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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】背面シェル構造体及び座席ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20220106BHJP
   B64D 11/06 20060101ALI20220106BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60N2/64
B64D11/06
A47C7/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017073605
(22)【出願日】2017-04-03
(65)【公開番号】P2018176771
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000132013
【氏名又は名称】株式会社ジャムコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道人
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105564283(CN,A)
【文献】特表2008-521703(JP,A)
【文献】特開平03-061529(JP,A)
【文献】特表2014-516859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0214518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部材と、
後面部材からなる、
座席の背中部を覆う背面シェル構造体であって、
前記背面シェル構造体の一部には、前記前面部材と前記後面部材との間に空間補強部材が設けられた領域(以下、「補強領域」という。)が設けられており、
前記補強領域以外であって、少なくとも前記座席に着席する乗客の頭部に相当する領域において、前記前面部材と前記後面部材とが直接接合しており、
前記背面シェル構造体は、下部構造体と一体に形成されており、
前記下部構造体は、底部と上部に挟まれた中空領域を備えた中空のモノコック構造を有し、航空機の一対の座席トラックに固定される、
背面シェル構造体。
【請求項2】
前記前面部材と前記後面部材は複合部材で形成される請求項1に記載の背面シェル構造体。
【請求項3】
前記空間補強部材はハニカム構造体である請求項1に記載の背面シェル構造体。
【請求項4】
前記補強領域が前記補強領域以外の領域と接する近傍においては、前記補強領域を構成する前記前面部材と前記後面部材との間の距離が、前記補強領域以外の領域に向けて漸減する請求項1から3のいずれか一項に記載の背面シェル構造体。
【請求項5】
前記底部は空間補強部材を含んでいる請求項1から4のいずれか一項に記載の背面シェル構造体。
【請求項6】
前記後面部材には、後部座席用のディスプレイを配設するための凹部が形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の背面シェル構造体。
【請求項7】
座席と、
請求項1に記載の背面シェル構造体と、
移動体に接続固定している下部構造体
からなる座席ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面シェル構造体及びこれを用いた座席ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の航空機設計においては、航空機構造の軽量化や座席ユニットをはじめとする機内設備の設置の簡便化が求められている。航空機構造の軽量化が達成できれば、その分、航空機が運べる乗客数を増加させることもでき、航空機の潜在的収益性を増大させることができる。
【0003】
また、機内設備の設置の簡便化が図れれば、航空機製造に要する期間を短縮することができ、併せて製造コストを低減させることができる。
【0004】
特許文献1には、一体型の複合構造フレームと、この複合構造フレームに連結され、各乗客に一つずつ設けられた快適性フレームアセンブリとからなる座席アセンブリが記載されている。
【0005】
この複合構造フレームは、航空機の機体と接続する支持脚と、支持脚と連結している背中支持要素と、背中支持要素と連結している上部背中側クロス梁及び下部背中側クロス梁が一体形成されている。
【0006】
上部背中側クロス梁と下部背中側クロス梁との間には、後ろの乗客が使用するためのトレーテーブルを収容するための開口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2010-527835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、支持脚を有しない座席の下部構造体に取り付け可能な背中部を覆う形態の背面シェル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の背面シェル構造体及び座席ユニットの一つは、前面部材と、後面部材からなる、座席の背中部を覆う背面シェル構造体であって、前記背面シェル構造体の一部には、前記前面部材と前記後面部材との間に空間補強部材が設けられた領域(以下、「補強領域」という。)が設けられており、前記補強領域以外であって、少なくとも前記座席に着席する乗客の頭部に相当する領域において、前記前面部材と前記後面部材とが直接接合しており、前記背面シェル構造体は、下部構造体と一体に形成されており、前記下部構造体は、底部と上部に挟まれた中空領域を備えた中空のモノコック構造を有し、航空機の一対の座席トラックに固定される、
