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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】粒状パフ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/165 20160101AFI20220106BHJP
   A23L 7/17 20160101ALI20220106BHJP
   A23P 30/34 20160101ALI20220106BHJP
【FI】
A23L7/165
A23L7/17
A23P30/34
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020018433
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2020137515
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019031042
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597136319
【氏名又は名称】株式会社きのした
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 勝世志
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 英昭
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252824(JP,A)
【文献】特開平09-310223(JP,A)
【文献】特開平09-201833(JP,A)
【文献】特開平07-046976(JP,A)
【文献】特開2004-121067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23P
A23J
A23N
B29C
C08J
D01D
D01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉を含有し、粒状に成形され、膨化している粒状パフにおいて、目開きが2.8mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.0mm、0.6mmの篩を用い、目開きが大きい篩から使用して篩分けしたときのメディアン径が前記目開き寸法で0.6~1.7mmの範囲にあり、かつ、目開きが2.0mmの篩をパスし、0.6mmの篩をオンするものの割合が全体で95質量%以上であり、表面に破断面がなく、かさ比重が83~315g/500ccであることを特徴とする粒状パフ。
【請求項2】
常温保管時の水分増加量が0.02質量%/日以下である、請求項1記載の粒状パフ。
【請求項3】
前記穀粉の他に、澱粉を、パフ原料全体に対し固形分換算で、5~50質量%含有する、請求項1又は2記載の粒状パフ。
【請求項4】
水分含有量が0.1~12.0質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒状パフ。
【請求項5】
原料として穀粉及び/又は澱粉を55質量%以上含有し、1粒当たりの破断時の最高圧力の平均値が1.6~5.6Nの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒状パフ。
【請求項6】
原料として、植物性タンパク含有原料を80質量%以上含有し、1粒当たりの破断時の最高圧力の平均値が5~11Nの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒状パフ。
【請求項7】
穀粉を含有するパフ原料100質量部に対して、水を8.0~40質量部添加して、2軸エクストルーダに供給する原料供給工程と、前記2軸エクストルーダ内で原料を加熱混練する加熱混練工程と、前記2軸エクストルーダ先端に装着されたダイスの、内径0.3~0.9mmの吐出孔を通して、ダイス温度70~140℃、かつ、前記ダイスの内面側における押出し圧力Pが4.5~12.0MPaで、前記加熱混練されたパフ原料を押出して膨化させると共に、所定長さに切断する押出・切断工程とを含み、前記ダイスの吐出孔は、吐出方向に向けて次第に縮径するテーパ部と、該テーパ部の先端から内径0.3~0.9mmをなしてストレート径で伸びる縮径部とを有し、前記縮径部の厚さAと前記縮径部の内径Bとの比A/Bが1.2~1.5である形状をなすことを特徴とする粒状パフの製造方法。
【請求項8】
前記ダイス内端面の吐出孔が形成された領域における単位面積当たりの吐出孔の数が、4.6~19.1個/cm2である、請求項7記載の粒状パフの製造方法。
【請求項9】
前記ダイス内端面の吐出孔が形成された領域の面積Wに対する前記吐出孔の合計開口面積Sの割合S/Wと、前記押出し圧力Pとの関係が、下記式(1)で示される範囲にある、請求項7又は8記載の粒状パフの製造方法。
0.135≦P×S/W≦0.408 …(1)
【請求項10】
前記パフ原料は、前記穀粉の他に、澱粉を、前記パフ原料全体に対し固形分換算で、1~50質量%含有する、請求項7~9のいずれか1項に記載の粒状パフの製造方法。
【請求項11】
前記パフ原料の粒度は、目開き寸法177μmの80メッシュの篩を通過するものが95%以上となるように調製されている、請求項7~10のいずれか1項に記載の粒状パフの製造方法。
【請求項12】
前記吐出孔の吐出方向から見た形状が円形、楕円形、小判形のいずれかの形状をなす、請求項7~11のいずれか1項に記載の粒状パフの製造方法。
【請求項13】
前記押出・切断工程の後、更に水分含有量が0.1~12.0質量%になるまで乾燥させる乾燥工程を含む、請求項7~12のいずれか1項に記載の粒状パフの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば菓子類等の製造原料となる、粒径の小さい粒状パフ及びその製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
パフは、菓子類等の製造原料として広く用いられている。これらのパフは、エクストルーダのダイスから押出して直ちに膨化させるダイレクトパフや、ダイレクトパフで製造した膨化物を更に粉砕して所望の粒度にする方法や、エクストルーダのダイスから押出して粒状のペレットを形成し、このペレットを焼成して膨化させる焙煎パフなどの方法で製造されている。
