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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】水素水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
C02F1/461 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020090527
(22)【出願日】2020-05-25
(62)【分割の表示】P 2017196157の分割
【原出願日】2017-10-06
(65)【公開番号】P2020121314
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593011450
【氏名又は名称】株式会社コスモスエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 三夫
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-220389(JP,A)
【文献】特開2012-161795(JP,A)
【文献】特開2011-131118(JP,A)
【文献】特開2004-033963(JP,A)
【文献】特開平06-254567(JP,A)
【文献】特開2004-131746(JP,A)
【文献】特開2003-236543(JP,A)
【文献】特開2007-307517(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077992(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状の電極板と、
上記電極板を、連続する4枚を一組とし、且つ所定間隔をおいて8枚を互いに向い合せに配置し、これら電極板の並びの一方側に水の注入口を、また他方側に水の排出口をそれぞれ設けた電解槽と、
上記各電極板に電圧を印加し、隣り合う電極板間及び他の電極板を介在させた電極板間に電流を流して電気分解を行わせる電源回路部と、を有し、
上記電源回路部に、上記4枚を一組とする各組に電気を供給する出力回路を、各組毎に個別に設け、
上記電源回路部は、各一組の上記電極板の内、他の電極板を介在させた特定の電極板間に交流電圧を印加し、且つ当該特定の電極板以外の電極板には直流電圧を印加し、電気分解を行わせることとし、
上記電解槽を筐体内に収め、上記電解槽の上部に、下部側に上記8枚の電極板を取り付けた蓋部材を配置し、当該蓋部材を上記電解槽の縁部に固定し、かつ上記電極板を電解槽の中央部寄りにまとめて配置し、上記電極板と上記電解槽の周囲の壁面との間には、水の流通が可能な隙間を形成し、上記蓋部材により上記電解槽の内部を密閉し、
上記筐体における水の吸入口と上記電解槽の上記注入口との間の流路にポンプを配置し、上記ポンプの駆動により水を上記注入口へ向けて流通させ、
上記注入口から給水される水により上記電解槽内部の水が押し出され、これを上記排出口から排出し、当該排出される水の流量を9~12リットル/分とし、併せて、
上記注入口を上記電解槽の下部近傍に設けて水を注入する一方、上記排出口を上記電解槽の上部近傍に設けて、上記注入された水を上記注入口から上記排出口方向へ移動させるとともに、下方から上方へと移動させ、この移動する水を上記電極板により電気分解し、水中に水素を含有する水溶液を生成し、これを上記排出口から排出することを特徴とする水素水生成装置。
【請求項2】
網状の電極板と、
上記電極板を、連続する4枚を一組とし、且つ所定間隔をおいて8枚を互いに向い合せに配置し、これら電極板の並びの一方側に水の注入口を、また他方側に水の排出口をそれぞれ設けた電解槽と、
上記各電極板に電圧を印加し、隣り合う電極板間及び他の電極板を介在させた電極板間に電流を流して電気分解を行わせる電源回路部と、を有し、
上記電源回路部に、上記4枚を一組とする各組に電気を供給する出力回路を、各組毎に個別に設け、
隣り合う上記電極板間の間隔を5~8mmとし、
上記電源回路部は、各一組の上記電極板の内、他の電極板を介在させた特定の電極板間に交流電圧を印加し、且つ当該特定の電極板以外の電極板には直流電圧を印加する形態とし、
上記組毎に設けた出力回路について、直流電源としての電気信号を印加する回路を接続して一体化し、前記組同士の間の隣り合う電極の内、一方側には交流電圧を印加する電極が配置される形態の場合には、他方側には直流電圧を印加する電極を配置する形態として、電気分解を行わせ、
上記注入口を上記電解槽の下部近傍に設けて水を注入する一方、上記排出口を上記電解槽の上部近傍に設けて、上記注入された水を上記注入口から上記排出口方向へ移動させるとともに、下方から上方へと移動させ、この移動する水を上記電極板により電気分解し、水中に水素を含有する水溶液を生成し、これを上記排出口から排出することを特徴とする水素水生成装置。
【請求項3】
上記電解槽を筐体内に収め、上記電解槽の上部に、下部側に上記8枚の電極板を取り付けた蓋部材を配置し、当該蓋部材を上記電解槽の縁部に固定し、かつ上記電極板を電解槽の中央部寄りにまとめて配置し、上記電極板と上記電解槽の周囲の壁面との間には、水の流通が可能な隙間を形成し、上記蓋部材により上記電解槽の内部を密閉し、
上記筐体における水の吸入口と上記電解槽の上記注入口との間の流路にポンプを配置し、上記ポンプの駆動により水を上記注入口へ向けて流通させ、
上記給水される水により上記電解槽内部の水が押し出され、これを上記排出口から排出し、当該排出される水の流量を9~12リットル/分とすることを特徴とする請求項に記載の水素水生成装置。
【請求項4】
上記排出口と連通する切替弁を設け、上記排出口から排出された水溶液の濾過器を通過する流路と、この濾過器を通過しない流路とを切り替え可能としたことを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の水素水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の電気分解により水素水を生成する水素水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解槽の水中に電極を配置し、電気分解により水素を含有する水素水を生成する装置が知られている。例えば特許文献1に記載の電解水生成装置は、水を電気分解する電解部と、この電解部に電力を供給する電源部とを備え、電解部は互いに並列に接続された電解槽を含むことから、野菜栽培等のように大量の電解還元水が必要な場合であっても、汎用の電解槽を複数備えた電解水生成装置を利用して安価に大量の電解還元水を生成できるというものである。
【0003】
