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特許6994939プロテオパチーの処置のためのベンジリデングアニジン誘導体の新規な治療的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】プロテオパチーの処置のためのベンジリデングアニジン誘導体の新規な治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/155 20060101AFI20220128BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/26 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20220128BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 53/08 20060101ALN20220128BHJP
   C07C 281/18 20060101ALN20220128BHJP
   C07D 213/61 20060101ALN20220128BHJP
   C07D 253/065 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
A61K31/155
A61K31/165
A61K31/19
A61K31/26
A61K31/44
A61K31/53
A61K33/24
A61K38/16
A61P25/00
A61P27/02
A61P27/06
C07C53/08
C07C281/18
C07D213/61
C07D253/065
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017519998
(86)(22)【出願日】2015-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2015065161
(87)【国際公開番号】W WO2016001389
(87)【国際公開日】2016-01-07
【審査請求日】2018-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】14306075.4
(32)【優先日】2014-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515188475
【氏名又は名称】インフレクティス・バイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ゲダ
【合議体】
【審判長】村上 騎見高
【審判官】吉岡 沙織
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/25192(WO,A1)
【文献】米国特許第3982020(US,A)
【文献】国際公開第02/11715(WO,A2)
【文献】特表平6-510760(JP,A)
【文献】国際公開第99/52936(WO,A2)
【文献】米国特許第3975533(US,A)
【文献】特表2006-503070(JP,A)
【文献】国際公開第2013/124484(WO,A1)
【文献】特表2016-504400(JP,A)
【文献】特開2020-37578(JP,A)
【文献】VIJAYAKUMAR N. SONAR,(E)-1-[(2-CHLOROPHENYL)METHYLENEAMINO]-GUANIDINIUM CHLORIDE,ACTA CRYSTALLOGRAPHICA SECTION E STRUCTURE REPORTS,2007年,63,pp.o974-o975
【文献】TRIBOUILLARD-TANVIER, D.,et al.,Antihypertensive Drug Guanabenz is Active In Vivo against both Yeast and Mammalian Prions,PLoS ONE,2008年,3(4),pp.e1981(1-9)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシャド・ジョセフ病;眼咽頭筋ジストロフィー;及び白質ジストロフィーの群において選択される障害を処置するための医薬組成物を調製するための、式(I)
【化1】
(式中、
R1は、アルキル、O-アルキル、Cl、F又はBrであり、
R2は、H又はFであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えて1個又は2個のN原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで、前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、=O、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X及びZは、各々独立してCR11であり、Yは、CH及びNから選択され、
R11は、H、アルキル又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその互変異性体の使用。
【請求項2】
白質ジストロフィーを処置するための医薬組成物を調製するための、式(I)
【化2】
(式中、
R1は、アルキル、Cl、F又はBrであり、
R2は、H又はFであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えて1個又は2個のN原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで、前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X及びZは、各々独立してCR11であり、Yは、CH及びNから選択され、
R11は、H、又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその互変異性体の使用。
【請求項3】
R1がCl、Br、Me又はFである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
R2がHである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
YがCHである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
R3及びR4が両方ともHである、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
R3がHであり、R4がC(O)R6であり、R6がMe又はOMeである、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
化合物が、以下:
【表1A】
【表1B】
又はその互変異性体又は許容されるそれらの塩から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
化合物が、以下:
【表2】
又はその互変異性体又は許容されるそれらの塩から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
化合物が、化合物1又は薬学的に許容されるその塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
障害が白質ジストロフィーである、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
障害がペリツェウス・メルツバッヘル病である、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
網膜繊毛関連疾患から選択される遺伝性網膜変性症、網膜色素変性、黄斑変性症、未熟児網膜症、光誘発網膜変性症、網膜剥離、糖尿病性網膜症及び緑内障の群において選択される網膜疾患を処置する際の使用のための、式(I)
【化3】
(式中、
R1は、アルキル、O-アルキル、Cl、F又はBrであり、
R2は、H又はFであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されることで、R4及びR5が結合されているN原子に加えて1個又は2個のN原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで、前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、=O、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X及びZは、各々独立してCR11であり、Yは、CH及びNから選択され、
R11は、H、アルキル又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその互変異性体と、バルプロ酸、2-エン-バルプロ酸、トリコスタチンA、リチウム、1-(3,4ジヒドロキシ-フェニル)-2-チオシアネート-エタノン、及びエキセンディン-4から選択される、BIPタンパク質の発現及び/又は活性を増加させる化合物との組み合わせ製品。
【請求項14】
式(I)の化合物が
【表3】
又はその互変異性体又は薬学的に許容されるその塩
から選択される、請求項13に記載の組み合わせ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害の処置に潜在的な治療用途を有する化合物に関する。特に、本発明は、細胞毒性小胞体(ER)ストレスに対して保護効果を示すことができる化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
グアナベンズとも称される化合物2-(2,6-ジクロロベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミドは、降圧薬として使用されるアルファ-2型のアルファアゴニストである。
【0003】
【化1】
【0004】
グアナベンズの様々な誘導体も報告されてきた。例えば、US 3,982,020 (Sandoz社)は、置換ベンジリデンヒドラジン並びに血糖降下-抗高血糖剤、抗肥満剤及び抗炎症剤としてのそれらの使用を開示している。US 2004/0068017 (Bausch & Lomb社)は、眼球細胞におけるゼラチナーゼAの活性を増加させることができる置換ベンジリデンヒドラジンを開示している。該分子は、原発性開放隅角緑内障の処置における適用を有している。WO 2008/061647 (Acure Pharma AB社)は、VEGFR阻害剤としてのN-(2-クロロ-3,4,-ジメトキシベンジリデンアミノ)グアニジンの使用、並びに腫瘍成長中の所望されない血管形成及び/又は炎症状態の処置又は予防におけるその関連適用を開示している。WO2005/031000 (Acadia Pharmaceuticals社)は、置換ベンジリデンヒドラジン、並びに急性疼痛及び慢性神経因性疼痛を処置することにおけるそれらの使用を開示している。最終的に、EP1908464 (CNRS社)は、グアナベンズ及びクロログアナベンズ、並びにハンチントン病を含めたポリグルタミン拡張関連疾患の処置におけるそれらの使用を開示している。
【0005】
より近年には、グアナベンズがいくつかの他の部域における治療的可能性を有することが報告されている。グアナベンズは、抗プリオン活性を有すると近年、認められた(D. Tribouillard-Tanvierら、2008 PLoS One 3、e1981)。タンパク質ミスフォールディングに対して保護することにおけるその活性は、驚くべきほどにずっと広範であり、細胞ベースのアッセイにおける突然変異体ハンチンチンの蓄積を軽減すること(WO2008/041133)、並びにMin6及びINS-1膵臓ベータ細胞の小胞体(ER)においてミスフォールディングの傾向があるインスリンAkita突然変異体発現の致死的効果に対する保護が含まれること(Tsaytlerら、Science 2011 332巻1 91~94頁)が報告されている。WO2014/138298及びWayら(2015 Nature Communications 6:6532 DOI: 10.1038/ncomms7532)は、グアナベンズ、及び多発性硬化症等の脱髄障害の処置におけるその使用を開示している。
【0006】
グアナベンズは、用量依存的方式において、N-グリコシル化阻害剤ツニカマイシンによって誘発される他の細胞毒性ERストレスに曝露されたHeLa細胞の生存を促進することも示されている(Tsaytlerら、Science、2011)。細胞生存率の定量的判定は、グアナベンズが約0.4μMの半有効濃度でERストレスを生き延びる細胞の数を二倍にすることを明らかにした。α2-アドレナリン作動性受容体アゴニストのクロニジンも、α2-アドレナリン作動性受容体アンタゴニストのエファロキサンも、細胞毒性ERストレスから細胞を保護せず、エファロキサンは、グアナベンズの保護効果を妨げなかった(Tsaytlerら、Science 2011)。これらの観察は、グアナベンズが、α2-アドレナリン作動性受容体に依存しない機序によって致死的なERストレスから細胞を救出することを実証している。グアナベンズは、タンパク質ホスファターゼ1、PPP1R15A (GADD34)の調節性サブユニットに結合して、翻訳開始因子2 (eIF2α)のαサブユニットのストレス誘発脱リン酸化を選択的に妨害することによって、ミスフォールドタンパク質の他の致死的蓄積から細胞を保護する。グアナベンズは、ストレス細胞における翻訳速度を、入手可能なシャペロンによって管理可能なレベルに設定し、それによってタンパク質ホメオスタシスを回復する。グアナベンズが構成的PPP1R15B (CReP)に結合せず、そのため、非ストレス細胞における翻訳を阻害しないことが報告された(Tsaytlerら、Science 2011)。
【0007】
十分な小胞体ストレス応答(UPR)を備えることによるERでのタンパク質恒常性の維持をし損なうことは、多くの病態に対する寄与因子として認識される。したがって、eIF2αホスファターゼがタンパク質合成を微調整するのを阻害する、本明細書に記載されている分子は、タンパク質ミスフォールディングストレスによって、特にミスフォールドタンパク質の蓄積とともに引き起こされる多数の疾患に対して治療的に有益であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US 3,982,020
【文献】US 2004/0068017
【文献】WO 2008/061647
【文献】WO2005/031000
【文献】EP1908464
【文献】WO2008/041133
【文献】WO2014/138298
【文献】EP1908464A
【文献】WO2013/124484
【文献】WO2011/061340
【文献】WO 84/03564
【非特許文献】
【0009】
【文献】D. Tribouillard-Tanvierら、2008 PLoS One 3、e1981
【文献】Tsaytlerら、Science 2011 332巻1 91~94頁
【文献】Wayら(2015 Nature Communications 6:6532 DOI: 10.1038/ncomms7532)
【文献】D. Tribouillard-Tanvierら、PLoS One 3、e1981 (2008)
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【文献】Gow及びLazzarini、1996 Nat Genet. 13(4):422~8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害の処置に潜在的な治療用途を有するグアナベンズコア構造に基づく代替化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、プロテオパチー並びに/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害を処置する際の使用のための、式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
R1は、アルキル、O-アルキル、Cl、F又はBrであり、
R2は、H又はFであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えてN等の1個又は2個のヘテロ原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、=O、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X及びZは、各々独立してCR11であり、Yは、CR11及びNから選択され、
R11は、H、アルキル又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0014】
本発明の第2の態様は、プロテオパチー並びに/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害を処置する際の使用のための、式(I)
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、
R1は、アルキル、O-アルキル、Cl、F又はBrであり、
R2は、H又はFであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えてN等の1個又は2個のヘテロ原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、=O、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X、Y及びZは、各々独立してCR11であり、
R11は、H、アルキル又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0017】
本発明の第3の態様は、プロテオパチー並びに/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害を処置する際の使用のための、式(I)
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、
R1は、Clであり、
R2は、Hであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えてN等の1個又は2個のヘテロ原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、=O、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X、Y及びZは、各々独立してCR11であり、
R11は、H、アルキル又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0020】
本発明の第4の態様は、式(I)
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、
R1は、アルキル、O-アルキル、Cl、F又はBrであり、
R2は、H又はFであり、
R3は、H及びアルキルから選択され、
R4は、H及びC(O)R6から選択され、
R5は、Hであり、
或いはR4及びR5は、連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えてN等の1個又は2個のヘテロ原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで、前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
R6は、R7、OR7及びNR8R9から選択され、
R7、R8及びR9は、各々独立して、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル及びアリールから選択され、これらの各々は、1個以上のR10基で場合により置換されており、
各R10は、独立して、ハロゲン、OH、=O、CN、COO-アルキル、アラルキル、SO2-アルキル、SO2-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、CF3、アルキル及びアルコキシから選択され、
X及びZは、各々独立してCR11であり、Yは、Nであり、
R11は、H、アルキル又はFである)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0023】
前の研究は、該化合物が有用な薬理活性を示すためにアリール基が少なくとも二置換でなければならないことを示している(D. Tribouillard-Tanvierら、PLoS One 3、e1981 (2008)及びEP1908464A、CNRSを参照されたい)。しかしながら、前の研究の結果に反して、本出願人は、驚くべきことに、一置換アリール誘導体も活性であることを見出した。
【0024】
更に、上記で定義されている通りの式(I)の化合物は、有利には、グアナベンズ等の従来技術化合物に比して、アドレナリン作動性α2A受容体に対する活性を示さないか、又は低い活性を示す。アルファ-2アドレナリン作動活性のこのような低下のため、該化合物を、プロテオパチー並びに/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害の処置において治療上有用である。アルファ-2アドレナリン作動活性の非存在は、式(I)の化合物が、血圧に対する任意の著しい作用なしで、前に記述の疾患を処置するのに適当な投与量で投与され得ることを意味する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、適当な薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と添加混合された、上に記載されている通りの式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0026】
本発明を、以下の図を参照して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ツニカマイシンへの6時間曝露によって誘発されたERストレスからの、本発明の化合物1によるHela細胞の用量依存性保護を示すグラフである。
図2】本発明の化合物1による、インターフェロン-ガンマ損傷ラットオリゴデンドロサイトの用量依存性保護を示すグラフである。
