(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】脱毛装置及び脱毛方法
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20220106BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A45D26/00 G
A61B18/20
(21)【出願番号】P 2021003011
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2021-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518047609
【氏名又は名称】株式会社Eidea
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 知広
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-541906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
A61B 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射される光によって脱毛処理を行う脱毛装置であって、
前記光源を備える光源部と、
皮膚の処理対象領域を撮像可能な撮像部と、
前記撮像部により撮像された前記処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定
することで前記光の照射予定位置を特定する毛穴特定部と、
前記撮像部による前記撮像時から
前記毛穴特定部により特定された毛穴に対する前記光の照射前までの間に生じた前記脱毛装置の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量を検出するずれ量検出部と、
前記ずれ量検出部により検出された前記ずれ量に基づいて、前記毛穴に対する前記光の
前記照射
予定位置を補正する照射位置補正部と
を備えることを特徴とする脱毛装置。
【請求項2】
前記処理対象領域に対する前記脱毛装置の相対移動量を検出可能な移動検出部を更に備え、
前記ずれ量検出部は、前記処理対象領域に対する前記撮像時からの前記脱毛装置の相対移動量を前記移動検出部により検出し、該相対移動量に基づいて前記ずれ量を検出可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の脱毛装置。
【請求項3】
前記移動検出部は、前記処理対象領域の平面方向における前記脱毛装置の相対移動量と、該平面方向と平行な方向への該脱毛装置の相対回転量とを検出可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の脱毛装置。
【請求項4】
前記ずれ量検出部は、前記毛穴特定部により毛穴を特定するために撮像した第1画像データと、該毛穴に対する光の照射前に再度撮像した第2画像データとに基づいて、前記ずれ量を検出可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の脱毛装置。
【請求項5】
前記ずれ量検出部は、前記第1画像データから抽出した切り出し毛穴画像と、前記第2画像データとに基づいて、前記ずれ量を検出可能に構成されており、
前記切り出し毛穴画像は、前記毛穴特定部により特定された前記毛穴及び該毛穴の周囲の皮膚を含むよう前記第1画像データから切り出された画像である
ことを特徴とする請求項4に記載の脱毛装置。
【請求項6】
前記第2画像データは、前記第1画像データよりも少ない画素数を有する、または、前記切り出し毛穴画像よりも大きい画素サイズを有する
ことを特徴とする請求項5に記載の脱毛装置。
【請求項7】
前記照射位置補正部は、前記ずれ量検出部により検出された前記ずれ量に応じて、前記光の照射
予定位置の補正を行うか否かの判定を実行するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の脱毛装置。
【請求項8】
前記照射位置補正部は、前記ずれ量検出部により検出された前記ずれ量に応じて、エラーを報知するか否かの判定を実行するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の脱毛装置。
【請求項9】
前記毛穴特定部は、AI画像認識により前記毛穴の特定を実行する
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の脱毛装置。
【請求項10】
光源から照射される光によって脱毛処理を行う脱毛方法であって、
皮膚の処理対象領域を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により撮像された前記処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定
することで前記光の照射予定位置を特定する毛穴特定工程と、
前記撮像工程による前記撮像時から
前記毛穴特定工程により特定された毛穴に対する前記光の照射前までの間に生じたずれ量を検出するずれ量検出工程と、
前記ずれ量検出工程により検出された前記ずれ量に基づいて、前記毛穴に対する前記光の
前記照射
予定位置を補正する照射位置補正工程と
を含むことを特徴とする脱毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱毛装置及び脱毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の皮膚に存在する体毛に対してレーザー光を照射することにより、該体毛を除去するレーザー脱毛装置が知られている。既存の商品化されているレーザー光やフラッシュランプの光を用いた全ての脱毛器は、皮膚上の面積比率でわずか1%前後しかない体毛に光を照射するために皮膚全体に強力な光を照射するものであり、非常に効率が悪く装置が大型化し、皮膚へのダメージやリスクも多い。また、毛根の厚みや毛の色、皮膚の色や濃さとは無関係に光を照射するもので、最適とは言えないものであった。
【0003】
近年、このような課題を解決するために、体毛の毛根に限定してレーザー光を照射する脱毛装置が提案されている(特許文献1等)。特許文献1のレーザー脱毛装置は、処理対象となる皮膚を撮像した画像に基づいて毛根の厚み(太さ)及び毛の色を特定し、この特定した毛根の厚み及び毛の色に基づいて、照射するレーザー光の線量を決定するよう構成されている。このような特許文献1のレーザー脱毛装置によれば、処理対象とする毛に適した線量のレーザー光を照射することが可能となるため、効率的に脱毛を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたレーザー脱毛装置では、処理対象となる皮膚を撮影してから実際にレーザー光を照射するまでにタイムラグがあり、その間にレーザー脱毛装置の位置がずれた場合には、処理対象とする毛に対してレーザー光を照射することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、処理対象とする毛に対して確実にビーム光を照射することが可能な脱毛装置及び脱毛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明に係る脱毛装置は、光源から照射される光によって脱毛処理を行う脱毛装置であって、前記光源を備える光源部と、皮膚の処理対象領域を撮像可能な撮像部と、前記撮像部により撮像された前記処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定する毛穴特定部と、前記撮像時からの前記脱毛装置の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量を検出するずれ量検出部と、前記ずれ量検出部により検出された前記ずれ量に基づいて、前記毛穴に対する前記光の照射位置を補正する照射位置補正部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る脱毛装置は、前記処理対象領域に対する前記脱毛装置の相対移動量を検出可能な移動検出部を更に備え、前記ずれ量検出部は、前記処理対象領域に対する前記撮像時からの前記脱毛装置の相対移動量を前記移動検出部により検出し、該相対移動量に基づいて前記ずれ量を検出可能に構成されても良い。
【0009】