また、文献2に記載の水素水製造装置は、水を電気分解して水素と酸素とを発生させる水電気分解装置と、電気分解により生成された電気分解水中に水素及び酸素のナノバブルを発生させるナノバブル発生装置と、を備え、このナノバブル発生装置は、電気分解水を貯留するとともに密閉された耐圧容器で形成された液体貯留槽と、電気分解により発生した気体を液体貯留槽内の電気分解水中に高圧で放出する気体放出手段等、を備えるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-131963号公報
【文献】特開2015-150512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、上記特許文献1の電解水生成装置は、電解部に複数(ここでは3つ)の電解槽を設けて、大量の電解還元水を生成することとしているが、より多くの電解水を得るためにはさらに電解槽の数を増やす必要があり、このため装置が大型化し、また場所の確保などで拡張性、汎用性等に欠けるという問題がある。
また、特許文献2の水素水製造装置は、水電気分解装置とナノバブル発生装置とを備え、また耐圧容器等を用いること等から装置が複雑化し、また経済性にも欠けるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、効率的に大量の水素水を生成し、また機能性、経済性にも優れた水素水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る水素水生成装置は図1等に示すように、網状の電極板6と、上記電極板6を、所定間隔をおいて3枚以上互いに向い合せに配置し、これら電極板6の並びの一方側に水の注入口30を、また他方側に水の排出口32をそれぞれ設けた電解槽4と、上記各電極板6に電圧を印加し、隣り合う電極板6間及び他の電極板6を介在させた電極板6間に電流を流して電気分解を行わせる電源回路部11と、を有し、上記電解槽4の上記注入口30から水を注入し、この水を上記注入口30側から上記排出口32側に移動させ、この移動する水を上記電極板6により電気分解し、水中に水素を含有する水溶液を生成し、これを上記排出口32から排出する構成である。
【0008】
本発明に係る水素水生成装置は、上記電極板6の数を、4枚以上16枚以下の範囲とした構成である。
【0009】
本発明に係る水素水生成装置の上記電源回路部11は、上記電極板6の内の特定の電極板6間に交流電圧を印加し、且つ当該特定の電極板6以外の電極板6には直流電圧を印加し、電気分解を行わせる構成である。
【0010】
本発明に係る水素水生成装置の上記電源回路部11は、上記電極板6の内、他の電極板6を介在させた特定の電極板6間に交流電圧を印加し、且つ当該特定の電極板6以外の電極板6には直流電圧を印加し、この直流電圧の極性を定期的に切り替え、電気分解を行わせる構成である。
【0011】
本発明に係る水素水生成装置の上記電源回路部11は、上記電極板6を、連続する4枚を一組とし、各一組の上記電極板6の内、他の電極板6を介在させた特定の電極板6間に交流電圧を印加し、且つ当該特定の電極板6以外の電極板6(上記他の電極板6を含む)には直流電圧を印加し、電気分解を行わせる構成である。
ここで、例えば、低い直流電圧(グラウンド)を電極板6に印加した場合、この(全ての)電極板6に向けて、交流電圧の高い時点の電位(V+)が印加された特定の電極板6から電流(直流)を流すようにする。
また、例えば直流電圧の極性を切り替え、高い直流電圧(V+)を電極板6に印加した場合、この(全ての)電極板から、交流電圧の低い電位(グラウンド)が印加された時点の特定の電極板に向けて電流(直流)を流すようにする。
【0012】
本発明に係る水素水生成装置は、上記注入口30を上記電解槽4の下部近傍に設けて水を注入する一方、上記排出口32を上記電解槽4の上部近傍に設けて、上記注入された水を注入口30から排出口32方向へ移動させるとともに、下方から上方へと移動させ、この移動する水を上記各電極板6により電気分解し、上記排出口32から排出する構成である。
【0013】
本発明に係る水素水生成装置は、上記排出口32と連通する切替弁を設け、上記排出口32から排出された水溶液の濾過器12を通過する流路と、この濾過器12を通過しない流路とを切り換え可能とした構成である。
【0014】
本発明に係る水素水生成装置は、上記電解槽4の排出口32から排出された水溶液を溜める貯留タンク16と、この貯留タンク16内の水溶液を吸引し、これを上記電解槽4へ流通させるポンプ14と、を有し、上記ポンプ14により、上記電解槽4で電気分解された水溶液を上記貯留タンク16へ供給する一方、上記貯留タンク16内の水溶液を吸引して上記電解槽4に送り、これを再度電気分解する循環流路62を駆動させ、水溶液中の水素濃度を高める構成である。
ここで、水素水生成装置の運転状況を管理する制御部10を設け、この制御部10に上記循環流路62の循環時間として、ポンプ14を稼働させて循環流路を流通させる時間を登録することで、この循環時間により水素濃度の調節を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水素水生成装置によれば、網状の電極板を3枚以上互いに向い合せに配置し、一方側に注入口を他方側に排出口をそれぞれ設けた電解槽、及び隣り合う電極板間等に電流を流して電気分解を行わせる電源回路部を有し、電解槽を移動する水を電極板により電気分解し、水素を含有する水溶液を生成する構成を採用したから、効率的に水素を含有する水溶液(水素水)を大量に得ることができ、また装置の小型化が図れ、経済的にも優れるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係る水素水生成装置によれば、電源回路部は、特定の電極板間に交流電圧を、これ以外の電極板には直流電圧を印加し、電気分解を行わせる構成を採用したから、電極板間で効率的に電気分解が行なえて、電解槽等の装置の小型化が図れ、機能的にも優れた水素水生成装置が得られるという効果がある。
【0017】
本発明に係る水素水生成装置によれば、電源回路部は、他の電極板を介在させた特定の電極板間に交流電圧を、これ以外の電極板には直流電圧を印加し、この直流電圧の極性を定期的に切り替え、電気分解を行わせる構成としたから、全ての電極板間で効率的に電気分解が行えることから、電解槽等の装置の小型化が図れ、また電極板の付着物(無機物質等)も除去され、機能的にも優れた水素水生成装置が得られるという効果がある。
【0018】
本発明に係る水素水生成装置によれば、4枚一組の電極板の内、他の電極板を介在させた特定の電極板6間に交流電圧を、これ以外の電極板には直流電圧を印加し、電気分解を行わせる構成としたから、隣り合う全ての電極板間で電流(直流)を流すことができ、効率よく電気分解が行える。また4枚一組の組み合わせでは、電極板間で交流電圧の印加と直流電圧の印加とが交互となり、他の組の電極板6との組同士間でも電流を流して電気分解を行うことが出来て効率がよい。
