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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20220106BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20220106BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20220106BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220106BHJP
   H02K 3/28 20060101ALI20220106BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
H02K3/50 A
H02K3/04 J
H02K3/28 J
H02K21/14 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017164007
(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公開番号】P2019041549
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】塩田 直樹
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171239(JP,A)
【文献】特開2008-167604(JP,A)
【文献】特開2007-267571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/52
H02K 3/50
H02K 3/04
H02K 3/28
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻装されたU,V,Wの3相のコイルと、前記巻線が巻き付けられるコイル巻装部が設けられた前記コイル絶縁用のインシュレータと、を備えるステータと、
マグネットを備え前記ステータ内に回転自在に配置されるロータと、を有するブラシレスモータであって、
前記コイルは、各相ごとに2つずつU1,U2,V1,V2,W1,W2の6個が設けられ、該6個のコイルは、周方向に沿ってU1,W2,V1,U2,W1,V2の順に配置されると共に、U1,U2,V1,V2,W1,W2の順にて一筆書きに巻装され、
U1,U2,W1の前記コイルが巻装される各前記インシュレータは、前記コイル巻装部の径方向外側に設けられ前記巻線が接続されるコイル接続端子を備えた端子取付部を有し
V1,V2,W2の前記コイルが巻装される各前記インシュレータは、前記コイル巻装部の径方向外側に設けられ前記巻線が案内される第1ガイド部を有し
前記第1ガイド部は、該第1ガイド部の内外を径方向に連通する開口部を備え、
該開口部には、前記コイルの巻き始め部分の前記巻線が挿通されてなることを特徴とするブラシレスモータ
【請求項2】
請求項1記載のブラシレスモータにおいて、
前記第1ガイド部は、前記開口部によって周方向に2つの部位に分割され、
V2,W2の前記コイルが巻装される前記インシュレータに設けられた前記第1ガイド部は、隣接するU1の前記コイル側の部位が他方よりも高さが高いことを特徴とするブラシレスモータ
【請求項3】
請求項2記載のブラシレスモータにおいて、
U相の前記コイル接続端子を備えU1の前記コイルが巻装される前記インシュレータは、前記端子取付部の内側を他の前記コイル間を接続する渡り線が配線され、
前記渡り線は、前記第1ガイド部の高さが高い側の部位に案内されつつ、既に巻装が完了しているU1の前記コイルの上方を跨いで配線されることを特徴とするブラシレスモータ
【請求項4】
請求項2又は3記載のブラシレスモータにおいて、
前記第1ガイド部は、周方向の両端上部に、前記コイル間を接続する渡り線が上方に抜け止めされつつ、斜め上方に引き回される形で配線されるガイド突起を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記インシュレータは、前記ステータのステータコアに装着され、
前記端子取付部は、前記インシュレータを前記ステータコアに装着したとき、該ステータコアの側面と当接し、前記コイル巻装時のテンションにより前記端子取付部に作用する径方向外側に向いた力を受ける当接部を有することを特徴とするブラシレスモータ
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記コイル接続端子は、前記巻線が係止されるフック部を有し、