【0003】
ダイレクトパフの一例として、例えば下記特許文献1には、澱粉を含むパフ原料をエクストルーダのダイスから押出して膨化させ、粉砕機にて粒子径0.1~3mm程度に粉砕し、更に熱風乾燥して粒状澱粉組成物を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、「押出食品の膨張率を上昇せしめる方法であって、(a)未調理のシリアルドウ混合物を用意し;(b)このシリアルドウに耐性デンプンを加え;(c)14~22重量%の水分含有量となるようにこのシリアルドウに十分な水を加え;(d)予め決定された形態及びサイズの出口ダイを有する押出機の中で十分な温度及び圧力においてこのシリアルドウを加工して膨張ドウ押出品を作り;(e)この押出ドウを約3%以下の最終水分含有量にまで乾かす;ことを含んで成る方法。」が記載されている。
【0005】
更に、焙煎パフの一例として、下記特許文献3には、米粉を含む澱粉質原料を含有するパフ用原料と、前記パフ用原料100質量部に対して15~25質量部の水とをエクストルーダに供給し、前記澱粉質原料がα化するように加熱混練しながら、前記エクストルーダ先端に装着されたダイス部の吐出孔であって、その内径は1.0~1.5mmであり、その総数は、前記エクストルーダのバレルの単位断面積当たり1.5~4.5個/cmとなるように設けられている該吐出孔より押出して切断することにより、平均粒径1.5~2.2mmのペレットを成形するペレット成形工程と、前記ペレットを加熱して膨化させ、平均粒径1.8~2.8mmのパフを得る膨化工程とを含むことを特徴とするパフの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5494900号公報
【文献】特開平7-46976号公報
【文献】特許第4173985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、菓子類にコーティングするチョコレート層を押出成形などにより成形する場合、チョコレート原料にパフを含有させ、パフを潰すことなく成形しようとすると、押出ダイスの孔を通過可能な大きさに形成されたパフを用いる必要があった。
【0008】
従来、そのような小粒径のパフは、特許文献1に記載されたようなダイレクトパフ、又は特許文献3に記載されたような焙煎パフによって、一旦パフを形成し、このパフを粉砕して作成されていた。
【0009】
しかし、パフを粉砕して形成した小粒径のパフは、その表面に破断面を有しているため、流動性が悪く、他の原料と均一に混合しにくかったり、保存中に湿気を吸収しやすいという問題点があった。
【0010】
一方、エクストルーダ先端に装着されるダイスの吐出孔を小さくして、ダイレクトパフ、又は焙煎パフの粒径を小さくすることも考えられる。しかしながら、粒径が著しく小さいパフは、パフとしてのサクサク感が乏しくなると考えられ、そのような粒径のパフを作ろうとする試みはなされていなかった。
【0011】
また、本発明者らが実際にそのような小径のパフを作ろうと試みたところ、吐出孔の内径が小さいために、ノズルの詰まりが生じやすくなり、安定した生産ができないという問題があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、小粒径であって、流動性や、耐吸湿性に優れた粒状パフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の1つは、穀粉を含有し、粒状に成形され、膨化している粒状パフにおいて、目開きが2.8mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.0mm、0.6mmの篩を用い、目開きが大きい篩から使用して篩分けしたときのメディアン径が前記目開き寸法で0.6~1.7mmの範囲にあり、かつ、目開きが2.0mmの篩をパスし、0.6mmの篩をオンするものの割合が全体で95質量%以上であり、表面に破断面がなく、かさ比重が83~315g/500ccであることを特徴とする粒状パフを提供するものである。
【0014】
本発明の粒状パフによれば、平均粒径が小さいので、他の原料と混合して、押出成形等の方法で成形する際に、破砕されることなく、粒状を保ったまま成形できる。また、小さい粒状パフでありながら、パフ特有のサクサクした食感を付与することができる。更に、膨化物を粉砕して製造されたパフに比べて、表面に破断面がなく、比較的滑らかな表面組織を有しているので、他の原料の混合するときの流動性や分散性が良好となり、製造作業性が向上する。更に、吸湿性が低いので、保存安定性に優れると共に、スープ等の液状食品や、菓子生地等の水分を含む生地等に添加しても、サクサク感を保持することができる。また、本発明の粒状パフは、粒度分布の広がりが小さいので、上記効果をより良好に得ることができる。
【0015】
本発明の粒状パフにおいては、常温保管時の水分増加量が0.02質量%/日以下であることが好ましい。これによって、常温保管しても、長期間に亘ってパフの食感を維持することができる。
【0016】
本発明の粒状パフにおいては、前記穀粉の他に、澱粉を、パフ原料全体に対し固形分換算で5~50質量%含有することが好ましい。これによれば、原料中に澱粉を含有することによって、押出成形時の流動性が高まり、小径のダイスから押出しやすくなるので、粒径の小さい粒状パフを製造しやすくなる。
【0017】
また、本発明の粒状パフにおいては、水分含有量が0.1~12質量%であることが好ましい。これによれば、サクサクとした食感を付与しやすくなると共に、製品の保存性を高めることができる。
【0018】
更に、本発明の粒状パフの1つの態様においては、原料として穀粉及び/又は澱粉を55質量%以上含有し、1粒当たりの破断時の最高圧力の平均値が1.6~5.6Nの範囲であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の粒状パフの別の態様においては、原料として、植物性タンパク含有原料を80質量%以上含有し、1粒当たりの破断時の最高圧力の平均値が5~11Nの範囲であることが好ましい。
これによれば、小径の粒状パフであっても、良好なサクサク感を付与することができる。
【0020】