本発明に係る脱毛装置において、前記移動検出部は、前記処理対象領域の平面方向における前記脱毛装置の相対移動量と、該平面方向と平行な方向への該脱毛装置の相対回転量とを検出可能に構成されても良い。
【0010】
本発明に係る脱毛装置において、前記ずれ量検出部は、前記毛穴特定部により毛穴を特定するために撮像した第1画像データと、該毛穴に対する光の照射前に再度撮像した第2画像データとに基づいて、前記ずれ量を検出可能に構成されても良い。
【0011】
本発明に係る脱毛装置において、前記ずれ量検出部は、前記第1画像データから抽出した切り出し毛穴画像と、前記第2画像データとに基づいて、前記ずれ量を検出可能に構成されており、前記切り出し毛穴画像は、前記毛穴特定部により特定された前記毛穴及び該毛穴の周囲の皮膚を含むよう前記第1画像データから切り出された画像であっても良い。
【0012】
本発明に係る脱毛装置において、前記第2画像データは、前記第1画像データよりも少ない画素数を有しても良く、または、前記切り出し毛穴画像よりも大きい画素サイズを有しても良い。
【0013】
本発明に係る脱毛装置において、前記照射位置補正部は、前記ずれ量検出部により検出された前記ずれ量に応じて、前記光の照射位置の補正を行うか否かの判定を実行するよう構成されても良い。
【0014】
本発明に係る脱毛装置において、前記照射位置補正部は、前記ずれ量検出部により検出された前記ずれ量に応じて、エラーを報知するか否かの判定を実行するよう構成されても良い。
【0015】
本発明に係る脱毛装置において、前記毛穴特定部は、AI画像認識により前記毛穴の特定を実行しても良い。
【0016】
また、本発明に係る脱毛方法は、光源から照射される光によって脱毛処理を行う脱毛方法であって、皮膚の処理対象領域を撮像する撮像工程と、前記撮像工程により撮像された前記処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定する毛穴特定工程と、毛穴位置に関する前記撮像時からのずれ量を検出するずれ量検出工程と、前記ずれ量検出工程により検出された前記ずれ量に基づいて、前記毛穴に対する前記光の照射位置を補正する照射位置補正工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、処理対象とする毛に対して確実にビーム光を照射することが可能な脱毛装置及び脱毛方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る脱毛装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】照射位置制御機構の構成を概略的に示す図である。
【
図3】移動検出センサの第1センサ構成例を概略的に示す図である。
【
図4】移動検出センサの第2センサ構成例を概略的に示す図である。
【
図5】移動検出センサの第3センサ構成例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7(a)は、撮像部により撮像した元画像を示す図であり、
図7(b)は、毛穴特定部により毛穴を特定した状態を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、毛穴が特定された画像データを示す図であり、
図8(b)は、特定された毛穴ごとに切り出された切り出し毛穴画像を示す図であり、
図8(c)は、ビーム光の照射前に再度撮像された再撮像画像の一部または全部を示す図であり、
図8(d)は、本来の切り出し毛穴画像の位置と、再撮像画像中における切り出し毛穴画像の位置とを共に示す図である。
【
図9】複数の位置ずれ検出用テンプレート画像の位置ずれ量を用いて撮像範囲全体の装置ずれ量を検出する処理を説明するための図である。
【
図10】撮像範囲全体の装置ずれ量を用いて毛穴位置毎の個別のずれ量を検出する処理を説明するための図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る脱毛方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図12】毛穴特定工程から照射工程までの流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態に係る脱毛方法の処理シーケンスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0020】
本実施形態に係る脱毛装置1は、人の皮膚に存在する体毛に対して光源からの光を照射することによって、該体毛を永久的又は長期的に除去(脱毛処理)する脱毛装置である。
【0021】
具体的には、脱毛装置1は、
図1に示すように、使用者が把持可能なハウジング10と、該ハウジング10内に収納された光源部20、照射位置制御機構(例えば旋回ミラーを備えたガルバノスキャナを2軸XY方向に配置し、XY方向に光ビームの照射位置を制御できる制御機構)30及び撮像部40と、撮像部40により撮像された画像データに基づき、光源部20及び照射位置制御機構30を制御する制御部100(
図6参照)とを備えている。なお、制御部100は、ハウジング10内に設けられても良いし、ハウジング10と有線又は無線によりデータ通信可能に接続された別端末内に設けられても良い。
【0022】
[ハウジングの構成]
ハウジング10は、
図1に示すように、使用者が把持可能な把持部11と、該把持部11の先端側に連続して配されたヘッド部12とを備えている。本実施形態に係る脱毛装置1では、把持部11内に光源部20及び照射位置制御機構30が配置されており、ヘッド部12内に撮像部40が配置されているが、これに限定されるものではない。また、ハウジング10の構成及び形状は、図示の例に限定されず、任意に変更可能である。
【0023】
把持部11は、使用者が把持可能な径及び長手方向の長さを有する筒状等の任意の形状に形成されており、ヘッド部12の肌対向面を処理対象となる皮膚と対向させることに適した外形形状に設計されている。これにより、ハウジング10は、把持部11を把持した状態において、処理対象となる皮膚上に脱毛装置1を位置決めさせることが容易になると共に、処理済み領域から未処理領域に向けて脱毛装置1を移動させることが容易となる。また、把持部11には、光源部20による照射のON/OFFを切り替えるための照射ボタン18(
図6参照)が設けられている。
【0024】
ヘッド部12は、脱毛処理時において処理対象となる皮膚と対向する肌対向面(本実施形態では下面)に開口13を有すると共に、該開口13を覆うようにカバー部材14が設けられている。開口13は、一回のショット(ワンショット)で処理される皮膚の処理対象領域以上の大きさを有している。カバー部材14は、ハウジング10内への埃等の進入を防ぐことが可能な防塵性と、光源部20による照射処理及び撮像部40による撮像処理を阻害しない程度の透光性とを有している。カバー部材14としては、例えば透明なガラス板等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、ヘッド部12の内部には、照射位置制御機構30によって偏向された光源部20からのビーム光を開口13の外に向けて更に反射させるダイクロイックミラー17が設けられている。ダイクロイックミラー17は、開口13に対して約45度の角度で傾斜して設けられると共に、波長の長い赤外線の光である照射光を効率よく反射する反射面となっており、該反射面によって、照射位置制御機構30によって偏向された光源部20からのビーム光を開口13の外(皮膚の処理対象領域)に向けて効率的に反射させるよう構成されている。一方、ダイクロイックミラー17は、照射光に対し、波長の短い可視光は高い透過率で透過できるようになっており、該透過面側に、撮像部40が配置されている。これにより、撮像部40は、ダイクロイックミラー17を介して、少ない損失で開口13の外(皮膚の処理対象領域)を撮像することが可能となっている。
【0026】
さらに、ヘッド部12の内部には、開口13に向けて照明光を照射可能な照明手段(図示せず)が設けられている。照明手段は、撮像部40による撮像時に点灯し、開口13を介して皮膚の処理対象領域を照らすよう構成されている。このような照明手段としては、汎用のLED等の種々の任意の光源を用いることが可能である。
【0027】
