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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20220106BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220106BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220106BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220106BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20220106BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220106BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220106BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/28
H05B33/22 Z
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
H05B33/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017223965
(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2019096439
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 典久
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076221(WO,A1)
【文献】特開2007-012370(JP,A)
【文献】特開2014-056666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0197308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/24
H05B 33/02
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/28
H05B 33/22
G09F 9/30
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1副画素領域及び第2副画素領域を有する有機EL表示装置であって、
基板と、
前記第1副画素領域の前記基板上に配置され、第1の光を出射する第1発光膜と、
前記第2副画素領域の前記基板上に配置され、前記第1の光より波長の短い第2の光を出射する第2発光膜と、
前記第1発光膜及び前記第2発光膜の上層側に、導電性並びに光の透過特性及び反射特性を併せ持つ上部電極と、
前記第1及び前記第2副画素領域の前記上部電極を覆うキャップ層と、を有し、
前記キャップ層は、屈折率がそれぞれ異なる高屈折率膜、中屈折率膜及び低屈折率膜を含んで構成され、
前記高屈折率膜、前記中屈折率膜及び前記低屈折率膜のうち、前記低屈折率膜は、前記基板から最も遠く配置され、
前記第1副画素領域の前記中屈折率膜は、前記第2副画素領域の前記中屈折率膜よりも厚く形成されることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記高屈折率膜は、前記キャップ層の中で前記基板から最も近く配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記中屈折率膜は、前記キャップ層の中で前記基板から最も近く配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記中屈折率膜は、Alq3、αNPDまたはLiqで形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第1及び第2発光膜から出射された波長の異なる光が、前記キャップ層と前記上部電極との間で共振するように、マイクロキャビティ構造が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
さらに、前記基板上に前記第2の光より波長の短い第3の光を出射する第3発光膜と、前記上部電極と、前記キャップ層と、が配置された第3副画素領域を有し、
前記第3副画素におけるキャップ層は、前記中屈折率膜を含まず、前記高屈折率膜と前記低屈折率膜とで構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を用いた有機EL表示装置が実用化されている。有機EL表示装置は、有機EL素子が発した光を取り出す効率を向上させるため、キャップ層が設けられる場合がある。例えば、特許文献1は、異なる波長の光を出射する画素毎に、異なる厚さのキャップ層を設ける点を開示している。
