IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビュージックス コーポレーションの特許一覧

特許6994940光結合を用いたヘッドマウント型画像装置
<>
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図1
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図2A
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図2B
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図2C
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図3A
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図3B
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図3C
  • 特許-光結合を用いたヘッドマウント型画像装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】光結合を用いたヘッドマウント型画像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017534590
(86)(22)【出願日】2016-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-01-25
(86)【国際出願番号】 US2016012379
(87)【国際公開番号】W WO2016112130
(87)【国際公開日】2016-07-14
【審査請求日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/100,346
(32)【優先日】2015-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, ロバート, ジェイ.
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-021078(JP,A)
【文献】特開2012-198392(JP,A)
【文献】特表2014-506340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0277803(US,A1)
【文献】特開2014-142386(JP,A)
【文献】特開2011-059444(JP,A)
【文献】特開2002-162598(JP,A)
【文献】特開2004-029544(JP,A)
【文献】特開平02-297516(JP,A)
【文献】特開2000-131614(JP,A)
【文献】特開2009-133998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像装置を収納するフレームを有するヘッドマウント型画像装置であって、上記画像装置が装着者の目にバーチャル画像を形成するために稼働可能であり、上記画像装置が、
上記フレームのテンプル部材の少なくとも一部と平行な第1軸線に沿う中央投射光ビーム、を含む角度的に関連したコリメートされたビームの集合を放射するために稼働可能であり、上記フレームのテンプル部材によって支持されたプロジェクタと、
2つの平面を有する導波路であって、インカップリング回折光学素子で上記中央投射光ビームを含む上記角度的に関連したビームの集合を受け、拡大中央光ビームを形成し、この拡大中央光ビームをアウトカップリング回折光学素子から装着者の対応する目に向けて出力するように構成され、上記導波路の上記アウトカップリング光学素子が上記インカップリング光学素子から離れて配置され、周囲環境の光景が上記2つの平面を通して装着者の目に提供される導波路と、
上記中央投射光ビームを含む上記角度的に関連したビームの集合を、上記第1軸線に沿って受ける光結合器であって、上記第1軸線が、上記インカップリング回折光学素子と上記アウトカップリング回折光学素子の間における上記導波路の装着者側の平面に対して鈍角をなしている光結合器と、
を備え
上記光結合器は、上記中央投射光ビームを含む上記角度的に関連したビームの集合の方向を、第2軸線に沿って変えるように構成され、上記第2軸線は、上記インカップリング回折光学素子と上記アウトカップリング回折光学素子の間における上記導波路の装着者側の平面に対して鋭角をなしており、
上記光結合器はプリズムであり、上記第1軸線に沿って伝播する上記中央投射光ビーム
を全内部反射により反射するように稼働可能な出力面と、上記中央投射光ビームを反射するように稼働可能な少なくとも部分的に反射する面とを含み、
上記少なくとも部分的に反射する面は、上記出力面によって反射された上記中央投射光ビームを第2軸線に沿って反射するように稼働可能であり、上記出力面は、上記第2軸線に沿って伝播する上記中央投射光ビームを通過させるように稼働可能であり、
