(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】個室ユニット
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
(21)【出願番号】P 2021560554
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011622
【審査請求日】2021-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520174539
【氏名又は名称】合同会社O&O
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲博
(72)【発明者】
【氏名】大野 彩子
(72)【発明者】
【氏名】大野 浩子
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-150255(JP,A)
【文献】特開2016-110010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E04B 2/74
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流れを遮断する素材を備え、
前記素材によって囲まれた個別空間領域が形成されており、
前記素材は、少なくとも一部において透明性素材を有し、前記個別空間領域の内側から外側、および前記個別空間領域の外側から内側を、前記透明性素材を介して視認可能と
する個室ユニットであって、
前記透明性素材は、透明状態と不透明状態を電圧のオン/オフ切り替えにより一方から他方へ切り替え可能な調光フィルムで構成されており、
前記個室ユニットは、複数の個室ユニットの集合により構成され、
前記調光フィルムは、互いに隣接する個室ユニット間に配置されており、
前記調光フィルムに印加される前記電圧のオン/オフ切り替えを行うことで、前記透明状態と前記不透明状態との切り替え制御を行う制御部
をさらに備え、
前記制御部は、前記隣接する個室ユニット間に配置されたそれぞれの調光フィルムに関して、前記透明状態とすべき調光フィルムと、前記不透明状態とすべき調光フィルムとに応じて前記切り替え制御を行うことで、前記複数の個室ユニットの集合により構成された空間を互いに視認性を有する1以上のグループに分割する
個室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体の流れを遮断する素材によって囲まれた空間領域を有する個室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コロナウィルスの感染予防対策として、飲食店等で隣同士を個別ゾーン化するために、アクリル板等の仕切りが活用されており、例えば、アクリルパーティションに関する多くの製品が市販されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アクリル板等の仕切りは、その仕切りが設けられている特定の領域における気体の流れを部分的に遮断する効果を有しているが、仕切りが設けられていない領域では気体の流れを十分に遮蔽することができない。
【0004】
従って、感染予防を徹底するためには、仕切り板のサイズをより大きくし、気体の流れを遮断する領域をより拡張することが有効である。ただし、仕切り板を大きくしたところで、仕切り板が設けられていない部分は存在し、遮蔽効果が十分であるとはいえない。換言すると、アクリル板等の仕切りは、気体の流れを遮断する素材によって囲まれた空間領域を有していないため、遮蔽効果が十分であるとはいえなかった。
【0005】
また、複数人数での会議、複数人数での会食等を考えると、感染防止を図る上で、個室ユニットを個人毎に設けた上で、同一グループ内のメンバ同士は視認できることが望ましい。
【0006】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、仕切り板を用いる場合よりも空気の流れの遮断性能を向上させるとともに、必要とされる部分の視認性を確保した個室ユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る個室ユニットは、気体の流れを遮断する素材を備え、素材によって囲まれた個別空間領域が形成されており、素材は、少なくとも一部において透明性素材を有し、個別空間領域の内側から外側、および個別空間領域の外側から内側を、透明性素材を介して視認可能とする個室ユニットであって、透明性素材は、透明状態と不透明状態を電圧のオン/オフ切り替えにより一方から他方へ切り替え可能な調光フィルムで構成されており、個室ユニットは、複数の個室ユニットの集合により構成され、調光フィルムは、互いに隣接する個室ユニット間に配置されており、調光フィルムに印加される電圧のオン/オフ切り替えを行うことで、