(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ドローンシステム、ドローン、管制装置、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/04 20060101AFI20220106BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20220106BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220106BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20220106BHJP
【FI】
G08G5/04 A
B64C13/18 Z
B64C27/08
B64F1/36
(21)【出願番号】P 2021513641
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2020015683
(87)【国際公開番号】W WO2020209255
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2019073317
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-027331(JP,A)
【文献】特開2017-228178(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193578(WO,A1)
【文献】特開2017-212528(JP,A)
【文献】特開2006-121997(JP,A)
【文献】特開2009-251729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備え、
前記管制装置は、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定する発着計画策定部をさらに備え、
前記発着計画策定部は、前記中断地点と前記作業エリアの端点との間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記中断ドローンの発着計画を策定する、
ドローンシステム。
【請求項2】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備え、
前記管制装置は、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定する発着計画策定部をさらに備え、
前記飛行計画策定部は、前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる、
ドローンシステム。
【請求項3】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備え、
前記管制装置は、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定する発着計画策定部をさらに備え、
前記飛行計画策定部は、前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンの情報に基づいて、当該ドローンを一時停止させるか否かを判別する、
ドローンシステム。
【請求項4】
前記ドローンの情報は、前記中断ドローンと作業中の前記ドローンとの距離、ならびに前記中断ドローンおよび前記作業中のドローンの飛行速度の少なくとも1個を含む、
請求項
3記載のドローンシステム。
【請求項5】
前記発着計画策定部は、前記複数のドローンの前記発着計画に含まれる飛行経路を互いに異ならせる、
請求項
1乃至
4のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項6】
前記発着計画策定部は、前記作業中のドローンと、前記中断ドローンとで、前記飛行計画および前記発着計画に含まれる飛行高度を異ならせる、
請求項
1乃至
5のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項7】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部と、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定する発着計画策定部と、を備え、
前記中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する場合に、前記作業中のドローンの前記飛行計画を変更せず、前記発着計画策定部は、前記中断ドローンの飛行高度を、前記作業中のドローンよりも高くする
発着計画を生成して、
前記中断ドローンに前記作業中のドローンの上側を飛行させる、
ドローンシステム。
【請求項8】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備え、
前記複数のドローンが行う前記作業は薬剤散布作業であり、
前記飛行計画策定部の作成する前記飛行計画は、前記複数のドローンの少なくとも一部のドローンが、前記飛行計画の一部の区間を、前記薬剤散布作業を停止して飛行する散布停止飛行区間を含み、
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行するドローンと、他の前記ドローンとの距離が所定以上となるように、前記散布停止飛行区間を飛行する前記飛行計画を策定し、
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記飛行計画を策定する、
ドローンシステム。
【請求項9】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
前記管制装置は、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備え、
前記複数のドローンが行う前記作業は薬剤散布作業であり、
前記飛行計画策定部の作成する前記飛行計画は、前記複数のドローンの少なくとも一部のドローンが、前記飛行計画の一部の区間を、前記薬剤散布作業を停止して飛行する散布停止飛行区間を含み、
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行するドローンと、他の前記ドローンとの距離が所定以上となるように、前記散布停止飛行区間を飛行する前記飛行計画を策定し、
