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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】高圧容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20220106BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20220106BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220106BHJP
【FI】
F17C1/06
F16J12/00 A
H01M8/04 N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2016248266
(22)【出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2018025287
(43)【公開日】2018-02-15
【審査請求日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2016-0101107
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 東 善
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-216277(JP,A)
【文献】国際公開第2011/154994(WO,A1)
【文献】米国特許第08308017(US,B2)
【文献】特開2010-270878(JP,A)
【文献】特公昭41-003012(JP,B1)
【文献】特開2012-246962(JP,A)
【文献】特開2004-197812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
F16J 12/00
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧容器の外層を形成する支持層が、中央にシリンダー部と前記シリンダー部の両側に形成されたドーム部からなり、前記ドーム部は、内層の低角インナーヘリカル層部と外層の低角アウターヘリカル層部からなり、前記低角インナーヘリカル層部は、複数の低角インナーヘリカル層で構成され、前記複数の低角インナーヘリカル層のうち少なくとも1つの低角インナーヘリカル層は、他の低角インナーヘリカル層よりも相対的に高い剛性を有する高強度低角インナーヘリカル層であり、
前記高強度低角インナーヘリカル層は、前記低角アウターヘリカル層部よりも剛性/強度がさらに高い繊維複合材料を用いて形成されることを特徴とする高圧容器。
【請求項2】
前記ドーム部の総厚さのうちの5~30%の厚さ領域が前記低角インナーヘリカル層部からなることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【請求項3】
前記ドーム部の総厚さのうちの70~95%の厚さ領域が前記低角アウターヘリカル層部からなることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【請求項4】
前記低角インナーヘリカル層部において、前記複数の低角インナーヘリカル層の一部は相対的に高い剛性を有する高強度低角インナーヘリカル層で、他の一部は相対的に低い剛性を有する低強度低角インナーヘリカル層であることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【請求項5】
前記高強度低角インナーヘリカル層は、前記低角インナーヘリカル層部の内層に全て配置され、前記低強度低角インナーヘリカル層は、前記低角インナーヘリカル層部の外層に全て配置されることを特徴とする請求項4に記載の高圧容器。
【請求項6】
前記高強度低角インナーヘリカル層は、前記低角インナーヘリカル層部の外層に全て配置され、前記低強度低角インナーヘリカル層は、前記低角インナーヘリカル層部の内層に全て配置されることを特徴とする請求項4に記載の高圧容器。
【請求項7】
前記高強度低角インナーヘリカル層と前記低強度低角インナーヘリカル層は、積層順序を制限することなく、互いに混合配置されることを特徴とする請求項4に記載の高圧容器。
【請求項8】
前記高強度低角インナーヘリカル層と前記低強度低角インナーヘリカル層は、1層ずつ交互積層された形態で混合配置されることを特徴とする請求項4に記載の高圧容器。
【請求項9】
