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特許6994782真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法及び標的部位における検出対象核酸配列の存在又は非存在を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法及び標的部位における検出対象核酸配列の存在又は非存在を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6813 20180101AFI20220128BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/09 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020108609
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2018533531の分割
【原出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2020191878
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2016158062
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518277790
【氏名又は名称】株式会社GenAhead Bio
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】周郷 司
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/131101(WO,A1)
【文献】MIYAOKA Y et al.,Systematic quantification of HDR and NHEJ reveals effects of locus, nuclease, and cell type on genome-editing,Sci. Rep. [online], 6:23549,2016年03月31日,[Retrieved on 2017.10.25], <URL: http://www.nature.com/articles/srep23549>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68-1/6897
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色体上の目的座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在を検出するための方法であって、前記検出対象核酸配列が前記目的座位に遺伝子組換えを介して挿入されることが企図された外来核酸配列であり、
(2)前記検出対象核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、
前記目的座位内の前記検出対象核酸配列以外の核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、
の前記染色体に由来するゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する手順、
(3)前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸前記ゲノムDNA断片へハイブリダイズダブルポジティブ:DP)を検出した反応領域の存在基づき、前記外来核酸配列前記目的座位への挿入を検出し、
前記第一プローブ核酸のみの前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイズ(シングルポジティブ1:SP1)を検出した反応領域の存在に基づき、前記外来核酸配列の前記目的座位以外の座位への挿入(ランダムインテグレーション)を検出し、及び、
前記第二プローブ核酸のみの前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーション(シングルポジティブ2:SP2)を検出した反応領域の存在に基づき、前記外来核酸配列の前記染色体への非挿入を検出する、手順、
を含む方法。
【請求項2】
前記手順(2)において、前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションを定量化し、
前記手順(3)において、前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸のハイブリダイゼーション量(DP)、前記第一プローブ核酸のみのハイブリダイゼーション量(SP1)、及び/又は前記第二プローブ核酸のみのハイブリダイゼーション量(SP2)から、以下のいずれか一以上の比率を算出する、請求項1記載の方法。
外来核酸配列の目的座位への挿入率(%)=DP×100/(DP+SP2)
外来核酸配列の染色体へのランダムインテグレーション率(%)=SP1×100/(DP+SP2)
【請求項3】
前記所定座位において、前記第一プローブ核酸がハイブリダイズし得る第一領域と、前記第二プローブ核酸がハイブリダイズする第二領域と、が所定塩基長離れている、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記手順(2)の前段に、
(1)被検細胞からゲノムDNA断片を調製する手順、
を含む、請求項1-3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
記第二プローブ核酸は、前記目的座位内の核酸配列であって、遺伝子組換えに供された2つのホモロジーアームの間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする、請求項1-4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法に関する。より詳しくは、In vitroまたはex vivoにおいてゲノム編集によって真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法に関する。
[発明の背景]
【0002】
ゲノム編集(特許文献1参照)では、部位特異的ヌクレアーゼによってゲノム中の特定の部位にDNA二本鎖切断(Double-strand break:DSB)を導入し、相同組換え(Homologous recombination:HR)によるDSBの修復機構を介して、ヌクレアーゼによる切断箇所に目的とする遺伝子を挿入(ノックイン)することが行われている。
【0003】
HRを介したノックインにおいて、一塩基多型(Single nucleotide polymorphism:SNP)の導入や短いタグ配列の挿入のような、数~数十塩基程度の改変を行う場合には、ヌクレアーゼによる切断箇所に一本鎖オリゴDNA(Single-strand oligodeoxynucleotides:ssODN)を取り込ませる方法を採用できる。
【0004】
一方、HRを介したノックインにおいて、数~数十塩基を超える改変を行う場合には、挿入する遺伝子を搭載したターゲッティングベクター(「ドナーベクター」とも称される)が用いられる。ターゲッティングベクターは、挿入する遺伝子を含むターゲッティングカセットを、HRを起こさせるための2つのホモロジーアームで挟み込んだ構造を有する。RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼもしくはCas9ニッカーゼまたはそれらの変異体等)を組み込んだ発現ベクター及びガイドRNA(gRNA)を組み込んだ発現ベクターとともにターゲッティングベクターを細胞にトランスフェクションすることで、DSBとHRによるノックインを達成できる。
【0005】
HRを介したノックインの効率に影響を与える因子として、「オフターゲット効果」と「ランダムインテグレーション」がある。オフターゲット効果は、ヌクレアーゼがゲノムの標的部位以外の部位にDSBを導入することをいう。オフターゲット効果が生じると、DSBが非相同末端結合(Non-homologous end-joining:NHEJ)により修復される際のエラーによって、予期しない遺伝子破壊が引き起こされる場合がある。また、ランダムインテグレーションは、ターゲッティングベクターカセットが、DSBとHRによらず無作為にゲノムに組み込まれることをいう。ランダムインテグレーションも、予期しない遺伝子破壊を引き起こす場合がある。
【0006】
オフターゲット効果に関連し、特許文献2には、短縮ガイドRNA(tru-gRNA)を用いて、ゲノム編集の特異性を増大させる方法が開示されている。gRNAは、塩基対形成によって標的部位のDNA配列に結合する相補性領域とRNA誘導型ヌクレアーゼ結合領域とを含んでなるが、当該方法は、gRNAとして、短縮された標的相補性領域(20nt未満)を有するtru-gRNAを用いるものである。
【0007】
また、従来、HRを介した外来核酸配列のゲノム中への挿入を確認する手法として、当該ゲノムを鋳型として、ホモロジーアームの外側(上流又は下流)に設計したプライマーと、外来核酸配列内に設計したプライマーとを用いてPCRを行う方法が用いられている。当該方法は、目的とする塩基長の増幅産物が検出されたことをもって、外来核酸配列のゲノム中への挿入を確認する手法である。PCRでの増幅産物の検出は、定量性を欠くため、当該方法では、HRを介した外来核酸配列のゲノム中への挿入効率(ノックイン効率)を評価することはできなかった。また、当該方法では、ランダムインテグレーションが生じていたとしても、これを検出することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2016-500262号公報
【文献】特表2016-512691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、RNA誘導型ヌクレアーゼの鋳型核酸と、gRNAの鋳型核酸またはgRNAとを用いて、高い特異性と効率で細胞のゲノムの標的部位を改変するための技術を提供することを主な目的とする。別の観点では、本発明の課題は、ゲノムの標的部位に所望の改変を生じた細胞を効率的に選択することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のため、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
[1] 真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法であって、
(1)(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸、
(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNA、及び
(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸、
を含む導入核酸を前記細胞に導入する手順、及び
(2)前記選択マーカを発現する細胞を選択する手順、
を含み、
前記手順(1)に供される(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)が、(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(A)、及び(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNAのモル数(B)のいずれにも比して少ない、方法(本明細書において、「本発明の方法」と称することがある)。
[2] 前記手順(1)における導入核酸に、(d)外来核酸配列を含むターゲッティング鋳型核酸を含み、
手順(1)に供される(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)が、(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(A)、(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNAのモル数(B)、及び(d)外来核酸配列を含むターゲッティング鋳型核酸のモル数(D)のいずれにも比して少ない、[1]の方法。
[3] 前記手順(1)に供される導入核酸のモル数の合計に対する、(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数(n)を乗じた数の割合(C×n/(導入核酸のモル数の合計))が、0.01~0.8である、[1]又は[2]の方法。
[4] 前記手順(1)に供される導入核酸が(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸、(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNA、及び(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のみである場合であって、(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(A)、(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNAのモル数(B)、及び(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)の合計に対する、(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数(3)を乗じた数の割合(C×3/(A+B+C))が、0.01~0.8である、[1]の方法。
[5] 前記手順(1)に供される導入核酸が(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸、(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNA、(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸、及び(d)外来核酸配列を含む鋳型核酸のみである場合であって、(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(A)、(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸またはガイドRNAのモル数(B)、(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)、及び(d)外来核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(D)の合計に対する、(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数(4)を乗じた数の割合(C×4/(A+B+C+D))が、0.01~0.8である、[2]の方法。
[6] 導入核酸が、いずれもプラスミドベクターである、[1]~[5]のいずれかの方法。
[7] 前記選択マーカが、薬剤耐性遺伝子である、[1]~[6]のいずれかの方法。
[8] 前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ又はCas9ニッカーゼである、[1]~[7]のいずれかの方法。
[9] 前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cpf1ヌクレアーゼである、[1]~[7]のいずれかの方法。
【0011】
[9a][1]~[9]の方法に供された細胞において、前記外来核酸配列のゲノムへの挿入効率を評価する方法であって、
(A)細胞のゲノムを鋳型とし、ホモロジーアームの外側に設計されたプローブと、ターゲッティングカセット内に設計されたプローブとを用いて、デジタルPCRを行う手順、を含む方法。
【0012】
[10] 染色体上の所定座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在を検出するための方法であって、
(2)前記検出対象核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、
前記所定座位内の前記検出対象核酸配列以外の核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、
の前記染色体に由来するゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する手順、
(3)前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸が前記ゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブを検出した場合に、前記検出対象核酸配列が前記所定座位に存在することを検出し、
ダブルポジティブを検出しなかった場合に、前記検出対象核酸配列が前記所定座位に存在しないことを検出する手順、
を含む方法。
[11] 前記所定座位において、前記第一プローブ核酸がハイブリダイズし得る第一領域と、前記第二プローブ核酸がハイブリダイズする第二領域と、が所定塩基長離れている、[10]の方法。
[12] 前記手順(2)の前段に、
(1)被検細胞からゲノムDNA断片を調製する手順、
を含む、[11]の方法。
【0013】
[13] 前記検出対象核酸配列が、前記被検細胞の染色体上の目的座位に遺伝子組換えを介して挿入されることが企図された外来核酸配列であり、
