(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 1/26 20060101AFI20220106BHJP
B41J 13/00 20060101ALI20220106BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20220106BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B65H1/26 H
B41J13/00
B41J3/36
B41J29/13
(21)【出願番号】P 2017090206
(22)【出願日】2017-04-28
【審査請求日】2020-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】指田 実
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】切手 直人
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-223689(JP,A)
【文献】特開2016-196108(JP,A)
【文献】実開昭52-101446(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B41J 13/00
B41J 3/36
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドを有する印刷機構部と、
印刷用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙収納部から前記印刷用紙を前記印刷機構部に搬送する搬送手段と、
前記用紙収納部に開閉可能に設けられた蓋部と、
前記蓋部に設けられ、前記用紙収納部内の前記印刷用紙を外部から目視可能とする窓部と、
を備え、
前記蓋部の前記窓部内の位置には、前記用紙収納部に残されている未使用の前記印刷用紙の残量を表示するインジケータが配置され
、
前記インジケータは、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙の重なりの厚みに応じて移動する指標部材を有し、
前記指標部材は、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙が所定量よりも多い場合には前記窓部の外部から目視可能でない位置にあり、前記所定量よりも少なくなった場合にのみ、前記窓部の外部から目視可能な位置に移動することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
印刷ヘッドを有する印刷機構部と、
印刷用紙を収納する用紙収納部と、
前記用紙収納部から前記印刷用紙を前記印刷機構部に搬送する搬送手段と、
前記用紙収納部に開閉可能に設けられた蓋部と、
前記蓋部に設けられ、前記用紙収納部を外部から目視可能とする窓部と、
前記蓋部の前記窓部内の位置に配置され、前記用紙収納部に残されている未使用の前記印刷用紙の残量を表示するインジケータと、を備え、
前記インジケータは、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙の重なりの厚みに応じて移動する指標部材であって、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙が少なくなった場合に、前記窓部の外部から目視可能な位置に移動する指標部材を有し、
前記インジケータは、ヒンジにより互いに回動可能に接続された2本のアーム部と、前記アーム部を互いに閉じる方向に付勢するバネとを有し、前記ヒンジの部分が前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙の上面により押されることにより、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙の重なりの厚みに応じて前記指標部材を移動させることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
前記プリンタの動作状態を示すLEDと、該LEDの光を前記窓部に導いて前記インジケータを前記窓部側から照明するための導光部材とをさらに備えることを特徴とする請求項1
または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記印刷ヘッドがサーマルヘッドであることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙の収納部を有するプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、感熱紙を搬送させながらサーマルヘッドを圧接させることにより印字を行うサーマルプリンタはよく知られている。