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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/04 20060101AFI20220128BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220128BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220128BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220128BHJP
   B64C 39/02 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
G01C7/04
G01C15/00 102C
B64D47/08
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017179701
(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公開番号】P2019056571
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144784(JP,A)
【文献】特開2016-151422(JP,A)
【文献】特開2014-145784(JP,A)
【文献】特開2017-020972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0122736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/04
G01C 15/00
B64D 47/08
B64C 27/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、測量機を備える測量システムであって、
前記移動体は、
測距光を発する出射部,反射測距光を受光する受光部,前記受光部の出力に基づき測距を行う測距部,前記測距光の光軸上に配置され前記測距光を偏向する第一光軸偏向部、前記反射測距光の受光光軸上に配置され前記第一光軸偏向部と同一の偏角および方向で前記反射測距光を偏向する第二光軸偏向部,および前記第一光軸偏向部および前記第二光軸偏向部の偏角および方向を検出する出射方向検出部,を有し、スキャン点までの距離・角度から前記スキャン点の三次元位置を取得するスキャナと、
前記スキャナのロール角・ピッチ角・ヨー角を検出し前記スキャナの姿勢情報を取得する姿勢検出装置と、
前記スキャナの測定基準点とのロール・ピッチ・ヨー軸方向の各ずれ量(dr,dp,dy)が予め既知となる位置に取り付けられたプリズムと、を備え、
前記測量機は、
前記移動体に取り付けた前記プリズムを追尾する追尾部と、
前記プリズムを測距測角し前記プリズムの位置情報を測定する測距部と、を備え、
前記移動体は、
前記プリズムの位置情報と前記スキャナの姿勢情報と前記スキャン点の三次元位置の時刻を同期し、
前記測量機により測定された前記プリズムの絶対座標から前記各ずれ量(dr,dp,dy)だけ移動させた座標を前記スキャナの前記測定基準点とし、前記スキャナの基準光軸を前記姿勢検出装置から検出した前記スキャナの姿勢方向に補正して、前記スキャナが取得した各スキャン点までの距離・角度を再計算する補正を行い、補正したスキャン点の絶対座標を記憶する
ことを特徴とする測量システム。
【請求項2】
前記姿勢検出装置は前記スキャナのロール・ピッチ・ヨーの三軸の加速度と角速度を検出する慣性計測装置であることを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
移動体と、測量機を備える測量システムであって、
前記移動体は、
測距光を発する出射部,反射測距光を受光する受光部,前記受光部の出力に基づき測距を行う測距部,前記測距光の光軸上に配置され前記測距光を偏向する第一光軸偏向部、前記反射測距光の受光光軸上に配置され前記第一光軸偏向部と同一の偏角および方向で前記反射測距光を偏向する第二光軸偏向部,および前記第一光軸偏向部および前記第二光軸偏向部の偏角および方向を検出する出射方向検出部,を有し、スキャン点までの距離・角度から前記スキャン点の三次元位置を取得するスキャナと、
