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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】警光灯および警光灯制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/52 20060101AFI20220128BHJP
   F21S 10/06 20060101ALI20220128BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20220128BHJP
   F21S 43/15 20180101ALI20220128BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20220128BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220128BHJP
【FI】
B60Q1/52
F21S10/06 300
F21S43/14
F21S43/15
F21W103:00
F21Y115:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001448
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2021-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開の事実1販売日 令和2年12月17日2販売した場所 石川県警察本部(石川県金沢市鞍月1丁目1番地)3公開者 名古屋電機工業株式会社4公開された発明の内容 名古屋電機工業株式会社が、石川県警察本部に、川端理嗣および新井長華が発明した警光灯を納入した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川端 理嗣
(72)【発明者】
【氏名】新井 長華
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/096619(JP,A1)
【文献】特開2017-43243(JP,A)
【文献】特開2006-318873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/52
F21S 10/06
F21S 43/14
F21S 43/15
F21W 103/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットと、
前記光源ユニットの点灯制御を行う制御部と、を備える警光灯であって、
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度が時間変化し、かつ、
連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、
警光灯。
【請求項2】
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、
非点灯と既定の最大輝度との間での輝度の変化を繰り返し、かつ、
連続して並ぶN個の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、
前記光源ユニットの輝度を制御する、
請求項1に記載の警光灯。
【請求項3】
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、
輝度を徐々に変化させ、
連続して並ぶN個の前記光源ユニットの中の1個以上の前記光源ユニットにおいて輝度が低下する過程において、N個の前記光源ユニットの中の他の1個以上の前記光源ユニットにおいて輝度が増加するように、
前記光源ユニットの輝度を制御する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の警光灯。
【請求項4】
前記制御部は、
隣り合う前記光源ユニットの一方において輝度を低下させ、他方において輝度を増加させる、
請求項3に記載の警光灯。
【請求項5】
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおける点灯周期を変化させる、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の警光灯。
【請求項6】
前記制御部は、
予め決められた複数の点灯周期を順次選択し、選択された点灯周期によって複数の前記光源ユニットを点灯させる、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の警光灯。
【請求項7】
既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットを備える警光灯を制御する警光灯制御方法であって、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度を時間変化させ、かつ、
連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、