前記第一プローブ核酸は、該外来核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズし、
前記第二プローブ核酸は、前記目的座位内の核酸配列であって、遺伝子組換えに供された2つのホモロジーアームの間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする、[12]の方法。
[13a] 前記ダブルポジティブが得られず、かつ、前記第一プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションが検出されることに基づいて、前記外来核酸配列が前記目的座位以外の座位に存在することを検出する、[13]の方法。
[13b] 前記ダブルポジティブが得られず、かつ、前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションが検出されることに基づいて、前記外来核酸配列が前記染色体上に存在しないことを検出する、[13]の方法。
[13c] 前記手順(1)において、前記被検細胞の細胞集団からゲノムDNA断片を調製し、
前記手順(2)において、前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションを定量化し、
前記手順(3)において、前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸のハイブリダイゼーション量(DP)、前記第一プローブ核酸のみのハイブリダイゼーション量(SP1)、及び/又は前記第二プローブ核酸のみのハイブリダイゼーション量(SP2)から、前記細胞集団における以下のいずれか一以上の比率を算出する、[14]~[17]のいずれかの方法。
外来核酸配列の目的座位への挿入率(%)=DP×100/(DP+SP2)
外来核酸配列の染色体へのランダムインテグレーション率(%)=SP1×100/(DP+SP2)
[13d] さらに以下の手順を含む、[13c]の方法。
(4)前記染色体に、前記第一領域と前記第二領域との間の塩基長に相当する塩基長離れてハイブリダイズするプローブペアを用いて、前記ゲノムDNA断片への該プローブペアのハイブリダイゼーションをデジタルPCR法により定量化し、
前記プローブペアの両方のプローブのハイブリダイゼーション量(dp)、及び前記プローブペアのいずれか一方のみのハイブリダイゼーション量(sp)から、前記ゲノムDNA断片における以下の比率を算出する手順、
フラグメンテーション率(%)=<sp>×100/(dp+<sp>)
(式中、<sp>は、プローブペアの各プローブのハイブリダイゼーション量の平均値を示す。)
(5)前記挿入率(%)を前記フラグメンテーション率(%)で補正する手順。
[13e] 前記目的座位において、前記第一プローブ核酸がハイブリダイズし得る第一領域と、前記第二プローブ核酸がハイブリダイズする第二領域と、が少なくとも1kb長離れている、[13a]~[13d]のいずれかの方法。
[14] 前記検出対象核酸配列が、前記被検細胞の染色体上の目的座位から遺伝子組換えを介して欠失されることが企図された内在核酸配列であり、
前記第一プローブ核酸は、該内在核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズし、
前記第二プローブ核酸は、前記目的座位内の核酸配列であって、遺伝子組換えに供された2つのホモロジーアーム間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする、[12]の方法。
【0014】
[14a] 前記ダブルポジティブが得られず、かつ、前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションが検出されることに基づいて、前記内在核酸配列が前記目的座位に存在しないことを検出する、[14]の方法。
[14b] 前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸が前記ゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブを検出した場合に、前記内在核酸配列が前記目的座位に存在することを検出する、[14]の方法。
[14c] 前記手順(1)において、前記被検細胞の細胞集団からゲノムDNA断片を調製し、
前記手順(2)において、前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションを定量化し、
前記手順(3)において、前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸のハイブリダイゼーション量(DP)、及び前記第二プローブ核酸のみのハイブリダイゼーション量(SP2)から、前記細胞集団における以下の比率を算出する、[14a]又は[14b]の方法。
内在核酸配列の欠失率(%)=100-DP×100/(DP+SP2)
[14d] さらに以下の手順を含む、[14c]の方法。
(4)前記染色体に、前記第一領域と前記第二領域との間の塩基長に相当する塩基長離れてハイブリダイズするプローブペアを用い、前記ゲノムDNA断片への該プローブペアのハイブリダイゼーションをデジタルPCR法により定量化し、
前記プローブペアの両方のプローブのハイブリダイゼーション量(dp)、及び前記プローブペアのいずれか一方のみのハイブリダイゼーション量(sp)から、前記ゲノムDNA断片における以下の比率を算出する手順、
フラグメンテーション率(%)=<sp>×100/(dp+<sp>)
(式中、<sp>は、プローブペアの各プローブのハイブリダイゼーション量の平均値を示す。)
(5)前記欠失率(%)を前記フラグメンテーション率(%)で補正する手順。
[14e] 前記目的座位において、前記第一プローブ核酸がハイブリダイズし得る第一領域と、前記第二プローブ核酸がハイブリダイズする第二領域と、が少なくとも1kb長離れている、[14a]~[14d]のいずれかの方法。
【0015】
[15] 前記ダブルポジティブが得られず、かつ、前記第一プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションが検出されることに基づいて、前記検出対象核酸配列が前記所定座位以外の座位に存在していることを検出する、[10]~[12]のいずれかの方法。
[16] 前記ダブルポジティブが得られず、かつ、前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションが検出されることに基づいて、前記検出対象核酸配列が前記染色体上に存在しないことを検出する、[10]~[12]のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、RNA誘導型ヌクレアーゼの鋳型核酸と、gRNAの鋳型核酸またはgRNAとを用いて高い特異性と効率で細胞のゲノムの標的部位を改変するための技術が提供される。また、ゲノムの標的部位に所望の改変を生じた細胞を効率的に選択する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る染色体上の所定座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在の検出方法を説明するための図である。
図2】本発明に係るノックイン効率の評価方法を説明するための図である。
図3】本発明に係るノックアウト効率の評価方法を説明するための図である。
図4】本発明に係る、相同組換え(HR)を介したノックイン効率の評価方法を説明するための図である。
図5】APC遺伝子のエキソン3の塩基配列とgRNAの認識配列を示す図である(実施例1)。
図6】野生型のAPC遺伝子の増幅産物と、人工核酸(外来核酸配列)の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物の塩基配列を示す図である(実施例1)。
図7】野生型のAPC遺伝子の増幅産物と、人工核酸(外来核酸配列)の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物の制限酵素消化断片の電気泳動像を示す図である(実施例1)。
図8】野生型のAPC遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸(外来核酸配列)の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物の量(Y)に基づきノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出し、Factor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例1)。横軸はFactor値を、縦軸はノックイン効率(%)を示す。
図9】回収したゲノムDNAの質量をFactor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例1)。横軸はFactor値を、縦軸はゲノムDNA質量(μg)を示す。
図10】野生型のTNNI1遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたTNNI1遺伝子の増幅産物の量(Y)に基づきノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出し、Factor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例2)。横軸はFactor値を、縦軸はノックイン効率(%)を示す。
図11】回収したゲノムDNAの質量をFactor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例2)。横軸はFactor値を、縦軸はゲノムDNA質量(ng)を示す。
図12】野生型のTNNI1遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたTNNI1遺伝子の増幅産物の量(Y)に基づきノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出し、Factor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例3)。横軸はFactor値を、縦軸はノックイン効率(%)を示す。
図13】回収したゲノムDNAの質量をFactor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例3)。横軸はFactor値を、縦軸はゲノムDNA質量(ng)を示す。
図14】IPTKB遺伝子のエキソン8の塩基配列とgRNAの認識配列を示す図である(実施例4)。
図15】野生型のIPTKB遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたIPTKB遺伝子の増幅産物の量(Y)に基づきノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出し、Factor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例4)。横軸はFactor値を、縦軸はノックイン効率(%)を示す。
図16】回収したゲノムDNAの質量をFactor値に対してプロットした結果を示す図である(実施例4)。横軸はFactor値を、縦軸はゲノムDNA質量(ng)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0019】
1.ゲノム標的部位の改変方法
本発明に係るゲノム標的部位の改変方法としては、自体公知の遺伝子組換え方法(例えば、非相同性末端結合(NHEJ)による改変方法(ノックアウト方法及びノックイン方法)、相同組換え(HR)による改変方法(ノックイン方法)、相同組換え修復(HDR)による改変方法(ノックイン方法)及びマイクロ相同性末端結合(MMEJ)による改変方法(ノックイン方法))が挙げられる。本発明に係るノックアウト方法としては、例えば、RNA誘導型ヌクレアーゼにより生じたDSBが修復される際に生じる挿入及び/又は欠損(InDel)変異により遺伝子を改変するものが挙げられる。一方、本発明に係るノックイン方法としては、例えば、RNA誘導型ヌクレアーゼにより生じたDNAの二本鎖切断(DSB)の部位に適当な外来核酸配列を挿入することで遺伝子を改変するものが挙げられる。
【0020】
本発明のある実施形態は、真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法であって、以下の手順を含むことを特徴とする。
(1)(a)RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸(以下「ヌクレアーゼ鋳型核酸」とも称する)、
(b)ガイドRNAをコードする核酸配列を含む鋳型核酸(以下「gRNA鋳型核酸」とも称する)またはガイドRNA、及び
(c)選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸(以下「セレクション鋳型核酸」とも称する)、を含む導入核酸を前記細胞に導入する手順(以下「トランスフェクション手順(1)」とも称する)、及び
(2)前記選択マーカを発現する細胞を選択する手順(以下「選択手順(2)」とも称する)。
【0021】
本発明のある実施態様では、ヌクレアーゼ鋳型核酸及びgRNA鋳型核酸またはgRNAを用いたNHEJを介して標的部位の遺伝子をノックアウトすることが可能である。ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸またはgRNAを用いたNHEJを介するノックアウトにおいては、細胞内に十分量のRNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAが発現されることが好ましい。
【0022】
細胞内に十分量のRNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAを発現させることにより、ノックアウトに十分な頻度でDSBを生じさせ、標的部位の遺伝子を高い効率でノックアウトしうる。
【0023】
本発明のノックアウト方法では、トランスフェクション手順(1)において、ヌクレアーゼ鋳型核酸、及びgRNA鋳型核酸またはgRNAのいずれにも比して少ないモル数のセレクション鋳型核酸を供し、選択手順(2)において、選択マーカを発現する細胞のみを選択することによって、所望のゲノム標的部位をノックアウトした細胞を高い効率で得られうる。
【0024】
選択手順(2)において選択される細胞としては、トランスフェクション手順(1)において少量のセレクションベクターを供した場合であっても、十分量の選択マーカを発現できた細胞が挙げられる。すなわち、選択手順(2)において選択される細胞は、セレクション鋳型核酸の取り込み効率が高い細胞であるか、取り込まれたセレクション鋳型核酸の発現効率が高い細胞でありうる。このことから、これらの細胞においては、ヌクレアーゼ鋳型核酸と、gRNA鋳型核酸またはgRNAの取り込み効率及び発現効率のいずれも高く、その結果、高い頻度でDSBを生じさせ、NHEJにより標的部位の遺伝子を高い確率でノックアウトしうる。
【0025】
本発明のノックアウト方法は、トランスフェクション手順(1)において、ヌクレアーゼ鋳型核酸及びgRNA鋳型核酸またはgRNAのいずれにも比して少ないモル数のセレクション鋳型核酸を供し、選択手順(2)において、選択マーカを発現する細胞のみを選択することによって、高いノックアウト効率が得られうる。
【0026】
本発明の別の実施態様は、真核細胞のゲノムの標的部位に外来核酸配列を挿入する方法であって、前記トランスフェクション手順(1)における導入核酸に(d)外来核酸配列を含むターゲッティング鋳型核酸(以下、単に「ターゲッティング鋳型核酸」とも称する)を含むことを特徴とする。
【0027】
ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸またはgRNA、及びターゲッティング鋳型核酸を用いたHRを介するノックインにおいては、まず、細胞内に十分量のRNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAが発現されることが好ましく、その上で、適当な量のターゲッティング鋳型核酸が細胞内に導入されることが好ましい。
【0028】
細胞内に十分量のRNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAが発現されない場合、HRを介するノックインに必要な因子が揃わず、DSBとHRによらないランダムインテグレーションの頻度が増す可能性がある。
【0029】
細胞内に十分量のRNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAが発現されている場合であっても、RNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAの発現量に比してターゲッティング鋳型核酸の導入量が過少であると、HRよりもNHEJによるDSBの修復が優位となって、目的としない遺伝子破壊が顕著となりうる。一方、ターゲッティング鋳型核酸の導入量がRNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAの発現量に比して過剰となってしまうと、DSBとHRによらないランダムインテグレーションの頻度が増す可能性がある。このため、ターゲッティング鋳型核酸の適当な導入量は、ランダムインテグレーションを高頻度に引き起こさない程度の量を限度として、十分な量とされることが好ましい。
【0030】