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行中のドローンが、他のドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる飛行計画を策定する、
ドローンシステム。
【請求項10】
前記飛行計画策定部は、前記散布作業中のドローンと、前記散布停止飛行区間を飛行中のドローンとで、前記飛行計画に含まれる飛行高度を異ならせる、
請求項
8又は9に記載のドローンシステム。
【請求項11】
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行中のドローンの飛行高度を、前記散布作業中のドローンよりも高くする、
請求項
10記載のドローンシステム。
【請求項12】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定ステップ
と、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定するステップと、を含み、
前記発着計画を策定するステップにおいて、
前記中断地点と前記作業エリアの端点との間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記中断ドローンの発着計画を策定する処理、
前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる処理、
前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンの情報に基づいて、当該ドローンを一時停止させるか否かを判別する処理、
の少なくともいずれかの処理を実行する、
ドローンシステムの制御方法。
【請求項13】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御プログラムであって、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定命令
と、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定する命令と、をコンピュータに実行させ、
前記発着計画を策定する命令は、
前記中断地点と前記作業エリアの端点との間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記中断ドローンの発着計画を策定する処理、
前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる処理、
前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンの情報に基づいて、当該ドローンを一時停止させるか否かを判別する処置、
の少なくともいずれかの処理をコンピュータに実行させる、
ドローンシステム制御プログラム。
【請求項14】
ドローンの動作を決定する管制装置からの通信を受信可能な、作業エリア内を飛行して作業を遂行するドローンであって、
前記管制装置から受信する飛行計画に基づいて、同時に飛行する他のドローンとの距離が所定以上となるように飛行制御され、
前記作業を中断する場合に、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画に基づいて飛行制御され、
前記発着計画に基づいて、前記中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する場合に、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行する、
ドローン。
【請求項15】
ドローンの動作を決定する管制装置からの通信を受信可能な、作業エリア内を飛行して作業を遂行するドローンであって、
前記管制装置から受信する飛行計画に基づいて、同時に飛行する他のドローンとの距離が所定以上となるように飛行制御され
、
他のドローンが作業を中断して、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行するために前記作業が完了していない前記作業エリアに進入する場合に、当該作業エリアを作業する自ドローンを一時停止させ、又は、当該作業エリアを作業する自ドローンの情報に基づいて一時停止させるか否かを判定する、
ドローン。
【請求項16】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンの動作を決定する管制装置であって、
同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部
と、
前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点から前記作業エリア外の発着地点まで飛行する発着計画を策定する発着計画策定部と、を備え、
前記発着計画策定部は、
前記中断地点と前記作業エリアの端点との間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記中断ドローンの発着計画を策定する処理、
前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる処理、
前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンの情報に基づいて、当該ドローンを一時停止させるか否かを判別する処理、の少なくともいずれかの処理を行う、
管制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドローンシステム、ドローン、管制装置、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。欧米と比較して農地が狭い日本においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
その一方で、農業用の薬剤散布向け自律飛行型ドローンについては安全性に対する考慮が十分とは言いがたいケースがあった。薬剤を搭載したドローンの重量は数10キログラムになるため、人の上に落下する等の事故が起きた場合に重大な結果を招きかねない。また、通常、ドローンの操作者は専門家ではないためフールプルーフの仕組みが必要であるが、これに対する考慮も不十分であった。今までに、人間による操縦を前提としたドローンの安全性技術は存在していたが(たとえば、特許文献2)、特に農業用の薬剤散布向けの自律飛行型ドローンに特有の安全性課題に対応するための技術は存在していなかった。
【0005】
また、複数のドローンが作業を行う場合においては、複数のドローンが衝突することなく、安全かつ効率良く作業を遂行するシステムが必要とされている。
【0006】