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、航空機の機体長手方向からの強い衝撃に対する強度を高める背面シェル構造体が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一般的な座席ユニットの前方斜視図。
図2】第1の実施形態に係る背面シェル構造体を含むシェル構造の前方斜視図。
図3】座席の前方斜視図。
図4】座席ユニットの前方斜視図。
図5】座席土台の後方斜視図。
図6】第1の実施形態に係るシェル構造の断面図。
図7】第1の実施形態に係るシェル構造の断面図(変形例1)。
図8】第1の実施形態に係るシェル構造の断面図(変形例2)。
図9】第1の実施形態に係るシェル構造の先細り部分の拡大断面図。
図10】第1の実施形態に係るシェル構造の先細り部分の拡大断面図(変形例3)。
図11】第2の実施形態に係るシェル構造の断面図。
図12】第3の実施形態に係るシェル構造の後方斜視図。
図13】第4の実施形態に係る座席ユニットの後方斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、一般的な座席ユニットについて説明する。図1は、航空機の客室に配設されるビジネスクラスやファーストクラス向けの座席ユニットを前方から見た斜視図である。座席ユニット1は、座席10をシェル20で囲む構造を有しており、この図には、さらに、乗客が使用する装備(読書灯360など)も描かれている。
【0013】
座席10は、下部シート110、上部シート120、ヘッドレスト130、及び、レッグレスト140を備える。下部シート110は着座部とも呼ばれ、上部シート120は背もたれ部とも呼ばれる。座席にはシートベルト150が取り付けられている。
【0014】
シェル20は、座席10の右側の右側シェル210、座席10の背面の背面側シェル220、及び、座席10の左側の左側シェル230を備える。
【0015】
座席ユニット1は、さらに様々な装備を有している。座席10の右側には、右側肘掛け部310が装備されている。座席10の左側には、左側肘掛け部320が装備されている。左側肘掛け部320には、開閉式の収納ボックス330が設けられている。オットマン340は、左側肘掛け部320の前方に配置されている。
【0016】
また、ヘッドレスト130と左側シェル230との間には、電装品のジャック350及び読書灯360が配設されている。
【0017】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る背面シェル構造体を含むシェル構造を斜め前方から見た斜視図である。
【0018】
(全体構成)
図2において、シェル20は、座席ユニットの下部構造体である座席土台240及びその上に存在する上部シェルから構成されている。また、上部シェルは、右側シェル210、背面全体を覆う背面側シェル220、及び、左側シェル230から構成されている。
【0019】
座席ユニットの下部構造体である座席土台240は、一体に形成された部材を用いて、中空のボックス型に形成されている。ここで、一体に形成された部材とは、具体的には、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトンなどの熱可塑性樹脂や、適切に可燃性を制御できる熱硬化性樹脂や、カーボングラファイトファイバー、ガラスファイバー、アラミドファイバーなどの複合材料から形成される部材であって、発泡体、ハニカム等の芯材を含むことができる複合部材である。また、上部シェルも、同様の複合部材で形成される。
【0020】
このような一体に形成された複合部材は、ボルトやナットなどの接続部品を用いることなく強固な立体形状を形成することができる。また、上記のような複合材料によって形成されていることから、既存の金属の構造部材に比べ、防錆処理をする箇所を大幅に低減することができる。
【0021】
また、中空のボックス構造は、筒型の構造形状を意味し、いわゆるモノコック構造となっている。このため、座席土台240は、座席、乗客、及び、乗客が使用する装備(読書灯360など)の荷重を支えることができる。
【0022】
座席土台240の中空領域242は、座席の前方から見た形が長方形であるが、台形等の四辺形であってもよい。また、座席土台240つまり座席下部構造体を構成する部材の厚さはおよそ10mm~15mmである。
【0023】
このような座席土台240では、1つの座席の足元を支持する柱状の支持体つまり脚部といった概念がないため、機体側の座席トラックの位置によって位置の制約を受けることがない。また、座席の上部構造の形状に関わらず様々な大きさ、形状の座席に対して共通の構造をとることができる。さらに、電気機器の取付け、これに伴う配線の配置についても、脚部の位置との制約を受けることがないため、設計の自由度の拡大や共通化を図ることができる。
【0024】
また、中空領域242には、仕切り部材250を配設することもできる。座席土台240は、中空のモノコック構造であるため、仕切り部材250(仕切り板と呼ぶこともある)は、乗客等の荷重を支える必要が無く、中空領域242内で自在に移動できる。