上記中央投射光ビームを含む上記角度的に関連したビームの集合は、上記アウトカップリング回折光学を介して第3軸線に沿って再方向付けされ、上記第3軸線は、上記インカップリング回折光学素子と上記アウトカップリング回折光学素子の間における上記導波路の装着者側の平面に対して鋭角をなすことを特徴とするヘッドマウント型画像装置。
【請求項2】
上記導波路は上記中央投射光ビームを、上記導波路の装着者側の上記平面を通して受け取り、出力することを特徴とする、請求項1に記載のヘッドマウント型画像装置。
【請求項3】
上記出力面と上記少なくとも部分的に反射する面は、非平行の面であることを特徴とする、請求項に記載のヘッドマウント型画像装置。
【請求項4】
光学的絞りが、上記導波路の入力アパーチャに配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のヘッドマウント型画像装置。
【請求項5】
光学的絞りが、上記光結合器の出口アパーチャを超えて配置されている請求項1に記載のヘッドマウント型画像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、電子ディスプレイに関し、より具体的には、バーチャル像を形成するウエアラブル電子ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の眼鏡またはサングラスに似た形状のニアアイディスプレイを含むヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、軍事、商業、工業、消防、および娯楽分野への適用を含め、様々な用途に向けて開発されている。これら適用の多くにおいて、HMDユーザーの視野にある現実世界の画像に重ね合わせ可能なバーチャル画像を形成することは、非常に価値がある。
【0003】
一般的に、HMD光学装置が見る人に受け入れられるためには、以下を含む数々の基本的要件を満たす必要がある。
(1)十分なアイレリーフ又はアイクリアランス。アイレリーフ範囲は、見る人の快適さとヒトの目それ自体の光学的配置に基づいて定められる。実際には、HMD光学装置の最終光学面と見る人の目との距離は、約20mm以上が好ましい。
(2)適切な瞳孔サイズ。瞳孔サイズ要件は、見る人の顔の構造の差異および見る際の視線方向の変更に基づく。少なくとも直径約10mmの瞳孔サイズが好ましいことが知られている。
(3)視野。広い視野が好ましい。標的設定、対象物認識といった視覚的課題の多くにおいて、視野は約50度近くが望ましいと考えられている。
(4)輝度。見やすさ、および見る人の快適さのために、生成されたバーチャル像は十分な輝度を有する必要がある。
【0004】
上記(1)~(3)はアイボックスに関するものである。アイボックスは、観察者の目が、その中で快適に画像を見ることのできる体積に関連している。アイボックスの寸法は、部分的には画像ソースから画像が見られる場所までの距離と画像ソースの寸法に依存し、部分的には画像ソースの拡散および/または光が画像ソースから発射された後のコリメーションに依存する。アイボックスの望ましい寸法は、そのディスプレイに期待される視覚体験の質に大きく依存する。
【0005】
HMDの設計においては、光学的要件に加えて、実際的ファクターにも対応しなければならない。実際的ファクターとは、様々な顔形状への対応、受け入れられる形状ファクター等であるが、快適な装着感、重量、価格のための小型化と、使いやすさが期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ほとんどの場合、HMDシステムは、結像/中継系をできるだけ小型化することを目指している。しかし、従来の光学系を用いた場合、基本的な限界がある。光学系の出力は、ある程度の寸法のバーチャル像に対応し、ある程度の目の動きを許容できるだけの大きさの瞳孔を有する必要がある。双眼システムの場合、使用者によって瞳孔間隔が異なるという問題もあり、光学系の出力瞳孔(output pupil)がこれを許容する必要がある。
【0007】
ニアアイHMD装置では平面導波路を用いるものが多い。こうした装置では、一連の光回折格子と内部全反射(TIR)を用いて、投射システムの射出瞳を横方向に平行移動して、投射システムが視路(viewing path)の横、例えば見る人の頭部に沿う位置に来るようにしている。光導波路はまた、射出瞳を1または2の次元で拡大し、画像光投射システム(imaged-light projection system)の小型化を図っている。これにより、投射システムの射出瞳は相当小さくなり、一方でアイボックスは拡大され、見る人の視線からシステムを外すことができる。同時に、導波路は透明であってよく、それにより、バーチャル画像を周囲環境に重ね合わせることができる。
【0008】