また、利便性を向上させるためにこのようなサーマルプリンタを持ち運び可能に小型化した、携帯型のサーマルプリンタも従来より開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プリンタ装置の用紙の情報やプリンタの作動状態を観察できるようにしたプリンタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の印刷装置においては、用紙収容部にセットされた用紙の種類を判別することはできるが、収容された用紙の残量が分からなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるプリンタは、印刷ヘッドを有する印刷機構部と、印刷用紙を収納する用紙収納部と、前記用紙収納部から前記印刷用紙を前記印刷機構部に搬送する搬送手段と、前記用紙収納部に開閉可能に設けられた蓋部と、前記蓋部に設けられ、前記用紙収納部内の前記印刷用紙を外部から目視可能とする窓部と、を備え、前記蓋部の前記窓部内の位置には、前記用紙収納部に残されている未使用の前記印刷用紙の残量を表示するインジケータが配置され、前記インジケータは、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙の重なりの厚みに応じて移動する指標部材を有し、前記指標部材は、前記用紙収納部に残されている前記印刷用紙が所定量よりも多い場合には前記窓部の外部から目視可能でない位置にあり、前記所定量よりも少なくなった場合にのみ、前記窓部の外部から目視可能な位置に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、用紙の残量が容易に確認できるプリンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態のモバイルサーマルプリンタの外観斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態のモバイルサーマルプリンタの外観斜視図。
【
図3】LEDによるモバイルサーマルプリンタの状態を表示する機能を説明する図。
【
図4】LEDによるモバイルサーマルプリンタの状態を表示する機能を説明する図。
【
図5】LEDによるモバイルサーマルプリンタの状態を表示する機能を説明する図。
【
図6】一実施形態のモバイルサーマルプリンタの側面図。
【
図7】モバイルサーマルプリンタの内部構造を示す側断面図。
【
図8】本体部に対して蓋部を開いた状態を示した斜視図。
【
図11】紙検知センサの出力信号と用紙の状態の組み合わせをまとめた図。
【
図12】小窓内に配置されている、未使用の感熱紙の残量を表示する残量インジケータの構造を示す部分拡大斜視図。
【
図13】
図12を矢印F方向から見て残量インジケータの構造を模式的に示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のプリンタの一実施形態であるモバイルサーマルプリンタについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2は、本実施形態のモバイルサーマルプリンタの外観斜視図である。
図1は、プリンタから排出された印刷済みの用紙を受ける着脱可能な排紙トレイを外した状態を示している。
図2は、排紙トレイを装着した状態を示している。
【0011】
図1において、モバイルサーマルプリンタ2は、アルミニウムなどの金属あるいは合成樹脂等からなる薄型の直方体状の筐体である本体部4と、本体部4に対してその端部付近に配置されたヒンジ部6により矢印Aの方向に開閉可能に支持された、やはり金属あるいは合成樹脂等からなる蓋部8とを有する。本体部4は、内部に例えばA6サイズなどの印刷用の感熱紙(印刷用紙)を複数枚収容可能な用紙収容部4aと、後述する感熱紙の搬送機構やサーマルヘッド(印刷ヘッド)などを内蔵する印刷機構部4bとを備える。用紙収納部4aには、蓋部8を矢印A方向に開いて複数枚の感熱紙(例えば50枚程度)を重ねて挿入することが可能である。用紙収納部4aに重ねて配置された複数枚の感熱紙は、重なりの一番下から1枚ずつ後述する給紙ローラ56により印刷機構部4bに供給される。供給された感熱紙は、印刷機構部4bにおいてサーマルヘッドが圧接されながらプラテンローラにより搬送されることにより印刷され、蓋部8の先端部分と印刷機構部4bとの間の隙間である排紙口4cからモバイルサーマルプリンタ2の外部、具体的には蓋部8の上面上に排出される。
【0012】
モバイルサーマルプリンタ2の蓋部8の上には、
図2に示すように、プリンタから排出された印刷済みの用紙を受ける排紙トレイ12を取り外し可能に装着することができる。排紙トレイ12は、ヒンジとして機能する一対の弾性を有するアーム部12aを有し、一対のアーム部12aで本体部4を挟み込み、アーム部12aの内側に形成された突起12bを本体部4の後端部側の側面に形成された穴に嵌め込むことにより、本体部4に装着される。排紙トレイ12は、このヒンジにより本体部4に対して矢印Bの方向に開閉可能である。また、排紙トレイ12は、蓋部8とともに一体的に開閉することができ、排紙トレイ12を取り外すことなく、蓋部8を開けて感熱紙を用紙収納部4aに補給することができる。なお、排紙トレイ12の回動中心に近い後端部16dは、排紙トレイ12を開いたとときにプリンタの本体部4の後端部に突き当たるようになっている。
図7に示す他の実施形態の排紙トレイ12では、規制壁14bと後端部16dが近接している。この場合、排紙トレイ12は突起12bをヒンジとして回転し、本体部4の背面側(
図2における紙面奥側)に回り込むが、
図2に示すように後端部16dを規制壁14bから離れた位置に設けることで、排紙トレイ12がプリンタの本体部4の後端部に突き当たることで所定の角度以上開かないように規制される。これにより、ユーザが排紙トレイ12と本体部4の間に指などを挟むことが防止される。
【0013】
また、排紙トレイ12は、蓋部8の上に載置されて印刷済みの用紙を受ける下側トレイ(下側トレイ部分)14と下側トレイ14上に排出された用紙を上から覆う上側トレイ16とを有する。なお、上側トレイ16に形成された弾性を有する爪16aが本体部4に引っかかることにより、排紙トレイ12が本体部4上に接触し、矢印B方向に動かないように保持される。
【0014】