高圧容器の外層を形成する支持層が、中央にシリンダー部と前記シリンダー部の両側に形成されたドーム部からなり、前記ドーム部は、内層の低角インナーヘリカル層部と外層の低角アウターヘリカル層部からなり、前記低角インナーヘリカル層部は、複数の低角インナーヘリカル層で構成され、
前記低角インナーヘリカル層部は、高強度低角インナーヘリカル層だけで構成され
前記高強度低角インナーヘリカル層は、前記低角アウターヘリカル層部よりも剛性/強度がさらに高い繊維複合材料を用いて形成されることを特徴とする高圧容器。
【請求項10】
前記低角インナーヘリカル層部の最低層には、前記高強度低角インナーヘリカル層が配置されることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【請求項11】
前記ドーム部は、繊維複合材料が高圧容器の中心軸線方向を基準としてライナー層及び金属ボスの外表面に一定範囲内の鋭角をなして巻回形成されることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【請求項12】
前記シリンダー部は、ライナー層の外表面に積層されるフープ層とヘリカル層が交互積層された構造で形成され、前記フープ層とヘリカル層のうちのフープ層がライナー層の外表面に当接するように積層されることを特徴とする請求項1に記載の高圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧容器に係り、より詳細には、繊維複合材料の積層パターン及び構造を最適化して同じ重量であっても効率的な強度及び剛性の補強を可能とする高圧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に水素を燃料として使用する燃料電池を装着した車両は、高圧のガス状の水素を貯蔵するための高圧容器として高圧燃料タンクを搭載する。高圧燃料タンクは、ガスの透過を遮断する内部のライナー層とタンクの内部圧力を支持する外部の支持層で構成されるが、ライナー層にプラスチック材料が主に用いられ、支持層に高価の繊維複合材料が主に用いられる。例えば、高圧燃料タンクの支持層によく用いられる炭素繊維複合材料は、炭素繊維を強化繊維として用いた複合材料であって、軽量で、かつ高強度及び高弾性の複合体の製造に使用できるが、同じ重量の一般の炭素鋼に比べて約20倍以上の高価な材料である。繊維複合材料は、繊維の積層パターンに応じて材料の強度が変化する異方性材料であるため、積層パターンが良くない場合は、多量の材料を用いても高強度が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-270878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、燃料電池車両の燃料タンクなどに適用可能な高圧容器のドーム部を形成するための繊維複合材料の積層パターン及び構造を最適化することで、同じ重量であっても効率的な強度及び剛性の補強を可能とする高圧容器を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による高圧容器は、高圧容器の外層を形成する支持層が、中央にシリンダー部と前記シリンダー部の両側に形成されたドーム部からなり、前記ドーム部は内層の低角インナーヘリカル層部と外層の低角アウターヘリカル層部からなり、前記低角インナーヘリカル層部は、複数の低角インナーヘリカル層で構成され、前記複数の低角インナーヘリカル層のうち少なくとも1つの低角インナーヘリカル層は、他の低角インナーヘリカル層よりも相対的に高い剛性を有する高強度低角インナーヘリカル層であり、前記高強度低角インナーヘリカル層は、前記低角アウターヘリカル層部よりも剛性/強度がさらに高い繊維複合材料を用いて形成されることを特徴とする。
【0006】
具体的には、前記ドーム部の総厚さのうちの5~30%の厚さ領域が前記低角インナーヘリカル層部からなることを特徴とする。
【0007】
前記ドーム部の総厚さのうちの70~95%の厚さ領域が前記低角アウターヘリカル層部からなることを特徴とする。
【0008】
前記低角インナーヘリカル層部において、複数の低角インナーヘリカル層の一部は相対的に高い剛性を有する高強度低角インナーヘリカル層で、他の一部は相対的に低い剛性を有する低強度低角インナーヘリカル層であることを特徴とする。
【0009】
前記高強度低角インナーヘリカル層は低角インナーヘリカル層部の内層に全て配置され、前記低強度低角インナーヘリカル層は低角インナーヘリカル層部の外層に全て配置されることを特徴とする。
【0010】
また、前記高強度低角インナーヘリカル層は低角インナーヘリカル層部の外層に全て配置され、前記低強度低角インナーヘリカル層は低角インナーヘリカル層部の内層に全て配置されることを特徴とする。