また、本発明のもう1つは、穀粉を含有するパフ原料100質量部に対して、水を8.0~40質量部添加して、2軸エクストルーダに供給する原料供給工程と、前記2軸エクストルーダ内で原料を加熱混練する加熱混練工程と、前記2軸エクストルーダ先端に装着されたダイスの、内径0.3~0.9mmの吐出孔を通して、ダイス温度70~140℃、かつ、前記ダイスの内面側における押出し圧力Pが4.5~12.0MPaで、前記加熱混練されたパフ原料を押出して膨化させると共に、所定長さに切断する押出・切断工程とを含み、前記ダイスの吐出孔は、吐出方向に向けて次第に縮径するテーパ部と、該テーパ部の先端から内径0.3~0.9mmをなしてストレート径で伸びる縮径部とを有し、前記縮径部の厚さAと前記縮径部の内径Bとの比A/Bが1.24~3である形状をなすことを特徴とする粒状パフの製造方法を提供するものである。
【0021】
本発明の粒状パフの製造方法によれば、吐出方向に向けて次第に縮径するテーパ部と、該テーパ部の先端から内径0.3~0.9mmをなしてストレート径で伸びる縮径部とを有し、前記縮径部の厚さAと前記縮径部の内径Bとの比A/Bが1.2~1.5である形状をなす吐出孔を有するダイスを用いることにより、内径0.3~0.9mmという小さい吐出孔であっても、ノズル詰まりを生じることなくパフ原料を押出すことができ、本発明で規定する小粒径の粒状パフを生産性よく製造することができる。また、ダイレクト製法によるので、原料をシート状にして焼成したり、破砕したり、分級する手間がかからないので、生産性が高い。
【0022】
本発明の粒状パフの製造方法においては、前記ダイス内端面の吐出孔が形成された領域における単位面積当たりの吐出孔の数が、4.6~19.1個/cmであることが好ましい。これによれば、ダイスの強度を維持しつつ、生産性を高めることができる。
【0023】
また、前記ダイス内端面の吐出孔が形成された領域の面積Wに対する前記吐出孔の合計開口面積Sの割合S/Wと、前記押出し圧力Pとの関係が、下記式(1)で示される範囲にあることが好ましい。
0.135≦P×S/W≦0.408 …(1)
これによれば、ノズル詰まりが生じにくくなり、ダイスの強度を維持しつつ、生産性を高めることができる。
【0024】
また、本発明の粒状パフの製造方法においては、前記パフ原料は、前記穀粉の他に、澱粉を、前記パフ原料全体に対し固形分換算で、5~50質量%含有することが好ましい。これによれば、原料中に澱粉を含有することによって、押出成形時の流動性が高まり、小径の吐出孔から押出しやすくなるので、粒径の小さい粒状パフを製造しやすくなる。
【0025】
更に、本発明の粒状パフの製造方法においては、前記パフ原料の粒度は、目開き寸法177μmの80メッシュの篩を通過するものが95%以上となるように調製されていることが好ましい。これによれば、上記粒度のパフ原料を用いることにより、前述した小径の吐出孔から押出しやすくすることができる。
【0026】
更に、本発明の粒状パフの製造方法においては、前記吐出孔の吐出方向から見た形状が円形、楕円形、小判形のいずれかの形状をなすことが好ましい。これによれば、吐出孔の形状を上記のようにすることにより、小径の吐出孔から押出しやすくすることができると共に、球形又はそれに近い形状の粒状パフを得ることができるので、取り扱い時の流動性や、他の原料との混合のしやすさを良好にすることができる。
【0027】
更に、本発明の粒状パフの製造方法においては、前記押出・切断工程の後、更に水分含有量が0.1~12.0質量%になるまで乾燥させる乾燥工程を含むことが好ましい。これによれば、サクサクとした食感を付与しやすくなると共に、商品の保存性を高めることができる。
【0028】
本発明の更にもう1つは、粒状パフ成形用の2軸エクストルーダの先端部に装着される押出成形用ダイスであって、前記ダイスの吐出孔は、吐出方向に向けて次第に縮径するテーパ部と、該テーパ部の先端から内径0.3~0.9mmをなしてストレート径で伸びる縮径部とを有し、前記縮径部の厚さAと前記縮径部の内径Bとの比A/Bが1.24~3である形状をなすことを特徴とする粒状パフ成形用の押出成形用ダイスを提供するものである。
【0029】
本発明の粒状パフ成形用の押出成形用ダイスにおいては、前記ダイス内端面の吐出孔が形成された領域における単位面積当たりの吐出孔の数が、4.6~19.1個/cmであることが好ましい。これによれば、ダイスの強度を維持しつつ、生産性を高めることができる。
【0030】
また、本発明の粒状パフ成形用の押出成形用ダイスにおいては、前記吐出孔の吐出方向から見た形状が円形、楕円形、小判形のいずれかの形状をなすことが好ましい。小径の吐出孔から押出しやすくすることができると共に、球形又はそれに近い形状の粒状パフを得ることができるので、取り扱い時の流動性や、他の原料との混合のしやすさを良好にすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の粒状パフによれば、粒径が小さいので、他の原料と混合して、押出成形等の方法で成形する際に、破砕されることなく、粒状を保ったまま成形できる。また、小さい粒状パフであっても、サクサクした食感を付与することができる。更に、膨化物を粉砕して製造されたパフに比べて、表面に破断面がなく、比較的滑らかな表面組織を有しているので、他の原料の混合するときの流動性や分散性が良好となり、製造作業性が向上する。更に、吸湿性が低いので、保存安定性に優れると共に、スープ等の液状食品や、菓子生地等の水分を含む生地等に添加しても、サクサク感を保持することができる。
【0032】
本発明の粒状パフの製造方法によれば、前述した作用効果を有する小粒径の粒状パフを、ダイスの吐出孔の詰まりを生じることなく、生産性よく製造することができる。また、ダイレクト製法によるので、原料をシート化して焼成したり、破砕したり、分級する手間がかからないので、生産性が高い。
【0033】
また、本発明の粒状パフ成形用の押出成形用ダイスによれば、強度を保ちつつ、前述した作用効果を有する小粒径の粒状パフを、ダイスの吐出孔の詰まりを生じることなく、押出成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の粒状パフの製造に用いるエクストルーダの一実施形態を示す概略図である。
図2】同エクストルーダに装着されるダイスの正面図である。
図3】同エクストルーダに装着されるダイスの側面図である。
図4】同ダイスの吐出孔の断面図である。
図5】従来のダイスの吐出孔の断面図である。