【0019】
本発明に係る水素水生成装置によれば、注入口を電解槽の下部近傍に設ける一方、排出口を電解槽の上部近傍に設け、注入され下方から上方へ移動する水を各電極板により電気分解する構成を採用したから、電解槽内の水の移動が淀みなく満遍に行えて良好に電気分解が行なえ、また水の滞留も防止できるという効果がある。
【0020】
本発明に係る水素水生成装置によれば、排出口と連通する切替弁を設け、濾過器を通過する流路と通過しない流路とを切り替え可能としたから、必要に応じ選択的に濾過器による塩素系物質等の除去が行えるという効果がある。
【0021】
本発明に係る水素水生成装置によれば、ポンプにより、電解槽で電気分解された水溶液を貯留タンクへ供給する一方、貯留タンク内の水溶液を吸引して電解槽に送り、これを再度電気分解する循環流路を駆動させる構成を採用したから、容易に高濃度の水溶液(水素水)を得ることができ、また水溶液中の水素濃度の管理が容易であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係り、水素水生成装置の内部構造を正面からみた説明図である。
図2】実施の形態に係り、水素水生成装置の内部構造を上からみた説明図である。
図3】実施の形態に係り、水素水生成装置の筐体を正面からみた外観図である。
図4】水素水生成装置の電源回路部の一部回路図及び電極板との接続形態を示す図である。
図5】電源回路部の各部における電圧の波形を示す図である。
図6】電源回路部と電極板(8枚中の4枚(一組))との接続及び電流(直流、交流)の流れを示す第一の図である。
図7】電源回路部と電極板(8枚中の4枚(一組))との接続及び電流(直流、交流)の流れを示す第二の図である。
図8】実施の形態に係り、水素水生成装置に貯留タンクを加えた循環流路の構成を示す図である。
図9】水素水生成装置を用いて行なった試験1の結果を示す図(グラフ)である。
図10】水素水生成装置を用いて行なった試験2の結果を示す図(グラフ)である。
図11】水素水生成装置を用いて行なった試験3の結果を示す図(グラフ)である。
図12】水素水生成装置により生成された水溶液中の粒子(気泡)径及び粒子濃度を示す図(グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る水素水生成装置の実施の形態を説明する。
図1,2は、実施の形態に係る水素水生成装置2を示すものである。
この水素水生成装置2は、電解槽4、この電解槽4内に配置され水を電気分解する電極板6、制御盤8、濾過器12、ポンプ14、及び貯留タンク16等を有する。
また、図3に示すように制御盤8には、操作パネル9が設けられ、装置の制御及び運転管理等を行う制御部10、及び上記電極板6に電気を供給する電源回路部11等が内蔵されている。
【0024】
この水素水生成装置2は、上記貯留タンク16を除いた他の電解槽4、電極板6、濾過器12、ポンプ14等の器具は筐体18内に収納され、また制御盤8は筐体18の正面部に取り付けられている。上記電気分解には、水道水、井戸水、及び自然水等の水が用いられる。
ここでは、単に水といった場合には、電気分解前の水、及び電気分解後の水の何れかをさし、また電気分解後の、水素等を含みまた溶存させた水溶液を、水素水又は電解水という。
【0025】
上記筐体18は箱型であり、筐体18の正面部には制御盤8が取り付けられ、筐体18の正面部の右上部には、水の吸入口20、及び水の吐出口22が設けられている。
また、筐体18には、電解槽4内の不要な水を排水する排水コック26、及びポンプ14内の不要な水を抜く水抜コック28が設けられている。通常、装置の運転を行わないときには、上記両コックは開けておき、運転時には閉めておく。
【0026】
上記電解槽4は、ステンレス鋼製或いは合成樹脂製等からなる直方体状の容器である。この電解槽4は、平面が矩形状(又は長方形状)であり、電解槽4の向い合う壁面部の一方側(正面側)には注入口30が設けられ、また他方側(背面側)には排出口32が設けられている。この電解槽4の注入口30は、パイプ等の流路及びポンプ14を介して筐体18の吸入口20と連結されている。
【0027】
上記注入口30は電解槽4の底面部34近傍に設けられ、また上記排出口32は電解槽4の上部36近傍に設けられており、このため排出口32は注入口30からは斜め上方に位置する。また、電解槽4の上側には、蓋部材38が取り付けられ、この蓋部材38の下部側には8枚の電極板6が取り付けられている。蓋部材38により、電解槽4の上部が密閉、閉塞されている。
【0028】
上記電極板6は、金属材料を網目状(縦横形状或いは斜め交差形状)に形成した網体からなり、全体が矩形状又は長方形状(例えば縦260mm・横54.5mm)の板材である。
この電極板6の金属材料としては、ステンレス、チタン、アルミニウム、或いは銅等を用いることができる。特に、ステンレス、チタン等は耐食性、耐久性に優れて良好である。
ここでは、電極板6はステンレス鋼を使用し、目が菱形(パンチングメタル)の網状のラス材を用いている。また、電極板6には、網体に白金、或いは金メッキを施したものを使用している。
【0029】
電極板6を網体としたのは、水の流通を良くし、また表面積を大きくして電気分解の反応効果を高めるためである。電極板6をステンレス(例えばSUS316等)としたのは、耐食性、耐孔食性に優れるからである。
また、電極板6の網体に白金メッキ或いは金メッキを施すことで、何れも導電率が高いため電気分解の反応が良く、また他の物質と化合し難く良好である。
【0030】
上記電極板6は、所定の間隔をおいて8枚を互いに向い合せ、かつ面同士を平行に配置している。ここでは、隣り合う電極板6同士の間隔(電極ピッチ)を一定の7mmとしている。この間隔は、印加電圧にもよるが3~10mm、好ましくは5~8mmの範囲が電気分解の効率がよい。
各電極板6は、その上部が上記蓋部材38の下面部から上向きに取り付けられ、この蓋部材38の上面部には各電極板6の端子7が設けられている。
【0031】
なお、電極板6の数は、交流及び直流の電圧印加形態、及び隣り合う電極板6同士で効果的に電気分解を行わせるため3枚以上が良い。また、より多量の電気分解を効率的に行わせるためには、電極板6の数は4枚以上、或いは8枚以上とするのが好ましい。なお、電源回路部11の電気供給量或いは電極板6の管理等の点から、電極板6の数は多くても16枚程度が実用的である。
【0032】
このように、電極板6の数は自由に増加することができ、このため、所望する大量の水素水量及び水素濃度を得るための設計を行う場合には、電極板6の枚数或いは面積等を変えることにより容易に対応できる。
また一つの電解槽4内に、全て(ここでは8枚)の電極板6を収容する形態であるため、電解槽4等、装置の小型化が図れ、また機能的にも優れる。