図3】本発明の化合物2による、ロテノン損傷一次中脳ラットニューロンの用量依存性保護を示すグラフである。
図4】本発明の化合物2による、アミロイドベータ1-42損傷一次皮質ラットニューロンの用量依存性保護を示すグラフである。
図5】突然変異体SOD1マウスにおいてALSの運動欠陥を予防するための、異なる濃度及びレジメンでの化合物2の能力を示すグラフである。IFB-B:化合物2は、経口的に投与される。BID: 1日2回の投与QD: 1日1回の投与
図6】PMP-22を過剰発現するトランスジェニック(TG)ラットにおいてPMP-22におけるCMT-1Aの運動欠陥を予防するための、異なる濃度及びレジメンでの化合物2の能力を示すグラフである。化合物2は、1日1回経口的に投与される。
図7】ヒト293T細胞におけるT181P突然変異DM20タンパク質の蓄積を予防するための、5マイクロMでの化合物1の能力を示すグラフである。
図8】Min6細胞において発現されるミスフォールディングの傾向があるインスリンAkitaの蓄積と関連する細胞死を予防するための、化合物6の能力を示すグラフである。
図9】ツニカマイシンへの6時間曝露によって誘発されたミスフォールドタンパク質の蓄積と関連するMin6インスリノーマ細胞死を予防するための、異なる濃度での化合物1及び化合物6の能力を示すグラフである。
図10】ツニカマイシンへの6時間曝露によって誘発されたミスフォールドタンパク質の蓄積と関連するINS1インスリノーマ細胞死を予防するための、異なる濃度での化合物1及び化合物6の能力を示すグラフである。
図11】BBS12-/-マウスにおいて、アポトーシスに対して光受容体を保護するとともに光検出を保存するための、化合物2の能力を示すグラフである。網膜電図(ERG)。ビヒクル処置された眼(PBS)と対比した、バルプロ酸(0.2mM)との組み合わせにおける化合物2 (2.5マイクロM)又は単独での化合物2 (2.5マイクロM)を用いるBBS12-/-眼の間の異なる百分率の表集計平均。PBS処置された眼と比較して、正は、ERG応答の増加を説明しており、負は、ERGの減少を説明している。n=1群当たり10~14。
図12】BBS12-/-マウスにおいて、小胞体におけるタンパク質負荷を減少させるための、化合物2の能力を示す図である。透過型電子顕微鏡法(TEM)。バルプロ酸(VPA) (0.2mM)との組合せにおける化合物2 (2.5マイクロM)又はPBSの投与への応答における、BBS12-/-光受容体の小胞体(ER)。PBSだけが注射される場合にER槽の拡張が観察され(左)、一方、VPAとの組合せにおける化合物2は、1つの単回硝子体内注射後に、この拡張を減少させることができる(右)。
図13】ポリI:Cでリポフェクションされたマウス胚性線維芽細胞によるI型インターフェロン産生を予防するための、化合物1、6及び8(25マイクロMで)の能力を示すグラフである。
図14】低酸素症誘発アポトーシスに対して新生仔ラット心筋細胞を保護するための、化合物2の能力を示すグラフである。グラフは、FACS分析によって測定されたアポトーシス細胞の百分率を示している。心筋細胞は、表示濃度の化合物2 (n=3)の非存在下(0μM)又は存在下で36時間の間低酸素症(0.3%のO2)に曝露された。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語には、飽和直鎖及び分岐アルキル基の両方が含まれる。好ましくは、アルキル基は、C1~20アルキル基、より好ましくはC1~15、より好ましくはまたC1~12アルキル基、より好ましくはまたC1~6アルキル基、より好ましくはC1~3アルキル基である。特に好ましいアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、環状アルキル基を指す。好ましくは、シクロアルキル基はC3~12シクロアルキル基である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、分岐又は非分岐であってよい、1個以上の炭素-炭素二重結合を含有する基を指す。好ましくは、アルケニル基は、C2~20アルケニル基、より好ましくはC2~15アルケニル基、より好ましくはまたC2~12アルケニル基、又は好ましくはC2~6アルケニル基、より好ましくはC2~3アルケニル基である。「環状アルケニル」という用語は、適宜解釈されるべきである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、C6~12芳香族基を指す。典型例としては、フェニル及びナフチル等が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ環」(本明細書において「ヘテロシクリル」及び「ヘテロ環式」とも称される)という用語は、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含有し、場合により1個以上のCO基を更に含有する4員から12員、好ましくは4員から12員の飽和、不飽和又は部分的不飽和の環状基を指す。「ヘテロ環」という用語は、下記に定義されている通りのヘテロアリール基及びヘテロシクロアルキル基の両方を包含する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、1個以上のヘテロ原子を含む4員から12員の芳香族を指す。好ましくは、ヘテロアリール基は、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含む4員から12員の芳香族基である。適当なヘテロアリール基としては、ピロール、ピラゾール、ピリミジン、ピラジン、ピリジン、キノリン、チオフェン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、チアゾール、オキサゾール、iso-チアゾール、iso-オキサゾール、イミダゾール及びフラン等が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1個以上のヘテロ原子を含有する4員から12員の環状脂肪族基を指す。好ましいヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、チオモルホリニル及びモルホリニルが挙げられる。より好ましくは、ヘテロシクロアルキル基は、N-ピペリジニル、N-ピロリジニル、N-ピペラジニル、N-チオモルホリニル及びN-モルホリニルから選択される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」という用語には、以下に限定されないが、アリール及びアルキル官能性基の両方を有する基が含まれる。例として、該用語には、アルキル基の水素原子の1つが、アリール基、例えばフェニル基によって置き換えられている基が含まれる。典型的なアラルキル基としては、ベンジル及びフェネチル等が挙げられる。
【0036】
好ましい一実施形態において、R1はCl、Br、Me又はF、より好ましくはClである。
【0037】
好ましい一実施形態において、R2はHである。
【0038】
好ましい一実施形態において、YはCR11である。
【0039】
別の好ましい実施形態において、YはNである。
【0040】
好ましい一実施形態において、R3及びR4は両方ともHである。
【0041】
好ましい一実施形態において、R3はHであり、R4はC(O)R6である。
【0042】
好ましい一実施形態において、R6はアルキル又はアルコキシ、より好ましくはMe又はOMeである。
【0043】
好ましい一実施形態において、R4及びR5は連結されて、R4及びR5が結合されているN原子に加えてN等の1個又は2個のヘテロ原子を場合により含む5員から6員の飽和又は不飽和の複素環式基を形成し、ここで、前記複素環式基は、1個以上のR10基で場合により置換されている。
【0044】
好ましい一実施形態において、前記化合物は、式(Ia)
【0045】
【化6】
【0046】
(式中、R1、R2、R3及びR10は、上記で定義されている通りである)
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0047】
殊に好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、以下:
【0048】
【表1A】
【表1B】
【0049】
及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される。
【0050】
第1の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、上記に示されている通りの、化合物1、即ち1-[[(2-クロロフェニル)メチリデン]アミノ]-グアニジン及び化合物2、即ち1-[[(2-クロロフェニル)メチリデン]アミノ]-グアニジンアセテートから選択される。
【0051】
第2の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、上記に示されている通りの化合物8から選択される。
【0052】
第3の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、上記に示されている通りの化合物6及び化合物7から選択される。
【0053】
治療用途
式(I)の化合物は、ミスフォールドタンパク質及び/又はアンフォールドタンパク質の蓄積と関連するプロテオパチー及び/又は障害の処置とに潜在的な治療用途を有する。特に、式(I)の化合物は、細胞毒性小胞体(ER)ストレス及び加齢関連性障害に対して保護効果を有する。
【0054】
本発明の別の態様は、タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害を処置するための医薬の調製における、上記で定義されている通りの式(I)の化合物の使用に関する。
【0055】
本発明の別の態様は、ミスフォールドタンパク質及び/又はアンフォールドタンパク質の蓄積が作用機序に関与する(Brownら、2012、Frontiers in Physiology、3、Article 263)疾患を処置するための医薬の調製における、上記で定義されている通りの式(I)の化合物の使用に関する。
【0056】
本発明の別の態様は、プロテオパチーを処置するための医薬の調製における、上記で定義されている通りの式(I)の化合物の使用に関する。プロテオパチー(proteopathy)は、ある特定のタンパク質が構造的に異常になることにより身体の細胞、組織及び器官の機能を妨害する疾患の分類を指す。しばしばタンパク質は、それらの正常の立体配座にフォールディングし損ない、このミスフォールディング及び/又はアンフォールディング状態において、タンパク質は、何らかの方法で毒性になり得るか(毒性機能の獲得)、又はそれらは、それらの正常機能を損失し得るか、又はそれらは、低減された生物学的活性を有し得る。タンパク質症、タンパク質立体配座障害又はタンパク質ミスフォールディング疾患としても知られているプロテオパチーには、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、2型糖尿病、アミロイドーシス、及び広範囲の他の障害等の多くの疾患が含まれる(下記の非限定的な例を参照されたい)。
【0057】
本明細書で使用される場合、「タンパク質症、プロテオパチー、タンパク質立体配座障害、タンパク質ミスフォールディング疾患、タンパク質ミスフォールディングストレスと関連する疾患、ミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する疾患、細胞毒性ERストレスと関連する疾患、UPR関連疾患」という用語は、同じ意味を有し、ある特定のタンパク質が構造的に異常になることによって細胞ホメオスタシスを妨害する疾患を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ミスフォールドタンパク質」及び「アンフォールドタンパク質」という用語は、同じ意味を有し、それらの正常の立体配座にフォールディングし損なうタンパク質を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「医薬の調製」という成句には、さらなる活性薬剤のためのスクリーニングプログラムにおける又はこうした医薬の製造の任意の段階におけるその使用に加えて、上に記載されている化合物の1種以上の、直接的な医薬としての使用が含まれる。
【0060】
本発明のなお別の態様は、それを必要とする対象において、タンパク質症並びに/又はタンパク質ミスフォールディングストレス及び/若しくは細胞毒性ERストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害を処置する方法であって、上記で定義されている通りの式(I)の化合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0061】
「方法」という用語は、以下に限定されないが、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的及び医療的技術の実務者に知られている又は彼らによって公知の方式、手段、技法及び手順から容易に発展されるのいずれかのような方式、手段、技法及び手順を含めて、所与のタスクを成し遂げるための方式、手段、技法及び手順を指す。
【0062】
本明細書において、「処置すること」という用語には、疾患若しくは障害の進行を抑止すること、実質的に阻害すること、減速すること若しくは逆戻りすること、疾患若しくは障害の臨床症状を実質的に寛解させること、又は疾患若しくは障害の臨床症状の出現を実質的に予防することが含まれる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「疾患」、「障害」、「状態」という用語は、同じ意味を有する。疾患は、ERストレス応答活性と関連する、並びに/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する。
【0064】
「治療有効量」という用語は、処置されている疾患又は障害の症状の1つ以上をある程度緩和するような、投与されている化合物の量を指す。
【0065】
別の実施形態において、本発明は、UPR障害を処置する際の使用のための、上記で定義されている通りの式(I)の化合物に関する。小胞体ストレス応答(unfolded protein response)(UPR)は、小胞体(ER)におけるフォールディングを変化する状態に適応させる、ミスフォールドタンパク質に対する細胞防御システムの成分である。UPRは、小胞体の内腔におけるアンフォールドタンパク質又はミスフォールドタンパク質の蓄積への応答において活性化される。このシナリオにおいて、UPRは、以下の2つの主要な狙いを有する:(i)タンパク質翻訳を停止させることによって細胞の正常機能を回復させること、及び(ii)タンパク質フォールディングに関与する分子シャペロンの産生の増加に至るシグナリング経路を活性化すること。これらの目的が、ある特定の時間枠内で達成されないならば、又は妨害が延長されるならば、UPRはアポトーシスに向かう。UPRの上流成分は、フォールディング欠陥を感知することで共同方式において転写及び翻訳を再プログラムするとともにタンパク質恒常性を回復するER常在性膜貫通タンパク質IRE1、ATF6及びPERKである。活性化されたIRE1及びATF6は、シャペロンBiP及びGRP94をコード化するもの等、ERフォールディングに関与する遺伝子の転写を増加させる。活性化されたPERKは、Ser51における翻訳開始因子2 (eIF2α)のサブユニットをリン酸化する一方で転写因子ATF4の翻訳を促進することによって、全タンパク質合成を減弱させる。後者は、別の転写因子であるCHOPの発現を制御し、これが今度はPPP1R15A/GADD34の発現を促進する。UPRシグナリングを終止する負のフィードバックループのエフェクターであるPPP1R15Aは、タンパク質ホスファターゼ1 (PP1c)の触媒サブユニットをリクルートすることでeIF2αを脱リン酸化して、タンパク質合成が再開するのを可能にする。UPR不全は、この適応応答の適切なブーストによって矯正され得る多くの病態に寄与する。ストレス誘発eIF2αホスファターゼPPP1R15A-PP1の選択的阻害剤は、eIF2α脱リン酸化を遅延させ、その結果として、非ストレス細胞におけるタンパク質合成に影響することなく、選択的にストレス細胞におけるタンパク質合成を遅延させる。これは、UPRの有益な効果を延長する。タンパク質合成の一過性低減は、ストレス細胞に有益であり、なぜならば、合成されたタンパク質のフラックスを減少させることは、シャペロンの利用能を増加させ、したがって、ミスフォールディングストレスから保護するからである(Tsaytlerら、Science 2011)。2種のeIF2αホスファターゼの非選択的阻害剤は、持続的翻訳阻害が有害であるので、望ましくない効果を有し得る。実際に、PPP1R15A及びPPP1R15Bの両方の遺伝子破壊は、マウスにおける早期胚性致死をもたらし、2種のeIF2αホスファターゼPPP1R15A-PP1及びPPP1R15B-PP1の阻害が生命体の文脈において有害であることを示す。対照的に、PPP1R15Aの遺伝子破壊は、マウスにおける有害な帰結を有していない(Hardingら、2009、Proc Natl Acad Sci USA、106、1832~1837)。更に、PPP1R15Aの特異的阻害剤は、PPP1R15Aがストレスの非存在で発現されないので、非ストレス細胞において不活性であると予測される。したがって、選択的PPP1R15A阻害剤は、安全であると予測される。該2種のeIF2αホスファターゼの非選択的阻害剤は、該ホスファターゼの部分的阻害だけをもたらす用量で使用される場合、タンパク質ミスフォールディング疾患を処置するのにも有用であり得る。
【0066】
ERストレスに対する細胞保護は、適当なアッセイによって測定することができる。例えば、細胞保護は、ERストレスが、UDP-HexNAc:ポリプレノール-PHexNAc-1-P酵素ファミリーを阻害する相同ヌクレオシド抗生物質の混合物であるツニカマイシンを含有する培地の添加によって導出されるHeLa細胞において測定することができ、小胞体ストレス応答を誘発するために使用される。細胞生存率は、標準的細胞生存率キット(Dojindo社からのCell Viability Counting Kit-8等)を使用してホルマザンへのWST-8の低減を測定することによって、設定された時間期間後に、阻害剤化合物の存在下及び非存在下で検出することができる。当業者は、MTT、MTS、XTT等他のクラスのテトラゾリウム化合物を使用することができる。ERストレスからの細胞保護は、ERストレス後の(対照に比した)生細胞の百分率増加の点から測定される。ルミネセンス発生ATPアッセイ等、代替の細胞生存率アッセイが使用され得る。適当なアッセイのさらなる詳細は、付随する実施例セクションにおいて説明されている。
【0067】
好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、UPRの保護効果を、対照(即ち、阻害剤化合物の非存在下)に比して少なくとも10%、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、いっそう好ましくは、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、より好ましくはまた、少なくとも90%延長することができる。
【0068】
式(I)の化合物は、保護効果を誘発するPPP1R15A-PP1相互作用の阻害剤である。好ましくは、該化合物は、約10μM未満、いっそう好ましくは約5μM未満、より好ましくはまた、約1μM未満のEC50で保護効果を示す。該化合物は、好ましくは、アルファ2アドレナリン作動活性を欠いているべきである。したがって、好ましい一実施形態において、該化合物は、機能性アルファ-2-アドレナリン作動性アッセイにおいて任意の活性を示さない。
【0069】
式(I)のある特定の化合物は、PPP1R15A-PP1を選択的に阻害し、したがってUPRの保護効果を延長し、それによってタンパク質ミスフォールディングストレスから細胞を救出する。本発明に記載されているPPP1R15A-PP1の阻害剤は、そのため、タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積及び/又はタンパク質症と関連する様々な疾患の処置における、治療用途を有する。
【0070】
一実施形態において、式(I)の化合物は、PPP1R15A及びPPP1R15Bを阻害することができる。非常に好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、PPP1R15BよりもPPP1R15Aを選択的に阻害することができる。
【0071】
一実施形態において、本発明は、ミスフォールドタンパク質の蓄積が作用機序に関与するeIF2αリン酸化経路と関連する障害を処置する際の使用のための、上記で定義されている通りの式(I)の化合物に関する。好ましくは、障害はPPP1R15A関連の疾患である。こうした障害の例としては、タンパク質ミスフォールディング疾患及び/又はタンパク質症が挙げられる。
【0072】
別の実施形態において、本発明は、ミスフォールドタンパク質の蓄積が作用機序に関与するeIF2αリン酸化及び/又はPPP1R15A活性によって引き起こされるか、それらと関連するか、又はそれらが付随する障害を処置する際の使用のための、上記で定義されている通りの式(I)の化合物に関する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「PPP1R15A関連の疾患又は障害」は、ミスフォールドタンパク質の蓄積が作用機序に関与する異常なPPP1R15A活性を特徴とする疾患又は障害を指す。異常活性は、以下を指す: (i)正常にPPP1R15Aを発現しない細胞におけるPPP1R15A発現; (ii) PPP1R15A発現の増加;又は(iii) PPP1R15A活性の増加。
【0074】
別の実施形態において、本発明は、ミスフォールドタンパク質の蓄積が作用機序に関与するPP1R15Aの阻害によって軽減された疾患状態を有する哺乳動物を処置する方法であって、上記で定義されている通りの式(I)の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、方法に関する。
【0075】