【0011】
また、前記高強度低角インナーヘリカル層と低強度低角インナーヘリカル層は、積層順序を制限することなく、互いに混合配置されてもよく、1層ずつ交互積層された形態で混合配置されることを特徴とする。
【0012】
前記高強度低角インナーヘリカル層と低強度低角インナーヘリカル層は、1層ずつ交互積層された形態で混合配置されることを特徴とする。
【0013】
本発明による高圧容器は、高圧容器の外層を形成する支持層が、中央にシリンダー部と前記シリンダー部の両側に形成されたドーム部からなり、前記ドーム部は、内層の低角インナーヘリカル層部と外層の低角アウターヘリカル層部からなり、前記低角インナーヘリカル層部は、複数の低角インナーヘリカル層で構成され、前記低角インナーヘリカル層部は、高強度低角インナーヘリカル層だけで構成され、前記高強度低角インナーヘリカル層は、前記低角アウターヘリカル層部よりも剛性/強度がさらに高い繊維複合材料を用いて形成されることを特徴とする。
【0014】
前記低角インナーヘリカル層部の最低層には、高強度低角インナーヘリカル層が配置されることを特徴とする。
【0015】
前記ドーム部は、繊維複合材料が高圧容器の中心軸線方向を基準としてライナー層及び金属ボスの外表面に一定範囲内の鋭角をなして巻回形成されることを特徴とする。
【0016】
前記シリンダー部は、ライナー層の外表面に積層されるフープ層とヘリカル層が交互積層された構造で形成され、前記フープ層とヘリカル層のうちのフープ層がライナー層の外表面に当接するように積層されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高圧容器の支持層において、容器の内圧による応力が集中するドーム部の脆弱部に相対的に高強度の繊維複合材料を混合使用することで、破裂強度及び剛性を増大し、かつドーム部の脆弱地点を直接補強するため、繊維複合材料の使用量及び巻回数を減らし、それによって高圧容器の製造費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例による高圧容器を示す断面図である。
図2図1のA部分を示す拡大図である。
図3図1のB部分を示す拡大図である。
図4】本発明の実施例による底角インナーヘリカル層部を示す図面である。
図5】本発明の実施例による底角インナーヘリカル層部を示す図面である。
図6】本発明の実施例による底角インナーヘリカル層部を示す図面である。
図7】本発明の実施例による底角インナーヘリカル層部を示す図面である。
図8図1のC部分を示す拡大図である。
図9】本発明の実施例による高圧容器の巻回パターンの種類を示す概念図である。
図10】本発明により高強度繊維複合材料を巻回して形成した高強度底角インナーヘリカル層の位置による高圧容器の破裂圧を示すグラフである。
図11】本発明によるドーム部の厚さ領域において、高強度底角インナーヘリカル層の使用領域による高圧容器の破裂圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、好ましい実施例を詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明による高圧容器100は、高圧ガス状の燃料の透過を遮断する内層のライナー層110と、タンクの内部圧力を支持する外層の支持層120と、を含んで形成され、開閉用バルブ(図示せず)が結合されるライナー層110の入口側に金属ボス112が一体に備えられている。ライナー層110は、プラスチック材料を用いて射出成形されるが、具体的に金属ボス112を射出金型にインサートして射出成形することによって、ライナー層110の入口側に金属ボス112が一体形成される。支持層120は、ライナー層110の外表面に繊維複合材料を巻いて積層する巻回積層方式で形成され、中央にシリンダー部122とこのシリンダー部122の両側に一体に形成されたドーム部124からなる。シリンダー部122は、高圧容器100の直線区間部であって、ライナー層110の中央部の外観形状に応じて円筒形に形成され、図2に示すように、ライナー層110の中央部の外表面に繊維複合材料が巻かれて積層されるフープ層122aとヘリカル層122bが交互積層された断面構造を持つ。
【0021】
