IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コマックス ホルディング アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6994891ケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせする方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせする方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20220106BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20220106BHJP
   H01R 43/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01B13/00 521
H01B13/012 A
H01R43/28
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017193643
(22)【出願日】2017-10-03
(65)【公開番号】P2018101606
(43)【公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】16192006.1
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506058451
【氏名又は名称】コマックス ホルディング アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KOMAX HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ビート エステルマン
(72)【発明者】
【氏名】シモン フーゲナー
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0066190(US,A1)
【文献】国際公開第2012/120611(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01B 13/012
H01R 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本のケーブル(110,120)を有するケーブルハーネス(100)、特に撚り合わされたケーブルハーネス(100)の予め組み立てられたケーブル端部(111,121)を正しい回転位置に位置合わせする方法であって、
a.前記少なくとも2本のケーブル(110,120)のうち位置合わせされるケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部(111)を、その長手方向軸(L)に対して所定の目標回転位置に位置合わせするために、前記ケーブルハーネス(100)のうち、前記ケーブル端部に隣接し、特に撚り合わされた部分(101)において、前記ケーブルハーネス(100)の全体を回転させるステップであって、前記位置合わせされるケーブル(110)の少なくとも前記ケーブル端部(111)が、前記ケーブルハーネス(100)の回転中に自由に回転可能である、ステップと、
b.特に撚り合わされていない前記自由なケーブル端部(111)の一部(112)において、位置合わせされた前記ケーブル(110)をその目標回転位置に固定的に保持するステップと、
c.前記ケーブルハーネス(100)のうち位置合わせされる別の各ケーブル(120)に対して、前記ステップaおよびbを繰り返すステップであって、すでに位置合わせされた各ケーブル(110)が、該ケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部(111)の一部(112)において、その目標回転位置に固定的に保持されたままになる、ステップと、を含む方法。
【請求項2】
まだ位置合わせされていない各ケーブル(120)が、該ケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部(121)の一部(122)において固定的に保持される一方で前記ケーブルハーネス(10)が、位置合わせされるケーブル(110)のケーブル端部(111)を位置合わせするために回転されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
位置合わせされる少なくとも1本のケーブル(110)、特に位置合わせされる各ケーブル(110)の前記ケーブル端部(111)の実際の回転位置が、前記ケーブルハーネス(100)の回転前、回転中、またはその両方で検出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