また、ヘッド部12は、肌対向面に、処理対象となる皮膚(処理対象領域)に対する脱毛装置1(ヘッド部12)のX-Y平面方向の相対移動量(以下、「水平移動量」という)及びX-Y平面方向と平行な方向への脱毛装置1(ヘッド部12)の相対回転量(以下、「水平回転量」という)を検出するための移動検出センサ15(移動検出部)が設けられている。移動検出センサ15は、使用者が把持部11を把持した状態において、使用者の手によって隠れない位置、例えば開口13の近傍に設けられている。移動検出センサ15は、光学式マウスセンサや加速度センサ、ジャイロセンサ等を任意に用いることが可能である。移動検出センサ15の構成としては、例えば、次の第1センサ構成例15A~第3センサ構成例15Cが例示される。
【0028】
[第1センサ構成例15A]
第1センサ構成例15Aは、
図3に示すように、ヘッド部12の加速度を検出可能な加速度センサ15aと、ヘッド部12の角速度を検出可能なジャイロセンサ15bとを組み合わせて移動検出センサ15とする例である。これら加速度センサ15a及びジャイロセンサ15bは、開口13近傍の任意の位置に配置することができる。このような第1センサ構成例15Aによれば、加速度センサ15aにより検出された加速度を2回積分することで水平移動量を計測することができ、また、ジャイロセンサ15bにより検出された角速度を積分することで水平回転量を計測することができる。
【0029】
[第2センサ構成例15B]
第2センサ構成例15Bは、
図4に示すように、ヘッド部12の水平移動量を検出可能な2以上の光学式マウスセンサ(第1光学式マウスセンサ15c及び第2光学式マウスセンサ15d)を組み合わせて移動検出センサ15とする例である。第1光学式マウスセンサ15c及び第2光学式マウスセンサ15dは、X方向又は/及びY方向に離間して配置されることが好ましく、第2センサ構成例15Bでは、開口13を挟むよう互いに離間して配置されている。このような第2センサ構成例15Bによれば、各光学式マウスセンサ15c,15dにより水平移動量を計測することができ、また、第1光学式マウスセンサ15cによる計測値と第2光学式マウスセンサ15dによる計測値との差(微小移動量)を用いることで水平回転量を計測することができる。
【0030】
[第3センサ構成例15C]
第3センサ構成例15Cは、
図5に示すように、ヘッド部12の水平移動量を検出可能な光学式マウスセンサ15eと、ヘッド部12の角速度を検出可能なジャイロセンサ15fとを組み合わせて移動検出センサ15とする例である。これら光学式マウスセンサ15e及びジャイロセンサ15fは、開口13近傍の任意の位置に配置することができる。このような第3センサ構成例15Cによれば、光学式マウスセンサ15eにより水平移動量を計測することができ、また、ジャイロセンサ15bにより検出された角速度を積分することで水平回転量を計測することができる。
【0031】
なお、移動検出センサ15は、上述した第1センサ構成15A~第3センサ構成15Cに限定されるものではなく、種々の公知の構成を採用可能である。また、移動検出センサ15は、水平移動量のみを検出可能な構成であっても良い。
【0032】
さらに、ヘッド部12は、脱毛処理時において使用者側に向く面(本実施形態では上面)に、表示パネル16が設けられている。表示パネル16は、例えば、処理済み領域から未処理領域に向けて脱毛装置1を移動させる際に、撮像部40により撮像したリアルタイムな映像(ライブ画像)を表示させることが可能に構成されている。このように、表示パネル16にライブ画像を表示させることにより、未処理領域に対する脱毛装置1の移動を支援することが可能となる。表示パネル16としては、例えば液晶パネル等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0033】
[光源部の構成]
光源部20は、毛根に対し十分にダメージを与え、毛を永久的又は長期的に除去(脱毛処理)することが可能な照射強度(エネルギー密度)を持つビーム状の高輝度光源(図示せず)を備えている。このような光源としては、例えば、レーザー、半導体レーザー、半導体励起固体レーザー、固体レーザー及び超高輝度LED等の種々の公知の光源を任意に採用することが可能である。
【0034】
光源から照射されるビーム光は、照射面において、1本の毛根に対して必要かつ十分に大きい直径を有することが好ましい。すなわち、光源から出射されるビーム光のビーム径は、画像認識精度やスキャナーの位置決め精度(位置ずれ)等を加味し、毛根又は毛穴の直径よりも大きく設定されることが好ましい。
【0035】
光源部20は、光源の照射強度(パワー、線量)を所定の範囲内(例えば1~100J/cm2)で調整することが可能に構成されることが好ましい。特に、光源部20は、処理対象となる個々の毛の毛穴の大きさ、毛の色及び該毛穴周辺の皮膚の色に応じた最適な照射強度を選択して、個々の毛に対してビーム光を照射することが可能に構成されることが好ましい。なお、光源の照射強度の制御手法としては、パワー出力自体の制御やパルス幅の制御等の種々の公知の方法を採用することが可能である。また、本明細書において「毛穴の大きさ」という場合には、毛穴自体の大きさ(厚さ)を指す場合と、毛の太さを指す場合と、これら毛穴及び毛を総合した大きさを指す場合とのいずれも含まれることとする。
【0036】
また、光源部20は、互いに異なる波長を有する光源を複数(例えば3種類)備えると共に、これら複数の光源から照射された光を適宜合流させるための合波手段(図示せず)を備えることが好ましい。この場合において、複数の光源は、毛に多く含まれるメラニン色素に対して吸収されやすい比較的短い波長(例えば約755nm)のビーム光を照射可能な第1光源(図示せず)と、メラニン色素に対する吸収が比較的少なく、皮膚に優しい比較的長い波長(例えば約1064nm)のビーム光を照射可能な第3光源(図示せず)と、これら第1光源と第3光源との間の波長(例えば約810nm)のビーム光を照射可能な第2光源とを含んで構成されても良い。また、合波手段としては、例えば波長選択ミラー(ダイクロイックミラー)、波長選択プリズム(ダイクロイックプリズム)、偏光ビームスプリッタ(PBS)及び偏光板等の種々の公知の手段を採用することが可能である。
【0037】
このような構成によれば、複数の波長の光源を任意の強度で合波した状態で照射することが可能となるため、処理対象となる個々の毛の毛穴の大きさ、毛の色及び該毛穴周辺の皮膚の色の情報に応じて、照射強度だけでなく、最適な波長の組み合わせをも選択して、個々の毛に対してビーム光を照射することが可能となる。
【0038】
なお、光源部20は、
図1に示す例においてはハウジング10の把持部11内に配置されているが、これに限定されず、照射位置制御機構30等を介してハウジング10の開口13から光を照射可能であれば、ハウジング10内の任意の位置に配置することが可能である。
【0039】
[照射位置制御機構の構成]
照射位置制御機構30は、光源部20から照射されたビーム光を皮膚の処理対象領域(施術範囲となるX-Y平面)上の任意の位置(X,Y)に位置決めするためのビーム光偏向手段(走査手段)である。具体的には、照射位置制御機構30は、
図1及び
図2に示すように、光源部20から照射されたビーム光を皮膚の処理対象領域上においてX方向(第一の方向)に移動させるためのX方向偏向部34と、該ビーム光を皮膚の処理対象領域上においてY方向(第一の方向と直交する第二の方向)に移動させるためのY方向偏向部32とを備えている。
【0040】
Y方向偏向部32及びX方向偏向部34は、
図1及び
図2に示すように、ビーム光を反射可能な反射鏡32a,34aと、該反射鏡32a,34aの傾斜角度を変更させる駆動部32b,34bとを備えている。Y方向偏向部32は、光源部20から照射されたビーム光をX方向偏向部34に向けて反射させるよう配置されており、X方向偏向部34は、Y方向偏向部32により反射されたビーム光をダイクロイックミラー17に向けて更に反射させるよう配置されている。また、これらY方向偏向部32及びX方向偏向部34は、Y方向偏向部32の反射鏡32aの回転軸と、X方向偏向部34の反射鏡34aの回転軸とが互いに直交する関係となるよう配置されている。このような構成により、照射位置制御機構30は、これらX方向偏向部34及びY方向偏向部32の反射鏡32a,34aの傾斜角度をそれぞれ制御することによって、光源部20から照射されたビーム光を皮膚の処理対象領域(施術範囲となるX-Y平面)上の任意の位置(X,Y)に位置決め可能に構成されている。
【0041】
X方向偏向部34及びY方向偏向部32としては、例えば、ガルバノスキャナ(電磁的な方法)、サーボモータ(電磁的な方法)、MEMSミラー(電磁力又は静電力)、その他電磁力又は静電力でミラーを傾斜させる偏向器等を任意に用いることが可能であり、また、AO(Acousto-Optics)偏向器(音響光学的手段)等の種々の公知の構成を採用することも可能である。
【0042】
[撮像部の構成]