【0025】
(背面シェル構造体の構成)
図2において、座席の背中部を覆う背面シェル構造体である背面側シェル220は、その下方において、シェルを構成する前面部材と後面部材との間に、空間補強部材が設けられている。この空間補強部材が設けられた領域を補強領域という。以下では、空間補強部材の一例として、ハニカム構造体を説明する。そして、背面側シェル220の上方においては、前面部材と後面部材との間にハニカム構造体を有しておらず、前面部材と後面部材とが直接接合する構造となっている。つまり、背面側シェル220の上方は補強領域以外の領域になる。前面部材及び後面部材の材料は例えば樹脂と繊維による複合繊維である。また、ハニカム構造体の材料は例えば不燃性の紙とフェーノル樹脂による複合繊維である。
【0026】
図2においては、背面側シェル220の中央部に構造分岐線226を点線が描かれているが、これは、シェルを構成する前面部材と後面部材との間にハニカム構造体を有している下方の領域(すなわち、補強領域)とハニカム構造体を有していない上方の領域(すなわち、補強領域以外の領域)の境界を便宜的に示したものである。
【0027】
また、図2においては、右側シェル210と背面側シェル220の間に、便宜的にシェル境界線215を描いている。右側シェル210についても、背面側シェル220と同様に、構造分岐線226よりも下方の領域において、シェルを構成する前面部材と後面部材との間にハニカム構造体を有してもよいし、右側シェル210においては、ハニカム構造体を有する領域を構造分岐線226と無関係に適宜に変更しても良い。必要がなければ、右側シェル210においては、ハニカム構造体を有しなくとも良い。ハニカム構造体を有しない領域においては、シェルを構成する前面部材と後面部材とが直接接合していることが望ましい。
【0028】
左側シェル230も、上述した右側シェル210と同様の構成となっている。なお、図2では、左側シェル230の前方は、座席土台240の前方まで届いていないが、右側シェル210と同様、座席土台240の前方まで配置されていてもよい。
【0029】
(座席の構成)
図3は、第1の実施形態に用いる座席の例を斜め前方から見た斜視図である。座席10は、乗客が着座する下部シート110、背中をもたせ掛ける上部シート120、背もたれの上部の枕状の部分であり、頭を乗せて首などを休ませるヘッドレスト130、及び、脚を乗せてふくらはぎ等の疲れを軽減させるレッグレスト140を備える。
【0030】
座席リクライニング機構180は、上部シート120を後方に傾けさせる機構である。フット・リクライニング機構190は、レッグレスト140を下部シート110の面近くまで持ち上げるように回転させる機構である。
【0031】
(座席ユニットの構成)
図4は、第1の実施形態に係る背面シェル構造体を採用した座席ユニットを斜め前方から見た斜視図である。この座席ユニット1は、図2を用いて説明したシェル20に、図3を用いて説明した座席10を乗せた形態である。また、座席10と右側シェル210との間には、コンソールと後席のレッグスペースを兼ねた収納ボックス330を配設している。
【0032】
図5は、座席ユニットの下部構造体(座席土台)を斜め後方から見た斜視図である。シェル20は、後述する座席トラックを説明する便宜上、背面側シェル220を省略し、右側シェル210及び左側シェル230のみを図示している。
【0033】
第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284は一対の座席トラックを構成し、航空機の機体の床面において長手方向に延在している。航空機では、座席ユニット1の底部(図5では座席土台240の底部)が一対の座席トラックに固定されることによって、座席ユニット1が航空機の機体に取り付けられている。そして、所定の動荷重試験に合格することが、乗客の安全を確保する上で必要である。図5では、座席土台240は、航空機の機体の長手方向に対し、少し左側に向いて配設されている。このため、座席土台240は第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284に正対しておらず、少し左側に向いている。
【0034】
座席土台240の底部には、3個の取付けブロックが挿入されている(取付けブロックは点線で表示)。座席土台240は、3個の取付けブロックを介して、航空機の機体へ取り付けるための3個の取付け具に固定されている。座席土台240はモノコック構造であるため、取付けブロックが座席土台240の底部に設けられ、取付け具と座席土台240との接続を補強するために用いている。取付けブロックの材質は金属製などが望ましいが、補強用のブロックであればその材料は限定されない。
【0035】
図5では、座席土台240を3箇所で航空機の機体に取付けるため、第1の取付けブロック262が座席土台240の底部の前方に配設され、その後方に第2の取付けブロック264が配設されている。第3の取付けブロック266は、右側に配設されている。
【0036】
そして、各取付けブロックの下には、座席トラックへの取付け具がそれぞれ配設されている(取付け具は実線で表示)。すなわち、第1の取付け具272は、第1の取付けブロック262の下に配設され、第1の座席トラック282に取付けられる。第2の取付け具274は、第2の取付けブロック264の下に配設され、第1の座席トラック282であって、第1の取付け具272から間隔を隔てた点に取付けられる。
【0037】