特許文献3には、複数の移動体同士の車間を監視する車間監視用制御手段が、移動体同士の間隔が予め設定された許容間隔以上離れているか否かを判別し、許容間隔以上離れていないと判別した場合には、全ての移動体の走行を停止させる移動体設備が開示されている。
【0007】
特許文献4には、搬送機情報および経路情報に基づき、複数の移動搬送機の間で互いの移動に干渉が生じ得ると判定する場合、干渉を生じ得る自動搬送機のうちの少なくとも1つに関する経路情報を、干渉を回避するように変更する移動ロボット制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【文献】特許4461391号
【文献】特許公開公報 特開2017-134794
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数のドローンにより安全かつ効率よく作業を遂行するドローンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンシステムは、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、を少なくとも含むドローンシステムであって、前記管制装置は、同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備える。
【0011】
前記作業エリアは、作業者により飛行前に指定された作業エリアであり、前記飛行計画策定部は、指定された前記作業エリアを前記複数のドローンで分担して飛行し、同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となる前記飛行計画を、前記複数のドローンが飛行を開始する前に生成するものとしてもよい。
【0012】
前記複数のドローンは、前記作業エリアの一部である第1作業エリアを飛行する第1ドローンと、前記作業エリアのうち前記第1作業エリア以外の領域および前記第1作業エリアの一部の領域を含む第2作業エリアを飛行する第2ドローンと、を含み、前記飛行計画策定部は、前記第1ドローンおよび前記第2ドローンの飛行中の各時刻における互いの距離が所定以上となるように、前記第1ドローンが前記第1作業エリアを飛行する第1飛行計画と、前記第2ドローンが前記第2作業エリアを飛行する第2飛行計画と、を策定するものとしてもよい。
【0013】
前記複数のドローンは、前記作業エリアの一部である第1作業エリアを飛行する第1ドローンと、前記作業エリアのうち前記第1作業エリア以外の領域である第2作業エリアを飛行する第2ドローンと、を含み、前記飛行計画策定部は、前記第1ドローンおよび前記第2ドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記第1ドローンが前記第1作業エリアを飛行する第1飛行計画と、前記第2ドローンが前記第2作業エリアを飛行する第2飛行計画と、を策定するものとしてもよい。
【0014】
前記第1ドローンおよび前記第2ドローンは、前記作業エリアを往復して走査する第1および第2往復経路に沿ってそれぞれ飛行し、前記第1および第2往復経路は、前記作業エリアの同一の端辺を起点に、同一方向に向かって計画されているものとしてもよい。
【0015】
前記飛行計画策定部は、前記第1ドローンと前記第2ドローンが、互いに同一の飛行経路を飛行するとき、前記第1ドローンと前記第2ドローンの飛行方向が同方向になるよう飛行計画を策定するものとしてもよい。
【0016】
前記飛行計画策定部は、前記複数のドローンが同一の飛行経路を飛行するとき、距離、使用されるバッテリ容量、および使用される薬剤量のいずれかが略均等となる点にそれぞれの開始点を設定するものとしてもよい。
【0017】
前記管制装置は、前記複数のドローンのうち前記作業を中断している中断ドローンが、前記作業エリア内の中断地点と、前記作業エリア外の発着地点とを飛行する発着計画を策定する発着計画策定部をさらに備え、前記発着計画策定部は、前記中断ドローンと、他の前記ドローンとの距離が所定以上となるように、前記中断ドローンの発着計画を策定するものとしてもよい。
【0018】
前記発着計画策定部は、前記中断地点と前記作業エリアの端点との間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記中断ドローンの発着計画を策定するものとしてもよい。
【0019】
前記飛行計画策定部は、前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させるものとしてもよい。
【0020】
前記飛行計画策定部は、前記中断ドローンが、前記ドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンの情報に基づいて、当該ドローンを一時停止させるか否かを判別するものとしてもよい。
【0021】
前記ドローンの情報は、前記中断ドローンと作業中の前記ドローンとの距離、ならびに前記中断ドローンおよび前記作業中のドローンの飛行速度の少なくとも1個を含むものとしてもよい。
【0022】
前記発着計画策定部は、前記複数のドローンの前記発着計画に含まれる飛行経路を互いに異ならせるものとしてもよい。
【0023】
前記発着計画策定部は、前記作業中のドローンと、前記中断ドローンとで、前記飛行計画および前記発着計画に含まれる飛行高度を異ならせるものとしてもよい。
【0024】
前記発着計画策定部は、前記中断ドローンの飛行高度を、前記作業中のドローンよりも高くするものとしてもよい。
【0025】
前記複数のドローンが行う前記作業は薬剤散布作業であり、前記飛行計画策定部の作成する前記飛行計画は、前記複数のドローンの少なくとも一部のドローンが、前記飛行計画の一部の区間を、前記薬剤散布作業を停止して飛行する散布停止飛行区間を含み、前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行するドローンと、他の前記ドローンとの距離が所定以上となるように、前記散布停止飛行区間を飛行する前記飛行計画を策定するものとしてもよい。
【0026】
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間において、他の複数の前記ドローンのいずれかにより作業が完了している前記作業エリア内を飛行するように、前記飛行計画を策定するものとしてもよい。
【0027】
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行中のドローンが、他のドローンの作業が完了していない前記作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる飛行計画を策定するものとしてもよい。
