(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ホログラフィックプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
G03H 1/22 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G03H1/22
(21)【出願番号】P 2019554916
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 GB2017053238
(87)【国際公開番号】W WO2018185447
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2019-12-02
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517080957
【氏名又は名称】デュアリタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】クリスマス ジェイミーソン
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-138631(JP,A)
【文献】特表2007-523359(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0076284(KR,A)
【文献】特開2011-034667(JP,A)
【文献】特表2011-503650(JP,A)
【文献】特表2010-503035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0349702(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0004219(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のアスペクト比を有する長方形リプレイフィールドに光を投影するように配置されたホログラフィック投影システムであって、
前記ホログラフィック投影システムは、
コンピュータ生成ホログラムを受け取り、前記長方形リプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成する空間変調光を出力するように配置され、個別にアドレス指定可能なピクセルのアレイを含み、各ピクセルが
あるアスペクト比を有する長方形
ピクセルである、空間光変調器と、
前記リプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成する前記空間変調光を形成するために前記ピクセルを照明するように配置された光源と、を含み、
前記ホログラフィック再構成は、前記ホログラフィック投影システムの人間の観察者によって視認されるように配置された画像コンテンツを含み、
前記長方形リプレイフィールドは前記空間光変調器から空間的に分離されており、
前記長方形リプレイフィールドのアスペクト比
が各ピクセルのアスペクト比に等し
く、前記長方形リプレイフィールドと各ピクセルとは互いに直交する
ように、
前記各ピクセルの前記あるアスペクト比は前記長方形リプレイフィールドの前記所定のアスペクト比とマッチする、
ホログラフィック投影システム。
【請求項2】
前記ホログラフィック再構成は、前記リプレイフィールドにおける前記空間変調光の干渉によって形成される、
請求項1に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項3】
前記空間変調光は、前記空間光変調器の前記ピクセルによって回折される、
請求項1または2に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項4】
各ピクセルの前記アスペクト比は1:1.2より大きく、かつ1:3より小さい、
請求項1から3のいずれか一項に記載のホログラフィックプロジェクタ。
【請求項5】
前記アレイの一方向のピクセルピッチは、前記アレイの他の方向のピクセルピッチよりも大きい、
請求項1から4のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項6】
前記ピクセルのアレイは、長方形ピクセルの
正方形のアレイまたは長方形ピクセルの
円形のアレイを形成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項7】
各ピクセルは、ディレクタを有する液晶、
ネマチック液晶を含み、
前記ディレクタは長方形ピクセルの長辺に
平行である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項8】
前記コンピュータ生成ホログラムは、前記ホログラフィック再構成の数学的変換である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項9】
前記数学的変換はフーリエ変換またはフレネル変換であるか、または、
前記コンピュータ生成ホログラムは点群法により生成されたホログラムである、
請求項8に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項10】
各ピクセルは光変調素子であり、かつ/または、
各ピクセルは位相変調素子を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項11】
前記ピクセルのアレイの前記ピクセルは互いに
平行である、
請求項1から10のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項12】
前記空間光変調器は、シリコン空間光変調器上の液晶である、
請求項1から11のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項13】
前記光源は単色光源であり、かつ/または、
前記光源は、少なくとも部分的にコヒーレントな光を放出するように配置される、
請求項1から12のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項14】
前記ホログラフィック再構成は、前記リプレイフィールドの受光面、
スクリーンまたはディフューザ上に形成される、
請求項1から13のいずれか一項に記載のホログラフィック投影システム。
【請求項15】
所定のアスペクト比を有する長方形の形状を有するホログラフィックリプレイフィールドにホログラフィック再構成を形成する方法であって、前記方法は、
コンピュータ生成ホログラムを受け取るステップと、
個別にアドレス指定可能な複数のピクセルを含む空間光変調器上にコンピュータ生成ホログラムを表すステップであって、前記ピクセルが
あるアスペクト比を有する長方形
ピクセルである、ステップと、
前記空間光変調器を使用して、前記コンピュータ生成ホログラムに従って光を空間的に変調するステップと、
ホログラフィックリプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成するステップであって、前記ホログラフィックリプレイフィールドは前記空間光変調器から空間的に分離されており
、前記ホログラフィック再構成が
人間の観察者によって視認されるように配置された画像コンテンツを含む、ステップと、
を含む方法
であって、
前記方法は、
前記長方形の形状を有するホログラフィックリプレイフィールドの前記所定のアスペクト比が前記各ピクセルの前記あるアスペクト比に等しく、前記長方形の形状を有するホログラフィックリプレイフィールドと前記各ピクセルとが互いに直交するように、前記各ピクセルの前記あるアスペクト比を前記長方形の形状を有するホログラフィックリプレイフィールドの前記所定のアスペクト比とマッチさせるステップ、をさらに含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間光変調器およびプロジェクタに関する。より具体的には、本開示は、ホログラフィック投影システム、空間光変調器の製造方法、およびホログラフィック投影のために空間光変調器を動作させる方法に関する。いくつかの実施形態は、長方形リプレイフィールドにもしくはその内部に光を投影するためのプロジェクタ、および長方形の形状を有するホログラフィックリプレイフィールドの画像ピクセルの解像度を最大化する方法に関する。いくつかの実施形態は、ヘッドアップディスプレイおよびヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物から散乱される光には、振幅と位相の両方の情報が含まれる。この振幅および位相の情報は、例えば、干渉縞を含むホログラフィック記録、すなわち「ホログラム」を形成するための周知の干渉技術によって、感光性プレート上に取り込むことができる。ホログラムは、元の対象物を表す2次元または3次元のホログラフィック再構成、すなわちリプレイ画像を形成するために、適切な光の照射によって再構成され得る。
【0003】
コンピュータ生成ホログラフィは、干渉プロセスを数値的にシミュレートすることができる。コンピュータ生成ホログラム「CGH」は、フレネルまたはフーリエ変換などの数学的変換に基づく技法によって計算され得る。これらのタイプのホログラムは、それぞれフレネルホログラムまたはフーリエホログラムと呼ぶことができる。フーリエホログラムは、対象物のフーリエドメイン表現または対象物の周波数ドメイン表現と見なすことができる。CGHは、例えばコヒーレントレイトレーシングまたは点群技法によって計算することもできる。
【0004】
CGHは、入射光の振幅および/または位相を変調するように配置された空間光変調器「SLM」でエンコードされてもよい。光変調は、例えば、電気的にアドレス指定可能な液晶、光学的にアドレス指定可能な液晶、またはマイクロミラーを使用して実現することができる。
【0005】
SLMは、セルまたは要素とも呼ばれる個別にアドレス指定可能な複数のピクセルを含むことができる。光変調方式は、バイナリ、マルチレベル、または連続的であってもよい。あるいは、デバイスは連続的であってもよく(すなわち、ピクセルで構成されていない)、したがって、光変調はデバイス全体にわたって連続的であってもよい。SLMは、変調された光がSLMから反射して出力されることを意味する反射性であってもよい。その代わりに、SLMは変調された光がSLMから透過して出力されることを意味する透過性であってもよい。
【0006】
記載された技術を使用して、撮像用のホログラフィックプロジェクタが提供され得る。そのようなプロジェクタは、例えば、ヘッドアップディスプレイ「HUD」、およびヘッドマウントディスプレイ「HMD」に用途を見いだしており、それにはニアアイデバイスが含まれる。
【0007】
本明細書では、改良されたホログラフィック投影システムが開示されている。
【発明の概要】
【0008】
本開示の態様は、添付の独立請求項に定義されている。
【0009】
長方形リプレイフィールドに光を投影するように配置されたホログラフィック投影システムが提供される。ホログラフィック投影システムは、空間光変調器および光源を含む。空間光変調器は、コンピュータ生成ホログラムを受け取り、リプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成する空間変調光を出力するように配置されたピクセルアレイを含む。各ピクセルは長方形である。光源は、リプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成する空間変調光を形成するために複数のピクセルを照明するように配置される。リプレイフィールドは、空間光変調器から空間的に分離されている。リプレイフィールドのアスペクト比は、各ピクセルのアスペクト比と実質的に同じであるが、直交して配向されている。すなわち、リプレイフィールドと各ピクセルとは、互いに対して直交して配向されている。リプレイフィールドのアスペクト比は、各ピクセルのアスペクト比の逆数であると言うこともできるし、リプレイフィールドと各ピクセルの間で長軸と短軸が入れ替わると言うこともできる。
【0010】
特に、リプレイフィールドの長軸は、ピクセルの長軸に実質的に垂直である。
【0011】
したがって、リプレイフィールドは、ピクセルに直交する、またはピクセルに対して直交するように構成される、またはピクセルに対して直交して配向されていると言うことができる。言い換えれば、リプレイフィールドを区切る長方形の長軸は、ピクセルを区切る長方形の長軸に垂直である。
【0012】
ホログラフィック投影用の空間光変調器も提供される。空間光変調器は、コンピュータ生成ホログラムを受け取り、リプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成する空間変調光を出力するように配置された長方形ピクセルアレイを含む。
【0013】
さらに、ホログラフィック投影のためのシリコン空間光変調器上の液晶が提供される。空間光変調器は、位相限定のコンピュータ生成ホログラムを受け取り、リプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成する空間変調光を出力するように配置された長方形ピクセルアレイを含む。
【0014】
長方形ピクセルアレイを含む液晶オンシリコン空間光変調器が提供される。楕円形または細長いピクセルアレイを含む空間光変調器も提供される。
【0015】
空間光変調器のピクセルは、「ホログラムピクセル」と呼ぶことができる。本開示によれば、ホログラムピクセルは長方形であるため、長方形リプレイフィールドは「画像ピクセル」の最大解像度(密度)で提供され、画像ピクセルはホログラフィック再構成(画像)の最小分解可能要素である。繰り返すが、ホログラムピクセルとリプレイフィールドとは直交して構成/配向されている。
【0016】