また、上側トレイ16には、排出された印刷済みの用紙をユーザが指で取り出しやすくするように、U字状の凹部16bが形成されている。一方、下側トレイ14には、上側トレイ16の凹部16bに対応する位置(排紙方向前方側)に開口14aが形成されている。ユーザが指で下側トレイ14上に載置されている印刷済みの用紙のこの開口14aに対応する位置を上から押すことにより、用紙の図中上側の端部が下側トレイ14から浮き上がり、ユーザは容易に印刷済みの用紙を排紙トレイ12から取り出すことができる。なお、この時浮き上がった用紙の端部をつまんでユーザが用紙を取り出すことが可能なように、上側トレイ16には、用紙の通り道となる逃げ部16Cが形成されている。また、下側トレイ14の先端部には、排出された用紙の先端部の位置を規制するための規制壁(規制部)14bが形成されている。この規制壁14bは、排出された印刷済みの用紙の後端部が、後述するプラテンローラ58とサーマルヘッド60の間に挟まったままとなるように、排出された用紙の先端位置を排出の途中位置で規制する。このように、用紙の後端部をプラテンローラ58とサーマルヘッド60の間に挟まったままとすることにより、印刷済みの用紙がモバイルサーマルプリンタ2から不用意に落下してしまうことを防ぐことができる。この規制壁14bは、用紙の搬送方向における両端部のみに設けられており、排出された用紙の先端における中央部は開放されている。そのため、ユーザは、用紙をつまんで取り出すことができるが、凹部16bがあることで、用紙を取り出しやすくすることができる。加えて、開口14aがあることによって、より取り出しやすくすることができる。
【0015】
蓋部8のヒンジ6に近い位置の中央部には、透明なプラスチック板などが嵌め込まれた小窓(窓部)18が形成されている。ユーザはこの小窓18から用紙収納部4aの内部を覗くことができ(目視可能)、未使用の感熱紙の残枚数を目視で確認することができる。また、この小窓18内(窓部内)には、用紙収納部4a内に収納されている未使用の感熱紙の残量を表示する残量インジケータが内蔵されている。具体的には、用紙収納部4aに十分な枚数の感熱紙がある場合には、小窓18からは内部の黄色の指標部材が見えず、用紙の枚数が少なくなるにつれて指標部材が次第に小窓18内に見えるようになる。そのため、ユーザは小窓18を見ることにより、未使用の感熱紙の残量を直接見て確認できるとともに、残量インジケータの指標部材を見ることでも確認することができる。残量インジケータの詳細な構成については後述する。
【0016】
また、本体部4の小窓18に近い位置には、3個のLED20a,20b,20cが配置されている。これらのLEDは、モバイルサーマルプリンタ2の動作状態を表示する機能を有する。
図3乃至
図5は、これらのLEDによるモバイルサーマルプリンタ2の状態を表示する機能を説明する図である。
【0017】
まず、
図3において、LED20aは、モバイルサーマルプリンタ2の電源の状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20aが青色に点灯している場合は、プリンタがスリープ状態であるかプリント中であることを示す。LED20aが青色に点滅している場合は、スリープ状態で且つバッテリー残量が少ない状態を示す。さらに、LED20aが消灯している場合は、スタンバイ状態であることを示す。
【0018】
図4において、LED20bは、モバイルサーマルプリンタ2の動作モードの状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20bが青色に点灯している場合は、Bluetooth(登録商標)による受信待機状態を示す。LED20bが青色に点滅している場合は、Bluetoothによる通信中の状態を示す。また、LED20bが緑色に点灯している場合は、USBによる受信待機状態を示す。LED20bが緑色に点滅している場合は、USBによる通信中の状態を示す。LED20bが赤色に点滅している場合は、エラー状態を示す。
【0019】
図5において、LED20cは、モバイルサーマルプリンタ2の充電状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20cが消灯している場合は、充電停止中であることを示す。LED20cが橙色に点滅している場合は、充電のエラー状態を示す。LED20cが緑色に点灯している場合は、充電完了状態を示す。さらに、LED20cが橙色に点灯している場合は充電中を示す。
【0020】
なお、これらのLED20a,20b,20cの導光部材は、小窓18側に露出されており、この露出された部分から漏れた光が小窓18を照明する。そのため、ユーザは、暗い場所でも小窓18内の感熱紙の残量や残量表示のためのインジケータを見ることができる。
【0021】
次に、
図6は、モバイルサーマルプリンタ2の側面図である。
図6において、モバイルサーマルプリンタ2の本体部4の側面には、電源ボタン22、USB端子24、充電端子26、蓋部8の開閉レバー28が配置されている。ユーザは、開閉レバー28を矢印Cの方向に操作することにより、片手で簡単に蓋部8を本体部4から開くことができる。開閉レバー28が矢印Cの方向に操作されると、蓋部8のロックが解除されて蓋部8が
図8に示す用紙押さえバネ9により本体部4から浮き上がる。なお、本体部4の側面にはディンプルが多数形成されており、ユーザが手で持った時に滑りにくいように配慮されている。
【0022】
次に、
図7は、モバイルサーマルプリンタ2の内部構造を示す側断面図である。
図7(a)は排紙トレイ12を取り外した状態を示し、
図7(b)は排紙トレイ12を装着した状態を示している。なお、
図7における排紙トレイ12は、
図2に示す排紙トレイ12に対して、後端部16dを規制壁14bに近接させて、規制壁14bが平板状に形成された他の実施形態を示している。
【0023】
