空間光変調器に表示される、動的に再構成可能なホログラムと混同されるべきではない。ホログラフィック記録媒体は、フォトポリマー、またはハロゲン化銀乳剤であってもよい。ハロゲン化銀乳剤は、位相ホログラフィ用に漂白されてもよい。ホログラフィック記録媒体は、重クロム酸ゼラチンであってもよい。ホログラムは、薄いホログラム、または厚いホログラムであってもよい。あるいは、ホログラムは、スイッチ可能なブラッグ回折格子(switchable Bragg grating)、またはスイッチ可能な体積ホログラフィック素子であってもよい。ホログラムを計算機合成する、または光学的に記録する方法が当業者には知られており、これは、所定の方法で光の軌跡を変更する、または光のビームをステアリングするものである。いくつかの実施形態では、ホログラムは上述したようにビームステアリング機能を備え、例えば、光をステアリングするために空間光変調器に表示可能な、回折格子機能がある。計算機合成ホログラフィでは、偏向の大きさおよび方向を決定するために、周期および配向などの回折格子のパラメータを、例えば、計算または厳選して、選択する方法が確立されている。ビームステアリング機能は、標準的な回折格子、ロンキー格子(Ronchi grating)、またはプリズムであってもよい。より詳細には、ビームステアリング機能は、標準的な回折格子、ロンキー格子、またはプリズムに対応する、光変調レベルの分布である。つまり、ホログラムは、標準的な回折格子、ロンキー格子、またはプリズムの光学機能を提供する、ビームステアリング機能である。
【0093】
いくつかの実施形態では、層772Bは、曲面に対応するフレネル構造である。いくつかの実施形態では、フレネル構造は凹面に対応する。フレネル構造は、フレネル回折パターンであってもよい。曲面に対応する(つまり、光学機能を提供する)フレネル構造を形成する方法は、当業者に知られている。フレネル構造は、必要な偏向の大きさに基づいて計算される。フレネル構造は、必要な偏向の方向を与えるように配向される。フレネル構造は、例えば、成形およびプレスによってプラスチックのカバーガラスに形成された、構造化表面パターンであってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、層772Bは、サブ波長誘電構造体、およびサブ波長金属構造体の、サブ波長周期配列を含むメタマテリアルである。所定の方法で光の軌跡を変化させるメタマテリアルを設計する方法は、当業者には知られている。
【0095】
いくつかの実施形態では、層772Bは、その中心からの距離によって屈折率が異なる、屈折率分布層である。光学設計の当業者であれば、光を所定の量で偏向させるための、屈折率分布層の設計方法を知っているであろう。
【0096】
いくつかの実施形態では、空間光変調器に表示される計算機合成ホログラムは、層772Bの光学的効果を相殺する、ソフトウェアレンズと組み合わされる。いくつかの実施形態では、層772Bは、正の屈折力または負の屈折力などの屈折力を有し、ソフトウェアレンズは、層772Bの屈折力を相殺する屈折力を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、2つの層が設けられる。例えば、2つの層は、カバーガラスの2つの表面層であってもよい。より詳細には、いくつかの実施形態では、カバーガラスはほぼ平坦であり、第1の主面、および第2の主面(最大の表面積を有する2つの表面/面)を有し、そのそれぞれが、本明細書に記載されている通りに、光を偏向させるように構成された層を有する。いくつかの実施形態では、2つの層は、同じ凹面に対応するフレネル構造を有する。いくつかの実施形態では、カバーガラス772Aは、太陽光を受けるように構成された第1の構造化表面層と、画像の光を受けるように構成された第2の構造化表面層とを有する。第1の構造化表面層、および第2の構造化表面層は、同じ凹面に対応するフレネル構造である。カバーガラス772Aは、したがって平行に対面する。このことは2つの理由で有利であり、第一に、カバーガラス772Aの両面がアイボックス690に向けて太陽光を反射する場合があるため、両面に屈折力があれば有利であり、第二に、2つのフレネル面は同等でかつ対向しており、その結果、カバーガラス772AがHUD画像に影響を及ぼすことがなく、これは、第1のフレネル面が第2のフレネル面によって相殺されるように、層が十分に薄いためである。言い換えれば、カバーガラス772Aは、薄くかつ平行に対面しているために、屈折力を有していない。
【0098】
図8Aは、いくつかの実施形態による、2つの構造化表面を有する、第1の例示的なフレネル構造を示す。
図8Aに示す、各フレネル面(上面および下面)の周期性pは一定であるが、受光面の傾斜は、曲面を模して左から右へと増加する。
図8Bは、いくつかの実施形態による、2つの構造化表面を有する、第2の例示的なフレネル構造を示す。
図8Bに示す、各フレネル面(上面および下面)の高さhは一定であるが、受光面の傾斜は、これも曲面を模して左から右へと増加する。
図8Aおよび