投射光学系の大部分が横に平行移動して使用者の視界から外れ、また非常に小型であるが、それでもなお、投射構成要素を、より眼鏡に近く、したがって幅広いユーザーにより受け入れられる形状ファクターに合わせて構成することが求められている。プリズムまたは鏡を使って、光路を折り畳む方法が多数提案されてきた。しかし、投射構成要素が導波路からさらに離れる、等の奇妙な配置になり、ヘッドマウント型装置の寸法を増大させる結果になることがしばしばであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の目的は、小型ヘッドマウント型装置および類似の画像装置を用いて画像を提示する技術を向上させることである。本開示の実施例は、眼鏡の一般的形状ファクターに適合し、しかも、快適に見るために十分な輝度および瞳寸法を提供できる投射光学系の利用を許容する光結合を提供する。
【0010】
その他の本発明の態様、目的、特徴、および利点は、以下に述べる好ましい実施形態の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を検討し、図面を参照することで、より明確に理解されるであろう。
【0011】
本開示の一態様によれば、左眼用画像装置と右眼用画像装置を収容するフレームを有するヘッドマウント型画像装置が提供される。各画像装置は、観察者の目にバーチャル像を形成するために、稼働可能である。各画像装置は、プロジェクタと平面導波路(planar waveguide)と光結合器(optical coupler)とを含む。プロジェクタはフレームのテンプル部材に支持され、投射軸線に沿う中央投射光ビームを含む、角度的に関連したビームを放射するために稼働可能である。導波路は2つの平面を有し、入力アパーチャで投射光ビームを受け入れ、拡大光ビームを形成し、その拡大光ビームを出力アパーチャから出力して、観察者の対応する目に向けられるよう、構成されている。平面導波路の出力アパーチャは、入力アパーチャから離れて配置されている。光結合器は、中央投射光ビームを、導波路表面に対して鈍角をなす第1軸線に沿って受け取る。光結合器は、中央投射光ビームの向きを、導波路表面に対して鋭角をなす第2軸線に沿うように変える。
【0012】
その他の本発明の態様、目的、特徴、および利点は、以下に述べる好ましい実施形態の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を検討し、添付の図面を参照することで、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書は、本発明の主題を具体的に示し、明確にクレームする特許請求の範囲で結ばれる。しかし、本発明は、以下の説明と添付の図面により、より良く理解されるであろう。
【0014】
図1】本開示の一実施例に係るHMD光学装置を示す概略平面図である。
【0015】
図2A】平面導波路がどのように作用して、中央光ビームをオフセット位置のプロジェクタから見る人の目に向けて平行移動させるかを概略的に示す平面図である。
図2B】平面導波路がどのように作用して、中央光ビームをオフセット位置のプロジェクタから見る人の目に向けて平行移動させるかを概略的に示す平面図である。
図2C】平面導波路がどのように作用して、中央光ビームをオフセット位置のプロジェクタから見る人の目に向けて平行移動させるかを概略的に示す平面図である。
【0016】
図3A】導波路の入力部の平面図であり、2つの反射面から成る光結合器を示す。
【0017】
図3B】導波路の入力部の平面図であり、プリズムとして形成された光結合器を示す。
【0018】
図3C】導波路の入力アパーチャの拡大平面図であり、プリズム式光結合器の表面からの反射を示す。
【0019】
図4】バーチャル画像を生成するための光学装置の構成要素を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は特に、本発明に係る装置の一部を構成する要素、又はより直接的に協働する要素に関するものである。具体的に示されていない要素、又は記述されていない要素は、当業者に公知の様々な形態を取り得るものと理解されたい。
【0021】
本明細書中において、「第1」、「第2」等の用語は、必ずしも順序、順番、又は優先順位といった関係を示すものではなく、特に記載の無い場合は、単に、ある要素又は要素の集合を別の要素又は要素の集合とより明確に区別するために用いられる。「頂」及び「底」という用語は、必ずしも空間位置を指定するものではなく、平面導波路の対向面を区別する等の、構造に関する相対的情報を提供する。
【0022】
本開示の文脈において、「見る人」、「操作者」、「観察者」、及び「利用者」という用語は等価であると見なされ、HMD装置を装着する人を指す。
【0023】
ここで使われる「稼働可能(励起可能:energizable)」という用語は、電力を受けた時、及びオプションで許可信号を受け取った時に、指示された機能を果たす装置又は構成要素の集合に関する。
【0024】
「作動可能(actuable)」という用語は、通常の意味を有し、刺激への応答、例えば、電気信号への応答として、作動することのできる装置または構成要素に関する。