図7(a)において、すでに説明したように、本体部4の用紙収納部4aは複数枚の感熱紙Sを重ねて収納できるように構成されている。ユーザは、蓋部8を矢印Aの方向に開くことにより用紙収納部4aに例えばA6などのサイズの感熱紙Sを例えば50枚程度収納することができる。用紙収納部4aの下部には、電源となる充電式のバッテリー52や、電源回路や制御回路などを搭載した回路基板54などが配置されている。用紙収納部4aの図中右側の下部には、感熱紙Sを給送するための給紙ローラ56が配置され、感熱紙Sは、給紙ローラ56の回転と摩擦力により重なりの下から1枚ずつ分離され給送される。
【0024】
給紙ローラ56の用紙搬送方向下流側には、プラテンローラ58が配置され、プラテンローラ58に給送された感熱紙Sはプラテンローラ58の周囲に配置されるプラテンガイド59により搬送方向が約180度反転される。さらにプラテンローラ58に、サーマルヘッド60が圧接されるように配置され、サーマルヘッド60がプラテンローラ58との間で感熱紙Sを挟んだ状態で加熱することにより印刷が行われる。本実施形態では、用紙収納部4aに載置された感熱紙の下側面に印刷が行われる。印刷された感熱紙Sは、すでに説明したように、蓋部8と印刷機構部4bの間に形成された排紙口4cから排出される。
【0025】
このように構成されるモバイルサーマルプリンタ2においては、用紙収納部4aに重ねて載置された感熱紙Sが、1番下の用紙から1枚ずつ給紙ローラ56の摩擦により矢印Dで示す給送方向に給送される。給送された感熱紙Sは、さらにプラテンローラ58に供給され、矢印Eで示すようにプラテンローラ58とプラテンガイド59とにより搬送方向を約180度反転される。反転された感熱紙Sには、サーマルヘッド60が圧接され加熱されて印刷が行われる。印刷された感熱紙Sは、プラテンローラ58によりさらに搬送されて排紙口4cからサーマルプリンタの外部に排出される。
【0026】
この時、モバイルサーマルプリンタ2に、
図7(b)に示すように排紙トレイ12が装着されている場合には、排出された印刷済みの感熱紙Sは、排紙トレイ12に収納される。そして、排出された印刷済みの感熱紙Sの先端部Saは下側トレイ14の規制壁14bに突き当たり、印刷済みの感熱紙Sの後端部Sbがプラテンローラ58とサーマルヘッド60の間に挟まれた状態で停止する。これにより、印刷済みの用紙がモバイルサーマルプリンタ2から不用意に落下してしまうことを防ぐことができる。また、
図2でも説明したように、下側トレイ14には開口14aが形成されており、
図7Bに示すようにユーザが指Fでこの開口14aの上に重なった印刷済みの用紙の部分を下に押すことにより、用紙の先端部Saが下側トレイ14から浮き上がり、用紙が取り出しやすくなる。
【0027】
なお、
図7に示すように、サーマルヘッド60とプラテンローラ58との間から抜けた用紙を本体部4の背面側に付勢する付勢部材61を設けている。付勢部材61はシート材で形成されており、これによって用紙の後端がプラテンローラ58側に付勢され、後続の用紙の先端がサーマルヘッド60とプラテンローラ58との間から抜けたのち、先行する用紙の後端の上側に乗りやすくなり、先行する用紙の後端がカールしていた場合であっても、後続の用紙の先端が先行する用紙の後端に衝突することによって起こるジャムの発生が低減される。
【0028】
次に、
図8は、本体部4に対して蓋部8を開いた状態を示した斜視図である。
【0029】
本体部4の用紙収納部4aは複数枚の感熱紙Sを重ねて収納できるように構成され、用紙の載置部の幅方向両端には、感熱紙Sの種類、及び感熱紙Sの有無を識別するための3つの紙検知センサ42a、42b、42cが配置されている。また、用紙収納部の図中左側の位置には、持ち上げレバー46が配置されている。この持ち上げレバー46は、その操作部46aを下方に押し下げることにより、シーソーの動きで用紙持ち上げ部46bが持ち上がり、感熱紙Sの先端部を持ち上げる。これにより、プリンタから印刷用紙を取り出す必要が生じた場合に、感熱紙Sを取り出しやすくすることができる。
【0030】
紙検知センサ42a、42b、42cは、光を発光する発光部と感熱紙Sで反射された光を受光する受光部とを有する反射型のセンサである。そして、紙検知センサ42a、42b、42cは、受光した反射光の強度が所定の閾値以上か否かにより、「1」あるいは「0」の信号を出力する。より具体的には、
図10を用いて後述するように感熱紙Sにはその種類によって異なる位置に黒い四角いマークm1~m4が印刷されている。紙検知センサ42a、42b、42cが、この黒いマークm1~m4に対向している場合は、反射光が所定の閾値より少なくなり、紙検知センサは「0」の信号を出力する。また、紙検知センサ42a、42b、42cが、この黒いマークが印刷されていない感熱紙の通常の白い面に対向している場合は、反射光が所定の閾値以上となり、紙検知センサは「1」の信号を出力する。紙検知の詳細については後述する。
【0031】
また、蓋部8は、
図8に示すように、薄型でも強度が保てるようにハニカム構造8aを有する。蓋部8は、内蓋8bと外蓋8cから構成されており、ハニカム構造8aは内蓋8bにおける外蓋8c側(蓋部8を閉じた際の用紙収納部4aの反対側)に設けられており、
図8では内蓋8bの紙面裏側に設けられている。そして、蓋部8の幅方向両端部には、用紙収納部4aに載置された感熱紙Sを弾性的に押さえるための紙押さえ44a、44bが配置されている。紙押さえ44a、44bは、主な目的として、紙検知センサ42a、42b、42cに対して感熱紙Sが浮いて誤検知を起こすことを抑制するために配置されている。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cに近い位置で感熱紙Sを押さえることが好ましい。紙押さえ44a、44bは、感熱紙Sを押圧し過ぎると、給紙ローラ56で搬送される場合の抵抗になってしまうため、搬送性能の低下を抑制すべく、