一方、第3の取付け具276は、第3の取付けブロック266の下に配設され、第2の座席トラック284であって、第1の取付け具272と第2の取付け具274との間に対応する部分に取り付けられる。望ましくは、第1の取付け具272と第2の取付け具274との間に対応する部分の略中央に取り付けられる。
【0038】
このように3つの取付け具によって、座席土台240を一対の座席トラックに固定することによって、座席土台240を座席トラックに正対させる向きに取り付ける必要が必ずしも無くなる。これによって、機体の誤差に対して座席の取付け自由度及び、座席の認証時に求められる床面変形への追随性を格段に向上することができる。
【0039】
(背面シェル構造体の断面構成)
図6は、図2のA-A線における第1の実施形態に係るシェル構造の断面図である。座席土台240は、中空領域242の上下を覆う底部241及び上部243で構成さており、底部241及び上部243はハニカム構造体であることが示されている。
【0040】
また、背面シェル構造体である背面側シェル220については、構造分岐線226の下側の下方部221ではハニカム構造体を有しているが、構造分岐線226の上側の上方部227ではハニカム構造体を有していない構造を示している。図6の例においては、構造分岐線226は背面側シェル220のほぼ中央であり、座席に座った乗客のみぞおち辺りに相当する。そして、背面側シェル220の横幅全体に渡ってこのような断面構造を有している。
【0041】
図7は、図6で示した第1の実施形態の変形例1の断面図である。図6の場合と異なる点は、構造分岐線226bの位置が高く、背面側シェル220bの上から約4分の1である。このため、下方部221bは乗客の背中全体、腰から肩までを支え、上方部227bは乗客の頭部を支えている。
【0042】
図8は、図6で示した第1の実施形態の変形例2の断面図である。図6と異なる点は、構造分岐線226aの位置が低く、背面側シェル220aの下から約4分の1である。このため、下方部221aは乗客の腰を支え、上方部227aは乗客の胸から頭部までを支えている。
【0043】
つまり、背面シェル構造体において、ハニカム構造体を有する領域は、シェルに求められる強度や製造に要するコスト等を踏まえて、適宜に選択することが可能である。
【0044】
図9は、第1の実施形態に係る背面シェル構造体のシェルを構成する前面部材と後面部材とが近接する付近の領域(以下、「先細り部分」という。)の拡大断面図であり、図6の構造分岐線226周辺を拡大したものである。上述したように、背面側シェル220の下方は、シェルを構成する前面部材222及び後面部材223がハニカム構造体224を挟んでいる。前面部材222は、構造分岐線226に近づくにつれ、後面部材223との間隔が狭くなり、先細りの状態になる。すなわち、補強領域を構成する前面部材222と後面部材223との間の距離が、補強領域以外の領域に向けて漸減している。
【0045】
そして、構造分岐線226よりも上方では、前面部材222及び後面部材223はハニカム構造体224を介さずに直接接合している。そして、図9に示す例においては、ハニカム構造体224は、先細り部分まで充填されている。
【0046】
図10は、図9で示した先細り部分の変形例拡大断面図である。図9と異なる点は、ハニカム構造体224は、先細り部分まで充填されているのではなく、先細り部分にはスポンジ部材225が充填されていることである。つまり、前面部材と後面部材との間にハニカム構造体が設けられた領域と、前面部材と前記後面部材とが直接接合している領域の間には、前面部材と後面部材との間にスポンジ部材で充填された領域を有している。
【0047】
このように、先細り部分にスポンジ部材225を充填することにより、背面側シェル220の製造を容易化することが可能になる。
【0048】
(作用効果)
第1の実施形態によれば、シェルを構成する前面部材と後面部材との間にハニカム構造体を有する部分を背面シェル構造体の下方に設けることにより、上部シェル全体において、下方においては強い衝撃を吸収し、上方においては衝撃による弾性変位を素早く元の状態に戻すことができる。これによって、急ブレーキなど航空機の機体長手方向からの強い衝撃に対する強度を高めることができる。
【0049】
特に、図5に例示されるように、座席ユニットの正面が座席トラックに対して斜めに向いている場合であっても、背面シェル構造体の下方は座席トラックの方向、すなわち、背面シェル構造体の斜め方向からの衝撃を吸収し、上方は斜めからの衝撃による弾性変位を素早く元の状態に戻すことができる。
【0050】
加えて、右側シェル210及び左側シェル230も、背面側シェル220の上方及び下方と同様の構造を有し、背面シェル構造体が背面側シェル220、右側シェル210及び左側シェル230と一体として構成されることによって、座席ユニットが座席トラックに対してより斜めに向いている場合であっても、衝撃に対する強度を高めることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、図11を用いて第2の実施形態を説明する。図11は、第2の実施形態に係るシェル構造の断面図である。後部座席用のディスプレイ370を背面側シェル220cの上方部227cに配設した以外の点は第1の実施形態と同じである。
【0052】
(構成)
第2の実施形態においては、背面側シェル220cの上方部の一部の領域227cにおいて、背面側シェル220cを前方に膨らませ、後方に凹部を設けている。そして、この凹部に、ディスプレイ370を配設している。