前記スキャナの近傍に固定されたイメージセンサであって、前記移動体が水平姿勢の時に鉛直下方向を撮像し、画像データからロール角・ピッチ角・ヨー角を検出して前記スキャナの姿勢情報を取得するカメラと、
前記スキャナの測定基準点とのロール・ピッチ・ヨー軸方向の各ずれ量(dr,dp,dy)が予め既知となる位置に取り付けられたプリズムと、を備え、
前記測量機は、
前記移動体に取り付けた前記プリズムを追尾する追尾部と、
前記プリズムを測距測角し前記プリズムの位置情報を測定する測距部と、を備え、
前記移動体は、
前記プリズムの位置情報と前記スキャナの姿勢情報と前記スキャン点の三次元位置の時刻を同期し、
前記測量機による前記プリズムの絶対座標から前記各ずれ量(dr,dp,dy)だけ移動させた座標を前記スキャナの前記測定基準点とし、前記スキャナの基準光軸を前記カメラから検出した前記スキャナの姿勢方向に補正して、前記スキャナが取得した各スキャン点までの距離・角度を再計算する補正を行い、補正したスキャン点の絶対座標を記憶する
ことを特徴とする測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、測量現場の三次元データを取得する測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、測量現場の三次元測量が頻繁に行われている。例えば特許文献1には、カメラおよびプリズムを搭載した移動体と、トータルステーション(電子式測距測角儀、以下、測量機と称する)とを使用して、測量機でプリズムを追尾してカメラの撮影位置を特定し、写真測量を行う測量システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-145784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような測量システムでは、カメラの照度を確保しなければ、写真測量により得た成果物(三次元マップなど)にデータの抜けが生じることがあった。
【0005】
本発明は、測量現場の三次元データを取得するにあたり、データの抜けが生じにくい測量システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測量システムは、移動体と、測距光を発する出射部,反射測距光を受光する受光部,前記受光部の出力に基づき測距を行う測距部,前記測距光の光軸上に配置され前記測距光を偏向する第一光軸偏向部、前記反射測距光の受光光軸上に配置され前記第一光軸偏向部と同一の偏角および方向で前記反射測距光を偏向する第二光軸偏向部,および前記第一光軸偏向部および前記第二光軸偏向部の偏角および方向を検出する出射方向検出部,を有するスキャナと、前記スキャナの姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記スキャナの位置を測定する位置測定装置と、を備える。
【0007】
上記態様において、前記姿勢検出装置は前記スキャナの三軸の加速度と角速度を検出する慣性計測装置であり、前記位置測定装置はGPS装置であることも好ましい。
【0008】
上記態様において、前記姿勢検出装置は前記スキャナの三軸の加速度と角速度を検出する慣性計測装置であり、前記位置測定装置は前記移動体に取り付けたプリズムを追尾する測量機であることも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記姿勢検出装置は前記スキャナの姿勢を写真解析するためのカメラであり、前記位置測定装置は、前記移動体に取り付けたプリズムを追尾する測量機であることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の測量システムによれば、三次元測量の成果物をより高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る測量システムの全体構成図であり、(A)は同システムの側面図、(B)は同システムの底面図である。
図2】第1の実施形態に係る測量システムに搭載されるフレネルスキャナの構成ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る測量システムの制御ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る測量システムの動作フローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る測量システムにより可能なスキャンのイメージ図であり、(A)はスキャンの軌跡の例を示す図、(B)は同スキャンにより得られる三次元計測のあるイメージ図、(C)は同スキャンにより得られる三次元計測の別のイメージ図である。