位置合わせされる少なくとも1本のケーブル、特に位置合わせされる各ケーブルの、特に撚り合わされていない前記自由なケーブル端部(111)が、回転可能に案内される一方で、前記ケーブルハーネス(100)が、それぞれの前記ケーブル端部(111)を位置合わせするために回転されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2本のケーブル(110、121)を有するケーブルハーネス(100)、特に撚り合わされたケーブルハーネス(100)の予め組み立てられたケーブル端部(111,121)を正しい回転位置に位置合わせするための、特に請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を実施する装置(1)であって、前記ケーブルハーネス(100)のうち、前記ケーブル端部(111,121)に隣接し、特に撚り合わされた部分(101)において、前記ケーブルハーネス(100)を把持するとともに、前記ケーブルハーネス(10)をその長手方向軸(L)を中心として回転させる回転把持装置(30)を有する装置(1)において、前記少なくとも2本のケーブル(110,120)のそれぞれに対して、それぞれ独立したケーブルグリップ(10,20)を有し、前記ケーブルグリップ(10,20)は、前記回転把持装置(30)によって正しい回転位置に位置合わせされた前記ケーブル(110,120)を、該ケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部(111,121)の一部(112,122)において解放可能に把持することを特徴とする装置(1)。
【請求項6】
前記少なくとも2つのケーブルグリップ(10,20)の少なくとも1つ、好ましくは全てのケーブルグリップ(10,20)が、互いに調整可能な少なくとも一対のグリップジョー部(11,12;21,22)を有し、前記グリップジョー部が、ケーブル端部(111,121)をクランプ状に固定的に保持するための閉鎖位置と、ケーブル端部(111,121)を受け入れて解放するための開放位置とに移動可能であって、好ましくは、ケーブル端部(111,121)を少なくとも部分的に半径方向に取り囲んでケーブル長手方向軸(L)に沿って案内するための中間位置に移動可能であることを特徴とする、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのケーブルグリップ(10,20)の前記グリップジョー部(11,12;21,22)は、少なくとも1本の別のケーブル(120;110)の前記ケーブル端部(121、111)をさらに受け入れるとともに、閉鎖位置において、好ましくは閉鎖位置だけでなく中間位置においても、前記ケーブル端部(121、111)を少なくとも部分的に半径方向に取り囲んでケーブル長手方向軸(L)に沿って案内するように設計されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記ケーブルグリップ(10,20)の前記グリップジョー部(11,12;21,22)が、それぞれの前記ケーブル端部(111,121)を固定的に保持するか、部分的に半径方向に取り囲むか、あるいは、案内するために、対応する把持溝または収容溝(11.1,12.1、11.2、12.2;21.1、22.1、21.2、22.2)を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記回転把持装置(30)と前記少なくとも2つのケーブルグリップ(10,20)が、前記装置(1)によって位置合わせされるケーブルハーネス(100)の長手方向(L)に一列に配置されていることを特徴とする、請求項5から8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記少なくとも2つのケーブルグリップ(10,20)の少なくとも1つ、好ましくは全ての前記ケーブルグリップ(10,20)が、前記装置(1)によって位置合わせされるケーブルハーネス(100)の長手方向(L)に対して横方向、特に垂直に、好ましくは前進運動装置によって、それぞれの前記ケーブル端部(111,121)に送られることを特徴とする、請求項5から9のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記予め組み立てられたケーブル端部(111,121)のそれぞれの実際の回転位置を検出する検出装置(40)をさらに有することを特徴とする、請求項5から10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記検出装置(40)が、前記予め組み立てられたケーブル端部(111,121)の前記それぞれの実際の回転位置を検出して決定するために、デジタルカメラ(41)または光学投射センサと、画像分析装置と、好ましくは照明装置とを有することを特徴とする、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記検出装置(40)の少なくとも一部、特に前記デジタルカメラ(41)または前記光学投射センサが、前記装置(1)によって位置合わせされる前記ケーブル端部(111,121)の領域の正面または半径方向側方に配置されている、請求項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記予め組み立てられたケーブル端部(11,121)をそれぞれの目標回転位置に調節された状態で位置合わせするために、前記回転把持装置(30)と前記少なくとも2つのケーブルグリップ(10,20)と前記検出装置(40)とに動作可能に接続された制御装置をさらに有することを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