前記端子取付部は、前記フック部に係止された前記巻線がテンションを付加されつつ引っ掛けられる壁状の第2ガイド部を有することを特徴とするブラシレスモータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータに取り付けられるコイル絶縁用のインシュレータに関し、特に、ブラシレスモータに用いられるインシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インナーロータ型のブラシレスモータでは、鋼製のヨーク内に、コイルが巻装されたステータが配置され、その内側にマグネットを備えたロータが回転自在に設けられる。ステータ側には、特許文献1のように、ステータコアとコイルとの間を絶縁する部品としてインシュレータが取り付けられ、コイルは、インシュレータを介して、ステータコアのティース部分に巻装される。その際、各コイルは、巻き始めと巻き終わりの部分が、それぞれ隣接するティースの間から挿入される形で各ティース部分に巻回される。そして、同相のコイル間や、他相のコイルとの間をティース背面側に引き回した渡り線によって接続することにより、全体で1つのモータ巻線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-38949号公報
【文献】特開2015-133808号公報
【文献】特願2016-5730号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のような巻線形態の場合、複数の渡り線がティース背面側に配線されるため、狭いスペースに渡り線が輻輳し、配線が混雑した状態となってしまうという問題があった。また、渡り線が多く配線が長いため、その分、コイル抵抗が増加するという問題もあった。
【0005】
一方、前述のインシュレータでは、ティースの背面側に配されたターミナルを介して電気的な接続を行う。ところが、このような構造の場合、背面側にターミナルを有するティースに巻線を行うと、巻線時のテンションにより、ターミナルを保持する端子取付部も径方向外側に向いた力を受ける。このため、巻線により、端子取付部が径方向外側に倒れ込み、ターミナルが傾いてしまうおそれがある、という問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ブラシレスモータにおける渡り線の混雑状態を緩和し、配線長を短縮してコイル抵抗を低減することにある。また、本発明の他の目的は、巻線時のテンションによる端子取付部の倒れ込みを抑え、ターミナルの傾きを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブラシレスモータは、巻線が巻装されたU,V,Wの3相のコイルと、前記巻線が巻き付けられるコイル巻装部が設けられた前記コイル絶縁用のインシュレータと、を備えるステータと、マグネットを備え前記ステータ内に回転自在に配置されるロータと、を有するブラシレスモータであって、前記コイルは、各相ごとに2つずつU1,U2,V1,V2,W1,W2の6個が設けられ、該6個のコイルは、周方向に沿ってU1,W2,V1,U2,W1,V2の順に配置されると共に、U1,U2,V1,V2,W1,W2の順にて一筆書きに巻装され、U1,U2,W1の前記コイルが巻装される各前記インシュレータは、前記コイル巻装部の径方向外側に設けられ前記巻線が接続されるコイル接続端子を備えた端子取付部を有しV1,V2,W2の前記コイルが巻装される各前記インシュレータは、前記コイル巻装部の径方向外側に設けられ前記巻線が案内される第1ガイド部を有し、前記第1ガイド部は、該第1ガイド部の内外を径方向に連通する開口部を備え、該開口部には、前記コイルの巻き始め部分の前記巻線が挿通されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、コイル絶縁用にステータに取り付けられるインシュレータに、巻線が巻き付けられるコイル巻装部と、巻線が接続されるコイル接続端子を備えた端子取付部と、巻線が案内される第1ガイド部と、を設け、さらに、この第1ガイド部にコイルの巻き始め部分の巻線が挿通される開口部を設ける。これにより、従来、ガイド部に沿って隣接するティースとの間まで引き回され、そこからコイル巻装部に巻き付けられていた巻線を開口部からコイル巻装部側に導入できる。このため、ティース間に配される巻線の数を減少させることができ、ティース間における配線の混雑が緩和される。また、巻線の全長も短くなり、その分、コイル抵抗も低減される。
【0009】
前記ブラシレスモータにおいて、前記第1ガイド部を前記開口部によって周方向に2つの部位に分割し、V2,W2の前記コイルが巻装される前記インシュレータに設けられた前記第1ガイド部にて、隣接するU1の前記コイル側の部位の高さを他方側の部位よりも高く形成しても良い。これにより、高い方の部位においては巻線を高い位置に配置でき、隣接するコイル巻装部に対し高い位置で巻線を配線することが可能となる。