図6】本発明の粒状パフの製造に用いるエクストルーダのダイスの吐出孔の他の例を示す断面図である。
図7】比較例1,2のパフを示す図であって、Aは等倍図、Bは50倍拡大図、Cは100倍拡大図である。
図8】実施例1,4,5のパフを示す図であって、Aは等倍図、Bは50倍拡大図である。
図9】比較例1、実施例1のパフの水分含有量を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の粒状パフは、ダイレクトパフ製法により製造することができる。この、「ダイレクトパフ製法」とは、原料を押出機に供給して高温高圧状態にして、押出機のダイスの吐出孔から吐出させ、瞬時に膨化させる製法のことをいう。
【0036】
本発明の粒状パフの製造に用いる押出機としては、原料投入口を有するバレル内部に押出スクリューを有し、バレル先端部に吐出孔を有するダイスが装着されたエクストルーダを用いることができる。特に、原料を混合しつつより高圧に加圧できる2軸エクストルーダが好ましく用いられる。
【0037】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の粒状パフの製造に用いるエクストルーダの一実施形態を示す概略図である。
【0038】
まず、本発明の製造方法に用いるエクストルーダについて説明すると、図1に示すように、このエクストルーダ10は、円筒状のバレル20と、このバレル内に配置される押出スクリュー30と、前記バレル20の先端に装着されるダイス40と、更にダイス40の先端に装着されるカッター50とから主に構成されている。ダイス40には、複数の吐出孔41が形成されている。
【0039】
バレル20の周壁上部には、原料供給口21a、水供給口21b、蒸気導入口21cが形成されている。また、バレル20の外周部には、加熱ヒータ22が配置されており、これによって、バレル20内が温度制御されるように構成されている。
【0040】
押出スクリュー30は、バレル20内に配置され、原料を先端のダイス40の方向に押し出すように回転可能に配置されている。また、押出スクリュー30の他端は、押出スクリュー30を回転駆動させるためのモータ31に連結されている。なお、図示していないが、この実施形態では、2本の押出スクリュー30が並列して配置され、2軸エクストルーダとなっている。
【0041】
ダイス40の吐出孔41が開口する外側端面には、吐出孔41から押出されたパフ60を所定長さに切断するカッター50が装着されている。カッター50としては特に限定されず、従来公知のカッター装置が使用できる。また、カッター刃の材質としても特に限定されず、公知のステンレス材料等が使用できる。
【0042】
ダイス40は、例えば図2,3に示すような形状をなしている。このダイス40は、全体として円板状をなし、エクストルーダの内側に配置される内面42の中央には、テーパ状の突部43が形成されている。また、円板状の外周に沿って複数の取付孔44が形成されており、この取付孔44に挿通されるボルトを介して、エクストルーダに装着されるようになっている。
【0043】
内面42の突部43の周りには、周方向に等間隔で3つに区画されて形成された凹部45が設けられており、この凹部45の底面に多数の吐出孔41が所定の間隔で形成されている。この実施形態においては、上記凹部45の底面が、本発明における「ダイス内端面の吐出孔が形成された領域」をなしている。
【0044】
ダイス40のエクストルーダの外側に配置される外面46の中央には、支軸47が突設されている。この支軸47には、吐出孔45の外面に摺接して、押出し物を所定長さで切断して粒状にする、図示しない回転カッターが装着されるようになっている。
【0045】
図4には、本発明のダイスにおいて採用される吐出孔41の一実施形態が示されている。この吐出孔41は、内面42側から吐出方向に向けて伸びる拡径部47と、この拡径部47の先端から吐出方向に向けて次第に縮径するテーパ部48と、該テーパ部48の先端から内径0.3~0.9mmをなしてストレート径で伸びる縮径部49とを有する形状をなしている。
【0046】
この実施形態において、拡径部47は断面円形のストレート径で伸びる形状をなし、テーパ部48は円錐状をなし、縮径部49は断面円形のストレート径で伸びる形状をなしている。
【0047】
ダイス40の吐出孔41の内径は、0.5~0.9mmであることが好ましく、0.7~0.9mmであることがより好ましく、0.8~0.9mmであることが最も好ましい。吐出孔41の内径が0.3mm未満であると、長時間運転時に吐出孔41の詰まりが生じる傾向にあるため好ましくなく、内径が0.9mmを越えると、吐出孔41を通して形成されるパフの径が大きくなり、目的とする小粒径のパフを得ることが難しくなる。
【0048】
また、この吐出孔41は、その吐出方向から見た形状が、円形、楕円形、小判形のいずれかの形状をなすことが好ましい。吐出孔の形状を上記のようにすることにより、小径の吐出孔から押出しやすくすることができると共に、球形又はそれに近い形状の粒状パフを得ることができるので、取り扱い時の流動性や、他の原料との混合のしやすさを良好にすることができる。
【0049】
なお、本発明において、吐出孔41の吐出方向から見た形状が円形以外の場合の内径は、長径に対して直交する方向の最大径(言い換えると短径)と定義する。
【0050】
本発明のダイス40の特徴は、上記縮径部9の厚さAと内径Bとの比A/Bが1.2~1.5とされていることにある。縮径部9の厚さAと内径Bとの比A/Bは1.2~1.4であることがより好ましく、1.2~1.3であることが更に好ましい。縮径部9の厚さAと内径Bとの比A/Bが1.2~1.5とされていることにより、内径0.3~0.9mmという小径の吐出孔であっても、パフ原料の詰まりを生じることなく押出すことができ、小径の粒状パフを生産性よく製造することができる。
【0051】
なお、ダイス40の吐出孔41が形成された領域の厚さ(凹部45の底部の厚さ)Tは、Bの7~10倍であることが好ましく、Bの7~8倍であることがより好ましい。厚さTがBの7~10倍であれば、押出圧力に耐える強度を付与することができる。
【0052】
また、ダイス40の内端面の吐出孔41が形成された領域(この実施形態では凹部45の底面)における単位面積当たりの吐出孔41の数は、4.6~19.1個/cmであることが好ましく、4.9~12.2個/cmであることがより好ましい。