図9(b)に示すように、感熱紙Sが2、3枚しか残っていない場合は感熱紙を押さえない程度の隙間を有して配置されている。しかし、例えば用紙収納部4aに感熱紙Sが1枚もなくなった場合、紙押さえ44a,44bが紙検知センサ42a、42b、42cの真上に配置されていると、紙検知センサ42a、42b、42cが紙押さえ44a、44bの反射光を検出し、感熱紙が有ると誤検知することが考えられる。そのため、蓋部8を裏面から見た正面図及び側断面図である
図9(a),9(b)に示すように、紙押さえ44a,44bは、紙検知センサ42a、42b、42cに近い位置で且つそこから感熱紙の搬送方向(平面方向)に少しずれた位置に配置されている。また、紙押さえ44a,44bは、蓋部8の左右で感熱紙Sの搬送方向に対する位置がずれていると、感熱紙Sが給紙ローラ56で搬送される場合に斜めに搬送される原因となる。そのため、搬送方向に対して左右同じ位置に配置されている。
【0032】
次に、紙検知センサ42a、42b、42cによる感熱紙の種類や状態の判別方法について説明する。
【0033】
図10は、感熱紙の種類を示す図である。本実施形態のモバイルサーマルプリンタにおいては、感熱紙として、通常の感熱紙、伝票などに用いるミシン目の入った切り取り用紙、裏面に感熱性のカーボンインクが塗布された紙の熱転写を行う2枚1葉になった複写紙の3種類の感熱紙を用いることを想定している。ただし後に説明するように用紙の種類をさらに増やすことも可能である。
【0034】
用紙の種類の判別の概要について説明すると、それぞれの感熱紙には、その裏面あるいは表面に黒い四角マークが印刷されており、用紙の種類によりこの黒い四角マークの数および印刷位置が異なる。すでに説明したように、紙検知センサ42a、42b、42cは、光を発光する発光部と感熱紙Sで反射された光を受光する受光部とを有する反射型のセンサであり、黒い四角マークに対向するときは反射光が少ないことにより「0」の信号を出力し、黒い四角マークが無い感熱紙の通常の白い面に対向する場合は反射光が多いことにより「1」の信号を出力する。そのため、感熱紙の種類により、紙検知センサ42a、42b、42cが出力する「1」と「0」の信号の組み合わせが異なる。これにより、感熱紙の種類及びその有無を検出することができる。
【0035】
まず、
図8の用紙収納部4aを上から見て模式的に示した平面図である
図10(g)を参照して、紙検知センサ42a、42b、42cの配置について説明する。
図10(g)において、紙検知センサ42aは、感熱紙の搬送方向を図中下方向とすると、用紙収納部4aの右側の端部で且つ用紙収納部4aの長手方向中央のセンターラインCLの上方の距離dの位置に配置されている。また、紙検知センサ42cは、用紙収納部4aの左側の端部で且つ用紙収納部4aの長手方向中央のセンターラインCLの下方の距離dの位置に配置されている。つまり、紙検知センサ42aと紙検知センサ42cは、センターラインCLの中央の点C(センターラインCLと幅方向の中心線の交点)について点対称な位置にそれぞれ配置されている。また、紙検知センサ42bは、用紙収納部4aの左側の端部で且つセンターラインCLと紙検知センサ42cの間に配置されている。そして、これら3つのセンサの「1」、「0」の組み合わせにより、感熱紙の8種類の状態を判別することができる。
【0036】
次に、感熱紙に印刷されているマークについて説明する。
【0037】
まず、通常の感熱紙S1では、
図10(a)に示すように、印刷が行われる表面には、黒い四角マークが印刷されておらず、裏面には、2つの黒い四角マークm1,m2と、感熱紙の搬送方向を示す矢印maが印刷されている。一方のマークm1は、感熱紙S1の裏面の図中左側端部で感熱紙の長手方向のセンターラインCLから距離dだけ上方の位置に印刷されている。また、もう一方のマークm2は、感熱紙S1の裏面の図中右側端部で感熱紙の長手方向のセンターラインCLから距離dだけ下方の位置に印刷されている。つまり、マークm1とマークm2は、センターラインCLの中央の点C(用紙全体の中央の点)について点対称な位置にそれぞれ印刷されている。
【0038】
このようにマークが印刷された通常の感熱紙S1を正しく用紙収納部4aに収納すると、用紙が用紙収納部4aに収納された状態を上から見て、紙検知センサと対向する側の面に印刷されたマークを透過的に示した平面図である
図10(b)の左側の図に示すように、紙検知センサ42a、42b、42cは全て感熱紙S1の白い印刷面に対向することになる。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cの出力信号の組み合わせは、(1,1,1)となる。一方、通常の感熱紙S1を、搬送方向について逆に挿入した場合にも、紙検知センサ42a、42b、42cの全てが感熱紙S1の白い印刷面に対向することになり、出力信号の組み合わせは、(1,1,1)となる。つまり、紙検知センサ42a、42b、42cから(1,1,1)の信号が出力されれば、通常の感熱紙S1が表裏について正しく挿入されたと判断することができる。
【0039】
通常の感熱紙S1に対して表裏が正しく挿入されたと判断できた場合、すなわち、出力信号が(1,1,1)であった場合には、印刷指示に従って感熱紙S1に対する印刷を実行するように制御される。
【0040】
一方、例えば感熱紙S1を表裏逆に用紙収納部4aに収納する(裏を下向きに収納する)と、