別の実施形態において、本発明は、タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害並びに/又はUPR障害を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関し、ここで、前記化合物は、アドレナリン作動性アルファ2アゴニスト活性を有していないか、又はグアナベンズとの比較において低減された該活性を有する。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害並びに/又はUPR障害を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関し、ここで、前記化合物は、PPP1R15Bを発現する非ストレス細胞におけるタンパク質翻訳を阻害しない。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、ミスフォールドタンパク質の蓄積でのERストレス応答活性を特徴とする障害を処置する方法であって、式(I)の少なくとも1種の化合物の治療有効量を患者に投与することを含み、前記化合物がERストレス応答をモジュレートする、方法に関する。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、プロテオパチー及び/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害及び/又はUPR障害を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関し、ここで、前記化合物は、PPP1R15A-PP1ホロホスファターゼ(holophosphatase)に対する選択性を有するが、PPP1R15B-PP1ホロホスファターゼに対する活性を有していないか、又は低減された該活性を有しており、前記化合物についての比(PPP1R15A-PP1ホロホスファターゼに対する活性/PPP1R15B-PP1に対する活性)は、少なくとも等しいか、又はグアナベンズについての比(PPP1R15A-PP1ホロホスファターゼに対する活性/PPP1R15B-PP1に対する活性)よりも優れている。
【0079】
別の実施形態において、本発明は、プロテオパチー及び/又はタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害及び/又はUPR障害を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関し、
- ここで、前記化合物は、PPP1R15A-PP1ホロホスファターゼに対する活性を有するが、PPP1R15B-PP1ホロホスファターゼに対する活性を有していないか、又は低減された該活性を有しており、
- ここで、前記化合物についての比(PPP1R15A-PP1ホロホスファターゼに対する活性/PPP1R15B-PP1に対する活性)は、少なくとも等しいか、又はグアナベンズについての比(PPP1R15A-PP1ホロホスファターゼに対する活性/PPP1R15B-PP1に対する活性)よりも優れており、
- ここで、前記化合物は、アドレナリン作動性アルファ2アゴニスト活性を有していないか、又はグアナベンズとの比較において低減された該活性を有している。
【0080】
本発明による疾患又は障害は、
(i) ERストレス応答活性と関連する、並びに/又は
(ii)タンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質及び/若しくはアンフォールドタンパク質の蓄積である、並びに/又は
(iii) UPR障害である、並びに/又は
(iv) PPP1R15A関連疾患である、並びに/又は
(v) プロテオパチーである。
【0081】
本発明に従った疾患の非限定的な例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
神経変性疾患、例えばタウオパチー(とりわけアルツハイマー病等)、シヌクレイノパチー(とりわけパーキンソン病等)、ハンチントン病及び関連のポリグルタミン病、ポリアラニン病(眼咽頭筋ジストロフィー等)、プリオン病(伝達性海綿状脳症とも名付けられている)、脱髄障害、例えばシャルコー・マリー・トゥース病(遺伝性運動感覚性ニューロパチーとも名付けられている)、白質ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(運動ニューロン疾患及びルー・ゲーリック病とも称される)、セイピノパチー及び多発性硬化症。
【0082】
タウオパチーの例としては、以下に限定されないが、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭葉変性症又は前頭側頭型認知症(FTD) (ピック病)が挙げられる。FTDは、前頭葉及び/又は側頭葉に優勢に関わる進行性ニューロン損失を特徴とする神経変性疾患であり、有病率においてアルツハイマー病(AD)に次いで第2位で、FTDは、若年発症性認知症症例の20%を占める。タウオパチーにおけるUPRの関与は、十分に文書化されている(Stoveken 2013、The Journal of Neuroscience 33(36): 14285~14287を参照されたい)。理論によって結び付けられることなく、PPP1R15A阻害剤である本発明の化合物は、タウオパチーの疾患徴候を寛解させることが見込まれる。好ましい実施形態によると、本発明は、アルツハイマー病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の好ましい実施形態によると、本発明は、前頭側頭型認知症(FTD)、核上性麻痺及び大脳皮質基底核変性症、好ましくはFTDの中で選択される疾患を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0083】
シヌクレイノパチーの例としては、以下に限定されないが、パーキンソン病、レビー小体型認知症、純粋自律神経性不全症及び多系統萎縮症が挙げられる。近年、Collaら(J. of Neuroscience 2012 32巻10号 3306~3320頁)は、eIF2αのPPP1R15A媒介脱リン酸化を阻害することによってeIF2アルファのリン酸化を増加させる小分子であるサルブリナル(Boyceら 2005 Science 307巻 935~939頁)が、アルファ-シヌクレイノパチーの2つの動物モデルにおいて疾患徴候を有意に減弱させることを実証した。理論によって結び付けられることなく、PPP1R15A阻害剤である本発明の化合物は、アルファ-シヌクレイノパチーの疾患徴候を寛解させることが見込まれる。好ましい実施形態によると、本発明は、アルファ-シヌクレイノパチーを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、パーキンソン病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0084】
ポリグルタミン病の例としては、以下に限定されないが、球脊髄性筋萎縮症(又はケネディー病)、ハンチントン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脊髄小脳変性症1型、脊髄小脳変性症2型、脊髄小脳変性症3型(又はマシャド・ジョセフ病)、脊髄小脳変性症6型、脊髄小脳変性症7型及び脊髄小脳変性症17型が挙げられる。グアナベンズは、細胞ベースのアッセイにおいて変異ハンチンチンの蓄積を減弱させることができる(WO2008/041133)。突然変異体ハンチンチンが細胞質ゾル又は核のいずれかであるので、この所見は予想外である。しかしながら、変異ハンチンチン代謝が予めERストレス応答に連結されているという証拠がある(Nishitohら、2002、Genes Dev、16、1345~55; Rousseauら、2004、Proc Natl Acad Sci U S A、101、9648~53; Duennwald及びLindquist、2008、Genes Dev、22、3308~19)。グアナベンズが細胞毒性ERストレスから細胞を保護するとともに変異ハンチンチン蓄積を低減するという所見は、変異ハンチンチン蓄積に影響するERストレス応答の態様であり得るという着想を更に支持している。しかしながら、グアナベンズは、その降圧活性により、ヒトタンパク質ミスフォールディング疾患の処置に有用でない。対照的に、本発明のアルファ2アドレナリン作動活性を欠いているグアナベンズ誘導体PPP1R15A阻害剤は、ポリグルタミン病、及びより具体的にはハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症(又はケネディー病)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脊髄小脳変性症1型、脊髄小脳変性症2型、脊髄小脳変性症3型(又はマシャド・ジョセフ病)、脊髄小脳変性症6型、脊髄小脳変性症7型及び脊髄小脳変性症17型の群において選択されるものを処置するのに有用であり得る。好ましい実施形態によると、本発明は、ポリグルタミン病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、ハンチントン病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0085】
ポリアラニン病の例としては、ポリ(A)結合タンパク質の核1(poly(A) binding protein nuclear 1)(PABPN1)におけるポリ-アラニン管によって引き起こされる眼咽頭筋ジストロフィーが挙げられる。Barbezierら(2011、EMBO 3巻 35~49頁)は、グアナベンズが、眼咽頭筋萎縮症における凝集を低減することを実証した。好ましい実施形態によると、本発明は、ポリアラニン病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、眼咽頭筋萎縮症を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0086】
ヒトのプリオン病の例としては、以下に限定されないが、典型的クロイツフェルトヤコブ病、新たな変異型クロイツフェルトヤコブ病(nvCJD、ウシ海綿状脳症に関連するヒトの障害)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症及びクールーが挙げられる。グアナベンズは、プリオン感染マウスの症状を低減する(D. Tribouillard-Tanvierら、2008 PLoS One 3、e1981)。しかしながら、グアナベンズは、その降圧活性により、ヒトタンパク質ミスフォールディング疾患の処置に有用でない。対照的に、本発明のアルファ2アドレナリン作動活性を欠いているグアナベンズ誘導体PPP1R15A阻害剤は、プリオン病を処置するのに有用であり得る。好ましい実施形態によると、本発明は、クロイツフェルトヤコブ病、新たな変異型クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症及びクールーの群において選択される疾患を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0087】
脱髄障害は、中枢神経系におけるオリゴデンドロサイト又は末梢神経系におけるシュワン細胞の損失を特徴とする。脱髄障害と関連する現象は、中枢神経系又は末梢神経系における脱髄化軸索の減少を特徴とする。脱髄化性細胞(オリゴデンドロサイト及びシュワン細胞を含める)のミスフォールドタンパク質の非限定的な例は、CC1、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、セラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(CGT)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、オリゴデンドロサイトミエリン糖タンパク質(OMG)、環状ヌクレオチド・ホスホジエステラーゼ(CNP)、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、末梢ミエリンタンパク質22 (PMP22)、コネキシン32 (Cx32)、タンパク質2 (P2)、ガラクトセレブロシド(GalC)、スルファチド及びプロテオリピドタンパク質(PLP)からなる群から選択される。MPZ、PMP22、Cx32及びP2は、シュワン細胞のための好ましいミスフォールドタンパク質である。PLP、MBP、MAGは、オリゴデンドロサイトのための好ましいミスフォールドタンパク質である。
【0088】
ある特定の実施形態において、脱髄障害は、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病からなる群から選択される。CMTは、慢性の運動性及び感覚性多発ニューロパチーを特徴とする遺伝性ニューロパチー障害の群を指す。CMTの異なる型は、CMT1、CMT2、CMT4、CMTX及びデジェリン・ソッタス病等と同定された。CMTサブタイプは、主に分子遺伝学的所見で更に細分することができる。例えば、CMT1は、CMT1A、1B、1C、1D、1E、1F/2Eに細分される。シュワン細胞を脱髄化することによって産生される主要なタンパク質である単回通過膜貫通タンパク質であるミエリンタンパク質ゼロ(P0)をコード化する遺伝子における100を超える突然変異は、シャルコー・マリー・トゥース・ニューロパチーを引き起こす(D'Antonioら、2009、J Neurosci Res、87、3241~9)。該突然変異は、優性遺伝であり、毒性機能の獲得を介して該疾患を引き起こす(D'Antonioら、2009、J Neurosci Res、87、3241~9)。P0 (P0S63del)からのセリン63の欠失は、ヒトにおいてシャルコー・マリー・トゥース1Bニューロパチー、及びトランスジェニックマウスにおいて同様の脱髄性ニューロパチーを引き起こす。突然変異体タンパク質は、ERにおいて蓄積し、UPRを誘発する(D'Antonioら、2009、J Neurosci Res、87、3241~9)。UPRにおけるプロアポトーシス遺伝子であるCHOPの遺伝子破壊は、シャルコー・マリー・トゥース・マウスにおける運動機能を回復する(Pennutoら、2008、Neuron、57、393~405)。細胞におけるPPP1R15A阻害がERストレス細胞におけるCHOP発現をほぼ消失させるという所見は、PPP1R15Aの遺伝子的又は薬理学的阻害が、シャルコー・マリー・トゥース・マウスにおける運動機能不全を低減するはずであることを示している。近年、D'Antonioら(2013 J.Exp. Med Vol. 1~18頁)は、サルブリナルで処置されたP0S63delマウスが、ロータロッド分析においてほとんど正常な運動能力を再獲得するとともに形態学的及び電気生理学的異常の救出が付随することを実証した。ERタンパク質におけるCMT関連突然変異体の蓄積は、P0S63delに特有でなく、ERにおいて保持されるとともにUPRを導出する少なくとも5つの他のP0突然変異体が同定されている(Pennutoら、2008、Neuron、Vol. 57、393~405頁; Saportaら、2012 Brain 135巻 2032~2047頁)。加えて、ERにおけるタンパク質ミスフォールディング及びミスフォールドタンパク質の蓄積は、PMP22及びCx32における突然変異の結果として他のCMTニューロパチーの病変形成に関係してきた(Colbyら、2000 Neurobiol.Disease 7巻 561~573頁; Kleopaら、2002 J. Neurosci. Res. 68巻 522~534頁; Yumら、2002 Neurobiol. Dis. 11巻 43~52頁)。しかしながら、サルブリナルは毒性であり、ヒト患者を処置するのに使用することができない(D'Antonioら(2013 J.Exp. Med Vol. 1~18頁))。対照的に、式(I)のPPP1R15A阻害剤は、安全であると予測され、CMT、好ましくはCMT-1A及び1Bの処置に有用である得る。好ましい実施形態によると、本発明は、CMT、より好ましくはCMT-1及びデジェリン・ソッタス病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、ERにおけるミスフォールドタンパク質の蓄積と関連するCMTを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、CMT-1Aを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、CMT-1Bを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、CMT-1Eを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0089】
別の実施形態において、式(I)の化合物は、CMTを処置する際の使用のため、より好ましくは、D-ソルビトール、バクロフェン、ピロカルピン、ナルトレキソン、メチマゾール、ミフェプリストン、ケトプロフェン及びそれらの塩の群において選択される少なくとも1種の化合物と組み合わせた(関連させた)、CMT-1を処置する際の使用のためのものである。別の実施形態によると、本発明は、D-ソルビトール、バクロフェン、ピロカルピン、ナルトレキソン、メチマゾール、ミフェプリストン、ケトプロフェン及びそれらの塩の群において選択される少なくとも1種の化合物と組み合わせて、CMT、好ましくはCMT-1を処置する際の使用のための、グアナベンズ又はサルブリナル(即ち、PPP1R15A阻害剤)又は薬学的に許容されるその塩に関する。該化合物は、グループ化投与又は別々の投与のために、同時に又は順次に組み合わせられている。
【0090】
本発明は、神経変性疾患、好ましくはCMT、より好ましくはCMT-1の処置における使用のための、式(I)の化合物の群において選択されるPPP1R15A阻害剤、グアナベンズ及びサルブリナル又は薬学的に許容されるその塩、並びに少なくとも1つの市場に出ている化合物及びその塩を含む組成物に関する。該組成物における化合物の投与量は、長期維持処置のための通常処方される用量を超えない又はフェーズ3臨床治験に安全であると証明された用量の範囲内にあるものとし、該組合せにおける化合物の最も好ましい投与量は、長期維持処置のために通常処方されるものの1%から最大10%までの量に対応するものとする。
【0091】
したがって、本発明は、CMT、好ましくはCMT-1、より好ましくはCMT-1Aの処置における使用のための、式(I)の化合物の群において選択されるPPP1R15A阻害剤、グアナベンズ及びサルブリナル又は薬学的に許容されるその塩、並びにD-ソルビトール、バクロフェン、ピロカルピン、ナルトレキソン、メチマゾール、ミフェプリストン、ケトプロフェン及びそれらの塩の群において選択されるPMP22タンパク質の発現を増加させる化合物を含む組成物に関する。
【0092】
他の実施形態において、脱髄障害は、白質ジストロフィーからなる群から選択される。白質ジストロフィーの例としては、以下に限定されないが、副腎白質ジストロフィー(ALD)、アレキサンダー病、カナバン病、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー(MLD)、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMD)、中枢神経系ミエリン形成不全を有する小児期運動失調(消失性白質疾患としても知られている)、CAMFAK症候群、レフサム病、コケイン症候群、ファン・デル・クナップ症候群、ツェルウェーガー症候群、ギラン-バレー症候群(GBS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)及び進行性核上性麻痺、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、抗MAG疾患がとりわけ挙げられる。Gowら(Neuron、2002、36巻、585~596)は、小胞体ストレス応答がPMDにおいて活性化されることを実証し、この経路がPLP1遺伝子の複製であることを示している。
【0093】
好ましい実施形態によると、本発明は、白質ジストロフィー及び好ましくはペリツェウス・メルツバッヘル病(PMD)を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0094】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン疾患及びルー・ゲーリック病と称される。タンパク質ミスフォールディングが家族性及び孤発性ALSの両方において中心的役割を果たすことは現在よく認識されている(Matusら 2013 Int. J. Cell Biol. ID674751 http://dx.doi.org/10.1155/2013/674751)。Saxenaら(Nature Neuroscience 2009 12巻 627~636頁)は、サルブリナルが、運動ニューロン疾患のG93A-SOD1トランスジェニックマウスモデルの寿命を伸ばすことを実証した。より近年には、Jiangら(Neuroscience 2014)は、グアナベンズが、ALSのSOD1 G93Aマウスモデルにおいて、疾患症状の発症を遅延させ、寿命を伸ばし、運動能力を改善し、運動ニューロン損失を減弱させることを実証した。Dasら(2015 Science 388、239~242)は、グアナベンズ誘導体が、突然変異体G93A SOD1マウスにおいて、ALSの運動的、形態学的及び分子的欠陥を防止することを実証した。好ましい実施形態によると、本発明は、ALSの家族性及び孤発性形態を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0095】
セイピノパチーの例としては、以下に限定されないが、ベラールディネリ-シープ(Berardinelli-Seip)先天性リポジストロフィー2型(BSCL2)関連の運動疾患、先天性全身性リポジストロフィー(CGL)、シルバー症候群、遠位遺伝性運動性ニューロパチー(distal hereditary motor neuropathy) V型(dHMN-V)が挙げられる。培養細胞におけるセイピンの突然変異形態の発現は、小胞体ストレス応答(UPR)経路を活性化し、ERストレス媒介細胞死を誘発する(Ito & Suzuki、2009 Brain 132: 87~15)。好ましい実施形態によると、本発明は、セイピノパチーを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0096】