図8Bでは、上方から太陽光を受けるので、各構造化表面は凹面に対応する。各フレネル面の周期性は、0.1mmオーダーであってもよい。各フレネル面の高さは、0.01mmオーダーであってもよい。このような構造を作成する方法は当技術分野では知られており、必要とされる効果的な曲面を実現するために各フレネル構造の周期性および高さを設計する方法は、当業者には理解されよう。
図8Aおよび
図8Bに示すフレネル構造は、カバーガラス772A上に配置された層772Bであってもよい。しかしながら、好ましい構成では、カバーガラス772Aは、図示されている2つの構造化表面層を有するように加工される。特に、間隔が密な平行面を提供することによって、提供された構造によってHUD画像が歪むことがないようにすることができる。
【0099】
これに代えて、またはこれに加えて、層772Bは、画像の光の波長を透過し、他の光波長の光を反射するように設計されてもよい。当業者には理解されるように、これは、本来は反射性の構造に、透過用切り欠きなどの「切り欠き」を画像の光の波長で設けることによって実現することができる。特に、いくつかの実施形態では、画像の光は、赤色、緑色、および/または青色のレーザー光を含む。このような実施形態では、層772Bが、レーザーライン選択フィルタ機能を有しているとも言える。つまり、層772Bは、レーザーライン選択フィルタリングを提供するように構成される。あるいは、層772Bが、レーザーライン選択フィルタを備えているとも言える。さらに、フィルタは、画像の光が受光される角度に設計されてもよい。つまり、レーザーライン選択フィルタリングは、第1の入射角度範囲で受けられたレーザーライン波長を透過させることを含む。レーザーライン選択フィルタリングは、第1の範囲の範囲外の角度で受けたレーザーライン波長を反射または吸収することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、レーザーライン選択フィルタリングは、第2の角度範囲で受けた、他の波長の光(非レーザーライン波長)を反射することを含んでもよく、第2の角度範囲は、可能な太陽光の角度範囲に相当する。いくつかの実施形態では、層は、波長選択フィルタリング、および角度選択フィルタリングをさらに含む。いくつかの実施形態では、層は、本明細書で説明する機能を組み込んだ体積ホログラムを含む。
【0100】
レーザーライン選択フィルタは、画像生成ユニットの光源の波長において選択的である。より詳細には、レーザーライン選択フィルタは、カバーガラスを通して画像を形成する光の波長では光の伝播を可能にするが、他の可視波長を含む他の光波長は除去するように構成される。レーザーライン選択フィルタがいくつかの可視波長をさらに除去するという点において、レーザーライン選択フィルタの光学性能は、コールドミラー、ホットミラー、またはホット/コールドミラーなどの光学性能とは異なっている。レーザーライン選択フィルタが透過させる帯域が狭いという点においても、レーザーライン選択的フィルタの光学性能は、コールドミラー、またはホット/コールドミラーの光学性能とは異なっている。いくつかの実施形態では、レーザーライン選択フィルタは、中心波長を中心とし、15nm未満、または5nm未満など、30nm未満の半値全波の波長帯の範囲内で透過する。
【0101】
いくつかの実施形態では、画像生成ユニットは、第1の波長で光を放射するように構成された光源を備える。画像生成ユニットは、空間光変調器をさらに備え、空間光変調器は、光源から光を受け、空間光変調器に表示される計算機合成ホログラムにしたがって空間的に変調された光を出力して、対応する画像を受光面に形成するように構成される。いくつかの実施形態では、層772Bは、第1の波長において選択的な、レーザーライン選択フィルタを備える。いくつかの実施形態では、レーザーライン選択的な構成要素は、層の他の構成要素のコーティング、またはカバーガラスのコーティングである。
【0102】
いくつかの実施形態では、レーザーライン選択フィルタは、第1の波長においてほぼ透過性であり、他の光波長においては、例えば反射性であって、ほぼ非透過性である。いくつかの実施形態では、レーザーライン選択フィルタは、第1の波長、第2の波長、および第3の波長においてほぼ透過性であり、他の光波長においては、例えば反射性であって、ほぼ非透過性であり、第1、第2、および第3の波長は、画像の光の波長である。
【0103】
いくつかの実施形態では、HUDは、多色ディスプレイを提供する。このような実施形態では、画像生成ユニットは、第2の光源と、第2の空間光変調器と、第3の光源と、第3の空間光変調器とをさらに備える。第2の光源は、第2の波長で光を放射するように構成される。第2の空間光変調器は、第2の光源から第2の波長で光を受け、第2の空間光変調器に表示される第2の計算機合成ホログラムにしたがって、第2の空間変調光を出力して、対応する第2の画像を受光面に形成するように構成される。第3の光源は、第3の波長で光を放射するように構成される。第3の空間光変調器は、第3の光源から第3の波長で光を受け、第3の空間光変調器に表示される第3の計算機合成ホログラムにしたがって、第3の空間変調光を出力して、対応する第3の画像を受光面に形成するように構成される。