撮像部40は、
図1に示すように、ダイクロイックミラー17の透過面側に配置されており、ダイクロイックミラー17及び開口13を介して、皮膚の処理対象領域を撮像可能に構成されている。撮像部40は、4K解像度を有する4Kカメラであることが好ましいが、これに限定されず、視野内の毛穴を十分な解像度で撮像できる画素数を有するものであれば良い。撮像部40としては、例えば、CMOSセンサ、CCDセンサ、アレイセンサ及び撮像管等の種々の公知の撮像手段を任意に採用することが可能である。
【0043】
[制御部の構成]
制御部100は、
図6に示すように、撮像部40、移動検出センサ15及び照射ボタン18等の機器と接続するための外部インタフェース102,104,106と、脱毛装置1を動作させるための演算処理等を行う主制御部110と、照射位置制御機構30を制御する制御機構駆動制御部122と、光源部20を制御する光源制御部124と、表示パネル16を制御する表示制御部126と、脱毛処理に必要な各種データ及び情報を記憶する記憶部130とを備えている。また、制御部100は、外部ネットワークと通信できる通信処理部(図示せず)を更に備えている。
【0044】
外部インタフェース102は、撮像部40と接続するためのインタフェースであり、外部インタフェース104は、移動検出センサ15と接続するためのインタフェースであり、外部インタフェース106は、照射ボタン18と接続するためのインタフェースである。なお、脱毛装置1に設けられる外部インタフェースは、これらのインタフェースに限定されず、接続する機器に応じて任意に設けることが可能である。また、これら外部インタフェース102,104,106は、接続される機器に応じた公知のインタフェースを用いることが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0045】
記憶部130は、例えば、RAM、ROM等で構成されるメモリであり、主制御部110を動作させるための命令を含むプログラムや、学習済みの学習器(後述する毛穴特定部112、照射条件特定部114)の設定を行うための学習結果データ等を記憶している。なお、記憶部130は、主制御部110に含まれる後述するRAM及びROMにより構成されても良い。
【0046】
主制御部110は、ハードウェアプロセッサであるCPU、RAM、ROM等を含み、記憶部130に記憶されたプログラムをRAMに展開し、これをCPUにより解釈及び実行することにより、後述する毛穴特定部112、照射条件特定部114、ずれ量検出部116及び照射位置補正部118の各機能を実現するよう構成されている。なお、CPUは、DL(Deep Learning)を実行できる高性能のプロセッサ(高速CPU)であることが好ましい。また、主制御部110は、複数のハードウェアプロセッサを含んでいても良く、ハードウェアプロセッサは、GPU(CPU内蔵GPUを含む)、FPGA等で構成されても良い。
【0047】
毛穴特定部112は、撮像部40により撮像された処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定するよう構成されている。具体的には、毛穴特定部112は、
図7(a)に示すように、撮像部40により撮像された処理対象領域TAの画像データIを外部インタフェース102を介して取得し、該画像データIに対して必要に応じて前処理を施した上で、
図7(b)に示すように、処理対象領域TAの中に存在する毛穴の候補(毛穴候補P)を画像解析によって該画像データIから抽出するよう構成されている。前処理としては、例えば、4K画像に対し最小値フィルタをかけて毛穴を強調する処理や、以後の処理の負担を軽減するために不要な情報を間引いて2K画像とする処理等が含まれるが、これに限定されるものではない。なお、以下、「画像データI」という場合(「画像データ」に符号「I」を付す場合)には、撮像部40により撮像されたオリジナルの画像データだけでなく、毛穴特定部112において前処理された処理済みの画像データも含むものとする。
【0048】
ここで、毛穴特定部112による毛穴候補Pの抽出は、DL(Deep Learning)等のAIを駆使した画像処理(AI画像認識)により実行されることが好ましい。具体的には、元の画像データは4K×2K画素など巨大な画像であり、そのままではDL処理に適さないため、画像を256×256画素などの小領域(セル)に分割して推論を行う。毛穴特定部112は、少領域内の毛穴のXY座標の推論値と毛穴である確信度の推論値などからなる目的関数を最小化するように学習を行った学習済みの学習器(ニュートラルネットワーク)を備え、該学習器に、撮像部40により撮像された処理対象領域TAの画像データIを分割した少領域(セル)の画像を逐次入力し、少領域の画像に含まれる毛穴との確信度の高い毛穴候補の確信度や座標を該学習器から取得することにより、毛穴候補Pを抽出するよう構成されても良い。この方法は、従来技術である二値化による画像処理が一切含まれていないため撮像した画像の輝度や毛穴の向きなどにより検出精度の影響を受けにくく、様々な異なる形状や大きさの毛穴も精度良く検出が可能になる。このようにAI画像認識によって毛穴候補Pを抽出することにより、一般の画像処理では計測どころか検出さえ困難なコントラストが低く小さい毛穴(産毛等)も認識することが可能となる。
【0049】
本実施形態において、学習済みの学習器としては、ImageNet等で学習させた畳込みニューラルネットワーク(例えばResNet-50等)をファインチューニング(Fine-tuning)したものが例示されるが、これに限定されるものではない。また、上述した目的関数(少領域内の毛穴のXY座標の推論値と毛穴である確信度の推論値などからなる目的関数)としては、例えば下記目的関数が例示される。下記目的関数において、右辺第1項は、毛穴位置(毛穴のXY座標)に関するものであり、MSE(mean square error)で求める関数である。右辺第2項は、ある領域内に毛穴が存在するか否かの判定に関するものであり、バイナリクロスエントロピー(binary cross entropy)で求める関数である。右辺第3項は、過学習を防ぐための正則化項である。
【0050】
【0051】
上記目的関数(右辺第1項)において、λ
coordは、右辺第1項の右辺第2項に対する重みであり、本実施形態では例えば1.0に固定することができる。また、上記目的関数(右辺第1項及び右辺第2項)において、s
2は、全てのセルを意味し、Bは、セル内の全ての小領域を意味している。さらに、
【数2】
は、オブジェクトがあるときに1、他は0となる指示関数(indicator関数)であり、x
ijは、iセルj領域におけるオブジェクトの位置のX座標推論値であり、
【数3】
は、上記のターゲットである。また、y
ijは、iセルj領域におけるオブジェクトの位置のY座標推論値であり、
【数4】
は、上記のターゲットである。
【0052】
また、上記目的関数(右辺第2項)において、c
ijは、iセルj領域におけるオブジェクトの存在の確信度推論値であり、
【数5】
は、上記のターゲットである。さらに、λ
noconfは、オブジェクトがない場合のある場合に対する重みであり、本実施形態では毛穴ではない領域の方が多いため、例えば0.05に設定することができる。
【0053】
さらに、上記目的関数(右辺第3項)において、λL2は、L2ノルムの重みであり、本実施形態では例えば0.001に設定することができる。また、wは、全てのカーネルのパラメータである。
【0054】
なお、毛穴特定部112は、十分なコントラストがある太く黒い毛穴などに対しては、AI画像認識により毛穴候補Pを抽出する構成に代えて、撮像部40により撮像された処理対象領域TAの画像データIに対する二値化処理や閾値判定等により毛穴候補Pを抽出する方法等も任意に採用することが可能である。
【0055】
照射条件特定部114は、毛穴特定部112により特定された毛穴(毛穴候補P)ごとに、該毛穴に対する光源部20からのビーム光の照射条件(照射強度及び波長等)を特定するよう構成されている。具体的には、照射条件特定部114は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、まず、毛穴特定部112により特定された毛穴(毛穴候補P)ごとに、該毛穴及び該毛穴周辺の皮膚を含む画像(切り出し毛穴画像CI)を画像データIから切り出し、該切り出し毛穴画像CIを、毛穴の大きさ、毛の色及び該毛穴周辺の皮膚の色が異なる複数の標準モデル画像のうちの最も確信度の高いいずれかに分類するよう構成されている。
【0056】