【0010】
また、U相の前記コイル接続端子を備えU1の前記コイルが巻装される前記インシュレータは、前記端子取付部の内側を他の前記コイル間を接続する渡り線が通り、前記渡り線が、前記第1ガイド部の高さが高い側の部位に案内されつつ、既に巻装が完了しているU1の前記コイルの上方を跨いで配線されるようにしても良い。さらに、前記第1ガイド部の周方向の両端上部に、前記コイル間を接続する渡り線が上方に抜け止めされつつ、斜め上方に引き回される形で配線されるガイド突起を設けても良い。
【0011】
加えて、前記インシュレータは前記ステータのステータコアに装着され、前記インシュレータを前記ステータコアに装着したとき、該ステータコアの側面と当接し、前記コイル巻装時のテンションにより前記端子取付部に作用する径方向外側に向いた力を受ける当接部を前記端子取付部に設けても良い。これにより、巻線時のテンション荷重により、端子取付部に径方向外側に向いた力が作用した場合でも、その力を当接部にて受けることができ、端子取付部の径方向外側への倒れ込みが抑えられる。
【0012】
さらに、前記コイル接続端子に前記巻線が係止されるフック部を設け、前記端子取付部に、前記フック部に係止された前記巻線がテンションを付加されつつ引っ掛けられる壁状の第2ガイド部を設けても良い。これにより、巻線をフック部に掛ける際、巻線にテンションを付加できる。この場合、巻線が引っ掛けられる部位は、壁状の第2ガイド部であるため強度が高く、巻線にテンションを加えても倒れたりすることがないため、巻線により高いテンションを加えることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータ用インシュレータによれば、コイル絶縁用にステータに取り付けられるインシュレータに、巻線が巻き付けられるコイル巻装部と、巻線が接続されるコイル接続端子を備えた端子取付部と、巻線が案内される第1ガイド部と、を設け、この第1ガイド部に、コイルの巻き始め部分の巻線が挿通される開口部を設けるようにしたので、従来、ガイド部に沿って隣接するティースとの間まで引き回され、そこからコイル巻装部に巻き付けられていた巻線を開口部からコイル巻装部側に導入できる。このため、ティース間に配される巻線の数を減少させることができ、ティース間における配線の混雑が緩和される。また、巻線の全長も短くなり、その分、コイル抵抗も低減される。
【0016】
本発明のブラシレスモータによれば、ブラシレスモータのステータにコイル絶縁用に取り付けられるインシュレータに、巻線が巻き付けられるコイル巻装部と、巻線が接続されるコイル接続端子を備えた端子取付部と、巻線が案内される第1ガイド部と、を設け、この第1ガイド部に、コイルの巻き始め部分の巻線が挿通される開口部を設けるようにしたので、従来、ガイド部に沿って隣接するティースとの間まで引き回され、そこからコイル巻装部に巻き付けられていた巻線を開口部からコイル巻装部側に導入できる。このため、ティース間に配される巻線の数を減少させることができ、ティース間における配線の混雑が緩和される。また、巻線の全長も短くなり、その分、コイル抵抗も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態であるブラシレスモータを用いた減速機構付きモータユニットの構成を示す説明図ある。
図2図1のブラシレスモータを軸方向から見た側面図である。
図3】ステータコアに取り付けられたインシュレータの構成を示す説明図である。
図4】コイルの結線図である。
図5】コイルの巻線状態を示す説明図である。
図6】コイルの巻線展開図である。
図7】インシュレータの端子取付部に設けられたガイド壁に巻線を掛け回す様子を示す説明図である。
図8】インシュレータにおける端子取付部の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態であるブラシレスモータ11を用いた減速機構付きモータユニット1の構成を示す説明図、図2は、ブラシレスモータ11を軸方向から見た側面図である。図1のモータユニット1は、モータと制御部が一体化されたいわゆる機電一体構造の減速機構付きモータであり、ブラシレスモータ11を備えたモータ部2と、ウォームギヤを用いた減速機構部3、及び、ブラシレスモータ11を駆動制御するための制御回路が搭載された制御部4とから構成されている。モータユニット1は、例えば、自動車の電動サンルーフの駆動源として使用される。
【0019】