ここで、それぞれのフープ層122aとヘリカル層122bは、繊維複合材料がライナー層110の外表面に1回巻かれて形成されたものであってもよく、または繊維複合材料がライナー層110の外表面に複数回も巻かれて形成されたものであってもよい。すなわち、図2に示されたそれぞれのフープ層122aとヘリカル層122bは、繊維複合材料が少なくとも1回以上ライナー層110の外表面に巻かれて形成されたものである。この際、フープ層122aは、支持層120の厚さ領域において、内層領域に配置されてライナー層110に近接するように積層されるほど高圧容器100の破裂強度の上昇に対して有利であるため、シリンダー部122のフープ層122aとヘリカル層122bのうち、フープ層122aがライナー層110の中央部の外表面に最初積層されて当接するようにする。
【0022】
図9を参照すると、フープ層122aは、ライナー層110の外表面に巻かれる繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(あるいはライナー層110の軸線方向)(L)に対してほとんど直角をなすように巻かれる巻回パターンで積層形成され、ヘリカル層122bは、ライナー層110の外表面に巻かれる繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(L)に対して一定範囲内の鋭角をなすように巻かれる巻回パターンで積層形成される。
【0023】
具体的には、フープ層122aは、繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(L)に対して89°をなすように巻かれるフープパターンで積層形成されることができ、ヘリカル層122bは、繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(L)に対して45~88°の鋭角をなすように巻かれる高角ヘリカルパターンまたは繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(L)に対してα~44°の鋭角をなすように巻かれる底角ヘリカルパターンで積層形成されることができる。ここで、αは、繊維複合材料の最低巻回角度であって、ライナー層110の外径(z)値と金属ボス112の外径(rb)値により決定される。すなわち、α=sin-1(rb/z)によって底角ヘリカルパターンを形成する繊維複合材料の最低巻回角度を決定する。ドーム部124は、高圧容器100の曲線区間部であって、ライナー層110の両端部の外観形状に応じて概略半球状に形成されるが、図3に示すように、ライナー層110の両端部の外表面(具体的には、ライナー層110の両端部の外表面及び金属ボス112の外表面)に、繊維複合材料を複数回巻いて形成される。
【0024】
ドーム部124は、剛性及び強度を直接的に補強するために、言い換えれば、ドーム部の厚さを増加させるか、別途の補強部材を使用せずに破裂剛性及び強度を補強するために繊維複合材料を巻回してドーム部124を形成する場合に、所定の一部の領域に相対的に高強度の繊維複合材料が使用される。具体的にドーム部124は、ドーム部124の厚さ方向を基準として内層の底角インナーヘリカル層部126aと外層の底角アウターヘリカル層部126bからなり、ライナー層110の両端部の外表面及び金属ボス112の外表面に隣接する底角インナーヘリカル層部126aに相対的に高い剛性及び強度を有する繊維複合材料が使用される。
【0025】
底角インナーヘリカル層部126aは、複数の底角インナーヘリカル層で構成されるが、底角インナーヘリカル層のうち少なくとも1つの底角インナーヘリカル層が他の底角インナーヘリカル層よりも相対的に高い剛性及び強度を有する繊維複合材料をもって形成される。すなわち、底角インナーヘリカル層部126aには、底角アウターヘリカル層部126bに比べてさらに高い剛性及び強度を持つと共に、他の底角インナーヘリカル層(すなわち、低強度底角インナーヘリカル層)よりもさらに高い剛性及び強度を有する繊維複合材料をライナー層110及び金属ボス112の外表面に巻回して形成された高強度底角インナーヘリカル層126aaが少なくとも1層以上含まれる。ここで、低強度底角インナーヘリカル層126abと高強度底角インナーヘリカル層126aaは、繊維複合材料がライナー層110及び金属ボス112の外表面に1回巻回形成されたものである。
【0026】
このようにドーム部124は、内層の底角インナーヘリカル層部126aの少なくとも一部に高強度及び高剛性の繊維複合材料を使用することによって、高価の高強度繊維複合材料の使用量を最小化すると共にドーム部124の強度及び剛性を効果的に補強することができる。ドーム部124は、ライナー層110の両端部の外表面及び金属ボス112の外表面に繊維複合材料を巻回して複数層の形態で形成されるため、先に底角インナーヘリカル層部126aを巻回形成した後、底角アウターヘリカル層部126bを巻回形成する。具体的には、ドーム部124は、ライナー層110の外表面に隣接するドーム部124の厚さ方向の内層領域に底角インナーヘリカル層部126aが形成され、ドーム部124の厚さ方向の外層領域に、底角インナーヘリカル層部126aの外側に積層された形態で底角アウターヘリカル層部126bが形成される。