ここで、各切り出し毛穴画像CIは、毛穴候補Pが略中心に位置し、該毛穴候補Pの周囲に皮膚が存在するよう形成されている。また、標準モデル画像は、切り出し毛穴画像CIと同様に、1本または複数の毛穴及び該毛穴周辺の皮膚を含む画像である。標準モデル画像は、毛穴の大きさ、毛の色及び該毛穴周辺の皮膚の色が異なる複数のものが予め用意され、記憶部130等に記憶されている。各標準モデル画像には、それぞれ、該標準モデル画像の毛穴の大きさ、毛の色及び該毛穴周辺の皮膚の色を有する施術対象にとって、脱毛効率及び安全性(火傷リスク)等の観点から最も適したビーム光の照射条件(照射強度及び波長等)が紐づけて登録されている。なお、照射強度は、毛穴が太く、毛の色が薄く、皮膚の色が薄いほど大きい値が設定される傾向にあり、波長は、毛穴が太く、毛の色が薄く、皮膚の色が薄いほど短い波長が設定される傾向にある。
【0057】
そして、照射条件特定部114は、分類された標準モデル画像に対して予め設定されたビーム光の照射条件(照射強度及び波長等)を、該切り出し毛穴画像CIの毛穴(毛穴候補P)に対するビーム光の照射条件(照射強度及び波長等)として特定するよう構成されている。
【0058】
なお、照射条件特定部114による分類は、DL(Deep Learning)等のAIを駆使した画像処理(AI画像認識)により実行されることが好ましい。具体的には、照射条件特定部114は、毛の太さ(毛穴の大きさ)を示す推論値、毛の色を示す推論値、肌の色を示す推論値などからなる目的関数を最小化するように学習を行った学習済みの学習器(ニュートラルネットワーク)を備え、該学習器に切り出し毛穴画像CIを入力し、該切り出し毛穴画像CIに含まれる毛穴候補Pと最も確信度の高い(スコアの高い)標準モデル画像の情報を該学習器から取得することにより、該切り出し毛穴画像CIを複数の標準モデル画像のうち総合的に最も類似したいずれかに分類するよう構成されても良い。この場合において、学習器は、全ての標準モデル画像が所定の確信度を大きく下回る場合には、予め用意した標準モデル画像の中には切り出し毛穴画像CIと近似するものがない(分類不能)と判定し、該切り出し毛穴画像CIの毛穴候補Pは毛穴ではないと判定(エラー判定)する処理を実行しても良い。
【0059】
ずれ量検出部116は、処理対象領域に対する撮像時からの脱毛装置1の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量(δx,δy)を検出するよう構成されている。具体的には、ずれ量検出部116は、撮像部40により処理対象領域を撮像してから、毛穴特定部112及び照射条件特定部114により毛穴の位置及び該毛穴に対する照射条件等を特定するまでの間(タイムラグ)におけるヘッド部12の装置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を検出し、その値に基づいて個別の毛穴位置のずれ量(δx,δy)を計算するか、個別の毛穴位置のずれ量(δx,δy)を直接検出するよう構成されている。このようなずれ量検出部116の構成としては、例えば、移動検出センサ15を用いてずれ量を検出する構成や、撮像部40を用いてずれ量を検出する構成が例示される。
【0060】
[移動検出センサを用いてずれ量を検出する構成]
まず、移動検出センサ15を用いてずれ量を検出する場合におけるずれ量検出部116の構成について、説明する。この場合におけるずれ量検出部116は、まず、撮像部40により全処理対象領域を撮像してから、毛穴特定部112及び照射条件特定部114により毛穴の位置及び該毛穴に対する照射条件等を特定するまでの間におけるヘッド部12の水平移動量及び水平回転量を移動検出センサ15(第1センサ構成例15A~第3センサ構成例15C等)により検出する。次に、この水平移動量及び水平回転量に基づいて、撮像時からの脱毛装置1の撮像部40の全視野の撮像範囲における装置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を計算し、その値を用いて各毛穴位置ごとの個別のずれ量(δx,δy)を計算する。そして、このようにして特定したずれ量を用いて、後述するように、個別の毛穴位置の位置補正を行うように構成されている。
【0061】
このような構成によれば、ヘッド部12の動きを移動検出センサ15により直接的にリアルタイムに検出してずれ量を特定することが可能となるため、簡易な設備でリアルタイム性の高い補正処理を実現することが可能となるという利点がある。
【0062】
[撮像部を用いてずれ量を検出する構成]
次に、撮像部40を用いてずれ量を検出する場合におけるずれ量検出部116の構成について、説明する。撮像部40を用いてずれ量を検出する場合におけるずれ量検出部116の構成としては、例えば、次の第1撮像検出構成例~第3撮像検出構成例が例示される。
【0063】
[第1撮像検出構成例]
第1撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、概略的には、毛穴特定部112により毛穴を特定するために撮像した画像データ(第1画像データ)と、ビーム光の照射前に再度撮像した画像データ(第2画像データ)とに基づいて、脱毛装置1の位置ずれに伴う個々の毛穴位置のずれ量(δx,δy)を直接的に検出する例である。
【0064】
具体的には、まず、第1撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、照射条件特定部114(又は毛穴特定部112)により生成された切り出し毛穴画像CIをテンプレート画像として記憶部130に登録する。なお、該切り出し毛穴画像CIは、既述のとおり、毛穴特定部112により毛穴を特定するために撮像した画像データI(第1画像データ)から、毛穴特定部112により特定された毛穴及び該毛穴の周囲の皮膚を含むよう切り出された画像である。
【0065】
また、第1撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、毛穴特定部112により特定された毛穴の位置(照射予定位置)まで照射位置制御機構30が移動した際又はその前後に、撮像部40により、照射予定位置を含む所定範囲を再度撮像する。なお、この場合における再撮像範囲(第2画像データの画素サイズ)は、切り出し毛穴画像CIよりも大きければ特に制限されるものではないが、高速処理の観点から、毛穴特定部112により毛穴を特定するために撮像した全視野の画像データI(第1画像データ)に比べ画像認識をする必要がないため、位置ずれを検知できる必要かつ十分な粗い解像度(同じ撮像範囲において少ない画素数)であっても良く、また、全視野ではなく照射予定位置(照射対象とする毛穴)を含む狭い範囲であることがより好ましい。例えば切り出し毛穴画像CI(テンプレート画像)のサイズが64×64画素の場合には、撮像部40による再撮像範囲は128×128画素に設定することが可能である。
【0066】
そして、第1撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、
図8(c)に示すように、切り出し毛穴画像CIと再撮像画像I´とに基づいて、グレーサーチ等の種々のマッチング方法を用いて、再撮像画像中における切り出し毛穴画像CI´の位置を検出する。また、第1撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、
図8(d)に示すように、本来の切り出し毛穴画像CIの位置と、再撮像画像中における切り出し毛穴画像CI´の位置との差分を算出し、これを撮像時からの脱毛装置1の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量(δx,δy)として特定するよう構成されている。
【0067】
このような第1撮像検出構成例に係るずれ量検出部116によれば、照射対象となる毛穴を直接的に撮像してずれ量を特定することが可能となるため、皮膚の局所的な伸縮や歪みなども補正可能であり、精度の高い補正処理を実現することが可能となるという利点がある。
【0068】
[第2撮像検出構成例]
第2撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、概略的には、毛穴特定部112により毛穴を特定するために撮像した画像データ(第1画像データ)と、ビーム光の照射前に再度撮像した2以上の画像データ(第2画像データ)とに基づいて、撮像時からの脱毛装置1の撮像部40の全視野の撮像範囲における装置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を計算し、その値を用いて各毛穴位置ごとの個別のずれ量(δx,δy)を検出する例である。