モータ部2にはブラシレスモータ11が配されている。ブラシレスモータ11は、外側にステータ12、内側にロータ13を配したインナーロータ型のブラシレスモータとなっている。ステータ12は、ヨークを兼ねたモータケース14と、モータケース14の内周側に固定されたステータコア(コア部材)15、及び、ステータコア15に巻装されたコイル16とを備えている。モータケース14は、鉄等にて有底筒状に形成されており、断面が六角形状となっている。モータケース14の開口部には合成樹脂製のフレーム17が取り付けられている。フレーム17の上部は開口しており、開口部分にはカバー18が取り付けられる。モータケース14は、フレーム17のフランジ部17aに設けられたモータ取付用のネジ孔17bに、ネジ19によって固定される。
【0020】
ステータコア15は鋼板を多数積層した一体コア構造となっており、六角形状の継鉄部21と、継鉄部21から内側方向へ突出形成されたティース22とを備えている。ティース22は周方向に沿って複数個(ここでは6個)設けられている。各ティース22の間にはスロット23(6個)が形成されている。ステータコア15の内側には、軸方向両端側から、合成樹脂製のインシュレータ24が取り付けられている。各ティース22には、インシュレータ24を介して巻線25が巻装されコイル16が形成される。インシュレータ24には、各相(ここでは、U,V,Wの3相)に対応したコイルターミナル(コイル接続端子)26(26U,26V,26W)が設けられており、コイル16(巻線25)は、各コイルターミナル26U,26V,26Wに電気的に接続されている。
【0021】
ロータ13はステータ12の内側に配置されており、回転軸31と、ロータコア32、マグネット33を同軸状に配した構成となっている。回転軸31の外周には、鋼板を多数積層した円筒形状のロータコア32が取り付けられている。ロータコア32の外周には、周方向に沿って複数極に着磁されたマグネット33が固定されている。回転軸31の一端部は、モータケース14の底部に圧入された軸受34に回転自在に支持されている。回転軸31の他端部は、フレーム17の軸受保持部17c,17dに取り付けられた軸受メタル35,36によって回転自在に支持されている。
【0022】
回転軸31の端部(図1において右端部)には、ウォーム37が形成されている。ウォーム37は、フレーム17内に配置されたウォームホイール38と噛合しており、ウォーム37とウォームホイール38により、減速機構部3が構成されている。ウォームホイール38は出力軸39に取り付けられている。モータユニット1では、ブラシレスモータ11の回転軸31の回転は、減速機構部3にて減速されて出力軸39に伝達され、出力軸39が回転駆動される。
【0023】
回転軸31には、ロータ13の回転を検知するためのセンサマグネット41が取り付けられている。センサマグネット41は、周方向に沿って複数極に着磁されている。フレーム17内には、センサマグネット41の磁極に対向する形で図示しないホールIC(磁気検出素子)が配されている。ホールICは、制御用ICや抵抗、コンデンサ等の素子が搭載された制御部4の制御基板42に配置されている。制御基板42とブラシレスモータ11は、フレーム17の端子保持部17eに圧入固定された中間ターミナル(基板接続端子)43によって電気的に接続されている。この場合、端子保持部17eは、軸受保持部17cに対して軸方向にずれた位置に設けられており、両者が軸方向に重ならないようになっている。このため、端子保持部17e,軸受保持部17cを共に肉厚な中実状の部位に形成することができ、フレーム17の剛性向上や耐久性向上が図られ、信頼性の向上や出力の増大を図ることが可能となる。
【0024】
モータユニット1では、ステータコア15にインシュレータ24を取り付け、コイル16が巻装・配線されたステータアッセンブリをフレーム17に圧入すると、ブラシレスモータ11のコイルターミナル26(26U,26V,26W)と各相の中間ターミナル43の一端側が嵌合し電気的に接続される。その際、ターミナル同士の接続により中間ターミナル43に加わる荷重は、端子保持部17eによって受け止められる。制御基板42は、両ターミナル26,43を接続した後、フレーム17に組み付けられ、中間ターミナル43の他端側と半田付け固定される。これにより、制御基板42とブラシレスモータ11が電気的に接続され、制御部4によるブラシレスモータ11の駆動制御が可能となる。
【0025】
ここで、本発明によるインシュレータ24では、次のような点で従来のブラシレスモータとは異なる特徴を備えている。
(1)コイルの巻き始め位置
(2)巻線のテンション支持構造
(3)コイルターミナル取付部の倒れ込み防止構造
以下、各特徴について順に説明する。
【0026】
(1)コイルの巻き始め位置