本発明のノックイン方法では、トランスフェクション手順(1)において、ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸またはgRNA、及びターゲッティング鋳型核酸のいずれにも比して少ないモル数のセレクション鋳型核酸を供し、選択手順(2)において、選択マーカを発現する細胞のみを選択することによって、ノックインした細胞を高い効率で得られうる(実施例参照)。
【0031】
本発明のある態様では、セレクション鋳型核酸のモル数(C)は、ヌクレアーゼ鋳型核酸のモル数(A)およびガイドRNA鋳型核酸またはガイドRNAのモル数(B)のいずれにも比して少ないことが好ましい。本発明において、トランスフェクション手順(1)に供されるセレクション鋳型核酸のモル数(C)を、導入核酸のモル数の合計(A+B+C)に対して特定の割合とすることにより、より高い効率で標的部位が改変された細胞が得られうる。ある実施態様では、セレクション鋳型核酸のモル数(C)の導入核酸のモル数の合計に対する割合(C/(A+B+C))は、1/400~1/10、好ましくは1/200~1/5、より好ましくは1/150程度とされる。
【0032】
さらに好ましい実施態様としては、セレクション鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数を乗じた値を、導入核酸のモル数の合計で除した値(以下「Factor値」とも称する)を特定の割合とすることができる。
【0033】
Factor値は、ヌクレアーゼ鋳型核酸のモル数(A)、ガイドRNA鋳型核酸配列またはガイドRNAのモル数(B)、及びセレクション鋳型核酸のモル数(C)の合計(A+B+C)に対する、セレクション鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数(n)を乗じた数の割合(C×n/(A+B+C))として定義される。
Factor値=C×n/(A+B+C)
Factor値としては0.01~0.8とすることができ、好ましくは0.02~0.4、より好ましくは0.02~0.2、特に好ましくは0.02~0.04とされる。
【0034】
選択手順(2)において選択される細胞は、トランスフェクション手順(1)において少量のセレクション鋳型核酸を供した場合であっても、十分量の選択マーカを発現できた細胞と考えられる。すなわち、選択手順(2)において選択される細胞は、セレクション鋳型核酸の取り込み効率が高い細胞であるか、取り込まれたセレクション鋳型核酸の発現効率が高い細胞である可能性が考えられる。従って、これらの細胞においては、ヌクレアーゼ鋳型核酸とgRNA鋳型核酸またはgRNAの取り込み効率及び発現効率のいずれも高く、HRを介するノックインに必要な因子を十分量に発現させることができ、一定量導入したターゲッティング鋳型核酸が、RNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAの発現量に比して過剰量となりにくい可能性が考えられた。その結果、これらの細胞においては、RNA誘導型ヌクレアーゼとgRNAの発現量に比して過少となるおそれがない範囲の量でターゲッティング鋳型核酸を導入すれば、遺伝子破壊とランダムインテグレーションとをともに抑制して、高いノックイン効率が得られうる。
【0035】
本発明において、トランスフェクション手順(1)に供される導入核酸は、それぞれ別々の鋳型核酸またはガイドRNAとして細胞に導入されることが好ましい。例えば、導入核酸としてベクターを用いて、前記(a)~(d)の鋳型核酸を導入する場合、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列、ガイドRNAをコードする核酸配列、外来核酸配列、及び選択マーカをコードする核酸配列はいずれも同一のベクターに含まれず、別々のベクターに含まれていることが好ましい。
【0036】
本発明の方法は、ノックイン及びノックアウトのいずれの遺伝子改変にも適用することが可能であり、ノックインに適用すること(ノックイン方法)が好ましい。
【0037】
本発明のある態様では、セレクション鋳型核酸のモル数(C)は、ヌクレアーゼ鋳型核酸のモル数(A)、ガイドRNA鋳型核酸またはガイドRNAのモル数(B)、及びターゲッティング鋳型核酸のモル数(D)のいずれにも比して少ないことが好ましい。本発明において、トランスフェクション手順(1)に供されるセレクション鋳型核酸のモル数(C)を、導入核酸のモル数の合計(A+B+C+D)に対して特定の割合とすることにより、より高い効率で標的部位が改変された細胞が得られうる。ある実施態様では、セレクション鋳型核酸のモル数(C)の導入核酸のモル数の合計に対する割合(C/(A+B+C+D))は、1/400~1/10、好ましくは1/200~1/5、より好ましくは1/150程度とされる。
【0038】
さらに好ましい実施態様としては、セレクション鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数を乗じた値を、導入核酸のモル数の合計で除した値(以下「Factor値」とも称する)を特定の割合とすることができる。
Factor値は、ヌクレアーゼ鋳型核酸のモル数(A)、ガイドRNA鋳型核酸配列またはガイドRNAのモル数(B)、セレクション鋳型核酸のモル数(C)、及びターゲッティング鋳型核酸のモル数(D)の合計(A+B+C+D)に対する、セレクション鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数(n)を乗じた数の割合(C×n/(A+B+C+D))として定義される。
Factor値=C×n/(A+B+C+D)
Factor値としては0.01~0.8とすることができ、好ましくは0.02~0.4、より好ましくは0.02~0.2、特に好ましくは0.02~0.04とされる。
【0039】
本発明における「導入核酸の種類」に関し、同一種類とみなしうる導入核酸とは、その核酸配列が完全一致するものをいう。従って、鋳型核酸とgRNAとは別種類の導入核酸である。
また、鋳型核酸のうち、ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸、セレクション鋳型核酸及びターゲッティング鋳型核酸も、互いに異なる核酸配列を含むものであるので、別種類の導入核酸である。ただし、ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸、セレクション鋳型核酸及びターゲッティング鋳型核酸のいずれか2以上が結合し1つの鋳型核酸となっている場合には、当該結合鋳型核酸を1種類とカウントする。
さらに、ヌクレアーゼ鋳型核酸であっても、例えばCas9ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸とCas9ニッカーゼをコードする核酸配列を含む鋳型核酸とは、互いに異なる核酸配列を含むものであるので、別種類の導入核酸である。また、Cas9ヌクレアーゼのあるドメインをコードする核酸配列を含む鋳型核酸とCas9ヌクレアーゼの他のドメインをコードする核酸配列を含む鋳型核酸も、互いに異なる核酸配列を含むものであるので、別種類の導入核酸である。
この点、gRNA鋳型核酸、セレクション鋳型核酸及びターゲッティング鋳型核酸も同様であり、鋳型核酸の核酸配列中に含まれるgRNA、セレクションマーカまたは外来核酸配列の核酸配列において互いに異なる鋳型核酸は全て別種類の導入核酸である。また、鋳型核酸が例えばプラスミドベクターである場合のように、鋳型核酸がヌクレアーゼ、gRNA、セレクションマーカ、または外来核酸配列の核酸配列以外の核酸配列(例えばプロモーター配列等)を有する場合においては、これらの核酸配列において互いに異なる鋳型核酸も全て別種類の導入核酸である。
【0040】
本発明は、ある観点では、「導入核酸の種類」を2以上(ただし、そのうちの少なくとも1つにセレクション鋳型核酸を含む導入核酸とする)とし、かつ、トランスフェクション時に使用するセレクション鋳型核酸のモル数を他の導入核酸に含まれる鋳型核酸に比して少なくすることによる、ゲノムの標的部位が改変された所望の細胞を効率的に得る方法に関する。トランスフェクション時に使用する「導入核酸の種類」は2以上であればよく、「トランスフェクション時に導入核酸を2種類使用する場合」としては、(i)セレクション鋳型核酸 と(ii)その他の核酸とを含む導入核酸を使用する場合が挙げられ、具体的には、(i) セレクション鋳型核酸と(ii) ターゲッティング鋳型核酸とを含む導入核酸を使用する場合や、(i) セレクション鋳型核酸 と(ii)ヌクレアーゼ鋳型核酸およびgRNA鋳型核酸とを含む導入核酸を用いる場合が挙げられる。
【0041】
トランスフェクション時に使用するセレクションマーカ鋳型核酸のモル数(C)は、トランスフェクション時に使用するいずれの鋳型核酸またはガイドRNAのモル数よりも少ない。本発明において、トランスフェクション手順(1)に供されるセレクション鋳型核酸のモル数(C)を、導入核酸のモル数の合計(T)に対して特定の割合とすることにより、より高い効率で標的部位が改変された細胞が得られうる。ある実施態様では、セレクション鋳型核酸のモル数(C)の導入核酸のモル数の合計に対する割合(C/T)の好ましい範囲として、先述のC/(A+B+C+D)と同様の範囲が挙げられる。
【0042】
さらに好ましい実施態様としては、セレクション鋳型核酸のモル数(C)に導入核酸の種類の数(n’)を乗じた値を、導入核酸のモル数の合計(T)で除した値(以下「Factor値」とも称する)を特定の割合とすることができ、そのような値の好ましい範囲として、先述のC×n/(A+B+C+D)と同様の範囲が挙げられる。
【0043】
本発明における「導入核酸の種類」は、3以上であることが好ましい。
例えば、Cas9ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸、ピューロマイシンセレクション鋳型核酸及びターゲッティング鋳型核酸を導入核酸とする場合であって、これらが互いに結合せず別々の鋳型核酸になっている場合、導入核酸の種類の数は4である。もし、Cas9ヌクレアーゼ鋳型核酸とgRNA鋳型核酸とが結合し一つの鋳型核酸となっている場合には、導入核酸の種類の数は3となる。
【0044】
上述のとおり、トランスフェクション手順(1)に供される導入核酸は、それぞれ別々の鋳型核酸またはガイドRNAとして細胞に導入されることが好ましい。例えば、導入核酸としてプラスミドベクターを用いて、前記(a)~(d)の鋳型核酸を導入する場合、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列、ガイドRNAをコードする核酸配列、外来核酸配列、及び選択マーカをコードする核酸配列は、別個の4種のプラスミドベクターに含まれることとなる。このとき、Factor値は上記の式(C×4)/(A+B+C+D)により算出される。
【0045】
[細胞]
細胞は、真核細胞であれば特に限定されず、例えば、酵母、真菌、原生生物、植物細胞、昆虫細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、鳥類細胞、非ヒト哺乳類細胞、ヒト細胞であってよい。非ヒト哺乳類動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ及びサルが例示される。細胞は、培養細胞(in vitro及びex vivo)であってよい。
本明細書において、「in vitro」とは、試験管や培養器などの中で上記の細胞等に対し、例えばトランスフェクション等の操作を行うことを意味する。また、本明細書において、「ex vivo」とは、生体から臓器及び細胞等を取り出し、その取り出した細胞等に対して、例えばトランスフェクション等の操作を行うことを意味する。
【0046】
細胞は、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)であってよい。
「多能性幹細胞(pluripotent stem cell)」とは、胚性幹細胞(ES細胞)及びこれと同様の分化多能性、すなわち生体の様々な組織(内胚葉、中胚葉、外胚葉の全て)に分化する能力を潜在的に有する細胞を指す。ES細胞と同様の分化多能性を有する細胞としては、「人工多能性幹細胞」(本明細書中、「iPS細胞」と称することもある)が挙げられる。
「人工多能性幹細胞」とは、哺乳動物体細胞又は未分化幹細胞に、特定の因子(核初期化因子)を導入して再プログラミングすることにより得られる細胞を指す。現在、「人工多能性幹細胞」にはさまざまなものがあり、山中らにより、マウス線維芽細胞にOct3/4・Sox2・Klf4・c-Mycの4因子を導入することにより、樹立されたiPS細胞(Takahashi K, Yamanaka S., Cell, (2006) 126: 663-676)のほか、同様の4因子をヒト線維芽細胞に導入して樹立されたヒト細胞由来のiPS細胞(Takahashi K, Yamanaka S., et al. Cell, (2007) 131: 861-872.)、上記4因子導入後、Nanogの発現を指標として選別し、樹立したNanog-iPS細胞(Okita, K., Ichisaka, T., and Yamanaka, S. (2007). Nature 448, 313-317.)、c-Mycを含まない方法で作製されたiPS細胞(Nakagawa M, Yamanaka S., et al. Nature Biotechnology, (2008) 26, 101 - 106)、ウイルスフリー法で6因子を導入して樹立されたiPS細胞(Okita K et al. Nat. Methods 2011 May;8(5):409-12, Okita K et al. Stem Cells. 31(3):458-66.)も用いることができる。また、Thomsonらにより作製されたOCT3/4・SOX2・NANOG・LIN28の4因子を導入して樹立された人工多能性幹細胞(Yu J., Thomson JA. et al., Science (2007) 318: 1917-1920.)、Daleyらにより作製された人工多能性幹細胞(Park IH, Daley GQ. et al., Nature (2007) 451: 141-146)、桜田らにより作製された人工多能性幹細胞(特開2008-307007号)等も用いることができる。
このほか、公開されているすべての論文(例えば、Shi Y., Ding S., et al., Cell Stem Cell, (2008) Vol3, Issue 5,568-574;、Kim JB., Scholer HR., et al., Nature, (2008) 454, 646-650;Huangfu D., Melton, DA., et al., Nature Biotechnology, (2008) 26, No 7, 795-797)、あるいは特許(例えば、特開2008-307007号、特開2008-283972号、US2008-2336610、US2009-047263、WO2007-069666、WO2008-118220、WO2008-124133、WO2008-151058、WO2009-006930、WO2009-006997、WO2009-007852)に記載されている当該分野で公知の人工多能性幹細胞のいずれも用いることができる。
人工多能性細胞株としては、NIH、理研、京都大学等が樹立した各種iPS細胞株が利用可能である。例えば、ヒトiPS細胞株であれば、理研のHiPS-RIKEN-1A株、HiPS-RIKEN-2A株、HiPS-RIKEN-12A株、Nips-B2株、京都大学の253G1株、201B7株、409B2株、454E2株、606A1株、610B1株、648A1株等が挙げられる。
【0047】
[RNA誘導型ヌクレアーゼ]
本発明で使用されるRNA誘導型ヌクレアーゼとしては、例えばRNA誘導型エンドヌクレアーゼが挙げられる。
RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、少なくとも1つのヌクレアーゼドメイン及びgRNAと相互作用する少なくとも1つのドメインを含む。RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、gRNAによってゲノムの標的部位に誘導される。
【0048】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、クラスタ化調節的散在型短パリンドローム反復配列(clustered regularly interspersed short palindromic repeats:CRISPR)/CRISPR-関連(Cas)システムに由来しうる。CRISPR/Casシステムは、I型、II型、又はIII型システムとすることができる。適当なCRISPR/Casタンパク質の非限定的な例には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又は、CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(又は、CasA)、Cse2(又は、CasB)、Cse3(又は、CasE)、Cse4(又は、CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3,Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csz1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4及びCu1966が含まれる。
【0049】