図6】第2の実施形態に係る測量システムの全体構成図である。
図7】第2の実施形態に係る測量用移動装置の構成図であり、(A)は同装置の側面図、(B)は同装置の底面図である。
図8】第2の実施形態に係る測量システムの制御ブロック図である。
図9】第2の実施形態に係る測量システムの動作フローチャートである。
図10】第3の実施形態に係る測量システムの測量用移動装置の構成図であり、(A)は同装置の側面図、(B)は同装置の底面図である。
図11】第3の実施形態に係る測量システムの制御ブロック図である。
図12】第3の実施形態に係る測量システムの動作フローチャートである。
図13】第2の実施形態に係る測量システムのある変形例である。
図14】第2の実施形態に係る測量システムの別の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る測量システム1の構成図であり、(A)は同システム1の側面図、(B)は同システム1の底面図である。測量システム1は、移動体2と、スキャナ3と、GPS装置4と、IMU5を有する、測量用移動装置10である。
【0014】
移動体2は、自律飛行可能な無人航空機(UAV:Unmanned Air Vehicle)である。移動体2は、放射状に延出する複数のプロペラ6と、図示しない飛行ユニットを有し、予め定められた飛行経路を飛行したり、遠隔操作により自由に飛行することが可能である。
【0015】
GPS装置4は、移動体2に固定されており、GPS衛星から信号を受信し、UTC時刻・緯度・経度を取得する。GPS装置4は、スキャナ3の位置を測定する位置測定装置として機能する。
【0016】
IMU(慣性計測装置)5は、移動体2に内蔵されており、3軸ジャイロと3軸加速度センサを有し、スキャナの3軸方向(ロール・ピッチ・ヨー)の角速度と加速度を取得する。IMU5は、スキャナ3の姿勢を検出する姿勢検出装置として機能する。
【0017】
スキャナ3は、レーザ測距光を送光し、スキャン点の三次元位置を計測する。スキャナ3は、光の出射部と受光部にそれぞれ、リズレープリズム(Risley Prism)を備える光軸偏向部が配置されており、測距光を任意の方向に偏向できる。スキャナ3の基準光軸Oは、移動体2が水平姿勢の時に鉛直下方向に向くように設けられている(図1(A)参照)。なお、符号3oは、基準光軸O上にあるスキャナ3の測定基準点を示している。
【0018】
図2はスキャナ3の構成ブロック図である。スキャナ3は、出射部3a、受光部3b、測距部3c、スキャン演算部3d、出射方向検出部3mを有する。出射部3aは、発光素子3eと、一対のリズレープリズム3f,3gを備える。発光素子3eからは、測距光3h’が出射される。リズレープリズム3f,3gは、測距光の光軸3hを中心に対向し、モータドライバ3nによりそれぞれ独立に回転可能である。リズレープリズム3f,3gは、測距光3h’を偏向する第一光軸偏向部として機能する。受光部3bは、受光素子3iと、複数のリズレープリズムが連続した、一対のフレネルプリズム3j,3kを備える。受光素子3iは、スキャン点からの反射測距光を受光する。フレネルプリズム3j,3kは、反射測距光3l’の光軸3lを中心に対向し、モータドライバ3nによりそれぞれ独立に回転可能である。フレネルプリズム3j,3kは、反射測距光3l’を偏向する第二光軸偏向部として機能する。なお、図2では、出射側に第一光軸偏向部が配置され、受光側に第二光軸偏向部が配置されているが、出射側と受光側で光軸偏向部を共用する構成であってもよい。
【0019】
測距部3cは、測距光3h’を送光し、受光素子3iの受光信号に基づき、測距光3h’が往復する時間を計測することで,スキャン点までの距離を取得する。出射方向検出部3mは、モータドライバ3nに入力する駆動パルスをカウントすることで、または、エンコーダを使用して、リズレープリズム3f,3gの回転方向、回転量、回転速度を検出する。リズレープリズム3f,3gを通過することで、測距光3h’は任意の方向に偏向される。スキャン演算部3dは、出射方向検出部3mからリズレープリズム3f,3gの屈折率と回転角を得て、これらに基づき、測距光3h’の偏角および方向を演算する。