本開示の実施形態は、ホログラフィックプロジェクタに関する。意味のある画像をピクセルアレイで直接観察できる従来のディスプレイとは区別される。実施形態では、コンピュータ生成ホログラムは、空間光変調器のピクセルアレイ上に表示される。実施形態では、ホログラムは、意味のある画像のフーリエ変換などの数学的変換である。実施形態では、ホログラフィック再構成は、リプレイフィールドにおける空間変調光の干渉によって形成される。実施形態では、空間変調光は、空間光変調器のピクセルによって回折される。実施形態では、ホログラフィック再構成(略して「画像」と呼ぶことができる)は、空間光変調器から空間的に分離された、または空間的に離れたスクリーンまたはディフューザなどの受光面に投影される。
【0017】
本発明者は、複雑なホログラフィックプロセスにより、ホログラム面の最小特徴の形状が再構成/画像面の最大特徴の形状に調整されると、再構成/画像面の最大解像度が達成されることを認識した。具体的には、再構成/画像面の解像度を最大にするには、空間光変調器のピクセルの形状を、必要なリプレイフィールドの形状に可能な限り厳密に一致させる必要がある。ホログラムピクセルの形状がアスペクト比においてリプレイフィールドのアスペクト比と正確に一致している場合には、すべての画像ピクセルを表示に使用することができる。従来のディスプレイでは、ディスプレイデバイス上のピクセルの形状は、リプレイフィールド/画像平面の完全な空間範囲を決定しない。従来のディスプレイ技術とは対照的に、実施形態は、画像形成が回折に依存するホログラフィックプロジェクタに関する。したがって、従来のディスプレイ技術の教示は、画像形成の基本的な物理が異なるので、本開示との関連性が限られている。
【0018】
さらに、他のディスプレイ技術とは根本的に異なる実施形態では、コンピュータ生成ホログラムはホログラフィック再構成の数学的変換である。コンピュータ生成ホログラムは、フーリエ変換(または単にフーリエ)ホログラムまたはフレネル変換ホログラムであってもよい。あるいは、コンピュータ生成ホログラムは、点群法によって計算されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、空間光変調器は位相限定の空間光変調器である。これらの実施形態は、振幅を変調することにより光エネルギーが失われないため有利である。したがって、効率的なホログラフィック投影システムが提供される。しかしながら、本開示は、振幅限定の空間光変調器または振幅および位相変調器で等しく実施されてもよい。ホログラムは、それに応じて位相限定、振幅限定、または完全に複素になることが理解されよう。
【0020】
ホログラムピクセルは規則的なアレイで配置される。ピクセルは長方形で、ピクセルの長辺は実質的に平行である。実施形態では、アレイの一方向のピクセルピッチは、アレイの他の方向のピクセルピッチとは異なる。いくつかの実施形態では、ピクセルは、望ましくない鏡面反射を引き起こすピクセル間スペースを最小化するために、可能な限り密に詰められている。
【0021】
さらに有利な実施形態では、長方形ピクセルは、正方形アレイまたは円形アレイに配置される。本発明者はさらに、複雑なホログラフィックプロセスにより、ホログラム平面内の最大特徴の形状を使用して画像ピクセルの形状を調整できることを認識した。具体的には、ホログラムの表示に使用されるアクティブピクセルアレイが開口部を画定し、この開口部の形状を使用して、画像品質を改善するために画像ピクセルを最適化することができる。空間光変調器の開口部は、アクティブピクセルの連続した群の輪郭を描く。
【0022】
他の有利な実施形態では、各ホログラムピクセルは液晶を含み、液晶のnディレクタは、例えばラビングにより、長方形ピクセルの長さ方向に配向される。すなわち、ディレクタはピクセルの長辺に実質的に平行である。有利なことに、ディレクタを長辺に揃えることにより、アレイ内の主要なスイッチングフリンジフィールドの影響が最小限に抑えられる。これは、主要な液晶スイッチングがピクセルの最長方向で発生するためである。したがって、液晶の回位、すなわち液晶の配向の欠陥が最小限に抑えられる。
【0023】
長方形の形状を有するホログラフィックリプレイフィールド内の画像ピクセルの解像度を最大化する方法も提供される。本方法は、コンピュータ生成ホログラムを受け取るステップを含む。次いで、本方法は、複数のホログラムピクセルを含む空間光変調器上でコンピュータ生成ホログラムを表すステップを含む。ホログラムピクセルは長方形である。次いで、本方法は、コンピュータ生成ホログラムに従って光を空間的に変調するステップを含む。本方法は、最終的に、ホログラフィックリプレイフィールドにおいてホログラフィック再構成を形成するステップを含む。ホログラフィックリプレイフィールドは、空間光変調器から空間的に分離されている。リプレイフィールドのアスペクト比は、各ホログラムピクセルのアスペクト比と実質的に逆である。
【0024】
空間光変調器上に表示されるコンピュータ生成ホログラムに従って光を空間的に変調し、ホログラフィックリプレイフィールドでホログラフィック再構成を形成するステップを含む空間光変調器を動作させる方法も提供される。
【0025】
液晶を含む長方形ピクセル(または長方形セル)のアレイを形成し、ピクセルの長軸(または長辺)の方向に液晶ディレクタを配向させるステップを含む、シリコンデバイス上に液晶を製造する方法がさらに提供される。配向させるステップは、配向層によって実行されるか、またはそれを使用して実行されてもよく、シリコンデバイス上に液晶を製造する方法は、配向性質または配向特性を与えるように配向層を処理するステップをさらに含んでもよい。配向層を処理するステップは、配向層に方向性を与えると言うことができる。配向層の配向性質または配向特性は、物理的または位相的であってもよい。配向層に配向特性を付与するステップは、物理的ラビング、方向性蒸着または光配向を含む群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。液晶がセル内に挿入または堆積される前または後に、配向特性が配向層に付与されてもよい。配向層は、液晶と物理的に接触してもよい。次に、配向層の配向特性は、液晶ディレクタに配向を付与する。したがって、配向層は、長方形ピクセルの長辺に平行な方向性を有する。
【0026】
異なる実施形態および実施形態の群は、以下の詳細な説明で別々に開示され得るが、任意の実施形態または実施形態の群の任意の特徴は、任意の実施形態または実施形態の群の他の任意の特徴または特徴の組み合わせと組み合わされてもよい。すなわち、本開示で開示する特徴のすべての可能な組み合わせおよび順列が想定される。
【0027】
「ホログラム」という用語は、対象物に関する振幅情報および/または位相情報を含む記録を指すために使用される。「ホログラフィック再構成」という用語は、ホログラムを照明することによって形成される対象物の光学的再構成を指すために使用される。本明細書では、「リプレイ平面」という用語は、ホログラフィック再構成が完全に形成される空間内の平面を指すために使用される。「リプレイフィールド」という用語は、本明細書では、空間光変調器から空間変調光を受け取ることができるリプレイ平面のサブエリアを指すために使用される。「画像」および「画像領域」という用語は、ホログラフィック再構成を形成する光によって照明されるリプレイフィールドの領域を指す。実施形態では、「画像」は、「画像ピクセル」と呼ぶことができる離散スポットを含んでもよい。
