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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】熱交換素子
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20220106BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20220106BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20220106BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F28F3/08 301A
F28D9/00
F28F21/06
F24F7/08 101A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019202486
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021076291
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500076974
【氏名又は名称】株式会社テクノフロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】河原 利和
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137284(JP,A)
【文献】特開2009-052873(JP,A)
【文献】特開2010-151344(JP,A)
【文献】特開2014-173787(JP,A)
【文献】特開2006-071149(JP,A)
【文献】特開2003-080021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
F28D 9/00
F28F 21/06
F24F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁面部(5)と、下壁面部(6)と、該上壁面部(5)と下壁面部(6)とを連結する多数の平行なリブ片(7)を有するプラスチック段ボール素材(8)を、打抜形成した流路形成部材(3)に、仕切膜(1)を接着して成る熱交換部材(4)を、複数枚上下に積層して構成されて、給気と排気の顕熱及び潜熱を交換させる熱交換素子であって、
全体が、上記プラスチック段ボール素材(8)と上記仕切膜(1)と接着剤のみをもって、形成された熱交換素子であり、
上記流路形成部材(3)は、外郭形状が六角形のベース部材(9)と、外郭形状が長方形の嵌込部材(14)と、から成り、
上記ベース部材(9)は、プラスチック段ボール素材(8)から打抜かれた継ぎ目の無い一体ものであり、
上記嵌込部材(14)は、プラスチック段ボール素材(8)から打抜かれた継ぎ目の無い一体ものであり、
しかも、上記ベース部材(9)は、六角形の相互に平行な一対の第1辺(41)・第2辺(42)の間を、打抜いて形成した長方形の嵌込用打抜空間部(20)を有し、該打抜空間部(20)に上記嵌込部材(14)が嵌着され、
さらに、上記ベース部材(9)のリブ方向(R1 )を、上記六角形の上記第1辺(41)・第2辺(42)以外の相互に平行な第3辺(43)・第4辺(44)に平行に配設すると共に、上記ベース部材(9)が上記第3辺(43)・第4辺(44)に平行な打抜窓部(16)を複数個有し、
かつ、上記嵌込部材(14)のリブ方向(R2 )を、上記第1辺(41)・第2辺(42)と平行に配設すると共に、上記嵌込部材(14)が上記第1辺(41)・第2辺(42)に平行な打抜窓部(18)を複数個有することを特徴とする熱交換素子。
【請求項2】
上記ベース部材(9)と嵌込部材(14)のうち一方に係止凸部(21)を形成するとともに、他方に係止凹部(22)を形成して、上記係止凸部(21)と係止凹部(22)の相互係合によって、上記ベース部材(9)と嵌込部材(14)とを連結した請求項1記載の熱交換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷暖房装置(例えばエアンコン)等の換気装置として、直交流型と比較して熱交換効率が良好な六角形の全熱交換素子が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この熱交換素子は、段ボール素材を打抜形成した外郭形状が六角形の流路形成骨部材と、仕切膜とを、交互に積層して構成され、仕切膜を介して温度(顕熱)と湿度(潜熱)の交換を行う。例えば、吸気として冬期の戸外の新鮮であるが冷たくて乾燥した空気を通し、排気として暖房された室内の汚れているが暖かくて湿度の高い空気を通すと、仕切膜を介して温度と湿度の交換が行われ、給気は暖められ、加湿されて室内に給気される。一方排気は冷やされ、減湿されて屋外に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-173787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の熱交換素子は、図10に示すように、段ボール素材のリブ方向(リブ片の長手方向)が、全面的に斜め方向のみだったので、空気が流れにくい部分(図10のQ0 部)が生じて、圧力損失が増大し、冷暖房装置等に内蔵させた際、電気消費量が大きくなるという問題があった。