【0069】
具体的には、まず、第2撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、照射条件特定部114(又は毛穴特定部112)により生成された互いに離れた2箇所以上の毛穴画像を含む画像範囲をそれぞれ位置ずれ検出用テンプレート画像T1,T2として記憶部130に登録する。2箇所以上の位置ずれ検出用テンプレート画像T1,T2は、処理対象領域内の互いに異なる位置に関する画像であれば良いが、ヘッド部12の水平移動量及び水平回転量を精度よく検出する観点から、X方向及びY方向の双方において離間する位置に関する画像であることが好ましい。また、位置ずれ検出用テンプレートT1,T2は、位置ずれが大きい場合、他の毛穴位置と誤認識するのを防ぐため、第1撮像検出構成例のように1箇所の毛穴を含むごく狭い範囲ではなく、複数の毛穴を含んだり、毛穴周辺の広い空白部分を含んだ比較的広い範囲にすることが望ましい。
【0070】
次に、第2撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、各毛穴に対するビーム光の照射前に、撮像部40により、記憶部130に登録した位置ずれ検出用のテンプレートT1,T2を含む所定範囲をそれぞれ再度撮像する。なお、この場合における再撮像範囲(第2画像データの画素サイズ)は、第1撮像検出構成例と同様に、位置ずれ検出用のテンプレート画像T1,T2よりも大きければ特に制限されるものではない。
【0071】
次に、第2撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、
図9に示すように、グレーサーチ等の種々のマッチング方法を用いて、位置ずれ検出用のテンプレート画像T1,T2の位置ずれ量(δx1,δy1及びδx2,δy2)をそれぞれ検出する。
【0072】
そして、第2撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、これら2以上の位置ずれ検出用のテンプレート画像T1,T2の位置ずれ量(δx1,δy1及びδx2,δy2)を用いて、撮像時からの脱毛装置1の撮像部40の全視野の撮像範囲における装置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を計算し、
図10に示すように、その値を用いて各毛穴位置ごとの個別のずれ量(δx,δy)を特定するよう構成されている。
【0073】
[第3撮像検出構成例]
第3撮像検出構成例に係るずれ量検出部116は、上述した第2センサ構成例15Bと同様の原理により、撮像部40を用いて視野内の離れた2箇所以上の計測範囲を抽出し、上述した光学式マウスセンサ(第1光学式マウスセンサ15c及び第2光学式マウスセンサ15d)と同様に毛穴だけではなく皮膚の微小テクスチャーの移動量を計測することにより、等価的に上述した第2センサ構成例15Bと同様な動作を実現する例である。
【0074】
このような第3撮像検出構成例によれば、上述した第2センサ構成例15Bと同様に、水平移動量(位置ずれ)と水平回転量(回転ずれ)を検出することが可能である。また、
この水平移動量及び水平回転量に基づいて、撮像時からの脱毛装置1の撮像部40の全視野の撮像範囲における装置ずれ量(ΔX,ΔY,Δθ)を計算し、その値を用いて各毛穴位置ごとの個別のずれ量(δx,δy)を特定することが可能である。なお、第3撮像検出構成例においては、皮膚のテクスチャーのコントラストを向上させるため、通常の照明条件とは異なる、より側方照明を強化した照明や、波長の異なる照明を使用しても良い。
【0075】
以上説明した第1~第3撮像検出構成例に係るずれ量検出部116のように、撮像部40を用いてずれ量を検出する場合には、1つのセンシング手段(カメラ)で全視野内の各毛穴における任意のずれをδx,δyに帰着したずれ量として検出可能であり、各毛穴位置のずれ量(δx,δy)を照射位置制御機構30への制御信号に反映するだけで良いので、
図3~
図5の記載のセンサ類を搭載する必要がなく、部品点数を削減することが可能となる。
【0076】
特に、撮像部40にCMOSセンサを用いた場合には、撮像範囲を限定することにより高いフレームレート(例えば、毎秒1000枚以上)で高速撮像が可能となり、これを利用することにより、部品点数を抑えつつ、移動検出センサ15と同程度のリアルタイム性(応答性)を実現することが可能となる。
【0077】
なお、ずれ量検出部116は、毛穴毎にずれ量を検出する構成とされても良いし、所定の期間毎(複数本毎)にずれ量を検出し、近傍かつ時間経過の少ない最新の毛穴のずれ量を参考にして間引いた毛穴の位置補正を行う構成としても良い。すなわち、ずれ量検出部116によるずれ量の検出頻度は、任意に設定することが可能である。
【0078】
さらに、簡易的には、ビーム光の照射中は都度位置ずれの検出を行わず視野内のすべての毛穴への照射が終了した後か予め設定した照射数が終了するごとに、再撮像を行い視野内の1箇所または数カ所の毛穴のずれを計算し、ずれが規定以上に有る時のみ再度毛穴の認識をやり直してレーザー照射をし直すか、後述のようにエラー表示を行った後、オペレータに再度の操作を促すことも可能である。
【0079】
照射位置補正部118は、撮影時の毛穴の位置(照射予定位置)と、その後のずれ量とに基づいて、実際にビーム光を照射する位置を特定するよう構成されている。具体的には、照射位置補正部118は、ずれ量検出部116により検出された各毛穴ごとのずれ量(δx,δy)を用いて、毛穴特定部112により特定された毛穴の位置(すなわち、照射予定位置)(X,Y)を補正し、各毛穴の補正座標位置(X´,Y´)を特定するよう構成されている。
【0080】
また、照射位置補正部118は、ずれ量検出部116により検出されたずれ量(δx,δy)に応じて、照射予定位置の補正を行うか否かの判定及び/又はエラーを報知するか否かの判定を行う構成としても良い。
【0081】
具体的には、照射位置補正部118は、ずれ量検出部116により検出されたずれ量(δx,δy)がビーム径に比べて小さいか否かを判定し、小さいと判定した場合(すなわち、照射予定位置のとおりにビーム光を照射しても毛穴にビーム光が照射される場合)には、照射予定位置を補正しないよう構成されても良い。なお、この場合における「ビーム径に比べて小さい」とは、例えば、ずれ量(δx,δy)の合成ベクトルがビーム径の半径よりも小さい場合が挙げられるが、判定基準はこれに限定されるものではない。
【0082】
また、照射位置補正部118は、ずれ量検出部116により検出されたずれ量(δx,δy)が予め定めた補正可能範囲を超えているか否かを判定し、超えていると判定した場合には、照射予定位置を補正することなく、アラーム音や表示等でエラーを報知し、再照射を促す等の警告処理を実行するよう構成されても良い。
【0083】
そして、照射位置補正部118は、ずれ量がビーム径に比べて大きいと判定し(すなわち、照射予定位置のとおりにビーム光を照射すると毛穴にビーム光が照射されない又は照射が不十分である場合)、かつ、該ずれ量(δx,δy)が予め定めた補正可能範囲内であると判定した場合に、該ずれ量(δx,δy)に基づいて照射予定位置(X,Y)を補正するよう構成されても良い。
【0084】
制御機構駆動制御部122は、主制御部110の毛穴特定部112により特定され、必要に応じて照射位置補正部118によって位置が補正された毛穴1つ1つに光源部20からのビーム光が順次照射されるよう、照射位置制御機構30を制御するよう構成されている。
【0085】
具体的には、制御機構駆動制御部122は、照射位置補正部118によって照射予定位置が補正されていない場合には、毛穴特定部112によって特定された各毛穴の照射予定位置(X,Y)に順次ビーム光が照射されるように、Y方向偏向部32の反射鏡32aとX方向偏向部34の反射鏡34aの傾斜角度を順次制御するよう構成されている。一方、制御機構駆動制御部122は、照射位置補正部118によって照射予定位置が補正された場合には、該照射位置補正部118によって特定された各毛穴の補正座標位置(X´,Y´)に順次ビーム光が照射されるように、Y方向偏向部32の反射鏡32aとX方向偏向部34の反射鏡34aの傾斜角度を順次制御するよう構成されている。
【0086】
このような制御機構駆動制御部122の制御は、例えば専用の安価な組み込みマイクロコンピュータでデジタルPID制御を実行することにより実現することが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0087】