別の実施形態において、そこで称されている脱髄障害は、多発性硬化症及び関連疾患、例えばシルダー病である。好ましい実施形態によると、本発明は、多発性硬化症を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0097】
嚢胞性線維症(CF)
Norezら(2008 Eur. J. Pharmacol. 592巻 33~40頁)は、グアナベンズが嚢胞性線維症ヒト気道上皮細胞においてCa2+依存性クロライド電流を活性化することを実証した。理論によって結び付けられることなく、グアナベンズ誘導体PPP1R15A阻害剤である本発明の化合物は、嚢胞性線維症の疾患徴候を寛解させることが見込まれる。好ましい実施形態によると、本発明は、嚢胞性線維症を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0098】
網膜疾患。
近年発表された文献は、UPRが、網膜変性症:遺伝性網膜変性症、例えば網膜繊毛関連疾患&網膜色素変性症、黄斑変性症、未熟児網膜症、光誘発網膜変性症、網膜剥離、糖尿病性網膜症及び緑内障の発症に関与するという証拠を提供している(概説について、Gorbatyuk et Gorbatyuk 2013 Molecular Vision 19巻 1985~1998頁; Jingら、2012、Exp Diabetes Res、2012、589589)。
【0099】
網膜繊毛関連疾患は、光受容体の一次繊毛における欠陥に由来する希な遺伝子障害の群であり、したがって、網膜色素変性症を誘発する。この欠陥は、光受容体の内セグメントにおいてタンパク質蓄積によるERストレスを誘発し、これが次にUPRを誘発することが報告されている(WO2013/124484)。網膜変性症は、単独の網膜色素変性症、例えばレーバー先天性黒内障若しくはX連鎖性網膜色素変性症において、又はその上バルデ・ビードル症候群(BBS)、アルストレーム症候群(ALMS)若しくはアッシャー症候群のような症候群状態においてのいずれかで観察することができる繊毛関連疾患における非常に一般的な特色である。網膜繊毛関連疾患は、バルデ・ビードル症候群、シニア・ローケン症候群、ジュベール症候群、サルディーノ・マインツァー(Salidono-Mainzer)症候群、センセンブレナー(Sensenbrenner)症候群、ジューヌ症候群、メッケル・グルーバー症候群、アルストレーム症候群、MORM症候群からなる群から選択される。好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、網膜疾患、より好ましくは、遺伝性網膜変性症、例えば網膜繊毛関連疾患及び網膜色素変性症、黄斑変性症、未熟児網膜症、光誘発網膜変性症、網膜剥離、糖尿病性網膜症及び緑内障を処置する際の使用のためのものである。
【0100】
好ましい実施形態によると、本発明は、網膜色素変性症を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、本発明は、レーバー先天性黒内障を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の好ましい実施形態によると、本発明は、バルデ・ビードル症候群を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の好ましい実施形態によると、本発明は、アルストレーム症候群を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の好ましい実施形態によると、本発明は、アッシャー症候群を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0101】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、BIPタンパク質の発現及び/又は活性を増加させる化合物、例えばバルプロ酸又はその誘導体、トリコスタチンA、リチウム、1-(3,4-ジヒドロキシ-ペニル)-2-チオシアネート-エタノン及びエキセンディン-4と組み合わせた、網膜疾患を処置する際の使用のため、より好ましくは遺伝性網膜変性症、例えば網膜繊毛関連疾患、網膜色素変性症、黄斑変性症、未熟児網膜症、光誘発網膜変性症、網膜剥離、糖尿病性網膜症及び緑内障の群において選択される疾患を処置する際の使用のためのものである。したがって、本発明は、遺伝性網膜変性症、例えば網膜繊毛関連疾患、網膜色素変性症、黄斑変性症、未熟児網膜症、光誘発網膜変性症、網膜剥離、糖尿病性網膜症及び緑内障の群において選択される疾患の処置における使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩、並びにBIPタンパク質の発現及び/又は活性を増加させる化合物、好ましくはバルプロ酸を含む組成物に関する。
【0102】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、遺伝子治療ベクターと組み合わせて、網膜疾患を処置する際の使用のため、より好ましくは遺伝性網膜変性症、例えば網膜繊毛関連疾患、網膜色素変性症、黄斑変性症、未熟児網膜症、光誘発網膜変性症、網膜剥離、糖尿病性網膜症及び緑内障の群において選択される疾患を処置する際の使用のためであり、遺伝子治療ベクターの非限定的な例としては、レンチウイルス、アデノウイルス、及びアデノ関連ベクター(AAV)が挙げられ、これらのベクターは、眼球遺伝子治療のための網膜及び網膜色素上皮に興味対象の遺伝子を送達する際に有効である。突然変異されたミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する遺伝性網膜変性症の眼球遺伝子治療において、小胞体におけるタンパク質蓄積は依然として存在し、一方、正常タンパク質は遺伝子治療ベクターから発現されることが見込まれる。細胞における、好ましくはERにおけるタンパク質蓄積/負荷をPPP1R15A阻害剤で減少させることが依然として必要である。本発明は、眼球遺伝子治療との組合せにおいて、式(I)の化合物の群において選択されるPPP1R15A阻害剤、グアナベンズ及びサルブリナル又は薬学的に許容されるその塩を含む組成物にも関する。
【0103】
リソソーム蓄積症;
リソソーム蓄積症は、リソソーム機能における欠陥に起因するおよそ50種の希な遺伝性代謝障害の群である。リソソーム機能不全は、通常、脂質、糖タンパク質又はいわゆるムコ多糖類の代謝に必要とされる単一酵素の欠損症の帰結である。本明細書に記載されている式(I)のPPP1R15A阻害剤で処置することができるリソソーム蓄積症の例としては、以下に限定されないが、アクチベーター欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステリルエステル蓄積症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、ニーマン・ピック病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、II型)、GM1ガングリオシドーシス(小児型、後期小児型/若年型、成人型/慢性型)、I細胞疾患/ムコリピドーシス、小児性遊離シアル酸蓄積症/ISSD、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病(小児発症型、後期発症型)、リソソーム酸リパーゼ欠損症(早期発症型/後期発症型)、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症障害(偽性ハーラー・ポリジストロフィー/ムコリピドーシスIIIA、ムコ多糖症I (MPS I)ハーラー症候群、MPS Iシャイエ症候群、MPS Iハーラー-シャイエ症候群、MPS IIハンター症候群、サンフィリポ症候群A型(MPS IIIA)、サンフィリポ症候群B型(MPS IIIB)、サンフィリポ症候群C型(MPS IIIC)、サンフィリポ症候群D型(MPS IIID)、モルキオA型/MPS IVA、モルキオB型/MPS IVB、MPS IXヒアルロニダーゼ欠損症、MPS VIマロトー・ラミー、MPS VIIスライ症候群、ムコポリリピドーシス(mucopolylipidosis)I/シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型等)、多種スルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病(A型、B型、C型)、CLN6疾患(非定型後期小児型、後期発症変異型、早期若年型)、バッテン・シュピールマイアー・フォークト/若年性NCL/CLN3疾患、フィンランド変異型後期小児性CLN5、ヤンスキー・ビールショースキー病/後期小児性CLN2/TPP1疾患、クッフス/成人発症型NCL/CLN4疾患、北方(ノーザン)てんかん/変異型後期小児性CLN8、サンタブオリ・ハルチア(Santavuori-Haltia)/小児性CLN1/PPT疾患、ベータ-マンノシドーシス、ポンペ病/グリコーゲン蓄積症II型、濃化異骨症、サンドホフ病/GM2ガングリオシドーシス(成人発症型、小児発症型、若年発症型)、シンドラー病、サラ病/シアル酸蓄積症、テイ・サックス/GM2ガングリオシドーシス、及びウォルマン病が挙げられる。別の好ましい実施形態によると、本発明は、脂質、糖タンパク質又はいわゆるムコ多糖類の代謝に必要とされる少なくとも1種の単一酵素の欠損症の帰結であり、前記酵素が小胞体(ER)においてミスフォールディングされているリソソーム蓄積症を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。好ましい実施形態によると、リソソーム蓄積症はゴーシェ病である。
【0104】
アミロイドーシス疾患:
アミロイドーシスは、集団的にアミロイドーシスと呼ばれるいくつかの異なる疾患を指す非特定用語である。アミロイドは、二次構造が変化して、タンパク質が特徴的形態のベータひだ状シートにフォールディングするのを引き起こすタンパク質である。正常な可溶性タンパク質がフォールディングすることでアミロイドになる場合、それらは不溶性になり、堆積し、器官又は組織に蓄積して、正常機能を妨害する。異なる型のアミロイドーシスは、アミロイドタンパク質が凝集する場所及び器官に依存して異なる兆候及び症状を有する。アミロイドーシス疾患の例としては、以下に限定されないが、AL、AH、ALHアミロイドーシス(それぞれ軽鎖、重鎖、重及び軽鎖抗体から誘導されるアミロイド)、AAアミロイドーシス(血清Aタンパク質から誘導されるアミロイド)、ATTRアミロイドーシス(トランスサイレチンから誘導されるアミロイド)、原発性全身性アミロイドーシス、二次性全身性アミロイドーシス、老年性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー1、遺伝性脳アミロイド血管症、血液透析関連アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチーIII、フィンランド遺伝性全身性アミロイドーシス、心房性アミロイドーシス、遺伝性非ニューロパチー性全身性アミロイドーシス、注射限局性アミロイドーシス、遺伝性腎アミロイドーシス、及びアルツハイマー病がとりわけ挙げられる。別の好ましい実施形態によると、アミロイドはアミロイドベータ(Aβ又はAベータ)であり、本発明は、アルツハイマー病を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0105】
別の好ましい実施形態によると、アミロイドはHLA-B27であり(Colbertら 2009 Prion 3巻 (1) 15~16頁)、本発明は、脊椎関節症、より好ましくは強直性脊椎炎を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0106】
炎症
PPP1R15Aは、病原状態に至る炎症性サイトカイン及び他の分泌分子メディエーターの放出を遮断することによって炎症を制御するための有望な標的を表す。本明細書に記載されている式(I)のPPP1R15A阻害剤によって処置することができる、それらと関連する炎症を有する疾患又は状態の非限定的な例としては、以下に限定されないが、肺における感染関連又は非感染性の炎症状態(即ち、セプシス、肺感染、呼吸窮迫症候群、気管支肺異形成症等);他の器官における感染関連又は非感染性の炎症状態、例えば大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、糖尿病性腎症、出血性ショック、脊椎関節症、膵炎;及び炎症誘発がん(即ち、大腸炎又は炎症性腸疾患を有する患者におけるがん進行)等が挙げられる。
【0107】
こうした病原性炎症状態の例としては、自己免疫疾患、遺伝性疾患、慢性疾患及び感染性疾患、例えばアレルギー、喘息、高サイトカイン血症が挙げられ、グラフト対宿主病(GVHD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、セプシス、全身性炎症応答症候群(SIRS)を含める(WO2011/061340を参照されたい)。好ましくは、感染性疾患は、インフルエンザウイルス感染、天然痘ウイルス感染、ヘルペスウイルス感染、重度の急性呼吸症候群(SARS)、チクングニアウイルス感染、ウエストナイルウイルス感染、デングウイルス感染、日本脳炎ウイルス感染、黄熱病ウイルス感染及びC型肝炎ウイルス感染から選択される。
【0108】
好ましくは、自己免疫疾患は、シェーグレン症候群、全身性ループスエリテマトーデス、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性白斑、菌状息肉症、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(PLEVA)、関節炎、劇症型抗リン脂質症候群から選択される。
【0109】
別の好ましい実施形態によると、本発明は、大腸炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、セプシスの群において選択される疾患を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の好ましい実施形態によると、本発明は、膵炎を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の好ましい実施形態によると、本発明は、セプシスを処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0110】
別の好ましい実施形態によると、本発明は、脊椎関節症、より好ましくは強直性脊椎炎を処置する際の使用のための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0111】
代謝障害及び/又は心臓血管障害、例えば脂肪症、高脂血症、家族性高コレステロール血症、肥満、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心疾患、心虚血、脳卒中、心筋梗塞、トランス大動脈狭窄、血管発作、並びに糖尿病及び関連障害としては、高血糖症、耐糖能障害、高インスリン血症(前糖尿病)、インスリン過敏症I型及びII型糖尿病、インスリン抵抗性、ウォルコット・ラリソン症候群がとりわけ挙げられる。
【0112】
好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、アテローム性動脈硬化症を処置する際の使用のためのものである。第2の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、高血圧、心疾患、心虚血、脳卒中、心筋梗塞、トランス大動脈狭窄又は血管発作の群において選択される疾患を処置する際の使用のためのものである。好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、心虚血を処置する際の使用のためのものである。別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、高血糖症、耐糖能障害、高インスリン血症(前糖尿病)、インスリン過敏症I及びII型、インスリン抵抗性並びにウォルコット・ラリソン症候群の群において選択される疾患を処置する際の使用のためのものである。別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、前糖尿病又は糖尿病、より好ましくは2型糖尿病を処置する際の使用のためのものである。
【0113】
骨粗鬆症:
Yokotaら(BMC Musculoskeletal disorders 2013、14、197)及びHeら(Cellular Signaling 2013、25 552~560)は、サルブリナル(Boyceら2005)が、マウスモデルにおいて骨粗鬆症を効果的に遮断し、骨形成を刺激することを実証した。しかしながら、サルブリナルは毒性であり、ヒト患者を処置するのに使用することはできない。対照的に、式(I)のPPP1R15A阻害剤は、安全であると予測され、骨粗鬆症の処置に有用であり得る。好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、骨粗鬆症を処置する際の使用のためのものである。
【0114】
神経系外傷
Ohriら(Neurobiology of disease、2013 58巻 29~37頁)は、サルブリナルが、白質温存の改善及びオリゴデンドロサイトアポトーシスの減少と比例する後肢自発運動を著しく改善し、したがって、脊髄損傷の機能回復を改善することを実証した。
【0115】
本発明の式(I)のPPP1R15A阻害剤は、安全であると予測され、外傷性脊髄損傷後のオリゴデンドロサイト損失を低減するのに並びに脊髄損傷の予防的及び/又は治療的処置に有用であり得る。好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、脊髄損傷の予防的及び/又は治療的処置のためのものである。
【0116】
虚血、脳虚血、睡眠時無呼吸
本発明は、壊死又はアポトーシスによる細胞傷害又は細胞死に起因する組織傷害を予防及び/又は処置するための、本発明の式(I)のPPP1R15A阻害剤を使用する方法を提供する。神経の組織傷害の例としては、虚血及び再灌流損傷、例えば大脳虚血性脳卒中及び頭部外傷が挙げられる。好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、大脳虚血性脳卒中及び頭部外傷等の脳虚血の予防的及び/又は治療的処置のためのものである。
【0117】
加齢
加齢は、細胞、組織及び器官の変性症と関連して、がん、心血管不全、肥満、2型真性糖尿病、非アルコール性脂肪肝臓及び神経変性疾患等の疾患、並びに生理学的性能の大部分の尺度の減退をもたらす。
【0118】
生物学において、老化は、加齢の状態又は方法である。細胞老化は、単離細胞が培養において分裂する能力の限界を実証する現象であり(Leonard Hayflickによって1961に発見されたヘイフリック限界)、一方、生命体の老化は、生物体の加齢である。生命体の老化は、ストレスに応答する能力が低下すること、ホメオスタシス不均衡を増加させること、及び疾患のリスクの増加を特徴とし、特に、UPRは加齢とともに欠損される(Naidooら、2008、J Neurosci、28、6539~48)。したがって、eIF2αホスファターゼの阻害によってUPRの有益な効果を延長することは、加齢関連障害を寛解させ得る。そのため、本発明の式(I)のPPP1R15A阻害剤は、安全であると予測され、細胞の寿命又は増殖能に関する疾患又は障害、及び動物、より具体的にはヒトにおける細胞老化によって誘発又は悪化される疾患又は疾患状態を予防及び/又は処置するのに有用であり得る。
【0119】
特別な実施形態によると、本発明は、嚢胞性線維症、リソソーム蓄積症、アミロイドーシス疾患、がん、炎症好ましくはセプシス、大腸炎及び膵炎、代謝障害、糖尿病、心臓血管障害、骨粗鬆症、中枢神経系外傷、虚血、網膜疾患、セイピノパチー、神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、ポリグルタミン病及びポリアラニン病、シャルコー・マリー・トゥース病、白質ジストロフィー、並びに多発性硬化症の群において選択される1つ以上の疾患の処置及び/又は予防における使用のための、以下:
【0120】
【表2A】
【表2B】
【0121】
から選択される1種の化合物に関する。
【0122】
実施形態によると、本発明は、上記化合物1から11から選択される1種の化合物、並びにそれを含む医薬組成物にも関する。
【0123】
医薬組成物
本発明による使用のために、本明細書に記載されている化合物又は生理学的に許容されるその塩、エステル若しくは他の生理的官能性誘導体は、該化合物又は生理学的に許容されるその塩、エステル若しくは他の生理的官能性誘導体を、そのための1種以上の薬学的に許容される担体、及び場合により他の治療的及び/若しくは予防的成分と一緒に含む医薬製剤として提示することができる。担体は、該製剤の他の成分と適合性があるとともにそのレシピエントに有害でない意味で許容されるものでなければならない。該医薬組成物は、ヒト及び獣医学におけるヒト又は動物の使用法のためであり得る。
【0124】
本明細書に記載されている医薬組成物の様々な異なる形態のためのこうした適当な賦形剤の例は、A Wade及びPJ Wellerによって編集された「Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、(1994)において見出すことができる。
【0125】
治療的使用のための許容される担体又は希釈剤は、医薬技術においてよく知られており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing co. (A. R. Gennaro編集 1985)に記載されている。
【0126】
適当な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトール等が挙げられる。適当な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0127】
医薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図される投与経路及び標準的医学診療に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として又はそれらに加えて、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤、緩衝剤、香味剤、界面活性剤、増粘剤及び保存剤(酸化防止剤を含める)等、並びに製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする目的のために含まれる物質を含むことができる。
【0128】
適当な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、フリーフローラクトース、ベータラクトース、コーン甘味料、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0129】
適当な滑沢剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0130】
保存剤、安定剤、染料及び更に香味剤が、該医薬組成物において提供され得る。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁剤も使用することができる。
【0131】
医薬製剤としては、経口投与、局所的投与(皮膚、頬側、眼球及び舌下を含める)、直腸又は非経口投与(皮下、皮内、筋肉内及び静脈内を含める)、経鼻投与、眼球内投与、並びに例えば吸入による肺投与に適当なものが挙げられる。該製剤は、適切な場合、好都合には別個の投与単位で提示することができ、調剤学の技術分野においてよく知られている方法のいずれかによって調製することができる。全ての方法には、活性化合物を液体担体若しくは微粉化固体担体又は両方と組み合わせる工程、及び次いで、必要ならば、該生成物を所望の製剤に形状化することが含まれる。
【0132】
担体が固体である経口投与に適当な医薬製剤は、最も好ましくは、ボーラス剤、カプセル剤又は錠剤等の単位用量製剤として提示され、各々は所定量の活性化合物を含有する。錠剤は、圧縮又は成形によって、場合により1種以上の副成分とともに作製することができる。圧縮錠剤は、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤又は分散剤と混合された散剤又は顆粒剤等のさらさらした形態の活性化合物を、適当な機械において圧縮することによって調製することができる。湿製錠剤は、不活性液体希釈剤とともに活性化合物を成形することによって作製することができる。錠剤は、場合によりコーティングすることができ、非コーティングならば、場合により切れ目をつけることができる。カプセル剤は、活性化合物を単独で又は1種若しくは複数の副成分との添加混合物のいずれかでカプセル殻に充填すること、及び次いで、それらを通常の方式で密封することによって調製することができる。カシェ剤は、活性化合物が任意の副成分と一緒に、ライスペーパーエンベロープ中に密封されているカプセル剤に類似している。活性化合物は、例えば投与前に水中に懸濁する又は食物上に振りかけることができる分散可能な顆粒剤として製剤化することもできる。顆粒剤は、例えばサッシェ剤内にパッケージすることができる。担体が液体である経口投与に適当な製剤は、水性又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として、又は水中油液体エマルジョンとして提示することができる。
【0133】
経口投与のための製剤としては、制御放出剤形、例えば、活性化合物が適切な放出制御性マトリックス中に配合される又は適当な放出制御用膜でコーティングされる錠剤が挙げられる。こうした製剤は、予防的使用に特に好都合であり得る。担体が固体である直腸投与に適当な医薬製剤は、最も好ましくは、単位用量坐剤として提示される。適当な担体としては、カカオ脂、及び当技術分野において一般的に使用される他の材料が挙げられる。坐剤は、好都合には、軟化又は溶融された担体との活性化合物の添加混合、続いて、冷やすこと及び鋳型において形状化することによって形成することができる。
【0134】
非経口投与に適当な医薬製剤としては、水性又は油性ビヒクル中の活性化合物の滅菌液剤又は懸濁剤が挙げられる。
【0135】
本発明の医薬製剤は、眼科投与に、特に眼球内、硝子体内、局所的眼球又は眼球周囲の投与に、より好ましくは局所的眼球又は硝子体内の投与に適当である。
【0136】
注射可能な調製物は、ボーラス注射又は持続注入液に適応させることができる。こうした調製は、好都合には、製剤の導入後に使用に必要とされるまで密封されている単位用量又は多用量の容器内に提示される。代替として、活性化合物は、使用前に滅菌ピロゲンフリー水等の適当なビヒクルとともに構成される粉末形態であってよい。
【0137】
活性化合物は、筋肉内注射によって又は例えば皮下又は筋肉内の埋め込みによって投与することができる長期活性デポ製剤として配合することもできる。デポ製剤としては、例えば、適当なポリマー性若しくは疎水性材料、又はイオン交換樹脂が挙げられ得る。こうした長期活性製剤は、予防的使用に特に好都合である。
【0138】
頬側口腔を介する肺投与に適当な製剤は、活性化合物を含有する及び望ましくは0.5ミクロンから7ミクロンの範囲で直径を有する粒子がレシピエントの気管支樹内に送達されるように提示される。1つの可能性として、こうした製剤は、吸入装置における使用のための適当には例えばゼラチンの貫通可能なカプセル中に、又は代替として、活性化合物、適当な液体若しくは気体状の噴霧剤、並びに場合により界面活性剤及び/若しくは固体希釈剤等の他の成分を含む自己噴射製剤としてのいずれかで好都合には提示することができる微粉砕粉末の形態である。適当な液体噴霧剤としてはプロパン及びクロロフルオロカーボンが挙げられ、適当な気体噴霧剤としては二酸化炭素が挙げられる。活性化合物が液剤又は懸濁剤の液滴の形態で分注される自己噴射製剤が用いられ得る。
【0139】
こうした自己噴射製剤は、当技術分野において知られているものに類似し、確立された手順によって調製することができる。適当には、それらは、所望の噴霧特性を有する手動操作可能な又は自動的に機能するバルブのいずれかが設けられている容器内に提示され、有利には、バルブは、その各操作で固定体積、例えば25マイクロリットルから100マイクロリットルを送達する計量型である。
【0140】
さらなる可能性として、活性化合物は、加速された気流又は超音波攪拌が吸入のための微細な液滴ミストを生成するために用いられるアトマイザー又はネブライザーにおける使用のための液剤又は懸濁剤の形態であってよい。
【0141】
経鼻投与に適当な製剤としては、肺投与について上に記載されているものと一般に同様の調製物が挙げられる。分注される場合、こうした製剤は、望ましくは、鼻腔中での滞留を可能にする10ミクロンから200ミクロンの範囲における粒子径を有するべきであり、これは、適切な場合、適当な粒径の粉末の使用又は適切なバルブの選択によって達成することができる。他の適当な製剤としては、鼻に接近して保持される容器から経鼻通過を介する急速な吸入による投与のための20ミクロンから500ミクロンの範囲における粒子径を有する粗粉末、及び水性又は油性の溶液又は懸濁液中に0.2%w/vから5%w/vの活性化合物を含む点鼻薬が挙げられる。
【0142】
薬学的に許容される担体は、当業者によく知られており、以下に限定されないが、0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液又は0.8%の生理食塩水が挙げられる。追加として、こうした薬学的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンであってよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝化媒体を含める。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定油が挙げられる。例えば抗微生物薬、抗酸化剤、キレート化剤及び不活性ガス等、保存剤及び他の添加剤も存在することができる。
【0143】
局所製剤に適当な製剤は、例えばゲル剤、クリーム剤又は軟膏剤として提供することができる。こうした調製物は、例えば創傷若しくは潰瘍に適用することができ、創傷若しくは潰瘍の表面上に直接塗布されるか、又は処置されるべき部域に及び部域にわたって適用することができる例えば包帯、ガーゼ若しくはメッシュ等の適当な支持体上に保有されるかのいずれかである。
【0144】
処置されるべき部位、例えば創傷又は潰瘍上に直接噴霧する又は振りかけることができる液体製剤又は粉末製剤も提供され得る。代替として、担体、例えば包帯、ガーゼ又はメッシュ等に、該製剤を噴霧してから又は振りかけてから、処置されるべき部位に適用することもできる。
【0145】
本発明のさらなる態様によると、上に記載されている通りの医薬的又は獣医学的組成物の調製のための方法が提供されており、該方法は、活性化合物を担体と、例えば添加混合によって組み合わせることを含む。
【0146】
一般に、該製剤は、該活性薬剤を液体担体若しくは微粉化固体担体又は両方と均一及び密接に組み合わせること、及び次いで必要ならば、生成物を形状化することによって調製される。本発明は、一般式(I)の化合物を薬学的又は獣医学的に許容される担体又はビヒクルと併用する又は組み合わせることを含む、医薬組成物を調製するための方法に及ぶ。
【0147】
塩/エステル
本発明の化合物は、塩又はエステル、特に薬学的及び獣医学的に許容される塩又はエステルとして存在することができる。
【0148】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、その適当な酸付加塩又は塩基塩が挙げられる。適当な医薬塩の概説は、Bergeら、J Pharm Sci、66、1~19 (1977)に見出すことができる。塩は、例えば、強無機酸、例えば鉱酸、例えばハロゲン化水素酸、例えばヒドロクロリド、ヒドロブロミド及びヒドロヨージド、硫酸、リン酸、サルフェート、ビサルフェート、ヘミサルフェート、チオシアネート、ペルサルフェート及びスルホン酸を用いて;強有機カルボン酸、例えば非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)されている1個から4個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば酢酸を用いて;飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸を用いて;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸を用いて;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸を用いて;安息香酸を用いて;或いは有機スルホン酸、例えば非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)されている(C1~C4)-アルキル-又はアリール-スルホン酸、例えばメタン-又はp-トルエンスルホン酸を用いて形成される。薬学的又は獣医学的に許容されない塩であっても、中間体として有益である可能性がある。
【0149】
好ましい塩としては、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、パントテン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、二グルコン酸塩、シクロペンタン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、シュウ酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、ニコチン酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、3-フェニルプロピオネート、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロプリオン酸塩、酒石酸塩、ラクトビオン酸塩、ピボル酸塩(pivolate)、樟脳酸塩、ウンデカン酸塩及びコハク酸塩、有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホネート、カンファースルホン酸塩、2-ナフタレンスルホネート、ベンゼンスルホン酸塩、p-クロロベンゼンスルホネート及びp-トルエンスルホネート、並びに無機酸、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ヘミ硫酸塩、チオシアン酸塩、過硫酸塩、リン酸及びスルホン酸が挙げられる。好ましい実施形態によると塩は酢酸塩である。
【0150】
エステルは、エステル化されている官能基に依存して、有機酸又はアルコール/水酸化物のいずれかを使用して形成される。有機酸としては、カルボン酸、例えば非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)されている1個から12個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば酢酸;飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸;安息香酸;或いは有機スルホン酸、例えば非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)されている(C1~C4)-アルキル-又はアリール-スルホン酸、例えばメタン-又はp-トルエンスルホン酸が挙げられる。適当な水酸化物としては、無機水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アルミニウム水酸化物が挙げられる。アルコールとしては、非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)されていてよい1~12個の炭素原子のアルカンアルコールが挙げられる。
【0151】
エナンチオマー/互変異性体
前に考察されている本発明の全ての態様において、本発明には、適切な場合、本発明の化合物の全てのエナンチオマー、ジアステレオ異性体及び互変異性体が含まれる。当業者は、光学的性質(1個以上のキラル炭素原子)又は互変異性特徴を有する化合物を認識されよう。対応するエナンチオマー及び/又は互変異性体は、当技術分野において知られている方法によって単離/調製することができる。エナンチオマーは、それらのキラル中心の絶対立体配置を特徴とし、Cahn、Ingold及びPrelogのR-及びS-配列ルールによって記載されている。こうした慣例は当技術分野においてよく知られている(例えば、「Advanced Organic Chemistry」、第3版、編集 March、J.、John Wiley and Sons、New York、1985を参照されたい)。
【0152】
式(I)の化合物には、したがって、式
【0153】
【化7】
【0154】
の互変異性体形態も含まれる。
【0155】
例示的な例として、実施例1の互変異性体形態は、
【0156】
【化8】
【0157】
である。
【0158】
キラル中心を含有する本発明の化合物は、ラセミ混合物、エナンチオマー富化混合物として使用することができるか、又はラセミ混合物は周知の技法を使用して分離することができ、個々のエナンチオマーは単独で使用することができる。
【0159】
立体及び幾何異性体
本発明の化合物の一部は、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在することができ、例えば、それらは1つ以上の不斉中心及び/又は幾何学的中心を有することができ、それで、2種以上の立体異性形態及び/又は幾何学的形態で存在することができる。本発明は、それらの阻害剤薬剤の全ての個々の立体異性体及び幾何異性体、並びにそれらの混合物の使用を企図する。特許請求の範囲において使用される用語は、これらの形態を包含するが、前記形態が適切な機能活性を(必ずしも同じ程度というわけでないが)保持するという条件である。
【0160】
本発明には、該薬剤又は薬学的に許容されるその塩の全ての適当な同位体バリエーションも含まれる。本発明の薬剤又は薬学的に許容されるその塩の同位体バリエーションは、少なくとも1個の原子が、自然界に通常見出される同じ原子番号だが原子質量と異なる原子質量を有する原子によって置き換えられているものとして定義されている。該薬剤及び薬学的に許容されるその塩に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれ2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clが挙げられる。該薬剤及び薬学的に許容されるその塩のある特定の同位体バリエーション、例えば、3H又は14C等の放射性同位元素が組み込まれているものは、薬物及び/又は基質組織の分布研究において有用である。トリチウム化されている、即ち3H及び炭素14、即ち14C同位体は、それらの調製し易さ及び検出性のために特に好ましい。更に、重水素、即ち2H等の同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加又は投与量要求の低減に起因するある特定の治療的利点を得ることができ、それゆえに、一部の状況で好ましいことがある。例えば、本発明には、任意の水素原子が重水素原子によって置き換えられた一般式(I)の化合物が含まれる。本発明の薬剤及び本発明の薬学的に許容されるその塩の同位体バリエーションは、一般に、適当な試薬の適切な同位体バリエーションを使用する従来の手順によって調製することができる。
【0161】
プロドラッグ
本発明には、プロドラッグ形態における本発明の化合物、即ち、一般式(I)に従った活性親薬物をインビボにおいて放出する共有結合化合物が更に含まれる。こうしたプロドラッグは、一般に、1個以上の適切な基が、ヒト又は哺乳動物の対象への投与で修飾が逆戻り(復帰、逆転、転換)され得るように修飾された本発明の化合物である。逆戻りは、通常、こうした対象において天然に存在する酵素によって実施されるが、こうしたプロドラッグとともに第2の薬剤が投与されることで、インビボにおいて逆戻りを実施することが可能である。こうした修飾の例としては、エステル(例えば、上に記載されているものの任意のもの)が挙げられ、ここで、逆転はエステラーゼ等によって実施することができる。他のこうした系は当業者によく知られている。
【0162】
溶媒和物
本発明には、本発明の化合物の溶媒和物形態も含まれる。特許請求の範囲において使用される用語は、これらの形態を包含する。
【0163】
多形体
本発明は、更に、それらの様々な結晶性形態、多形形態及び(無水)含水形態における本発明の化合物に関する。化学的化合物が、こうした化合物の合成調製において使用される溶媒からの精製及び/又は単離の方法をわずかに変動させることによって、こうした形態のいずれかに単離することができることは、医薬産業内で十分に確立されている。
【0164】
投与
本発明の医薬組成物は、直腸投与、経鼻投与、気管支内投与、局所的投与(頬側、舌下及び眼科の投与を含め、特に眼球内、硝子体内、局所的眼球又は眼球周囲の投与のため)、腟内投与又は非経口投与(皮下の、筋肉内、静脈内、動脈内及び皮内を含める)、腹腔内投与又はくも膜下腔内投与のために適応することができる。好ましくは。該製剤は、経口投与される製剤である。該製剤は、好都合には、単位剤形において、即ち、単位用量又は単位用量の多重単位若しくはサブ単位を含有する別個の部分の形態で提示することができる。例として、該製剤は、錠剤及び徐放性カプセル剤の形態であってよく、調剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法によって調製することができる。
【0165】
本発明における経口投与のための製剤は、各々が所定量の活性薬剤を含有する別個の単位、例えばカプセル剤、ゲルール(gellule)、点滴剤、カシェ剤、丸剤又は錠剤として;散剤又は顆粒剤として;水性液体又は非水性液体中の活性薬剤の液剤、乳剤又は懸濁剤として;又は水中油液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして;又はボーラス剤等として提示することができる。好ましくは、これらの組成物は、用量当たり活性成分1mgから250mg、より好ましくは10~100mg、及びより好ましくは1~100mgを含有する。
【0166】
経口投与(例えば、錠剤及びカプセル剤)のための組成物について、「許容される担体」という用語には、ビヒクル、例えば一般的賦形剤、例えば結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース及びデンプン;充填剤及び担体、例えばコーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸;並びに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム及び他のステアリン酸金属塩、グリセロールステアレートステアリン酸、シリコーン流体、タルクワックス、油及びコロイド状シリカが含まれる。香味剤、例えばペパーミント、ウインターグリーンの油、及びサクランボ香味料等も使用することができる。着色剤を添加することで、剤形を容易に同定可能にすることが望ましいことがある。錠剤は、当技術分野においてよく知られている方法によってコーティングすることもできる。
【0167】
錠剤は、場合により1種以上の副成分とともに、圧縮又は成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性剤又は分散剤と混合された散剤又は顆粒剤等のさらさらした形態の活性薬剤を、適当な機械において圧縮することによって調製することができる。湿製錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を、適当な機械において成形することによって作製することができる。錠剤は、場合によりコーティング又は切り目をつけることができ、該活性薬剤の緩徐又は制御放出を提供するために配合することができる。
【0168】
経口投与に適当な他の製剤としては、香味付け基剤、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント中に該活性薬剤を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア等の不活性塩基中に該活性薬剤を含む芳香錠;並びに適当な液体担体中に該活性薬剤を含む口腔洗浄薬が挙げられる。
【0169】