【0033】
電解槽4の上部に、下部側に8枚の電極板6を取り付けた蓋部材38を配置する。この状態で、電解槽4の上面部が蓋部材38で被われ、ネジ等で蓋部材38を電解槽4の縁部に固定すると、蓋部材38により電解槽4は密閉される。
また、各電極板6を電解槽4の内部に収納すると、8枚の電極板6は互いに向い合せの状態で配置され、これら電極板6の並びの一方側の近傍に注入口30が設けられ、また他方側に排出口32が設けられた状態となる。この注入口30は、電解槽4の底面部34の上部近傍に形成されており、一方、各電極板6の下部と電解槽4の底面部34との間には少し隙間が設けられ、この隙間を注入口30から注入された水が移動可能である。
【0034】
このため、注入された水が電極板6の周辺を移動し、この移動とともに電気分解が行なえる。また、電解槽4内の水の移動(下方の注入口30から上方の排出口32)に伴って、電気分解で生成された気泡状の粒子(ナノバブル)の上昇移動(比重の関係による)も発生し、このため上方の排出口32への移動が淀みなく良好に行え、また水の滞留も防止できる。また、上記水の移動とともに満遍なく均一に水の電気分解が行なえ、このため比較的大量の水の移動が可能となる。このような電解槽4の構造(水の移動形態等)と相まって、電極板6の数の増設等により、大量の電解水として水素水を生産することが可能となる。
【0035】
上記電極板6は、全8枚を電解槽4の中央部寄りにまとめて配置している。このため、電解槽4の開口部(通常は蓋部材38で閉塞)を中央に配置でき、電極板6の手入れ及び交換が容易でメンテナンスがし易い。
また、上記電極板6の配置により、注入口30が設けられた電解槽4の前側の壁部と電極板6(最前部)との間、及び排出口32が設けられた後側の壁部と電極板6(最後部)との間、にそれぞれ隙間が形成される。
このため、電解槽4の中央部に配置された電極板6と電解槽4の周囲の壁面との間には、水の流通が可能な隙間(空間部)が形成され、水の自由な流通が可能となって水の移動が良好に行われ、滞留等の防止にもなる。
【0036】
上記制御盤8内には、マイクロコンピューター(CPU)を中心に構成された電子回路基板等が内蔵され、この基板には、制御部10及び電源回路部11などが組み込まれている。また、制御盤8の操作パネル9には、操作ボタン、LED表示器、表示ランプ等が取り付けられている。
【0037】
上記制御部10は、主に、装置の運転時刻等の設定管理、及び運転状況の管理等を行う。また、制御部10及び電源回路部11には、高周波発信部及び変調部が設けられ、ソフトウエアにより変調等を実現している。この場合、例えば高周波の発信周波数約25kHzの基礎周波数に、変動幅・2~8kHz、好ましくは・3~5kHzの周波数変調(FM)を行なう。そして、制御部10で生成された高周波信号が電源回路部11に出力され電気分解用の電力を発生させる。
【0038】
上記高周波の基礎(中心)周波数は、ここでは25kHzの高周波を使用しているが、他にこの周波数としては、15kHzから35kHz、好ましくは20kHzから30kHzの範囲が適当である。このような高周波の周波数の範囲において、水素を含有する気泡状(ナノバブル)の水溶液(水素水)が多く得られる。また、この水溶液には、同時に酸素を含有する気泡状(ナノバブル)の酸素水も含まれる。
【0039】
図4の電源回路部11に関する電気接続形態に示すように、電源回路部11では、制御部10からの高周波信号(SG1及びSG2)に基づき、この信号を増幅して水の電気分解が可能な電力を発生させる。
そして、電解槽4内の8枚の電極板6(第1~第8)の各端子7には、電源回路部11からの配線が接続され、電源回路部11から、各電極板(第1~第8)に交流及び直流の電気が印加される。
【0040】
上記電源回路部11は、トランジスター回路等で構成された第1出力回路44及び第2出力回路46からなり、これら両出力回路の構成は同じである(第2出力回路の詳細は省略)。
上記第1及び第2の2つの出力回路を設けたのは、十分な電力を確保し、電気分解に必要な電力を全電極板6(第1~第8)に出力し供給するためである。このため、第1出力回路44は第1~第4の電極板6に電気を供給し、第2出力回路は第5~第8の電極板6に電気を供給する。
【0041】
電源回路部11では、電気分解に必要な交流(パルス状波形の交互方向流)、及び直流(一方向流)の電力を出力する。
そして上記第1出力回路44からは、パルス状の電気信号AC1及びAC2が出力され、上記第2出力回路46からは、パルス状の電気信号AC3及びAC4が出力される。また、直流電源として、電気信号OUTには、GND(グラウンド)又は正電位(V+)の電圧が加えられている。この正電位(V+)は、AC1~AC4(V+)と同電位である。
【0042】
図5に示すように、上記高周波信号(SG1及びSG2)はパルス状波形を有する信号である。信号AC1(GND~V+の電位)は、パルス状の信号であり、信号AC2(V+~GNDの電位)についても、パルス状の信号である。また、信号AC1-AC2(V+~V-の電位)は、パルス状波形の高周波交流である。
【0043】
ここで、図4に基づき、電源回路部11から電極板6に印加される電気の接続形態について説明する。
第1の電極板6にはAC1が、また第3の電極板6にはAC2がそれぞれ接続(印加)され、また第5の電極板6にはAC3が、第7の電極板6にはAC4がそれぞれ接続される。一方、第2、第4、第6及び第8の電極板6には、OUT信号が接続(印加)される。
このOUT信号は、GND(グラウンド)レベルの電位の時と、V+(正電位)と同電位の時とがあり、一定周期ごとにOUT信号はGNDとV+に切替えられる。この周期は、数分、例えば1分~3分程度がよく、ここでは2分としている。この周期の切り替えにより、電極板6の極性が変化して電気の流れが切り替わり、電極板6に付着する無機物資(カルシウム、マグネシウム)等を除去することができる。
【0044】
そして、第1、第3、第5及び第7の各電極板6には、SG1、SG2に基づきV+と同電位に増幅(電源回路部11により)された信号AC1~AC4が印加される。
電源回路部11からの信号は、ここでは25kHz程度を基準の周波数とし、これにランダムに周波数が変化する周波数変調が加えられている。この周波数変調は、制御部10においてソフトウエア(プログラム)により行なわれる。
【0045】
なお、第1出力回路44と第2出力回路46とは同等の回路であり、また電極板6への接続形態も同じであるため、ここでは第1出力回路44と第1~第4の電極板6との接続形態について説明し、第2出力回路に関するものは説明を省略する。
ここで、上記AC1とAC2との信号の基本特性(波形)は図5のタイムチャートのようになる。これらAC1とAC2とは、ON(V+)、OFF(GND)が反転する。また、AC1-AC2間においては、交流(高周波)波形となるよう制御されている。