【0025】
ここで使われる「集合(set)」という用語は非空集合を指し、集合の要素の集まりという概念として初等数学で広く理解されている。「部分集合」という用語は、特に明記されない限り、非空の真部分集合、すなわち、1以上の要素を持つ、より大きな集合の部分集合を指す。集合Sの部分集合が集合Sの全体集合であってもよい。しかし、集合Sの「真部分集合(proper subset)」は、集合Sに完全に含まれ、しかも集合Sの1つ以上の要素を含まない。
【0026】
本開示の文脈において、「斜(oblique)」という用語は、90°の整数倍でない角度を意味する。例えば、2つの線、線形構造、あるいは平面は、約5°以上平行から離れた角度、あるいは約5°以上垂直から離れる角度で、互いに広がったり収束したりする時、互いに「斜」であると見なされる。
【0027】
本開示において、「結合(coupled)」という用語は、2以上の構成要素間の物理的な関連、接続、関係又は連結を指し、1つの構成要素の配置が、それと結合した構成要素の空間的配置に影響を及ぼすような状態を指す。機械的結合については、2つの構成要素が直接的に接触している必要はなく、1以上の中間構成要素を介して連結していてもよい。光結合の構成要素は、光エネルギーが光学装置に入力され、光学装置から出力されることを許容する。「ビーム拡大器(beam expander)」と「瞳拡大器(pupil expander)」という用語は同義であると見なされ、ここでは交換可能に用いられる。
【0028】
光学システムは、実像投射の代わりに、バーチャル画像を表示することができる。実像を結ぶ方法とは対照的に、バーチャル画像がディスプレイ面に結ばれることはない。つまり、ディスプレイ面がバーチャル画像を知覚する位置にあるとしたら、ディスプレイ面に像は結ばれない。拡張現実表示において、バーチャル画像表示には固有の利点が数多くある。例えば、バーチャル画像の見かけの大きさはディスプレイ面の寸法や位置によって制限されない。しかも、バーチャル画像のソースオブジェクト(source object)は小さくてもよい。簡単な例として、拡大鏡はそのオブジェクトのバーチャル画像を提供する。実像を投影するシステムに比べて、ある程度離れたところにあるように見えるバーチャル画像を結ぶことによって、より現実的な視覚体験を提供することができる。また、バーチャル画像を提供すれば、実像投影の場合には必要となるスクリーンを補う必要が無くなる。
【0029】
図1の概略図は、フレーム58を有するヘッドマウントディスプレイ(HMD)10を示す平面図である。このHMDは、ウエアラブルディスプレイの技術分野における当業者が理解するところの、ニアアイディスプレイを提供する。以下の説明においては、光路の構成要素、間隔、及び制約は、図1に示す観察者14の右目について記したものである。左目にも同じ構成要素があり、その配置は異なっているが対応関係にあり、同じ特徴や制約が当てはまる。
【0030】
光学的画像装置12には、見る人、すなわち観察者14の各眼について、平面導波路20が提供されている。この平面導波路20は、互いに対して鈍角の山形の角度φをなして配置されている。観察者14は、透明な平面導波路20を通して、対応する周辺視野(FOV)または視路を有する。視野FOVは実質的に、平面導波路20と斜をなす中心軸線CAを中心に広がっている。軸線CAは、導波路20表面の法線Nと角度θをなしている。導波路20は、観察者14に呈示されるバーチャル画像を結ぶためにHMD10が提供する、最後の光学的要素である。
【0031】
導波路20は、ガラスその他の透明な光学材料で形成され、2つ以上の光回折格子(optical grating)が埋め込まれている。光回折格子は導波路構造内でTIRと協働して、結像ビームの寸法を変更し、結像ビームの方向を変えて、導波路20内へ、導波路20沿いに、及び導波路20外へと向かわせる。画像をコード化する角度的に関連したビームの集合のうち、ここでは、中央の入力ビーム26と中央の出力ビーム28についてのみ考える。図2A、2B、2Cに示すように、導波路20は、入射する入力ビーム26と出射する出力ビーム28に対して、特徴的な挙動をする。入力アパーチャ22を通って方向づけられた画像光は、全内部反射(total internal reflection:TIR)等によって導波路20に沿って伝播し、出力アパーチャ24を通って出射する。埋め込まれた格子の周期構造と方向によって、入力ビームを、導波路表面の平面P(平面Pは図2A図2B図2Cの紙面と垂直)において垂直な両方向に広げることができ、結像光学系の瞳寸法を効果的に拡大させる。図2Aに示すように、入力ビーム26が平面Pの法線N1に沿って向かう時、出力ビーム28は平面Pの法線N2に沿って出射する。入力ビーム26が平面Pに対して斜めの角度をなす時、図2B、及び図2Cに例示するように、出力ビーム28は対応する斜角で出射する。図2Bの構成においては、入力ビーム26の軸線A1は、導波路20表面の、入力アパーチャ22と出力アパーチャ24の間に位置する部分Q1に対して、鈍角α1をなしている。その結果生まれる出力ビーム28は、部分Q1に対して、同じ鈍角α1をなしている。軸線A1は、導波路20の外側の、観察者の視野FOV内にある点16において、出力ビーム28の軸線A2と交差する。