本実施形態に係る脱毛装置1は、このように、毛穴特定部112におけるAI画像認識により高精度に個々の毛穴の位置(X,Y)を特定しつつ、撮像部40による撮像から実際にビーム光を照射するまでに生じたヘッド部12の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量(δx,δy)に基づいて照射位置を補正して、個々の毛穴に向けてピンポイントにビーム光が照射されるよう照射位置制御機構30を制御するため、毛穴のごく近傍のみにビーム光を照射し、効率性及び安全性を向上させることができる。
【0088】
具体的には、上記位置補正によって高い照射位置精度が確保可能となることにより、位置ずれに配慮して必要以上にビーム径を太くする必要が無くなるため、同じ照射パワー密度を確保する場合、光源としてパワーの小さいレーザーを活用でき、装置の小型化やコストダウンを図ることが可能となる。また、同じ光源を用いた場合、太いビームスポットの装置よりも毛穴ごとの照射時間を大幅に短縮できるため、高速な脱毛器を実現できる。例えば、ビーム径を1mmから0.5mmに縮小できれば、必要な光源のパワーは約1/4に抑えることが可能となり、また、同じ光源のパワーであれば、照射時間は約1/4と大幅に短縮でき、高速化に寄与することができる。
【0089】
光源制御部124は、主制御部110の照射条件特定部114により特定された照射条件を有するビーム光が光源部20から照射されるよう、毛穴毎に、光源部20を制御するよう構成されている。具体的には、光源制御部124は、当該特定された照射条件(照射強度及び波長等)を有するビーム光となるよう、毛穴毎に、発光させる光源(第1光源~第3光源)の選択制御及び該発光させる光源の出力制御を実行するよう構成されている。なお、光源制御部124は、開口13に向けて照明光を照射可能な照明手段(図示せず)の制御も実行可能としても良い。
【0090】
表示制御部126は、撮像部40により撮像したリアルタイムな映像(ライブ画像)を表示パネル16上に転送して表示させる処理を実行可能に構成されている。このような表示制御部126としては、種々の公知の制御手法を採用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0091】
[脱毛方法]
次に、本実施形態に係る脱毛装置1を用いた脱毛方法について、
図11~
図14を用いて説明する。
図11は、本実施形態に係る脱毛方法の全体の流れを概略的に示すフローチャートであり、
図12は、毛穴特定部112により特定した1つの毛穴に対する処理(毛穴特定工程から照射工程まで)の流れを概略的に示すフローチャートである。また、
図13は、本実施形態に係る脱毛方法の全体の処理シーケンスを概略的に示す図であり、
図14は、
図13中のA部分を拡大して示す図である。なお、以下で説明する脱毛方法は、脱毛装置1の記憶部130に格納されたプログラム及び学習結果データ等によって実行処理される。
【0092】
本実施形態に係る脱毛方法は、概略的には、光源から照射される光によって脱毛処理を行う脱毛方法であって、皮膚の処理対象領域を撮像する撮像工程(S4)と、撮像工程により撮像された処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定する毛穴特定工程(S5-1~S5-n)と、毛穴位置に関する撮像時からのずれ量(δx,δy)を検出するずれ量検出工程(S7)と、ずれ量検出工程により検出されたずれ量(δx,δy)に基づいて、毛穴に対する光の照射位置(X,Y)を補正する照射位置補正工程(S10)とを含んでいる。
以下、このような各工程を含む脱毛方法の詳細について、説明する。
【0093】
本実施形態に係る脱毛方法を開始するにあたり、まず、脱毛装置1の主電源をONし、脱毛装置1を起動させる。脱毛装置1を起動させると、撮像部40により撮像したリアルタイムな映像(ライブ画像)が表示パネル16に表示される。これにより、開口13を皮膚に押し付けた状態(人によるショット移動中)においても、表示パネル16のライブ画像により処理対象領域を視認することができる。なお、脱毛装置1は、被施術者が自ら操作しても良いし、被施術者とは異なる者(医療従事者等)が操作しても良い。以下、脱毛装置1を操作する者を「使用者」という。
【0094】
脱毛装置1を起動させた状態において、使用者は、
図11及び
図13に示すように、ハウジング10の開口13が処理対象領域に位置するよう脱毛装置1を位置決めし(S1)、位置決め完了後に、照射ボタン18のON操作を行う(S2)。照射ボタン18のON操作が行われると、表示パネル16がOFFされると共に(S3)、撮像部40によって皮膚の処理対象領域が撮像される(S4:撮像工程)。そして、撮像部40によって撮像された画像データが制御部100の主制御部110に送信され、該主制御部110における上述した毛穴特定部112の機能によって、該画像データに対して必要に応じて前処理を施した上で、該処理対象領域内に存在する毛穴(毛穴候補P)を順次特定する(S-5~S5-n:毛穴特定工程)。
【0095】
また、毛穴の特定と並行して、特定された毛穴に対して順次、照射条件(照射強度及び波長等)の特定や、ビーム光の照射位置の補正処理及び照射処理が行われる。すなわち、主制御部110は、上述した毛穴特定部112の機能によって1つ目の毛穴候補Pを特定すると、
図12及び
図14に示すように、2つ目の毛穴候補Pの特定処理とは独立して(並行して)、該1つ目の毛穴候補Pに対して照射条件の特定処理等を実行する。また、主制御部110は、2つ目の毛穴候補Pを特定すると、1つ目の毛穴候補Pに対する照射条件の特定処理等、並びに、3つ目の毛穴候補Pの特定処理とは独立して(並行して)、該2つ目の毛穴候補Pに対して照射条件の特定処理等を実行する。主制御部110は、このような並行処理を最後(n個目)の毛穴候補Pに至るまで実行する。このように、毛穴の認識とビーム光の照射とを並行して行うシーケンスにより、1サイクルの時間を長期化させることなく、認識処理の時間を確保することが可能となる。
【0096】
各毛穴候補Pに対する照射条件(照射強度及び波長等)の特定(S6:照射条件特定工程)は、主制御部110における上述した照射条件特定部114の機能によって実行される。なお、当該照射条件特定工程において、該当する標準モデル画像が存在しないと判定した場合には、該毛穴候補Pは毛穴ではないと判定し、次の工程に移行することなく(該毛穴候補Pに対するビーム光の照射を実行することなく)、該毛穴候補Pに対する処理を終了しても良い。
【0097】
また、この照射条件特定工程の後又はこれらと並行して、主制御部110における上述したずれ量検出部116の機能によって、毛穴位置に関する撮像時からのずれ量(δx,δy)を検出する(S7:ずれ量検出工程)。なお、ずれ量検出工程は、各毛穴候補Pに対してそれぞれ実行されても良いし、所定の期間毎(複数本毎)に実行されても良い。
【0098】
ずれ量検出工程によりずれ量(δx,δy)が検出されると、該ずれ量が予め定めた補正可能範囲を超えているか否かの判定を実行する(S8)。そして、該ずれ量が予め定めた補正可能範囲を超えていると判定した場合には、アラーム音や表示等でエラーを報知し、再照射を促す等の警告処理を実行する(S9´)。
【0099】
一方、ずれ量検出工程により検出されたずれ量(δx,δy)が予め定めた補正可能範囲内であると判定した場合には、該ずれ量が補正を要する程度であるか否かの判定を実行する(S9)。この判定では、例えば、該ずれ量がビーム径に比べて小さいか否か(すなわち、照射予定位置のとおりにビーム光を照射しても毛穴にビーム光が照射されるか否か)を判定しても良い。
【0100】
そして、この判定工程において補正を要すると判定した場合には、主制御部110における上述した照射位置補正部118の機能によって、ずれ量検出工程により検出されたずれ量(δx,δy)に基づいて、毛穴に対する光の照射位置(X,Y)を補正する(S10:照射位置補正工程)。また、該照射位置補正工程の後、照射工程(S11)に移行する。一方、上述の判定工程において補正を要しないと判定した場合には、照射位置補正工程(S10)を経ることなく、照射工程(S11)に移行する。
【0101】
照射工程(S11)に移行すると、毛穴特定工程により特定された該毛穴候補Pの座標位置(X,Y)又は照射位置補正工程によって補正された該毛穴候補Pの補正座標位置(X´,Y´)に光源部20からのビーム光が照射されるように、制御機構駆動制御部122によって照射位置制御機構30が駆動され、照射位置が制御される。そして、該照射位置制御の後に、照射条件特定工程により特定された照射条件(照射強度及び波長等)を有するビーム光を光源部20から該毛穴候補Pに対して照射する(S11:照射工程)。これにより、該毛穴候補Pの毛根が加熱され、永久的又は長期的に除去される。