【0046】
図6(a)(b)は、OUT信号がGNDの場合の、第1~第4の電極板6に印加される電気(交流、直流)の流れを示したものである。
ここで、OUT信号がGNDと同電位の信号を出力しており、AC1がON(V+)、AC2がOFF(GND)の時は同図(a)のように電流が流れる。また、OUT信号がGNDと同電位であり、AC1がOFF(GND)、AC2がON(V+)の時は同図(b)のように電流が流れる。
【0047】
即ち、第1の電極板6と第3の電極板6との間は、電流の方向が常に変わる交流(高周波)となる。また、第1の電極板6と第3の電極板6は、第2及び第4の電極板6に対しては、電流の方向が一定の直流(パルス状波形)としての電流が流れる。
このように、第1の電極板6と第3の電極板6とは陽極として、第2の電極板6及び第4の電極板6は陰極としてそれぞれ機能する。
【0048】
図7(c)(d)は、OUT信号がV+の場合の、第1~第4の電極板6に印加される電気(交流、直流)の流れを示したものである。
ここで、OUT信号がV+と同電位の信号を出力しており、AC1がON(V+)、AC2がOFF(GND)の時は、同図(c)のように電流が流れる。また、OUT信号がV+と同電位であり、AC1がOFF(GND)、AC2がON(V+)の時は、同図(d)のように電流が流れる。
【0049】
即ち、第1の電極板6と第3の電極板6との間は、上記のOUT信号がGNDの時と同様に、電流の方向が常に変わる交流となる。また、第2の電極板6及び第4の電極板6からは、第1の電極板6と第3の電極板6に対して、電流の方向が一定の直流の電流が流れる。
このように、第1の電極板6と第3の電極板6は陰極として、第2の電極板6及び第4の電極板6は陽極としてそれぞれ機能する。
【0050】
したがって、図6(a)(b)の状態から図7(c)(d)の状態へと電気の流れが切り替わるときは、直流電源の極性の切り替えにより逆方向に電流が流れる。この極性(直流)の切り替えにより、全ての(4枚)の電極板6について、陽極と陰極との切り替えが交互に行われる。このように、電極板6に印加する直流の極性を交互に切り替えるのは、電極板6に付着する無機化合物等を除去するためである。
また上記のように、第1の電極板6には交流、第2の電極板6には直流、第3の電極板6には交流、また第4の電極板6には直流と、交互に交流と直流を入れ変えた接続の配線としたのは、バランス良く、且つ効率的に直流を流して、各電極板6で良好に電気分解を行なわせるためである。
【0051】
次に、第1出力回路44に係る第4の電極板6と、第2出力回路46に係る第5の電極板6との間の、両出力回路に跨る第4の電極板6と第5の電極板6間の電気の流れについて説明する。
ここで、第4の電極板6にはOUT信号が印加され、第5の電極板6は第2出力回路46からAC3が印加されている。また、第1出力回路44のOUT信号と、第2出力回路46とOUT信号とは、一体化(接続)されている。
また、第5の電極板6からみれば、第4の電極板6は第6の電極板6と等価(接続)であるため、OUT信号がGNDの時には第5の電極板6から第4の電極板6へと直流が流れ、OUT信号がV+の時には第4の電極板6から第5の電極板6へと直流が流れる。
このため、第1~第8の電極板6について、隣接するすべての電極板6間には電流が流れ、電気分解が行われることになる。
【0052】
上記電極板6間での電気分解により、陰極では水素(ガス)、また陽極では酸素(ガス)が発生する。この水素(ガス)は、一部が分子状態(H2)又他が原子状態(H)で水中に溶け込んでいるものと考えられる。上記酸素(ガス)は、一部が水中に溶け込み、飽和状態になれば大気中に放出される。また、酸素に比べて水素が増加すること等から、酸化還元電位が低下し、還元電位になるものと考えられる。
【0053】
さらに、交流として、上記基準周波数に周波数変調を加えたことから、周波数の変動がもたらされ、この変動が急激な変動点に達したときに衝撃波が発生し、この時に電気分解により発生した水素(ガス)及び酸素(ガス)の気泡が微小化され、気泡の径が微細となりナノ単位のナノバブルにまで小さくなると考えている。水素の気泡が、ナノバブル程度に小さくなると水中での滞留時間が長くなる。
【0054】
このように、電解槽4では、電極板6(第1~第8)を用いた水の電気分解により、水素(ガス)及び酸素(ガス)等を含有し溶存する水溶液として、所謂、水素水(ナノバブル水素水)が生成される。
また、電気信号OUTの切り替えにより、直流の極性を反転させることで、電極板6に付着する無機物質等を除去することができ、電極板の機能が持続し耐久性にも優れる。
【0055】
上記のように、ここでは第1の電極板6と第3の電極板6との間に交流電圧を印加することとし、上記交流電圧を印加した電極板6(第1又は第3)とこれ以外の電極板6(第2又は第4)に、電流を流して電気分解を行う。
なお、他に、第2の電極板6と第4の電極板6との間に交流電圧を印加することとしてもよく、この場合、上記交流電圧を印加した電極板6(第2又は第4)と、これ以外の電極板6(第1又は第3)に、電流を流して電気分解を行う。
【0056】
このように、特にここでは、電極板6を連続する4枚(第1~第4の電極板6)を一組とし、各一組の上記電極板6の内、他の電極板6(例えば第2の電極板6)を介在させた特定の電極板6間(例えば第1と第3の電極板6間)に交流電圧を印加し、且つ当該特定の電極板6以外の電極板6(第2と第4の電極板6)には直流電圧を印加する。
そして、特定の電極板6とこれ以外の電極板6間(例えば第1と第2の電極板6間、第1と第4の電極板6間、第3と第2の電極板6間、第3と第4の電極板間)には直流電流を流し、電気分解を行わせる。この場合、各組の電極板に対する交流電圧、及び直流電圧等の印加形態は、何れの組も同一形態としてもよい。
【0057】
上記電極板6が4枚一組の組み合せでは、上記のように隣り合う全ての電極板6間で電流(直流)を流すことができ、効率よく電気分解が行える。また、上記4枚一組の組み合わせでは、交流電圧の印加と直流電圧の印加とが交互となり、他の組の電極板6との組同士間でも電流を流して電気分解を行うことが出来て効率がよい。上記組の数は一組でもよいが、二組以上とするとより効率化が図れる。
要は、各電極板6に交流電圧の印加と直流電圧の印加をバランス良く行い、全ての電極板6において効率的に電気分解が行われるような接続形態を採用する。そして、少なくとも隣り合う電極板6間では電気分解が行えるよう配線を行なうことで、電気分解の効率化が図れる。
【0058】
なお、ここでは電極板6を8枚用いたが、これは3枚以上であれば何枚でも可能である。例えば電極板6が3枚の場合は、上記第1~第3の電極板の配線接続により電気分解を行い、これと同様に、電極板6の数により上記配線に準じた配線接続により電気分解を行なえばよい。