警光灯制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警光灯および警光灯制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電球やLED等の光源を車両の上部に取り付け、周囲の者への警告等を行うために利用される警光灯が知られている。例えば、特許文献1においては、複数の警告モードに対応した複数の点灯パターンで警告を行うことが可能な警光灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4680823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、グレアを抑制することができなかった。すなわち、警光灯は、光源における明滅を繰り返すことにより、周囲の人の注意をひく装置である。しかし、従来の警光灯においては、点灯状態と非点灯状態との間の変化が大きく、大きなコントラストが生じるため、周囲の人がまぶしさを感じやすかった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、周囲の人にまぶしさを感じさせにくい警光灯の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、一実施形態にかかる警光灯では、既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットと、光源ユニットの点灯制御を行う制御部と、を備え、制御部は、光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度が時間変化し、かつ、連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、光源ユニットの輝度を制御する。
【0006】
すなわち、制御部は、光源ユニットのそれぞれにおける輝度を時間変化させることによって、警光灯の周囲の人の注意をひくことができる。さらに、制御部は、連続して並ぶN個の光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、光源ユニットの輝度を制御する。従って、連続して並ぶN個の光源ユニット全体で見ると、コントラストの急変は発生しない。この結果、グレアの発生を防止することができ、周囲の人にまぶしさを感じさせにくい警光灯を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1Aは本発明の一実施形態にかかる警光灯の斜視図であり、図1Bは透視平面図である。
図2】光源ユニットの構成および制御部と光源ユニットとの接続関係を示す図である。
図3】光源ユニット毎の輝度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)警光灯の構成:
(2)他の実施形態:
【0009】
(1)警光灯の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる警光灯10の斜視図であり、図1Bは警光灯10の平面視を透視状態で示す図である。警光灯10は、本体20と当該本体に取り付けられる連結部30とを備えている。同図1Aに示すように、本体20は一方に長いほぼ直方体の外形を有しており、その一面(下面)に連結部30が2個取り付けられる。警光灯10は、車両の上部に取り付けて使用される。すなわち、警光灯10は、本体20の長手方向と車両の左右方向とが平行になるように向けられ、連結部30によって車両の上部に取り付けられる。
【0010】
なお、本明細書では、図1Aに示すように、車両の左右方向に平行な方向をx軸方向とし、x軸方向に垂直であるとともに車両の前後方向に平行な方向をy軸方向とし、x軸方向およびy軸方向に垂直な鉛直方向をz軸方向として座標軸を定義して説明をする。なお、この座標系において車両から見た上下方向、左右方向、前後方向を図1Aに示す座標系に併記してある。図1Bに示すように、平面視は、Z軸方向に沿って下方向を眺めた状態である。
【0011】
本体20は、内部に制御部21と光源ユニット22とを備えている。本実施形態において、光源ユニット22は、本体20の内部に14個備えられているが、図1Bにおいては、光源ユニット22を22a~22nとして区別して示している。本実施形態においては、本体20の前方側において、6個の光源ユニット22a,22b,22c,22l,22m,22nが、既定の方向であるx軸方向に平行な線に沿って並べて配置される。これらの6個の光源ユニット22a,22b,22c,22l,22m,22nは、前方側に光を出力する。
【0012】
本体20の左右に存在する側面側には、左右のそれぞれで2個の光源ユニット22が配置されている。本実施形態において、2個の光源ユニット22は、y軸に対して傾斜するようにして配置されている。この結果、右側に配置された2個の光源ユニット22d,22eは、右斜め前方と、右斜め後方とのそれぞれに向けて光を出力し、左側に配置された2個の光源ユニット22k,22jは、左斜め前方と、左斜め後方とのそれぞれに向けて光を出力する。側面側の光源ユニット22d,22e,22k,22jは、既定の方向であるy軸方向に平行な線に沿って並べて配置されている。