更に、ダイス40の内端面の吐出孔41が形成された領域(この実施形態では凹部45の底面)の面積Wに対する吐出孔41の合計開口面積Sの割合S/Wと、押出し圧力Pとの関係が、下記式(1)で示される範囲にあることが好ましい。
0.135≦P×S/W≦0.408 …(1)
【0053】
ダイス40の内端面の吐出孔41が形成された領域の面積Wと、ノズル孔41の合計開口面積Sと、押出し圧力Pとの関係が、上記式(1)で示される範囲にあることによって、吐出孔41の目詰まりを生じることなく、適度な押出圧力で押出すことができる。
【0054】
なお、図5には、従来の粒状パフ成形用のダイスに採用されていた吐出孔の一例が示されている。この吐出孔51は、テーパ部52と、縮径部51とを有している。そして、縮径部9の厚さAと内径Bとの比A/Bは、1.3~1.6とされていた。ただし、従来の粒状パフ成形用のダイスで、吐出孔の内径が1mm以下というのは存在していなかったため、そのままの形状で吐出孔の内径を1mm以下にすると、縮径部9の厚さAと内径Bとの比A/Bは、1.6以上となり、目詰まりを起こして安定した生産ができないという問題があった。
【0055】
図6には、本発明のダイスに採用される吐出孔の他の例が示されている。この吐出孔41aは、図4の吐出孔41と比べて、テーパ部48aが、軸心に沿って切った断面において、円弧状をなす曲面をなしている点が相違している。このように、本発明において、テーパ部とは、断面円弧状などの曲面をなして次第に縮径する形状を含むものとする。
【0056】
なお、本発明の粒状パフ成形用のダイスは、ダイレクトパフのみでなく、パフ原料をエクストルーダのダイスから押出して粒状のペレットを形成し、このペレットを焼成して膨化させる焙煎パフ成形用のダイスとしても用いることができる。
【0057】
次に、上記のエクストルーダ10を用いた、本発明の粒状パフの製造方法の一実施形態について説明する。
【0058】
(原料供給工程)
まず、穀粉を含有する粒状パフ原料をエクストルーダ10の原料供給口21aに供給する。
【0059】
本発明の粒状パフの原料としては、穀粉と、穀粉の他に、澱粉、豆類、野菜類、塩、モルトエキス、膨化剤、糖質原料、蛋白原料、油脂原料、農水産物、アミノ酸、乳化剤、香辛料、香料、調味料、ビタミン、ミネラル、セルロース等を用いることができる。
【0060】
上記穀粉としては、例えば、小麦、小麦ふすま、大麦、ライ麦、オーツ麦、米、トウモロコシ、蕎麦、ひえ、あわ、ハト麦、大豆等の穀類の粉を用いることができ、これらは、単独又は混合して用いることができる。穀粉は、パフ原料全体に対し固形分換算で、好ましくは50~80質量%、より好ましくは60~70質量%含有する。
【0061】
上記澱粉としては、例えば馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコンスターチ、米澱粉、小麦澱粉等の生澱粉や、これらの生澱粉に酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、α化処理、湿熱処理などを施した加工澱粉等から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。澱粉は、パフ原料全体に対し固形分換算で、好ましくは5~50質量%、より好ましくは20~50質量%、更に好ましくは23~40質量%含有される。澱粉を上記範囲で含有することによって、押出成形時の原料の流動性が高まり、小径のダイスから押出しやすくなるので、小径の粒状パフを製造しやすくなる。
【0062】
粒状パフの原料の粒度は、目開き寸法177μmの80メッシュの篩を通過するものが95%以上となるように調製されているものを用いることが好ましい。上記粒度のパフ原料を用いることにより、前述した小径の吐出孔41から押出しやすくすることができる。
【0063】
また、必要に応じて、エクストルーダ10の水供給口21bから水を供給したり、また、蒸気導入口21cから水蒸気を導入する。水や水蒸気として供給する水の添加量は、パフ原料100質量部に対し、8~40質量部が好ましく、10~18質量部がより好ましく、10.5~15.5質量部が更に好ましい。水の添加量が8質量部未満であるとパフが焦げ付いたり、食感が粉っぽくなる傾向があり、40質量部を越えると膨化が不十分になったり、切断時にカッターにくっついてしまう傾向がある。
【0064】
本発明においては、例えば水供給口21bからの水の供給量、蒸気導入口21cからの水蒸気の導入量は、エクストルーダ10内の原料の温度調整を兼ねて、適宜設定することができる。
【0065】
なお、上記のパフ原料と冷水とをあらかじめ混合してからエクストルーダ10の供給口21aに供給してもよく、パフ原料と冷水とを同時にエクストルーダ10の供給口21aに供給してエクストルーダ10のスクリュー30中で混合を行なうようにしてもよい。
【0066】
(加熱混練工程)
次に、上記の水を含むパフ原料を押出スクリュー30で混練加圧して、加熱混練する。加熱は、バレル20の加熱ヒータ20によってもなされる。加熱混練部となるバレル20内の温度は、40~190℃に設定することが好ましく、60~130℃に設定することがより好ましい。上記温度が40℃未満であるとパフ原料が糊化し難い傾向にあり、190℃を超えるとパフ原料が糖化して茶褐色化し、進行すると焦げあるいは炭化が発生する傾向にある。
【0067】
(押出・切断工程)
続いて、加熱混練したパフ原料をダイス40の吐出孔41から押し出して膨化させる。膨化の条件としては、ダイス40の内面側の温度を好ましくは70~140℃、より好ましくは80~120℃に設定する。70℃未満であると、水分蒸発が不十分なものとなり膨化されにくい傾向にあり、140℃を超えると、パフに焦げ付きが多くなり風味等の品質に影響を与える傾向にあり、好ましくない。また、吐出孔41における押出圧力を、好ましくは4.5~12.0MPa、より好ましくは4.5~8.0MPa、更に好ましくは5.5~7.0MPaとなるように設定する。上記押出圧力が4.5MPa未満であると、膨化が不十分なものとなる傾向にあり、12.0MPaを超えると、得られるパフが膨化し過ぎて、形状が保たれなくなる傾向にあり、好ましくない。なお、温度や圧力については相互に影響を与える要因となるので、組み合わせることで、適宜調整可能である。
【0068】
その後、得られたパフをカッター50で所望の長さに切断して、本発明の粒状パフ60を得ることができる。
【0069】
(乾燥工程)