【0027】
通常、ドーム部124は、ライナー層110の外表面に先に巻回される内層領域が外層領域よりも構造的に高圧容器100の内圧の影響をさらに受けるため、相対的に応力が集中して脆弱になるが、上述した通りにドーム部124の内層領域に少なくとも1層以上の高強度底角インナーヘリカル層126aaを含む底角インナーヘリカル層部126aを構成することによって、ドーム部124の脆弱部を効果的に改善することができる。言い換えれば、ドーム部124の少なくとも一部領域に相対的に高い強度及び剛性を有する繊維複合材料を使用することによって、全体的にドーム部124の強度を補強できることはもちろん、特にドーム部124の内層領域を構成する底角インナーヘリカル層部126aに高強度/高剛性の繊維複合材料を使用することによって、底角アウターヘリカル層部126bに高強度/高剛性の繊維複合材料を使用することよりもさらに効果的にドーム部124の強度を補強することができる。
【0028】
一般的にドーム部124の脆弱性を改善するために、繊維複合材料の積層数(あるいは巻回数)を増加させてドーム部の厚さを増大するようになるが、単純に繊維複合材料の積層数を増加させる場合は繊維複合材料の使用量に対する補強効果があまり大きくなく、多量の繊維複合材料を使用しなければならないため、製造費用が大きく上昇する。したがって、上述したようにドーム部124の構造的脆弱部位に該当する内層領域の底角インナーヘリカル層部126aを底角アウターヘリカル層部126bよりも剛性/強度がさらに高い繊維複合材料を用いて形成することで、ドーム部124の応力集中を解消でき、従来よりも繊維複合材料の使用量を低減すると共にドーム部124の厚さを減少し、一般的なドーム部(単一繊維複合材料を用いたドーム部)とほぼ同等水準の補強効果を確保することができる。
【0029】
ここで、底角インナーヘリカル層部126aの詳細構造を図5から図7を参照して説明する。図4から図7は本発明の実施例による底角インナーヘリカル層部126aを示す図面である。
【0030】
図4に示すように、底角インナーヘリカル層部126aは、複数の底角インナーヘリカル層で構成され、複数の底角インナーヘリカル層のうち1つの底角インナーヘリカル層が他の底角インナーヘリカル層よりも相対的に高い剛性及び強度を有する高強度底角インナーヘリカル層126aaで構成される。この際、高強度底角インナーヘリカル層126aaは、底角インナーヘリカル層部126aの最低層に配置されてライナー層110の外表面及び金属ボス112の外表面に当接するようになる(図4の(a)参照)。また、高強度底角インナーヘリカル層126aaは、底角インナーヘリカル層部126aの最高層に配置されるか(図4の(b)参照)、または最低層と最高層との間の何れか1層に配置されてもよい。(図4の(c)参照)
【0031】
次に、図5に示すように、底角インナーヘリカル層部126aは、複数の底角インナーヘリカル層のうち2つ以上の底角インナーヘリカル層が他の底角インナーヘリカル層よりも相対的に高い剛性及び強度を有する高強度底角インナーヘリカル層126aaで構成される。すなわち、底角インナーヘリカル層部126aは、複数の底角インナーヘリカル層のうちの一部は高強度底角インナーヘリカル層126aaで構成され、他の一部は低強度底角インナーヘリカル層126abで構成される。
【0032】
この際、底角インナーヘリカル層部126aの厚さ方向を基準として、高強度底角インナーヘリカル層126aaは底角インナーヘリカル層部126aの内層領域に全て配置され、低強度底角インナーヘリカル層126abは底角インナーヘリカル層部126aの外層領域に全て配置される(図5の(a)参照)。または、底角インナーヘリカル層部126aの厚さ方向を基準として、高強度底角インナーヘリカル層126aaは底角インナーヘリカル層部126aの外層領域に全て配置され、低強度底角インナーヘリカル層126abは底角インナーヘリカル層部126aの内層領域に全て配置されてもよい(図5の(b)参照)。この際、高強度底角インナーヘリカル層126aaの総厚さと低強度底角インナーヘリカル層126abの総厚さは同一または相異なってもよい。
【0033】