他の投与形態は、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、皮内、腹腔内、眼球内、局所的、眼球周囲又は筋肉内に注射することができるとともに滅菌溶液又は滅菌可能溶液から調製される液剤又は乳剤を含む。
【0170】
本発明の医薬組成物は、坐剤、ペッサリー剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、噴霧剤、液剤又は粉剤(dusting powder)の形態であってもよい。
【0171】
経皮投与の代替手段は、皮膚パッチ剤の使用による。例えば、該活性成分は、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性エマルジョンからなるクリーム剤に組み込むことができる。該活性成分は、必要とされ得るような安定剤及び保存剤と一緒に、白色ワックス又は白色軟パラフィン基剤からなる軟膏剤に、1質量%から10質量%の間の濃度で組み込むこともできる。
【0172】
投与量
当業者ならば、過度の実験を行わずに、対象に投与するための即時組成物の1種の適切な用量を容易に決定することができる。典型的に、医師が、個々の患者に最も適当である実際の投与量を決定し、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用期間、年齢、体重、全般的な健康、性別、食餌療法、投与の方法及び時間、排出速度、薬物組合せ、特別な状態の重症度、並びに治療を受ける個体を含めて、様々な因子に依存する。本明細書において開示されている投与量は、平均的症例の例証である。より高い又はより低い投与量範囲がメリットのある個々の例が当然あり得、こうしたものは本発明の範囲内である。
【0173】
本発明によると、一般式(I)の化合物の有効量は、特別な状態又は疾患を標的にするために投与することができる。当然、この投与量は、該化合物の投与型に従って変更される。例えば、急性治療のための「有効量」を達成するため、一般式(I)の化合物の非経口投与が好ましい。水若しくは生理食塩水中5%のデキストロースにおける該化合物又は適当な賦形剤を用いる同様の製剤の静脈内注入が最も有効であるが、筋肉内ボーラス注射も有用である。典型的に、非経口用量は、有効濃度で血漿中の薬物の濃度を維持する方式で、約0.01mg/kgから約100mg/kg;好ましくは0.1mg/kgから20mg/kgの間である。該化合物は、約0.4から約400mg/kg/日の総1日用量を達成するレベルで1日1回から4回投与することができる。治療的に有効な発明化合物の正確な量、及びこうした化合物が最もよく投与される経路は、治療効果を有するのに必要とされる濃度と薬剤の血中レベルを比較することによって、当業者によって容易に決定される。
【0174】
本発明の化合物は、薬物の濃度が本明細書において開示されている治療的適応症の1つ以上を達成するのに充分であるような方式で、患者に経口的に投与することもできる。典型的に、該化合物を含有する医薬組成物は、患者の状態と一致する方式で、約0.1mg/kgから約50mg/kgとの間の経口用量で投与される。好ましくは、経口用量は約0.1mg/kgから約20mg/kgである。
【0175】
本発明の化合物が本発明に従って投与される場合、許容できない毒物学的効果は予想されない。良好な生物学的利用能を有し得る本発明の化合物は、所与の薬理効果を有するのに必要とされる化合物の濃度を決定するため、いくつかの生物学的アッセイの1つにおいて試験することができる。
【0176】
組合せ
特に好ましい実施形態において、本発明の1種以上の化合物は、1種以上の他の活性薬剤、例えば、市場で入手可能な現存の薬物との組合せにおいて投与される。こうした場合において、本発明の化合物は、1種以上の他の活性薬剤と連続して、同時に又は順次に投与することができる。
【0177】
薬物は一般に、組合せにおいて使用される場合、より有効である。特に、主要な毒性の重複、作用機序及び耐性機序を回避するために、組合せ治療が望ましい。更に、大部分の薬物は、こうした用量間の最小時間間隔を用いてそれらの最大耐量で投与するのも望ましい。組み合わせる薬物の主要な利点は、それが生化学的相互作用を介して相加的又は可能な相乗効果を促進すること、及び抵抗性の出現を減少させることもできるということである。
【0178】
有益な組合せは、特別な障害の処置において貴重であることが知られている又は疑われている薬剤を用いて試験化合物の阻害活性を研究することによって示唆され得る。この手順は、薬剤の投与の順序、即ち送達の前、同時又は後かを決定するために使用することもできる。こうした日程計画は、本明細書において同定される全ての活性薬剤の特色であり得る。
【0179】
好ましい実施形態によると、本発明は、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩、並びにタンパク質BiPの発現及び/又は活性を増加させる化合物、並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物に関する(WO2013/124484を参照されたい)。好ましくは、タンパク質BiPの発現及び/又は活性を増加させる化合物は、バルプロ酸又はその誘導体、トリコスタチンA、リチウム、l-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-2-チオシアネート-エタノン、及びエキセンディン-4からなる群から選択される。好ましい実施形態によると、タンパク質BiPは、バルプロ酸又はその誘導体、例えば2-エン-バルプロ酸である。
【0180】
好ましい実施形態によると、本発明は、PPP1R15A経路と関連するとともにタンパク質ミスフォールディングストレス、特にミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害を処置するための、式(I)のPPP1R15A阻害剤又は薬学的に許容されるその塩、並びにタンパク質BiPの発現及び/又は活性を増加させる化合物、並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。好ましくは、疾患は、タウオパチー、シヌクレイノパチー、ポリグルタミン病及びポリアラニン病、白質ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病、セイピノパチー、嚢胞性線維症、多発性硬化症、リソソーム蓄積障害、アミロイドーシス疾患、網膜疾患、炎症、代謝障害、心臓血管障害、骨粗鬆症、神経系外傷、虚血の群において選択される。
【0181】
アッセイ
本発明のさらなる態様は、PPP1R15A-PP1を阻害することができるさらなる候補化合物を同定するためのアッセイにおける、上に記載されている通りの化合物の使用に関する。
【0182】
好ましくは、アッセイは、競合的結合アッセイである。より好ましくは、競合的結合アッセイは、本発明の化合物をPPP1R15A-PP1及び候補化合物と接触させること、並びに本発明による化合物及びPPP1R15A-PP1との間の相互作用における任意の変化を検出することを含む。
【0183】
好ましくは、候補化合物は、本発明の化合物の従来のSAR修飾によって発生される。本明細書で使用される場合、「従来のSAR修飾」という用語は、化学的誘導体化を経て所与の化合物を変動するための、当技術分野において知られている標準的方法を指す。
【0184】
したがって、一態様において、同定された化合物は、他の化合物の開発のためのモデル(例えば、テンプレート)として作用することができる。こうした試験において用いられる化合物は、溶液中で遊離するか、固体支持体に取り付けるか、細胞表面上に置くか、又は細胞内部に位置させることができる。試験されている化合物と薬剤との間の活性消滅又は結合性複合体の形成が測定され得る。
【0185】
本発明のアッセイは、多数の薬剤が試験されるスクリーニングであってよい。一態様において、本発明のアッセイ方法は、ハイスループットスクリーニングである。
【0186】
本発明は、化合物を特異的に結合させることができる中和性抗体が化合物に結合するために試験化合物と競合する競合薬物スクリーニングアッセイの使用も企図する。
【0187】
スクリーニングのための別の技法は、物質に対する適当な結合親和性を有する薬剤のハイスループットスクリーニング(HTS)を提供し、WO 84/03564において詳細に記載されている方法に基づく。
【0188】
本発明のアッセイ方法は、試験化合物の小規模及び大規模なスクリーニングの両方に、並びに定量的アッセイにおいて適当であると予想される。
【0189】
好ましくは、該競合的結合アッセイは、PPP1R15A-PP1の公知基質の存在下で、本発明の化合物をPPP1R15A-PP1と接触させる工程と、前記PPP1R15A-PP1と前記公知基質との間の相互作用における任意の変化を検出する工程とを含む。
【0190】
本発明のさらなる態様は、PPP1R15A-PP1へのリガンドの結合を検出する方法であって、前記方法が、
(i)公知基質の存在下で、リガンドをPPP1R15A-PP1と接触させる工程と、
(ii) PPP1R15A-PP1と前記公知基質との間の相互作用における任意の変化を検出する工程と
を含み、前記リガンドが本発明の化合物である、方法を提供する。
【0191】
本発明の一態様は、
(a)上文において記載されているアッセイ方法を実施する工程と、
(b)リガンド結合ドメインに結合することができる1つ以上のリガンドを同定する工程と、
(c)分量の前記1つ以上のリガンドを用意する工程と
を含む方法に関する。
【0192】
本発明の別の態様は、
(a)上文において記載されているアッセイ方法を実施する工程と、
(b)リガンド結合ドメインに結合することができる1つ以上のリガンドを同定する工程と、
(c)前記1つ以上のリガンドを含む医薬組成物を調製する工程と
を含む方法を提供する。
【0193】
本発明の別の態様は、
(a)上文において記載されているアッセイ方法を実施する工程と、
(b)リガンド結合ドメインに結合することができる1つ以上のリガンドを同定する工程と、
(c)リガンド結合ドメインに結合することができる前記1つ以上のリガンドを修飾する工程と、
(d)上文において記載されているアッセイ方法を実施する工程と、
(e)場合により、前記1つ以上のリガンドを含む医薬組成物を調製する工程と
を含む方法を提供する。
【0194】
本発明は、上文において記載されている方法によって同定されたリガンドにも関する。
【0195】
本発明のなお別の態様は、上文において記載されている方法によって同定されたリガンドを含む医薬組成物に関する。
【0196】
本発明の別の態様は、上記で定義されている通りのミスフォールドタンパク質の蓄積と関連する障害の処置における使用のための医薬組成物の調製における、上文において記載されている方法によって同定されたリガンドの使用に関する。
【0197】
上記方法は、PPP1R15A-PP1の阻害剤として有用なリガンドについてスクリーニングするために使用することができる。
【0198】
一般式(I)の化合物は、実験室ツールとして及び治療剤としての両方で有用である。実験室において、本発明のある特定の化合物は、一般的に「標的検証」と称される方法である、知られている標的又は新たに発見された標的が疾患状態の確立又は進行中の重大な又は少なくとも著しい生化学的機能に寄与するかどうかを確立することおいて有用である。
【0199】
本発明を、更に、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0200】
1-材料&方法
化合物3は、Chembridge ref:5173161から購入した
化合物4は、Chemdiv ref:0589-0012から購入した
化合物5は、Chemdiv ref:1683-6502から購入した
1.1-本発明による化合物の調製
反応物及び市販の化合物は、Acros Organics、Sigma-Aldrich社から購入した。本発明による化合物は、以下の一般手順に従って調製することができる。
【0201】
【化9】
【0202】
エタノール(300ml)中のベンズアルデヒド(1当量)の溶液に、アミノグアニジン塩酸塩(1当量)及び酢酸ナトリウム(1当量)を25℃で順次添加した。結果として得られた反応混合物を80℃で次の約6時間の間加熱した。ジクロロメタン/メタノール(8/2)を移動相として使用するTLC上で、反応完了をモニタリングした。反応の完了後、反応混合物を25℃に冷却させておき、NaHCO3 (700ml)の飽和溶液に投入した。結果として得られた沈殿物を真空下で濾別し、水(100ml)で洗浄した。結果として得られた固体材料をジエチルエーテル(2×25ml)ですりつぶし、真空下で乾燥させることで、所望の置換アミノグアニジン誘導体を提供した。
【0203】
以下の化合物を一般的手順Aに従って調製した。
【0204】
化合物1: 2-(2-クロロベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミド
一般的手順Aに従って2-クロロベンズアルデヒド(10g)から調製することで、11.1gの所望の化合物が得られた(収率: 79.6%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 5.66 (s, 2H); 6.05 (s broad, 2H); 7.27 (m, 2H); 7.40 (m, 1H); 8.14 (dd, 1H); 8.27 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 197.2 [M+H]+.
【0205】
化合物2: 2-(2-クロロベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミドアセテート
メタノール(450ml)中の2-クロロベンズアルデヒド(30.0g)及び重炭酸アミノグアニジン(29.0g)の懸濁液に、酢酸(30ml)を25℃で添加した。反応混合物を70℃で30分間撹拌した。ジクロロメタン/メタノール(8/2)を移動相として使用するTLC上で、反応完了をモニタリングした。反応の完了後、反応混合物を25℃に冷却させておき、真空下で濃縮した。残渣をメタノール(250ml)中に懸濁させ、不溶性材料を濾過によって除去した。結果として得られた濾液を真空下で濃縮し、上述されているプロセス(メタノール中に懸濁+濾過)を更に3回反復した。次いで、固体材料をジエチルエーテル(3×100ml)ですりつぶし、真空下で乾燥させることで、46.0gの2-(2-クロロベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミドアセテート塩を提供した(収率: 84.2%)LC-MS: m/z=197.2 (M+H)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 1.81 (s, 3H), 7.12 (m, 4H); 7.34 (m, 2H); 7.46 (m, 1H); 8.22 (m, 1H); 8.36 (s, 1H); LC-MS: m/z= 197.2 [M+H]+.
【0206】
化合物6: 2-[(3-クロロピリジン-4-イル)メチリデン]ヒドラジンカルボキシイミドアミド
一般的手順Aに従って2-クロロベンズアルデヒド(0.5g)から調製することで、0.16gの所望の化合物が得られた(収率: 23%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 6.00 (s broad, 2H); 6.32 (s broad, 2H); 8.10 (d, 1H); 8.14 (s, 1H); 8.35 (dd, 1H); 8.52 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 198.0 [M+H]+.
【0207】
化合物7: 2-[(3-クロロピリジン-4-イル)メチリデン]ヒドラジンカルボキシイミドアミド酢酸塩
メタノール(28ml)中の3-クロロイソニコチンアルデヒド(2.0g)及び重炭酸アミノグアニジン(2.12g)の懸濁液に、酢酸(2ml)を25℃で添加した。反応混合物を70℃で約2時間の間撹拌した。ジクロロメタン/メタノール(8/2)を移動相として使用するTLC上で、反応完了をモニタリングした。反応の完了後、粗製混合物を25℃に冷却させておき、真空下で濃縮した。固体材料をメタノール:ジエチルエーテル(9:1) (4×50ml)ですりつぶし、2.0gの2-[(3-クロロピリジン-4-イル)メチリデン]ヒドラジンカルボキシイミドアミドアセテート塩に真空下で乾燥させた(収率: 55.1%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 6.01 (brs, 2H); 6.48 (m, 4H); 8.12 (d, 1H); 8.16 (s, 1H); 8.38 (dd, 1H); 8.54 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 198.1 [M+H]+.
【0208】
化合物8: 2-(2-クロロ-6-フルオロベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミド酢酸塩
メタノール(22ml)中の2-クロロ-6-フルオロベンズアルデヒド(1.5g)及び重炭酸アミノグアニジン(1.29g)の懸濁液に、酢酸(1.5ml)を25℃で添加した。反応混合物を70℃で約1時間の間撹拌した。ジクロロメタン/メタノール(8/2)を移動相として使用するTLC上で、反応完了をモニタリングした。反応の完了後、混合物を25℃に冷却させておき、真空下で濃縮した。結果として得られた固体材料をメタノール:ジエチルエーテル(9:1) (3×50ml)ですりつぶし、真空下で乾燥させることで、2.2gの2-(2-クロロ-6-フルオロベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミドアセテート塩が得られた(収率: 84.8%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 1.89 (s, 3H), 6.13 (s broad, 4H); 7.24 (m, 1H); 7.33 (m, 2H) 8.17 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 215.1 [M+H]+.
【0209】
化合物9: 2-(2-クロロ-4-メチルベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミド
一般的手順Aに従って2-クロロ-4-メチルベンズアルデヒド(0.2g)から調製することで、255mgの所望の化合物が得られた(収率: 93.8%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 2.29 (s, 3H); 5.60 (s broad, 2H); 6.00 (s broad, 2H); 7.10 (d, 2H); 7.27 (s, 1H); 8.02 (d, 1H); 8.24 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 210.9 [M+H]+.
【0210】
化合物10: 2-(2-クロロ-5-メチルベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミド
一般的手順Aに従って2-クロロ-5-メチルベンズアルデヒド(0.2g)から調製することで、156mgの所望の化合物が得られた(収率: 57.4%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 2.30 (s, 3H); 5.64 (s broad, 2H); 6.06 (s broad, 2H); 7.07 (d, 2H); 7.27 (d, 1H); 7.97 (s, 1H); 8.24 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 210.9 [M+H]+.
【0211】
化合物11: 2-(2-クロロ-3-メチルベンジリデン)ヒドラジンカルボキシイミドアミド
一般的手順Aに従って2-クロロ-3-メチルベンズアルデヒド(0.2g)から調製することで、226mgの所望の化合物が得られた(収率: 83.1%)。1H-NMR (DMSO-d6): δ (ppm) 2.17 (s, 3H); 5.64 (s broad, 2H); 6.03 (s broad, 2H); 7.18 (t, 2H); 7.24 (d, 1H); 7.99 (s, 1H); 8.37 (s, 1H); MS (ESI+): m/z = 210.9 [M+H]+.
【0212】
本発明によって選択される化合物を、下記のTable 1 (表4)に示す。
【0213】
【表3A】
【表3B】
【0214】
下記の実験の一部において、これらの化合物の塩が使用され得る。
【0215】
1.2-哺乳動物細胞培養、コンストラクト及びトランスフェクション
10%のウシ胎児血清(FBS) (Biowest社)を含有する、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、ペニシリン及びストレプトマイシン(Lonza社)が補充されているイーグル最小必須培地(EMEM)中で、HeLa細胞を培養した。ペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン(Lonza社)及び10%のウシ胎児血清(FBS) (Biowest社)が補充されているダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、293T細胞を培養した。
【0216】
ペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、50μMのβ-メルカプトエタノール及び15%の胎児ウシ血清(FBS) (Biowest社)が補充されているDMEM中で、Min6細胞を培養した。
【0217】
ペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Lonza社)、50μMのβ-ME及び10%のウシ胎児血清(FBS) (Biowest社)が補充されているRPMI中で、INS1細胞を培養した。
【0218】
各細胞株を37℃で5%のCO2雰囲気中にて維持した。
【0219】