更に必要に応じて、粒状パフをオーブン等で水分含有量が、好ましくは0.1~12.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%、更に好ましくは0.5~3.0質量%になるまで乾燥させてもよい。水分含有量が0.1質量%未満であると得られるパフが壊れやすくなる傾向にあり、12.0質量%を超えるとパフが湿気た食感になり、保存安定性が悪くなる傾向にある。
【0070】
こうして得られた粒状パフの粒度分布の測定方法について説明すると、目開きが2.8mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.0mm、0.6mmの篩を用い、目開きが大きい篩から使用し、受器の上に置き、これにパフを投入し、両手で持ち、水平面内を一方向に振幅約70mm、1分間約60往復の割合で振とうさせ、篩下は、次に大きい目開きの篩を用いて同様の方法で篩分けをし、各分画におけるパフの質量を測定することで、割合として求めることができる。
【0071】
本発明においては、乾燥工程を経た後の粒状パフについて、目開きが2.8mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.0mm、0.6mmの篩を用い、目開きが大きい篩から使用して篩分けしたときのメディアン径が、前記目開き寸法で0.6~1.7mmの範囲にあることが好ましく、1.0~1.7mmの範囲にあることがより好ましい。なお、穀粉原料として小麦粉を用いる場合には、メディアン径が、前記目開き寸法で1.4~1.7mmの範囲にあることがより好ましく、穀粉原料として大麦粉を用いる場合には、メディアン径が、前記目開き寸法で1.0~1.4mmの範囲にあることが好ましい。
【0072】
メディアン径が上記粒径範囲よりも大きい場合には、他の原料と混合する際に均一に混合しにくくなったり、押出成形などの方法で成形する際に、破砕されたりする不都合が生じやすくなる。また、メディアン径が上記粒径範囲よりも小さい場合には、生産性が悪くなったり、製造が難しくなったりする不都合が生じやすくなる。
【0073】
また、本発明においては、乾燥工程を経た後の粒状パフについて、目開きが2.0mmの篩をパスし、0.6mmの篩をオンするものの割合が、全体で95質量%以上あることが好ましく、97質量%以上あることがより好ましい。これによれば、粒度分布の広がりが小さいので、上記効果をより良好に得ることができる。
【0074】
更に、本発明の粒状パフは、表面に破断面がなく、外観に凹凸は見られず滑らかな表面組織を有している。これは、ダイレクトパフによって成形されていて、表面に破断面がないからである。このことにより、他の原料の混合するときの流動性や分散性が良好となり、製造作業性が向上する。
【0075】
更に、本発明の粒状パフは、かさ比重が83~315g/500ccであることが好ましく、83~145g/500ccであることがより好ましく、83~120g/500ccであることが更に好ましい。かさ比重が83g/500cc未満であると吸湿しやすいパフになる傾向があり、315g/500ccを超えるとパフとしての食感が固くなり過ぎる傾向がある。
【0076】
ここで、本明細書におけるかさ比重とは、粒状パフ500ccあたりの質量を指す。具体的な測定法の一例としては以下の通りである。
(1)粒状パフを、ビーカーの500ccの目盛りまで投入し、振幅機を用いて粒状パフが破損しない程度に30秒振動させる。
(2)投入した粒状パフの上面が500ccの目盛を下回った場合には、500ccの目盛りまで粒状パフを追加して、再度30秒振動させる。そして、振動後に、500ccの目盛りと粒状パフの上面が一致するまで、この作業を繰り返す。
(3)この状態でビーカー毎、粒状パフの重量を測定し、空のビーカーの重量を引いて、粒状パフのみの重量を求め、かさ比重(500ccあたりの粒状パフの重量(g)、単位g/500cc)を算出する。
【0077】
更に、本発明の粒状パフは、水分含有量が0.1~12.0質量%であることが好ましく、0.5~5.0質量%であることが好ましく、0.5~3.0質量%であることがより好ましい。水分含有量が0.1質量%未満であるとパフが壊れやすくなる傾向にあり、12.0質量%を超えると、サクサクした食感に欠けるものとなったり、製品の保存安定性が悪くなる傾向にある。
【0078】
ここで、本明細書における水分含有量は、公知の測定方法で測定することが出来る。例えば、赤外線水分計を用いる方法で測定することもできるし、加熱乾燥前後の生地の質量を測定することによる方法で測定することもできる。
【0079】
なお、本発明の粒状パフは、常温保管時の水分増加量が0.02質量%/日以下であることが好ましく、0.015%/日以下であることがより好ましい。ここで、常温保管とは、特に温度調整や湿度調整をしないで室内で保管することを意味している。
【0080】
また、本発明の粒状パフは、温度20℃、相対湿度86%の雰囲気下で2時間放置後の粒状パフ質量が、放置前の粒状パフ質量を100%としたとき106%以下であることが好ましく、105%以下であることがより好ましい。上記放置後の質量が106%を超えると吸湿性が高くなるので、製品の保存安定性が悪くなり好ましくない。
【0081】
また、本発明の粒状パフの好ましい態様の1つとしては、原料として穀粉及び/又は澱粉を55質量%以上含有し、1粒当たりの破断時の最高圧力の平均値が、好ましくは1.6~5.6N、より好ましくは2.7~5.6Nの範囲であるものが挙げられる。
【0082】
ここで、1粒当たりの破断時の最高圧力は、フォースゲージを使用して、パフ1粒を表面が平坦なプローブで押圧し、パフが破断したときの最高圧力(N)を測定した値を意味する。なお、フォースゲージとしては、例えば「ZTS-100N」(商品名、イマダ社製)を使用することができる。
【0083】
また、本発明の粒状パフの別の好ましい態様としては、原料として、植物性タンパク含有原料を80質量%以上含有し、1粒当たりの破断時の最高圧力の平均値が、好ましくは5~11N、より好ましくは5.3~11Nの範囲であるものが挙げられる。
【0084】
上記において、植物性タンパク含有原料としては、タンパク質を20質量%以上含む植物由来原料であればよく、例えば大豆粉、脱脂大豆粉、濃縮大豆タンパク粉、分離大豆タンパク粉、エンドウ豆粉、エンドウ豆タンパク粉、小麦タンパク粉、米タンパク粉などが挙げられる。
【0085】