少なくとも2本のケーブル(110,120)を有するケーブルハーネス(100)、特に撚り合わされたケーブルハーネス(100)の予め組み立てられたケーブル端部(111,121)にプラグハウジングを取り付けるケーブル取付装置であって、取り付けられる前記プラグハウジングに対して前記予め組み立てられたケーブル端部(111,121)を正しい回転位置に位置合わせするために、請求項5から14のいずれか1項に記載の装置(1)を有するケーブル取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数本すなわち少なくとも2本のケーブルを有するケーブルハーネス、特に撚り合わされたケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせする方法および装置に関する。また、本発明は、数本のケーブルを有するケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部にプラグハウジングを取り付けるケーブル取付装置であって、取り付けられるプラグハウジングに対して予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせする位置合わせ装置を有するケーブル取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車または飛行機において使用されるようなケーブルハーネスは、複数のケーブルからなり、複数のケーブルは、その予め組み立てられたケーブル端部に、いわゆるプラグハウジングを備えており、それは、通常、プラグハウジングの組立体またはプラグハウジングの組み立てと呼ばれている。この構成を得るために、予め組み立てられたケーブル端部、すなわち、所定の長さに切断され、絶縁体が剥離されて接点部分を備えたケーブル端部が、プラグハウジングのチャンバすなわちレセプタクルに挿入される。
【0003】
ケーブルハーネスのケーブルは、通常、組み立てられる個々のケーブル端部を有し、このために、適切な機械装置を用いて、同じくプラグハウジングのチャンバに個別に挿入される。ケーブルハーネスにおいては、最近、複数の独立したケーブルからなる撚り合わされたケーブルハーネス、主として撚り合わされたケーブル対がますます用いられているが、この場合、ケーブルハーネスの自由なケーブル端部、特に、撚り合わされていない、すなわち伸ばされているケーブル端部を組み立てることも必要になる。撚り合わされたケーブル対は、例えば、組み立てられた後、すなわち、所定の長さに切断され、絶縁体が剥離されて接点部分が圧着された後、ケーブル対の2本のケーブルを撚り合わせることで、欧州特許出願公開第1032095号明細書に記載のケーブル加工機で製造される。基本的に、このような撚り合わされたケーブル対は、自由なケーブル端部で予め撚り合わされたケーブル対を組み立てることによっても製造可能である。そのために、ケーブル対は適切なケーブル加工機で曲げられ、ケーブル対の端部におけるケーブル端部は、撚りを解かれて伸ばされた後、最終段階(絶縁体の剥離および接点部分の圧着)へと組み立てられる。
【0004】
しかしながら、その後、ケーブルハーネスの一方の端部における数本の予め組み立てられた自由なケーブル端部にプラグハウジングを取り付ける場合、プラグハウジングのチャンバに対して、ケーブル端部の接触子をそれぞれ要求される目標回転位置/角度位置に確実にすることが不可能であるという問題があった。このような問題は、特に、撚り合わされたケーブルハーネスにおいて発生するが、任意の方法で組み合わされて結合部を形成する複数のケーブルを含む他のケーブルハーネスにおいても発生する。しかしながら、例えば、矩形の断面を有する接触子が、例えば、矩形のチャンバを有するプラグハウジングに嵌め込まれる場合、ケーブル端部とケーブル端部の接触子との少なくとも一方が不適切な位置に置かれると、取り付けには好ましくない。ケーブル端部は、理想的には、できる限り正確に正しい回転位置に位置合わせされる必要があり、それにより、取付動作を正常に実行することができる。
【0005】