【0028】
「エンコード」、「書き込み」、または「アドレス指定」という用語は、各ピクセルの変調レベルをそれぞれ決定する複数の制御値をSLMの複数のピクセルに提供するプロセスを記述するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値を受け取ることに応じて光変調分布を「表示」するように構成されていると言うことができる。
【0029】
「光」という用語は、本明細書ではその最も広い意味で使用される。いくつかの実施形態は、可視光、赤外光および紫外光、およびそれらの任意の組み合わせに等しく適用可能である。
【0030】
全体を通して「長方形」および「長方形の」への言及は、正確な形状にある程度の許容差が可能であることが理解されよう。「長方形」という単語は「実質的に長方形」と読まれてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態は、一例としてのみ1Dおよび2Dホログラフィック再構成を説明している。他の実施形態では、ホログラフィック再構成は3Dホログラフィック再構成である。すなわち、いくつかの実施形態では、各コンピュータ生成ホログラムは3Dホログラフィック再構成を形成する。
【0032】
特定の実施形態は、以下の図を参照して例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】スクリーン上にホログラフィック再構成を生成する反射SLMを示す概略図である。
【
図2A】例示的なGerchberg-Saxton型アルゴリズムの最初の反復を示す図である。
【
図2B】例示的なGerchberg-Saxton型アルゴリズムの2回目以降の反復を示す図である。
【
図4】正方形ピクセルの長方形アレイと正方形リプレイフィールドを示す図である。
【
図5】正方形リプレイフィールドの非アクティブ領域を有することにより、長方形の画像空間を提供する手法を示す図である。
【
図6】実施形態による長方形ピクセルの長方形アレイを示す図である。
【
図7】実施形態による長方形ピクセルの正方形アレイを示す図である。
【
図8】さらなる実施形態による長方形ピクセルの円形アレイを示す図である。
【0034】
同じまたは同様の部分を指すために、図面全体を通して同じ符号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、以下に記載される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。すなわち、本発明は、異なる形態で具体化することができ、記述された実施形態は説明の目的のために記載されたものであって、それらに限定されると解釈するべきではない。
【0036】
単数形の用語は、特に指定がない限り、複数形を含んでもよい。
【0037】
他の構造物の上部/下部または他の構造物の上/下に形成されると記述された構造物は、構造物が互いに接触する場合、さらにその間に第3の構造物が配置される場合を含むと解釈するべきである。
【0038】
時間関係を記述する際に、例えば、事象の時間的順序が「後に」、「続いて」、「次に」、「前に」などと記述される場合に、特に指定しない限り、本開示は連続的および非連続的事象を含むと解釈するべきである。例えば、説明は、「ちょうどに」、「即時に」、「すぐに」などの文言が使用されない限り、連続的ではないケースを含むと解釈するべきである。
【0039】
本明細書では、「第1」、「第2」などの用語を使用して様々な要素を説明しているが、これらの要素はこれらの用語に限定されない。これらの用語は、ある要素と別の要素を区別するためにのみ使用される。例えば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。
【0040】
異なる実施形態の特徴は、互いに部分的にまたは全体的に結合または組み合わされてもよく、互いに様々に相互運用されてもよい。いくつかの実施形態は、互いに独立して実行されてもよく、または相互依存関係で共に実行されてもよい。
【0041】
許容可能な品質のホログラフィック再構成は、元の対象物に関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成できることが分かっている。そのようなホログラフィック記録は、位相限定ホログラムと呼ぶことができる。いくつかの実施形態は、単なる例として位相限定ホログラフィに関する。すなわち、いくつかの実施形態では、空間光変調器は位相遅延分布のみを入射光に適用する。いくつかの実施形態では、各ピクセルによって適用される位相遅延はマルチレベルである。すなわち、各ピクセルは、離散的な数の位相レベルの1つに設定できる。位相レベルの離散的な数は、位相レベルのはるかに大きいセットまたは「パレット」から選択することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、コンピュータ生成ホログラムは、再構成のための対象物のフーリエ変換である。これらの実施形態では、ホログラムは対象物のフーリエ領域または周波数領域の表現であると言うことができる。
図1は、反射SLMを使用して位相限定フーリエホログラムを表示し、リプレイフィールド、例えばスクリーンやディフューザなどの受光面でホログラフィック再構成を生成する実施形態を示す。
【0043】
光源110、例えばレーザーまたはレーザーダイオードは、コリメートレンズ111を介してSLM140を照明するために配置される。コリメートレンズにより、光のほぼ平面の波面がSLMに入射する。波面の方向は垂直ではない(例えば、透明な層の平面に真に直交することから2度または3度離れている)。他の実施形態では、例えばビームスプリッタを使用して、ほぼ平面の波面が垂直入射で提供される。
図1に示す例では、光源からの光がSLMのミラー化された背面で反射され、位相変調層と相互作用して出口波面112を形成するように配置されている。出口波面112は、スクリーン125に焦点を合わせたフーリエ変換レンズ120を含む光学系に適用される。
【0044】
フーリエ変換レンズ120は、SLMから位相変調された光のビームを受け取り、周波数空間変換を実行して、スクリーン125でホログラフィック再構成を生成する。
【0045】
光は、SLMの位相変調層(すなわち、位相変調素子のアレイ)に入射する。位相変調層を出る変調光は、リプレイフィールド全体に分散される。特に、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが全体の再構成に寄与する。すなわち、リプレイフィールド上の特定の点と特定の位相変調要素との間に1対1の相関関係はない。
【0046】
これらの実施形態では、空間におけるホログラフィック再構成の位置は、フーリエ変換レンズの屈折(集束)度数によって決定される。