PLP1、DM20及びインスリンに関するヒトオープンリーディングフレーム(ORF)配列をLife Technologies (Invitrogen社)から得た(それぞれIOH41689、IOH5252及びIOH7334)。発現プラスミドpDEST26 (Invitrogen社)へのコンストラクト・クローニングを、Gateway(登録商標) LR Clonase (商標) II Enzyme Mix (Invitrogen社)によって実施した。QuikChange Lightning Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene社)を使用して、ORF突然変異を実施した(PLP1及びDM20 ORFにはT181P突然変異、インスリンORFにはAkita (C96Y))。
【0220】
Amaxa (商標) 4D-Nucleofector (商標) System (Lonza社)を使用するヌクレオフェクションによって、又はリポフェクタミン(Life technologies社)を使用するトランスフェクションによって、哺乳動物細胞への遺伝子発現を実施した。
【0221】
1.3-ERストレスからの細胞保護
このアッセイは、Tsaytlerら (Science 2011)に記載されている。
【0222】
37℃で5%のCO2雰囲気中にて、10%のウシ胎児血清(FBS)を含有する、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、ペニシリン及びストレプトマイシンが補充されているイーグル最小必須培地(EMEM)中で、HeLa細胞を培養した。96ウェルプレートにおいて17,000細胞/mLの密度で処置の前日に、細胞を平板培養した。ホスファターゼ阻害剤(0.5~10μM)と一緒に5μg/mLのツニカマイシン(Sigma-Aldrich社)の添加によって、ERストレスを導出した。培地を6時間後に新鮮な培地と変え、ホスファターゼ阻害剤(0.5~10μM)の添加によって細胞保護を維持した。ツニカマイシン処理の48時間又は72時間後に供給元の推奨に従ってCell Counting Kit-8 (Sigma社)を使用して、ホルマザンへのWST-8の低減を測定することによって、細胞生存率を判定した。
【0223】
ERストレスからの細胞保護は、ERストレス後に対照化合物グアナベンズ(Tsaytlerら、Science 2011)と比較した細胞保護的効力効果の点から測定する:
- 「-」細胞保護効果なし、
- 「+」グアナベンズと比較して、より低い細胞保護効果、
- 「++」グアナベンズと比較して、同様の細胞保護効果。
【0224】
Table 1 (表4)は、ツニカマイシンの6時間曝露によって誘発されたストレス後の、グアナベンズと比較した、本発明の異なる化合物の細胞保護効果の結果を要約している。
【0225】
1.4-非ストレス細胞における翻訳速度の判定
各実験の24時間前に6ウェルプレートにおいて、HeLa細胞(100,000細胞/mL)を平板培養し、2.5時間、5時間及び9時間の間、未処理で又は化合物(50μM)で処理して放置した。化合物添加の30分前にメチオニンフリーのDMEM培地(Invitrogen社)によって、培養培地を置き換えた。各時点の1時間前に、50μMのClick-iT(登録商標) AHA (L-アジドホモアラニン) (Invitrogen社)を培養培地に添加することで、新たに合成されたタンパク質を標識した。各時点の最後に、細胞を氷冷PBSで洗浄し、Trypsine解離(Lonza社)によって収集し、次いで、1%のSDS (Sigma社)及びプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Sigma社)を含有する50mMのトリス-HCl緩衝剤中に溶解した。Click-iT(登録商標)タンパク質反応緩衝液キット(Invitrogen社)を使用して、タンパク質試料をアルキンビオチン(Invitrogen社)にカップリングした。試料を70℃で10分間変性し、ECL4~20%のプレキャストゲル(GE Healthcare社)上で分解し、ニトロセルロース膜(GE Healthcare社)に移した。新たに合成されたタンパク質に組み込まれたClick-iT(登録商標) AHAにカップリングしたアルキンビオチンを、ストレプトアビジン-HRP (Gentex社)を使用して検出した。顕色をECL Prime (GE Healthcare社)のインキュベーションによって実施し、Fusion Solo 3S (Vilber Lourmat社)を使用する化学発光法によって読み取った。
【0226】
1.5-ストレス細胞における翻訳速度の判定
ツニカマイシン(5μg/ml)を化合物と一緒に添加したことを除いて、非ストレス細胞における翻訳を測定することに関する処理を実施した。
【0227】
1.6-アドレナリン作動性α2A受容体についての機能性GPCRアッセイ(CellKey検出方法)
ヒトアルファ2A受容体を内因的に発現するCHO細胞上で、化合物のアゴニスト活性を評価し、CellKey検出方法を使用してインピーダンス変調に対するそれらの効果を測定することによって決定した。
【0228】
0.1%のBSAとともにHBSS緩衝剤(Invitrogen社)+20mMのHEPES (Invitrogen社)中において6×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート上に、細胞を播種し、実験の開始前に60分間28℃で平衡化させておく。プレートをシステム上に置き、28℃の温度で測定を行った。以下の集積化流体システムを使用して全ての96ウェルに、溶液を同時に添加した: HBSS (基底対照)、100nmで基準アゴニスト(刺激対照)、基準アゴニスト(EC50決定)又は試験化合物。リガンド添加後10分間、インピーダンス測定をモニタリングする。標準的基準アゴニストはエピネフリンであり、エピネフリンを各実験においていくつかの濃度で試験して濃度反応曲線を作成し、その濃度反応曲線からそのEC50値を算出する。
【0229】
Hill等式曲線フィッティングを使用して平均反復値を用いて作成した濃度反応曲線の非線形回帰分析を使用するHillソフトウェアで、試験化合物からの用量反応データを分析した。結果はTable 1 (表4)に示されており、EC50が33.3μM超の化合物は、著しいアルファ-2アドレナリン作動活性を有していないと考えられる。
【0230】
1.7-インビトロ多発性硬化症疾患モデル:ニューロンと共培養されたインターフェロン-ガンマ損傷ラットオリゴデンドロサイト
ニューロンと共培養されたオリゴデンドロサイトの培養
Yangら (2005 J Neurosci Methods;149(1) 50~6頁)によって以前に記載されているものに変更を加えた方法の通りにニューロン/OPCを培養した。簡潔には、17日齢ラット胎仔(Wistar、Janvier labs社)から得られた全脳(小脳を用いない)を除去した。20分間37℃でトリプシン-EDTA (Pan Biotech社)溶液を用いて0.05%のトリプシン及び0.02%のEDTAの最終濃度で、完全脳を処理した。DNAse IグレードII (最終濃度0.5mg/ml; Pan Biotech社、バッチ: h140508)及び10%のウシ胎児血清(FCS; Invitrogen社、バッチ: 41Q7218K)を含有する、4.5g/リットルのグルコース(Pan Biotech社)を用いるダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の添加によって、解離を停止させた。10mlピペットの先を介する3回の強制的通過によって、細胞を力学的に解離させた。細胞を次いで515gにて10分間4℃で遠心分離させた。上清を捨て、B27サプリメントの2%溶液(Invitrogen社、バッチ: 1660670)、2mmol/リットルのL-グルタミン(Pan Biotech社)、2%のPS溶液、1%のFCS及び10ng/mlの血小板誘導成長因子(PDGF-AA、バッチ: H131205)を有するNeurobasal培地(Invitrogen社、バッチ: 1636133)からなる定義した培養培地中で、ペレットを再懸濁した。PLL (BD corning社、バッチ: 6614022)及びラミニン(Sigma社、バッチ: 083M4034V)で予備コーティングされた96ウェルプレート中に1ウェル当たり20000個の細胞の密度で、細胞を播種した。プレートを、37℃で加湿インキュベーターにて、空気(95%)-CO2 (5%)の雰囲気中で維持した。培地の半分を2日毎に新鮮な培地と変えた。18日目に、試験化合物をインターフェロン-ガンマ(70U/ml、48H、R&Dシステム、バッチ: AAL2214081)適用の1時間前に予備インキュベートした。
【0231】
試験化合物及びインターフェロン-ガンマ曝露
培養の18日目に、試験化合物(4つの濃度)を培養培地中に溶解し、次いで、インターフェロン-ガンマ(70U/ml、48H)適用前に1時間の間ニューロンと共培養されたオリゴデンドロサイトで予備インキュベートした。試験化合物インキュベーションの1時間後、インターフェロン-ガンマを70U/ml濃度で48時間の間、また試験化合物の存在下にて添加した。次いで、エタノールの冷たい溶液(95%、Sigma社、バッチ: SZBD3080V)及び酢酸(5%、Sigma社、バッチ: SZBD1760V)によって5分間-20℃で、細胞を固定した。0.1%のサポニン(Sigma社、バッチ: BCBJ8417V)を用いる透過処理後、細胞を2時間の間、マウス(Sigma社、バッチ: SLBF5997V)において生成された単クローン性抗O4抗体を用いて、1/1000の希釈度で、1%のFCS、0.1%のサポニンを含有するPBS (PAN社、バッチ: 8410813)中にて、2時間の間室温でインキュベートした。この抗体は、Alexa Fluor 488ヤギ抗マウスIgG (Invitrogen社、バッチ: 1664729)を用いて、1/400の希釈度にて、1%のFCS、0.1%のサポニンを含有するPBS中で、1時間の間室温で検出される。
【0232】
O4細胞の合計数の分析
各条件について、ImageXpress (Molecular Device社)を使用して20xの倍率で、1ウェル当たり30枚の写真を撮った。全ての画像を同じ条件で撮った。Customモジュールエディタ(Molecular Device社)を使用することによって自動的に、O4細胞の合計数の分析を実施した。インターフェロン-ガンマ損傷を表すために、データを対照条件の百分率で表した(中毒処理なし、インターフェロン-ガンマなし=100%)。全ての値を平均+/-SEM (s.e.平均)として表した(1条件につきn=6ウェル)。
【0233】
1.8-インビトロパーキンソン病モデル:ロテノン損傷一次中脳ラットニューロン
中脳ドーパミン作動性ニューロンの培養
ラットドーパミン作動性ニューロンを、Schinelliら、(1988 J. Neurochem 50 1900~07頁)及びVisanjiら、(2008 FASEB J. 22(7) 2488~97頁)によって記載されている通りに培養した。簡潔には、15日齢ラット胎仔(Janvier Labs社、France)から得られた中脳を顕微鏡下で解剖した。胎仔中脳を除去し、2%のペニシリン-ストレプトマイシン(PS、Pan Biotech社、バッチ: 1451013)及び1%のウシ血清アルブミン(BSA、Pan Biotech社、バッチ: h140603)を含有するLeibovitz (L15、Pan Biotech社、バッチ: 9310614)の氷冷培地に入れた。ドーパミン作動性ニューロンに富む脳を発達させる領域である中脳屈の腹側部分を細胞調製のために使用した。
【0234】
中脳をトリプシン処理によって20分間37℃で解離した(トリプシン0.05% EDTA 0.02%、Pan Biotech社、バッチ: 5890314)。DNAase IグレードII (0.1mg/ml、Pan Biotech社、バッチ: H140508)及び10%の胎児の仔ウシ血清(FCS、Gibco社、バッチ: 41Q7218K)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Pan Biotech社、バッチ: 1300714)の添加によって、反応を停止させた。細胞を次いで、10mlピペットを介する3回の通過によって力学的に解離した。細胞を次いで、180×gにて10分間+4℃で、L15培地中のBSA (3.5%)の層上にて遠心分離させた。上清を捨て、B27 (2%、Invitrogen社、バッチ: 1660670)、L-グルタミン(2mM、Pan Biotech社、バッチ: 8150713)及び2%のPS溶液並びに10ng/mlの脳誘導神経栄養因子(BDNF、Pan Biotech社、バッチ: H140108)及び1ng/mlのグリア誘導神経栄養因子(GDNF、Pan Biotech社、バッチ: H130917)が補充されているNeurobasal (Invitrogen社、バッチ: 1636133)からなる定義した培養培地中に細胞ペレットを再懸濁した。トリパンブルー排除試験を使用するNeubauerサイトメーターにおいて、生細胞をカウントした。細胞を40000細胞/ウェルの密度で、ポリ-L-リシン(Corning Biocoat社、バッチ: 6614022)で予備コーティングされた96ウェル-プレート中に播種し、加湿インキュベーターにおいて37℃で5%のCO2/95%の空気雰囲気中にて維持した。培地の半分を2日毎に新鮮な培地と変えた。
【0235】
培養の6日目に、培地を除去し、ロテノン(Sigma社、バッチ: 021M2227V)の有無において、対照培地中で希釈した10nmで、新鮮な培地を添加し、1条件当たり3ウェルを判定した。試験化合物を培養培地中に溶解し、次いで、ロテノン適用前に1時間の間中脳ニューロンを用いて予備インキュベートした。
【0236】
中毒処理の24時間後に、PBS (Pan Biotech社、バッチ: 4831114)中4%のパラホルムアルデヒド(Sigma社、バッチSLBF7274V)の溶液によって、pH=7.3、20分間室温で、細胞を固定した。細胞をPBS中で再び2回洗浄し、次いで透過処理し、0.1%のサポニン(Sigma社、バッチ: BCBJ8417V)及び1%のFCSを含有するPBSの溶液を用いて15分間室温で、非特定部位を遮断した。次いで、マウス(TH、Sigma社、バッチ: 101M4796)において生成された単クローン性抗-チロシンヒドロキシラーゼ抗体を用いて、1/10000の希釈度で、1%のFCS、0.1%のサポニンを含有するPBSにおいて、2時間の間室温で、細胞をインキュベートした。Alexa Fluor 488ヤギ抗マウスIgG (Molecular Probes社、バッチ: 1531668)を用いて、1%のFCS、0.1%のサポニンを含有するPBSにおいて1/800の希釈度にて、1時間の間室温で、この抗体を検出した。
【0237】
TH陽性ニューロンの合計数の分析
免疫標識された培養物をImageXpress (Molecular device社USA)で自動的に検査した。各条件について、3ウェルから1ウェル当たり20の自動的に選択された領域(ウェルの総表面の約80%に相当する)を分析した。Customモジュールエディタ(Molecular device社、USA)を使用して、THニューロンの合計数を自動的に分析した。ロテノン損傷を表すために、データを対照条件の百分率(中毒処理なし、ロテノンなし=100%)で表した。全ての値を1培養の平均+/-SEM (s.e.平均)として表した(1培養につき1条件当たりn=3ウェル)。
【0238】
1.9-インビトロアルツハイマー病モデル:アミロイドベータ1-42損傷一次皮質ラットニューロン。
ラット皮質ニューロンの培養
ラット皮質ニューロンを、Singerら、(1999 J. Neuroscience 19 2455~63頁)及びCallizotら、(2013 J.Neurosci. Res. 91 706~16頁)によって記載されている通りに培養した。
【0239】
妊娠の15日の妊娠雌性(Wistar; Janvier Labs社)を頸椎脱臼によって死亡させた。胎仔を回収し、2%のペニシリン(10,000U/ml)及びストレプトマイシン(10mg/ml)溶液(PS; Pan Biotech社、バッチ: 1451013)及び1%のウシ血清アルブミン(BSA; Pan Biotech社、バッチ: h140603)を有する氷冷L15Leibovitz培地(Pan Biotech社、バッチ: 9310614)に直ちに入れた。トリプシン-EDTA (Pan Biotech社、バッチ: 5890314)溶液を用いて0.05%のトリプシン及び0.02%のEDTAの最終濃度で、皮質を20分間37℃で処理した。DNAse IグレードII (最終濃度0.5mg/ml; Pan Biotech社、バッチ: h140508)及び10%のウシ胎児血清(FCS; Invitrogen社、バッチ: 41Q7218K)を含有する、4.5g/リットルのグルコース(Pan Biotech社、バッチ: 1300714)を用いるダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の添加によって、解離を停止させた。10mlピペットの先端を介する3回の強制的通過によって、細胞を力学的に解離させた。細胞を次いで515gにて10分間4℃で遠心分離させた。上清を捨て、B27サプリメントの2%溶液(Invitrogen社、バッチ: 1660670)、2mmol/リットルのL-グルタミン(Pan Biotech社、バッチ: 8150713)、2%のPS溶液、及び10ng/mlの脳誘導神経栄養因子(BDNF; Pan Biotech社、バッチ: H140108)を有するNeurobasal培地(Invitrogen社、バッチ: 1636133)からなる定義した培養培地中に、ペレットを再懸濁した。トリパンブルー排除試験を使用するNeubauerサイトメーターにおいて、生細胞をカウントした。ポリ-L-リシン(Corning Biocoat社、バッチ: 6614022)で予備コーティングされた96ウェルプレートにおいて、1ウェル当たり30,000の密度で、細胞を播種し、37℃で空気(95%)-CO2 (5%)インキュベーターにおいて培養した。培地を2日毎に変えた。培養の11日後にAベータ溶液(下記を参照されたい)で、皮質ニューロンを中毒化させた。
【0240】
試験化合物及びアミロイドベータ1-42曝露
Callizotら、2013によって記載されている手順に従って、アミロイドベータ1-42調製を行った。簡潔には、血清を欠いている上に記述されている定義した培養培地中に40μmol/リットルの初濃度で、アミロイドベータ1-42ペプチド(Bachem社、バッチ: 1014012)を溶解させた。この溶液を3日間37℃で暗所にて攪拌し、使用濃度に培養培地中で適切に希釈された後に直ちに使用した。
【0241】
試験化合物を培養培地中で溶解し、次いで、アミロイドベータ1-42適用前に1時間の間一次皮質ニューロンで予備インキュベートした。アミロイドベータ1-42調製物を、薬物の存在下にて対照培地中で希釈された20μM (WBによって測定された毒性オリゴマー約2μMを含める)の最終濃度まで添加した。中毒処理の24時間後に、エタノール(95%、Sigma社、バッチ: SZBD3080V)及び酢酸(5%、Sigma社、バッチ: SZBD1760V)の冷たい溶液によって5分間-20℃で、細胞を固定した。0.1%のサポニン(Sigma社、バッチ: BCBJ8417V)を用いる透過処理後、マウス単クローン抗体抗微小管関連タンパク質2 (MAP-2; Sigma社、バッチ: 063M4802)を用いて、1/400の希釈度で、1%の胎児仔ウシ血清(Invitrogen社、バッチ: 41Q7218K)及び0.1%のサポニンを含有するPBS (Pan biotech社、バッチ: 4831114)において、細胞を2時間の間インキュベートした。Alexa Fluor 488ヤギ抗マウスIgG (Molecular probe社、バッチ: 1572559)を用いて、1/400の希釈度で、1%の胎児仔ウシ血清及び0.1%のサポニンを含有するPBSにおいて、1時間の間室温で、この抗体を検出した。
【0242】
ニューロンの合計数の分析
免疫標識した培養物をImageXpress (Molecular device社USA)にて×20倍率で自動的に検査した。各条件について、3ウェルから、1ウェル当たり30の自動的に選択された領域(ウェルの総表面の約80%に相当する)を分析した。カスタムモジュールエディタ(Molecular device社、USA)を使用して、ニューロンの合計数を自動的に分析した。Aベータ1-42損傷を表すために、データを対照条件(中毒処理なし、アミロイドベータ1-42なし=100%)の百分率で表した。全ての値を平均+/-SEM (s.e.平均)として表した(1培養につき1条件当たりn=3ウェル)。
【0243】
1.10-筋萎縮性側索硬化症(ALS)のインビボマウスモデル: SOD1-G93Aトランスジェニックマウス
突然変異ヒトSOD1-G93Aを発現するトランスジェニック(TG)マウス(ヘテロ接合性TgN-SOD1-G93A-1Gur; Gurneyら(1994) Science 264、1772~1775)及び5匹の野生型同腹仔を実験のために使用した。JAX Laboratories社 USAから得られたヘミ接合性TG雄性(系統002726M; B6SJL TG SOD1 x G93A 1GUR/J、JAX社)をWT雌性(系統10012、JAX社)と交配させることによって、G93A SOD1マウスをCharles River社 Germanyによって育種した。動物を以下の通りにグループ化した(雌性及び雄性を処置群に同等に分配し、即ち、各処置群が等しい数の雄性及び雌性を有するようにした):
トランスジェニックG93A SOD1マウス
○ 生後60日で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介してビヒクルQD (即ち1日1回)で処置された12匹のトランスジェニックG93A SOD1マウス。
○ 生後60日で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介して化合物2 (1.5mg/kg) BID (即ち1日2回)で処置された12匹のトランスジェニックG93A SOD1マウス。
○ 生後60日で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介して化合物2 (3mg/kg) QDで処置された12匹のトランスジェニックG93A SOD1マウス。