特に、近年、エアコン等の大風量化(例えば 250m3 /h~ 300m3 /h)が進んでおり、圧力損失が大きいことによる電気消費量の増加が問題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、圧力損失を低減させて、冷暖房装置等に内蔵させた際、省エネとなる熱交換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱交換素子は、上壁面部と、下壁面部と、該上壁面部と下壁面部とを連結する多数の平行なリブ片を有するプラスチック段ボール素材を、打抜形成した流路形成部材に、仕切膜を接着して成る熱交換部材を、複数枚上下に積層して構成されて、給気と排気の顕熱及び潜熱を交換させる熱交換素子であって、全体が、上記プラスチック段ボール素材と上記仕切膜と接着剤のみをもって、形成された熱交換素子であり、上記流路形成部材は、外郭形状が六角形のベース部材と、外郭形状が長方形の嵌込部材と、から成り、上記ベース部材は、プラスチック段ボール素材から打抜かれた継ぎ目の無い一体ものであり、上記嵌込部材は、プラスチック段ボール素材から打抜かれた継ぎ目の無い一体ものであり、しかも、上記ベース部材は、六角形の相互に平行な一対の第1辺・第2辺の間を、打抜いて形成した長方形の嵌込用打抜空間部を有し、該打抜空間部に上記嵌込部材が嵌着され、さらに、上記ベース部材のリブ方向を、上記六角形の上記第1辺・第2辺以外の相互に平行な第3辺・第4辺に平行に配設すると共に、上記ベース部材が上記第3辺・第4辺に平行な打抜窓部を複数個有し、かつ、上記嵌込部材のリブ方向を、上記第1辺・第2辺と平行に配設すると共に、上記嵌込部材が上記第1辺・第2辺に平行な打抜窓部を複数個有するものである。
【0007】
また、上記ベース部材と嵌込部材のうち一方に係止凸部を形成するとともに、他方に係止凹部を形成して、上記係止凸部と係止凹部の相互係合によって、上記ベース部材と嵌込部材とを連結したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱交換素子によれば、圧力損失を低減させて、冷暖房装置等に内蔵させた際、電気消費量を低減できて省エネに寄与できる。また、熱交換効率も良好である。さらに、熱交換素子としての剛性も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態の使用状態を示す一部断面平面図である。
図2】本発明の実施の一形態を示す斜視図である。
図3】仕切膜を示す平面図である。
図4】給気用流路形成部材を示す平面図である。
図5】排気用流路形成部材を示す平面図である。
図6】ベース部材を示す平面図である。
図7】嵌込部材を示す平面図である。
図8】プラスチック段ボール素材を示す斜視図である。
図9】比較例を示す平面図である。
図10】従来例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1は、本発明の実施の一形態の使用状態を例示する一部断面平面図である。室内Xと屋外Yとを分ける壁Zには、内部に熱交換素子40を備えたケーシング25が付設されている。また、ケーシング25内には、給気送風機12と排気送風機13とが設けられ、室内X側の吸込口26aと屋外Y側の吸込口26b近傍には、フィルタ24が取付けられている。この熱交換素子40は両吸込方式に形成される。Aは給気の流れを示し、Bは排気の流れを示す。ケーシング25内で、給気空気と排気空気を混在させず熱交換素子40を通過させるために複数個の間仕切板27が設けられる。
【0011】
図2に示すように、上記熱交換素子40は、熱交換部材4を、複数枚上下に積層して構成されて、給気と排気の顕熱及び潜熱を交換させるものである。給気用熱交換部材4Aと、排気用熱交換部材4Bとが、交互に積層されている。
【0012】
図4に示すように、熱交換部材4は、プラスチック段ボール素材8(図8参照)を、打抜形成した流路形成部材3に、仕切膜1(図3参照)を接着して成る。プラスチック段ボール素材8は、図8に示すように、上壁面部5と、下壁面部6と、上壁面部5と下壁面部6とを連結する多数の平行なリブ片7を有する。仕切膜1は、全熱交換素子の場合、例えば、湿式不織布等やポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリテトラフレオロエチレン等を素材とする多孔質シートの表面に親水性高分子の薄膜を塗布した透湿膜からなる。また、顕熱交換素子の場合、仕切膜1は、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂フィルム、金属シート、又は、金属シートと熱可塑性フィルムを溶着したものからなる。
【0013】
流路形成部材3が、外郭形状が六角形のベース部材9(図6参照)と、外郭形状が長方形の嵌込部材14(図7参照)から成る。ベース部材9は、六角形の相互に平行な一対の第1辺41・第2辺42の間を、打抜いて形成した長方形の嵌込用打抜空間部20を有する。そして、打抜空間部20に嵌込部材14が嵌着される。なお、ベース部材9の外郭形状、及び、嵌込用打抜空間部20の「長方形」には、後述の係止凸部21及び係止凹部22を、考慮しないものとする。即ち、係止凸部21及び係止凹部22がないものとして、長方形とみなすものとする。
【0014】
給気用熱交換部材4Aは、給気流路10を形成する給気用流路形成部材3Aを備える。ベース部材9のリブ方向R(R1 )を、六角形の第1辺41・第2辺42以外の相互に平行な第3辺43・第4辺44に平行に配設すると共に、ベース部材9が第3辺43・第4辺44に平行な打抜窓部16を有する。嵌込部材14のリブ方向R(R2 )を、第1辺41・第2辺42と平行に配設すると共に、嵌込部材14が第1辺41・第2辺42に平行な打抜窓部18を有する。本発明に於て、「リブ方向」とは、プラスチック段ボール素材8(図8参照)のリブ片7の長手方向をいうものとする。
【0015】
隣合う打抜窓部16と打抜窓部16の間に、細帯部15が形成されるとともに、隣合う打抜窓部18と打抜窓部18の間に、細帯部17が形成される。細帯部15の幅寸法w1 及び細帯部17の幅寸法w2 は、熱交換効率を向上させるために細くするのが望ましいが、強度を考慮して適切な寸法に決定する。