図1に示す実施形態では、フーリエ変換レンズは物理レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズは光学的フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換は光学的に実行される。どのレンズもフーリエ変換レンズとして機能できるが、レンズの性能により、実行するフーリエ変換の精度が制限される。当業者は、レンズを使用して光学的フーリエ変換を実行する方法を理解している。しかし、他の実施形態では、フーリエ変換は、ホログラフィックデータにレンズ化データを含めることにより計算で実行される。すなわち、ホログラムには、レンズを表すデータと対象物を表すデータが含まれている。コンピュータ生成ホログラムの分野では、レンズを表すホログラフィックデータの計算方法が知られている。レンズを表すホログラフィックデータは、ソフトウェアレンズと呼ぶことができる。例えば、位相限定のホログラフィックレンズは、その屈折率および空間的に変化する光路長に起因してレンズの各点によって引き起こされる位相遅延を計算することにより形成することができる。例えば、凸レンズの中心の光路長は、レンズの縁部の光路長よりも長くなる。振幅限定のホログラフィックレンズは、フレネルゾーンプレートによって形成することができる。また、物理的フーリエレンズを必要とせずにフーリエ変換を実行できるように、レンズを表すホログラフィックデータを対象物を表すホログラフィックデータと組み合わせる方法は、コンピュータ生成ホログラムの分野で知られている。いくつかの実施形態では、レンズデータは、単純なベクトル加算によりホログラフィックデータと組み合わされる。いくつかの実施形態では、フーリエ変換を実行するために、物理レンズがソフトウェアレンズと共に使用される。あるいは、他の実施形態では、フーリエ変換レンズは、ホログラフィック再構成が遠距離場で行われるように完全に省略される。さらなる実施形態では、ホログラムは、格子データ、すなわち、ビームステアリングなどの格子の機能を実行するように配置されたデータを含んでもよい。繰り返すが、コンピュータ生成ホログラムの分野では、そのようなホログラフィックデータを計算し、それを対象物を表すホログラフィックデータと組み合わせる方法が知られている。例えば、位相限定ホログラフィック格子は、ブレーズド回折格子の表面上の各点によって引き起こされる位相遅延をモデリングすることにより形成することができる。振幅限定のホログラフィック回折格子は、対象物を表す振幅限定のホログラムに単純に重ね合わせて、振幅限定のホログラムの角度ステアリングを行うことができる。
【0047】
2D画像のフーリエホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムの使用を含む、いくつかの方法で計算することができる。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムを使用して、空間領域(2D画像など)の振幅情報からフーリエ領域の位相情報を導出することができる。すなわち、対象物に関連する位相情報は、空間領域の強度または振幅の情報のみから「取り出す」ことができる。したがって、対象物の位相限定のフーリエ変換を計算することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、コンピュータ生成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムまたはその変形を使用して振幅情報から計算される。Gerchberg Saxtonアルゴリズムは、平面AおよびBのそれぞれの光線IA(x、y)およびlB(x、y)の強度断面が既知であり、IA(x、y)およびlB(x、y)が単一のフーリエ変換によって関連付けられる場合に、位相取り出し問題を考慮する。与えられた強度断面で、平面AとBの位相分布の近似、Ψa(x、y)とΨB(x、y)がそれぞれ見いだされる。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、反復プロセスに従ってこの問題の解決策を見いだす。
【0049】
Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、IA(x、y)およびlB(x、y)を表すデータセット(振幅と位相)を空間領域とフーリエ(スペクトル)領域間で繰り返し転送しながら、空間およびスペクトル制約を繰り返し適用する。空間制約およびスペクトル制約は、それぞれIA(x、y)およびlB(x、y)である。空間領域またはスペクトル領域の制約は、データセットの振幅に課せられる。対応する位相情報は、一連の反復を通じて取り出される。
【0050】
いくつかの実施形態では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる英国特許第2,498,170号または第2,501,112号に記載されているようなGerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用してホログラムが計算される。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムは、既知の振幅情報T [x、y]を生じさせるデータセットのフーリエ変換の位相情報Ψ[u、v]を取り出す。振幅情報T [x、y]は、ターゲット画像(写真など)を表す。位相情報Ψ[u、v]は、画像平面でターゲット画像のホログラフィック表示を生成するために使用される。
【0052】
振幅と位相は本質的にフーリエ変換で結合されるため、変換された振幅(および位相)には、計算されたデータセットの精度に関する有用な情報が含まれている。したがって、アルゴリズムは、振幅と位相の両方の情報に関するフィードバックを提供する。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態によるGerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づく例示的なアルゴリズムは、
図2を参照して以下で説明される。アルゴリズムは反復的でかつ収束的である。このアルゴリズムは、入力画像を表すホログラムを生成するように構成されている。このアルゴリズムを使用して、振幅限定ホログラム、位相限定ホログラム、または完全複素ホログラムを決定することができる。本明細書で開示される例は、単なる例として位相限定ホログラムを生成することに関する。
図2Aは、アルゴリズムの最初の反復を示しており、アルゴリズムのコアを表している。
図2Bは、アルゴリズムの後続の反復を示す。
【0054】
この説明の目的のために、振幅と位相の情報は別々に考慮されるが、それらは本質的に組み合わされて複合複素データセットを形成する。
図2Aを参照すると、アルゴリズムのコアは、第1の複素データを含む入力と、第4の複素データを含む出力を有すると考えることができる。第1の複素データは、第1の振幅成分201および第1の位相成分203を含む。第4の複素データは、第4の振幅成分211および第4の位相成分213を含む。この例では、入力画像は2次元である。したがって、振幅と位相の情報は、遠方場画像の空間座標(x、y)の関数であり、ホログラムフィールドの(u、v)の関数である。すなわち、各平面の振幅と位相は、各平面の振幅と位相の分布である。
【0055】