図10(b)の右側の図に示すように、紙検知センサ42aがマークm1に対向し、紙検知センサ42bが感熱紙の白い裏面に対向し、紙検知センサ42cがマークm2に対向することになる。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cの出力信号の組み合わせは、(0,1,0)となる。つまり、紙検知センサ42a、42b、42cから(0,1,0)の信号が出力されれば、感熱紙が表裏逆に挿入されたと判断することができる。なお、マークm1とマークm2は、用紙の中央の点Cについて点対称な位置に印刷されているため、感熱紙S1が表裏逆で且つ搬送方向についても逆に挿入された場合も、マークm1、m2の位置が入れ替わるだけで
図10(b)の右側の図と同じ状態になる。そのため、紙検知センサからは、単に表裏を逆に入れた場合と同様に(0,1,0)の信号が出力される。
【0041】
このとき、感熱紙S1が表裏逆に挿入されていても、通常の感熱紙S1であれば印刷自体は実行できるため、印刷指示に対して印刷が実行されるように制御しても良く、同時に、ユーザに対して何らかの報知手段により用紙が表裏逆に挿入されていることを報知しても良い。一方、印刷面にマークが存在するなどの理由により、表裏が逆に挿入されていると判断したときには印刷が実行されないように制御しても良い。
【0042】
次に、伝票などに用いられる切り取り用紙のタイプの感熱紙S2では、
図10(c)に示すように、印刷が行われる表面には、図中右側端部で感熱紙の長手方向のセンターラインCLの僅かに下の位置に、2つの紙検知センサにまたがる長さの黒い四角マークm3が印刷されている。また、裏面には、通常の感熱紙S1と同じ黒い四角マークm1、m2が印刷されている。
【0043】
このようにマークが印刷された切り取り用紙のタイプの感熱紙S2を正しく用紙収納部4aに収納すると、用紙が用紙収納部4aに収納された状態を上から見て、紙検知センサと対向する側の面に印刷されたマークを透過的に示した平面図である
図10(d)の左側の図に示すような状態になる。そのため、紙検知センサ42aが感熱紙S2の白い印刷面に対向し、紙検知センサ42b,42cが両方ともマークm3に対向することになる。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cの出力信号の組み合わせは、(1,0,0)となる。つまり、紙検知センサ42a、42b、42cから(1,0,0)の信号が出力されれば、切り取り用紙のタイプの感熱紙S2が正しく挿入されたと判断することができる。
【0044】
一方、感熱紙S2を表裏は正しく、搬送方向について逆に用紙収納部4aに収納した場合は、
図10(d)において、マークm3が用紙の中心Cに対して点対称な位置にくるため、紙検知センサ42aがマークm3に対向し、紙検知センサ42b,42cが感熱紙の白い印刷面に対向することになる。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cの出力信号の組み合わせは、(0,1,1)となる。
【0045】
感熱紙S2においては、搬送方向について逆向きに用紙収納部4aに収納した場合には、印刷指示があっても印刷が許可されず、用紙が搬送されないように制御される。これは、
図10に示すような切取用紙に対する印刷の場合には、切り取られる部分に印刷すべき内容は正しい向きで印刷される必要があるためである。
【0046】
また、感熱紙S2を表裏逆に用紙収納部4aに収納した場合(裏を下向きに収納した場合)は、感熱紙S2の裏面のマークの配置が通常の感熱紙S1と同じであるため、感熱紙S1を表裏逆に挿入した場合と同様に、紙検知センサ42a、42b、42cからは、搬送方向に対する正逆を問わず(0,1,0)の信号が出力される。
【0047】
次に、カーボンコピー用紙などのように2枚1葉になった複写紙のタイプの感熱紙S3では、
図10(e)に示すように、印刷が行われる表面には、図中右側端部で感熱紙の長手方向のセンターラインCLから距離dだけ下方の位置に、1つの紙検知センサに対応する長さの黒い四角マークm4が印刷されている。また、裏面には、通常の感熱紙S1と同じ黒い四角マークm1,m2が印刷されている。
【0048】
このようにマークが印刷された複写紙のタイプの感熱紙S3を正しく用紙収納部4aに収納すると、用紙が用紙収納部4aに収納された状態を上から見て、紙検知センサと対向する側の面に印刷されたマークを透過的に示した平面図である
図10(f)の左側の図に示すような状態になる。そのため、紙検知センサ42a、42bが感熱紙S3の白い印刷面に対向し、紙検知センサ42cがマークm4に対向することになる。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cの出力信号の組み合わせは、(1,1,0)となる。つまり、紙検知センサ42a、42b、42cから(1,1,0)の信号が出力されれば、複写紙のタイプの感熱紙S3が正しく挿入されたと判断することができる。
【0049】
感熱紙S3においては、搬送方向について逆向きに用紙収納部4aに収納した場合には、印刷指示があっても印刷が許可されず、用紙が搬送されないように制御される。これは、感熱紙S3が搬送方向における一方側のみが糊付けなどによって固定されており、他方側は固定されていない場合に、搬送方向に逆向きに収納された場合に用紙を搬送しようとすると、用紙の紙詰まりが起こってしまうからである。
【0050】
一方、感熱紙S3を表裏は正しく、搬送方向について逆に用紙収納部4aに収納した場合は、
図10(f)において、マークm4が用紙の中心に対して点対称な位置にくるため、紙検知センサ42aがマークm4に対向し、紙検知センサ42b,42cが感熱紙の白い印刷面に対向することになる。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cの出力信号の組み合わせは、(0,1,1)となる。複写紙のタイプの感熱紙の場合は、2枚1葉の紙が綴じられた側が先になるようにプラテンローラ58に供給されないと、紙詰まりの原因となるため、搬送方向の正逆が判断できることは重要である。