欧州特許出願公開第1429430号明細書には、取り付けられるハウジングのチャンバに対して、単一ケーブルの予め組み立てられたケーブル端部を正しい角度位置に移行することができる装置が開示されている。しかしながら、単一ケーブルのために欧州特許出願公開第1429430号明細書に記載された方法は、ケーブル端部において接触子の撚り部を互いに個別に修正する方法としては、技術的見地から、ケーブルハーネス、特に、複数のケーブルを有する撚り合わされたケーブルハーネスには適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、少なくとも2本以上のケーブルを有するケーブルハーネス、特に撚り合わされたケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部を、正しい回転位置における特定の目標回転位置にそれぞれ個別に位置合わせすることができる方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法と請求項5に記載の装置によって達成される。本発明の有利な実施態様は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の方法は、少なくとも2本のケーブルからなるケーブルハーネス、特に撚り合わされたケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせする方法であって、以下のステップ、すなわち、
a.少なくとも2本のケーブルのうち位置合わせされるケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部を、その長手方向軸に対して所定の目標回転位置に位置合わせするために、ケーブルハーネスのうち、ケーブル端部に隣接し、特に撚り合わされた部分において、少なくとも2本のケーブルからなるケーブルハーネスの全体を回転させるステップであって、位置合わせされるケーブルの少なくともケーブル端部が、ケーブルハーネスの回転中に自由に回転可能である、ステップと、
b.特に撚り合わされていない自由なケーブル端部の一部において、位置合わせされたケーブルをその目標回転位置に固定的に保持するステップと、
c.ケーブルハーネスのうち位置合わせされる別の各ケーブルに対して、ステップaおよびbを繰り返すステップであって、すでに位置合わせされた各ケーブルが、そのケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部の一部において、その目標回転位置に固定的に保持されたままになる、ステップと、によって特徴付けられる。
【0009】
したがって、本発明の核心部分は、予め組み立てられた自由なケーブル端部、特に撚り合わされていないケーブル端部を、ケーブルハーネスの一方の端部において正しい回転位置に位置合わせすることにあり、それは、位置合わせされる各ケーブルすなわち各ケーブル端部に対して、ケーブル端部に隣接する一部において、ケーブルハーネスの全体が、位置合わせされる各ケーブルすなわち各ケーブル端部がその目標回転位置に達するまで順次回転され、次に、そのように位置合わせされたケーブルすなわちケーブル端部が、目標回転位置に達した後で、そのケーブル端部の一部において、固定または固定的に保持されることで実現され、すでに位置合わせされた各ケーブルは、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部の一部において、その目標回転位置に固定的に保持されたままになる。
【0010】
本発明では、ケーブルハーネスの位置合わせされるケーブル端部は、ケーブルハーネスの一方の端部に位置するケーブル端部である。さらに、本発明では、位置合わせされるケーブル端部は、ケーブルハーネスの一方の端部において自由に存在し、すなわち、ケーブルハーネスの複合体、例えば、撚り合わされた部分が、位置合わせされるケーブル端部の領域において解放されており、それによって、例えば、他の部分は撚り合わされているケーブルハーネスの場合、ケーブル端部、すなわちケーブル端部の領域におけるケーブルハーネスは撚りを戻され、好ましくは伸ばされてもいる。ただし、本発明では、ケーブル端部は、基本的に互いに解放され、互いに独立して把持され、少なくとも特定の領域において互いに対して移動し、特に互いに対して回転されるという点で、いずれの場合にも「自由」であるべきである。本発明に従って揃えられるケーブル端部が依然として互いに自由でない場合、本発明の有利な一実施態様によれば、位置合わせの前に、ケーブル端部を「解放」させること、例えば、撚りを戻すことが可能であり、あるいは、揃えられるケーブル端部の領域においてケーブルハーネス(すなわち、ケーブルハーネスの複合体、例えば、ケーブルハーネスの撚り合わされた部分)を解放させること、例えば、撚りを解くことが可能になる。
【0011】
本発明の有利な実施態様によれば、まだ位置合わせされていない各ケーブルが、そのケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部の一部において固定的に保持される一方で、ケーブルハーネスが、別のケーブルの予め組み立てられたケーブル端部を位置合わせするために回転されるようになっていてもよい。これによって、まだ位置合わせされていないケーブルの自由なケーブル端部、特に撚り合わされていないケーブル端部が、位置合わせプロセスすなわちケーブルハーネス全体の回転の妨げにならないことが有利に実現される。同様に、ケーブルハーネス全体の回転が容易になるが、これは、ケーブルハーネス全体が、互いに離れた2つの部分、すなわちケーブルハーネスの「境界」部分と、まだ位置合わせされていないケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部の一部の端部とにおいて、安定して固定的に保持されるためである。