【0028】
前記飛行計画策定部は、前記散布作業中のドローンと、前記散布停止飛行区間を飛行中のドローンとで、前記飛行計画に含まれる飛行高度を異ならせるものとしてもよい。
【0029】
前記飛行計画策定部は、前記散布停止飛行区間を飛行中のドローンの飛行高度を、前記散布作業中のドローンよりも高くするものとしてもよい。
【0030】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係るドローンシステムの制御方法は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、を少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定ステップを含む。
【0031】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンシステムの制御プログラムは、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンの動作を決定する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムの制御プログラムであって、同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定命令をコンピュータに実行させる。
【0032】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンは、ドローンの動作を決定する管制装置からの通信を受信可能な、作業エリア内を飛行して作業を遂行するドローンであって、前記管制装置から受信する飛行計画に基づいて、同時に飛行する他のドローンとの距離が所定以上となるように飛行制御される。
【0033】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る管制装置は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンの動作を決定する管制装置であって、同時に飛行する前記複数のドローンの互いの距離が所定以上となるように、前記複数のドローンの飛行計画を決定する飛行計画策定部を備える。
【0034】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0035】
複数のドローンにより安全かつ効率よく作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本願発明に係るドローンシステムが有するドローンの平面図である。
【
図7】上記ドローンシステムの第2実施形態を示す全体概念図である。
【
図8】上記ドローンシステムの第3実施形態を示す全体概念図である。
【
図9】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
【
図10】複数の上記ドローンが圃場を飛行する様子を示す概念図である。
【
図11】上記ドローンおよび本願発明にかかる管制装置が有する、複数の上記ドローンの移動を管制する機能に関する機能ブロック図である。
【
図12】複数の上記ドローンが圃場を飛行する様子を示す概念図であって、(a)複数の上記ドローンが互いに異なる飛行経路を飛行している様子を示す概念図、(b)複数の上記ドローンが同一の飛行経路を飛行している様子を示す概念図である。
【
図13】複数の上記ドローンが圃場を飛行する別の例を示す概念図である。
【
図14】上記ドローンが歪な形状の圃場を飛行する際の飛行ルートの例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0038】
まず、本発明にかかるドローンシステムが有する、ドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0039】
図1乃至
図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は
図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0040】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
図2、および、
図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0041】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0042】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0043】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404は、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。
【0044】
操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100の動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0045】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0046】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。
【0047】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0048】
小型携帯端末401aは例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。小型携帯端末401aは、ドローン100から情報を受信可能である。
【0049】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0050】
なお、
図7に示す第2実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、営農クラウド405が、それぞれ基地局404と接続されている構成であってもよい。
【0051】
また、
図8に示す第3実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されている構成であってもよい。
【0052】