【0003】
また、さらに光の取り出し効率を上げる為に、特許文献2は、キャップ層が屈折率の異なる2種類の層で構成され、屈折率の高いキャップ層の厚さが副画素毎に異なる構成が開示されている。これにより、有機EL素子の発した光が当該2種類の層の界面で反射することにより、いわゆるマイクロキャビティ構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-4980号公報
【文献】特開2015-99773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロキャビティ構造を形成する為には、キャップ層の厚さを変化させることによって、光の波長に合わせて光路長を調整する必要がある。そのため、副画素ごとに異なる波長の光が出射される場合には、副画素ごとにキャップ層の厚さを調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、屈折率の高いキャップ層の厚さを変化させることによって光路長が調整されている。この場合、キャップ層のわずかな厚さの変化によって光路長が大きく変化してしまうため、光路長の調整が難しい。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、光路長の調整が容易なマイクロキャビティ構造を有する有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1副画素領域及び第2副画素領域を有する有機EL表示装置であって、基板と、前記第1副画素領域の前記基板上に配置され、第1の光を出射する第1発光膜と、前記第2副画素領域の前記基板上に配置され、前記第1の光より波長の短い第2の光を出射する第2発光膜と、前記第1発光膜及び前記第2発光膜の上層側に、導電性並びに光の透過特性及び反射特性を併せ持つ上部電極と、前記第1及び第2副画素領域において、前記上部電極の上層側に、屈折率がそれぞれ異なる高屈折率膜、中屈折率膜及び低屈折率膜を含んで構成され、前記低屈折率膜は前記基板から最も遠く配置されるキャップ層と、を有し、前記第1副画素領域の前記中屈折率膜は、前記第2副画素領域の前記中屈折率膜よりも厚く形成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す図である。
図2】表示パネルを概略的に示す図である。
図3】表示パネルの断面の積層構造について概略的に示す一例である。
図4】1画素あたりの反射膜と上部電極の間に形成される各層を模式的に示す図である。
図5】第1副画素領域の各層を模式的に示す図である。
図6】第1副画素領域の各層を模式的に示す図である。
図7】第2副画素領域の各層を模式的に示す図である。
図8】第2副画素領域の各層を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に評される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置100の概略を示す図である。図に示すように、有機EL表示装置100は、上フレーム110及び下フレーム120に挟まれるように固定された表示パネル200から構成されている。
【0012】
図2は、図1の表示パネル200を概略的に示す図である。表示パネル200は、アレイ基板202と、保護フィルム204と、駆動IC(Integrated Circuit)206と、を有する。
【0013】
また、表示パネル200は、表示領域210にマトリクス状に配置された画素208を有する。具体的には、表示パネル200は、それぞれ第1乃至第3副画素領域400,402,404を有する複数の画素を有する。第1乃至第3副画素領域400,402,404は、それぞれ後述する有機EL層314、上部電極316及びキャップ層318等が配置される。第1乃至第3副画素領域400,402,404に配置された有機EL層314は、それぞれ異なる波長の光を出射する。なお、複数の画素が有する副画素領域は3個である場合に限られず、4個以上であってもよい。
【0014】
アレイ基板202は、後述するアレイ層302、第1乃至第3発光膜412,414,416やホール輸送層408等が形成される。
【0015】
駆動IC206は、例えば、各副画素領域に配置された駆動トランジスタ304に対してソース・ドレイン間を導通させるための電位を印加すると共に、各データ信号線に対して階調値に対応する電流を流す。当該駆動IC206によって、表示パネル200は、複数色からなる複数の画素208によって構成されるカラー画像を、表示領域210に表示する。
【0016】
保護フィルム204は、表示パネル200を外傷から保護するアクリル製のフィルムであって、接着剤によって、アレイ基板202に接着される。
【0017】
図3は、表示パネル200の断面について概略的に示す図である。図に示すように、表示パネル200は、図面上の下から上に向かって順に、基板300と、アレイ層302と、平坦化膜306と、反射膜308と、下部電極310と、リブ312と、有機EL層314と、上部電極316と、キャップ層318と、封止膜320と、保護フィルム204と、を含んで構成される。