【0053】
(作用効果)
第2の実施形態によれば、ディスプレイ370の設置スペースを確保できることよって、機内設備の設置の簡便化が図れる。
【0054】
加えて、このようにディスプレイ370を前方座席の背面シェル構造体に取り付けることにより、後方座席の乗客は、背面シェル構造はリクライニング操作によって動くことがないため、ディスプレイを固定された位置で見ることができる。つまり、後方座席の乗客は、前方座席の状態が平常状態であるか、リクライニング状態であるかを気づかないのである。すなわち、前方座席の乗客にとって、背面側シェルが自分の所作を覆い隠しているため、自分の所作を後方の乗客に気づかれないという効果を有する。
【0055】
さらに、第1の実施形態と同様、第2の実施形態の場合も、シェルを構成する前面部材と後面部材との間にハニカム構造体を有する部分を、背面シェル構造体の下方に設けることにより、背面シェル構造体にディスプレイを載置しても十分な強度を保つことができる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、図12を用いて第3の実施形態を説明する。図12は、第1の実施形態で説明した、座席土台240と上部シェルを一体に成型したシェル20を示している。座席土台240と上部シェルを一体に成型した以外の点は第1の実施形態と同じである。
【0057】
(構成)
第3の実施形態においては、座席土台240及び上部シェルが共に一体成型され、一体でモノコック構造を実現している。一体成型される部材に用いる複合材料などについても、第1の実施形態と同じである。
【0058】
このような第3の実施形態の場合も、第1の実施形態の場合のいくつかの変形例や第2の実施形態で示した変形が可能であることはいうまでもない。
【0059】
(作用効果)
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに、座席土台と上部シェルとが一体となっていることから、座席全体の強度を向上させ、生産時の組立性も向上させることができる。また、取付け作業を簡略化できるという効果を有する。
【0060】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態に係る座席ユニットを斜め後方から見た斜視図である。座席ユニット400は、航空機の客室に配設されるエコノミークラス向けである。
【0061】
(構成)
座席ユニット400は、座席410、座席土台500及び背面側シェル600から構成される。座席410は、上部シート420、下部シート430及び、シートベルト440から構成される。座席土台500は、第1の実施形態と同様、一体成型された中空のボックス型の座席下部構造体である。
【0062】
座席ユニット400は、4人掛けの座席410と、1つの座席土台500で構成される。すなわち、中空領域510は1つである。
【0063】
背面側シェル600は、4人掛けの座席410の背部となる背中部全体を覆っている。背面側シェル600の断面構造や材料などは第1の実施形態と同様である。
【0064】
また、第4の実施形態の場合も、第1の実施形態の場合のいくつかの変形例や第2の実施形態で示した変形が可能であることはいうまでもない。また、第3の実施形態の場合と同様に、背面側シェル600と座席土台500を一体成型してもよい。
【0065】
(作用効果)
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに、乗客毎に背面のスペースを区切る必要がなく、機内設備の設置の簡便化が図れるという効果を有する。
【0066】
なお、本発明は上記した航空機の座席ユニットに適用した例で説明したが、本発明の対象は航空機に限定されるものではなく、航空機以外の様々な移動体の座席に適用されうるものであり、様々な変形例が含まれる。例えば、列車、長距離バス、および客船、フェリー、およびホーバー・クラフトを含む水上輸送機関のような他の形式の乗物や移動体にも適切に使用できる。
【0067】
また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、400 座席ユニット
10、410 座席
20 シェル
110、430 下部シート
120、420 上部シート
130 ヘッドレスト
140 レッグレスト
150、440 シートベルト
160 上部シート用支持体
170 補強部材
180 座席リクライニング機構
190 フット・リクライニング機構
210 右側シェル
215 シェル境界線
220、600 背面側シェル
221 下方部
222 前面部材
223 後面部材
224、248 ハニカム構造体
225 スポンジ部材
226 構造分岐線
227 上方部
230 左側シェル
240、500 座席土台
241 底部
242、510 中空領域
243 上部
250 仕切り部材
262 第1の取付けブロック
264 第2の取付けブロック
266 第3の取付けブロック
272 第1の取付け具
274 第2の取付け具
276 第3の取付け具
282 第1の座席トラック
284 第2の座席トラック
310 右側肘掛け部
320 左側肘掛け部
330 収納ボックス
340 オットマン
350 ジャック
360 読書灯
370 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13