透明状態と不透明状態との切り替え制御を行う制御部をさらに備え、制御部は、隣接する個室ユニット間に配置されたそれぞれの調光フィルムに関して、透明状態とすべき調光フィルムと、不透明状態とすべき調光フィルムとに応じて切り替え制御を行うことで、複数の個室ユニットの集合により構成された空間を互いに視認性を有する1以上のグループに分割するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、仕切り板を用いる場合よりも空気の流れの遮断性能を向上させるとともに、必要とされる部分の視認性を確保した個室ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る個室ユニットの一例を示す全体図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る個室ユニットの機能ブロック図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る個室ユニットを複数の個室ユニットとして構成した場合の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の個室ユニットの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る個室ユニットの一例を示す全体図である。
図1に示した個室ユニット10は、説明を簡略化するために、略直方体の形状として示されている。
【0012】
図1に示した個室ユニットは、面P1~面P6の6面を備えて構成されている。面P1~面P6は、以下のような面に相当する。ただし、略長方形の8個の頂点を点A~点Hとしている。
面P1:点B、点C、点F、点Gを含む平面からなる第1の側面に相当
面P2:点A、点B、点E、点Fを含む平面からなる第2の側面に相当
面P3:点A、点D、点E、点Hを含む平面からなる第3の側面に相当
面P4:点C、点D、点G、点Hを含む平面からなる第4の側面に相当
面P5:点A、点B、点C、点Dを含む平面からなる上面に相当
面P6:点E、点F、点G、点Hを含む平面からなる下面に相当
【0013】
本実施の形態1における
図1に示した個室ユニット10は、面P1~面P4からなる4つの側面が気体の流れを遮断する素材によって形成されており、この結果、4つの側面によって囲まれた領域が、個別空間領域として形成されている。
【0014】
さらに、
図1に示したように、素材によって形成された面P1の少なくとも一部は、透明性素材12を有して構成されている。従って、個別空間領域の内側から外側、および個別空間領域の外側から内側は、透明性素材12を介して視認可能となっている。
【0015】
なお、
図1では、面P2~面P4は、透明性素材12を有していない状態が図示されている。しかしながら、本実施の形態1における個室ユニット2は、
図1の構成に限定されるものではない。個別空間領域を形成する面P1~面P4のうちの少なくとも一部において透明性素材12が含まれていればよく、用途に応じて、例えば、面P1~面P4の全面、面P1と面P2のそれぞれの一部、などに透明性素材12を設ける構成を採用することができる。
【0016】
また、
図1では、略直方体の4つの側面である面P1~面P4の全面が素材で形成されている状態が図示されている。しかしながら、本実施の形態1における個室ユニット2は、
図1の構成に限定されるものではない。略直方体の4つの側面を用いる以外の形状により個別空間領域を形成することが可能であり、必要に応じて曲面形状の素材を用いることもできる。
【0017】
換言すると、本開示における個別空間領域としては、例えば、4つの側面のうちの1つの側面には素材が存在せずに開放されている構成、上面あるいは下面には素材が存在していない構成、上面あるいは下面に素材が存在する構成など、種々の構成が考えられる。
【0018】
従って、本開示における個別空間領域は、必ずしも密閉空間を意味するものではない。逆に、本開示における個別空間領域は、全ての外周面を素材で覆った密閉空間としてもよい。
【0019】
例えば、飲食店に設置される場合には、個室ユニット10内の客に対する店員のアクセスを容易にするために、面P1の下半分を切欠き、素材がない部分を設けることも可能である。また、面P1を取り除いて開放する構成とすることも可能である。
【0020】
また、複数人が1つのテーブルを囲んで会食する場合には、隣接するメンバ間には素材を配置した状態で、例えば、テーブル中央に置かれた料理、鍋などを複数人のそれぞれがアクセスできるように、適切な位置に切欠き部あるいは開口部を設けることが考えられる。さらに、後述する空調機器13を、切欠き部あるいは開口部が設けられた上部に設置することも可能である。
【0021】
このような構成においても、素材によって囲まれた個別空間領域を形成できるとともに、素材の少なくとも一部において透明性素材を有することとなり、視認性とアクセス性を確保することができる。