【0016】
ベース部材9と嵌込部材14のうち一方に膨出状係止凸部(ホゾ)21が形成されるとともに、他方に蟻溝状の係止凹部22が形成されて、この係止凸部21と係止凹部22の相互の係合によって、ベース部材9と嵌込部材14とが連結される。係止凹部22が蟻溝状であるとともに、係止凸部21が係止凹部22に対応した逆台形の膨出状の場合を例示する。
【0017】
係止凸部21と係止凹部22から成る係合部37を、縦方向に2個以上4個以下設けるとともに、横方向に1個以上3個以下設ける。係合部37の個数が上記範囲にある場合、適切にベース部材9と嵌込部材14とが連結される。係合部37が、上記個数未満の場合、連結強度が弱くなり、流路形成部材3を取扱いにくくなるので、上下に複数の流路形成部材3を積層させる際、多くの手間と時間がかかる。係合部37が、上記個数を超える場合、必要以上の無駄な手間やコストがかかる。
【0018】
図5に示すように、排気用熱交換部材4Bは、排気流路11を形成する排気用流路形成部材3Bを備える。排気用流路形成部材3Bは、給気用流路形成部材3A(図4参照)と向きが異なる。そして、給気用流路形成部材3Aと排気用流路形成部材3Bの入口29(給気入口30・排気入口31)・出口32(給気出口33・排気出口34)が、上下に重ならないように六角形の異なる辺に配設(形成)されている。図2等に示すように、入口29及び出口32以外の部分から空気が流出しないように、蓋部材35にて施蓋される。
【実施例
【0019】
実施例1、実施例2、及び、比較例1、比較例2を、次のように作製した。すなわち、いずれも流路形成部材3を、厚さ寸法が2mmのプラスチック段ボール素材8を、トムソン打抜き加工機にて打抜いて作製した。
【0020】
実施例1及び実施例2は、図4に示す形状の給気用流路形成部材3Aを仕切膜1と接着した熱交換部材4Aと、図5に示す形状の排気用流路形成部材3Bを仕切膜1と接着した熱交換部材4Bとを、上下に 149段積層して構成した。各流路形成部材3の(図4図5に示す平面視に於ける)縦寸法を 370mmとし、横寸法を 400mmとした。
【0021】
比較例1及び比較例2は、図9に示す形状の流路形成部材を仕切膜1と接着した熱交換部材を、上下に 149段積層した熱交換素子とした。各流路形成部材3の(図9に示す平面視に於ける)縦寸法を 370mmとし、横寸法を 400mmとした。
【0022】
実施例及び比較例の熱交換素子について、夏季冷房時の圧力損失と全熱交換効率等を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例及び比較例の熱交換素子について、冬季暖房時の圧力損失と全熱交換効率等を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
上記測定結果より、比較例は、圧力損失が大きいが、本発明の実施例では、圧力損失が著しく小さいことが分かる。比較例の圧力損失が大きい理由は、図9に於て、空気の流れを示した流線F1 が符号Pにて示した領域で局部的に密となり、かつ、符号Q1 で示した領域で粗となり、流れが不均等となっているためであると、考えられる。実施例は、空気の流れを示した流線F1 が均等な間隔を保ち、全面的に略均等に空気が流れるので、圧力損失が小さくなる。
【0027】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、係止凸部21を膨出きのこ型とするとともに、係止凹部22を係止凸部21に対応した形状とするも良い。
【0028】
以上のように、本発明は、上壁面部5と、下壁面部6と、該上壁面部5と下壁面部6とを連結する多数の平行なリブ片7を有するプラスチック段ボール素材8を、打抜形成した流路形成部材3に、仕切膜1を接着して成る熱交換部材4を、複数枚上下に積層して構成されて、給気と排気の顕熱及び潜熱を交換させる熱交換素子に於て、上記流路形成部材3は、外郭形状が六角形のベース部材9と、外郭形状が長方形の嵌込部材14と、から成り、上記ベース部材9は、六角形の相互に平行な一対の第1辺41・第2辺42の間を、打抜いて形成した長方形の嵌込用打抜空間部20を有し、該打抜空間部20に上記嵌込部材14が嵌着され、さらに、上記ベース部材9のリブ方向R1 を、上記六角形の上記第1辺41・第2辺42以外の相互に平行な第3辺43・第4辺44に平行に配設すると共に、上記ベース部材9が上記第3辺43・第4辺44に平行な打抜窓部16を有し、かつ、上記嵌込部材14のリブ方向R2 を、上記第1辺41・第2辺42と平行に配設すると共に、上記嵌込部材14が上記第1辺41・第2辺42に平行な打抜窓部18を有するので、圧力損失が著しく低減できる。これによって、冷暖房装置等に内蔵させた際、電気消費量が低減されて省エネに寄与できる。
【0029】
また、上記ベース部材9と嵌込部材14のうち一方に係止凸部21を形成するとともに、他方に係止凹部22を形成して、上記係止凸部21と係止凹部22の相互係合によって、上記ベース部材9と嵌込部材14とを連結したので、ベース部材9と嵌込部材14との結合強度を高めることができ、各熱交換部材4の形状保持性が良くなり、複数の熱交換部材4を、容易かつ確実に上下に積層させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 仕切膜
3 流路形成部材
4 熱交換部材
5 上壁面部
6 下壁面部
7 リブ片
8 プラスチック段ボール素材
9 ベース部材
14 嵌込部材
16 打抜窓部
18 打抜窓部
20 打抜空間部
21 係止凸部(ホゾ)
22 係止凹部
41 第1辺
42 第2辺
43 第3辺
44 第4辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10