【0018】
基板300は、例えばガラス基板であるが、樹脂で形成された可撓性を有する基板であってもよい。
【0019】
アレイ層302は、基板300の上層に形成される。具体的には、アレイ層302は、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び半導体層等を含んで構成される複数の駆動トランジスタ304を含むように基板300の上層に形成される。
【0020】
平坦化膜306は、アレイ層302の上層に絶縁材料により形成される。具体的には、平坦化膜306は、駆動トランジスタ304のソース電極又はドレイン電極の一方の上側でスルーホールを有するように、かつ、当該スルーホールが形成される領域以外の領域においてアレイ層302を覆うように絶縁材料で形成される。
【0021】
反射膜308は、有機EL層314から出射された光を反射する材料で、平坦化膜306の上層に形成される。具体的には、例えば、反射膜308は、Agで形成される。
【0022】
下部電極310は、反射膜308及び平坦化膜306の上層に形成される。具体的には、下部電極310は、ITO等の透明かつ導電性を有する材料で、反射膜308を覆うように、かつ、スルーホールを介して駆動トランジスタ304のソース電極又はドレイン電極と電気的に接続するように形成される。下部電極310を金属で形成し、下部電極310が反射膜308を兼ねる構造、即ち反射膜308を省略する構造にしてもよい。
【0023】
リブ312は、下部電極310の上層に形成される。具体的には、リブ312は、下部電極310が形成されていない領域では平坦化膜306を覆うように、かつ、下部電極310が形成された領域では下部電極310の上層に形成される。また、リブ312は、反射膜308が形成された領域の上層側にリブ開口部を有するように形成される。リブ開口部は、表示パネル200から光が取り出される領域となる。
【0024】
有機EL層314は、光を出射する第1乃至第3発光膜412,414,416やホール輸送層408等を含んで構成される。具体的には、第1発光膜412は、第1副画素領域400の基板300上に配置され、第1の光を出射する。第2発光膜414は、第2副画素領域402の基板300上に配置され、第1の光より波長の短い第2の光を出射する。第3発光膜416は、第3副画素領域404の基板300上に配置され、第2の光より波長の短い第3の光を出射する。ホール輸送層408等については後述する。
【0025】
上部電極316は、第1発光膜412及び第2発光膜414の上層側に、導電性並びに光の透過特性及び反射特性を併せ持つ材料で形成される。具体的には、上部電極316は、有機EL層314を覆うように形成される。上部電極316は、光の透過特性及び反射特性(半透過半反射性ともいう)と共に導電性を有するMgAg等の材料で形成される。上部電極316は、有機EL層314に電子を供給することによって、有機EL層314を発光させる。
【0026】
キャップ層318は、第1及び第2副画素領域400,402において、上部電極316の上層側に、屈折率がそれぞれ異なる高屈折率膜424、中屈折率膜426及び低屈折率膜428を含んで構成され、低屈折率膜428は基板300から最も遠く配置される。具体的には、キャップ層318は、第1及び第2副画素領域400,402において、屈折率の異なる少なくとも3種の層で構成される。キャップ層318は、屈折率の高い高屈折率膜424と、高屈折率膜424より屈折率の低い低屈折率膜428と、高屈折率膜424より屈折率が低く低屈折率膜428より屈折率が高い中屈折率膜426と、を含む。また、第3副画素領域404において、屈折率の異なる少なくとも2種の層で構成される。キャップ層318の詳細な構成については、図4を用いて説明する。
【0027】
封止膜320は、キャップ層318の上層に形成される。具体的には、封止膜320は、キャップ層318を覆うように、水分を透過しない無機材料で形成される。封止膜320は、有機EL層314に水分が侵入することで有機EL層314が劣化することを防止する。
【0028】
続いて、キャップ層318の詳細について、図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。図4(a)及び図4(b)は、1画素208のリブ開口部において、反射膜308と封止膜320の間に形成される各層を模式的に示す図である。図4(a)に示すように、各画素208は、反射膜308、下部電極310、ホール注入層406、ホール輸送層408、電子ブロック層410、第1乃至第3発光膜412,414,416、ホールブロック層418、電子輸送層420、電子注入層422、上部電極316、高屈折率膜424、中屈折率膜426、低屈折率膜428、封止膜320が積層される。
【0029】