【0102】
なお、この照射位置の制御に要する時間は、移動距離等の諸条件によって異なるが、概ね数ms程度である。また、ビーム光の照射時間は、照射強度等の諸条件により異なるが、概ね数ms~数10ms程度である。この際におけるビーム光の照射条件(照射強度及び波長等)は、最も近似する標準モデル画像に割り当てられた最適な照射条件(照射強度及び波長等)であるため、該毛穴候補Pに対しても効果的であり、かつ、その周辺の皮膚に対しても害が少なく、安全である。
【0103】
そして、以上の毛穴特定工程から照射工程までの一連の処理を最後(n個目)の毛穴候補Pに対して実行し、全ての毛穴候補Pに対する処理が終了すると、
図11及び
図13に示すように、照射ボタン18がOFF状態となり(S12)、再度、表示パネル16に撮像部40により撮像したリアルタイムな映像(ライブ画像)が表示される(S13)。
【0104】
以上説明した、脱毛装置1の位置決め(移動)から処理対象領域内の全ての毛穴に対する照射完了までを1サイクルとし、これを所望の処理対象領域の全てに亘って順次位置をずらして実行することにより、脱毛処理が行われる。なお、1サイクル内における、照射ボタン18のON操作から処理対象領域内の毛穴に対する照射完了までの目安時間(脱毛装置1の処理時間)は、毛穴が30カ所以内、照射・移動時間が20msと仮定した場合には1秒以内であり、毛穴が100カ所以内、照射・移動時間が20msと仮定した場合には3秒以内である。このように、本実施形態に係る脱毛装置1は、極めて短時間で脱毛処理を行うことが可能である。
【0105】
[本実施形態に係る脱毛装置の利点]
以上説明したとおり、本実施形態に係る脱毛装置1は、光源を備える光源部20と、皮膚の処理対象領域を撮像可能な撮像部40と、撮像部40により撮像された処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定する毛穴特定部112と、撮像時からの脱毛装置1の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量(δx,δy)を検出するずれ量検出部116と、ずれ量検出部116により検出された各毛穴ごとのずれ量(δx,δy)に基づいて、毛穴に対する光の照射位置(X,Y)を補正する照射位置補正部118とを備えている。
【0106】
このように構成された本実施形態に係る脱毛装置1によれば、撮像部40による撮像から実際にビーム光を照射するまでに生じた脱毛装置1の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量(δx,δy)に基づいて照射位置(X,Y)を補正することが可能となるため、撮像部40による撮像後に脱毛装置1(ヘッド部12)と処理対象領域(皮膚)との相対位置がずれてしまった場合であっても、個々の毛穴に向けて確実かつピンポイントにビーム光を照射させることが可能となる。また、これにより、毛穴のみにビーム光を照射することが可能となるため、効率性及び安全性を向上させることができる。
【0107】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0108】
例えば、上述した実施形態では、照射条件特定部114において、切り出し毛穴画像CIを標準モデル画像に分類することで毛穴の大きさや毛の色、周辺の皮膚の色などに応じた照射条件を特定するものとして説明したが、これに限定されず、毛穴毎に照射条件を変更しない構成であっても良い。
【0109】
また、上述した実施形態では、毛穴特定部112にて一旦毛穴だけの認識を行い、その後、照射条件特定部114にて切り出し毛穴画像CIを画像データIから切り出すものとして説明したが、これに限定されず、毛穴特定部112にて目的関数に毛穴の大きさや毛の色、周辺の皮膚の色などの推論値を加えることで、画像データIを分割した少領域(セル)の画像から標準モデル画像に類似した画像の分類や位置を推論し、直接毛穴の位置、毛穴の大きさ、毛の色、周辺の皮膚の色を取得しても良い。
【0110】
さらに、上述した実施形態では、AI画像認識により切り出し毛穴画像CIを分類するものとして説明したが、これに限定されず、切り出し毛穴画像CIに含まれる毛穴候補Pの毛穴の大きさ、毛の色及び該毛穴周辺の皮膚の色の各特徴量を数値化し、これを予めデータベースに登録した標準モデルの各特徴量と突合させることで、最も近似する標準モデルに分類する方法等も任意に採用することが可能である。
【0111】
また、上述した実施形態では、脱毛装置1が、毛穴の特定及び毛穴画像の分類に関するAI画像認識を行うための学習済みの学習器(ニュートラルネットワーク)を備えるものとして説明したが、これに限定されず、脱毛装置1と高速通信ネットワークを介してデータ通信可能に接続された別装置に学習済みの学習器が設けられ、各脱毛装置1と該別装置との間でリアルタイムに通信する構成(クラウドコンピューティング)としても良い。また、脱毛装置1又は該別装置において、所定の学習プログラムに基づき、処理対象領域TAの画像データIを入力データ、毛穴である確信度や座標を参照用データとして利用して、機械学習(AI学習プロセス)を行う構成としても良いし、複数の脱毛装置1で撮像した画像をクラウド経由でアップロードし、加速度的に取得画像を増加させることで、さらに認識精度を高めた学習データをリアルタイムに共有する構成としても良い。
【0112】
さらに、上述した実施形態では、ヘッド部12の内部にダイクロイックミラー17を設け、このダイクロイックミラー17の反射面側に光源部20を配置し、透過面側に撮像部40を配置するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ダイクロイックミラー17の反射面側に撮像部40を配置し、透過面側に光源部20を配置する構成としても良い。また、ダイクロイックミラー17を設けない構成としても良い。なお、ダイクロイックミラー17を設けない構成としては、例えば、開口13(皮膚の処理対象領域)に対して撮像部40を垂直に配置し、照射位置制御機構30によって偏向された光源部20からのビーム光を開口13(皮膚の処理対象領域)に対して斜め方向から照射させる構成や、撮像部40によって開口13(皮膚の処理対象領域)を斜め方向から撮影すると共に、照射位置制御機構30によって偏向された光源部20からのビーム光を開口13(皮膚の処理対象領域)に対して斜め方向から照射させる構成等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0113】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0114】
1 :脱毛装置
10 :ハウジング
11 :把持部
12 :ヘッド部
13 :開口
14 :カバー部材
15 :移動検出センサ
15A :第1センサ構成
15B :第2センサ構成例
15C :第3センサ構成
15a :加速度センサ
15b :ジャイロセンサ
15c :第1光学式マウスセンサ
15d :第2光学式マウスセンサ
15e :光学式マウスセンサ
15f :ジャイロセンサ
16 :表示パネル
17 :ダイクロイックミラー
18 :照射ボタン
20 :光源部
30 :照射位置制御機構
32 :Y方向偏向部
32a :反射鏡
32b :駆動部
34 :X方向偏向部
34a :反射鏡
34b :駆動部
40 :撮像部
100 :制御部
102 :外部インタフェース
104 :外部インタフェース
106 :外部インタフェース
110 :主制御部
112 :毛穴特定部
114 :照射条件特定部
116 :ずれ量検出部
118 :照射位置補正部
122 :制御機構駆動制御部
124 :光源制御部
126 :表示制御部
130 :記憶部
【要約】
【課題】 処理対象とする毛に対して確実にビーム光を照射することが可能な脱毛装置及び脱毛方法を提供する。
【解決手段】 光源から照射される光によって脱毛処理を行う脱毛装置であって、光源を備える光源部と、皮膚の処理対象領域を撮像可能な撮像部と、撮像部により撮像された処理対象領域の画像データに基づき、該処理対象領域内に存在する毛穴を特定する毛穴特定部と、撮像時からの脱毛装置の位置ずれに伴う毛穴位置のずれ量を検出するずれ量検出部と、ずれ量検出部により検出されたずれ量に基づいて、毛穴に対する光の照射位置を補正する照射位置補正部とを備える。
【選択図】
図1