【0032】
図2Cの構成では、入力ビーム26の軸線A1は、導波路20の、入力アパーチャ22と出力アパーチャ24の間に位置する部分Q1に対して、鋭角α2をなしている。その結果生まれる出力ビーム28は、部分Q1に対して、同じ鋭角α2をなしている(鏡面対称)。ここでは、軸線A1は、導波路20の観察者側の、観察者の頭部に位置する点18において、出力ビーム28の軸線A2と交差する。
【0033】
再び図1を参照すると、HMD10の実施例において、観察者14にバーチャル画像を見せるためには、導波路20は、図2Cに示された挙動を示す必要がある。つまり、入力ビーム26は、入力アパーチャ22と出力アパーチャ24の間に位置する導波路20の部分Q1(破線で示された部分)に対して鋭角をなして方向付けられる。その結果生まれる出力ビーム28は、部分Q1に対して同様に鋭角をなし、したがって、導波路20表面からの法線Nに対して斜をなし、出力ビーム28が目に向かうように戻される。入力ビームの軸線は、図2Cについて述べたように、導波路20の観察者側において、出力ビームの軸線と交差する。
【0034】
図1に示すように、プロジェクタ30が、HMD10のフレーム58のテンプル部材32(temple member)と名付けられた部分に沿って、配置されている。プロジェクタ30は、投射軸線A3に沿って、中央投射光ビームを発射するように稼働可能である。軸線A3に沿うプロジェクタ30からの出力光ビームは、部分Q1として示される導波路20表面に対して、鈍角をなす。したがって、導波路20に対する軸線A3の角度方向は、アイボックス内に画像を結ぶべく光を適切に方向付けるために必要な方向とは、反対であり、部分Q1に対して鋭角をなして導波路20に入射するように、方向を変える必要がある。プロジェクタ30は例えば、固体光源と、マイクロミラーアレイ又はテキサス・インスツルメンツ社のデジタルライトプロセッシング(DPL)装置等のビーム変調とを用いた、ピコプロジェクタ(小型プロジェクタ)であってもよい。レンズその他の装置が、画像の空間情報を、角度的に関連したビームの集合の形で角度情報に変換する。ピコプロジェクター等の小型装置をプロジェクタ30として利用できるように、本開示の実施形態においては、プロジェクタの軸線A3からの光の方向を導波路の入力軸線26に方向変換させる光結合器40を用いている。
【0035】
図1に関して、光結合器40の機能が理解できる。軸線26に沿う導波路20への入射光は、導波路20の入力アパーチャ22と出力アパーチャ24の間に位置する部分Q1に対して、鋭角α2でなければならない。しかし、図1に示すように、プロジェクタ30からの軸線A3は、反対方向に傾斜した鈍角をなす。
【0036】
この光の方向を適切に変えるために、光結合器40は様々な形状が可能である。図3Aの平面概略図は、2つの非平行な反射面42a、42bを有する光結合器40を示している。ここに示す実施例においては、これらの表面は平面であるが、ある程度湾曲していても良い。
【0037】
図3Bの平面図は、2つの反射面46a、46bを有するプリズム44として構成された光結合器40を示している。プリズム44は、光路が有効に短縮化され、投射光の拡散が少なくなるため、図3Aの実施例よりも利点がある。
【0038】
図3Cの平面図は、プリズム50として構成された光結合器40を示す。このプリズム50は、コーティングその他の方法で反射性を持つように処理された、1つの反射面52を有している。第1軸線A3に沿って伝播する入射光は、導波路の入力アパーチャ22と出力アパーチャの間に位置する部分Q1に対して、鈍角をなしている。軸線A3は、プリズム50の入射面51に対して、実質的に垂直である。第2軸線A1に沿う出射光は、プリズム50の出力面53に対して実質的に垂直であり、図1図2Cについて上述したように、導波路20の入力アパーチャ22と出力アパーチャの間に位置する部分Q1に対して、鋭角の入力角をなしている。
【0039】
図3Cのプリズム50は、画像担持光ビームを2度反射するように構成されている。すなわち、1度は出力面53からの内部全反射(TIR)を用い、1度は反射面52からのTIRを用いる。図3B図3Cに示されるようなプリズムの実施例については、投射された光ビームの拡散を減らすべく、限られた空間の中で光を屈折させ、光路の距離を短くするために、高い屈折率を有する光学材料が好適である。
【0040】
図3A図3Cの各実施例においては、光結合器40は第1軸線A3に沿って入射光を受け取る。この第1軸線A3は、導波路の入力アパーチャ22と出力アパーチャの間に位置する部分Q1に対して、鈍角をなしている。しかし、光結合器40からの光出力は、軸線A1に沿って方向付けられる。この軸線A1は、導波路20から観察者の目に光を向かわせるのに適切な角度をなしている。