【0020】
出射方向検出部3mは、同様に、フレネルプリズム3j,3kの回転方向、回転量、回転速度を検出する。スキャン演算部3dは、フレネルプリズム3j,3kがリズレープリズム3f,3gと常に同じ偏角,方向となるように制御する。フレネルプリズム3j,3kを通過することで、反射測距光3l’は受光光軸3lと合致するように偏向される。
【0021】
以上の構成により、スキャナ3では、リズレープリズム3f,3gの回転位置の組み合わせにより、測距光3h’の偏向角および方向を任意に偏向し、スキャン点の三次元点群データを取得することができる。また、リズレープリズム3f,3gの位置関係を固定した状態で、リズレープリズム3f,3gを一体回転することで、測距光3h’を、偏向基準軸O’を中心として、例えば円状に走査させることができる(後述の図3参照)。
【0022】
図3は測量システム1の制御ブロック図である。測量システム1は、前述したスキャナ3、GPS装置4、IMU5と、演算制御部7および操作部8を有する。操作部8からは、演算制御部7に対し各種の動作指示や設定を入力できる。
【0023】
演算制御部7は、例えばCPU,ROM,RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算制御部7は、図示しない飛行ユニットを制御するとともに、スキャナ3から三次元点群データ(スキャン点までの距離および角度)を取得し、GPS装置4からスキャナ3の位置情報(緯度および経度)を取得し、IMU5からスキャナ3の姿勢情報(ロール角・ピッチ角・ヨー角)を取得する。三次元点群データとスキャナの位置情報および姿勢情報には、それぞれ、スキャナ3の送光信号の出力のタイミングで、GPS装置4による時刻情報が付与される。演算制御部7は、時刻情報に基づき、スキャナ3で得た三次元点群データと、GPS装置4で得たスキャナの位置情報と、IMU5で得たスキャナの姿勢情報を紐づけて記録する。演算制御部7は、さらに、スキャナ3で得た三次元位置をスキャナの位置と姿勢で補正するスキャン位置補正部7Aを有する。この詳細は後述する。
【0024】
次に、図4を参照して、測量システム1の動作フローを説明する。
【0025】
まず、ステップS101で、測量システム1の演算制御部7は、GPS装置4から、三次元位置(絶対座標)を取得する。GPS装置4とスキャナ3は一体となっているので、GPS装置4が取得した位置情報はスキャナの位置とみなすことができる。
【0026】
次に、ステップS102で、ステップS101と並行して、スキャナ3は、測距・測角をし、スキャン点の三次元位置を計測する。
【0027】
次に、ステップS103で、ステップS101~S102と並行して、IMU5は、スキャナの姿勢(ロール角・ピッチ角・ヨー角)を検出する。
【0028】
次に、ステップS104で、演算制御部7は、ステップS101でGPS装置4から得たスキャナの位置情報と、ステップS102でスキャナ3から得たスキャン点の三次元点群データと、ステップS103でIMU5から得たスキャナの姿勢情報を、時刻によって紐づける。そして、スキャン位置補正部7Aは、ステップS102で得たスキャン点の三次元位置を、スキャナの位置と姿勢で補正する。
【0029】
具体的に、ステップS101で、スキャナ3の位置が絶対座標で取得されている。また、ステップS103で、スキャナ3の傾き(姿勢)が分かっている。従って、スキャン位置補正部7Aは、スキャナの基準光軸Oをスキャナの姿勢方向に補正し、GPS装置4で得た座標をスキャナの測定基準点3oとして、スキャナ3が測定した各スキャン点までの距離・角度を、再計算する。
【0030】
最後に、ステップS105で、演算制御部7は、ステップS104で補正したスキャン点の三次元位置(絶対座標)を記憶し、動作を終了する。
【0031】
以上の測量システム1によれば、次の効果が得られる。測量システム1では、スキャナ3(レーザスキャナ)を使用しているので、照度に起因する三次元測量成果物のデータ欠けは生じない。
【0032】