○ 生後60日で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介して、リルゾール(20mg/kg)との組合せにおける化合物2 (3mg/kg) QDで処置された12匹のトランスジェニックG93A SOD1マウス。
○ 生後60日で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介して化合物2 (10mg/kg) QDで処置された12匹のトランスジェニックG93A SOD1マウス。
【0244】
行動試験
投薬を開始する前(ベースライン、60日目)、並びに75日目、90日目、105日目、及び120日目あたりで、ロータロッド試験を実施した。2~4日以内に産まれたマウスが、ロータロッド試験のためにプールされる。1日セッションには、ロータロッド器具(AccuScan Instruments社、Columbus、USA)上にて4rpmで5分の訓練試行が含まれる。30分後に、動物は、360秒かけて0rpmから40rpmに変化する速度で6分及び少なくとも30分の試行間間隔の3つの連続した加速試行について試験される。ロッドから落下する潜時が記録される。360秒を超えてロッド上に残っているマウスを除き、それらの時間を360秒としてスコア化した。
【0245】
1.11-シャルコー・マリー・トゥース1A疾患のインビボモデル: PMP-22過剰発現トランスジェニックラット
CMT1Aトランスジェニックラットを、雄性PMP-22ラット(Laboratory of Pr Nave、Max-Planck Institut fur experimentelle Medizin、Gottingen、Germany)及び雌性スプラーグドーリーラット(Elevage Janvier社、France)の交配から得た。動物をKey-Obs (Orleans、France)で収容及び維持した。動物手順を2010年9月22日のEU Directive (2010/63/UE)に厳密に順守して行った。
【0246】
動物を以下の通りにグループ化した(雄性動物だけを実験に含めた):
○ 生後5週で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介してビヒクルQDで処置された8匹のトランスジェニックラット。
○ 生後5週で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介して化合物2 (1mg/kg) QDで処置された8匹のトランスジェニックラット。
○ 生後5週で開始してエンドポイントまで続く経口胃管栄養法を介して化合物2 (3mg/kg) QDで処置された8匹のトランスジェニックラット。
【0247】
行動試験
処置及び転帰の測定のためにランダム及びブラインドの方式で、動物を試験した。挙動実験及びバーの読み取りを実施し、処置について盲検された検査者によってKey-Obs施設で検証した。バー試験は、処置の3週及び5週後にCMT1Aラットで実施した。バー試験は、4つ足の筋肉強度及び固定ロッド上での平衡性能を評価した。木製ロッド(直径: 2.5cm;長さ: 50cm)の中央にラットの4つの足を載せた。各試行におけるバー上で費やした時間(落下潜時)及び落下の数を記録した。5つの連続的試行を実施した(最大60秒)。
【0248】
1.12-白質ジストロフィー(PMD)のインビトロモデル:ヒト細胞株における突然変異PLP1及びDM20の過剰発現
トランスフェクションの1日前に、293T細胞を300,000細胞/mLで平板培養した。PLP1及びDM20突然変異体コンストラクトを用いて、リポフェクタミン2000を使用して、製造者の手順に従って、293T細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を分子で処理するか、又は未処理で放置した。対照として、細胞をタンパク質の天然形態でトランスフェクトした。48時間後に、細胞ライセートを収集した。タンパク質蓄積をウエスタンブロットによって判定した。
【0249】
1.13-2型糖尿病のインビトロモデル:Min6及びINS1細胞株
ERストレスからの細胞保護
96ウェルプレートにおいて、Min6細胞株については0.5.106細胞/mL、INS1細胞株については0,4.106細胞/mLの密度で処置の前日に、細胞を平板培養した。
【0250】
ホスファターゼ阻害剤と一緒に2.5μg/mLのツニカマイシン(Sigma Aldrich社)の添加によって、ERストレスを導出した。
【0251】
培地を6時間後に新鮮な培地と変え、細胞保護をホスファターゼ阻害剤の添加によって維持した。
【0252】
ツニカマイシン処理の72時間後に供給元の推奨に従ってCell Counting Kit-8 (Sigma社)を使用してホルマザンへのWST-8の低減を測定することによって、細胞生存率を判定した。
【0253】
ミスフォールディングの傾向があるインスリンAkitaの蓄積に対する保護
Min6細胞をインスリンAkita突然変異体コンストラクトでヌクレオフェクトし、96ウェル-プレートにおいて、300,000細胞/mLで播種し、及び24時間後に、細胞を分子で処理するか、又は未処理で放置した。対照として、細胞を非関連プラスミドでヌクレオフェクトした。6日後に、選択的薬剤を添加した(G418)。
【0254】
処置の9日後に供給元の推奨に従ってCell Counting Kit-8 (Sigma社)を使用してホルマザンへのWST-8の低減を測定することによって、細胞生存率を判定した。
【0255】
1.14-インビトロ炎症/感染疾患モデル:ポリI:C誘発マウス胚性線維芽細胞
実験プロトコール
マウス胚性線維芽細胞(MEF)をポリI:Cでリポフェクトし、本発明の化合物(25μM)の2つの濃度で6時間の間処理した。培養の6時間後、eIF2alpha-リン酸化(eIF2a-P)及びPPP1R15A (GADD34)発現をウエスタンブロッティングによってモニタリングし、一方で、I型インターフェロン(IFN)ベータ産生を培養上清中でELISAによって定量化した。対照(nt)及びポリI:C/DMSOは、それぞれ陰性及び陽性対照である。
【0256】
ポリI:C (ポリイノシン酸:ポリシチジル酸又はポリイノシン酸-ポリシチジル酸ナトリウム塩)は、ウイルス感染を刺激するために使用される免疫賦活薬である。二本鎖RNAと構造的に同様であるポリI:Cは、B細胞及び樹状細胞の細胞内区画において発現されるToll様受容体3と相互作用することが知られている。
【0257】
グアナベンズ(25μM)を基準阻害性化合物として使用した。
【0258】
細胞培養
MEFを、DMEM、10%のFCS (HyClone、Perbio社)、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミン、1×のMEM非必須アミノ酸及び50μMの2-メルカプトエタノール中で培養した。リポフェクタミン2000 (Invitrogen社)との組合せにおける10μg/mlのポリI:C (InvivoGen社)を用いて表示時間の間、MEFを処理した。
【0259】
免疫ブロッティング
Complete Mini Protease Inhibitor Cocktail Tablets (Roche社)が補充されている、1%のTriton X-100、50mMのHepes、10mMのNaCl、2.5mMのMgCl2、2mMのEDTA、10%のグリセロール中に、細胞を溶解した。BCA Protein Assay (Pierce社)を使用して、タンパク質定量化を実施した。25~50μgのTriton X-100-可溶性材料を、2%~12%勾配又は8%のSDS-PAGE上に免疫ブロッティング及び化学発光検出(SuperSignal West Pico Chemi-luminescent Substrate、Pierce社)前に負荷した。GADD34 (C-19)を認識するウサギポリクローナル抗体はSanta Cruz Biotechnology社から、抗-eIF2alpha[pS52]はInvitrogen社からであった。
【0260】
Elisa
Mouse Interferon Beta ELISAキット(PBL Interferon Source社)を使用して製造者指示に従って、培養上清中のIFN-ベータ定量化を実施した。
【0261】
1.15-インビボ網膜繊毛関連疾患/網膜色素変性症の症状: BBS12ノックアウトマウス
ノックアウトマウスの世代及び管理
Bbs12-/-/JマウスをC57BL/6遺伝的背景で保持した(Mockelら、2012 J. Biol. Chem. 287 37483~494頁)。マウスを湿度及び温度が制御された部屋において12時間の明/暗サイクルにて、通常の固形飼料及び水へのアクセスが自由な状態で保持及び飼育した。KAPAマウス遺伝子型同定キット(カタログ番号KK7302、Kapa Biosystems社、Woburn、Massachusetts、USA)を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して遺伝子型を同定することによって、Bbs12-/-全ノックアウトマウスを同定した。
【0262】
硝子体内注射のための試薬
硝子体内注射のために使用される溶液を滅菌条件下で調製した。次いで、1.25mMの化合物2及び100mMのバルプロ酸(VPA)の原液をPBS、pH6中に希釈することで、化合物2 (2.5μM)+VPA (0.2mM)及び化合物2 (2.5μM)溶液を得た。バルプロ酸を調達した(カタログ番号4543、Sigma-Aldrich社)。
【0263】
硝子体内注射
Bbs12-/-マウス網膜表現型及び機序が公表された(Mockelら、2012)。生後14~16日目に、マウスに硝子体内に注射した。作業を手術用顕微鏡下で実施した。マウスにイソフルランで麻酔した。マウスの瞳孔を0.3%のアトロピン点眼薬 (Alcon社) で拡張した。反復ディスペンサー(Hamilton Bonaduz AG社、Bonaduz、Switzerland)に接続された33規格針を縁から硝子体腔に挿入した。顕微鏡を介して、針の位置をモニタリングした。1μlの処置溶液をマウスの左眼に注射し、1μlのPBS、pH6を対照として右眼に投与した。硝子体出血又は網膜傷害を有するマウスを分析から除いた。
【0264】
網膜電図
HMsERGシステム(Ocuscience(登録商標)、Kansas City、Missouri、USA)を使用して硝子体内注射の2週後に、網膜電図(ERG)を実施した。マウスに終夜暗適応させ、次いで、ドミトール(7.6μg/g体重)及びケタミン(760μg/g体重)の腹腔内注射によって麻酔した。瞳孔を上に記載されている通りに拡張した。実験を薄暗い赤色光(カタログ番号R125IRR、Philips社、Suresnes、France)において実施した。ERG標準的手順を製造者のプロトコール(Ocuscience(登録商標)、Kansas City、Missouri、USA)に従って使用した。簡潔には、プロトコールは、0.1cd.s/m2から25cd.s/m2を範囲とする強度でフォトニック刺激後に、暗適応ERG (暗順応ERG)を記録することに存する。ERG結果をERG Viewシステム4.3 (Xenotec社、Ocuscience(登録商標)、Kansas City、Missouri、USA)によってデジタル的に増幅及び捕捉した。暗順応応答のa波及びb波を次いで測定した。
【0265】
透過型電子顕微鏡法
試料をカコジル酸緩衝液(0.1M、pH7.4)中2.5%のグルタルアルデヒド及び2.5%のパラホルムアルデヒドにおける浸漬によって固定し、0.1Mのカコジル酸緩衝液中1%の四酸化オスミウムにおいて1時間の間4℃で後固定し、段階的アルコール(50%、70%、90%、100%)及び酸化プロピレンを介して各々30分間脱水した。試料をEpon(商標)812 (Sigma-Aldrich社、Saint-Louis、Missouri、USA)中に包埋した。半薄片をウルトラミクロトーム(Leica Ultracut UCT、Leica Biosystems社、Wetzlar、Germany)を用いて2μmに切断し、トルイジンブルーで染色し、光学顕微鏡法によって組織学的に分析した。極薄片を70nmに切断し、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛でコントラストをつけ、Morgagni 268D電子顕微鏡を用いて70kvで検査した。画像をMega View IIIカメラ(Soft Imaging System社)によってデジタル的に捕捉した。
【0266】
1.16-培養された新生仔ラット心筋細胞における低酸素症誘発アポトーシス
細胞培養
新生仔ラット心筋細胞の初代培養物を1日齢Sprague Dawleyラット(Janvier社、France)の心室から得た。ラットを安楽死させ、それらの心臓を切除した。心臓を小片(1~2mm3)に切断し、Neonatal Heart Dissociation Kitラット及びgentleMACS(商標) Dissociator (MiltenyiBiotec社、Germany)を使用して酵素的に消化した。解離後、ホモジネートを濾過することで(70μm)、単細胞懸濁液を得た。単離細胞を遠心分離によって回収し、10%のウマ血清(HS)、5%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に再懸濁した。培養物に予備プレーティングによって90分間筋細胞を富化(enrich)することで、非筋細胞の集団を枯渇させた。非付着細胞を6ウェル又は96ウェルプレート上に適切な細胞密度で平板培養した。細胞を37℃で95%の空気/5%のCO2中にて24時間の間培養した。次いで、正常又は低酸素性(N2/CO2、95%/5%; 0.3%のO2)培養チャンバーにおいてインキュベーションの30分前に1%のFBS及び異なる濃度の試験化合物を含有する新鮮なDMEMと、培養培地を交換した。
【0267】
試験化合物を用いる処理
精製された新生仔ラット心筋細胞を、96ウェルプレートにおいて106細胞/2mLでフローサイトメトリー実験のために播種した。
【0268】
24時間後に、異なる濃度の試験化合物を用いて0.1%のDMSOを有する培養培地中で、心筋細胞を処理した。陽性対照細胞を培養培地(0.1%のDMSO)で処理した。処理を開始した30分後、細胞を低酸素培養チャンバー(N2/CO2、95%/5%;最終測定O2: 0.3%)において36時間の間インキュベートした。
【0269】
正常酸素条件において37℃で培養培地(1%のFBS、0.1%のDMSO)を用いて同じ時間期間の間、陰性対照細胞を放置した。
【0270】
アポトーシス細胞測定
処置期間の最後に、フローサイトメトリーを実施することで、アポトーシス細胞の量を測定した。Miltenyi社からのAnnexin Vフルオレセインイソチオシアネート(FITC)アポトーシス検出キットを使用した。細胞をPBSで2回洗浄し、結合緩衝剤中に再懸濁した。FITC-アネキシンV及びヨウ化プロピジウムを製造者のプロトコールに従って添加した。混合物を15分間暗所にて室温でインキュベートし、細胞蛍光を次いでFACS走査フローサイトメトリーによって測定した。
【0271】
2-結果
2.1-細胞保護&化合物選択性
本発明の選択化合物を用いて実行された異なるアッセイの結果が、Table 1 (表4)において下記に示されている。
【0272】
例として、図1は、ツニカマイシンの曝露によって誘発されたストレス後の化合物1の細胞保護効果を表す。
【0273】
【表4】
【0274】
2.2-多発性硬化症
図2は、本発明の化合物1による、インターフェロン-ガンマ損傷ラットオリゴデンドロサイトの用量依存性保護を示している。
【0275】
これらのデータは、本発明の化合物が多発性硬化症の有望な有効処置であることを示している。
【0276】
2.3-パーキンソン病(PD)
図3は、本発明の化合物2による、ロテノン損傷一次中脳ラットニューロンの用量依存性保護を示している。
【0277】
これらのデータは、本発明の化合物が、シヌクレオパチー及びより具体的にはパーキンソン病の有望な有効処置であることを示している。
【0278】
2.4-アルツハイマー病(AD)&アミロイドーシス
図4は、本発明の化合物2による、アミロイドベータ1-42損傷一次皮質ラットニューロンの用量依存性保護を示している。
【0279】
これらのデータは、本発明の化合物が、アミロイドーシス及びより具体的にはアルツハイマー病の有望な有効処置であることを示している。
【0280】
2.5-筋萎縮性側索硬化症(ALS)
図5は、本発明の化合物2を用いる、トランスジェニックSOD1 G93Aマウスの90日目でのロータロッド試験の結果を表す。
【0281】
これらのデータは、本発明の化合物、具体的には化合物1及び2が、トランスジェニックマウスの運動欠陥を救出し、ALSの有望な有効処置であることを示している。
【0282】
2.6-シャルコー・マリー・トゥース1A (CMT-1A)
図6は、本発明の化合物2で処置された、PMP22を過剰発現させるトランスジェニックラットの3週及び5週でのバー試験の結果を表す。
【0283】
これらのデータは、本発明の化合物、具体的には化合物1及び2が、PMP22を過剰発現させるトランスジェニックラットの運動欠陥を救出し、CMT、より具体的にはCMT1A及びCMT1Bのような脱髄障害の有望な有効処置であることを示している。
【0284】
2.7-白質ジストロフィー:ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMD)、
PLP1及びDM20タンパク質中のT181P及びL223P突然変異は、ペリツェウス・メルツバッヘル病の重度表現型を引き起こすと記載されている(Strautnieksら 1992、Am. J. Hum. Genet. 51 (4): 871~878; Gow及びLazzarini、1996 Nat Genet. 13(4):422~8)。
【0285】
本発明の化合物1(5マイクロM)は、ヒト293T細胞において発現されるT181P突然変異DM20タンパク質の蓄積を予防することができる(図7)。
【0286】
これらのデータは、本発明の化合物、具体的には化合物1及び2が、白質ジストロフィー、より具体的にはPMDのような脱髄障害の有望な有効処置であることを示している。
【0287】
2.8-2型糖尿病
図8は、本発明の化合物6を用いるMin6細胞におけるプレプロインスリン担持Akita突然変異の過剰発現の結果を表す。
【0288】
異なる濃度での化合物1及び化合物6は、ツニカマイシンへの6時間曝露によって誘発されたミスフォールドタンパク質の蓄積と関連するMin6インスリノーマ細胞死を予防する(図9)。
【0289】
異なる濃度での化合物1及び化合物6は、ツニカマイシンへの6時間曝露によって誘発されたミスフォールドタンパク質の蓄積と関連するINS1インスリノーマ細胞死を予防する(図10)。
【0290】
これらのデータは、本発明の化合物が、前糖尿病及び糖尿病、好ましくは2型前糖尿病及び2型糖尿病の有望な有効処置であることを示している。
【0291】
2.9-網膜繊毛関連疾患/バルデ・ビードル症候群
化合物2は、アポトーシスに対して光受容体を保護すること、光検出を保存すること(図11)、及びBBS12-/-マウスにおいて小胞体におけるタンパク質負荷を減少させること(図12)ができる。これらの結果は、Bbs12-/-マウスにおいて、化合物2及びバルプロ酸(VPA)組合せ又は単独で化合物2を用いて処置された場合の、ERG応答の増加を示している(図11)。図12は、表示されている投与処置又は遺伝子型への応答における、BBS12-/-マウスの光受容体のERの代表的な透過型電子顕微鏡法写真を示している。PBSだけが注射される場合に拡張が観察され(左)、一方、VPA (バルプロ酸) (0.2mM)との組合せにおける化合物2 (2.5マイクロM)は、1つの単回硝子体内注射後にこの拡張を減少させることができる。
【0292】
これらのデータは、本発明の化合物が、バルプロ酸等、BIPタンパク質の発現及び/又は活性を増加させる化合物との組み合わせにおいて、バルデ・ビードル症候群及び網膜色素変性症等の網膜繊毛関連疾患の有望な有効処置であることを示している。
【0293】
試験されていないが、我々は、この処置が、フォトニックストレスのような他の形態の細胞ストレスを低減する際にも役立ち得ると仮定を立てた。
【0294】
2.10-感染関連又は非感染性の炎症状態
ポリI:Cに対するMEFの正常な応答は、PPP1R15A発現、PKR活性化によって媒介されるeIF2alpha-Pの増加(時間の可変、及びPPP1R15A発現のレベルに関連する)、及びI型IFN産生(500pg/mlから700pg/mlの範囲)を特徴とする。ノックアウトPPP1R15A-/-MEFは、ポリI:Cに応答してこのサイトカインを産生することができない。
【0295】
eIF2alphaリン酸化の増加、一般のタンパク質合成阻害及びI型IFN産生をもたらすそれ自体の薬理学的阻害によるPPP1R15A発現の減少を測定することによって、PPP1R15Aを阻害するための本発明の化合物の効力を評価した。
【0296】
本発明の評価化合物は、eIF2alphaリン酸化を増加させるのに、PPP1R15A発現の減少に、及びI型IFN産生を予防するのに、25μMで効果的であることが見出された。例として、図13は、ポリI:Cでリポフェクトされたマウス胚性線維芽細胞によるI型IFN産生を予防するための、化合物1、6及び8(25マイクロMで)の能力を示している。
【0297】
これらのデータは、本発明の化合物が、感染関連又は非感染性の炎症状態の有望な有効処置であることを示している。
【0298】
2.11-心虚血
本発明の化合物2は、培養された新生仔ラット心筋細胞を低酸素症誘発アポトーシスから保護する(図14)。これらのデータは、本発明の化合物が、虚血、具体的には心虚血の有望な有効処置であることを示している。
【0299】
本発明の様々な変更及び変動は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明は特定の好ましい実施形態と関連付けて記載されてきたが、特許請求されている本発明は、こうした特定の実施形態に不当に限定されるべきでないと理解されるべきである。実際に、関連分野における当業者に明らかである、記載された、本発明を実施するための方法の様々な変形形態は、本発明によって網羅されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14