一態様において、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、II型CRISPR/Casシステム由来である。特定の態様において、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質に由来する。Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(ストレプトコッカス・ピオゲネス)、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス属、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス属、ノカルジオプシス・ダッソンビエイ、ストレプトマイセス・プリスチナエスピラリス、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトスポランギウム・ロセウム、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス、バチルス・シュードマイコイデス、バチルス・セレニティレドセンス、イグジォバクテリウム・シビリカム(Exiguobacterium sibiricum)、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)、ラクトバチラス・デルブリッキー、ラクトバチルス・サリヴァリゥス、マイクロシーラ・マリナ、バークホルデリア細菌、ポラロモナス・ナフタレニボランス、ポラロモナス種、クロコスファエラ・ワストニイ(Crocosphaera watsonii)、シアノセイス属、ミクロシスティス・アエルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス属、アセトハロビウム・アラバチカム、アモニフェクス・デジェンシー(Ammonifex degensii)、カルジセルロシルプトル・ベクシ(Caldicellulosiruptor becscii)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリー(Campylobacter coli)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)カンジダ・デスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、クロストリジウム・ボツリヌス、クロストリジウム・ディフィシル、フィネゴルディア・マグナ、ナトラナエロビウス・テルモフィルスム(Natranaerobius thermophilusm)、ペロトマキュラム・サーモプロピオニカム、アシディチオバチルス・カルダス、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アロクロマチウム・ビノスム、マリノバクター属、ニトロソコッカス・ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス・ワッソニ(Nitrosococccus watsoni)、シュードアルテロモナス・ハロプランクティス、クテドノバクテル・ラセミファー(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム・エベスチガタム(Methanohalbium evestigatum)、アナベナ・バリアビリス、ノジュラリア・スプミゲナ、ノストック属、アルスロスピラ・マキシマ、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ属、リングビア属、ミクロコレス・クソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オシラトリア属、ペトロトガ・モビリス、サーモシホ・アフリカヌス、又はアカリオクロリス・マリーナに由来していてよい。
【0050】
CRISPR/Casタンパク質は、野生型CRISPR/Casタンパク質、修飾型CRISPR/Casタンパク質、又は、野生型もしくは修飾型CRISPR/Casタンパク質のフラグメントでありうる。CRISPR/Casタンパク質は、核酸結合親和性及び/又は特異性を増大し、酵素活性を変更し、あるいはタンパク質の別の特性を変更するために修飾されていてよい。
【0051】
RNA誘導型ヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼであってよい。ここで、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼとは、CRISPR/Casシステムにおいて必須のタンパク質成分を指し、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)と呼ばれる2つのRNAと複合体を形成した場合に、活性を有するエンドヌクレアーゼ又はニッカーゼを意味する。ニッカーゼは、一方のDNA鎖のみにニック(nick)を入れるDNA切断酵素をいう。 一般的に、Cas9タンパク質は、少なくとも2つのヌクレアーゼ(すなわち、DNase)ドメインを含む。例えば、Cas9タンパク質は、RuvC様ヌクレアーゼドメインおよびHNH様ヌクレアーゼドメインを含み得る。RuvCおよびHNHドメインは、DNA中に二本鎖の切断を行うために、一本鎖を切断するのに協働する(Jinek et al., Science, 337: 816-821)。ある態様において、Cas9由来のタンパク質は、1つの機能的ヌクレアーゼドメイン(RuvC様またはHNH様ヌクレアーゼドメインのいずれか)のみを含むように修飾されていてよい。例えば、Cas9由来のタンパク質は、ヌクレアーゼドメインの1つが、それがもはや機能しない(すなわち、ヌクレアーゼ活性が存在しない)ように欠失または変異するように修飾されていてよい。ヌクレアーゼドメインの1つが不活性である態様において、Cas9由来のタンパク質は、二本鎖核酸にニックを導入することができるが、二本鎖DNAを切断することはできない。例えば、RuvC様ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの変換(D10A)は、Cas9由来のタンパク質をニッカーゼに変換する。同様に、HNHドメインにおけるヒスチジンからアラニンへの変換(H840AまたはH839A)は、Cas9由来のタンパク質をニッカーゼに変換する。各ヌクレアーゼドメインは、部位特異的突然変異誘発法、PCR仲介性突然変異誘発法、および全遺伝子合成、ならびに当技術分野で公知の他の方法のような周知の方法を用いて修飾され得る。
【0052】
RNA誘導型ヌクレアーゼには、特にストレプトコッカス属菌(Streptococcus sp.)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus sp.)、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)、あるいはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼが用いられうる。このうち、由来元としては、ストレプトコッカス属菌においては、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)が好ましく、スタフィロコッカス属菌においては、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が好ましい。化膿性連鎖球菌及び黄色ブドウ球菌由来のCas9ヌクレアーゼ又はCas9ニッカーゼは、NGGまたはNAGトリヌクレオチドを認識する。
【0053】
また、特定の態様において、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、V型システムとして比較的最近同定されたCpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella)であってよい。Cpf1タンパク質は、アシッドアミノコッカス エスピー(Acidaminococcus sp.)及びラクノスピラセア・バクテリアム(Lachnospiraceae bacterium)、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)に由来していてよい。
【0054】
さらに、RNA誘導型ヌクレアーゼに替えて、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの部位特異的ヌクレアーゼを用いることもできる。
この実施形態に係る真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法においては、ゲノム中のある部位を切断する部位特異的ヌクレアーゼ(例えばTALEN1と称する)をコードする核酸配列を含む鋳型核酸(ヌクレアーゼ核酸)と他の部位を切断する部位特異的ヌクレアーゼ(例えばTALEN2と称する)をコードする核酸配列を含む鋳型核酸(ヌクレアーゼ核酸)、選択マーカをコードする核酸配列を含む鋳型核酸(セレクション鋳型核酸)を含む導入核酸が、トランスフェクション手順(1)において細胞に導入される。この際、セレクション鋳型核酸のモル数は、ヌクレアーゼ鋳型核酸のモル数(TALEN1とTALEN2を別々の鋳型核酸とする場合はその合計モル数)に比して少なくすればよい。さらに、トランスフェクション手順(1)において、ターゲッティング鋳型核酸が用いられる場合には、セレクション鋳型核酸のモル数は、ターゲッティング鋳型核酸のモル数よりも少なくされる。
要するに、本実施形態に係る真核細胞のゲノムの標的部位を改変する方法も、セレクション鋳型核酸のモル数が、セレクション鋳型核酸以外の導入核酸のモル数のいずれに比しても少なくされるものであり、本実施形態におけるFactor値も、導入核酸のモル数の合計に対する、セレクション鋳型核酸のモル数に導入核酸の種類の数(n)を乗じた数の割合として上記同様に定義され得る。
【0055】
[gRNA]
gRNAは、ゲノムの標的部位に特異的であり、RNA誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成して、RNA誘導型ヌクレアーゼをゲノムの標的部位に持ってくることができるRNAであればよい。gRNAは、2つのRNA、すなわち、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)で構成され、crRNAはゲノムの標的部位と相補的な部分を含む。gRNAは、crRNA及びtracrRNAを含むキメラRNAであってよく、crRNA及びtracrRNAの必須部分の融合によって作製される一本鎖RNA(sgRNA)であってもよい。
真核細胞においてトランスフェクションを行う場合は、gRNAは、crRNA及びtracrRNAを含むキメラRNAであってよく、crRNA及びtracrRNAの必須部分の融合によって作製される一本鎖RNA(sgRNA)であることが好ましい。
【0056】
gRNAは、3つの領域:染色体配列中の標的部位に相補的である5’末端における第一の領域、ステムループ構造を形成する第二の内部領域、及び本質的に一本鎖のままである第三の3’領域を含む。第一の領域は、gRNAがRNA誘導型ヌクレアーゼを特定の標的部位へ誘導するようにgRNA毎に異なっている。gRNAの第二及び第三の領域は、全てのgRNAで同じであってよい。
【0057】
第一の領域は、ゲノムの標的部位と塩基対を形成しうるように、標的部位で配列に相補的である。第一の領域は、約10のヌクレオチドから約25以上のヌクレオチドを含みうる。例えば、第一の領域とゲノムの標的部位との間の塩基対形成領域は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、または25以上のヌクレオチド長でありうる。例示的態様において、第一の領域は、19、20、または21のヌクレオチド長である。
【0058】
gRNAは、二次構造を形成する第二の領域を含む。該二次構造は、ステム(またはヘアピン)及びループを含みうる。ループ及びステムの長さは可変である。第二の領域は、約16から約60ヌクレオチド長の範囲でありうる。例示的態様において、ループは、約4ヌクレオチド長であり、ステムは、約12塩基対を含む。
ステム(またはヘアピン)及びループの長さとしては、約20から約80ヌクレオチド長であることが好ましく、約30から約50ヌクレオチドであることがより好ましい。
【0059】
gRNAは、本質的に一本鎖のままである第三の領域を3’末端に含む。第三の領域は、目的の細胞内の染色体配列に相補性を有しておらず、gRNAの残りの部分に相補性を有していない。第三の領域の長さは可変である。一般的に、第三の領域は、約4ヌクレオチド長以上である。例えば、第三の領域の長さは、約5から約60ヌクレオチド長の範囲である。
【0060】
第二及び第三領域の合わせた長さは、約30から約120ヌクレオチド長の範囲でありうる。第二及び第三領域を合わせた長さは、好ましくは約70から約100ヌクレオチド長の範囲である。
【0061】
[選択マーカ(セレクションマーカ)]
選択マーカ(セレクションマーカ)は、これを発現する細胞を、発現しない細胞から区別可能とするポリペプチドであって、例えば、蛍光タンパク質、呈色反応及び/又は発光反応を触媒する酵素、薬剤耐性因子等であってよい。蛍光タンパク質としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光プロテイン(CFP)、黄色蛍光プロテイン(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)などを用いることができる。呈色反応及び/又は発光反応を触媒する酵素としては、例えば、ルシフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ(GUS)及びβ-ガラクトシダーゼ(lacZ)などを用いることができる。薬剤耐性因子としては、例えば、ピューロマイシンやネオマイシン、ハイグロマイシン、G418、ブラストサイジン等の抗生物質に対する耐性因子が公知である。
選択マーカとしては、取扱いの容易性及び選択性などの観点からは、薬剤耐性因子であることが好ましく、特にピューロマイシン耐性因子であることが好ましい。一方、ノックイン効率の評価の容易性と正確性などの観点からは、蛍光タンパク質並びに呈色反応及び/又は発光反応を触媒する酵素が好ましく、蛍光タンパク質がより好ましい。
【0062】
[導入核酸]
本発明における導入核酸とは、細胞に導入する核酸を意味し、ガイドRNAおよび鋳型核酸を含む。
【0063】
[鋳型核酸]
本発明における鋳型核酸とは、他の分子を生産する際に鋳型のように働く核酸を意味し、例えば、DNA(例えば、オリゴDNA)、RNA(例えば、オリゴRNA)及びこれらのうち少なくとも一つを含む核酸、ベクター等が挙げられる。本発明における鋳型核酸は、より具体的には、ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸、セレクション鋳型核酸及びターゲッティング鋳型核酸を指す。
これらの鋳型核酸には、異なるタイプのものを用いてもよい。例えば、ヌクレアーゼ鋳型核酸、セレクション鋳型核酸及びgRNA鋳型核酸としては遺伝子発現ベクターを用い、ターゲッティング鋳型核酸としては、オリゴDNAを含む核酸を用いることもできる。
【0064】
本発明におけるベクターには、例えば、プラスミドベクター、ファージミド、コスミド、人工/ミニ染色体、トランスポゾン、及びウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなど)が含まれる。ベクターはプラスミドベクターであることが好ましく、好適なプラスミドベクターの型の非限定的な例には、pUC、pBR322、pET、pBluescript、及びそれらの変異体が含まれる。ベクターは、さらなる発現調節配列(例えば、エンハンサー配列、Kozak配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列など)、セレクションマーカ(例えば、上述の薬剤耐性因子等)配列、複製起点などを含みうる。なお、本明細書において、プロモーター制御下に、導入した細胞内で発現させたいタンパク質、RNA及び因子等をコードする核酸配列を組み込んだベクターを特に「遺伝子発現ベクター」と称することがある。
【0065】
プロモーターには、例えば、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、シミアンウイルス(SV40)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、伸張因子(ED1)-αプロモーター、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーター、チューブリンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、それらのフラグメント、又は上記の何れかの組み合わせが含まれうる。プロモーター配列は、野生型であっても、又はより効率的な発現のために修飾されていてもよい。
【0066】
本発明における鋳型核酸としては、プラスミドベクターを用いることが好ましい。
【0067】
[ヌクレアーゼ鋳型核酸及びセレクション鋳型核酸]
ヌクレアーゼ鋳型核酸及びセレクション鋳型核酸は、汎用の遺伝子発現ベクターに、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列又はセレクションマーカをコードする核酸配列を組み込んだものであってよい。RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列及びセレクションマーカをコードする核酸配列は、汎用のプロモーターの制御下に組み込まれる。