次に、図6に示すように、底角インナーヘリカル層部126aは、複数の高強度底角インナーヘリカル層126aaと複数の低強度底角インナーヘリカル層126abが積層順序(あるいは巻回順序)を制限することなく、混合配置された形態で構成されてもよく、また、高強度底角インナーヘリカル層126aaと低強度底角インナーヘリカル層126abが交互に1層ずつ順次積層された形態で混合配置されてもよい。この際、底角インナーヘリカル層部126aの最低層には高強度底角インナーヘリカル層126aaが配置されてもよく、または低強度底角インナーヘリカル層126abが配置されてもよい。
【0034】
次に、図7に示すように、底角インナーヘリカル層部126aを構成する複数の底角インナーヘリカル層は全て高強度底角インナーヘリカル層126aaであり得る。ここで、底角インナーヘリカル層部126aを構成するそれぞれの底角インナーヘリカル層(高強度底角インナーヘリカル層及び低強度底角インナーヘリカル層)は、ライナー層110の外表面に繊維複合材料を巻回する時、繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(L)に対して一定範囲内の鋭角をなす巻回パターンで積層形成されるが、具体的に繊維複合材料が高圧容器100の中心軸線方向(L)に対してα~44°の鋭角をなすように巻回される底角ヘリカルパターンで積層形成され(図9の(c)参照)、このように底角インナーヘリカル層を巻回する時、シリンダー部122の一部のヘリカル層が同時に形成される。
【0035】
また、底角インナーヘリカル層部126a及び底角アウターヘリカル層部126bは、炭素繊維を強化繊維として用いた複合材料、ガラス繊維を強化繊維として用いた複合材料などの様々な繊維複合材料を用いて形成するが、底角インナーヘリカル層部126aの一部の底角インナーヘリカル層を他の底角インナーヘリカル層及び底角アウターヘリカル層よりも相対的に高い強度及び剛性を有する繊維複合材料を用いて形成することで、繊維複合材料の使用量及びドーム部124の厚さを減らし、それによって高圧容器の重さ及び製造費用を低減でき、さらに、高圧容器100の重さの減少によって燃料重量効率を高めて高圧容器100に貯蔵される燃料供給量を増加でき、それによって車両走行可能距離が増えるという利点がある。
【0036】
ドーム部124は、底角インナーヘリカル層部126aを構成する複数の底角インナーヘリカル層のうち少なくとも1つの底角インナーヘリカル層が高強度底角インナーヘリカル層126aaで構成されることで、ドーム部124の内層領域(底角インナーヘリカル層部)が外層領域(底角アウターヘリカル層部)よりも高い破裂強度及び剛性を有するようになる。このようなドーム部124は、内層の底角インナーヘリカル層部126aと外層の底角アウターヘリカル層部126bからなる総厚さのうちの5~30%を底角インナーヘリカル層部126aで形成し、総厚さのうちの70~95%を底角アウターヘリカル層部126bで形成することが好ましい。ドーム部124の総厚さのうちの底角インナーヘリカル層部126aの厚さが5%未満であれば、ドーム部124の強度及び剛性を所望の水準に増加しにくくなる。また、ドーム部124の総厚さのうちの底角インナーヘリカル層部126aの厚さが30%を超えると費用対効果の点からみてドーム部124の強度及び剛性補強の効果がほぼなく、したがって原価低減の効果を期待しにくくなる。
【0037】
通常、繊維複合材料は、高強度及び高剛性を有する材料であるほど高価であるため、高強度繊維複合材料の使用量を最小化し、かつドーム部124の強度及び剛性を増大することが好ましい。言い換えれば、高強度底角インナーヘリカル層126aaが含まれている底角インナーヘリカル層部126aの厚さがドーム部124の総厚さのうちの30%を超えてもドーム部124の強度及び剛性を所望の水準に増加させることもできるが、すなわち高強度底角インナーヘリカル層126aaがドーム部124の総厚さのうちの30%を超えて配置されてもドーム部124の強度及び剛性を所望の水準に増加できるが、30%を超えると繊維複合材料の使用量及び材料費に対するドーム部124の補強効果があまり大きくない。さらに、ドーム部124は、構造的に金属ボス112に近づくほどその厚さが増加するようになり、それによって底角インナーヘリカル層部126aの厚さも増加することができる。
【0038】
一方、図8に示すように、ドーム部124とシリンダー部122との間にはシリンダー部122のフープ層122aが仕上げられる区間部として変換部128が備えられ、変換部128で支持層120の直線区間部となるシリンダー部122と曲線区間部のドーム部124とが連なるようになる。ここで、本発明によりドーム部の強度/剛性を補強することによる高圧容器の破裂圧(破裂強度)の上昇効果を確認するために、支持層のドーム部を、単一繊維複合材料を用いて製造した高圧容器(比較例1)と、支持層のドーム部を、異種繊維複合材料を用いて製造した高圧容器(実施例1、2)をそれぞれ準備し、比較例1の高圧容器と、実施例1、2の高圧容器の破裂圧を測定した結果を下記表1に示す。