図9に示すように、ドローン100は、圃場403a、403bの上空を飛行し、圃場内の作業を遂行する。本実施形態においては、1個の圃場403a(作業エリアの例)に複数のドローン100a、100b(以下、第1ドローン100a、および第2ドローン100bともいう。)が同時に飛行し、それぞれ作業を行う。第1ドローン100aおよび第2ドローン100bは、それぞれ圃場403a内を飛行する第1飛行計画および第2飛行計画を有し、当該第1及び第2飛行計画に沿って作業する。第1飛行計画は、圃場403aの一部である第1作業エリア403cに設定される第1運転経路51を飛行する動作を含む。第2飛行計画は、圃場403aのうち第1作業エリア403c以外の領域である第2作業エリア403dに設定される第2運転経路52を飛行する動作を含む。ドローン100a、100bは、第1、第2運転経路51、52に沿って飛行しながら、薬剤を散布したり、圃場403a内を撮影したりする。
【0053】
第1運転経路51および第2運転経路52は、圃場内をくまなく飛行するための経路であり、例えば圃場内を往復する経路である。第1運転経路51および第2運転経路52に沿って飛行し、圃場内の作業を行うドローンを、作業ドローンともいう。
【0054】
第1運転経路51は、始点51s、作業済経路51a、未作業経路51b、および終点51eを備える。第1ドローン100aは始点51sから飛行を開始し、終点51eまで飛行する。ドローン100aがすでに飛行した経路を作業済経路51a、これから飛行する予定の経路を未作業経路51bとする。同様に、第2運転経路52は始点52s、作業済経路52a、未作業経路52b、および終点52eを備える。第2ドローン100bは始点52sから飛行を開始し、終点52eまで飛行する。ドローン100bがすでに飛行した経路を作業済経路52a、これから飛行する予定の経路を未作業経路52bとする。
【0055】
圃場403の外には、ドローン100が離着陸する発着地点406が設けられている。発着地点406は、ドローン100に計画される離着陸のための領域であり、仮想的に区画される領域であってもよいし、視認可能な離発着台が設置されていてもよい。離発着台は、動かない台であってもよいし、移動体であってもよい。
【0056】
ドローン100は、発着地点406から離陸し、圃場403の進入点60から圃場403に進入し、圃場403内の作業を行う。また、ドローン100は、圃場403の退出点61から退出し、発着地点406に帰還する。圃場内作業を行わず、発着地点406から圃場内の中断点までを行き来するドローンを、中断ドローンともいう。すなわち、ドローン100は、飛行中の状況に応じて、作業ドローンと中断ドローンとに切り替わりながら圃場内作業を遂行する。
【0057】
進入点60および退出点61は、規定されている仮想の点である。ドローン100が同じ進入点60から進入する構成によれば、発着地点406から圃場403へ向かう圃場外進入経路61iを統一することができ、圃場403外にいる使用者402に安心感を与えることができる。また、ドローン100が同じ退出点61から退出する構成によれば、圃場403から発着地点406へ向かう圃場外退出経路61oを統一することができ、圃場403外にいる使用者402に安心感を与えることができる。
【0058】
ドローン100は、進入点60から進入し、さらに圃場403内において圃場内進入経路62iを通って作業を開始又は再開する点まで移動する。また、ドローン100は、作業を中断又は終了する中断点から、圃場内退出経路62oを通って退出点61まで移動する。圃場外進入経路61i、進入点60および圃場内進入経路62iは進入経路60iを構成する。圃場外退出経路61o、退出点61および圃場内退出経路62oは退出経路60oを構成する。
【0059】
本実施形態においては、進入点60および退出点61は略同一の点である。この構成によれば、圃場外進入経路61iおよび圃場外退出経路61oを統一することで、使用者402にさらに安心感を与えることができる。
【0060】
ドローン100は、発着地点406から離陸して圃場403a、403b内での作業を遂行する。ドローン100は、圃場403a、403b内での作業中に、適宜作業を中断して発着地点406に帰還し、バッテリ502および薬剤の補充を行う。
【0061】
図10に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0062】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0063】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0064】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0065】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513は障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。侵入者接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、侵入者接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0066】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0067】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0068】
●ドローンシステムが有するドローンおよび管制装置の構成
図11に示すように、ドローンシステム500は、第1ドローン100a、第2ドローン100bおよび管制装置40を含む。ドローン100、第1ドローン100a、第2ドローン100bおよび管制装置40は、例えば互いにネットワークNWを介して接続されて構成されている。なお、ネットワークNWは、すべて無線であってもよいし、一部又は全部が有線であってもよい。また、具体的な接続関係は同図に限られるものではなく、各構成が直接又は間接的に接続されていればよい。第1および第2ドローン100a、100bは互いに同等の構成であるので、以降の説明では単にドローン100として説明する。
【0069】
管制装置40は、ドローンシステム500中のどこにあってもよいが、例えば基地局404に配置されている。各ドローン100は基地局404と通信冗長で接続が担保されている。各ドローン100の現在位置情報は基地局404の通信機能を介して管制装置40へ入力され、管制装置40により策定される飛行計画や発着計画は、基地局404の通信機能を介して各ドローン100に出力される。
【0070】