また、電気分解の効率及び電源回路部11の電力供給能力を考慮した場合、電極板6の数は、この実施の形態に準じた枚数として4枚、8枚、12枚或いは16枚等と4の倍数としてもよい。
【0059】
上記濾過器12は、底面を有する円筒状の容器48の内部に、円筒状の筒体50を同心円状に配置し、この容器48と筒体50との間に円環状の空間部52を形成している。そして、筒体50には下部寄りの周囲に複数の孔部51が設けられている。
上記容器48の上部近傍には、電解水の流入孔54が設けられており、また容器48の上部には蓋体が配置され空間部52は閉塞されている。
【0060】
上記空間部52には、カーボンフィルター等の濾過材が配置されており、筒体50の上部には流出孔55が設けられている。
このため、濾過器12の流入孔54から流入した水溶液は、空間部52を下方に移動するが、このときカーボンフルターにより濾過が行われ、主に次亜塩素酸、塩素等の塩素系物質が除去される。さらに水溶液は、空間部52から孔部51を通過して筒体50の内部へと移動し、さらに筒体50内を上昇して流出孔55から排出される。
【0061】
図8は、水素水生成装置2の流路に貯留タンク16を加え、電解槽4で電気分解された水溶液を、貯留タンク16を経由して再度電解槽4に送る循環流路62を示したものである。そして、ポンプ14の駆動により、貯留タンク16内の水溶液を吸引して電解槽4に送り、ここで電気分解された水溶液を貯留タンク16へ供給し、これを再度電解槽4に送り電気分解させる。このように、循環流路62に電気分解された水溶液を流通させることで、水溶液中の水素濃度を高める。
【0062】
また、電解槽4の排出口32には、二方向に枝分れした流路が接続され、それぞれの流路には第1の切替弁56及び第2の切替弁58が取り付けられている。
この第1の切替弁56の先は濾過器12の流入孔54に接続され、その流出孔55の先は流路を介して筐体18の吐出口22に接続されている。また、第2の切替弁58の先は流路を介し、そのまま筐体18の吐出口22に接続されている。
このため、第1及び第2の切替弁の操作により、電解槽4からの水溶液の流路について、濾過器12を通過させる流路と、これを迂回するバイパス流路とを選択することができる。
【0063】
通常、電解槽4で電気分解された電解水には、次亜塩素酸、塩素等が含まれており、これら塩素系物質は濾過器12により除去する。しかし、塩素系物質には殺菌作用があるため、植物の土壌等において殺菌が必要な場合には、塩素系物質を殺菌に用いる。このため、第1及び第2の切替弁の操作により、殺菌の必要がある場合には濾過器12を通過させない迂回流路を選択する。
なお、第1及び第2の切替弁として、他に三方弁からなる切替弁を用いることも可能であり、これにより濾過器12を通過する流路と、これを迂回する流路との切り替えを二者択一的に行う。
【0064】
上記貯留タンク16は、水素等を含有する水溶液を保管する容器であり、ここでは容量を500リットルとしている。筐体18の吐出口22に、ホース等を取り付けて流路を形成し、電気分解された水溶液を貯留タンク16へ供給する。
貯留タンク16は、ここでは合成樹脂製であるが、他にステンレス等の金属が用いられ、全体は直方体状或いは球状の容器である。貯留タンク16は、上部に蓋部材が取り付けられ内部を密閉することが可能である。
この貯留タンク16は、電解槽4へ送る水の水源であり、また電解槽4からの水溶液(水素水等)を一度溜めておき、再び電解槽4へ送るために用いる。また、植物などへ水素水等を供給する水源となる。
【0065】
上記ポンプ14は、筐体18の吸入口20と電解槽4の注入口30との間に配置し、循環流路62を駆動して、吸入口20から吸引した水を電解槽4の注入口30へ向けて流通させる。
このポンプ14は、貯留タンク16等、外部から水を吸引し、これを電解槽4へ供給し、また電解槽4内に水が十分に充填されると、これを電解槽4からの水溶液を濾過器12或いは筐体18の吐出口22へ送出し、この吐出口22から貯留タンク16へと流通させる。
【0066】
このように、貯留タンク16内の水溶液(水素水等)を電解槽4に送り、再度電気分解を行なうことで水素水の濃度を高める。貯留タンク16内の水溶液は、そのまま農作物等へ供給することができる。
ポンプ14による水の流量は、例えば9L(リットル)/分~12L/分とする。この場合、電解槽4の注入口30から9L/分~12L/分の水が注入され、この量の水が電気分解され、また同量の水が電解槽4の排出口32から排出される。
【0067】
次に、水素水生成装置2の運転動作について説明する。この水素水生成装置2は、制御盤8に設けた操作パネル9より予め操作ボタン等を操作し、運転内容、運転時間等の運転管理情報を登録しておく。これら運転内容は、制御部10によりコントロールされポンプ14等を稼働させる。
このように、制御部10には管理情報を登録設定することができ、水の循環流路62の循環時間として、循環流路62の流通を駆動させるポンプ14の稼働時間(電気分解の時間も同期)を登録し、或いは再循環回数(貯留タンク内の水量及び循環水量から試算)を登録し、装置を運転させることにより、所望する濃度の水素水を得ることが容易に行える。
【0068】
運転の準備として、濾過器12を使用する場合には、濾過器12側の第1の切替弁56を開け、第2の切替弁58を閉める。この場合、電解槽4からの水溶液は濾過器12を通過して濾過される。逆に、濾過器12を迂回させる場合には、第1の切替弁56を閉め、第2の切替弁58を開ける。
また、装置の運転時には、筐体18に設けた排水コック26、及び水抜コック28は閉めておく。
【0069】
通常、装置の運転では、貯留タンク16を経由する循環流路を構成する。この場合、流路を形成するホース等の流通管を用いて、貯留タンク16と筐体18の吸入口20とを流通管で連通し流路を形成する。また、筐体18の吐出口22と貯留タンク16とを流通管で連通して流路を形成し、貯留タンク16を介した水の循環流路62を形成する。
また、貯留タンク16には、予め電気分解するための所定量の水を補充し充填しておく。
【0070】
なお、貯留タンク16以外の、他の貯留槽等に貯留された水を使用する場合には、流通管を用いてこの貯留槽と筐体18の吸入口20とを連通し、電解槽4で電気分解することとしてもよい。
この場合、電解槽4からの水溶液(水素水等)を吐出口22から流通管を介して一度貯留タンク16に溜めても良く、またこの水溶液を吐出口22から直接農作物等に供給するようにしてもよい。
【0071】
さて、上記循環流路62を形成し、制御部10に登録された運転管理情報に基づき運転が開始されると、ポンプ14が始動し電解槽4での電気分解が開始される。そして、貯留タンク16から水が吸引され、これが筐体18の吸入口20からポンプ14を経由して電解槽4の注入口30へ供給される。