【0039】
この際、比較例1の高圧容器は、2550MPa値の強度及び135GPa値の剛性を有する低強度繊維複合材料のみを用いて支持層のドーム部を形成し、実施例1、2の高圧容器は、3040MPa値の強度及び159GPa値の剛性を有する高強度繊維複合材料と2550MPa値の強度及び135GPa値の剛性を有する低強度繊維複合材料を混合使用して支持層のドーム部を形成した点を除いて、実施例1、2の高圧容器と比較例1の高圧容器を同じ条件で製造した。ただし、実施例1の高圧容器は、ドーム部の総厚さのうちのライナー層に隣接する5%の厚さ領域にだけ高強度繊維複合材料を用い、残り95%の厚さ領域には低強度繊維複合材料を用いて製造し、実施例2の高圧容器は、ドーム部の総厚さのうちのライナー層に隣接する30%の厚さ領域のうちの最高層(あるいは最外層)にだけ高強度繊維複合材料を用い、残り70%の厚さ領域には低強度繊維複合材料を用いて製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、実施例1、2の高圧容器は、比較例1の高圧容器よりもさらに高い破裂圧を有することを確認し、したがって比較例1と同等水準の破裂圧を有する高圧容器を製作する場合は繊維複合材料の使用量を低減でき、それによって高圧容器の重量が減少して水素重量効率が比較例1よりも増大することが分かる。ここで、実施例1、2の破裂圧は比較例1の値を基準としてして示すものである。
【0042】
一方、図10は、高強度繊維複合材料を巻回形成した高強度底角インナーヘリカル層の位置による高圧容器の破裂圧を示しており、図8は、ドーム部の厚さ領域において、高強度底角インナーヘリカル層の使用領域による高圧容器の破裂圧を示している。ここで、各破裂圧の値は、高強度繊維複合材料を用いていない場合の破裂圧の値を基準として示す。図10に示すように、ドーム部の厚さを基準として高強度繊維複合材料を1回巻回して単一層として形成された高強度底角インナーヘリカル層の位置によって高圧容器の破裂圧が変動することが分かるが、具体的に高強度底角インナーヘリカル層がドーム部の厚さを基準として5~30%の厚さ領域のうち何れか1層に位置する時に破裂圧が増大し、特に15~25%の厚さ領域のうち何れか1層に位置する時に破裂圧が非常に大きく増大することが分かる。
【0043】
また、図11に示すように、ドーム部の厚さを基準として0~30%の厚さ領域に全体的に高強度繊維複合材料を巻回して高強度底角インナーヘリカル層を形成する場合、高強度繊維複合材料を用いていない場合及び他の厚さ領域に高強度繊維複合材料を巻回した場合よりも高圧容器の破裂圧が増加することが分かる。具体的に、高強度繊維複合材料を用いることなく、低強度繊維複合材料のみ用いてドーム部を形成した場合の高圧容器破裂圧が1.00であれば、ドーム部の厚さを基準として0~30%の厚さ領域に高強度繊維複合材料を巻回した場合は高圧容器破裂圧が1.11となり、ドーム部の厚さを基準として31~100%の厚さ領域に高強度繊維複合材料を巻回した場合は高圧容器破裂圧が1.10となった。
【0044】
高強度繊維複合材料を上述した0~30%の厚さ領域に全体的に用いた場合、高強度繊維複合材料を用いることなく低強度繊維複合材料のみ用いた場合よりも高圧容器破裂圧が大きく増加し、高強度繊維複合材料を上述した31~100%の厚さ領域に全体的に用いた場合よりも非常に小量の高強度繊維複合材料を用いてもさらに高い高圧容器破裂圧を得ることができた。したがって、本発明のようにドーム部の厚さを基準としてドーム部の所定領域に高強度繊維複合材料を用いることで高圧容器の破裂圧の上昇効果を得ることができる。
【0045】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の実施例に限定されることはなく、様々な変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 高圧容器
110 ライナー層
112 金属ボス
120 支持層
122 シリンダー部
122a フープ層
122b ヘリカル層
124 ドーム部
126a 底角インナーヘリカル層部
126aa 高強度底角インナーヘリカル層
126ab 低強度底角インナーヘリカル層
126b 底角アウターヘリカル層部
128 変換部
図1
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図8
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図10
図11