本実施形態では、ドローンは2個、発着地点は1個であるが、それぞれこれ以上であってもよい。また、ドローンと発着地点の数は同数であってもよいし、個数が異なっていてもよい。複数のドローンは、複数の発着地点のいずれにも離着陸可能であり、資源の補充が可能である。なお、資源の補充とは、バッテリ502の補充、交換および薬剤の補充を含む概念である。
【0071】
●ドローン
ドローン100は、それぞれ飛行制御部21、搭載資源取得部22、障害物検知部23、およびバッテリ502を備える。
【0072】
飛行制御部21は、ドローン100が有するモータ102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部21は、例えばフライトコントローラ501の機能によって実現される。
【0073】
搭載資源取得部22は、ドローン100に搭載されている資源の量、すなわちバッテリ502の蓄電量および薬剤量を取得する機能部である。搭載資源取得部22は、蓄電量取得部221および薬剤量取得部222を備える。
【0074】
蓄電量取得部221は、ドローン100に搭載されているバッテリ502の蓄電量を取得する機能部である。バッテリ502の蓄電量は、資源の補充なしにドローン100を動作可能なエネルギー量を指すものとする。バッテリ502は、一次電池、二次電池、又は燃料電池等どのような形式のエネルギー供給機構であってもよい。
【0075】
蓄電量取得部221はバッテリ502の蓄電量を計測する別の構成から情報を取得してもよいし、蓄電量取得部221自身がバッテリ502の蓄電量を計測してもよい。
【0076】
薬剤量取得部222は、薬剤タンク104における薬剤の現在の貯留量を推定する機能部である。薬剤量取得部222は、重量測定部211aにより測定されるドローン100の重量から貯留量を推定してもよい。また、薬剤量取得部222は、例えば薬剤タンク104内の液面高さを推定する機能を有していてもよい。薬剤量取得部222は、薬剤タンク104内に配置される液面計又は水圧センサー等を用いて貯留量を推定してもよい。ドローン100が作業中の場合は、薬剤量取得部222は、流量センサー510によって測定される薬剤タンク104からの吐出流量を積算して薬剤吐出量を求め、当初積載された薬剤量から薬剤吐出量を減算することにより、貯留量を推定してもよい。
【0077】
障害物検知部23は、ドローン100の周辺の障害物を検知する機能部である。障害物検知部23は、例えば赤外線センサやマルチスペクトルカメラにより実現される。障害物検知部23により障害物がドローン100周辺の所定範囲にあることが検知されると、飛行制御部21によりドローン100を着陸させる。
【0078】
●管制装置
管制装置40は、複数のドローン100a、100bそれぞれの動作を決定する機能部である。管制装置40は、ドローン情報取得部41、飛行計画策定部42、および発着計画策定部43を備える。
【0079】
ドローン情報取得部41は、複数のドローン100それぞれの情報を取得する機能部である。ドローン情報取得部41は、例えば、ドローン100の位置および状態を取得する。ドローン100の位置は、3次元座標に加えて、ドローン100が圃場403内にいるか、圃場403外にいるかの情報も含んでいてもよい。ドローン100の状態とは、ドローン100の動作状態、すなわち、ドローン100が移動中、ホバリング中、着陸中のいずれであるかの情報を含む。また、ドローン100が圃場403内の移動中において、薬剤を散布しているか否かの情報を含む。また、ドローン100の状態には、ドローン100に故障又は異常が発生しているか否かの情報を含む。異常とは、ドローン100自体の故障以外にドローン100の飛行の妨げとなる事象全般を指し、強風や、極度の低温および高温、障害物の引っ掛かり、バードストライク等、種々の事象を含む。
【0080】
ドローン情報取得部41は、ドローン100が圃場403内を作業中であるか、作業を中断しているのかを区別して把握することができる。すなわち、ドローン情報取得部41は、ドローン100が作業ドローンであるか中断ドローンであるかの情報を取得する。
【0081】
ドローン情報取得部41は、ドローン100の状態として、ドローン100が有する資源量の情報も取得可能である。ドローン100が有する資源とは、ドローン100の飛行エネルギー、例えばバッテリ502の蓄電量を含む。ドローン100の飛行エネルギーは、バッテリ502に代えて、ウルトラキャパシタにより蓄電される蓄電量であってもよい。また、ドローン100が有する資源とは、ドローン100の薬剤タンク104に貯留される薬剤を含む。
【0082】
ドローン情報取得部41が取得する上述の情報は、定期的にドローン100から直接又は間接的に受信してもよいし、状態変化又は資源量が所定範囲になったことを契機にドローン100から情報が送信され、当該情報を受信するように構成されていてもよい。
【0083】
飛行計画策定部42は、複数のドローン100a、100bの飛行計画を策定する機能部である。飛行計画策定部42は、第1ドローン100aに対して第1飛行計画を策定し、第2ドローン100bに対して第2飛行計画を策定する。飛行計画策定部42は、同時に飛行する複数のドローン100a、100bの互いの距離が所定以上となるように、複数のドローン100a、100bの飛行計画を決定する。すなわち、飛行計画策定部42は、第1ドローン100aおよび第2ドローン100bの互いの距離が所定以上となるように、第1ドローン100aが第1圃場403cを飛行する第1飛行計画と、第2ドローン100bが第2圃場403dを飛行する第2飛行計画と、を策定する。
【0084】
圃場403c、403dは、作業者により飛行前に指定されたエリアであり、飛行計画策定部42は、指定された作業エリアを複数のドローン100a、100bで分担して飛行し、同時に飛行する複数のドローン100a、100bの互いの距離が所定以上となる飛行計画を、複数のドローンが飛行を開始する前に生成してもよい。この構成によれば、管制装置40により飛行計画を策定し、飛行前のドローン100a、100bに送信することができるので、ドローン100a、100bの計算処理負担が軽減される。
【0085】
例えば、
図12(a)に示すように、第1ドローン100aおよび第2ドローン100bは、圃場403を往復して走査する第1および第2往復経路に沿ってそれぞれ飛行する。第1および第2往復経路は、いずれも圃場403c、403dの図中右下を始点51s、52sとして、上下に往復しながら左方向へ進んでいくように形成される。この構成によれば、ドローン100a、100b間の距離が所定以上に保たれるので、衝突のおそれが軽減される。
【0086】