また、測量システム1を使用すれば、スキャナ3により、測距光3h’を自由に偏向できるので、測距光3h’を高速で回転させることで、図5(A)に示すような、二次元円状の走査が可能である(図中の矢印は移動体2の進行方向を示している)。高速に偏向させることで、図5(B)に示すように、ランダムな点の三次元点群データを取得することができるので、測量現場の草木なども測定することができる。または、図5(C)に示すように、スキャンしたい構造物に向けてスキャンすれば、構造物の上面52にしか測距光が当たらないラインスキャナ(一次元走査)に対し、スキャナ3は、構造物の上面52だけでなく側面51にも測距光を当てることができる。このため、測量現場の三次元測量にあたり、成果物のデータの抜けを減らすことができる。なお、上記は一例であり、スキャナ3は、ラインスキャンや、その他の任意のスキャンが可能である。
【0033】
(第二の実施形態)
以下、第1の実施形態と同一の要素については、同一の符号を使用して説明を割愛する。図6は第2の実施形態に係る測量システム1’の全体構成図であり、図7は測量システム1’の測量用移動装置の構成図であり、(A)は同装置の側面図、(B)は同装置の底面図である。図6に示すように、測量システム1’は、測量用移動装置10’と、測量機20で構成される。
【0034】
図7(A)に示すように、測量用移動装置10’は、移動体2と、スキャナ3と、IMU5と、測量機20のターゲットとなるプリズム9とを有する。本形態では、プリズム9は、スキャナ3のレンズ部の先端横に固定されている。プリズム9の固定位置はこれ以外の箇所であってもよいが、スキャナの測定基準点3oとプリズム9の光学中心(光学的な反射点)9oとのロール軸・ピッチ軸・ヨー軸方向の各ずれ量(dr,dp,dy)は、プリズム9を取り付ける際に既知としておく。
【0035】
測量機20は、ターゲットを自動追尾可能なトータルステーションであり、水平回転する本体20aと、本体20aに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡20bとを有する(図6)。測量機20は、三脚を用いて既知の点に据え付けられている。本形態において、測量機20は、スキャナ3の位置を測定する位置測定装置として機能する。
【0036】
図8は測量システム1’の制御ブロック図である。測量用移動装置10’側は、スキャナ3、IMU5、演算制御部7、操作部8、通信部11、およびタイマ12を有する。演算制御部7は、スキャナ3から三次元点群データ(スキャン点の距離および角度)を取得し、IMU5からスキャナ3の姿勢情報(ロール角・ピッチ角・ヨー角)を取得する。演算制御部7は、スキャナ3の送光信号の出力のタイミングでタイマ12からシステムタイムを取得し、三次元点群データとスキャナの姿勢情報に時刻を付与する。スキャン位置補正部7Aは、スキャナ3で得た三次元位置をスキャナの位置と姿勢で補正する。この詳細は後述する。
【0037】
測量機20側は、水平角検出器21と、鉛直角検出器22と、水平回転駆動部23と、鉛直回転駆動部24と、表示部25と、操作部26と、演算制御部27と、追尾部28と、測距部29と、記憶部30と、通信部31と、タイマ32を有する。
【0038】
水平回転駆動部23と鉛直回転駆動部24は、モータであり、演算制御部27に制御されて、それぞれ水平回転軸と鉛直回転軸を駆動する。表示部25と操作部26は、測量機20のインターフェースであり、測量作業の指令・設定や作業状況および測定結果の確認などが行える。水平角検出器21と鉛直角検出器22は、アブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。水平角検出器21は水平回転軸に対して設けられ本体20aの水平方向の回転角を検出する。鉛直角検出器22は鉛直回転軸に対して設けられ望遠鏡20bの鉛直方向の回転角を検出する。
【0039】
追尾部28は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ等を追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサ又はCMOSセンサ等のイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部28は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を演算制御部27に送る。演算制御部27は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット像の中心と望遠鏡20bの視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置をターゲットの位置として検出し、常に望遠鏡20bがターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0040】