【0068】
RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列及びセレクションマーカをコードする核酸配列は、目的の真核細胞においてタンパク質に効率的に翻訳されるために最適化されたコドンでありうる。例えば、コドンは、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ、魚、両生類、植物、酵母、昆虫などにおける発現のために最適化されていてよい。コドンの最適化は、当業者にとって公知の方法により実施することができる。
【0069】
[gRNA鋳型核酸またはgRNA]
gRNAは、RNAの形態(gRNA)、又はgRNA鋳型核酸(例えば、gRNAをコードするDNA)の形態で、細胞に導入されうる。本発明においては、好ましくは、gRNA鋳型核酸の形態で導入され、より好ましくは汎用の遺伝子発現ベクターにgRNAをコードする核酸配列を組み込んだgRNA鋳型核酸(gRNAベクター)として導入される。gRNAベクターを用いる場合、gRNAをコードする核酸配列は、汎用のプロモーターの制御下に組み込まれる。
【0070】
RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸配列及びgRNAをコードする核酸配列は、同一の鋳型核酸の異なるプロモーターの制御下に組み込まれ、ヌクレアーゼ鋳型核酸とgRNA鋳型核酸とが1つの鋳型核酸となっていてもよいが、ノックイン及び/またはノックアウト効率の向上の観点からは、別々の鋳型核酸であることが好ましい。
【0071】
[ターゲッティング鋳型核酸]
ターゲッティング鋳型核酸としては、オリゴDNA及び汎用のベクター等であって、外来核酸配列を含むものを用いることができ、外来核酸配列を含むプラスミドベクターが好ましい。外来核酸配列は、細胞にとって天然に存在しない配列又は細胞ゲノム中の天然の位置とは異なる位置に存在する配列とすることができる。例えば、外来核酸配列がゲノム中に挿入されることにより、細胞が、挿入された外来核酸配列に含まれる配列によりコードされるタンパク質を発現することが可能となる。また、挿入された外来核酸配列に含まれる配列が終止コドンをコードする場合には、天然の状態では発現するタンパク質の生成を抑制することが可能となる。外来核酸配列は、外来プロモーターの制御下に組み込まれたタンパク質コーディング配列を含みうる。あるいは、外来核酸配列は、その発現が内在性プロモーターにより制御されうるように、染色体配列中に組み込まれうる。
【0072】
また、外来核酸配列は、標的部位又はその近位で染色体の天然配列と実質的に同一でありうるが、少なくとも1つのヌクレオチド変化を含む配列とすることができる。ヌクレオチド変化は、例えば、1又はそれ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換又は付加、あるいはそれらの組み合わせでありうる。これにより、細胞は、標的部位の染色体配列から、改変された遺伝子産物を生成しうる。
【0073】
ターゲッティングベクターは、挿入する外来核酸配列を含むターゲッティングカセットを、HRを起こさせるための2つのホモロジーアームで挟み込んだ構造を有する。ホモロジーアームはそれぞれ、染色体の標的部位の上流又は下流に位置する配列と実質的に同一の配列を有する。ここで、「実質的に同一の配列」は、少なくとも約75%の配列同一性を有する配列を意味する。従って、ホモロジーアームは、標的部位の上流又は下流の配列と75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有しうる。配列同一性は、好ましくは少なくとも85%または90%、より好ましくは少なくとも95%または97%、特に好ましくは少なくとも99%である。
「配列同一性」という用語は、2つの遺伝子配列を当該塩基対の一致が最大となるように整列させたときに、2つの配列間で一致する塩基対の割合(%)を意味する。
配列同一性は、当業者に公知の任意の方法で決定することができる。例えば、Higginsらによる多重整列プログラムであるClustal(Gene 73,1,237-244,1988)により決定することができる。Clustalプログラムは、例えば欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute(EBI))のインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
【0074】
ホモロジーアームは、20ヌクレオチドから5000ヌクレオチド長の範囲でありうる。ホモロジーアームは、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2800、3000、3200、3400、3600、3800、4000、4200、4400、4600、4800、または5000ヌクレオチドを含みうる。ホモロジーアームは、好ましくは、50から1500ヌクレオチド長、より好ましくは500~1500ヌクレオチド長、特に好ましくは700~1000ヌクレオチド長の範囲でありうる。
【0075】
ターゲッティングカセットは、セレクションマーカ(例えば、上述の薬剤耐性遺伝子等)をコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0076】
ターゲッティングベクターは、プラスミドベクターでありうる。
【0077】
[トランスフェクション手順(1)]
本明細書において、トランスフェクションとは、導入核酸を、細胞内に導入することを目的として、細胞と接触させる操作を意味する。また、本明細書において、導入核酸の細胞内への導入とは、トランスフェクションにより細胞と接触した導入核酸が細胞内に取り込まれることを意味する。
ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸またはgRNA、ターゲッティング鋳型核酸及びセレクション鋳型核酸等の導入核酸は、同時に又は連続してトランスフェクションされる。トランスフェクションは従来公知の手法で行うことができ、例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン処理、リポフェクション、ナノ粒子媒介性トランスフェクションなどが適用できる。これらの手法により、導入核酸を細胞内へ導入することができる。例えば、エレクトロポレーションによれば、導入核酸を適用した細胞を含む緩衝液に適当な電圧をかけることにより、導入核酸が細胞膜を通過し、細胞内へと導入される。別の例として、リポフェクションによれば、脂質分子と導入核酸とのコンプレックスを細胞に適用することにより、当該コンプレックスが細胞膜を通過し、導入核酸が細胞内へと導入される。上記の通り、本発明におけるトランスフェクションの手法は特に限定されず、例えば、Nature Protocols(K.Yusa et al,vol.8,No.10,2013,2061-2078)、Nature Protocols(T.Sakuma et al,vol.11,No.1,2016,118-133)、Nature Protocols(B.Wefers et al,vol.8,No.12,2013,2355-2379)等に記載された手法と同様の手法とすることができる。
導入核酸が導入された細胞は、適当な期間培養される。適当な期間培養されることにより、例えば、ヌクレアーゼ、gRNA、セレクションマーカ等、ゲノム標的部位の改変に必要な因子が発現した細胞を得ることができる。また、ノックイン方法の場合は、外来核酸配列が挿入された細胞を得ることができる。培養期間としては特に限定されず、24~72時間程度とすることができ、好ましくは24~48時間程度である。培養条件としては、約37℃、5%CO存在下とすることができる。培地は細胞の種類によって適宜選択される。
【0078】
[選択手順(2)]
本手順では、セレクションマーカを発現する細胞が選択される。
【0079】
細胞の選択は、例えば、セレクションマーカとして薬剤耐性因子を用いる場合、トランスフェクション手順(1)後の細胞を、薬剤の存在下で培養し、薬剤耐性を獲得した細胞のみを生存細胞として得ることによって行うことができる。また、細胞の選択は、例えば、セレクションマーカとして蛍光タンパク質を用いる場合には、トランスフェクション手順(1)後の細胞について、蛍光顕微鏡、蛍光強度計又はフローサイトメータ等を用いて蛍光を示す細胞を識別、分取することにより行うことができる。
薬剤の存在下で培養する場合の培地中の薬剤濃度としては、薬剤濃度は薬剤の種類により適宜選択され、薬剤耐性を獲得した細胞が生存し、薬剤耐性を獲得しなかった細胞が死滅する濃度とすることができる。より具体的には、例えば、ピューロマイシン耐性因子を導入した場合は、ピューロマイシン濃度を0.02~4μg/mLとすることができ、1μg/mL程度とすることが好ましい。ハイグロマイシン耐性因子を導入した場合は、ハイグロマイシン濃度を50~1000μg/mlとすることができ、400μg/mL程度とすることが好ましい。培養条件としては、約37℃、5%CO存在下とすることができる。培地は使用する細胞によって適宜選択される。
【0080】
また、ターゲッティング鋳型核酸のターゲッティングカセットにもセレクションマーカ(例えば、上述の薬剤耐性遺伝子等)をコードする核酸配列が含まれる場合、当該選択マーカの発現を指標とした細胞の選択を併せて行ってもよい。この場合、セレクション鋳型核酸が発現するセレクションマーカとターゲッティング鋳型核酸が発現するセレクションマーカとは互いに異なるものとすることができ、例えば薬剤耐性因子として、ピューロマイシン耐性因子とネオマイシン耐性因子の組み合わせが利用されうる。2種類のセレクションマーカを組合せて用いることにより、ゲノムの標的部位に関して、ヘテロアリルでのノックインに比してホモアリルでのノックインの比率が高められうる。
上記の濃度の薬剤存在下で、トランスフェクション手順(1)に供された細胞を培養することにより、薬剤耐性を獲得した細胞を選択することができる。薬剤存在下での培養期間としては薬剤の種類によって適宜選択される。例えば、ピューロマイシンの場合は、2日間以上とすることができ、好ましくは3~14日程度とすることができる。ハイグロマイシンの場合は、5日間以上とすることができ、好ましくは7~14日間程度とすることができる。ネオマイシンの場合は、7日間以上とすることができ、好ましくは10~20日間程度することができる。
セレクションマーカによる細胞の選択手順としては特に限定されず、例えば、StemCells(C.Ren et al,vol.24,2006,1338-1347)、Biochem.Biophysic.Res.Com.(A.Kubosaki et al,vol.426,2012,141-147)、Cancer Res.(I.Yamato et al,vol.72,No.18,2012,4829-4839)、等に記載された手法と同様の手法を用いることができる。
【0081】
2.染色体上の所定座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在の検出方法
本発明に係る染色体上の所定座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在の検出方法(本明細書において、「本発明の検出方法」と称することがある。)は、以下の手順(2)(3)を必須に含み、手順(1)を任意に含む。
(1)被検細胞からゲノムDNA断片を調製する手順。
(2)前記検出対象核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、
前記所定座位内の前記検出対象核酸配列以外の核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、
の前記染色体に由来するゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する手順。
(3)前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸が前記ゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブを検出した場合に、前記検出対象核酸配列が前記所定座位に存在することを検出し、
ダブルポジティブを検出しなかった場合に、前記検出対象核酸配列が前記所定座位に存在しないことを検出する手順。
【0082】
ここで、「座位」という用語は、「染色体上の位置(Locus)」と同義である。「座位」は、転写調節領域を含む遺伝子領域のみならず、非遺伝子領域であってもよい。
「検出対象核酸配列」は、天然あるいは人工の任意の核酸配列であってよい。天然の核酸配列は、転写領域/非転写領域の核酸配列、及びタンパク質コード領域/非コード領域の核酸配列を全て含み得るものとする。また、検出対象核酸配列の塩基長も任意であってよい。
【0083】
本発明の検出方法によれば、ゲノム標的部位の改変に供した細胞サンプルにおける所望の改変が生じた細胞の割合を知ることもできる。一般に、上記細胞サンプルから所望の改変が生じた細胞を得るためには、(i)上記細胞サンプルを限界希釈法等に供してモノクローン化したあと、(ii)モノクローン化した細胞におけるゲノム配列の確認が行われる。上記細胞サンプルにおいて所望の改変が生じた細胞の割合が低い場合、上記(ii)の確認において所望の改変が生じた(モノクローン化された)細胞を得ることができる可能性が低くなる。効率的に(モノクローン化された)所望の細胞を得るためには、長い時間を要する上記(i)を行う前に、モノクローン化後に所望の改変が生じた細胞を得られる程度に高い割合で細胞サンプル内に所望の改変が生じた細胞が含まれるか否かを知ることが望ましい。本発明の検出方法を上記細胞サンプルに適用することにより、上記細胞サンプルにおいて所望の改変が生じた細胞の割合を知ることが可能であるため、上記(i)および(ii)の各工程を実施したあと、結果的に所望の細胞が得られないという可能性を低減させることができる。
なお、上記細胞サンプルとしては、例えば、本発明の方法を適用された真核細胞が挙げられる。
また、上記(ii)に記載の確認は、上記細胞サンプルに本発明の検出方法を適用することにより行うことができる。
【0084】
[ゲノムDNA断片調製手順(1)]
本手順では、被検細胞からゲノムDNA断片を調製する。被検細胞からのゲノムDNA断片の調製は、従来公知の手法(例えばMethods Enzymol., 2013, 529:161-169及びNucleic Acids Res., 1988, 16(12):5698参照).によって行うことができ、例えばシリカメンブレン法に基づく、スピンカラムとバッファーとを含んでなる市販のキットを用いて行うことができる。
【0085】
細胞からの抽出操作により、ゲノムDNAは断片化され、通常1kbp~600kbp、典型的には50~100kbp程度のゲノムDNA断片となる。
【0086】
本手順は、予め調製されたゲノムDNA断片を次工程で用いる場合には、必須とはならない。
【0087】
[デジタルPCR手順(2)]
本手順では、検出対象核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、所定座位内の検出対象核酸配列以外の核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸とのゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する。
【0088】
デジタルPCR法は、核酸の検出と定量のための手法であり、本技術分野において周知かつ汎用の手法である。デジタルPCR法では、まず、ナノ流体チップを用いて、サンプル(ターゲット核酸を含む核酸の限界希釈溶液)を、多数の微小反応領域内に、分割して導入する。微小反応領域の一部には、ターゲット核酸が導入されており、その他の微小反応領域にはターゲット核酸以外の核酸が含まれるかあるいは核酸が全く含まれていない。次いで、ターゲット核酸を増幅可能なプライマーセットを用いたPCR反応を各微小反応領域内において同時並行的に行う。増幅中、ターゲット核酸に特異的にハイブリダイズする色素標識プローブを用いてシグナルを検出する(陽性)。ターゲット核酸が微小反応領域内に存在しなければ、当該微小反応領域ではシグナルは検出されない(陰性)。反応後、微小反応領域のシグナル陽性/陰性比に基づいてサンプル中のターゲット核酸の絶対分子数を算定することもできる。ターゲット核酸を二つ以上含んでいる可能性のある微小反応領域には、ポアソンモデルによる補正係数が適用される。
【0089】
図1を参照して、デジタルPCR法に供される第一プローブ核酸と第二プローブ核酸について説明する。
図1(A)は、ゲノムDNA断片上の座位Lに存在する検出対象核酸配列Tを示している。
第一プローブ核酸P(以下、単に「プローブP」と称する)は、検出対象核酸配列Tの全部又は一部に相補的な塩基配列を有し、検出対象核酸配列Tに特異的にハイブリダイズする。
第二プローブ核酸P(以下、単に「プローブP」と称する)は、座位L内の検出対象核酸配列T以外の核酸配列に相補的な塩基配列を有し、該核酸配列に特異的にハイブリダイズする。
【0090】
プローブPは検出対象核酸配列T内の塩基配列にハイブリダイズし、一方、プローブPは検出対象核酸配列T外の塩基配列にハイブリダイズするものであるので、座位LにおいてプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域とは所定塩基長(距離d)離れることとなる。
距離dは、ここでは特に限定されないが、0.1kb~100kb程度、好ましくは0.1~10kb程度、より好ましくは0.1kb~5kb程度、さらに好ましくは0.1kb~2kb程度である。
【0091】