【0013】
本体20の後方側においては、4個の光源ユニット22f,22g,22h,22iが、既定の方向であるx軸方向に平行な線に沿って並べて配置される。これらの4個の光源ユニット22f,22g,22h,22iは、後方側に光を出力する。なお、本実施形態において、前方側に配置された6個の光源ユニット22a,22b,22c,22l,22m,22nの間隔と、後方側に配置された4個の光源ユニット22f,22g,22h,22iの間隔とは異なっている。この構成は一例であり、前方側および後方側において等間隔に光源ユニット22が配置されても良いし、側方側も含めて非等間隔に光源ユニット22が配置されても良い。
【0014】
本実施形態において、本体20は、左右方向に長い略直方体であり、上下方向は比較的薄い。各光源ユニット22は、複数の発光素子(後述する発光素子222、本実施形態においてはLED)を備え、各発光素子は既定の方向に向けて光を出力するように光源ユニット22内に支持されている。また、発光素子の周囲には反射板が配置され、発光素子からの出力光および反射光はリニアフレネルレンズを介して外部に出力する。リニアフレネルレンズは、水平面に平行な面に集光するように調整されているため、警光灯10からの出力光が垂直方向に広がりづらく、水平方向に効率的に光が進行するように構成されている。
【0015】
なお、本体20は、光源ユニット22の上方側、左右側、前後側を覆うカバーを備えている。カバーは、透過性のある樹脂であり、光源ユニット22からの出力光が本体20の外部に出力されるように構成されている。光源ユニット22が備える発光素子およびカバーの色は限定されないが、同一色であることが好ましい。例えば、警察や消防等が利用する緊急自動車では赤色が利用され、道路工事における注意喚起等には黄色等が利用される。むろん、他の色が利用されても良い。
【0016】
本体20の内部には、制御部21が取り付けられている。図2は、制御部21によって光源ユニット22を点灯させるための構成を示す図である。本実施形態において、制御部21は、複数のドライバー23に接続されており、複数のドライバー23のそれぞれは、光源ユニット22のそれぞれと接続されている。なお、ドライバー23は、光源ユニット22または制御部21に含まれていても良い。
【0017】
制御部21は、図示しないメモリに記録されたプログラムを実行することによって既定の処理を実行する。本実施形態において制御部21は、当該既定の処理により、複数の光源ユニット22のそれぞれの輝度を制御する。本実施形態において制御部21は、PWM(Plus Width Modulation)によって光源ユニット22の発光素子を点灯させる。各光源ユニット22を点灯させる際のデューティ比は予め決められている。制御部21は、光源ユニット22毎のデューティ比に応じた点灯期間においてハイレベルになり、非点灯期間にローレベルとなるパルス信号である制御信号を各ドライバー23に対して出力する。
【0018】
各ドライバー23は、所定の点灯電源によって駆動される。ドライバー23は、制御部21から出力される制御信号がハイレベルの期間に、後述する定電流回路221から一定電流を出力させる。制御部21から出力される制御信号がローレベルの期間において、ドライバー23は、定電流回路221から電流を出力させない。
【0019】
各光源ユニット22は、定電流回路221と発光素子222とを備えている。定電流回路221は、発光素子222を駆動するための既定の電流を出力する回路である。定電流回路221は、ドライバー23によって駆動され、制御部21が制御信号によって指示したタイミングで、既定の電流を発光素子222に出力する。各光源ユニット22においては、複数の発光素子222が定電流回路221とグラウンドノードGNDとの間に直列接続されている。従って、定電流回路221から既定の電流が出力されている間、同一の光源ユニット22が備える複数の発光素子222が同一の輝度で点灯する。
【0020】
本実施形態において、制御部21は、予め決められた複数のパターンによって各光源ユニット22を点灯させることができる。すなわち、本実施形態においては、車両が巡回する際のパターンや、優先車両の存在を周囲の車両に伝達する際のパターンなど、各種のパターンが予め決められている。各パターンにおける輝度の時間変化を示す情報は、制御部21の図示しないメモリに記録されている。制御部21は、図示しない入力部に対する入力によって、パターンの指定を受け付け、指定されたパターンについての情報に基づいて各光源ユニット22の時間毎の輝度の大きさを特定する。さらに、制御部21は、時間毎の輝度の大きさに応じた時間毎のパルス幅を特定し、特定したパルス幅のパルスを制御信号とし、各ドライバー23に制御信号を出力する。この結果、警光灯10の各光源ユニット22は、指定されたパターン通りの輝度で点灯する。
【0021】
本実施形態においては、このパターンの中に、パトロール中に利用され、注意喚起の度合いが緊急時よりも低いため、緊急時よりも輝度が相対的に抑えられたパターンが含まれている。このパターンにおいては、コントラストの急変によって周囲の人がまぶしさを感じないように各光源ユニット22が制御される。