なお、図4(a)及び図4(b)は模式的な図であって、反射膜308及び下部電極310が第1乃至第3副画素領域400,402,404において繋がって記載されているが、反射膜308及び下部電極310は、第1乃至第3副画素領域400,402,404のそれぞれにおいて分離して配置される。なお、図4(a)及び図4(b)は、左から順に第1副画素領域400、第2副画素領域402及び第3副画素領域404が配置される構造を模式的に示している。また、ホール輸送層408と電子輸送層420とは、電荷輸送層ともいう。また、ホール注入層406から電子注入層422までの層が、図3における有機EL層314に相当する。
【0030】
ホール注入層406は、下部電極310の上層に形成される。具体的には、ホール注入層406は、第1乃至第3副画素領域400,402,404において、下部電極310の上層に形成される。
【0031】
また、ホール注入層406は、下部電極310から注入されたホールを、ホール輸送層408に供給する機能を有する材料を用いて形成される。例えば、ホール注入層406は、ホール注入障壁を低減するために、下部電極310に用いられる材料のフェルミ準位との差異が小さいHOMO準位を有する材料を用いて形成される。
【0032】
ホール輸送層408は、第1乃至第3副画素領域400,402,404において、それぞれ異なる厚さで形成される。具体的には、ホール輸送層408は、第1乃至第3副画素領域400,402,404の全ての領域において、ホール注入層406の上層に同じ厚さで配置される。また、ホール輸送層408は、第1及び第2副画素領域400,402において、当該ホール輸送層408の上層に重ねて配置される。
【0033】
ここで、第1副画素領域400において重ねて配置されたホール輸送層408は、第2副画素領域402において重ねて配置されたホール輸送層408よりも厚く形成される。これにより、第1乃至第3発光膜412,414,416と反射膜308との距離は、第1乃至第3副画素領域400,402,404のそれぞれにおいて、第1乃至第3発光膜412,414,416が出射する光が共振する長さとなる。これにより、第1乃至第3発光膜412,414,416と反射膜308との間でマイクロキャビティ構造が形成される。
【0034】
また、ホール輸送層408は、ホール注入層406から供給されたホールを、第1乃至第3発光膜412,414,416に供給する機能を有する材料を用いて形成される。例えば、ホール輸送層408は、ホール注入層406のHOMO準位との差異が小さいHOMO準位を有する材料で形成されることが望ましい。
【0035】
電子ブロック層410は、ホール輸送層408の上層に形成される。具体的には、ホールブロック層418は、第1乃至第3副画素領域400,402,404において、電子輸送層420から第1乃至第3発光膜412,414,416に供給された電子がホール輸送層408に到達することを防止する機能を有する材料で形成される。
【0036】
第1発光膜412は、第1副画素領域400において電子ブロック層410の上層に配置される。第1発光膜412は、例えば赤色の光を出射する材料で形成される。
【0037】
第2発光膜414は、第2副画素領域402において電子ブロック層410の上層に配置される。第2発光膜414は、例えば緑色の光を出射する材料で形成される。
【0038】
第3発光膜416は、第3副画素領域404において電子ブロック層410の上層に配置される。第3発光膜416は、例えば青色の光を出射する材料で形成される。
【0039】
ホールブロック層418は、第1乃至第3発光膜412,414,416の上層に形成される。具体的には、ホールブロック層418は、第1乃至第3発光膜412,414,416の上層に、ホール輸送層408から第1乃至第3発光膜412,414,416に供給されたホールが電子輸送層420に到達することを防止する機能を有する材料で形成される。
【0040】
電子輸送層420は、ホールブロック層418の上層に形成される。具体的には、電子輸送層420は、ホールブロック層418の上層に、上部電極316から供給された電子を第1乃至第3発光膜412,414,416に供給する機能を有する材料で形成される。
【0041】
ホール注入層406は、電子輸送層420の上層に形成される。具体的には、電子注入層422は、第1乃至第3副画素領域400,402,404において、電子輸送層420の上層に形成される。また、電子注入層422は、上部電極316から注入された電子を、電子輸送層420に供給する機能を有する材料を用いて形成される。
【0042】
高屈折率膜424は、上部電極316の上層に配置される。具体的には、図4(a)に示すように、高屈折率膜424は、キャップ層318の中で基板300から最も近く配置される。高屈折率膜424は、低屈折率膜428及び中屈折率膜426よりも屈折率の高い材料で形成される。
【0043】
中屈折率膜426は、高屈折率膜424の上層に配置される。具体的には、中屈折率膜426は、第1副画素領域400及び第2副画素領域402において、高屈折率膜424の上層に形成される。また、第1副画素領域400の中屈折率膜426は、第2副画素領域402の中屈折率膜426よりも厚く形成される。