プローブP、Pには、それらのプローブが相補鎖(デジタルPCR法におけるターゲット核酸)へハイブリダズしたことを光学的に検出可能とするための化学修飾及び色素標識がなされた市販のプローブ(例えばTaqMan(登録商標)プローブ)を用いればよい。PCR反応のために、プローブP、Pのターゲット核酸をそれぞれ増幅可能なプライマーセットが設計される。
【0092】
[検出手順(3)]
本手順では、プローブP及びプローブPがゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブが検出された場合に、検出対象核酸配列Tが座位Lに存在することを検出し、ダブルポジティブが検出されなかった場合に、検出対象核酸配列Tが座位Lに存在しないことを検出する。
【0093】
図1を参照して説明する。
まず、図1(A)に示したように、ゲノムDNA断片上の座位Lに検出対象核酸配列Tが存在する場合、デジタルPCR法において、プローブP及びプローブPのシグナルがいずれも陽性となる「ダブルポジティブ」が検出される。
他方、デジタルPCR法において、プローブPのシグナルが陽性となる微小反応領域、プローブPのシグナルが陽性となる微小反応領域があるものの、ダブルポジティブとなる微小反応領域はない場合、図1(B)に示すように、検出対象核酸配列Tは、いずれかのゲノムDNA断片上の座位であって、プローブPがハイブリダイズする第二領域を有さない座位Lに存在していることが明らかとなる。野生型染色体において検出対象核酸配列Tが座位Lに存在する内在核酸配列である場合、プローブPおよびプローブPのダブルポジティブとなる微小反応領域がないことは、被検細胞においては当該内在核酸配列が本来の座位Lから座位Lに転座しているか、又は染色体上から欠失していることを明らかにする。
また、デジタルPCR法において、プローブPのシグナルのみが陽性となり、プローブPのシグナルが陰性となる場合、図1(C)に示すように、検出対象核酸配列Tは、プローブPがハイブリダイズする第二領域を有する座位Lに存在しておらず、かつ、いずれのゲノムDNA断片上にも存在していないことが明らかとなる。野生型染色体において検出対象核酸配列Tが座位Lに存在する内在核酸配列である場合、このことは、被検細胞においては当該内在核酸配列が染色体上から欠失していることを明らかにする。
【0094】
ここで、ゲノムDNA断片調製手順(1)の際に、座位L内においてプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間で染色体の予期せぬ分断(以下、単に「フラグメンテーション」ともいう)が生じると、「シングルポジティブ1」及び「シングルポジティブ2」の偽陰性となる。このようなフラグメンテーションの影響を排除する方法について、後段では詳しく説明する。
【0095】
3.ノックイン効率の評価方法
本発明に係る染色体上の所定座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在の検出方法は、ノックイン効率の評価方法に応用され得る。
本発明に係るノックイン効率の評価方法は以下の手順を含む。
(1)被検細胞あるいはその集団からゲノムDNA断片を調製する手順。
(2)前記被検細胞の染色体上の目的座位に遺伝子組換えを介して挿入されることが企図された外来核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、
前記目的座位内の前記外来核酸配列以外の核酸配列であって、遺伝子組換えに供された2つのホモロジーアームの間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、
の前記染色体に由来するゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する手順。
(3)前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸が前記ゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブを検出した場合に、前記外来核酸配列が前記目的座位に存在することを検出し、
ダブルポジティブを検出しなかった場合に、前記外来核酸配列が前記目的座位に存在しないことを検出する手順。
【0096】
ここで、「外来核酸配列」は、任意の核酸配列であってよく、その塩基長も任意であってよい。
また、ここでは、ホモロジーアームを用いた相同組換えを介して染色体上の目的座位に挿入されることが企図された外来核酸配列を検出する実施形態を説明するが、外来核酸配列は、相同組換えに依らずに染色体上の目的座位に挿入されているものであってもよい。相同組換えに依らずに染色体上の目的座位に外来核酸配列を挿入する手法は、例えばHITI(homology-independent targeted integration)と称される方法(Nature, 2016, 540(7631):144-149)及びObLiGaRe(Obligate Ligation-Gated Recombination)と称される方法(Genome Res. 2013, 23(3):539-46)などが公知である。この場合において、前記第二プローブは、前記目的座位内の核酸配列であって、前記外来核酸配列以外の核酸配列にハイブリダイズするように設計される。
【0097】
[ゲノムDNA断片調製手順(1)]
本手順では、染色体上の目的座位に相同組換えを介して外来核酸配列を挿入するための操作に供された被検細胞からゲノムDNA断片を調製する。手順の詳細は既に説明したとおりである。
【0098】
被検細胞について外来核酸配列の目的座位への挿入率(ノックイン効率)を評価する場合には、当該被検細胞の細胞集団からゲノムDNA断片を調製する。
【0099】
[デジタルPCR手順(2)]
本手順では、外来核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、目的座位内の外来核酸配列以外の核酸配列であって、相同組換えに供された2つのホモロジーアームの間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、のゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する。
ここで、「2つのホモロジーアームの間」には、2つのホモロジーアーム自体も含まれる。すなわち、第二プローブは、2つのホモロジーアーム自体のいずれにもハイブリダイズしないものである。
【0100】
図2を参照して、デジタルPCR法に供される第一プローブ核酸と第二プローブ核酸について説明する。
図2(A)は、ゲノムDNA断片上の座位Lに存在する外来核酸配列Tを示している。
第一プローブ核酸P(以下、単に「プローブP」と称する)は、外来核酸配列Tの全部又は一部に相補的な塩基配列を有し、外来核酸配列Tに特異的にハイブリダイズする。
第二プローブ核酸P(以下、単に「プローブP」と称する)は、座位L内の外来核酸配列T以外の核酸配列であって、相同組換えに供された2つのホモロジーアームHA、HAの間に位置しない核酸配列に相補的な塩基配列を有し、該核酸配列に特異的にハイブリダイズする。
ここで、「ホモロジーアームHAとホモロジーアームHAの間」には、ホモロジーアームHA、HA自体も含まれる。すなわち、プローブPは、ホモロジーアームHA、HA自体にもハイブリダイズしないものである。
【0101】
プローブPは外来核酸配列T内の塩基配列にハイブリダイズし、一方、プローブPは外来核酸配列T外の塩基配列にハイブリダイズするものであるので、座位LにおいてプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域とは所定塩基長(距離d)離れることとなる。
距離dは、0.1kb~100kb程度、好ましくは0.5~10kb程度、より好ましくは1kb~5kb程度、さらに好ましくは1kb~2kb程度とされる。なお、ホモロジーアームの長さは、外来核酸配列Tの長さによって適宜調節することができるが、一般的に、0.02kb~8kb程度、好ましくは0.04kb~3kb程度、より好ましくは0.5kb~1.5kb程度である。
なお、図では、プローブPがハイブリダイズする第二領域を、ホモロジーアームHAの上流に示したが、同領域は、ホモロジーアームHAの下流に位置してもよい。
【0102】
被検細胞集団について外来核酸配列Tの座位Lへの挿入率(%)を評価する場合には、本手順において、プローブP及びプローブPのゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションを定量化する。定量化は、デジタルPCR法において、反応後の微小反応領域のシグナル陽性/陰性を算出することにより行い得る。
【0103】
[検出手順(3)]
本手順では、プローブP及びプローブPがゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブとなった場合に、外来核酸配列Tが座位Lに存在することを検出し、プローブP及びプローブPのいずれか一方のゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションのみが検出されることに基づいて、外来核酸配列Tが座位Lに存在しないことを検出する。
【0104】
図2を参照して説明する。
まず、図2(A)に示したように、ゲノムDNA断片上の座位Lに外来核酸配列Tが存在する場合、デジタルPCR法において、プローブP及びプローブPのシグナルがいずれも陽性となる「ダブルポジティブ」が検出される。このことは、外来核酸配列Tが目的とした座位Lに相同組換えを介して正確に挿入されていることを示す。
他方、デジタルPCR法において、プローブPのシグナルが陽性となる微小反応領域、プローブPのシグナルが陽性となる微小反応領域があるものの、ダブルポジティブとなる微小反応領域はない場合、図2(B)に示すように、外来核酸配列Tは、いずれかのゲノムDNA断片上の座位であって、プローブPがハイブリダイズする第二領域を有さない座位Lに存在していることが明らかとなる。このことは、外来核酸配列Tが目的としていない座位Lにランダムインテグレーションによって挿入されていることを示す。
また、デジタルPCR法において、プローブPのシグナルのみが陽性となり、プローブPのシグナルが陰性となる場合、図2(C)に示すように、外来核酸配列Tは、プローブPがハイブリダイズする第二領域を有する座位Lに存在しておらず、かつ、いずれのゲノムDNA断片上にも存在していないことが明らかとなる。このことは、外来核酸配列Tが染色体上に挿入されていないことを示す。
【0105】
被検細胞集団について外来核酸配列Tの座位Lへの挿入率(%)を評価する場合には、デジタルPCR手順(2)におけるプローブP及びプローブPのゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの定量結果に基づいて挿入率(%)を算出する。
具体的には、プローブP及びプローブPのハイブリダイゼーション量(ダブルポジティブ:DP)及びプローブPのみのハイブリダイゼーション量(シングルポジティブ2:SP2)から、以下の式により挿入率(%)を算出する。
外来核酸配列の目的座位への挿入率(%)=DP×100/(DP+SP2)
【0106】
また、以下の式によれば、外来核酸配列Tの染色体へのランダムインテグレーション率(%)を算出することもできる。
外来核酸配列の染色体へのランダムインテグレーション率(%)=SP1×100/(DP+SP2)
【0107】
ここで、ゲノムDNA断片調製手順(1)の際に、座位L内においてプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間で染色体のフラグメンテーションが生じると、「シングルポジティブ1」及び「シングルポジティブ2」の偽陰性となる。フラグメンテーションが生じると、挿入率(%)算出値に影響を及ぼす場合がある。
【0108】
フラグメンテーションの影響を排除するため、本発明に係るノックイン効率の評価方法は、さらに以下の手順を含むことができる。
(4)前記染色体に、前記第一領域と前記第二領域との間の塩基長に相当する塩基長離れてハイブリダイズするプローブペア(例えば、プローブPおよびP)を用いて、前記ゲノムDNA断片への該プローブペアのハイブリダイゼーションをデジタルPCR法により定量化し、
前記プローブペア(プローブPおよびP)の両方のプローブのハイブリダイゼーション量(dp)、及び前記プローブペアのいずれか一方のみのハイブリダイゼーション量(sp)から、前記ゲノムDNA断片における以下の比率を算出する手順、
フラグメンテーション率(%)=<sp>×100/(dp+<sp>)
(式中、<sp>は、プローブペアの各プローブのハイブリダイゼーション量の平均値を示す。)
(5)前記挿入率(%)を前記フラグメンテーション率(%)で補正する手順。
【0109】
[フラグメンテーション率算出手順(4)]
フラグメンテーション率の算出方法の例を以下に記載する。本手順では、座位LにおけるプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間でのフラグメンテーションの発生率(%)を見積もるためのプローブペアが提供される。プローブペア(例えば、プローブPおよびプローブP)は、座位LにおけるプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間の塩基長に相当する塩基長(すなわち、距離d)離れて、染色体のいずれかの領域にハイブリダイズする。プローブペアの両方のプローブがハイブリダイズせずにどちらか一方のプローブのみがハイブリダイズするゲノムDNA断片が検出されることは、各プローブのハイブリダイズ領域の間(距離d)で染色体のフラグメンテーションが生じていることを示し、その検出頻度(%)は、座位LにおけるプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間(距離d)でのフラグメンテーションの発生率(%)とみなし得る。
したがって、ゲノムDNA断片調製手順(1)で調製されたゲノムDNA断片へのプローブペアのハイブリダイゼーションをデジタルPCR法により定量化することにより、以下の式から座位Lにおけるフラグメンテーションの発生率(%)を算出できる。
フラグメンテーション率(%)=<sp>×100/(dp+<sp>)
(ここで、「dp」は、プローブペアの両方のプローブのハイブリダイゼーション量を示し、<sp>は、プローブペアの各プローブのハイブリダイゼーション量の平均値を示す。なお、両プローブのハイブリダイゼーション量は理論上一致するため、平均値にかえてどちらか一方のプローブのハイブリダイゼーション量を計算に用いてもよい。)
【0110】
本手順は、ゲノムDNA断片調製手順(1)の度に行ってもよい。あるいは、同様の抽出条件によりゲノムDNA断片調製手順(1)を行う場合にはフラグメンテーション率(%)は同程度とみなしえるので、ある抽出条件でフラグメンテーション率(%)の算出を行った後、同条件でゲノムDNA断片調製手順(1)を行う際には、本手順は省略してもよい。また、フラグメンテーションが生じないか、フラグメンテーション発生率が挿入率(%)等の算出値に影響を与えない程度に十分に低い場合にも、本手順は省略してよい。
【0111】
[補正手順(5)]
本手順では、挿入率(%)をフラグメンテーション率(%)で補正する。
具体的には、フラグメンテーションによる見かけ上の数値の低下を補償するため、挿入率(%)の値にフラグメンテーション率(%)を足して、現実の挿入率(%)を求める。
【0112】
4.ノックアウト効率の評価方法
本発明に係る染色体上の所定座位における検出対象核酸配列の存在又は非存在の検出方法は、ノックアウト効率の評価方法にも応用され得る。
本発明に係るノックアウト効率の評価方法は以下の手順を含む。
(1)被検細胞あるいはその集団からゲノムDNA断片を調製する手順。
(2)前記被検細胞の染色体上の目的座位から遺伝子組換えを介して欠失されることが企図された内在核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、
前記目的座位内の前記内在核酸配列以外の核酸配列であって、遺伝子組換えに供された2つのホモロジーアーム間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、
の前記染色体に由来するゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する手順。
(3)前記ダブルポジティブが得られず、かつ、前記第二プローブ核酸の前記ゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションが検出された場合、前記内在核酸配列が前記目的座位に存在しないことを検出し、
前記第一プローブ核酸及び前記第二プローブ核酸が前記ゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブを検出した場合に、前記内在核酸配列が前記目的座位に存在することを検出する手順。
【0113】
ここで、「内在核酸配列」は、任意の核酸配列であってよく、転写領域/非転写領域の核酸配列、及びタンパク質コード領域/非コード領域の核酸配列を全て含み得るものとする。また、内在核酸配列の塩基長も任意であってよい。
【0114】
[ゲノムDNA断片調製手順(1)]
本手順では、染色体上の目的座位から遺伝子組換えを介して内在核酸配列を欠失させることを企図された被検細胞からゲノムDNA断片を調製する。手順の詳細は既に説明したとおりである。
【0115】
被検細胞について内在核酸配列の欠失率(ノックアウト効率)を評価する場合には、当該被検細胞の細胞集団からゲノムDNA断片を調製する。
【0116】
[デジタルPCR手順(2)]