【0022】
具体的には、制御部21は、光源ユニット22のそれぞれにおいて、輝度が時間変化するように点灯制御しつつ、さらに、連続して並ぶ3個の光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、光源ユニットの輝度を制御する。本実施形態においては、特に、前方から警光灯10を視認した人がまぶしさを感じないように、輝度が調整される。すなわち、制御部21は、光源ユニット22a,22b,22cの3個における輝度の和の時間変化が基準以下となり、光源ユニット22l,22m,22nの3個における輝度の和の時間変化が基準以下となるように、輝度を制御する。
【0023】
さらに、本実施形態において制御部21は、隣り合う光源ユニット22を連携させ、光が水平方向に移動するように制御することにより、周囲の人が回転灯を想起するように構成されている。このため、本実施形態においては、光源ユニット22a~22nのそれぞれが6個のグループのいずれかに分類される。図1Bにおいては、光源ユニット22を示す符号22a等の下部の括弧内にグループを示すG1~G6が併記されている。
【0024】
図1Bに示すように、警光灯10の右側に存在する7個の光源ユニット22a~22gはグループG1~G3のいずれかに分類され、左側に存在する7個の光源ユニット22h~22nはグループG4~G6のいずれかに分類される。本実施形態においては、光源ユニット22a,22b,22cのそれぞれがグループG1,G2,G3のそれぞれに分類される。また、右側面に位置する光源ユニット22d,22eはグループG1に分類され、後方の光源ユニット22f,22gはグループG2,G1のそれぞれに分類される。
【0025】
この分類は、前方の中央に存在する光源ユニット22aから順に時計回りにグループG1,G2,G3を順に割り当てる作業を繰り返したことに相当する。但し、側面の光源ユニット22d,22eは、2個一組で同一のグループG1に割り当てられている。また、後方の光源ユニット22f,22gの間には光源ユニット22が存在しないため、グループG3が存在せず、光源ユニット22f,22gのそれぞれがグループG2,G1となっている。光源ユニット22h~22nも同様であり、そのグループは、前方の中央に存在する光源ユニット22nから順に、反時計回りにグループG4,G5,G6を割り当てる作業を繰り返すことによって決められる。
【0026】
図3は、各グループG1~G6に属する光源ユニット22の輝度の時間変化を示す図である。図3に示すように、グループG1~G3においては、グループG1,G2,G3の順に光が移動するように光源ユニット22が点灯される。例えば、時刻t0以後においてグループG1の光源ユニット22の輝度が徐々に上昇して時刻th1で最大値となり、時刻th1~時刻tf1において輝度が0になるまで徐々に低下する。時刻tf1~時刻te1においては非点灯である。
【0027】
一方、時刻t0~時刻th1において、グループG2の光源ユニットの輝度は非点灯であり、時刻th1~時刻tf1において徐々に上昇して時刻tf1で最大値となる。そして、時刻tf1~時刻te1において輝度が0になるまで徐々に低下する。さらに、時刻t0~時刻th1において、グループG3の光源ユニットの輝度は最大値から徐々に低下し、時刻th1で非点灯となる。時刻th1~時刻tf1においては非点灯であり、時刻tf1~時刻te1においては輝度が徐々に上昇して時刻te1で最大値となる。
【0028】
以上のような輝度の変化により、時刻t0以降においては、グループG1の光が非点灯から徐々に明るくなり、再度暗くなると共に、同様の動作がグループG2,G3でも順次行われる。従って、時刻t0以降において、光がグループG1,G2,G3の光源ユニット22に移動していくように見える。上述のように、本実施形態においては、前方から後方に向けて時計回りにグループG1,G2,G3が繰り返すようにグループを割り当てた。従って、グループG1,G2,G3において、点灯している光源ユニット22の位置は、前方の中央から図1Bに示す時計回りに変化していくように見える。
【0029】
さらに、本実施形態においては、各光源ユニット22のそれぞれにおける点灯周期が変化する。本実施形態においては、予め2種類の点灯周期が決められており、制御部21は、2種類の点灯周期を順次選択し、2種類の点灯周期で順番に点灯制御が行われるように各光源ユニット22を制御する。図3においては、点灯周期T1内において、グループG1の光源ユニット22が非点灯から輝度の最大値に達し、再度輝度の最大値から非点灯になるまでの期間(時刻t0~時刻tf1までの期間)は、点灯周期T1の2/3の期間である。
【0030】
同様に、グループG2の光源ユニット22が非点灯から輝度の最大値に達し、再度輝度の最大値から非点灯になるまでの期間(時刻th1~時刻te1までの期間)も、点灯周期T1の2/3の期間である。グループG3の光源ユニット22が最大値から非点灯に達する期間(時刻t0~時刻th1までの期間)と、非点灯から最大値に達するまでの期間(時刻tf1~時刻te1までの期間)との和も、点灯周期T1の2/3の期間である。