この最初の反復では、第1の振幅成分201は、ホログラムが計算されている入力画像210である。この最初の反復では、第1の位相成分203は、アルゴリズムの開始点として単に使用されるランダム位相成分230である。処理ブロック250は、第1の複素データのフーリエ変換を実行して、第2の振幅成分(図示せず)および第2の位相情報205を有する第2の複素データを形成する。この例では、処理ブロック252によって、第2の振幅成分が破棄され、第3の振幅成分207に置き換えられる。他の例では、処理ブロック252は、異なる機能を実行して、第3の振幅成分207を生成する。この例では、第3の振幅成分207は、光源を表す分布である。第2の位相成分205は、処理ブロック254によって量子化され、第3の位相成分209を生成する。第3の振幅成分207および第3の位相成分209は、第3の複素データを形成する。第3の複素データは、逆フーリエ変換を実行する処理ブロック256に入力される。処理ブロック256は、第4の振幅成分211および第4の位相成分213を有する第4の複素データを出力する。第4の複素データは、次の反復の入力を形成するために使用される。すなわち、n回目の反復の第4の複素データを使用して、(n+1)回目の反復の第1の複素データセットを形成する。
【0056】
図2Bは、アルゴリズムの2回目以降の反復を示す。処理ブロック250は、前の反復の第4の振幅成分211から導出された第1の振幅成分201と、前の反復の第4の位相成分に対応する第1の位相成分213と、を有する第1の複素データを受け取る。
【0057】
この例では、第1の振幅成分201は、以下で説明するように、前の反復の第4の振幅成分211から導出される。処理ブロック258は、前の反復の第4の振幅成分211から入力画像210を差し引いて、第5の振幅成分215を形成する。処理ブロック260は、第5の振幅成分215を利得係数αでスケーリングし、それを入力画像210から差し引く。これは、次の方程式で数学的に表現される。
【0058】
ここで、
F’は逆フーリエ変換である。
Fは順フーリエ変換である。
Rはリプレイフィールドである。
Tはターゲット画像である。
∠は角度情報である。
Ψは、角度情報の量子化バージョンである。
εは新しいターゲット振幅であり、ε≧0、および
αは利得要素~1である。
【0059】
利得要素αは固定であっても可変であってもよい。例では、利得要素αは、入ってくるターゲット画像データのサイズとレートに基づいて決定される。
【0060】
処理ブロック250、252、254および256は、
図2Aを参照して説明したように機能する。最後の反復では、入力画像210を表す位相限定ホログラムΨ(u、v)が出力される。位相限定ホログラムΨ(u、v)は、周波数領域またはフーリエ領域の位相分布を含むと言える。
【0061】
他の例では、第2の振幅成分は破棄されない。代わりに、入力画像210が第2の振幅成分から差し引かれ、その振幅成分の倍数が入力画像210から差し引かれて第3の振幅成分307が生成される。他の例では、第4の位相成分は完全にフィードバックされず、例えば最後の2回の繰り返しなど、その変化に比例する部分のみがフィードバックされる。
【0062】
いくつかの実施形態では、画像データを受け取り、アルゴリズムを使用してリアルタイムでホログラムを計算するように構成されたリアルタイムエンジンが提供される。いくつかの実施形態では、画像データは一連の画像フレームを含むビデオである。他の実施形態では、ホログラムは事前に計算され、コンピュータメモリに保存され、必要に応じてSLMで表示するために呼び出される。すなわち、いくつかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが提供される。
【0063】
しかしながら、いくつかの実施形態は、単なる例として、フーリエホログラフィおよびGerchberg-Saxton型アルゴリズムに関する。本開示は、フレネルホログラフィおよび点群法に基づく技術などの他の技術によって計算されたホログラムに等しく適用可能である。
【0064】
本開示は、いくつかの異なるタイプのSLMのうちのいずれか1つを使用して実施することができる。SLMは、反射または透過により空間変調光を出力することができる。いくつかの実施形態では、SLMは液晶オンシリコン(LCOS)SLMであるが、本開示はこのタイプのSLMに限定されない。いくつかの実施形態では、空間光変調器は、光学的に活性化される空間光変調器である。
【0065】
LCOSデバイスは、小さな開口部に位相限定の要素の大きな配列を表示することができる。小さな要素(通常は約10ミクロン以下)により実用的な回折角(数度)が得られるため、光学システムは非常に長い光路を必要としない。LCOS SLMの小さな開口部(数平方センチメートル)を適切に照明する方が、大型の液晶デバイスの開口部よりも簡単である。LCOS SLMの開口率も大きく、ピクセル間のデッドスペースはほとんどない(ピクセルを駆動する回路がミラーの下に埋め込まれているため)。これは、リプレイフィールドの光学ノイズを低減するための重要な問題である。シリコンバックプレーンを使用すると、ピクセルが光学的に平坦であるという利点がある。これは、位相変調デバイスにとって重要である。
【0066】
適切なLCOS SLMを、
図3を参照して、単なる例として以下に説明する。LCOSデバイスは、単結晶シリコン基板302を使用して形成される。それは、基板の上面に配置された、ギャップ301aで離間された正方形の平面アルミニウム電極301の2Dアレイを有する。電極301の各々は、基板302に埋め込まれた回路302aを介してアドレス指定することができる。各電極は、それぞれの平面鏡を形成する。電極のアレイ上に配向層303が配置され、配向層303上に液晶層304が配置される。第2の配向層305は、液晶層304上に配置され、例えばガラスの平面透明層306は、第2の配向層305上に配置される。例えばITOの単一の透明電極307は、透明層306と第2の配向層305との間に堆積される。
【0067】
正方形電極301の各々は、透明電極307の上にある領域および介在する液晶材料と共に、しばしばピクセルと呼ばれる制御可能な位相変調素子308を画定する。有効ピクセル面積、またはフィルファクタは、ピクセル間のスペース301aを考慮して、光学的にアクティブなピクセル全体の割合である。透明電極307に関して各電極301に印加される電圧を制御することにより、それぞれの位相変調素子の液晶材料の特性を変えることができ、それによりそこに入射する光に可変遅延を与えることができる。その効果は、波面に位相限定の変調を提供することであり、すなわち、振幅効果は発生しない。
【0068】
説明されたLCOS SLMは、反射で空間変調光を出力するが、本開示は、透過性デバイスに等しく適用可能である。反射LCOS SLMには、信号線、ゲート線、およびトランジスタが鏡面の下にあるという利点があり、これにより、高いフィルファクタ(通常90%を超える)と高い解像度が得られる。反射LCOS空間光変調器を使用する別の利点は、透過性デバイスを使用した場合に必要な厚さの半分の厚さの液晶層を使用できることである。これにより、液晶のスイッチング速度が大幅に向上する(ビデオ動画像を投影するための重要な利点)。