【0022】
同様に、将棋、囲碁、カードゲームなどを行う場合には、素材が互いに対向する適切な位置に、部分的に開口部としての切欠きを設けることも考えられる。
【0023】
また、切欠き部あるいは開口部に関しては、開閉可能なドアのような構造を付加し、必要に応じて開放状態にできる構成を採用することで、個別空間領域の密閉性を高めることができる。
【0024】
図1に示した個室ユニット10に対しては、種々の制御機能を付加することができ、以下に、
図2を用いて詳細に説明する。
図2は、本開示の実施の形態1に係る個室ユニット10の機能ブロック図である。
図2に示した個室ユニット10は、制御部11、調光フィルム12a、空調機器13、および気圧調整機器14を備えている。
【0025】
制御部11は、調光フィルム12a、空調機器13、および気圧調整機器14を制御するコントローラである。調光フィルム12aは、透明性素材12の一種であり、透明状態と不透明状態を電圧のオン/オフ切り替えにより一方から他方へ切り替え可能な素材である。従って、制御部11は、調光フィルム12aに印加する電圧のオン/オフ切り替えを行うことで、透明状態と不透明状態との切り替え制御を行うことができる。
【0026】
なお、調光フィルム12aは、オン時に透明状態とするか、あるいはオフ時に透明状態とするかを、用途に応じて変更可能となっている。
【0027】
空調機器13は、個別空間領域内において所望の方向へ気体の流れを誘導することができる機器である。一例として、空調機器13を稼働させることで、個別空間領域内の空気を上面である面P5の方向へ誘導し、個室ユニット10の換気を行うことができる。従って、制御部11は、空調機器13を駆動制御することで、必要なタイミングで換気を行うことができる。
【0028】
気圧調整機器14は、個別空間領域の気圧を所望の値に調整することができる機器である。具体的には、気圧調整機器14は、個室ユニットを陰圧にする、あるいは陽圧にすることができる機能を有している。
【0029】
例えば、本実施の形態1における個室ユニット内に結核患者を収容する場合には、気圧調整機器14により個室ユニット内を陰圧にすることで、結核菌が外部に流出することを抑制することができる。
【0030】
逆に、本実施の形態1における個室ユニット内に細菌の感染を防止したい患者を収容する場合には、気圧調整機器14により個室ユニット内を陽圧にすることで、細菌が外部から流入することを抑制することができる。従って、制御部11は、用途に応じて個別空間領域が所望の気圧になるように気圧調整機器14を制御することで、必要なタイミングで換気を行うことができる。
【0031】
なお、制御部11の代わりに、切り替えスイッチあるいは設定スイッチを設けることで、調光フィルム12a、空調機器13、および気圧調整機器14を個別制御することも可能である。
【0032】
次に、個室ユニット10が、複数の個室ユニットの集合として構成されている場合に実現できる機能について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3は、本開示の実施の形態1に係る個室ユニット10を複数の個室ユニット10(1)~10(6)として構成した場合の機能を説明するための図である。
【0033】
図3では、先の
図1で示した個室ユニット10を、6個用いて1つの会議室を構成したレイアウトを上面図として例示している。また、
図3では、6個の個室ユニット10(1)~10(6)のそれぞれに対応する個別空間領域が、個別空間領域S1~S6として示されている。
【0034】
6個の個室ユニット10(1)~10(6)で構成された会議室の外周部分に相当する側面は、不透明素材として構成されており、
図3(A)および
図3(B)中では、黒塗りパターンとして示されている。具体的には、
図3(A)および
図3(B)において、以下の側面が不透明素材で形成されている。
個室ユニット10(1)における面P2および面P3
個室ユニット10(2)における面P3および面P4
個室ユニット10(3)における面P2
個室ユニット10(4)における面P4
個室ユニット10(5)における面P1および面P2
個室ユニット10(6)における面P1および面P4
【0035】
一方、上述した不透明素材で形成された10個の側面以外は、透明状態と不透明状態との切り替えが可能な調光フィルム12aとして構成されており、
図3(A)中では、白塗りパターンとして示されている。
【0036】
図3(A)は、6個の個別空間領域S1~S6を1まとまりとして、1つの会議室を同一グループのメンバで使用する場合のレイアウトを例示している。この場合には、調光フィルム12aを全て透過状態とすることで、6個の個別空間領域S1~S6を全て視認可能とすることができる。
【0037】
一方、