図3は、ステータコア15に取り付けられたインシュレータ24の構成を示す説明図である。図3に示すように、インシュレータ24には、コイル16が巻き付けられるコイル巻装部51と、コイルターミナル26が取り付けられる端子取付部52が設けられている。インシュレータ24は、絶縁機能と共にコイルターミナル26の保持機能を有しており、ブラシレスモータ11は、「インシュレータ・ターミナルホルダ一体型」の構成を採用している。このように、インシュレータとターミナルホルダを一体構造とすることにより、電気接続部品の組み付けが不要となり、組付工数や部品点数を削減することが可能となると共に、コイルターミナルの組み付け寸法誤差を低減することも可能となる。
【0027】
端子取付部52は、コイル巻装部51の背後、すなわち径方向外側に3個形成されている。また、コイル巻装部51のうち、端子取付部52のない部位の背後には、壁状のガイド壁(第1ガイド部)53~55が形成されている。このように、コイルターミナル26をコイル16よりも径方向外側に配することにより、コイル16を巻装する際に、コイル巻回用のノズルに「端子を避けるための動作」をさせる必要がなくなり、巻線作業の効率化が図られ、ステータの製造工数を削減することが可能となる。
【0028】
また、インシュレータ24では、ガイド壁53~55の中央にスリット状の開口部56が設けられている。開口部56は、ガイド壁53~55の内外を径方向に連通しており、開口部56により、ガイド壁53~55は左右2つの部位に分割された形となっている(53a,53b、54a,54b、55a,55b)。開口部56には、コイル16の巻き始め部分となる巻線25sが挿入されており、巻線25は、開口部56から内側に導入されコイル巻装部51に巻き付けられる。従来、この部位における巻線25は、ガイド壁53に沿って隣接するティースとの間(図3におけるX,Y部)まで引き回され、そこからコイル巻装部51に巻き付けられており、X部には4本、Y部には5本の巻線25が配されていた。
【0029】
これに対し、当該インシュレータ24では、ガイド壁53の中央に開口部56を設けることにより、コイル16の巻き始めの巻線25sを開口部56からコイル巻装部51側に導入できる。このため、X部に配される巻線25は1本減少して3本、Y部に配される巻線25は2本減少して3本となり、X,Y部における配線の混雑を緩和することができ、渡り線の設置が容易となる。また、巻線25の全長に関しても、ガイド壁53の長さの約半分、概ねガイド壁53b,54b,55aの長さ分だけ短くすることでき、その分、コイル抵抗を減少させることができる。
【0030】
さらに、インシュレータ24のガイド壁53,55では、その高さが開口部56の左右で異なっており、コイルターミナル26Uに近い側の方が高くなっている。すなわち、ガイド壁53においては、ガイド壁53aの方がガイド壁53bよりも高さが高くなっており、ガイド壁55においては、ガイド壁55bの方がガイド壁55aよりも高さが高くなっている。
【0031】
コイルターミナル26Uの部位では、巻線25の渡り線57が端子取付部52の内側を通るが、そこにはコイル16も存在している。このため、渡り線57のスペースを確保するとともに、渡り線57とコイル16との干渉を避けるため、なるべく上方に渡り線57を配することが好ましい。そこで、端子取付部52の両側に位置するガイド壁53では、端子取付部52と隣接するガイド壁53a,55bを高くし、渡り線57をなるべく高い位置に配線している。なお、他のガイド壁53b,55aは、渡り線57(巻線25)のテンションによって倒れにくいように、ガイド壁53a,55bよりも低く形成されている。
【0032】
ガイド壁53の両端上部にはガイド突起58が突設されており、端子取付部52の内側に配される渡り線57は、このガイド突起58によって上方に抜け止めされつつ、ガイド壁53a,55bに沿って高い位置に配線される。すなわち、渡り線57は、ガイド壁53b側から53a側に向かって、斜め上方に引き回される形で配線され、ガイド突起58の直下を通って端子取付部52の内側に配線される。この場合、端子取付部52の高さもガイド壁53a,55bに合わせて高く形成されており、端子取付部52の内側では、渡り線57をコイル16の上方に配線することが可能となる。これにより、渡り線57とコイル16との干渉を回避するとともに、当該部位における巻線配置スペースを確保し、巻線の混雑解消を図ることが可能となる。
【0033】
(2)巻線のテンション支持構造
図4はコイル16の結線図、図5はコイル16の巻線状態を示す説明図、図6はその巻線展開図である。図4に示すようにコイル16はΔ結線となっており、始線~終線の間ですべてのスロットの巻線作業が完了する、いわゆる一筆書き巻線となっている。図5,6に示すように、ここでは、コイルターミナル26Uを始点とし、次のような順序で巻線作業が行われる。