電解槽4の注入口30から注入された水は、電解槽4の下部から8枚の各電極板6の下部から上方に移動し、やがて各電極板6による電気分解により水素等が含有された水溶液(電解水)が生成される。
【0072】
この水溶液は、電気分解により生成され、水中に水素を含有した水素水が含まれ、この水素水は、水素(ガス)が水に溶け込んだもの、また水中にナノバブル化した気泡(水素)を閉じ込めた所謂ナノバブル水素水が含まれている。
また、上記水溶液には、電気分解により生成され、水溶液中に酸素(ガス)を含有した酸素水も含まれ、塩素系物質等も含まれている。
【0073】
電解槽4内の水は、電解槽4の前側下部近傍の注入口30から注入されて電解槽4の下部側を移動し、やがて電解槽4の後側上部近傍の排出口32に向けて上昇し、さらに電解槽4の後部へ移動し排出口32から排出される。このように、電解槽4の注入口30から注入された水は、電解槽4内で排出口32に向かって移動流通し、また一部は網状の電極板6を通過し移動流通する。
電解槽4の電気分解は、上記水の移動の際に8枚の電極板6によって行われる。また、水は、網体の電極板6を通過する際にも電気分解が行われる。
【0074】
また、電解槽4内では、8枚の電極板6を中央寄りに配置し、電極板6と電解槽4の前後左右の壁面との間に水の流通に十分な隙間(空間部)を設けてあり、また電解槽4の底面部34と電極板6との間にも、水の流通に十分な隙間(空間部)を設けている。
これら隙間は、電解槽4内の水の流通移動の流路を形成することから、電解槽4内部における水の滞留を防止し、併せて電解槽4内の水が満遍なく均一に電気分解される。
そして、電解槽4の下部近傍に設けた注入口30から注入された水は、反対側の排出口32方向へ流通し、この水の移動とともに各電極板6により電気分解が行われ、電解槽4の上部近傍に設けた排出口32から排出される。
【0075】
電解槽4は蓋部材により内部が密閉されている。このため、ポンプ14の稼働により電解槽4の注入口30(吸入口20)から給水される水量は、電解槽4の排出口32(吐出口22)から排出される水の量と同じであり、給水される水により電解槽4内部の水が押し出され排出される。
【0076】
上記電解槽4内で電気分解が行われている間も、ポンプ14は稼働しており、電解槽4内には注入口30から新たな水が供給され、また同量の水(水溶液)が電解槽4の排出口32から排出される。この水溶液は、切替弁の操作により、第1の切替弁56を経由して濾過器12に送られる。
濾過器12では、濾過により塩素系物質等が除去され、濾過器12の流出孔55から流出した水溶液は、筐体18の吐出口22に送られ、この吐出口22に接続されたホース等により貯留タンク16へと送出され、ここに貯留される。
【0077】
上記貯留タンク16から、流路を介してポンプ14、電解槽4(電極板6)、第1及び第2の切替弁、及び濾過器12(迂回有り)を経て、再度貯留タンク16に戻される流路が、水溶液(電解水)の循環流路62となる。
装置が稼働している間は、ポンプ14の駆動により、上記循環流路62は水溶液が絶え間なく流通し、電解槽4での電気分解及び濾過器12での濾過が繰り返し行われる。このように、上記循環流路62を繰り返し循環させ、電気分解を繰り返し行うことで、水中に含有する水素の濃度が高まり、高濃度の水素水が得られる。
【0078】
水素水生成装置2の運転時の吐出流量(吐出口22から吐出される流量)は、濾過器12を使用する場合、例えば5~20L(リットル)/分、好ましくは9~12L(リットル)/分である。また、貯留タンクの容量が500L(リットル)の場合、装置の運転時間は例えば3~6時間程度とする。
【0079】
続いて、上記水素水生成装置2を用いて生成された水溶液(水素水)の水素量(濃度)等の試験結果について説明する。
図9は、試験1として、電気分解に使用した水の導電率による水素量の推移を示したグラフである。
ここで、
試験1-1のグラフは、電極ピッチ7mm、電源電圧24V、吐出流量10L/分、
試験1-2のグラフは、電極ピッチ7mm、電源電圧18V、吐出流量10L/分、
試験1-3のグラフは、電極ピッチ7mm、電源電圧24V、吐出流量18L/分、の条件で試験を行なったものである。
【0080】
尚、上記「電極ピッチ」は、対向する電極板6同士の間隔である。「電源電圧」は、AC1~4に係るGNDに対する電圧(V+)である。吐出流量は、吐出口22から吐出される流量(Lリットル)である。また、「導電率」は、水中に塩(塩化ナトリウム)を加えて変化させた。試験1は、吐出口からさらに6時間経過後の水素量を示したものである。
【0081】
試験1より、特に導電率25mS/mまでは水素量の増加割合が高く、50mS/mを超えると緩やかとなる。また、何れの試験においても、導電率が低い(25mS/m以下)場合には、導電率の増加に対する水素量の増加割合が高いことが示されている。
また、電源電圧の高さによる水素量の増加は、導電率の高さによっては逆転し、電源電圧を低く(18V)しても十分な水素量が得られる。
このため、電気分解用の水については、水道水、自然水等、その水質に応じて、循環流路62の循環の回数を制御することが好ましい。また、水中に予め塩、液肥等を加えて導電率を高めておくことも有効である。
【0082】
図10は、試験2として、装置から吐出された水溶液(水素水)の水素量の経時変化を示したものである。
ここで、
試験2-1のグラフは、電極ピッチ5mm、稼働時間24時間、導電率30mS/m、電源電圧24V、吐出流量10L/分、
試験2-2のグラフは、電極ピッチ7mm、稼働時間8時間、導電率10mS/m、電源電圧24V、吐出流量10L/分、
試験2-3のグラフは、電極ピッチ7mm、稼働時間8時間、導電率200mS/m、電源電圧18V、吐出流量10L/分、
試験2-4のグラフは、電極ピッチ7mm、稼働時間8時間、導電率200mS/m、電源電圧18V、吐出流量10L/分、の条件で試験を行なったものである。
【0083】
吐出された水溶液の保存について、試験2-1~3はバケツ(開放)で保存し、また試験2-4ではタンク(蓋付の密閉容器)で保存した。稼働時間は、装置の運転時間であり、この稼働時間が長いと再循環による電気分解の繰り返しの回数も多くなる。
その他の条件については、上述したものと同じである。
【0084】
試験2より、試験2-1と試験2-3からして、電気分解を行う水の導電率が低い場合(試験2-1)であっても、装置の稼働時間を長く(再循環回数を多く)することにより比較的高い水素量が得られることが示されている。
また、試験2-4(タンク保存)では、特に経過時間が十数時間(h)までは、水素量の経時低下が僅かであり、また他の試験2-1~3と比べて水素量の経時低下の変化が小さい。一方、試験2-1~3(バケツ保存)は、経過時間が二十数時間(h)までは、水素量の経時低下が急であり、それ以降は経時低下が緩やかである。