測距部29は、赤外レーザ等の測距光をターゲットに射出する測距送光系と、フォトダイオード等で反射測距光を受光する測距受光系を有する。測距部29は、ターゲットからの反射測距光を測距受光系で受光するとともに、測距光の一部を分割して内部参照光として受光し、反射測距光と内部参照光との位相差に基づきターゲットまでの距離を測定する。また、水平角検出器21と鉛直角検出器22の検出値から、ターゲットを測角する。
【0041】
演算制御部27は、例えばCPU,ROM,RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラであり、回転駆動部23,24の制御、測距部29および追尾部28の制御を行う。演算制御部は、測距部29の送光信号の出力のタイミングでタイマ32からシステムタイムを取得し、測距・測角値に時刻を付与する。記憶部30は、例えばハードディスクドライブであり、上記演算制御のための各種プログラムが格納されている。測距部29が取得したターゲット位置(距離および角度)は、時刻情報とともに記憶部30に記憶される。通信部31は、測量用移動装置10’側の通信部11との間で無線通信が可能であり、演算制御部27の制御下において、記憶部30に記憶されたターゲット位置を測量用移動装置10’へ送信する。
【0042】
次に、図9を参照して、測量システム1’の動作フローを説明する。
【0043】
まず、ステップS201で、測量機20は測量用移動装置10’のプリズム9の自動追尾を開始する。
【0044】
次に、ステップS202で、測量機20は、自動追尾した位置を測距部29で測距・測角し、プリズム9の三次元位置(絶対座標)を測定する。測量機20は、プリズム9の三次元位置を、測量用移動装置10’に送信する。
【0045】
次に、ステップS203で、ステップS201~S202と並行して、測量用移動装置10’は、スキャナ3で測距・測角をし、スキャン点の三次元位置を計測する。
【0046】
次に、ステップS204で、ステップS201~S203と並行して、測量用移動装置10’は、IMU5からスキャナの姿勢(ロール角・ピッチ角・ヨー角)を検出する。
【0047】
次に、ステップS205で、測量用移動装置10’の演算制御部7は、ステップS202で測量機20から得たプリズム9の位置情報と、ステップS203でスキャナ3から得たスキャン点の三次元点群データと、ステップS204でIMU5から得たスキャナの姿勢情報を、時刻によって紐づける。そして、スキャン位置補正部7Aは、ステップS203で得たスキャン点の三次元位置を、スキャナの位置と姿勢で補正する。
【0048】
具体的に、ステップS202で、プリズム9の位置が絶対座標で、かつ測量機20により精密に測定されている。また、ステップS204で、スキャナ3の傾き(姿勢)が分かっている。従って、スキャン位置補正部7Aは、スキャナの基準光軸Oをスキャナの姿勢方向に補正し、プリズム9の座標から各ずれ量(dr,dp,dy)だけ移動させた座標をスキャナの測定基準点3oとして、スキャナ3が測定した各スキャン点までの距離・角度を、再計算する。
【0049】
最後に、ステップS206で、測量用移動装置10’は、ステップS205で補正したスキャン点の三次元位置(絶対座標)を記憶し、動作を終了する。
【0050】
本形態の測量システム1’を使用すれば、第1の実施形態で得られた効果に加えて、スキャナ3の位置(スキャナの測定基準点3o)が、測量機20を使用して高精度で得ることができるので、三次元点群データの精度をより上げることができる。
【0051】
(第三の実施形態)
以下、第1または第2の実施形態と同一の要素については、同一の符号を使用して説明を割愛する。第3の実施形態に係る測量システム1”の全体構成図は図6と同様である。図10は、第3の実施形態に係る測量用移動装置10”の構成図であり、(A)は同装置の側面図、(B)は同装置の底面図である。図11は、測量システム1”の制御ブロック図である。
【0052】
10に示すように、測量システム1”は、測量用移動装置10”と、測量機20で構成される。図10(A)および図10(B)に示すように、測量用移動装置10”は、移動体2と、スキャナ3と、プリズム9と、そして、IMU5に代えてカメラ13を有する。プリズム9は、第2の実施形態と同様に、スキャナ3のレンズ部の先端横に固定されている。スキャナ3の測定基準点3oとプリズム9の光学中心9oとのロール軸・ピッチ軸・ヨー軸方向の各ずれ量(dr,dp,dy)は、プリズム9を取り付ける際に既知としておく。