【0044】
低屈折率膜428は、中屈折率膜426及び高屈折率膜424の上層に配置される。具体的には、低屈折率膜428は、第1及び第2副画素領域400,402において、中屈折率膜426の上層に配置される。また、低屈折率膜428は、第3副画素領域404において、高屈折率膜424の上層に配置される。
【0045】
上記のように、キャップ層318は、高屈折率膜424、中屈折率膜426及び低屈折率膜428によって構成される。第1及び第2副画素領域400,402におけるキャップ層318は、高屈折率膜424と、中屈折率膜426と、低屈折率膜428とを含んで構成される。第3副画素領域404におけるキャップ層318は、高屈折率膜424と低屈折率膜428とを含んで構成される。
【0046】
上記のキャップ層318の構成によって、第1及び第2発光膜412,414から出射された波長の異なる光が、キャップ層318と上部電極316との間で共振するように、マイクロキャビティ構造が形成される。具体的には、第1乃至第3発光膜412,414,416が発した光は、屈折率の異なる層の界面で反射する。従って、当該光は、高屈折率膜424と中屈折率膜426の界面及び中屈折率膜426と低屈折率膜428の界面(以下、キャップ層318内の界面、とする)で反射する。
【0047】
上記のように、中屈折率膜426は、第1及び第2副画素領域400,402において、第1及び第2発光膜412,414が出射する光の波長に応じて異なる厚さで形成される。また、第3副画素領域404において、中屈折率膜426は配置されない。これにより、キャップ層318内の界面と上部電極316との距離は、第1乃至第3副画素領域400,402,404のそれぞれにおいて、第1乃至第3発光膜412,414,416が出射する光が共振する長さとなる。従って、キャップ層318内と上部電極316との間でマイクロキャビティ構造が形成される。
【0048】
ここで、マイクロキャビティ構造が形成されるためには、第1乃至第3副画素領域400,402,404におけるキャップ層318内の界面と上部電極316の間の光路長は、第1乃至第3発光膜412,414,416が発した光の各波長のそれぞれ整数倍である必要がある。高屈折率膜424の厚さを制御することによって当該光路長を調整した場合、高屈折率膜424のわずかな厚さの変化によって光路長が大きく変化してしまう。一方、中屈折率膜426の厚さを制御することによって当該光路長を調整する場合、厚さの変化による光路長の変化は、高屈折率膜424の厚さによって制御する場合と比較して低減することができる。これにより光路長の調整を容易にすることができる。
【0049】
なお、中屈折率膜426は、キャップ層318の中で基板300から最も近く配置されるようにしてもよい。具体的には、図4(b)に示すように、中屈折率膜426は、第1及び第2副画素領域400,402において、上部電極316の上層に配置されてもよい。この場合、高屈折率膜424は、第1及び第2副画素領域400,402において中屈折率膜426の上層に配置される。また、高屈折率膜424は、第3副画素領域404において上部電極316の上層に配置される。さらに、低屈折率膜428は、高屈折率膜424の上層に配置される。当該構成においても、図4(a)に示す構成と同様にキャップ層318内と上部電極316との間でマイクロキャビティ構造を形成することができる。
【0050】
また、中屈折率膜426は、第3副画素領域404にも配置される構成としてもよい。この場合、第3副画素領域404における中屈折率膜426は、第3発光膜416が出射する光の波長に応じて、第2副画素領域402における中屈折率膜426よりも薄く形成される。当該構成においても、上記と同様にキャップ層318内と上部電極316との間でマイクロキャビティ構造を形成することができる。
【0051】
続いて、図4(a)に示す構成の各層の具体的な材料及び厚さについて説明する。図5(a)乃至(c)は、第1副画素領域400の反射膜308乃至封止膜320の構成を示す模式的な図である。
【0052】
図5(a)に示すように、下部電極310は、ITO(Indium Tin Oxide)で10nmの厚さで形成される。ホール注入層406及びホール輸送層408は、チル置換ベンジジン(αNPD)で235nmの厚さで形成される。第1発光膜412は、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)をホスト、DCJTB(4-(Dicyanomethylene)-2-tert-butyl-6-(1,1,7,7-tetramethyljulolidin-4-yl-vinyl)-4H-pyran, 4-(dicyanomethylene)-2-tert-butyl-6-(1,1,7,7-tetramethyljulolidin-4-yl-vinyl)-4H-pyran)を発光ドーパントとして、30nmの厚さで形成される。電子輸送層420は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)で30nmの厚さで形成される。電子注入層422は、フッ化リチウム(LiF)で1nmの厚さで形成される。上部電極316は、マグネシウム銀(MgAg)で15nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。中屈折率膜426は、Alq3で70nmの厚さで形成される。なお、Alq3の屈折率は1.6である。低屈折率膜428は、LiFで80nmの厚さで形成される。なお、LiFの屈折率は、1.4である。封止膜320は、窒化ケイ素(SiN)で1000nmの厚さで形成される。なお、SiNの屈折率は、1.8である。