【0031】
一方、図3に示す例においては、点灯周期T1に続き、点灯周期T1よりも短い点灯周期T2で同様の動作が行われる。点灯周期T1における動作と、点灯周期T2における動作とでは、輝度の変化期間に差があるが他の点では同等である。すなわち、点灯周期T2内において、グループG1の光源ユニット22が非点灯から輝度の最大値に達し、再度輝度の最大値から非点灯になるまでの期間(時刻te1~時刻tf2までの期間)は、点灯周期T2の2/3の期間である。
【0032】
同様に、グループG2の光源ユニット22が非点灯から輝度の最大値に達し、再度輝度の最大値から非点灯になるまでの期間(時刻th2~時刻t1までの期間)も、点灯周期T2の2/3の期間である。グループG3の光源ユニット22が最大値から非点灯に達する期間(時刻te1~時刻th2までの期間)と、非点灯から最大値に達するまでの期間(時刻tf2~時刻t1までの期間)との和も、点灯周期T2の2/3の期間である。さらに、点灯周期T1および点灯周期T2の双方において、輝度0から最大値までの振幅は等しい。
【0033】
各光源ユニット22においては、図3に示す時刻t0からt1までの動作が終了すると、以後、時刻t0からt1までと同一の動作を繰り返す。このように、本実施形態においては、各グループに属する光源ユニット22において、非点灯と既定の最大輝度との間での輝度の変化を繰り返すように構成されている。
【0034】
以上の構成によれば、グループG1,G2,G3による点灯により、周囲の人に対して、警光灯10が回転灯であるかのような印象を与えることができる。すなわち、回転灯は、例えば、光源の周囲で回転する反射板等によって形成され、周囲の人から見た場合に、明るさが一定の変化度合いで変化しているような印象を与えず、より複雑な変化をしているような印象を与えることが多い。出願人の実験によれば、点灯周期を2種類にしてグループG1,G2,G3の順で光が移動するように見えるようなパターンを繰り返すことで、周囲の人に、警光灯10が回転灯であるかのような印象を与えることができることが判明した。そこで、本実施形態にかかる警光灯は、長短の2種類の点灯周期で光源ユニット22を制御する。なお、点灯周期の長さの比は限定されないが、例えば、長短の比が1.5などに設定すれば良い。
【0035】
さらに、本実施形態においては、図3のグループG1,G2,G3の中で2つのグループの光源ユニット22が点灯している間、残りの1つのグループの光源ユニット22は非点灯である。そして、点灯している2つのグループにおける一方の光源ユニット22の輝度が上昇している過程において、他方の光源ユニット22の輝度は低下する。例えば、時刻t0~時刻th1において、グループG1の光源ユニット22の輝度は上昇し、グループG3の光源ユニット22の輝度は低下し、グループG2の光源ユニット22の輝度は0である。
【0036】
また、本実施形態においては、隣り合うグループに属する光源ユニット同士の一方において輝度を低下させ、他方において輝度を増加させるように構成されている。例えば、図3に示す時刻th1~時刻tf1の間、グループG1の輝度は徐々に低下し、隣り合うグループG2の輝度は徐々に上昇する。以上の構成により、本実施形態においては、光が水平方向に移動していくように見えることに加え、光が徐々に移動していくように見える。
【0037】
本実施形態において、以上の関係は常に維持される。従って、本実施形態において3個のグループG1,G2,G3の輝度の和は変動し得るが、和の変動は、1個のグループの輝度変化よりも小さい。図3においては上から4個目のグラフによって、グループG1,G2,G3の光源ユニット22の輝度の和が示されている。本実施形態においては、各光源ユニット22における輝度の変化がsinカーブとなるように輝度の変化が規定されている。
【0038】
例えば、グループG1,G2において、輝度が0から最大値まで変化し、最大値から0まで変化するカーブは点灯周期T1,T2のそれぞれにおいてsinカーブの半周期分のカーブである。また、グループG3において、最大値から0まで変化するカーブや輝度が0から最大値まで変化するカーブは点灯周期T1,T2のそれぞれにおいてsinカーブの1/4周期分のカーブである。従って、グループG1,G2,G3の輝度の和は、図3の上から4個目のグラフに示すように、和の最小値を1とした場合に、約1.414(=21/2)まで上昇する変化を繰り返す。
【0039】
この結果、輝度の和は1~1.414程度の変化となり、0~1まで変化する個別の光源ユニット22の輝度の変化より小さい。このように、本実施形態においては輝度の和のが、最小値を1とした場合に1.414を超えないように、輝度の変化パターンが定義されている。すなわち、本実施形態においては、輝度の和の最小値を1とした場合における+0.414が基準であり、輝度の和の時間変化(任意の時間が経過した場合の変化の最大幅)がこの基準を超えないように輝度が制御される。
【0040】