【0051】
また、感熱紙S3を表裏逆に用紙収納部4aに収納した場合(裏を下向きに収納した場合)は、感熱紙S3の裏面のマークの配置が感熱紙S1,S2と同じであるため、感熱紙S1,S2を表裏逆に挿入した場合と同様に、紙検知センサ42a、42b、42cからは、搬送方向に対する正逆を問わず(0,1,0)の信号が出力される。
【0052】
図11は、上記のような紙検知センサの出力信号と用紙の状態の組み合わせをまとめた図である。
【0053】
上記で説明したように、通常の感熱紙S1の場合は、表裏を正しく挿入すると、紙検知センサの出力は(1,1,1)となり、表裏逆及び表裏逆で且つ搬送方向が逆の場合は(0,1,0)となる。
【0054】
切り取り用紙のタイプの感熱紙S2の場合は、正しく挿入すると、紙検知センサの出力は(1,0,0)となり、搬送方向が逆の場合は(0,1,1)、表裏逆及び表裏逆で且つ搬送方向が逆の場合は(0,1,0)となる。
【0055】
複写紙のタイプの感熱紙S3の場合は、正しく挿入すると、紙検知センサの出力は(1,1,0)となり、搬送方向が逆の場合は(0,1,1)、表裏逆及び表裏逆で且つ搬送方向が逆の場合は(0,1,0)となる。
【0056】
さらに、上記では説明していないが、用紙収納部4aに1枚も紙が収納されていない場合は、全ての紙検知センサ42a、42b、42cが反射光をほとんど検出しない状態となるため、紙検知センサの出力は(0,0,0)となる。
【0057】
本実施形態においては、用紙収納部4aに1枚も紙が収納されていない場合に出力信号が(0,0,0)となるように、紙検知センサと対向する蓋部8の内側の色が暗色となっている。
【0058】
但し、必ずしも暗色としなくても、反射光がそのまま返って来ないようになっていれば良く、蓋部8における紙検知センサと対向する部分に傾斜面が形成されていても良いし、例えば、対向する部分が白色系の色味であっても、用紙を検知するときに比べて反射光の経路が長いため受光強度が低減することから、論理値で「0」と「1」を判別するための閾値が、壁部8における反射光では「0」となる程度の閾値を設定するなど、様々な方法が採用できる。
【0059】
以上のようにして、感熱紙の種類によってマークの位置及び数を変更することにより、用紙が正しく装着されたか否か、及び用紙の有無を検出することができる。
【0060】
なお、
図11からわかるように、本実施形態では、紙検知センサの出力が(1,0,1)のパターンと(0,0,1)のパターンは、用紙の状態の判断に用いられていない。そのため、この2つのパターンをさらに用いることにより、もう2種類までの用紙の判断を行うことも可能である。例えば、表裏は正しく、搬送方向に対して逆に置いたときに(1,0,1)となるようにマーくを配置すれば、正しく置いた場合の出力信号は(1,1,1)となり、感熱紙S1を正しく置いた場合と同様に印刷許可される状態であることが検出でき、また、表裏は正しく、搬送方向に対して逆に置いたときに(0,0,1)となるようにマークを配置すれば、正しく置いた場合の出力信号は(1,1,0)となり、感熱紙S3を正しく置いた場合と同様に印刷許可される状態であることが検出できる。
【0061】
なお、本実施形態においては、通常の感熱紙S1に対しては、搬送方向に対する正逆については共通した出力信号(1,1,1)が出力されるように構成しているが、搬送方向に対する正逆を判定できるようにマークを配置し、その上で通常の感熱紙S1であれば搬送方向に対する正逆を問わず印刷を許可するように構成しても良い。
【0062】
本実施形態においては、上記で説明した紙検知センサ42を用いた感熱紙の種類や状態の判別を、1枚ごとの印刷開始時に行うことで、印刷設定における紙の種類や状態通りに用紙収納部4a内の感熱紙が積載されているかどうかを用紙1枚ごとに行っている。印刷開始時に必ず感熱紙の種類や状態の判別を行わずに、例えば1つの印刷指示の中で設定された枚数を連続して印刷する場合においては、印刷指示を受け付けた後に1度だけ判別を行い、2枚目以降は判別することなく印刷を開始しても良い。
【0063】
好ましくは、ユーザが用紙収納部4a内に収納する用紙の向きや表裏が1枚ごとにバラバラになっている可能性を考慮し、1枚ごとの印刷開始(搬送開始)時に判別を行う。
【0064】
また、印刷動作中に判別を行っても良い。例えば、紙検知センサ42で切取用紙を検出している場合には、(1,0,0)の出力が得られているが、用紙が移動するのに伴って、紙検知センサ42b、42cに対向するマークが紙検知センサ42b、42cとの対向位置から外れていき、それに従い紙検知センサ42b、42cに入力される信号は徐々に「0」と判定していたものから「1」と判定する数値へ近付いていく。この時間変化量に基づいて、用紙の搬送速度を算出して、本来用紙が搬送されるべきである設定された搬送速度と比較し、用紙が不送りになっていないかどうかなどの判定を行うことができる。その判定の結果、正常な搬送状態でないと判定した場合には、印刷や搬送を停止するなどの制御を行っても良い。
【0065】
また、上記のように紙検知センサ42b、42cに入力される信号が徐々に「0」と判定していたものから「1」と判定する数値へ近付いていったあと、紙検知センサ42が配置される部分を用紙全体が抜ける直前では、紙検知センサ42からは(1,1,1)の出力が得られる。この直後、用紙後端がそれぞれの紙検知センサ42を通過するのに伴って、後続の用紙に付されたマークが紙検知センサ42b、42cと対向し始めるため、上記と逆の出力が得られる。すなわち、(1,1,1)だった出力のうち、紙検知センサ42b、42cについては、「1」と判定していた数値から「0」と判定する数値へ近付いていく。従って、ここでも上記同様に用紙の搬送状態を判定することができ、その結果に応じて印刷や搬送の制御を行うことができる。