【0012】
本発明の別の有利な実施態様によれば、少なくとも1本のケーブル、特に位置合わせされる各ケーブルのケーブル端部の実際の回転位置が、ケーブルハーネスの回転前、回転中、またはその両方で決定されるようになっている。一方で、これにより、特定のケーブル端部を位置合わせするためにケーブルハーネス全体を回転させる前に、回転角度および回転方向を決定することが可能になる。さらに、ケーブルハーネスの回転中の実際の回転位置を検出することで、位置合わせ動作の調節を実施することができる。
【0013】
さらに、本発明の別の実施態様によれば、少なくとも1本のケーブル、特に位置合わせされる各ケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部が、回転可能に案内される一方で、ケーブルハーネスが、それぞれのケーブル端部を位置合わせするために回転されるようになっていてもよい。これにより、好ましくは形状接続的に案内すること、すなわち少なくとも部分的に半径方向に取り囲むことで、位置合わせされるケーブル端部の回転軸が明確に規定されることが有利に実現され、その結果、ケーブルハーネスの回転動作、すなわち関連するケーブル端部の位置合わせがさらに安定する。なお、ケーブル端部の回転動作、すなわちケーブル端部の位置合わせ動作のために、しっかりと規定された回転軸を有することで、実際の回転位置の検出が明確に改善される。
【0014】
さらに、本発明の目的は、少なくとも2本のケーブルを有するケーブルハーネス、特に撚り合わされたケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせするための、特に上述した本発明の方法を実施するのに適した以下に記載の装置によって達成される。本発明の装置は、ケーブルハーネスのうちケーブル端部に隣接する部分において、ケーブルハーネス全体を把持するとともに、ケーブルハーネス全体をその長手方向軸を中心として回転させる回転把持装置を有している。回転把持装置は、ケーブルハーネス全体を把持して回転させるために、(例えば欧州特許出願公開第1429430号明細書に記載されているように)単一のケーブルの代わりに、例えば欧州特許出願公開第1429430号明細書に記載されたもののように設計されていてもよい。これは、位置合わせされる各ケーブルすなわち各ケーブル端部が、その目標回転位置に達するまで順次回転させることで実現される。
【0015】
次に、そのように位置合わせされた各ケーブルすなわち各ケーブル端部をその目標回転位置に達した後で固定的に保持するため、あるいは、すでに位置合わせされた各ケーブルすなわち各ケーブル端部を固定的に保持するために、本発明の装置は、少なくとも2本のケーブルのそれぞれに対して、それぞれ独立したケーブルグリップを有し、ケーブルグリップは、ケーブルの、特に撚り合わされていない自由なケーブル端部の一部において、ケーブルハーネスを解放可能に把持し、特に固定的に保持する。処理される2つ以上のケーブル端部をケーブルハーネスが有する場合、それに応じて、2つ以上のケーブルグリップが設けられ、すなわち、1つのケーブル端部に対して1つのケーブルグリップが設けられている。
【0016】
本発明の有利な一実施態様によれば、ケーブルグリップの少なくとも1つ、好ましくは全てのケーブルグリップが、互いに調整可能で互いに対応する少なくとも一対のグリップジョー部を有するようになっていてもよく、グリップジョー部は、ケーブル端部をクランプして固定的に保持するための閉鎖位置と、ケーブル端部を受け入れて解放するための開放位置とに移動可能であって、好ましくは、ケーブル端部を少なくとも部分的に半径方向に取り囲んでケーブル長手方向軸に沿って案内するための中間位置にさらに移動可能である。
【0017】
さらに、少なくとも1つのケーブルグリップのグリップジョー部は、少なくとも1本の別のケーブルのケーブル端部をさらに受け入れるとともに、閉鎖位置において、好ましくは閉鎖位置だけでなく中間位置においても、ケーブル端部を少なくとも部分的に半径方向に取り囲んでケーブル長手方向軸に沿って案内するように設計されていてもよい。
【0018】
それぞれのケーブル端部を固定的に保持するか、部分的に半径方向に取り囲むか、あるいは、案内するために、グリップジョー部が、対応する把持溝および収容溝の少なくとも一方を有していてもよい。例えば、グリップジョー部を、鉗子のジョー部のように形成することが考えられる。閉鎖位置でケーブル端部を固定的に保持するために、把持溝すなわち収容溝は、特にザラザラまたはギザギザした表面を有していてよい。それに対して、さらに別のケーブル端部を半径方向に取り囲んで案内するためだけに機能する溝すなわちグリップジョー部の領域は、滑らかな表面を有していてよい。