本手順では、内在核酸配列の全部又は一部にハイブリダイズする第一プローブ核酸と、目的座位内の内在核酸配列以外の核酸配列であって、遺伝子組換えに供された2つのホモロジーアームの間に位置しない核酸配列にハイブリダイズする第二プローブ核酸と、のゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの有無をデジタルPCR法により検出する。
ここで、「2つのホモロジーアームの間」には、2つのホモロジーアーム自体も含まれる。すなわち、第二プローブは、2つのホモロジーアーム自体のいずれにもハイブリダイズしないものである。
【0117】
図3を参照して、デジタルPCR法に供される第一プローブ核酸と第二プローブ核酸について説明する。
図3(A)は、ゲノムDNA断片上の座位Lに存在する内在核酸配列Tを示している。
第一プローブ核酸P(以下、単に「プローブP」と称する)は、内在核酸配列Tの全部又は一部に相補的な塩基配列を有し、内在核酸配列Tに特異的にハイブリダイズする。
第二プローブ核酸P(以下、単に「プローブP」と称する)は、座位L内の内在核酸配列T以外の核酸配列であって、相同組換えに供された2つのホモロジーアームHA、HAの間に位置しない核酸配列に相補的な塩基配列を有し、該核酸配列に特異的にハイブリダイズする。
ここで、「ホモロジーアームHAとホモロジーアームHAの間」には、ホモロジーアームHA、HA自体も含まれる。すなわち、プローブPは、ホモロジーアームHA、HA自体にもハイブリダイズしないものである。
【0118】
プローブPは内在核酸配列T内の塩基配列にハイブリダイズし、一方、プローブPは内在核酸配列T外の塩基配列にハイブリダイズするものであるので、座位LにおいてプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域とは所定塩基長(距離d)離れることとなる。
距離dは、0.1kb~100kb程度、好ましくは0.5~10kb程度、より好ましくは1kb~5kb程度、さらに好ましくは1kb~2kb程度とされる。なお、ホモロジーアームの長さは、内在核酸配列Tの長さによって適宜調節することができるが、一般的に、0.02kb~8kb程度、好ましくは0.04kb~3kb程度、より好ましくは0.5kb~1.5kb程度である。
なお、図では、プローブPがハイブリダイズする第二領域を、ホモロジーアームHAの上流に示したが、同領域は、ホモロジーアームHAの下流に位置してもよい。
【0119】
被検細胞集団について内在核酸配列Tの染色体からの欠失率(%)を評価する場合には、本手順において、プローブP及びプローブPのゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションを定量化する。定量化は、デジタルPCR法において、反応後の微小反応領域のシグナル陽性/陰性を算出することにより行い得る。
【0120】
[検出手順(3)]
本手順では、プローブPのゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションのみが検出されることに基づいて、内在核酸配列Tが座位Lに存在しないことを検出し、プローブP及びプローブPがゲノムDNA断片へハイブリダイズし、ダブルポジティブとなった場合に、内在核酸配列Tが座位Lに存在するとことを検出する。
【0121】
図3を参照して説明する。
まず、図3(A)に示したように、ゲノムDNA断片上の座位Lに内在核酸配列Tが存在する場合、デジタルPCR法において、プローブP及びプローブPのシグナルがいずれも陽性となる「ダブルポジティブ」が検出される。このことは、内在核酸配列Tが染色体から欠失されることなく目的とした座位Lに残存していることを示す。
他方、デジタルPCR法において、プローブPのシグナルのみが陽性となり、プローブPのシグナルが陰性となる場合、図3(B)に示すように、内在核酸配列Tは、プローブPがハイブリダイズする第二領域を有する座位Lから欠失されており、かつ、いずれのゲノムDNA断片上にも存在していないことが明らかとなる。このことは、内在核酸配列Tが染色体から完全に欠失されていることを示す。
【0122】
被検細胞集団について内在核酸配列Tの座位Lからの欠失率(%)を評価する場合には、デジタルPCR手順(2)におけるプローブP及びプローブPのゲノムDNA断片へのハイブリダイゼーションの定量結果に基づいて欠失率(%)を算出する。
具体的には、プローブP及びプローブPのハイブリダイゼーション量(ダブルポジティブ:DP)、及びプローブPのみのハイブリダイゼーション量(シングルポジティブ2:SP2)から、以下の式により欠失率(%)を算出する。
内在核酸配列の欠失率(%)=100-DP×100/(DP+SP2)
【0123】
ここで、ゲノムDNA断片調製手順(1)の際に、座位L内においてプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間で染色体のフラグメンテーションが生じると、「シングルポジティブ1」及び「シングルポジティブ2」の偽陽性となる。このようなフラグメンテーションが生じると、欠失率(%)の算出値に影響を及ぼす場合がある。
【0124】
フラグメンテーションの影響を排除するため、本発明に係るノックアウト効率の評価方法は、さらに以下の手順を含むことができる。
(4)前記染色体に、前記第一領域と前記第二領域との間の塩基長に相当する塩基長離れてハイブリダイズするプローブペア(例えば、プローブPおよびプローブP)を用いて、前記ゲノムDNA断片への該プローブペアのハイブリダイゼーションをデジタルPCR法により定量化し、
前記プローブペア(プローブPおよびプローブP)の両方のプローブのハイブリダイゼーション量(dp)、及び前記プローブペアのいずれか一方のみのハイブリダイゼーション量(sp)から、前記ゲノムDNA断片における以下の比率を算出する手順、
フラグメンテーション率(%)=<sp>×100/(dp+<sp>)
(式中、<sp>は、プローブペアの各プローブのハイブリダイゼーション量の平均値を示す。)
また、ノックアウト効率を補正するためのフラグメンテーション率はプローブペア(プローブPおよびプローブP)のハイブリダイゼーション量を用いて、以下のように算出することもできる。
フラグメンテーション率(%)=100×SP1/(DP+SP2)
(5)前記欠失率(%)を前記フラグメンテーション率(%)で補正する手順。
【0125】
[フラグメンテーション率算出手順(4)]
フラグメンテーション率の算出方法の例を以下に記載する。本手順では、座位LにおけるプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間でのフラグメンテーションの発生率(%)を見積もるためのプローブペア(例えば、プローブPおよびP)が提供される。プローブペアは、座位LにおけるプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間の塩基長に相当する塩基長(すなわち、距離d)離れて、染色体のいずれかの領域にハイブリダイズする。プローブペアの両方のプローブがハイブリダイズせずにどちらか一方のプローブのみがハイブリダイズするゲノムDNA断片が検出されることは、各プローブのハイブリダイズ領域の間(距離d)で染色体のフラグメンテーションが生じていることを示し、その検出頻度(%)は、座位LにおけるプローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間(距離d)でのフラグメンテーションの発生率(%)とみなし得る。
したがって、ゲノムDNA断片調製手順(1)で調製されたゲノムDNA断片へのプローブペアのハイブリダイゼーションをデジタルPCR法により定量化することにより、以下の式から座位Lにおけるフラグメンテーションの発生率(%)を算出できる。
フラグメンテーション率(%)=<sp>×100/(dp+<sp>)
(ここで、「dp」は、プローブペアの両方のプローブのハイブリダイゼーション量を示し、<sp>は、プローブペアの各プローブハイブリダイゼーション量の平均値を示す。なお、両プローブのハイブリダイゼーション量は理論上一致するため、平均値にかえてどちらか一方のプローブのハイブリダイゼーション量を計算に用いてもよい。)
【0126】
本手順は、ゲノムDNA断片調製手順(1)の度に行ってもよい。あるいは、同様の抽出条件によりゲノムDNA断片調製手順(1)を行う場合にはフラグメンテーション率(%)は同程度とみなしえるので、ある抽出条件でフラグメンテーション率(%)の算出を行った後、同条件でゲノムDNA断片調製手順(1)を行う際には、本手順は省略してもよい。また、フラグメンテーションが生じないか、フラグメンテーション発生率が欠失率(%)等の算出値に影響を与えない程度に十分に低い場合にも、本手順は省略してよい。
【0127】
[補正手順(5)]
本手順では、欠失率(%)をフラグメンテーション率(%)で補正する。
具体的には、フラグメンテーションによる見かけ上の数値の上昇を補償するため、欠失率(%)の値からフラグメンテーション率(%)を引いて、現実の欠失率(%)を求める。
【0128】
A.ノックアウト効率の評価方法
ゲノムの標的部位の改変に供された細胞のゲノムを鋳型とし、定量的PCR、もしくはデジタルPCRによって、DSB依存的に生じた配列の変異の割合を測定することができる。この際、DSBが生じるゲノム上の配列に設計されたプローブは、野生型の配列を検出可能だが、DSB後に起こるNHEJによる修復によって生じる塩基挿入や欠失を伴う変異配列は検出しない。従って、野生型細胞のゲノムと比較したシグナルの減少分を変異の割合として定量可能であり、この変異の割合をノックアウト効率とすることができる。簡便には、T7 Endonuclease IまたはCel-I enzymeを用いた切断割合に基づいて確認することも出来る。より具体的な手順としては、ゲノムの標的部位の改変に供された細胞のゲノムを元に、DSBが生じる領域を、全長100~700bp程度になるようPCR増幅し、野生型ゲノムをもとに同様に増幅した断片と混合後、約95℃で1分程度加熱し、その後、自然冷却を行うことで変異型と野生型の増幅産物のヘテロ2本鎖を調製する。ヘテロ2本鎖を切断するT7 Endonuclease IまたはCel-I enzymeで処理後、電気泳動によって切断を受けた割合を評価することでKO効率とすることができる。変異導入効率の計算方法は下の計算式で行う。未切断のバンド由来ピークの面積をa、切断されたバンド由来のピークをbおよびcとすると、以下の式:
Fcut=(b+c)/(a+b+c) indel(%)=100x(1-sqrt((1-Fcut)))
で変異導入効率が求められる。これをKO効率とすることができる。
【0129】
B.HRを介したノックイン効率の評価方法
本発明に係る、HRを介したノックイン効率の評価方法は、以下の手順を含むことを特徴とする。
(A)HRに供された細胞のゲノムを鋳型とし、染色体のホモロジーアームと実質的に同一の配列の外側に設計されたプローブと、ターゲッティングカセット内に設計されたプローブとを用いて、デジタルPCRを行う手順。
【0130】
デジタルPCRは、多数の微小な反応領域内に核酸を含むサンプルを導入し、PCRを行って、各反応領域内における増幅産物の生成の有無を検出することにより、サンプルに含まれる核酸を定量的に測定する手法である。デジタルPCRでは、各反応領域内に核酸が一分子のみ導入されるか又は全く導入されない状態とすることを目的として、サンプルが希釈される。従って、PCRの反応後に各反応領域内における増幅産物の生成の有無を検出すれば、サンプル導入当初の各反応領域内における核酸の存否を決定できる。サンプル導入当初の各反応領域内における核酸の存否を1(核酸あり)又は0(核酸なし)の数値でデジタル化し、多数の反応領域で取得された数値を解析することにより、サンプル中の核酸の絶対量を決定できる。デジタルPCRの基本的な方法論は、例えばSykes et al., Biotechniques 13 (3): 444-449, 1992に記載されている。
【0131】
本発明に係る方法は、HRを介したノックイン効率の評価を可能とするものであって、上記手順(A)を含むことを特徴とする。以下、図4を参照して具体的に説明する。
【0132】
HRを介したノックインは、典型的には、2つのホモロジーアーム(HA1及びHA2)と外来核酸配列とを含むターゲッティングカセット(TC)を含むターゲッティングベクターを用いて行われる。この場合、HRによりターゲッティングカセットが挿入されたアリル(図中「HR allele」参照)には、HA1の外側(図では上流)にハイブリダイズするプローブ2と、TC内にハイブリダイズするプローブ1と、を設計できる。なお、プローブ2は、ホモロジーアームの外側に設計されればよく、HA2の下流に設計してもよい。
【0133】
HRによりターゲッティングカセットが挿入されなかったアリル(図中「Non-integrated allele」)は、HA1の外側(図では上流)に設計されたプローブ2のみがハイブリダイズできる。また、ランダムインテグレーションによる予期せぬターゲッティングカセットの挿入が生じたアリル(図中「Rodomly integrated allele」)は、TC内に設計されたプローブ1のみがハイブリダイズできる。
【0134】
従って、デジタルPCRにおいて、各検出野におけるプローブ1及びプローブ2のハイブリダイズの有無を検出すれば、「HR allele」、「Non-integrated allele」及び「Rodomly integrated allele」の各アリルの存在量を測定できる。具体的には、プローブ1及びプローブ2がダブルポジティブである検出野は、「HR allele」の存在を示し、プローブ2のみがシングルポジティブである検出野は、「Non-integrated allele」の存在を示し、プローブ1のみがシングルポジティブである検出野は、「Rodomly integrated allele」の存在を示す。
【0135】
そして、「HR allele」の存在量と、「Non-integrated allele」の存在量との比によれば、標的部位における「外来核酸配列の挿入率」を評価できる。また、「HR allele」の存在量と、「Rodomly integrated allele」との存在量との比によれば、外来核酸配列の「標的部位への挿入率」を評価できる。
【0136】
プローブ1とプローブ2のゲノムへのハイブリダイズの定量的検出は、従来公知のデジタルPCRに基づいて行うことができる。例えばプローブ1とプローブ2として、蛍光標識TaqMan ProbeとTaqMan Primerとの組み合わせが市場の受託サービス(Thermo Fisher Scientific)により入手可能である。また、リアルタイムPCR用のキットとしてQuantStudio 3D Degital PCT Master Mixが、解析装置として、ドロップレット型デジタルPCR装置、QuantStudio 3D及びQuantStudio 3D AnalysisSuite software(いずれも、Thermo Fisher Scientific)が、それぞれ入手可能である。
【0137】
本発明に係るゲノム標的部位の改変方法によれば、RNA誘導型ヌクレアーゼの鋳型核酸と、gRNAの鋳型核酸またはgRNAとを用いて、高い特異性と効率で細胞のゲノムの標的部位を改変するための技術を提供することができる。別の観点では、本発明の課題は、ゲノムの標的部位に所望の改変を生じた細胞を効率的に選択することができる。目的とするゲノムが改変された細胞を高い効率で得ることができれば、例えば、その目的細胞を用いた薬物スクリーニング、その目的細胞由来の分化細胞への誘導等の時間的及び経済的な効率を高めることが可能である。より具体的には、例えば、薬物スクリーニングに供することを目的とした細胞のゲノム標的部位の改変を行う場合、従来の方法ではランダムインテグレーションによる細胞の存在比率が高くなり、適切な細胞で薬物スクリーニングを実施することができず、信頼できるスクリーニング結果を取得することができないという問題が挙げられる。そのため、別途ゲノムの標的部位の改変のための操作が必要となり、時間的及び経済的な効率が低下することとなり得る。本発明に係るゲノム標的部位の改変方法によれば、目的とする細胞を高い効率で得られることから、上記のような問題を避けられ、信頼できるデータの取得や、時間的及び経済的な効率の向上に寄与することができる。
【実施例
【0138】
[実施例1:セレクションプラスミドのコトランスフェクションによるノックイン効率の向上]
【0139】
細胞のゲノムのAdenomatous polyposis coli(APC)遺伝子を標的部位として人工核酸配列(外来核酸配列)の挿入を行った。ヌクレアーゼ鋳型核酸、gRNA鋳型核酸、ターゲッティング鋳型核酸及びセレクション鋳型核酸には、それぞれ化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9を発現するプラスミドベクター(ヌクレアーゼベクター、Cas9)、gRNAを発現するプラスミドベクター(gRNAベクター、APCAS56)、人工核酸配列を含むプラスミドベクター(ターゲッティングベクター、APCshort#2)、及びピューロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドベクター(セレクションベクター、pEBmultipuro)を用いた。これらのプラスミドベクターの混合物を、大腸癌細胞株HCT-116に、500,000cells/10μlの条件で、エレクトロポレーション法によりトランスフェクションした。トランスフェクションには、Neon(Invitrogen社)のHCT-116用の試薬及びエレクトロポレーションパラメーターズを用いた。APCshort#2は、APC遺伝子のエキソン3(配列番号1)を一部欠失させた核酸配列を有する。APC遺伝子のエキソン3の塩基配列と、gRNAの認識配列(配列番号2)を図5に示す。