後述する実施例に示されるように、本発明の粒状パフは、メディアン径が目開き寸法で0.6~1.7mmの範囲にあるという小粒径のものであるが、粒径が大きいものに比べて、破断時の最高圧力は比較的小さく、粒径が小さくてもサクサク感があることがわかる。
【0086】
このように本発明の粒状パフは、メディアン径が目開き寸法で0.6~1.7mmと小さくても、パフ特有のサクサクした食感を付与することができるため、スナック、チョコレート菓子等の菓子食品、プロテインバー、朝食シリアル等の栄養食品、即席具材,スープ具材等の即席食品、おにぎり、栄養バー等の携帯して喫食することができる携帯食品の他、シリアル、トッピング等の一般的な嗜好食品や調味食品等に利用することができる。特に吸湿性が低いことから、スープ等の液状食品や菓子生地等の水分を含む生地に添加しても、サクサク感を保持できるので好ましく用いられる。
【実施例
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0088】
<1.粒状パフの製造>
表1に示す配合のパフ原料を2軸エクストルーダ(WENGER社製)の供給口に供給した。また、表2に示す割合で、冷水を供給口に供給した。
【0089】
表2の条件に従い、スクリュー内に水蒸気を加えながらパフ原料を加熱混練し、2軸エクストルーダ先端に装着されたダイスの吐出孔より押し出して膨化させ、パフを得た。
【0090】
その後、パフをオーブン(荒川製作所製)を用いて205℃で45秒間乾燥させた。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
<2.粒状パフの評価(1)>
上記で得た実施例1~5のパフと、市販品のパフ(比較例1、2)を用いて、各測定を行った。市販品のパフとしては以下のものを用いた。
【0094】
比較例1:穀粉として小麦粉を用い、蒸練機によって生地を加熱糊化させた後、シート状に圧延し、乾燥させ、これを粉砕し、分級して調製されたペレットをオーブンで膨化させて製造したパフ
比較例2:穀粉としてトウモロコシを用い、蒸練機によって生地を加熱糊化させた後、シート状に圧延し、乾燥させ、これを粉砕し、分級して製造されたペレットをオーブンで膨化させて製造したパフ
(1)粒径の測定
篩としては、目開きが2.8mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.0mm、0.6mmのものを用いた。目開きが大きい篩から使用し、受器の上に置き、これにパフを投入し、両手で持ち、水平面内を一方向に振幅約70mm、1分間約60往復の割合で振とうさせた。篩下は、次に大きい目開きの篩を用いて同様の方法で篩分けをし、各分画におけるパフの質量を測定してメディアン径が入る分画を求め、この分画の目開き寸法の範囲を平均粒径として記載した。この結果を表3に示した。
【0095】
(2)かさ比重の測定
i)比較例1~3と実施例1~5のそれぞれのパフを、500ccのメスシリンダーに投入し、容器底部をテーブルに3回軽くたたきつけた。
ii)投入した粒状パフの上面が500ccの目盛を下回った場合には、500ccの目盛りまで粒状パフを追加して、上面を摺り切り目盛と粒状パフの上面が一致したことを確認した。
iii)この状態でメスシリンダー毎、粒状パフの重量を測定し、空のメスシリンダーの重量を引いて、粒状パフのみの重量を求め、かさ比重(500ccあたりの粒状パフの重量(g)、単位g/500cc)を算出する。メスシリンダーからパフを取り出してかさ比重(500ccあたりのパフの重量(g)、単位g/500cc)を計測した。結果を表3に記載した。
【0096】
(3)水分含有量の測定
赤外線水分計(型番:FD-600、株式会社ケツト科学研究所(kett)製)を用いて水分含有量を測定した。結果を表3に記載した。
【0097】
【表3】

【0098】
(4)物性と食感
比較例1のパフは、図7に示したように、表面が滑らかであって、気泡が大きいものであった。また、図7B、Cに示したように、破断面が見られた。食感は、サクサクして軽かった。
【0099】
比較例2のパフは、図7に示したように、表面が滑らかであって、気泡が大きいものであった。また、図7B、Cに示したように、破断面が見られた。食感は、ザクザクしてやや重かった。
【0100】
実施例1のパフは、図8に示したように、表面に小さい気泡が見られた。図8Bに示したように、破断面は見られなかった。食感は、サクサクして軽かった。
【0101】
図示を省略したが、実施例2のパフも、表面に小さい気泡が見られた。破断面は見られなかった。食感は、サクサクして軽かった。
【0102】
図示を省略したが、実施例3のパフも、表面に小さい気泡が見られた。破断面は見られなかった。食感は、サクサクして軽かった。
【0103】
実施例4のパフは、図8に示したように、表面に小さい気泡が見られた。破断面は見られなかった。食感は、カリカリしてやや重かった。
【0104】
実施例5のパフは、図8に示したように、顆粒状になっていた。破断面は見られなかった。食感は、ザクザクしてやや重く粉っぽかった。
【0105】
このようにダイレクト製法で製造された実施例1~5のパフは、平均粒径が小さいものであった。また、比較例1,2のパフは蒸練粉砕製法で製造されているので、表面に破断面が見られたが、実施例1~5のパフは表面に破断面が見られなかった。更に、比較例1、2のパフは蒸練粉砕製法で製造されているので、生産性が低いものであるが、実施例1~5のパフはダイレクト製法により製造されているので、生産性が高いものであった。
【0106】
<3.粒状パフの評価(2)>
(1)吸湿比較試験(保存環境)
上記同様に、口がバンド締めされたPE袋から取り出した直後の比較例1のパフと、製造直後の実施例1のパフについて、赤外線水分計を用いて水分含有量を測定した。次いで、これらのパフを常温保管して経時的に水分含有量を測定した。
【0107】
結果を表4、及び図4に示した。この結果から、比較例1のパフと比較し、実施例1のパフは吸湿し難く、食感について長期に渡り保持できることがわかった。
【0108】
【表4】
【0109】
また、放置前と、一定期間放置後のそれぞれの粒状パフを食して官能評価を行った。評価は、〇…製造0日目のものと比べ殆ど差がないか多少の変化はみられるが、パフとしての商品価値が保たれている、×…製造0日と比べかなりの変化がみられ、パフとしての商品価値が保たれていない、という基準で行い、4名のパネラーの平均で表示した。