【0019】
位置合わせ装置の特に小型化設計を実現するために、回転把持装置と少なくとも2つのケーブルグリップが、位置合わせ装置によって位置合わせされるケーブルハーネスの長手方向に一列に配置されていてもよく、すなわち、少なくとも2つのケーブルグリップがそれぞれ、ケーブルハーネスの自由な端部領域、特に撚り合わされていない、すなわち伸ばされている端部領域を、ケーブルハーネスの軸方向に一列に把持できるように配置され、回転把持装置が、ケーブルハーネスのうち、自由な端部領域に隣接し、特に撚り合わされた部分を把持するようになっていてもよい。
【0020】
位置合わせされるケーブルハーネス、すなわち処理されるケーブルハーネスを位置合わせ装置に装着するために、本発明の有利な実施態様によれば、まず、ケーブルハーネスが回転把持装置に挿入されるようになっている。回転把持装置におけるケーブルハーネスの送り方向に応じて、特に、それが、ケーブルハーネスの長手方向に対して横方向、特に垂直に行われる場合には、少なくとも2つのケーブルグリップの少なくとも1つ、好ましくは全てのケーブルグリップが、位置合わせされるケーブルハーネスの長手方向に対して横方向、特に垂直に、それぞれのケーブル端部に送られるようになっていてもよい。少なくとも1つのケーブルグリップ、あるいは全てのケーブルグリップの送りは、対応する送り装置、好ましくはアクチュエータによって作動する送り装置によって実施可能である。
【0021】
本方法に類似して、本発明の装置が、予め組み立てられたケーブル端部のそれぞれの実際の回転位置を検出する検出装置をさらに有するようになっていてもよい。本発明の有利な実施態様によれば、検出装置が、予め組み立てられたケーブル端部のそれぞれの実際の回転位置を検出して決定するために、デジタルカメラまたは光学投射センサを有していてよい。さらに、検出装置は、投射画像を生成するため、すなわちそれを照らすために、照明装置を有していてよい。また、検出装置は、対応する画像分析ソフトウェアが実行される、例えばコンピュータによる画像分析装置などの画像分析装置であって、検出されたケーブル端部の画像、すなわちケーブル端部の投射画像から、予め組み立てられたケーブル端部の実際の回転位置を決定するために用いられる画像分析装置をさらに有していてよい。このような検出装置は、例えば欧州特許出願公開第1429430号明細書などの従来技術から基本的に公知である。
【0022】
本発明の別の有利な実施態様によれば、検出装置の少なくとも一部、特にデジタルカメラまたは投射センサが、位置合わせされるケーブル端部の領域の正面または半径方向側方に配置されていてもよい。このような配置によって、特に信頼性の高い正確な検出が可能になり、予め組み立てられたケーブル端部のそれぞれの実際の回転位置の決定が可能になる。
【0023】
位置合わせ動作を制御、好ましくは調節するために、本装置は、制御装置をさらに有していてよく、制御装置は、予め組み立てられたケーブル端部をそれぞれの目標回転位置に制御された状態、特に調節された状態で位置合わせするために、回転把持装置と少なくとも2つのケーブルグリップと検出装置とに動作可能に接続されていることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、複数のケーブルからなるケーブルハーネス、特に撚り合わされたケーブルハーネスの予め組み立てられたケーブル端部にプラグハウジングを取り付けるケーブル取付装置であって、取り付けられるプラグハウジングに対して予め組み立てられたケーブル端部を正しい回転位置に位置合わせするために、本発明の位置合わせ装置を有するケーブル取付装置にも関する。
【0025】
本発明のさらなる目標、利点、および可能な用途は、添付の図面に基づいて、本発明の実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】本発明の位置合わせ装置の可能な一実施形態の概略図である。
図1b】本発明の位置合わせ装置の可能な一実施形態の概略図である。
図2a図1aの例示的な位置合わせ装置の回転把持装置の詳細図である。
図2b図1aのす例示的な位置合わせ装置の回転把持装置の詳細図である。
図3a図1aの例示的な位置合わせ装置のケーブルグリップの正面詳細図である。
図3b図1aの例示的な位置合わせ装置のケーブルグリップの正面詳細図である。
図3c図1aの例示的な位置合わせ装置のケーブルグリップの正面詳細図である。
図3d図1aの例示的な位置合わせ装置のケーブルグリップの正面詳細図である。
図4a図1aの例示的な位置合わせ装置を用いた本発明の方法の可能な一実施形態を示す図である。
図4b図1aの例示的な位置合わせ装置を用いた本発明の方法の可能な一実施形態を示す図である。