【0041】
図4の斜視図は、観察者の側から見た、左目にバーチャル画像を生じるための光学的装置12を示している。この実施例においては、導波路20には3つの回折格子38a、38b、38cが埋め込まれ、これらの回折格子が、光路の平行移動および瞳の拡大を提供する。

プロジェクタの光学設計
【0042】
現代のプロジェクタは、様々なディスプレイ技術を用いて、かなり小型の形状ファクターと、光導波路の入力アパーチャに匹敵する瞳寸法を有し、十分明るい画像を提供するために必要な輝度を有することができる。しかし、これらのプロジェクタの投射光学系では、レンズ系内に絞り(物理的開口部、又は絞りとして機能するレンズ口径でも良い)が存在することが多い。これは、バーチャル画像の各視野点(field point)の光線束が、最終かつ最外のレンズ面に到達する前に拡散していることを意味する。画像生成器のコーナーから発せられた光線束は、しばしばクリッピングされ(clipped)、ビネッティングされ(vignetted)、投射光学系を出る際も拡散し続ける。導波路から遠ざかれば遠ざかるほど、光線束の拡散は大きくなる。この問題を考慮して、本開示の実施例においては、プロジェクタの光学設計を改良し、HMDにおける画像化にさらなる利点を提供する。
【0043】
本開示の実施例においては、絞りが、投射された画像担持光ビームを発射する最終光学面上、またはその先に配置されている。このように絞りを光学装置に適切に配置する方法は、光学系設計技術分野の当業者には公知である。HMD10の光学装置12においては、この設計上の特徴により、光結合器40に届けられる光のビーム幅が抑制され、結合器40の一層の小型化を可能にする。図4の斜視図を参照すると、従来では投射光学系内に絞り54’が提供されている。本開示の実施例においては、絞り54が投射レンズの前方に配置され、光結合器40が絞り54の位置を、実質的に導波路20の入力アパーチャ22の位置とすることができるようになっている。「実質的に入力アパーチャ22の位置」とは、少なくともプリズム50の出口面53の前方、又は光結合器40の出口アパーチャを越えた先の位置を、意味する。
【0044】
本発明を、現時点で好ましい実施形態に特に言及しながら詳述してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変形および変更が可能であることが理解されよう。したがって、ここに開示された実施例は、あらゆる面において描写的であり、制限的ではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、均等の意味および範囲内に収まるあらゆる変更は、これに含まれる。

導波路の製造
【0045】
様々な工程を用いて、導波路の製造、組立を行うことができる。インカップリング回折光学素子(in-coupling diffractive optics)及びアウトカップリング回折光学素子(out-coupling diffractive optics)120を、回折格子または体積ホログラム等の形態で、入力アパーチャと出力アパーチャにそれぞれ形成することができる。インカップリング回折光学素子とアウトカップリング回折光学素子のうち、少なくとも一方は、表面レリーフ回折格子であってもよい。インカップリング回折光学素子とアウトカップリング回折光学素子との間において導波路沿いに、ビーム拡大のために、もう1つの回折光学素子として又は反射性構造物として、いわゆる回転光学系を形成することができる。画像光ガイドの導波路基材は、透明な光学材料であり、典型的には、インカップリング回折光学素子、回転格子、アウトカップリング回折光学素子間のTIR伝送のために十分な屈折率を有する、ガラス又は光学ポリマー材料である。
【0046】
典型的には、格子ピッチ又は格子周期は、色チャンネルの中心波長の75%~約90%の値である。例えば、ある典型的実施例においては、赤チャンネル(620~670nm)のインカップリング回折光学素子100Rは、周期510nm、深さ205nm、フィル(fill)50/50、傾斜45度である。ガラス基板のブランクを適切に表面処理した後、例えばナノインプリンティング法を用いて、導波路基板Sの外表面に回析構成要素(diffraction components)を形成することができる。
【0047】
本発明を、現時点で好ましい実施形態に特に言及しながら詳述してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変形および変更が可能であることが理解されよう。したがって、ここに開示された実施例は、あらゆる面において描写的であり、制限的ではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、均等の意味および範囲内に収まるあらゆる変更は、特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4