(a)コイルターミナル26UからU相の第1コイルU1を巻装する。
(b)U1巻装後、間に2つのティース22を隔てて対向するU相の第2コイルU2を巻装する。
(c)U2巻装後、U2からコイルターミナル26Vに結線し、U2に隣接するV相の第1コイルV1を巻装する。この際、前述のガイド壁53の開口部56から巻線25を引き込み、コイルV1を巻装する(図3,5のQ1部)。
(d)V1巻装後、間に2つのティース22を隔てて対向するV相の第2コイルV2を巻装する。この場合も、ガイド壁53の開口部56から巻線25を引き込み、コイルV2を巻装する(図3,5のQ2部)。
(e)V2巻装後、V2からコイルターミナル26Wに結線し、V2に隣接するW相の第1コイルW1を巻装する。
(f)W1巻装後、間に2つのティース22を隔てて対向するW相の第2コイルW2を巻装する。この場合も、ガイド壁53の開口部56から巻線25を引き込み、コイルW2を巻装する(図3,5のQ3部)。
(g)W2巻装後、W2に隣接する位置のコイルターミナル26Uに結線する。この場合、巻線作業の最後に来るコイルW2では、巻線25のテンションを維持するため、図10に示すように、コイルの巻き始めと巻き終わりの入口が同じ箇所となる。
【0034】
つまり、当該ブラシレスモータ11では、単独で存在するコイルターミナルから、対向する同相コイル16を巻装した後((b),(d),(f))、隣接する他相のコイル16を巻装する((c),(e))。このように、一体構造のステータコア15に対し、ターミナルホルダが一体化されたインシュレータを組み付け、上述のような一筆書き巻線にてΔ結線を行うことにより、電気接続部品の組み付け工程や結線処理工程が不要になり、生産時の工程を削減することができ、低コスト化を図ることが可能となる。
【0035】
一方、このような結線を行うに際し、インシュレータ24では、図7に示すように、各端子取付部52に設けられたガイド壁(第2ガイド部)59に巻線25を引っ掛けた状態で、巻線25をコイルターミナル26のフック部26aに係止する。このように、一筆書き巻線の工程中に、巻線25をガイド壁59の端部59aに沿わせることにより、巻線25をフック部26aに掛ける際、巻線25にテンションを付加できる。この場合、巻線25が掛け回される部位は、端子取付部52と一体に形成されたガイド壁59であるため、ポールや突起などに比して強度が高く、巻線25にテンションを加えても倒れたりすることがない。このため、巻線25により高いテンションを加えることが可能となり、コイルターミナル26と巻線25の密着度を高めることができ、ヒュージングなどの電気的接続性を向上させることが可能となる。
【0036】
さらに、巻線工程(d)において、V1からV2に巻線25を引き回すとき、その渡り線57が既に巻装が完了しているU1上を跨いで通過する。このコイルU1には、径方向外側にコイルターミナル26Uが存在するため、その背後に渡り線を通すことができない。一方、渡り線が先に存在すると、コイルU1の巻装作業が非常に行いにくい。これに対し、前述のような巻線工程を実行すれば、コイル形成後に渡り線が配されるため、特に支障を来すことなく巻線作業を行うことができる。しかも、前述のように、ガイド壁53a,55bを高く形成しているため、渡り線57が高い位置を通るので、コイル16との干渉も生じにくく、配線作業も行い易い。
【0037】
また、一般的な一筆書き巻線と異なり、巻装が完了しているコイルの上を弦状に渡り線が通過する箇所が存在するため、渡り線の長さを短くすることも可能となる。なお、他のコイルターミナル26V,26Wでは、渡り線57はそれらの背後を通ることなく、フック部26aに引っ掛けられた後、フック部26a側の隣接コイル16に向かうため、渡り線の引き回しに関する問題は生じない。
【0038】
加えて、ブラシレスモータ11においては、渡り線57が重なる箇所においても、重複本数が最大4本に抑えられる。この場合、例えば特許文献3のモータでは、渡り線が6本重複する部位が存在し、巻線25の収容や取り回しが煩雑となる。この点、当該ブラシレスモータ11では、渡り線57の重なりは最大でも4本であるため、渡り線の収容保持が容易となり、インシュレータの小型軽量化が可能となる。
【0039】
(3)コイルターミナル取付部の倒れ込み防止構造
図8は、インシュレータ24における端子取付部52の構成を示す説明図である。図8に示すように、端子取付部52には、コイルターミナル26が挿入される端子挿入孔61が形成されている。コイルターミナル26は、この端子挿入孔61に矢示P方向から挿入される。コイルターミナル26には係合爪62が設けられており、端子挿入孔61にコイルターミナル26を挿入すると、係合爪62の先端が端子取付部52の上面52aに係合し、コイルターミナル26は端子取付部52に抜け止め固定される。