図4c図1aの例示的な位置合わせ装置を用いた本発明の方法の可能な一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1aから図1b、図2aから図2b、および図3aから図3dは、本発明の位置合わせ装置1の可能な一実施形態を示しており、この例では2本のケーブル110,210からなり、特に撚り合わされたケーブルハーネス100の予め組み立てられたケーブル端部111,121を正しい回転位置に位置合わせする位置合わせ装置1の可能な一実施形態を示している。この装置1は、特に本発明の方法を実施するのに適している。この装置1は、撚り合わされたケーブル対100を把持して回転させることができる回転グリップの形態の回転把持装置30を有している。さらに、位置合わせ装置1は、ケーブル対100のケーブル111,121であって、伸ばされている、すなわち撚り合わされていないケーブル111,121を解放可能に把持し、特に固定的に保持する2つの独立したケーブルグリップ10,20を有している。また、予め組み立てられたケーブル端部111,121のそれぞれの実際の回転位置を検出して決定するために、この装置1は、付属の照明装置および画像分析装置(ここには図示せず)を備えたデジタルカメラ41をさらに有している。
【0028】
図2aおよび図2bは、回転把持装置30の実施形態の詳細を示しており、この例では、回転把持装置30は、例えば欧州特許出願公開第1429430号明細書から公知の、回転グリップ30の形態で実装されている。回転グリップ30のハウジング31は、その外周縁に、ピニオン32と協働して回転グリップを円滑に回転させることができる歯31.1を有している。ピニオン32は、歯付きベルト33を介して、回転モータ34(図1aおよび図1b参照)によって駆動される。ハウジング31は、その前側および後側で2つの支持ローラ35,36の上に置かれ、歯付きハウジング31の中心軸を中心として案内された回転運動だけが可能になるように、接合ローラ37によって保持されている。ハウジング31には、2つのグリップジョー部38,39を中央方向に閉じることができる空気圧駆動装置/アクチュエータが組み込まれている。外周縁に歯を有するハウジング31は、回転グリップすなわち回転把持装置にケーブル対を導入することができるようにするために、1つの箇所でくさび状に切り取られている。図2aは、可能な1つの回転把持位置を示しており、ケーブル対100を回転把持装置30に水平方向に導入することができる。一方で、図2bは、回転把持装置30すなわち回転グリップ30が右回りに90°回転してグリップジョー部38,39が閉じられた状態を示している。回転把持装置30のさらなる詳細については、上述の欧州特許出願公開第1429430号明細書で見ることができる。
【0029】
2つのケーブルグリップ10,20は、特に図1aおよび図1bに示すように、回転把持装置30すなわち回転グリップ30の前面に一列に配置されている。ケーブル対100を位置合わせ装置1(図2a参照)に水平方向に導入する場合、ケーブルグリップ10,20を一緒に、ケーブルハーネスすなわちケーブル対100の長手方向軸Lに対して横方向にさらに下げることができる。
【0030】
図3aから図3dは、2つのケーブルグリップ10,20のさらなる詳細を示している。ケーブルグリップ10,20のそれぞれは、2つのグリップジョー部11,12;21,22を有し、これらは、一方のケーブル端部111,121をケーブルグリップ10,20の閉鎖位置においてクランプし、第2のケーブル端部121,111だけを取り囲んでケーブル長手方向軸Lに沿って形状接続的に案内するように設計されている。図3aは、閉鎖位置にある第1のケーブルグリップ10を示しており、下部のケーブル端部111がクランプされる一方で、上部のケーブル端部121は軸方向にのみ案内されている。図3bは、第2のケーブルグリップ20を示しており、そのグリップジョー部21,22は、上部のケーブル端部121がクランプされる一方で、下部のケーブル端部111が軸方向にのみ案内されるように設計されている。図3dは、一例として、開放位置にあるときの第2のケーブルグリップ20を示しており、第2のケーブルグリップ20は、2つのケーブル端部111,121を受け入れて解放するように機能する。さらに、開放位置および閉鎖位置に加えて、第3の位置、いわゆる中間位置に2つのケーブルグリップ10,20を移動させることもでき、この位置では、グリップジョー部11,12;21,22は、ケーブル端部111,121を少なくとも部分的に半径方向に取り囲んでケーブル長手方向軸に沿って案内するために、わずかに開放する。図3cは、一例として、この中間位置にあるときの第2のケーブルグリップ20を示しており、この位置では、ケーブル110,120すなわちケーブル端部111,121のいずれもがクランプされていないが、その代わりに、ケーブルは囲まれるようにして案内され、それにより、2つのケーブル端部111,121をそれぞれの長手方向軸を中心として回転させることができるが、同時にグリップジョー部21,22の間に捕捉することができる。本明細書に示す2つのケーブルグリップ10,20の実施形態は、例えば欧州特許出願公開第2317613号明細書から公知の、空気圧で動作可能な三位置グリップまたはハイブリッドグリップによって実施可能である。