【0066】
この後、先行する用紙が紙検知センサ42部分を抜けると、後続の用紙が紙検知センサ42a、42b、42cの全てと対向することになる。先行する用紙は印刷動作中もしくは印刷動作前であるが、この時点で後続の用紙の種類や状態の判別を行っても良い。この場合、後続の用紙に関する印刷指示を既に受け取っている場合には、その印刷設定中の用紙の向きと比較し、正しい向きで用紙が積載されていると判別した場合には先行の用紙の排紙完了後にすぐに給紙動作を開始できる。また、後続の用紙に関する印刷指示を受け取っていない場合にも、用紙の種類や状態の判別結果を制御回路上に配置されたメモリ等に記憶しておき、モバイルサーマルプリンタ2の電源を落とさずにそのまま次の印刷指示を受け取った場合には、その時点では改めて判別を実施せずに、メモリ内に記憶されている判別結果を用いて、速やかに判別を実施することができる。
【0067】
以上、用紙の搬送に従って時系列的に説明したが、一部の制御のみを切り出して実施しても良い。
【0068】
次に、
図12は、小窓18内に配置されている、未使用の感熱紙の残量を表示する残量インジケータ60の構造を示す部分拡大斜視図である。
図12では、残量インジケータ60の構造が見えるようにするため、蓋部8の表皮と小窓18に取り付けられる透明な窓ガラスを省略して示している。また、
図13は、
図12を矢印F方向から見て残量インジケータ60の構造を模式的に示した側面図である。
図13(a)は
図12(a)の状態に対応し、
図13(b)は
図12(b)に、
図13(c)は
図12(c)に、それぞれ対応する。
【0069】
図12(a)及び
図13(a)において、残量インジケータ60は、蓋部8にヒンジ62を介してプリンタの厚み方向に回動可能に取り付けられた第1アーム64を備える。第1アーム64の先端には、ヒンジ66を介して、第2アーム68がプリンタの厚み方向に回動可能に接続されている。第2アーム68の先端には、黄色の指標部材70が取り付けられている。また、第1アーム64の長手方向の中間部には突起64aが形成されるとともに、第2アーム68の長手方向の中間部には突起68aが形成されている。そして、突起64aと突起68aの間には、引っ張りバネ72が張り渡されている。したがって、第1アーム64と第2アーム68の2本のアームは、自然状態では、引っ張りバネ72の付勢力により、ヒンジ66の部分で折り曲げられ畳まれた状態となる。
【0070】
このように構成される残量インジケータ60では、用紙収納部4aに感熱紙Sが十分に残っている場合には、
図12(c)、
図13(c)に示すように、感熱紙の厚みでヒンジ66の部分が上に持ち上げられ、第1アーム64と第2アーム68は、引っ張りバネ72の付勢力に抗して広がった状態となる。これにより、
図13(c)に示すように、指標部材70は蓋部8の下面を矢印Gの方向にスライドし、小窓18から見えない位置に移動する。
【0071】
この状態から、
図13(b)に示すように、感熱紙Sの重なりの厚みが減るにしたがって、引っ張りバネ72の付勢力によりヒンジ66の部分が下に下がる。これにより、指標部材70は蓋部8の下面を矢印Hの方向にスライドし、
図13(b)、
図12(b)に示すように、例えば残り枚数が15枚程度になると、小窓18の端に僅かに見えるようになる。
【0072】
そして、感熱紙Sの印刷が終了し、感熱紙Sが用紙収納部4aから全てなくなると、
図13(a)に示すように、引っ張りバネ72の付勢力によりヒンジ66が完全に下がり、指標部材70はさらに矢印Hの方向にスライドして、小窓18内によりはっきり見える位置に移動する。これにより、ユーザは感熱紙が無くなったことを知ることができる。また、用紙が無くなった場合は小窓18内に感熱紙が見えなくなるので、ユーザはこのことからも用紙が無くなったことを確認することができる。
【0073】
なお、上述したように、小窓18近傍に設けられたLED20a~20cのいずれかの光が小窓18内に照射されて用紙を照射するように、導光部材が小窓内に露出している。LEDからの光が、指標部材70の上面(小窓18側)にも回り込むように小窓18と指標部材70との間に空隙や導光部材の一部を設けるとより好適である。
【0074】
以上のような動作により、残量インジケータ60は、用紙収納部4aにおける感熱紙の残量を黄色い指標部材でユーザにわかりやすく表示することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、感熱紙にその種類により異なるマークを設け、それをモバイルサーマルプリンタの用紙収納部に設けられた3つのセンサで検知するという簡単な構成で、感熱紙の種類、その向きの正逆、感熱紙の有無を検出することができる。これにより、モバイルプリンタの大型化及び高コスト化を招くことなく、用紙の状態を判断し、誤動作を防止することができる。
【0076】
また、モバイルサーマルプリンタに着脱可能な排紙トレイを有することにより、印刷が終了した用紙を複数枚落下しないように保持することができ、モバイルプリンタの利便性が向上する。
【0077】
また、用紙収納部の蓋の部分に小窓を設け、簡単な構造の残量インジケータを設けることにより、モバイルプリンタの大型化や高コスト化を招くことなく、ユーザに未使用の感熱紙の残枚数を知らせることができる。
【符号の説明】
【0078】
2:モバイルサーマルプリンタ、4:本体部、4a:用紙収納部、8:蓋部、12:排紙トレイ、56:給紙ローラ、58:プラテンローラ、サーマルヘッド:60、42a、42b、42c:紙検知センサ、44a,44b:紙押さえ、60:残量インジケータ