【0110】
結果を表5に示した。この結果から、比較例1のパフは、107日経過後までにおいては、製品として品質が保持できていたが、132日経過後では湿気感があり品質が保たれていないものであった。実施例1のパフは、338日経過後までにおいても、品質が保たれていることがわかった。
【0111】
なお、表4の実験結果から、実施例1の粒状パフの常温保管時の水分増加量は、0.0095質量%/日であった。これに対して、比較例1の粒状パフの常温保管時の水分増加量は、0.0386質量%/日であった。
【0112】
【表5】
【0113】
(2)吸水試験
まず、収容されていた袋から取り出した直後の比較例1のパフと、製造直後の実施例1のパフについて、赤外線水分計を用いて水分含有量を測定した。それぞれ、パフ1gに10gの水を添加した。一定時間経過後に目開き0.5mmの篩に空け、水切りを行い、再び水分含有量を測定した。
【0114】
また、水添加前のパフ質量を100質量%としたときの、添加・水切り後のパフ質量を測定した。
【0115】
また、一定期間放置後のそれぞれの粒状パフを食して官能評価を行った。官能評価は形状と食感について、下記評価基準で行った。
【0116】
(形状)
◎:もとのパフの形状が保たれている。
〇:膨潤しているがパフの形状が保たれている。
△:膨潤しており、パフの半分程度は形状が保たれている。
×:膨潤しており、パフの半分程度は形状が保たれている。
(食感)
◎:もとのパフの食感が殆ど保たれている。
〇:柔らかいがパフの粒感が保たれている。
△:柔らかくパフの粒感は殆どない。
×:パフの粒感は無く溶けてしまう。
結果を表6に示した。
【0117】
【表6】
【0118】
この結果から、比較例1のパフと比較し、実施例1のパフは吸水し難いことがわかった。また、実施例1のパフは、水を添加して1分経過後も、パフの粒感が残っていた。
【0119】
以上の結果から、実施例1のパフは、比較例1のパフと比較して、吸湿し難い傾向にあり、長期に亘って食感を保持できることがわかった。比較例1のパフが蒸練粉砕製法で製造されているのに対して、実施例1のパフはダイレクト製法により製造されていることから、生産性は高いものである。
【0120】
(3)破断強度試験
(実施例6)
下記表7に示す配合で、内径0.7mmの吐出孔から押出すことにより、メディアン径が目開き1.4~1.7mmに入るダイレクトパフを製造した。
【0121】
【表7】
【0122】
(実施例7)
下記表8に示す配合で、内径0.8mmの吐出孔から押出すことにより、メディアン径が目開き1.4~1.7mmに入るダイレクトパフを製造した。
【0123】
【表8】
【0124】
(比較例3)
前記表8に示す配合で、内径1.2mmの吐出孔から押出すことにより、メディアン径が目開き2.8~3.35mmに入るダイレクトパフを製造した。
【0125】
(実施例8)
下記表9に示す配合で、内径0.8mmの吐出孔から押出すことにより、メディアン径が目開き1.4~1.7mmに入るダイレクトパフを製造した。
【0126】
【表9】
【0127】
(比較例4)
前記表9に示す配合で、内径1.2mmの吐出孔から押出すことにより、メディアン径が目開き2.0~2.8mmに入るダイレクトパフを製造した。
【0128】
(破断強度の測定)
実施例6,7,8及び比較例3,4のパフについて、それぞれ無差別に10粒選択し、フォースゲージを用いて、パフ1粒毎に、表面が平坦なプローブで押圧し、パフが破断したときの最高圧力(N)を測定した。10粒の平均値をとって1粒当たりの破断時の最高圧力を求めた。測定装置としては、イマダ製フォースゲージ「ZTS-100N」と計測スタンド「MX2」をセットで使用した。この測定結果を下記表10に示す。
【0129】
【表10】
【0130】
表10に示すように、同様な原料を用いた場合でも、メディアン径の小さい実施例6,7,8の粒状パフは、メディアン径の大きい比較例3,4の粒状パフに比べて破断圧力が小さく、サクサク感に優れていることがわかる。
【0131】
<4.ダイスの吐出孔の形状による試験結果>
(比較例5,6)
図5に示した従来のダイスであって、下記表11に示す吐出孔径を有するものを用い、押出しが可能かどうかをテストした。その結果を表11に示す。なお、比較例5、6の原料配合は、下記表12に示すものである。
【0132】
【表11】
【0133】
【表12】
表11に示すように、ノズル径1.0mmでA/Bが1.6である比較例5は、吐出されなかった。ノズル1.3mmでA/Bが1.3である比較例6は、詰まりが発生しなかった。
【0134】
(実施例9,10,11,12)
図4に示した本発明のダイスであって、下記表13、14に示す吐出孔径を有するものを用い、押出しが可能かどうかをテストした。その結果を表13に示す。なお、実施例9の原料配合は下記表15に示すものであり、実施例10、11の原料配合は表7と同じであり、実施例12の原料配合は表8と同じである。
【0135】
なお、実施例9,10は、エクスとルーダーから粒状のペレットを押出し、このペレットを焙煎してパフにしたものであり、本発明のダイスの実施例として記載したものである。実施例11,12は、押出しと同時に膨化させてパフにしたダイレクトパフの実施例である。
【0136】
【表13】
【0137】
【表14】
【0138】
【表15】
【0139】
表13,14に示すように、A/Bを1.3~1.4に調整した実施例9,10,11,12では、ノズル径を0.7~0.8mmにしても、詰まりは生じなかった。
【0140】
このように、ダイスの吐出孔の形状を、図4,6に示すような、吐出方向に向けて次第に縮径するテーパ部と、該テーパ部の先端から内径0.3~0.9mmをなしてストレート径で伸びる縮径部とを有するものとし、縮径部の厚さAと縮径部の内径Bとの比A/Bが1.2~1.5である形状とすることにより、ノズル径を0.9mm以下としても押出しが可能となり、それによって本発明で規定する粒径の粒状パフを製造できることがわかる。
【符号の説明】
【0141】
10 エクストルーダ
20 バレル
21a、21b、21c 供給口
22 加熱ヒータ
30 押出スクリュー
31 モータ
40 ダイス
41,41a 吐出孔
47 拡径部
48,48a テーパ部
49 縮径部
50 カッター
60 パフ
A 縮径部の厚さ
B 縮径部の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9