【0053】
発明者は、図5(a)に示す構成を有する第1副画素領域400から発せられる光について検証を行った結果、中屈折率膜426を高屈折率膜424で置き換えた構成と同等の色度及び輝度が得られた。具体的には、図5(a)に示す構成のうち高屈折率膜424及び中屈折率膜426の代わりに、2.2の屈折率を有する有機材料で125nmの厚さで形成された高屈折率膜424が配置された構成を有する場合を比較対象として検証した。その結果、比較対象の構成では第1副画素領域400から発せられる光の色度は、xyY表色系において(0.680,0.315)であった。また、当該光の輝度は、19.9cd/Aであった。一方、図5(a)に示す構成を有する第1副画素領域400から発せられる光の色度は(0.680,0.315)であった。また、当該光の輝度は、19.7cd/Aであった。従って、中屈折率膜426を有する構成によって、比較対象の構成と同等の色度及び輝度が得られることが分かった。
【0054】
また、上記図5(a)に示す実施形態は、比較対象の構成と比較して、高屈折率膜424の材料の使用量を低減することができる。高屈折率を有する材料は、中屈折率を有する材料と比較して高価であることから、有機EL表示装置100の製造コストを低減することができる。
【0055】
なお、中屈折率膜426は、αNPDで形成されてもよい。具体的には、図5(b)に示すように、中屈折率膜426は、αNPDで50nmの厚さで形成されてもよい。なお、αNPDの屈折率は1.8である。図5(b)に示す構成を有する第1副画素領域400から発せられる光の色度は(0.680,0.315)であった。また、当該光の輝度は、20.3cd/Aであった。
【0056】
また、中屈折率膜426は、8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(Liq)で形成されてもよい。具体的には、図5(c)に示すように、中屈折率膜426は、Liqで70nmの厚さで形成されてもよい。なお、Liqの屈折率は、1.7である。図5(c)に示す構成を有する第1副画素領域400から発せられる光の色度は(0.680,0.315)であった。また、当該光の輝度は、19.8cd/Aであった。従って、図5(b)及び図5(c)に示す構成によって、比較対象の構成と同等の色度及び輝度が得られることが分かった。
【0057】
続いて、図4(b)に示す構成を有する実施形態について、各層の具体的な材料及び厚さについて説明する。図6(a)乃至(c)に示す構成を有する実施形態は、中屈折率膜426及び高屈折率膜424以外の構成は、図5(a)乃至(c)に示す実施形態と同様である。
【0058】
図6(a)に示す構成において、中屈折率膜426は、上部電極316の上層にAlq3で55nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、中屈折率膜426の上層に屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。当該構成を有する第1副画素領域400から発せられる光の色度は(0.680,0.316)であった。また、当該光の輝度は、20.2cd/Aであった。
【0059】
図6(b)に示す構成において、中屈折率膜426は、上部電極316の上層にαNPDで58nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、中屈折率膜426の上層に屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。当該構成を有する第1副画素領域400から発せられる光の色度は(0.680,0.316)であった。また、当該光の輝度は、20.1cd/Aであった。
【0060】
図6(c)に示す構成において、中屈折率膜426は、上部電極316の上層にLiqで55nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、中屈折率膜426の上層に屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。当該構成を有する第1副画素領域400から発せられる光の色度は(0.680,0.316)であった。また、当該光の輝度は、20.2cd/Aであった。従って、図6(b)及び図6(c)に示す構成によって、比較対象の構成と同等の色度及び輝度が得られることが分かった。