【0104】
いくつかの実施形態では、HUDは、混成色ディスプレイを提供する。このような実施形態では、画像と、第2の画像と、第3の画像とはほぼ一致し、光学系は、画像、第1の画像、および第2の画像を画像化するように構成される。いくつかの実施形態では、光学系は、画像、第1の画像、および第2の画像を同時に画像化するように構成される。画像の光は、複数の波長の光を含むと言ってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、HUDは、RGBカラーディスプレイを提供し、第1の波長は425+/-20nm、第2の波長は525+/-20nm、そして第3の波長は640+/-20nmである。
【0106】
いくつかの実施形態では、各光源は、ほぼ単色の光を放射し、任意で、各光源はレーザーである。このような実施形態が、レーザーライン選択フィルタリングとの相乗効果をもたらすことは理解されよう。いくつかの実施形態では、各レーザーによって放射された光の中心波長は、レーザーライン選択フィルタの中心波長と一致する。
【0107】
いくつかの実施形態では、層772Bは、偏光選択フィルタ機能をさらに備える。つまり、層772Bは、偏光選択フィルタリングを提供するように構成される。あるいは、層772Bが偏光選択フィルタを備えているとも言える。偏光選択フィルタは、レーザーライン選択フィルタの代わりに、あるいはレーザーライン選択フィルタに加えて備えられてもよい。いくつかの実施形態では、偏光選択フィルタは、ワイヤーグリッド偏光子である。
【0108】
偏光選択フィルタは、光学系を介して、画像の光(つまり、画像を形成する光)を含む、第1の方向に偏光された光の伝播を可能にするように構成される。偏光選択フィルタは、第2の方向に偏光された光を除去する(すなわち光学系から除去する)ように、または第2の方向に偏光される、非偏光の光の成分を除去するように構成され、第1の方向は、第2の方向に対して垂直である。例えば、偏光選択フィルタ801は、第2の方向に偏光された光を吸収し得る。ここでも、いくつかの実施形態では、第1のハウジングによって出力される画像を形成する光は、ブリュースター角(偏光角としても知られている)で、またはブリュースター角の2度以内などブリュースター角の5度以内で、フロントガラスに入射する。このような実施形態では、フロントガラスは、第1の方向に偏光されたほぼすべての光を反射することは理解されよう。言い換えれば、第1の方向とは、光学系から画像を形成するほぼすべての(偏光された)光が、フロントガラスによって反射されるような方向である。「ほぼ」という言葉は、ブリュースター角に近い角度でフロントガラスに光が入射する例において、完全な偏光分離が達成されない場合があることを表すために使用されている。いくつかの実施形態では、光は、60~70度など、55~75度の角度でフロントガラスに入射する。このような実施形態では、光源は、第1の方向に偏光された光を放射し、かつ任意に第1の波長で放射するように構成される。いくつかの実施形態では、偏光選択的な構成要素は、層の他の構成要素のコーティング、またはカバーガラスのコーティングである。
【0109】
いくつかの実施形態では、偏光選択フィルタは、第1の方向に偏光された光に対してほぼ透過性であり、第2の方向に偏光された光に対してほぼ非透過性であり、第1の方向は、第2の方向に対して垂直である。
【0110】
偏光選択フィルタは、上述したように、単色画像を提供するディスプレイ、または多色画像を提供するディスプレイに組み込まれてもよい。偏光選択フィルタの光学性能は、波長依存型であってもよいことは理解されよう。例えば、偏光選択フィルタは、1つの波長の範囲内でのみ、または複数の波長の範囲内でのみ、偏光選択的であってもよい。実施形態では、上述したように、画像の光は複数の波長の光を含む。偏光選択フィルタは、複数の波長において偏光選択的である。いくつかの実施形態では、偏光選択フィルタは、第1の波長、第2の波長、および第3の波長において偏光選択的である。レーザーライン選択フィルタと同様に、偏光選択フィルタは、中心波長、またはフィルタリングが最適化される波長を有してもよいことは理解されよう。中心波長、または波長は、上述したような帯域を含んでもよい。
【0111】
説明されている実施形態から、層は光選択フィルタを提供することが理解されよう。光選択フィルタリングは、レーザーライン選択フィルタリング、および/または偏光選択フィルタリングを含んでもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、フロントガラスを光コンバイナとして使用するが、光コンバイナは代替的に、ダッシュボードの上などフロントガラスの前方にある、ポップアップ光コンバイナであってもよい。
【0113】
付加機能
【0114】
実施形態では、単なる例として、電気的に作動するLCOS空間光変調器に言及する。本開示の教示は、例えば、任意の電気的に作動するSLM、光学的に作動するSLM、デジタルマイクロミラー装置、またはマイクロ電気機械装置などの、本開示による計算機合成ホログラムを表示できる任意の空間光変調器で、同等に実施されてもよい。