また、第1および第2往復経路は、圃場403c、403dの同一の端辺、ここでは図中下側の辺を起点に、同一方向、すなわち図中下方から上方に向かって計画されている。この構成によれば、飛行経路が同方向になり、飛行経路が互いに逆方向になることがないから、風などにより飛行経路がずれた場合であっても正面衝突する危険性が軽減される。
【0087】
図12(b)に示すように、飛行計画策定部42は、複数のドローン100a、100b、100cが、互いに同一の飛行経路を飛行するとき、複数のドローン100a、100b、100cの飛行方向が同方向になるよう飛行計画を策定する。ドローン100a、100b、100cが互いに同一の飛行経路を飛行するときとは、例えばドローン100a、100b、100cがそれぞれ異なる種類の薬剤を散布するとき等がある。同一の飛行経路を互いに逆方向に飛行させると、正面衝突するおそれがあるためである。
【0088】
複数のドローン100a、100b、100cは、それぞれ異なる始点52s、52t、52uから圃場内の飛行を開始する。開始点52s、52t、52uは、例えば飛行経路の端点に相当する始点52uから、旋回点52zまでの経路を、飛行を行う機数で等分した点である。すなわち、本実施形態においては、始点52uから旋回点52zまでの間を3等分し、等分点をそれぞれ始点52t、52uとする。
【0089】
なお、始点52s、52t、52uは、距離による当分割に代えて、始点52uから旋回する点52zまでの経路を速度と距離を加味した時間で等分に分割することで設定されていてもよい。この構成によれば、後続のドローンが前のドローンに追いついて衝突することを防ぐことができる。
【0090】
また、始点52s、52t、52uは、各ドローンの経路におけるバッテリ又は薬剤の使用量が略均等となるように設定されてもよい。各ドローンのバッテリ又は薬剤を同等に使い切れるように飛行することで、作業効率を担保することができる。各ドローンの経路におけるバッテリ又は薬剤の使用量は、飛行計画の時点で均等となっていてもよいし、作業効率や安全性の観点で許容できる範囲で互いに差があってもよい。
【0091】
なお、飛行計画策定部42が決定する飛行経路は、複数のドローンの経路が、互いに重ならないエリアを網羅する経路に限られない。例えば、
図13に示すように、同一エリア403eを入り乱れて飛行し、f第2ドローン100bが、第1ドローン100aの作業エリアの一部を飛行してもよい。すなわち、第1ドローンの飛行経路53aと第2ドローンの飛行経路53bの一部が重なる経路であってもよい。飛行経路53aと飛行経路53bの重なる経路中の飛行においては、飛行経路の距離および飛行速度を加味した通過予測時間に基づいて、各時刻における各ドローンの距離が所定以上となるように飛行計画が作成される。
【0092】
飛行計画策定部42は、後述する発着計画策定部43により策定される発着経路に基づいて、飛行計画を変更してもよい。具体的には、発着計画策定部43により策定される経路が、ドローン100を圃場403内に進入させる経路であるとき、飛行計画策定部42は、当該発着経路内を作業する作業ドローンの飛行計画を変更する。飛行計画策定部42は、作業を中断し、発着経路に沿って飛行するドローン(「中断ドローン」ともいう。)が圃場403に進入してから退出するまでの間において当該作業ドローンを一時停止、すなわちホバリングさせる。未作業エリアには他のドローン100が進入する可能性があるため、中断ドローンが未作業エリアに進入している間ドローン100を一時停止させることにより、衝突を防止することができる。中断ドローンは、バッテリー容量の低下や、なんらかの異常を生じている蓋然性が高いため、作業ドローンの作業よりも優先して発着地点406に帰還する必要がある。そこで、作業ドローンの動作を停止させることで、中断ドローンをより速く安全に帰還させることができる。
【0093】
飛行計画策定部42は、中断ドローンが圃場403に進入してから退出するまでの全時間を停止させてもよいし、一部の時間だけ停止させてもよい。
【0094】
飛行計画策定部42は、中断ドローンが未作業エリアに進入する場合において、中断ドローンと作業ドローンとの衝突の可能性に基づいて、当該エリアを飛行予定の作業ドローン100を一時停止させるか否かを判定し、判定結果に基づいて飛行計画を変更してもよい。
【0095】
例えば、飛行計画策定部42は、中断ドローンが未作業エリア内を飛行している間、当該未作業エリアを飛行予定の作業ドローン100と中断ドローンとの相対距離を算出し、衝突危険距離以下の場合、作業ドローンを一時停止させてもよい。衝突危険距離は、あらかじめ規定されていてもよいし、飛行速度を考慮して、衝突危険距離を決定してもよい。すなわち、作業ドローン100の速度が速いほど、衝突危険距離を小さくしてもよい。飛行計画策定部42は、中断ドローンが未作業エリア内を飛行している間、定期的に判定を繰り返す。
【0096】
この構成によれば、作業ドローンの情報に基づいて、中断ドローンとの衝突の可能性が大きいと判断される場合のみ作業ドローンを一時停止させることができる。すなわち、作業ドローンの一時停止の回数および時間を最低限にすることで、ドローンを効率よく飛行させることができる。
【0097】
なお、衝突の可能性は、作業ドローン100と中断ドローンとの相対距離を算出して導かれる数値に限られず、ドローン100に搭載されるGPSモジュールRTK504、加速度センサおよび角速度センサを含む6軸ジャイロセンサー505、ソナー509、障害物検知カメラ513等の各種センサによる取得データに基づいて求められる、相対距離に対応する指標により判定されてもよい。また、上述のセンサは例示であり、これに限られない。
【0098】
発着計画策定部43は、複数のドローンのうち作業を中断しているドローン、すなわち中断ドローンが、圃場403内の中断地点と、圃場403外の発着地点406とを結ぶ進入経路60iおよび退出経路60o(
図10参照)を飛行する発着計画を策定する機能部である。中断ドローンは、作業の中断又は終了をした時点又は、作業の中断又は終了が所定時間後に予測される時点で、発着計画策定部43から発着計画を受信する。また、ドローン100が予め複数の発着計画を記憶していて、発着計画策定部43により実行される発着計画が選択されてもよい。
【0099】
発着計画策定部43は、中断ドローンと、他のドローン100との距離が所定以上となるように、中断ドローンの発着計画を策定する。
【0100】