以上の構成により、連続する3個の光源ユニット22a,22b,22cの全体で捉えた場合に、輝度の和が0になることはなく、光源ユニット22a,22b,22cの全体のコントラストの変動幅は1~1.414程度である。このため、当該連続する3個の光源ユニット22a,22b,22cにおけるコントラストの変動幅は、周囲の人にまぶしさを感じさせない程度に抑制されている。従って、連続する3個の光源ユニット22a,22b,22cを視認する周囲の人はまぶしさを感じない。
【0041】
上述のように、グループG1,G2,G3は、警光灯10の右側に存在する光源ユニット22が属するグループであり、グループG4,G5,G6は、警光灯10の左側に存在する光源ユニット22が属するグループである。グループG4,G5,G6の輝度の変化は、図3に示すように、点灯周期T1,T2の出現順序がグループG1,G2,G3と逆であることを除き、グループG1,G2,G3のそれぞれと同様である。
【0042】
従って、グループG4,G5,G6に属する連続する3個の光源ユニット22n,22m,22lの全体で捉えた場合においても、輝度の和が0になることはなく、光源ユニット22n,22m,22lの全体のコントラストの変動幅は1~1.414程度である。このため、当該連続する3個の光源ユニット22n,22m,22lにおけるコントラストの変動幅は、周囲の人にまぶしさを感じさせない程度に抑制されている。従って、連続する3個の光源ユニット22n,22m,22lを視認する周囲の人はまぶしさを感じない。
【0043】
本実施形態において図1Bに示す平面視において、上述のように、警光灯10の前方の中央に配置された光源ユニット22aから時計回りにグループG1,G2,G3が各光源ユニット22に対して順に割り当てられる。また、警光灯10の前方の中央に配置された光源ユニット22nから反時計回りにグループG4,G5,G6が各光源ユニット22に対して順に割り当てられる。従って、警光灯10がどの方向から視認された場合であっても隣り合う光源ユニット22同士で光の増減を補完し合うように光が移動する。このため、警光灯10を視認する周囲の人がまぶしさを感じる可能性は低い。
【0044】
特に、警光灯10の前方においては、グループG1,G2,G3およびグループG4,G5,G6の光源ユニット22a,22b,22c,22n,22m,22lにおいて輝度の和の時間変化が基準を超えないように構成されている。従って、警光灯10を正面から視認する人がまぶしさを感じる可能性は非常に低い。出願人は、警光灯10の前方に輝度センサーを配置し、輝度センサーの検出範囲に警光灯10の前方側の面の全体が含まれる状態で輝度の和を測定した。すなわち、出願人は、光源ユニット22a,22b,22c,22d,22n,22m,22l,22kが検出範囲に含まれる状態で輝度センサーによる測定を行った。この結果、輝度の和は、594cd/m2~736cd/m2の範囲で変化した。従って、輝度の和は、最小値から最大値まで24%変化した。この警光灯10においては、視認する人がまぶしさを感じないことが確認されている。
【0045】
なお、各光源ユニット22の発光素子222は、PWMで点灯されるため、短い時間間隔において点灯と非点灯とを繰り返すことによって輝度を徐々に変化させるが、人の眼にはPWMにおける短期間の非点灯タイミングは認識されず、グレアに対する影響はない。従って、PWMにおける輝度の調整のためにごく短い期間で非点灯になるタイミングは、人間にとっては実質的に非点灯の期間ではない。従って、図3に示す輝度における、グループG1の時刻t0~時刻tf1の期間は実質的に非点灯ではない。一方、グループG1の期間Tbにおいては、発光素子222が点灯されていないため非点灯である。
【0046】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。光源ユニットは、既定方向に並べて配置されていれば良い。すなわち、複数の光源ユニットの点灯状態が時間に応じて変化することにより、点灯位置が既定方向に移動するように見えるように構成されていれば良い。既定方向は、予め決められた方向であれば良く、車両の上部に配置される場合、水平面に略平行な方向であることが好ましいが、車両の上部の形状や、警光灯に対する光源ユニットの接地面の形状等に応じて、既定方向が傾斜していても良い。むろん、既定方向は直線であっても良いし、曲線であっても良い。上述の実施形態において光源ユニットは、車両の前方、後方、側方のそれぞれから見た状態では、直線状に並べられる。しかし、上方からみた平面視の状態では周回状に並べられている。
【0047】
さらに、光源ユニットの並べ方も限定されず、略一定間隔で並べられても良いし、光源ユニット同士の間隔が変化するように並べられても良い。むろん、光源ユニットの数も限定されない。光源ユニットは、それぞれを独立に点灯させることができる光源として機能すれば良い。従って、発光素子の数は限定されないし、発光素子の種類も限定されない。
【0048】
制御部は、光源ユニットの点灯制御を行うことができればよい。すなわち、制御部は、光源ユニットの輝度を時間変化させながら、かつ、連続して並ぶN個の光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように制御する。輝度の和の時間変化が基準以下とは、輝度の和の時間変化が予め決められた範囲内であることを意味している。