【0061】
図7(a)乃至(c)は、第2副画素領域402の反射膜308乃至封止膜320の構成を示す模式的な図である。
【0062】
図7(a)に示すように、下部電極310は、ITO(Indium Tin Oxide)で10nmの厚さで形成される。ホール注入層406及びホール輸送層408は、αNPDで186nmの厚さで形成される。第2発光膜414は、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)をホスト、Ir(ppy)3(Tris[2-phenylpyridinato-C2,N]iridium (III))を発光ドーパントとし、30nmの厚さで形成される。ホールブロック層418は、BAlqで10nmの厚さで形成される。電子輸送層420は、Alq3で20nmの厚さで形成される。電子注入層422は、フッ化リチウム(LiF)で1nmの厚さで形成される。上部電極316は、マグネシウム銀(MgAg)で15nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。中屈折率膜426は、Alq3で28nmの厚さで形成される。低屈折率膜428は、LiFで80nmの厚さで形成される。封止膜320は、窒化ケイ素(SiN)で1000nmの厚さで形成される。
【0063】
第1副画素領域400と同様に、第2副画素領域402において、中屈折率膜426は、αNPDまたはLiqで形成されてもよい。具体的には、図7(b)に示すように、中屈折率膜426は、αNPDで35nmの厚さで形成されてもよい。また、図7(c)に示すように、中屈折率膜426は、Liqで45nmの厚さで形成されてもよい。なお、図7(b)及び図7(c)に示すホール注入層406及びホール輸送層408の厚さは、図7(a)に示すホール注入層406及びホール輸送層408の厚さと異なるが、当該厚さは適宜設計される事項である。
【0064】
続いて、第2副画素領域402における、図4(b)に示す各層の具体的な材料及び厚さについて説明する。図8(a)乃至(c)に示す構成を有する実施形態は、ホール輸送層408、ホール注入層406、中屈折率膜426及び高屈折率膜424以外の構成は、図7(a)乃至(c)に示す実施形態と同様である。なお、ホール注入層406及びホール輸送層408は、厚さは異なるが、αNPDで形成される点は同様である。
【0065】
図8(a)に示す構成において、中屈折率膜426は、上部電極316の上層にAlq3で36nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、中屈折率膜426の上層に屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。
【0066】
図8(b)に示す構成において、中屈折率膜426は、上部電極316の上層にαNPDで36nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、中屈折率膜426の上層に屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。
【0067】
図8(c)に示す構成において、中屈折率膜426は、上部電極316の上層にLiqで36nmの厚さで形成される。高屈折率膜424は、中屈折率膜426の上層に屈折率が2.2である有機材料で65nmの厚さで形成される。
【0068】
上記構成のように、第2副画素領域402に配置される中屈折率膜426は、第1副画素領域400に配置される中屈折率膜426の1/3乃至2/3程度の厚さで形成される。当該構成においても、上記と同様にキャップ層318内と上部電極316との間でマイクロキャビティ構造を形成することができる。これにより、第2副画素領域402においても、中屈折率膜426を設けない構成と比較して同程度の色度及び輝度を得ることが出来る。
【0069】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
100 有機EL表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、200 表示パネル、202 アレイ基板、204 保護フィルム、206 駆動IC、208 画素、210 表示領域、300 基板、302 アレイ層、304 駆動トランジスタ、306 平坦化膜、308 反射膜、310 下部電極、312 リブ、314 有機EL層、316 上部電極、318 キャップ層、320 封止膜、400 第1副画素領域、402 第2副画素領域、404 第3副画素領域、406 ホール注入層、408 ホール輸送層、410 電子ブロック層、412 第1発光膜、414 第2発光膜、416 第3発光膜、418 ホールブロック層、420 電子輸送層、422 電子注入層、424 高屈折率膜、426 中屈折率膜、428 低屈折率膜。
図1
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