【0069】
ホログラフィックリプレイフィールドのサイズ(すなわち、ホログラフィック再構成の物理的または空間的範囲)は、空間光変調器のピクセルピッチ (すなわち、空間光変調器の隣接する光変調要素、またはピクセル間の距離)に対する光波長の相互作用によって決定される。リプレイフィールドで形成される最小の特徴は、「解像度要素」、「画像スポット」または「画像ピクセル」と呼ぶことができる。四角形の開口部のフーリエ変換はsinc関数であるため、空間光変調器の開口部は各画像ピクセルをsinc関数として定義する。より具体的には、リプレイフィールド上の各画像ピクセルの空間強度分布は、sinc関数である。各sinc関数は、ピーク強度の一次回折次数と、一次次数から放射状に広がる一連の強度が減少する高次回折次数を含むと見なすことができる。各sinc関数のサイズ(すなわち、各sinc関数の物理的または空間的範囲)は、空間光変調器のサイズ(すなわち、光変調素子または空間光変調器ピクセルのアレイによって形成される開口部の物理的または空間的範囲)によって決まる。具体的には、光変調ピクセルアレイによって形成される開口部が大きいほど、画像ピクセルは小さくなる。リプレイフィールドには、小さな画像ピクセルと画像ピクセルの高解像度(密度)が必要である。
【0070】
図4は、正方形ピクセルの長方形アレイ400を示す。コンピュータ生成ホログラムがピクセルの長方形アレイ400上に表示され、適切な光の照射により再構築される410場合には、ホログラフィックリプレイフィールド420は正方形である。これは、各ピクセルのサイズと形状がリプレイフィールドのサイズと形状を決定するためである。一例では、コンピュータ生成ホログラムは1024 x 512ピクセルを含み、ホログラフィック再構成は1024 x 512画像ピクセルを含む。これらの画像ピクセルは、正方形のリプレイフィールド420に均等に分布している。事実上、垂直解像度は水平解像度の半分である。
【0071】
多くの状況では、ワイドスクリーンのリプレイフィールドなどの長方形リプレイフィールドを有することが望ましい。例えば、アスペクト比が16:9または2:1のリプレイフィールドを有することが望ましい場合がある。従来通りに、これは、リプレイフィールドの長方形のサブエリアにのみ光を導くコンピュータ生成ホログラムを計算することにより達成される。
【0072】
図5は、画像コンテンツを含むホログラフィック再構成を表示するために使用される正方形ホログラフィックリプレイフィールドの第1のサブエリア520を示す。
図5は、画像コンテンツを表示するために使用されない第2のサブエリア530および第3のサブエリア540も示す。第2のサブエリア530および第3のサブエリア540内の画像ピクセルは事実上使用されない。したがって、このホログラフィック投影法の可能性は十分に実現されていない。加えて、いくつかの例では、観察者から第2のサブエリア530および第3のサブエリア540を隠すために、バッフルまたは光シールドが含まれてもよい。
【0073】
図6は、長方形ピクセルの長方形アレイ600を含む実施形態を示す。コンピュータで生成されたホログラムがピクセルの長方形アレイ600上に表示され、適切な光の照射により再構築される610場合には、ホログラフィックリプレイフィールド620は長方形である。本発明者らは、ホログラム面の最小特徴の形状(すなわち、空間光変調器の1つのピクセル)が所望の表示領域の形状(すなわち、リプレイフィールドの形状)に一致する場合には、リプレイフィールドの画像ピクセルの解像度(密度)が最大になることを認識している。具体的には、ホログラム面の最小特徴のアスペクト比は、リプレイフィールドの最大特徴のアスペクト比(すなわち、リプレイフィールド自体の物理的または空間的範囲)と実質的に逆であることが分かる。
【0074】
いくつかの実施形態では、各長方形ピクセルの短辺は0.5~5マイクロメートル、任意選択的に1~3ミクロンであり、長辺は2~12マイクロメートル、任意選択的に4~8ミクロンである。いくつかの実施形態では、ピクセルのアスペクト比は、1:1.2~1:3、任意選択的に1:1.5~1:2.5、さらに任意選択的に1:2の範囲内である。
【0075】
図7は、ピクセルが長方形であるがアレイは正方形である、さらに有利な実施形態を示す。具体的には、
図7は、複数のピクセル700および正方形の開口部750内のピクセルアレイを示す。ホログラム面の最大特徴のサイズと形状(すなわち、開口部750)は、リプレイフィールドの最小特徴のサイズと形状を画定する。正方形の開口部は、画質に適した少なくとも2つの対称軸を有する画像スポットを発生させる。一実施形態では、各ピクセルは長方形であるが、ピクセルの配列は正方形である。すなわち、ピクセルの配列は正方形の開口部内に含まれるか、または画定される。
【0076】
図8は、ピクセルが長方形であるがアレイは円形である、さらに有利な実施形態を示す。具体的には、
図8は、円形開口部850内の複数のピクセル800およびピクセルアレイを示す。円形開口部は、放射状に対称な画像スポットを生じさせるので、画像品質がさらに向上する。一実施形態では、各ピクセルは長方形であるが、ピクセルの配列は円形である。すなわち、ピクセルの配列は円形開口部内に含まれるか、または画定される。
【0077】
一実施形態では、空間光変調器は、ピクセルの四角形配列を含んでもよいが、例えばピクセル860を含むがピクセル870を除くピクセルのサブセットのみが、コンピュータ生成ホログラムの表示/呈示に使用されるピクセルの円形配列を画定するために使用される。疑いを避けるために、
図8は、例えばウエハごとのダイではなく、ホログラムピクセルのレイアウトを示す。
【0078】
実施形態では、ピクセルはネマチック液晶などの液晶を含み、液晶のディレクタはピクセルの最も長い辺に配向している。すなわち、液晶のディレクタは、ピクセルの最も長い辺に実質的に平行である。当業者は、液晶ディレクタを配向させるためのプロセス(液晶配向層のラビングおよび液晶配向層の方向性蒸発など)に精通しているため、ここでは詳細な説明は不要である。いくつかの実施形態では、液晶はねじれネマチック液晶である。いくつかの実施形態では、液晶は、垂直配向ネマチック「VAN」モードで動作する。
【0079】
いくつかの実施形態では、光源はレーザーである。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディフューザであり得る受光面が提供される。本開示のホログラフィック投影システムは、3Dディスプレイまたはプロジェクタとして使用されてもよい。本開示のホログラフィック投影システムはまた、改善されたヘッドアップディスプレイ(HUD)またはヘッドマウントディスプレイを提供するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、HUDを提供するために車両に設置されたホログラフィック投影システムを含む車両が提供される。車両は、自動車、トラック、バン、大型トラック、オートバイ、電車、飛行機、ボート、または船などの自動車両であってもよい。