【0140】
トランスフェクションは、全プラスミドの合計量に対するピューロマイシン耐性遺伝子発現プラスミドの比率(モル比)を「表1」に示すように変化させて行った。
【0141】
【表1】
【0142】
トランスフェクション24時間後から、1μg/mlのピューロマイシン存在下で10日間の細胞培養を行って、ピューロマイシン耐性遺伝子発現細胞を選択した。選択された細胞からゲノムDNAを抽出し以下のPCR解析を実施した。
【0143】
残存するターゲッティング鋳型核酸の影響を避けてゲノムの情報を得るため、ターゲッティング鋳型核酸のホモロジー配列より上流にフォワードプライマー(配列番号3:CTTGCACAGAGACTCCCCATAATCACC)を、また鋳型プラスミドの欠損領域より下流にリバースプライマー(配列番号4:ACTTTCTCTGCTTCCATTTACAAACCCTCTTC)を設計した。このプライマーペアを用い、サンプル1~5のトランスフェクション群から回収したゲノムDNAを鋳型としたPCRを行った。野生型のAPC遺伝子の増幅産物は1256bp(配列番号5)であり、人工核酸配列の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物は1191bp(配列番号6)となる。各増幅産物の塩基配列を図6に示す。
【0144】
人工核酸配列の挿入に起因する増幅産物の長さの減少をより明確に検出するために制限酵素(MfeI)による消化を行った後、マイクロチップ電気泳動を行った。野生型のAPC遺伝子の増幅産物からは206bpの消化断片、人工核酸配列の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物からは147bpの消化断片が検出された。
【0145】
電気泳動結果を図7に示す。セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈度が増加するにつれ、野生型のAPC遺伝子の増幅産物が減少し、人工核酸配列の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物が増加することが観察された。すなわち、セレクションベクターの希釈度の増加に伴って、人工核酸配列の挿入効率が増加していることが明らかである。
【0146】
バンド濃度の定量により、野生型のAPC遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物の量(Y)を定量化し、ノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出した結果を図8に示す。図中横軸は、サンプル1~5のトランスフェクション群におけるセレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸はノックイン効率(%)をそれぞれ示す。また、この際回収された総ゲノムDNA量を図9に示した。図中横軸は、サンプル1~5のトランスフェクション群におけるセレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸は回収可能であったゲノムDNA量をそれぞれ示す。サンプル1~4において、特に、サンプル1~2においてはノックイン効率とゲノムDNA量の観点からより効率的なゲノム標的部位の改変が施されたといえる。
【0147】
[実施例2:セレクションプラスミドのコトランスフェクションによるノックイン効率の向上(人工核酸配列の変更)]
細胞のゲノムのTNNI1遺伝子を標的部位とした以外は、実施例1と同様にして人工核酸配列(外来核酸配列)の挿入を行った。
人工核酸配列を含むターゲッティング鋳型核酸(ターゲッティングオリゴ)には、TNNI1遺伝子のエキソン7に20bpの核酸配列を挿入した核酸配列を有するTNNIOligoを用い、gRNAを発現するプラスミドベクター(gRNAベクター)には、TNNI207を用いた。TNNI1遺伝子のエキソン7の塩基配列中のgRNAの認識配列を配列番号7に示す。
【0148】
全導入核酸の合計量に対するピューロマイシン耐性遺伝子発現プラスミドの比率(モル比)を変化させてトランスフェクションを行い、ピューロマイシン存在下で細胞培養を行って、ピューロマイシン耐性遺伝子発現細胞を選択した。選択された細胞からゲノムDNAを抽出し以下のPCR解析を実施した。
【0149】
ターゲッティング鋳型核酸のホモロジー配列より上流にフォワードプライマー(配列番号8:GAACGTGGAGGCCATGTCT)を、また鋳型プラスミドの欠損領域より下流にリバースプライマー(配列番号9:TAAGTACAACCCGCCTGCC)を設計した。このプライマーペアを用い、回収したゲノムDNAを鋳型としたPCRを行った。野生型のTNNI1遺伝子の増幅産物は166bpであり、人工核酸配列の挿入を受けたTNNI1遺伝子の増幅産物は186bpとなる。
【0150】
バンド濃度の定量により、野生型のTNNI1遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたTNNI1遺伝子の増幅産物の量(Y)を定量化し、ノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出した結果を図10に示す。図中横軸は、セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸はノックイン効率(%)をそれぞれ示す。また、この際回収された総ゲノムDNA量を図11に示した。図中横軸は、セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸は回収可能であったゲノムDNA量をそれぞれ示す。Factor値が低い程、高いノックイン効率が得られている。Factor値が、0.056~0.21の範囲で、ノックイン効率とゲノムDNA量の観点からより効率的なゲノム標的部位の改変が達成された。
【0151】
[実施例3:セレクションプラスミドのコトランスフェクションによるノックイン効率の向上(細胞・人工核酸配列の変更)]
細胞を子宮頸癌細胞株HeLaに変更した以外は、実施例2と同様にして人工核酸配列(外来核酸配列)の挿入を行った。すなわち、実施例1からは、細胞を子宮頸癌細胞株HeLaに変更し、ゲノムの標的部位をTNNI1遺伝子に変更した。
【0152】
全導入核酸の合計量に対するピューロマイシン耐性遺伝子発現プラスミドの比率(モル比)を変化させてトランスフェクションを行い、ピューロマイシン存在下で細胞培養を行って、ピューロマイシン耐性遺伝子発現細胞を選択した。選択された細胞からゲノムDNAを抽出し以下のPCR解析を実施した。
【0153】
バンド濃度の定量により、野生型のTNNI1遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたTNNI1遺伝子の増幅産物の量(Y)を定量化し、ノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出した結果を図12に示す。図中横軸は、セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸はノックイン効率(%)をそれぞれ示す。また、この際回収された総ゲノムDNA量を図13に示した。図中横軸は、セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸は回収可能であったゲノムDNA量をそれぞれ示す。Factor値が低い程、高いノックイン効率が得られている。Factor値が、0.074~0.28の範囲で、ノックイン効率とゲノムDNA量の観点からより効率的なゲノム標的部位の改変が達成された。
【0154】
HeLa及びHCT-116以外の種々の細胞についても、同様にして、人工核酸配列(外来核酸配列)の挿入実験を行って、全導入核酸の合計量に対するセレクションベクターの比率(モル比)がノックイン効率に及ぼす効果を検証した。その結果、例えばiPS細胞(201B7株)において、Factor値0.1748で100%のノックイン効率が認められた。
【0155】
[実施例4:セレクションプラスミドのコトランスフェクションによるノックイン効率の向上(RNA誘導型ヌクレアーゼ・細胞・人工核酸配列の変更))]
ヌクレアーゼベクターとしてアシッドアミノコッカス エスピー(Acidaminococcus sp.)のCpf1を発現するプラスミドベクターを用い、細胞を子宮頸癌細胞株HeLaに変更し、ゲノムの標的部位をIPTKB遺伝子に変更した以外は、実施例1と同様にして人工核酸配列(外来核酸配列)の挿入を行った。
人工核酸配列を含むターゲッティング鋳型核酸(ターゲッティングオリゴ)には、IPTKB遺伝子のエキソン8を12bp欠失した核酸配列を有するIPTKB12delID140を用い、gRNAを発現するプラスミドベクター(gRNAベクター)には、pENTER_SSA_Cpf1)を用いた。IPTKB遺伝子のエキソン8の塩基配列と、gRNAの認識配列(配列番号10)を図14に示す。
【0156】
全導入核酸の合計量に対するピューロマイシン耐性遺伝子発現プラスミドの比率(モル比)を変化させてトランスフェクションを行い、ピューロマイシン存在下で細胞培養を行って、ピューロマイシン耐性遺伝子発現細胞を選択した。選択された細胞からゲノムDNAを抽出し以下のPCR解析を実施した。
【0157】
ターゲッティング鋳型核酸のホモロジー配列より上流にフォワードプライマー(配列番号11:ATTGAGCCCCGAGAGGTAGCCATCCT)を、また鋳型プラスミドの欠損領域より下流にリバースプライマー(配列番号12:GGGCTTCAGCTCACCCTTCAC)を設計した。このプライマーペアを用い、回収したゲノムDNAを鋳型としたPCRを行った。野生型のIPTKB遺伝子の増幅産物は206bpであり、人工核酸配列の挿入を受けたIPTKB遺伝子の増幅産物は186bpとなる。
【0158】
バンド濃度の定量により、野生型のIPTKB遺伝子の増幅産物の量(X)と人工核酸配列の挿入を受けたIPTKB遺伝子の増幅産物の量(Y)を定量化し、ノックイン効率(=100×Y/(X+Y))を算出した結果を図15に示す。図中横軸は、セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸はノックイン効率(%)をそれぞれ示す。また、この際回収された総ゲノムDNA量を図16に示した。図中横軸は、セレクションベクター(pEBmultipuro)の希釈率を、縦軸は回収可能であったゲノムDNA量をそれぞれ示す。Factor値が低い程、高いノックイン効率が得られている。Factor値が、0.011~0.043の範囲で、ノックイン効率とゲノムDNA量の観点からより効率的なゲノム標的部位の改変が達成された。
【0159】
[試験例1:デジタルPCRによるノックイン効率の評価]
ホモロジーアーム外に設計したTaqMan probe 1と、挿入する遺伝子上に設計したprobe 2を異なる蛍光で標識して同時に用いた場合、両蛍光陰性となるウェルが充分多ければ、ゲノムDNA分子はデジタルPCRのウェル上で限界希釈され、各ウェルに0~1分子となる。その状態で両蛍光陽性のウェルは、ゲノムDNA調製時に分断化された平均DNA長以内に両結合部位があると考えられ、その平均DNA長は、全ゲノム約3,000,000,000bpに対して十分に短く、そのゲノム中に非特異的に挿入されたDNAにより両陽性になる確率は著しく低いため、両陽性ウェルを特異的遺伝子挿入として計数する。両陽性ウェル数の全probe 2陽性ウェル数に対する割合(%)を挿入%とする。
【0160】
[実施例5:フラグメンテーション率及びノックイン効率の評価]
実施例1に記載した方法にならって、細胞のゲノムのAdenomatous polyposis coli(APC)遺伝子を標的部位として人工核酸配列(TK遺伝子)の挿入を行った。その後、親細胞を用いたフラグメンテーション率の算出と、ノックイン細胞を用いたノックイン効率の評価を行った。
【0161】
まず、市販のキット(QIAamp DNA Mini Kit、QIAGEN)を用いて親細胞からゲノムDNA断片を調製した。
内因性遺伝子(SOD1遺伝子)上に1kb離れてハイブリダイズするプローブセット(プローブA、プローブB)を設計した。
プローブセットを用い、ゲノムDNA断片を鋳型としたデジタルPCR法を行ってゲノムDNA断片へのプローブペアのハイブリダイゼーションを定量化した。定量値を「表2」に示す。1kbの領域内でのフラグメンテーション率は8.8%と算出された。
【0162】
【表2】
【0163】
フラグメンテーション率(%)=(<sp>)×100/(dp+<sp>)=(107+92)/2×100/(1036+(107+92)/2)=8.8
(ここで、「dp」は、プローブペアの両方のプローブのハイブリダイゼーション量を示し、<sp>は、プローブペアの各プローブのハイブリダイゼーション量の平均値を示す。)
【0164】
プローブA:TCGCCCAATAAAC(配列番号:13)
プローブAのデジタルPCRフォワードプライマー:AGTCGTTTGGCTTGTGGTGTAA(配列番号:14)
プローブAのデジタルPCRリバースプライマー:GCTAGCAGGATAACAGATGAGTTAAGG(配列番号:15)
プローブB:CTGATGCTTTTTCATTATTAGG(配列番号:16)
プローブBのデジタルPCRフォワードプライマー:TGGCATCAGCCCTAATCCA(配列番号:17)
プローブBのデジタルPCRリバースプライマー:CATTGCCCAAGTCTCCAACA(配列番号:18)
【0165】
TK遺伝子の一部の塩基配列に相補的な塩基配列を有するプローブPと、ホモロジーアーム間の領域の外側の塩基配列に相補的な塩基配列を有するプローブPとを設計した。プローブPがハイブリダイズし得る第一領域とプローブPがハイブリダイズする第二領域との間を1kbに設定した。
親細胞から抽出と同一条件でノックイン細胞から染色体を抽出し、ゲノムDNA断片を調製した。
プローブセットを用い、ゲノムDNA断片を鋳型としたデジタルPCR法を行ってゲノムDNA断片へのプローブペアのハイブリダイゼーションを定量化した。定量値を「表3」に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
外来核酸配列の目的座位への挿入率(%)=DP×100/(DP+SP2)=1059×100/(1059+194)=84.5
外来核酸配列の染色体へのランダムインテグレーション率(%)=SP1×100/(DP+SP1)=194×100/(1059+194)=15.5
【0168】
プローブP:ATCGGCTCGGGTACG(配列番号:19)
プローブPのデジタルPCRフォワードプライマー:CCAGCACCCGCCAGTAAGT(配列番号:20)
プローブPのデジタルPCRリバースプライマー:TTCGCGCGACGATATCG(配列番号:21)
プローブP:GCCACCATGAATGCTTACAATG(配列番号:22)
プローブPのデジタルPCRフォワードプライマー:CACTGTCAAGATAAATCA(配列番号:23)
プローブPのデジタルPCRリバースプライマー:TGACTGGAGCAAAGACGGTTT(配列番号:24)
【0169】
先に算出されたフラグメンテーション率(8.8%)を考慮すると、フラグメンテーションの考慮後の挿入率は、93.3%(84.5+8.8)と評価され、理論値100%と実質的に一致した。
【0170】
この手法によれば、ノックイン操作の条件を変化させて条件毎のノックイン効率を正確に評価できる。そのため、本手法は、本発明に係るゲノム標的部位の改変方法において最適なFactor値を決定するために利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0171】
配列番号1:APC遺伝子のエキソン3の塩基配列
配列番号2:APC遺伝子の塩基配列中のgRNAの認識配列
配列番号3:APC遺伝子用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号4:APC遺伝子用リバースプライマーの塩基配列
配列番号5:野生型のAPC遺伝子の増幅産物の塩基配列
配列番号6:人工核酸の挿入を受けたAPC遺伝子の増幅産物の塩基配列
配列番号7:TNNI1遺伝子の塩基配列中のgRNAの認識配列
配列番号8:TNNI1遺伝子用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号9:TNNI1遺伝子用フォワードプライマーの塩基配列
配列番号10:IPTKB遺伝子のgRNAの認識配列
配列番号11:IPTKB遺伝子フォワードプライマーの塩基配列
配列番号12:IPTKB遺伝子リバースプライマーの塩基配列
配列番号13:プローブAの塩基配列
配列番号14:プローブAのデジタルPCRフォワードプライマーの塩基配列
配列番号15:プローブAのデジタルPCRリバースプライマーの塩基配列
配列番号16:プローブBの塩基配列
配列番号17:プローブBのデジタルPCRフォワードプライマーの塩基配列
配列番号18:プローブBのデジタルPCRリバースプライマーの塩基配列
配列番号19:プローブPの塩基配列
配列番号20:プローブPのデジタルPCRフォワードプライマーの塩基配列
配列番号21:プローブPのデジタルPCRリバースプライマーの塩基配列
配列番号22:プローブPの塩基配列
配列番号23:プローブPのデジタルPCRフォワードプライマーの塩基配列
配列番号24:プローブPのデジタルPCRリバースプライマーの塩基配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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