発着計画策定部43は、中断地点と進入点60又は退出点61との間において、他の複数のドローンのいずれかにより作業が完了している圃場403a内を飛行するように、中断ドローンの発着計画を策定する。より具体的には、発着計画策定部43は、ドローン100aが作業を中断して帰還する場合、他のドローン100bの作業済経路52aの上を優先的に飛行し、他のドローン100bの未作業経路52b上を飛行しない発着計画を策定する。未作業エリアには作業中のドローンが到達する可能性がある一方、作業済みのエリアには作業中のドローンが進入する可能性が低い。中断ドローンが作業済みのエリアを飛行する構成によれば、作業中のドローンとの衝突の可能性を低減することができる。
【0101】
中断ドローンは、作業済エリアに新たな経路を生成してもよいし、作業済経路52aに沿って飛行してもよい。作業済経路52aに沿って飛行することで、経路を生成する計算処理負担が軽減されるとともに、使用者402に安心感を与えることができる。また、作業済経路52aに沿って飛行することで、他のドローン100との衝突をより確実に防止できる。
【0102】
発着計画策定部43は、中断ドローンが、他のドローン100の未作業エリアに進入する発着計画を策定してもよい。
【0103】
このとき、発着計画策定部43は、中断ドローンが未作業エリアへ進入する地点において中断ドローンを一時停止させる発着計画を策定してもよい。中断ドローンを停止させることにより、作業ドローンの作業を継続させることで、作業効率を維持することができる。
【0104】
発着計画策定部43は、中断ドローンが未作業エリアに進入するとき、一時停止させるか否かを判定し、判定結果に基づいて発着計画を変更してもよい。発着計画策定部43は、未作業エリアへの進入点に中断ドローンが到達した時点における、当該エリアを飛行予定の作業ドローン100の飛行速度と位置を取得する。発着計画策定部43は、当該エリアを飛行予定の作業ドローン100と中断ドローンとの距離を算出し、衝突危険距離以下の場合、中断ドローンを一時停止させてもよい。衝突危険距離は、あらかじめ規定されていてもよいし、飛行速度を考慮して、衝突危険距離を決定してもよい。すなわち、作業ドローン100の速度が速いほど、衝突危険距離を小さくしてもよい。
【0105】
作業中のドローンの情報に基づいて、中断ドローンとの衝突の可能性が大きいと判断される場合のみ一時停止させる。中断ドローンの一時停止の回数および時間を最低限にすることで、ドローンを効率よく飛行させることができる。
【0106】
発着計画策定部43は、中断ドローンの高度を、作業ドローンの高度とは異ならせる発着計画を策定する。この構成によれば、中断ドローンと作業ドローンとの衝突を防止できる。発着計画策定部43は、中断ドローンの高度を、作業ドローンよりも高くする。作業中のドローンは、圃場403aに対する薬剤散布又は撮影等を行っているため、飛行高度は精密に制御されている。そこで、中断ドローンが作業中のドローンの上を飛行し、作業中のドローンの飛行計画は変更しないことで、作業中のドローンの作業効率を維持することができる。
【0107】
発着計画策定部43は、圃場外進入経路61iおよび圃場外退出経路61oにおいて、複数のドローンの発着計画に含まれる飛行経路を互いに異ならせる。この構成によれば、複数のドローン100が圃場403a外を飛行する場合であっても、衝突のおそれを軽減することができる。
【0108】
発着計画策定部43は、発着地点406に複数のドローン100が着陸している場合において、発着地点406に着陸している時間を変更してもよい。より具体的には、発着計画策定部43は、複数のドローン100を同時に離陸させず、所定距離又は所定時間を空けて順番に離陸および圃場403aへの進入を行わせる。
【0109】
●散布停止飛行区間における飛行計画
図14に示すように、作業として薬剤散布を行うドローン100において、飛行計画策定部42は、圃場403f内の飛行において、飛行計画の一部に、薬剤散布作業を停止して飛行する散布停止飛行区間54xを規定する飛行計画を決定してもよい。なお、図中、散布停止飛行区間54xを含む散布していない飛行経路は、一点鎖線で示している。散布停止飛行区間54xは、例えば、凹部と凸部を含む歪な形状の圃場403fを、2つの略長方形の圃場403gと圃場403fに分割し、それぞれに飛行経路54、55を策定した上で、飛行経路54の終点54eから飛行経路55の始点55sまで飛行する区間である。この区間は、薬剤散布という実体的な作業を行わない、いわば移動のための区間である。したがって、発着経路を飛行する中断ドローンと同様、作業中の他のドローンとの衝突を避け、他のドローンの邪魔をしないように飛行することが望ましい。具体的には、飛行計画策定部42は、散布停止飛行区間54xを飛行するドローンと、他のドローンとの距離が所定以上となるように、散布停止飛行区間54xを飛行するドローンの飛行計画を策定する。
【0110】
飛行計画策定部42は、散布停止飛行区間54xにおいて、他の複数のドローンのいずれかにより作業が完了している作業エリア内を飛行するように、飛行計画を策定するものとしてもよい。未作業エリアには作業中のドローンが到達する可能性がある一方、作業済みのエリアには作業中のドローンが進入する可能性が低い。散布停止飛行区間54xを飛行するドローンが作業済みのエリアを飛行する構成によれば、作業中のドローンとの衝突の可能性を低減することができる。
【0111】
飛行計画策定部42は、散布停止飛行区間54xを飛行中のドローンが、他のドローンの作業が完了していない作業エリアに進入するとき、当該作業エリアを作業するドローンを一時停止させる飛行計画を策定するものとしてもよい。散布停止飛行区間54xを飛行中のドローンを停止させることにより、作業ドローンの作業を継続させることで、作業効率を維持することができる。
【0112】
飛行計画策定部42は、散布作業中のドローンと、散布停止飛行区間54xを飛行中のドローンとで、飛行計画に含まれる飛行高度を異ならせるものとしてもよい。この構成によれば、散布停止飛行区間54xを飛行中のドローンと作業ドローンとの衝突を防止できる。飛行計画策定部42は、散布停止飛行区間54xを飛行中のドローンの高度を、作業ドローンよりも高くする。作業中のドローンは、圃場403fに対する薬剤散布又は撮影等を行っているため、飛行高度は精密に制御されている。そこで、散布停止飛行区間54xのドローンが作業中のドローンの上を飛行し、作業中のドローンの飛行計画は変更しないことで、作業中のドローンの作業効率を維持することができる。
【0113】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、撮影・監視用など他の用途のドローン全般に適用可能である。特に、自律的に動作する機械に適用可能である。
【0114】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかるドローンシステムにおいては、複数のドローンにより、安全に作業を遂行することができる。