【0053】
カメラ13は、CCDセンサ又はCMOSセンサ等のイメージセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できるようになっている。例えば、各画素は、カメラ13の撮像光軸O”を原点とした座標系で画像上での位置が特定される。カメラ13は、移動体2に内蔵されており、スキャナ3の機械機構と位置をずらして固定されている。カメラ13の撮像光軸O”は、移動体2が水平姿勢の時に鉛直下方向に向くように設けられている(図10(B)参照)。本形態で、カメラ13は、スキャナ3の姿勢を検出する姿勢検出装置として機能する。
【0054】
測量システム1”の制御系は、図11に示すように、測量用移動装置10”側は、スキャナ3、演算制御部7、操作部8、通信部11、タイマ12、およびカメラ13を有する。演算制御部7は、スキャナ3から三次元点群データ(スキャン点の距離および角度)を取得し、カメラ13から画像データを取得する。演算制御部7は、スキャナ3の送光信号の出力のタイミングでタイマ12からシステムタイムを取得し、三次元点群データと画像データに時刻を付与する。スキャン位置補正部7Aは、スキャナ3で得た三次元位置をスキャナの位置と姿勢で補正する。この詳細は後述する。測量機20側の制御系は、第2の実施形態と同様である。
【0055】
次に、図12を参照して、測量システム1”の動作フローを説明する。
【0056】
まず、ステップS301で、測量機20は測量用移動装置10”のプリズム9の自動追尾を開始する。
【0057】
次に、ステップS302で、測量機20は、自動追尾した位置を測距部29で測距・測角し、プリズム9の三次元位置(絶対座標)を測定する。測量機20は、プリズム9の三次元位置を、測量用移動装置10”に送信する。
【0058】
次に、ステップS303で、ステップS301~S302と並行して、測量用移動装置10”は、スキャナ3で測距・測角をし、スキャン点の三次元位置を計測する。
【0059】
次に、ステップS304で、ステップS301~S303と並行して、測量用移動装置10”は、カメラ13で画像データを取得する。測量用移動装置10”の演算制御部7は、画像データを写真解析して、カメラ13の姿勢(ロール角・ピッチ角・ヨー角)を検出する。カメラ13とスキャナ3は一体となっているので、カメラ13の姿勢はスキャナ3の姿勢とみなすことができる。
【0060】
次に、ステップS305で、演算制御部7は、ステップS302で測量機20から得たプリズム9の位置情報と、ステップS303でスキャナ3から得たスキャン点の三次元点群データと、ステップS304で写真解析から得たスキャナの姿勢情報を、時刻によって紐づける。そして、スキャン位置補正部7Aは、ステップS303で得たスキャン点の三次元位置を、スキャナの位置と姿勢で補正する。
【0061】
具体的に、ステップS302で、プリズム9の位置が絶対座標で、かつ測量機20により精密に測定されている。また、ステップS304で、スキャナ3の傾き(姿勢)が分かっている。従って、スキャン位置補正部7Aは、スキャナの基準光軸Oをスキャナの姿勢方向に補正し、プリズム9の座標から各ずれ量(dr,dp,dy)だけ移動させた座標をスキャナの測定基準点3oとして、スキャナ3が測定した各スキャン点までの距離・角度を、再計算する。
【0062】
最後に、ステップS306で、測量用移動装置10”は、ステップS305で補正したスキャン点の三次元位置(絶対座標)を記憶し、動作を終了する。
【0063】
本形態の測量システム1”を使用すれば、第1および第2の実施形態における効果に加えて、スキャナ3の姿勢検出のためにカメラ13を使用しているので、高精度なIMUを使用するよりも安価にシステムを構成することができる。
【0064】
次に、以上の実施形態らの好適な変形例を示す。
【0065】
(変形例1)
第2または第3の実施形態において、測量用移動装置10’,10”と測量機20は、それぞれタイマ12とタイマ32を持ち、時刻を同期しているが、以下の構成で、高精度に時刻を同期するのが好ましい。第2の実施形態を用いて例を示す。図13は、第2の実施形態に係る測量システム1’の変形例である。