図3(B)は、4個の個別空間領域S1~S4を1まとまりとして、1つの会議室を同一グループのメンバで使用し、個別空間領域S5、S6に関しては個々の会議室として使用する場合のレイアウトを例示している。この場合には、以下の6つの側面における調光フィルム12aを透過状態とすることになる。
個室ユニット10(3)における面P1
個室ユニット10(4)における面P1
個室ユニット10(5)における面P3および面P4
個室ユニット10(6)における面P2および面P3
【0038】
なお、
図3(B)中では、調光フィルム12aを透過状態とした6個の側面が、ハッチングパターンとして示されている。
【0039】
このように、用途に応じて調光フィルム12aで形成された側面の透過状態/不透過状態を切り替えることで、視認性を有する1以上の領域からなるグループに分割することができる。
【0040】
さらに、例えば、
図3(B)の4つの個別空間領域S1~S4は、視認性を有するひとまとまりにグループ化された上で、それぞれの領域では、気体の流れを遮断する素材により個別化されている。従って、コロナウィルス等の感染予防対策を施した上で、同一グループ内のメンバによる会議を円滑に進行することができる。
【0041】
また、1つにグループ化された個別空間領域では、透明性素材を介して視認可能な他者との会話、音声、文字などの連絡手段として、スピーカー、マイク、ディスプレイ等の機器を必要に応じて活用することができ、より円滑な会議を実行することができる。
【0042】
なお、
図3に示した例では、個室ユニット同士が互いの側面で密接している場合を例示した。しかしながら、本実施の形態1における個室ユニットの配置は、
図3の構成に限定されるものではない。個室ユニット同士が通路等の空間を介して隣接するようなレイアウトを採用することも可能である。
【0043】
また、
図3に示したように、個室ユニット同士が互いの側面で密接している場合には、密接する個室ユニット間に配置される調光フィルム12aを1枚として共用する構成とすることもできる。
【0044】
本実施の形態で説明した個室ユニットは、病院、飲食店、カラオケ、高齢者施設、学校、会社、会議室、シェアハウス、ホテル、ロビーラウンジ、カウンター、待合室、娯楽施設(映画館、パチンコ、雀荘、ボードゲームカフェ等)、役所、銀行、スポーツセンター、ライブハウス、テレビ局など、種々の用途に適用できる。
【0045】
以上のように、本開示によれば、気体の流れを遮断する素材によって囲まれた個別空間領域の少なくとも一部において透明性素材を有するように、個室ユニットが構成されている。この結果、仕切り板を用いる場合よりも空気の流れの遮断性能を向上させるとともに、必要とされる部分の視認性を確保した個室ユニットを実現できる。
【0046】
さらに、本開示の個室ユニットは、オプション機能として、透明性素材として調光フィルムを用いる構成、個別空間領域内の空調を行う構成、個別空間領域内の気圧調整を行う構成、複数の個室ユニットをグループ化する構成、を用途に応じて採用できるようになっている。この結果、種々の用途において、遮断性能の向上と視認性の確保とを両立することができる。
【0047】
特に、本開示によれば、既設設備に対して、後付けで、個別空間領域を容易に形成することができる。さらに、既設設備に対して、気体の流れを遮断する素材を設置することで、限られた既設設備の空間に対して、複数の個別空間領域を現状の収容人数の低減を抑制した上で形成することができる。また、必要に応じて、所望の位置に切欠き部あるいは開口部を容易に設けることができ、アクセス性を確保することもできる。
【0048】
従って、種々の用途において、仕切り板を用いる場合よりも空気の流れの遮断性能を向上させるとともに、必要とされる部分の視認性およびアクセス性を確保した個室ユニットを、容易にかつ安価に実現することができる。
【0049】
なお、透明状態と不透明状態との切り替え制御が可能な透明性素材としては、実施の形態1で例示した調光フィルムには限定されない。例えば、航空機用の電子カーテンシステムとして採用されているジェル状のエレクトロクロミック材料を透明性素材として用いることも可能である。
【0050】
また、電気・光・熱などの外部からの刺激に応じてその光学的特性が変化するクロモジェニック材料を用いた、いわゆるスマートウィンドウを透明性素材として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 個室ユニット、11 制御部、12 透明性素材、12a 調光フィルム、13 空調機器、14 気圧調整機器、S1~S6 個別空間領域。P1~P6 面。
【要約】
本開示に係る個室ユニットは、仕切り板を用いる場合よりも空気の流れの遮断性能を向上させるとともに、必要とされる部分の視認性を確保した個室ユニットを得ることを目的とするものであり、気体の流れを遮断する素材を備え、素材によって囲まれた個別空間領域が形成されており、素材は、少なくとも一部において透明性素材を有し、個別空間領域の内側から外側、および個別空間領域の外側から内側を、透明性素材を介して視認可能とするものである。