【0040】
端子取付部52の図中下側(上面52aの反対面側)には、端子取付部本体52bから下方に延びるリブ脚(当接部)63が2個設けられている。リブ脚63は段状に形成されており、インシュレータ24をステータコア15に取り付けたとき、ステータコア15の端縁部15aに当接・嵌合する切欠部64を有している。図8に示すように、インシュレータ24をステータコア15に取り付けると、切欠部64の上面64aはステータコア15の端面15bに当接し、切欠部64の内面(当接面)64bはステータコア15の側面15cに当接する。
【0041】
前述のように、背面側にコイルターミナル26を有するティース22に巻線を行うと、巻線時のテンションにより、端子取付部52も径方向外側に向いた力を受け、端子取付部が径方向外側に倒れ込むおそれがある。これに対し、当該インシュレータ24では、端子取付部52にリブ脚63が設けられており、その切欠部内面64bがステータコア15の側面15cに当接しているため、端子取付部52に径方向外側に向いた力が作用した場合でも、その力を切欠部内面64bにて受けることができる。このため、巻線時のテンション荷重による端子取付部52の径方向外側への倒れ込みが抑えられ、コイルターミナル26の傾きを防止することが可能となる。
【0042】
また、コイルターミナル26は、ブラシレスモータ11をフレーム17に組み付ける際に中間ターミナル43と嵌合し、そのとき、中間ターミナル43側から荷重を受ける。その際、端子取付部52は、リブ脚63によってステータコア15上に支持されつつ、ターミナル43の挿入荷重を受ける。すなわち、リブ脚63により端子取付部52の剛性向上が図られ、係合爪62を介して挿入荷重を受けても端子取付部52が変形しにくくなり、中間ターミナル43との接続作業が行いやすくなると共に、挿入荷重による端子取付部52の破損も防止され、信頼性の向上も図られる。
【0043】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、ブラシレスモータ11のティース・スロット数はあくまでも例示であり、その個数は前述の6個には限定されない。また、巻線順序におけるIN・OUTは、その順序が逆になっても問題はない。同様に、3相のUVWもその順序は任意であり、例えば、反時計回りの順番がU,W,Vであっても良い。さらに、端子取付部52のリブ脚63の個数も2個は限られず、1個でも、また、3個以上でも良い。なお、インサートモールドにて端子取付部52にコイルターミナル26を配する場合には、端子取付部52全体を下方に延長するような形でステータコア15の側面15cとの当接部を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、サンルーフ用のモータ以外にも、例えば、パワーウインド、スライドドア、リアゲート、オイルポンプ等の駆動源として使用される車載モータや、家電製品等の各種電気製品、ロボットや電動機械等の産業機器などにも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 モータユニット
2 モータ部
3 減速機構部
4 制御部
11 ブラシレスモータ
12 ステータ
13 ロータ
14 モータケース
15 ステータコア
15a 端縁部
15b 端面
15c 側面
16 コイル
17 フレーム
17a フランジ部
17b ネジ孔
17c 軸受保持部
17d 軸受保持部
17e 端子保持部
18 カバー
19 ネジ
21 継鉄部
22 ティース
23 スロット
24 インシュレータ
25 巻線
25s 巻線
26 コイルターミナル(コイル接続端子)
26U,26V,26W コイルターミナル
26a フック部
31 回転軸
32 ロータコア
33 マグネット
34 軸受
35 軸受メタル
36 軸受メタル
37 ウォーム
38 ウォームホイール
39 出力軸
41 センサマグネット
42 制御基板
43 中間ターミナル
51 コイル巻装部
52 端子取付部
52a 上面
52b 本体
53 ガイド壁(第1ガイド部)
53a,53b ガイド壁
54 ガイド壁
54a,54b ガイド壁
55 ガイド壁
55a,55b :ガイド壁
56 開口部
57 渡り線
58 ガイド突起
59 ガイド壁(第2ガイド部)
59a 端部
61 端子挿入孔
62 係合爪
63 リブ脚
64 切欠部
64a 上面
64b 内面
U1 U相第1コイル
U2 U相第2コイル
V1 V相第1コイル
V2 V相第2コイル
W1 W相第1コイル
W2 W相第2コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8