【0066】
測量用移動装置10’は、タイマ12に代えて、GPS時刻部14を有し、さらに時刻同期部15を有する。測量機20は、タイマ32に代えて、GPS時刻部33を有する。
【0067】
GPS時刻部14およびGPS時刻部33は、GPS衛星から信号を受信し、UTC時刻と定周期パルスであるPPS信号を生成する時計を有している。GPS時刻部14は、スキャナ3の送光信号の出力のタイミングで、三次元点群データとスキャナの姿勢情報に第1の時刻を付与する。GPS時刻部33は、測距部29の送光信号の出力のタイミングで、プリズム9の測距・測角値に第2の時刻を付与する。
【0068】
時刻同期部15は、スキャナ3によるスキャンが全て終了した後に、演算制御部7から第1の時刻が付与された三次元点群データを取得し、通信部11を介して第2の時刻が付与されたプリズム9の測距・測角値を取得する。測量機20の測量周期がスキャナ3のスキャン周期よりも短い周期(高周波数)となっている場合は、時刻同期部15は、第1の時刻と第2の時刻が一致するものを抽出し、このときのプリズム9の測距・測角値と三次元点群データを対応付ける。第1の時刻と第2の時刻が一致するものが無い場合は、ある第1の時刻の直前の第2の時刻と直後の第2の時刻を抽出し、内挿によって第2の時刻の測距・測角値を算出する。なお、上記の時刻同期は、測量周期がスキャン周期よりも長い周期(低周波数)となっている場合にも応用できる。
【0069】
(変形例2)
第2または第3の実施形態において、測量用移動装置10’,10”の移動体2はUAVであるが、移動体2は測量現場を移動可能であればよい。第2の実施形態を用いて例を示す。図14は、第2の実施形態に係る測量システム1’の別の変形例である。図14に示す移動体2’は車両であり、車両のルーフに、スキャナ3と、IMU5と、プリズム9とを一体にしたユニットが搭載されている。図14に示す移動体2”は、手持ち可能な筐体であり、スキャナ3と、IMU5と、プリズム9とを一体にしたユニットが取り付けられている。移動体がこのような形態であっても、第2の実施例と同等の効果が得られる。
【0070】
(変形例3)
第1または第2の実施形態において、測量用移動装置10,10’の任意の要素として、スキャナ3で取得した三次元点群データに色を付けるために、カメラ13を備えてもよい。第3の実施形態において、カメラ13はスキャナの姿勢検出のために設けられているが、同様に、三次元点群データに色を付けるために使用されてもよい。
【0071】
また、カメラ13を有する実施形態では、スキャナ3は測距光3h’を自由に偏向させ、図5(A)に示すような二次元円状の走査が可能であるため、カメラ13の画角に合わせたスキャンが可能となる。スキャン範囲をカメラ13の画像範囲に合わせることができるので、スキャン範囲に無駄がなく、カメラ13画像内の三次元点群データの点群密度を上げることができる。
【0072】
(変形例4)
第1~第3の実施形態において、スキャン点の三次元位置をスキャナの位置と姿勢で補正するスキャン位置補正部7Aは、測量用移動装置の演算制御部7に設けられているが、情報処理端末(パーソナルコンピュータなど)に設けられてもよい。
【0073】
(変形例5)
第2の実施形態のステップS202および第3の実施形態のステップS302において、測量機20はプリズム9の三次元位置を測量用移動装置10に送信するとしているが、別の記録装置に送信してもよい。また、スキャン点の三次元点群データおよび姿勢情報も別の記録装置に送信して、情報処理端末にて各データを取得し、後日に補正を行ってもよい。
【0074】
以上、本発明の好ましい測量システムについて、実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1,1’ ,1”測量システム
2 移動体
3 スキャナ
3a 出射部
3b 受光部
3c 測距部
3f,3g リズレープリズム(第一光軸偏向部)
3h 測距光の光軸
3h’ 測距光
3j,3k フレネルプリズム(第二光軸偏向部)
3l 反射測距光の受光光軸
3l’ 反射測距光
3m 出射方向検出部
4 GPS装置(位置測定装置)
5 慣性計測装置(姿勢検出装置)
9 プリズム
10,10’,10”測量用移動装置
13 カメラ(姿勢検出装置)
20 測量機(位置測定装置)
28 追尾部
図1
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