【0031】
図1aに示す検出装置40は、一体化された照明および画像分析装置を備えたデジタルカメラ41を有している。このデジタルカメラ41は、位置合わせ装置1の制御部(ここには図示せず)と通信を行う画像分析装置に画像を送信する。画像分析装置の目的は、2つの予め組み立てられたケーブル端部111,121、特にそこに取付けられた接触子113,123の基準方向に対する角度位置、例えば水平方向に対する角度位置を決定することである。さらに、この角度位置から、取り付けにとって望ましい目標回転位置を実現するために、2つの接触子113,123をそれぞれどの方向にどれだけ回転させるべきかを決定することができる。制御装置が、回転方向および回転角度量の決定を引き受けることが好ましい。
【0032】
設計に応じて、デジタルカメラ40の代わりに、いくつかの接触子に対してより簡易な光学投射センサを使用することが代替的に可能である。したがって、例えば、矩形の断面を有する平坦な接触子の場合、ラインセンサを用いて、センサ上の影像の幅から接触子の角度位置を決定することができる。そのために、ラインセンサは、好ましくはケーブル長手方向軸Lに対して横方向に配置されていてよい。しかしながら、本実施形態に示すデジタルカメラ40は、さまざまな接触子に広く使用可能な最も順応性のある解決策を代表するものである。本実施形態に示すデジタルカメラ41は、位置合わせされるケーブル端部111,121の正面に配置されていることが好ましい。
【0033】
次に、図4aから図4cを参照して、上述した本発明の位置合わせ装置1の実施形態を用いた、本発明の位置合わせ方法の可能な一実施形態について説明する。まず、位置合わせされるケーブル端部111,121を備えたケーブル対100のうち、ケーブル端部111,121に隣接する撚り合わされた部分の領域が、回転把持装置30すなわち回転グリップ30に導入され(図2a参照)、開始位置へと90°回転される(図2b)。ケーブル対100を把持装置30に導入した後、位置合わせ動作は、2本のケーブル110,120のそれぞれに実施され、必要であれば、それぞれ個別に実施される。ただし、ここに示す実施形態では、接触子113はすでに、ケーブル110のケーブル端部111においてかなり正確な角度位置にあり、接触子113,123の互いに対する回転だけを修正する必要がある。このためには、ケーブル120の、まだ正確な回転位置に配向されていない他方のケーブル端部121だけに、本発明の位置合わせ動作を実施することで十分である。
【0034】
この方法は、制御または調節された状態で実施されることが好ましい。位置合わせ動作の制御または調節は、上述のように、デジタルカメラ40で検出されて画像処理装置で決定された接触子113,123の角度位置に基づいて行われる。このために、接触子113,123の位置、それらの許容される誤差、および許容される回転が、保存された目標値と比較される。この比較に基づいて、制御装置が、各ケーブル端部112、121に対して実施される角度の修正、この例では1つのケーブル端部121のみに対して実施される角度の修正を決定する。
【0035】
図4aから図4cには、上部に位置するケーブル端部121に対する位置合わせ動作が示されている。下部に位置するケーブル端部111は、第1のケーブルグリップ20にクランプされたままであるが、それは、下部に位置するケーブル端部111、すなわち、そこに取り付けられた接触部材113,123が、上述したように、すでにその目標回転位置に対してかなり正確な角度位置にあるためである。第1のステップ(図4a参照)では、第1のケーブルグリップ10および回転把持装置30は閉鎖されている。次に、第2のケーブルグリップ20が少なくとも中間位置(図4b)まで開放され、上部に位置するケーブル端部121が自由に回転できるようになる。あるいは、位置合わせされる上部のケーブル端部121がすでに、閉鎖位置にある第1のケーブルグリップ10において自由に回転できるように案内されているため(図3aおよび図4a)、第2のケーブルグリップ20を開放位置まで開放することもできる。
【0036】
次のステップでは、上部のケーブル端部121を位置合わせするために、撚り合わされたケーブル対100が回転グリップ30によって回転され、それにより、自由な上部のケーブル端部121も同様に回転される。一般的な場合には、ケーブル端部121は、必ずしも回転グリップ30すなわち回転把持装置30と同じ角度だけ回転される必要がないため、上部のケーブル端部121の最終位置は、検出装置40を用いて制御ユニットによって検査される必要があり、必要であれば修正される必要がある。理想的には、調節動作という意味で、これは回転把持装置30の回転中に行われてもよい。実際の正しい回転位置に達した後、上部のケーブル端部121を実際の望ましい回転位置に設定すなわち固定するために、第2のケーブルグリップ20も閉鎖される。これにより、2つのケーブル端部111,121の位置合わせ動作が完了する。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c