【0049】
基準は種々の手法で定義されて良く、輝度の和の最小値と最大値との比であっても良いし、輝度の和の統計値(平均値や中央値等)からの振れ幅等であっても良い。前者としては、例えば、輝度の和の最大値を最小値で除して得られる増加率に対して閾値が設定され、増加率が閾値以下である場合に和の時間変化が基準を超えないとみなされる構成を採用可能である。また、輝度の和の最小値を最大値で除して得られる減少率に対して閾値が設定され、減少率が閾値以上である場合に和の時間変化が基準を超えないとみなされる構成を採用可能である。
【0050】
さらに、最大値と最小値との間の中央値から、最大値または最小値までの振れ幅に対して閾値が設定され、振れ幅が閾値以下である場合に和の時間変化が基準を超えないとみなされる構成を採用可能である。閾値は、連続するN個の光源ユニットによる時間的なコントラストの変化幅が小さくなり、光源ユニットを視認する周囲の人がまぶしさを感じないように規定されていれば良い。
【0051】
上述の実施形態において、輝度はsinカーブと同等の変化になるように設定され、sinカーブの振幅が1である場合に、和は1から約1.414まで変化する。出願人は、この場合に周囲の人がまぶしさを感じないことを確認している。従って、閾値は、例えば、当該1.414にマージンを設けた1.5以下であっても良いし、1.414以下であってよい。
【0052】
連続して並ぶN個の光源ユニットは、2個以上であればよく、上述の実施形態のように3個である構成に限定されない。また、輝度の和の時間変化が基準を超えない光源ユニットは、全ての光源ユニットの中の一部(上述の実施形態では14個の中の6個)であってもよいし、光源ユニットの中の全てであっても良い。輝度の和の時間変化が基準を超えないように制御されるN個の光源ユニットを一組とみなした場合、警光灯全体では、複数組の光源ユニットが備えられていても良い。また、警光灯の一部(例えば、前方のみ)に設けられた光源ユニットがN個の光源ユニットの一組または複数組で構成され、警光灯を前方から見た場合に、まぶしさを感じさせないように構成されていても良い。
【0053】
さらに、上述の実施形態において、光源ユニットは複数の発光素子を備えており、各光源ユニットが備える複数の発光素子の輝度は同一であるが、制御の手法はこれに限定されない。例えば、各光源ユニットが備える複数の発光素子の中で輝度が変化し、N個の光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、制御されても良い。光源ユニットにおける輝度の制御は、種々の手法で実施されてよく、上述のようなPWM制御に限定されない。
【0054】
上述の実施形態においては、光源ユニットのそれぞれにおいて、非点灯と既定の最大輝度との間での輝度の変化を繰り返すが、光源ユニットにおける輝度の時間変化はこのような変化に限定されない。例えば、光源ユニットの少なくとも一部において、輝度の最小値は0ではなく有限の値であっても良い。また、輝度の最小値や最大値は、1以上の光源ユニットにおいて変化しても良い。この場合、例えば、ある光源ユニットにおける輝度の増加または減少分を、他の光源ユニットにおける輝度の減少または増加で補う構成等を採用可能である。
【0055】
光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度を徐々に変化させる手法は、上述の実施形態のような手法に限定されない。例えば、各光源ユニットにおいて、輝度が増減した後に非点灯状態が継続される構成ではなく、三角関数を上方に振幅分移動させたようなカーブで輝度が変化するように制御されても良い。他にも、三角波等に従って輝度が変化するように制御されても良い。
【0056】
光源ユニットのそれぞれにおける点灯周期を変化させる手法は、上述の実施形態のように、2つの点灯周期が交互に入れ替わるように周期を適用する構成に限定されない。例えば、点灯周期が連続的に変化する構成であっても良いし、予め決められた3個以上の点灯周期が順次選択されて適用される構成等であっても良い。いずれにしても、これらの構成によれば、周囲の人に回転灯のような印象を与えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…警光灯、20…本体、21…制御部、22…光源ユニット、22a~22n…光源ユニット、23…ドライバー、30…連結部、221…定電流回路、222…発光素子
【要約】
【課題】周囲の人にまぶしさを感じさせにくい警光灯の提供。
【解決手段】既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットと、前記光源ユニットの点灯制御を行う制御部と、を備える警光灯であって、前記制御部は、前記光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度が時間変化し、かつ、連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、警光灯を構成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3