【0080】
ホログラフィック再構成の品質は、ピクセル化空間光変調器を使用する回折性質の結果である、いわゆるゼロ次問題の影響を受ける可能性がある。このようなゼロ次光は「ノイズ」と見なすことができ、例えば鏡面反射光およびSLMからの他の不要な光が含まれる。
【0081】
フーリエホログラフィの例では、この「ノイズ」はフーリエレンズの焦点に焦点を合わせ、ホログラフィック再構成の中心に明るいスポットをもたらす。ゼロ次光は単純にブロックされるが、これは明るいスポットを暗いスポットに置き換えることを意味する。いくつかの実施形態は、ゼロ次の平行光線のみを除去する角度選択フィルタを含む。実施形態は、欧州特許第2,030,072号に記載されているゼロ次を管理する方法も含み、上記特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0082】
いくつかの実施形態では、ホログラムのサイズ(各方向のピクセルの数)は、ホログラムが空間光変調器を満たすように空間光変調器のサイズに等しい。すなわち、ホログラムは空間光変調器のすべてのピクセルを使用する。他の実施形態では、ホログラムのサイズは空間光変調器のサイズより小さい。これらの他の実施形態のいくつかでは、ホログラムの一部(すなわち、ホログラムのピクセルの連続サブセット)が未使用のピクセルで繰り返される。この技術は「タイリング」と呼ぶことができ、空間光変調器の表面積はいくつかの「タイル」に分割され、各タイルは少なくともホログラムのサブセットを表す。したがって、各タイルのサイズは、空間光変調器よりも小さくなる。いくつかの実施形態では、空間光変調器に書き込まれるホログラフィックパターンは、少なくとも1つのタイル全体(すなわち、完全なホログラム)およびタイルの少なくとも1つの部分(すなわち、ホログラムのピクセルの連続サブセット)を含む。
【0083】
ホログラフィック再構成は、空間光変調器によって定義されたウィンドウ全体のゼロ次回折内で作成される。画像と重ならないように、また空間フィルタを使用してブロックできるように、一次以降の次数を十分にずらすことが好ましい。
【0084】
実施形態では、ホログラフィック再構成は色である。本明細書で開示される例では、3つの異なる色の光源および3つの対応するSLMが、合成色を提供するために使用される。これらの例は、空間的に分離された色、「SSC」と呼ばれる場合がある。本開示に含まれる変形例では、各色の異なるホログラムが同じSLMの異なる領域に表示され、次いで合成カラー画像を形成するために組み合わされる。しかしながら、当業者は、本開示のデバイスおよび方法の少なくともいくつかが、合成色ホログラフィック画像を提供する他の方法に等しく適用可能であることを理解するであろう。
【0085】
これらの方法の1つは、フレームシーケンシャルカラー、「FSC」として知られている。FSCシステムの例では、3つのレーザー(赤、緑、青)が使用され、各レーザーは単一のSLMで連続して発射され、ビデオの各フレームを生成する。色は、人間の観察者が3つのレーザーで形成された画像の組み合わせから多色画像を見るのに十分な速度で循環する(赤、緑、青、赤、緑、青など)。したがって、各ホログラムは色固有である。例えば、毎秒25フレームのビデオでは、最初のフレームは1/75秒間赤色レーザーを発射して生成され、次に緑色レーザーは1/75秒間発射され、最後に青色レーザーは1/75秒の間発射される。次いで、赤色レーザーで次のフレームが生成され、以下同様である。
【0086】
FSC方式の利点は、SLM全体が各色に使用されることである。これは、SLM上のすべてのピクセルが各カラー画像に使用されるため、生成される3つのカラー画像の品質が損なわれないことを意味する。しかし、FSC法の欠点は、各レーザーが3分の1の時間しか使用されないため、生成される画像全体がSSC法によって生成される対応する画像ほど約3倍明るくならないことである。この欠点は、レーザーをオーバードライブするか、より強力なレーザーを使用することで対処できる可能性があるが、使用するにはより多くの電力が必要になり、コストが高くなり、システムがコンパクトでなくなる。
【0087】
SSC方式の利点は、3つのレーザーすべてが同時に発射されるため、画像が明るくなることである。しかし、スペースの制限により、1つのSLMのみを使用する必要がある場合には、SLMの表面積を3つの部分に分割し、実質的に3つの別個のSLMとして機能させることができる。これの欠点は、各単色画像で利用可能なSLM表面積の減少により、各単色画像の品質が低下することである。したがって、多色画像の品質がそれに応じて低下する。使用可能なSLM表面積の減少は、SLMで使用できるピクセルが少なくなり、画像の品質が低下することを意味する。解像度が低下するので、画像の品質が低下する。実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、英国特許第2,496,108号に開示されている改善されたSSC技術を利用する。
【0088】
例では、可視光でSLMを照明することを説明しているが、当業者は、例えば本明細書で開示するように、光源およびSLMを同等に使用して赤外線または紫外線を導くことができることを理解するであろう。例えば、当業者は、情報をユーザーに提供する目的で、赤外光と紫外光を可視光に変換する技術を認識しているであろう。例えば、本開示は、この目的のための蛍光体および/または量子ドット技術の使用にまで及ぶ。
【0089】
本明細書で説明される方法およびプロセスは、コンピュータ可読媒体で実施されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリおよびキャッシュメモリなど、データを一時的または永続的に格納するように構成された媒体を含む。「コンピュータ可読媒体」という用語は、任意の媒体、または複数の媒体の組み合わせを含むものと解釈すべきであり、それは、命令が、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、機械に、本明細書に記載した方法論の任意の1つまたは複数を全体的または部分的に実行させるように、機械で実行するための命令を格納することができる。
【0090】
「コンピュータ可読媒体」という用語には、クラウドベースのストレージシステムも含まれる。「コンピュータ可読媒体」という用語には、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスク、またはそれらの適切な組み合わせの例示的な形態の1つもしくは複数の有形および非一時的なデータリポジトリ(例えばデータボリューム)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態では、実行のための命令は、キャリア媒体によって通信されてもよい。そのようなキャリア媒体の例には、一時的な媒体(例えば、命令を伝達する伝搬信号)が含まれる。
【0091】
添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内のすべての修正および変形を包含する。