上記より、装置の稼働時間を長くすることで高い濃度の水素水が得られ、また水素水の保存は蓋付の容器で保存する方が、水素量が高く保持され長持ちすることが確認できた。
【0085】
図11は、試験3として、装置から吐出される流量による水素量の変化(経時)を示したものである。
ここで、
試験3-1のグラフは、電極ピッチ7mm、導電率30mS/m、電源電圧24V、吐出流量18L/分、
試験3-2のグラフは、電極ピッチ7mm、導電率30mS/m、電源電圧24V、吐出流量10L/分、
試験3-3のグラフは、電極ピッチ7mm、導電率100mS/m、電源電圧18V、吐出流量10L/分、
試験3-4のグラフは、電極ピッチ7mm、導電率100mS/m、電源電圧18V、吐出流量18L/分、
試験3-5のグラフは、電極ピッチ7mm、導電率30mS/m、電源電圧24V、吐出流量10L/分、濾過器使用、の条件で試験を行なったものである。
【0086】
試験3より、導電率が高い場合(試験3-3,4)は、導電率が低い場合(試験3-1,2,5)と比べて、稼働時間に対する水素量の増加割合が高い。
また、濾過器を使用した場合(試験3-5)は、同条件で濾過器を使用しない場合(試験3-2)と比べて、水素量の増加割合が低い。
また、試験3-3に対する試験3-4のように吐出流量を1.8倍にした場合であっても、水素量は十数%低下する程度であり、吐出量を多少増減したところで得られる水素量に大きな変化はないことが示された。
【0087】
以上、上記試験1~3から、以下のことが考察される。
・幅広い導電率をカバーするためには、電源電圧18Vとするのが好ましい。
・導電率が30mS/mを下回る場合には、塩、肥料等の添加物を加えて導電率を高めることで、水素量の増大が望める。
・水素量の経時変化から、バケツでの保存では3日程度で100ppbを下回ることから、タンク等で大量に密閉保存することで、水素量の低下が防げて長く保存できる。
・吐出流量は、18L/分より、10L/分の方が優位である。
・濾過器を使用した場合には、水素量が少し低下する。
【0088】
図12は、上記水素水生成装置2で生成した水溶液(水素水)の粒子濃度(縦軸:E7)及び気泡(バブル)の粒子径(横軸:nm)を示したグラフである。ここで、大きな山のグラフ(a)は上記水素水生成装置2で生成した水溶液(水素水)に係るグラフであり、小さい山のグラフ(b)は、一般の水道水に係るグラフである。なお、水道水に係る粒子は微細な塵であり気泡とは異なる。グラフ(b)は、参考までに示した。
【0089】
上記グラフ(a)から、粒子(気泡)の粒子径が50nm~250nmにわたって、ナノサイズの粒子の生成が見られる。特に、粒子径が70nm~130nmの範囲では、粒子濃度(粒子数)が高くナノサイズの粒子が多く生成されている。
また、水素水生成装置2により生成された粒子(気泡)は、濃度(Concentration)として1mL中の粒子数が2.19・109個(約21億9千万個)/mLであった。ここで、参考までに水道水の1mL中の粒子数は7.05・107個(約7千万個)/mLであった。これを差し引くと、水素水生成装置2により粒子(気泡)が約21億個生成されたことになる。
上記粒子(気泡)内の物質については、具体的な測定を行っていないが、上記試験1~3等の水素量から、水素ガスが含有されているものと推測される。これから、水素水生成装置2により、ナノサイズの気泡(ナノバブル水素水)が大量に生成されていると考えられる。
【0090】
次に、上記水素水生成装置2によって生成した水素水の、植物(農作物の栽培、園芸等)及び畜産(家畜の飼育等)への利用形態について説明する。植物への利用は、主に、葉面散布、潅水及び水耕栽培等が挙げられる。この場合、貯留タンク16から水素水を供給し、植物への散布、潅水等を行う。
【0091】
葉面散布では、例えば、水素水の噴霧用の自動噴霧器或いは動噴器等を用いて、農作物、花等の植物の葉面散布を行う。これは主に、ダニ、アブラムシ、スリップス等の害虫忌避駆除、害虫等の卵の孵化阻害の目的で行なう。
植物への水素水(特にナノバブル水素水)の供給により、病害虫の耐性及び薬害等も無く、農薬の使用回数を減らすことができる。また、害虫の卵は酸化で孵化するが、ナノバブル水素水は還元反応が高いため卵の酸化を防ぎ、孵化を阻害する働きがある。
【0092】
また、潅水及び水耕栽培では、供給ポンプ等を介して貯留タンク16から水素水を流通させ、植物の根等に水素水を供給する。この場合、例えば、一日程度かけて水素水が畑(農園)を一巡するようにしてもよい。なお、水素水の水素濃度は3日程度残存することが好ましい。
試験によれば、水素水の潅水等により、植物の生育例えば葉などが大きく成長し、植物の生長促進に寄与する。
【0093】
また、上記水素水生成装置2によって生成した水素水を、家畜(豚、牛、鶏等)の飲料水及び家畜餌に混ぜて使用する。これにより、家畜の健康が維持(病気の発生が減少)され、また糞の量が減り(消化吸収が良いため)、糞の臭気も軽減される等の効果がある。
【0094】
また、上記水素水生成装置2による水素水は、微小な粒子状のナノバブル水素水が多く含まれており、水素濃度を3日程度残存させることは可能である。なお、水素水の貯留タンク16は密閉保存することが好ましく、これにより長期の保存が可能となる。
【0095】
なお、電解槽4で生成された水素水は、そのまま直接植物へ供給することも可能である。
この場合、例えば、水道或いは水源から直接筐体18の吸入口20に水を供給し、更に電解槽4及び濾過器12を通過させて筐体18の吐出口22から吐出される水溶液を、そのまま流路を介して農作物等に供給する。
このとき、貯留タンク16は特に必要としないが、例えば、貯留タンク16をバッファー(緩衝手段)としても用いることも可能である。この場合、電解槽4で生成される水溶液を一度貯留タンク16に蓄えておき、これを植物に供給する。これにより、電解槽4で生成される水素水の量に左右されることなく、常に農作物に必要な量の水素水が供給できる。
【0096】
以上説明したように、この実施例に係る水素水生成装置によれば、効率的に水素を含有する水溶液(水素水)を大量に得ることができ、また電解槽等の装置の小型化が図れ、機能的で経済性にも優れる。また、電解槽内では、水の移動とともに電気分解が行なえて効率的であり、水の移動が淀みなく満遍に行え、良好に電気分解が行なえ水の滞留も防止され、加えて循環流路により繰り返し電解槽を通過させることで、容易に高濃度の水素水を得ることができ、水溶液中の水素濃度の管理も容易である。
【符号の説明】
【0097】
2 水素水生成装置
4 電解槽
6 電極板
10 制御部
11 電源回路部
12 濾過器
14 ポンプ
16 貯留タンク
30 注入口
32 排出口
62 循環流路
図1
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図12