(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】骨上でプレート部材を変形させるためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20220106BHJP
A61B 17/80 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B17/88
A61B17/80
(21)【出願番号】P 2017555364
(86)(22)【出願日】2015-09-10
(86)【国際出願番号】 US2015049514
(87)【国際公開番号】W WO2016171747
(87)【国際公開日】2016-10-27
【審査請求日】2018-09-05
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-10
(32)【優先日】2015-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505026479
【氏名又は名称】アキュームド・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・ピー・フェーダーシュピール
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・シー・エム・バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】デヴァン・エイチ・ジャエッカー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・シー・スタッフォード
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク・エー・マツザキ
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】莊司 英史
【審判官】平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0264100(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0281543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート部材を骨に取り付ける留め具を受容するために複数の開口部
が設けられたプレート部材であって、該プレート部材の対向するエッジ領域により形成された一対のアンダーカットフランジを含む
複数の結合部位を備え、該プレート部材の延在方向に規定された局所的長軸と、前記局所的長軸と平行に設けられた嵌合軸とを有する、プレート部材と、
曲げツールのそれぞれが嵌合部およびシャフトを有する一対の曲げツールであって、該曲げツールの前記嵌合部を前記嵌合軸に沿って移動させて前記嵌合部を前記結合部位のアンダーカットフランジのそれぞれと嵌合させることによって、該曲げツールのそれぞれが、骨に取り付けられた後
の前記プレート部材と動作可能に結合され
、該曲げツールの回転により前記プレート部材にモーメントが加えられる
ように構成された、
一対の曲げツールと、
を含
んでなる、骨上でプレート部材を変形させるためのシステムにおいて、
前記アンダーカットフランジが、平面を画定し、
前記曲げツール
のそれぞれが、前記平面に対して平行に前記曲げツールと前記プレート部材とを互いに嵌合させることによって前記プレート部材と動作可能に結合されるように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記曲げツール
のそれぞれの前記嵌合部は、前記プレート部材に対して長手方向に前記曲げツール
の嵌合部と前記プレート部材とを互いに嵌合させることによって前記プレート部材と動作可能に結合されるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記曲げツール
のそれぞれの前記嵌合部は、一対の通路を形成し、
前記一対のアンダーカットフランジの各フランジの少なくとも一部は、前記曲げツールが前記プレート部材と動作可能に結合されたとき前記通路のうちの1つによって受容される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記一対の通路の各通路は、前記アンダーカットフランジのうちの1つの少なくとも一部を受容するための溝を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記曲げツール
のそれぞれの前記嵌合部および/または前記プレート部材は、前記曲げツールが前記プレート部材と動作可能に結合されたとき
、前記
曲げツールの移動を停止させる停止領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記曲げツール
のそれぞれの前記嵌合部は、骨ねじが前記プレート部材の前記開口部のそれぞれを動作可能に占有している間、前記プレート部材と動作可能に結合されることが可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記一対のアンダーカットフランジは、前記プレート部材に対して長手方向に細長く、かつ互いに対してそれぞれ反対の方向に突き出している、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プレート部材は、複数対のアンダーカットフランジを形成し、
前記複数対のアンダーカットフランジは、前記プレート部材に沿って互いに離間しており、
前記プレート部材は、各対のアンダーカットフランジにおいてより幅広く、隣り合う対のアンダーカットフランジ間においてより狭くなっている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記曲げツールは、
前記プレート部材に対向するモーメントを同時に加えることができる、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる、2015年4月23日出願の米国仮特許出願第62/151,944号に基づいており、米国特許法第119条(e)の下、その利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
導入
ヒトの骨格は、支持、運動、保護、ミネラルの貯蔵、および血液細胞の形成を含むさまざまな重要な機能を果たす、206本の個々の骨で構成されている。これらの骨は、中軸骨格および付属肢骨格という2つの種類に分類することができる。中軸骨格は、身体の重心を構成する80本の骨からなり、付属肢骨格は、身体の付属器官を構成する126本の骨からなる。中軸骨格は、特に、頭蓋骨、脊柱、肋骨、および胸骨を含み、付属肢骨格は、上肢および下肢の長骨、ならびにこれらの長骨を中軸骨格に結合させる鎖骨および他の骨を含む。
【0003】
骨格がその重要な機能を果たす能力を確実に保持するため、また、疼痛および傷を軽減するために、骨折した骨は、迅速かつ適切に修復しなければならない。一般に、骨折した骨は、固定デバイスを用いて治療する。固定デバイスは、骨折した骨を補強し、治癒する間、それらの骨を整列させたまま維持する。骨プレートは、骨ねじなどの留め具によって骨に取り付けられる、植え込み固定デバイスであり、骨プレートは一般的に少なくとも1つの骨折部または骨の他の不連続部にまたがる。
【0004】
骨固定における、特に粉砕骨折(すなわち、骨がいくつかの断片へと砕けるか、ばらばらになるか、または破砕している骨折部)に関する大きな問題は、骨の破片をそれらの骨折前位置に向けて動かすことにより骨折部を整復することである。多くの場合、各破片が位置する場所および破片の向きに対する比較的小さな変化は、骨折した骨の再建全体、ひいては、骨の機能が回復する度合いに、大きな違いをもたらし得る。しかしながら、骨折部が適切に整復されるように外科医が骨片を扱うことは非常に困難となり得る。さらに、外科医は、破片が留め具により骨プレートに固定されている際に骨片の位置がずれる傾向に悩まされることがある。
【0005】
骨折部の整復は、骨プレートを骨に取り付けた後で骨プレートを生体位で曲げ加工することによって、調節および改善され得る。曲げ加工は、曲げモーメントを骨プレートに加えるための把持可能なレバーを形成するように骨プレートに連結された曲げロッドによって可能となり得る。曲げロッドを骨プレートの開口部内に通して、ロッドを骨プレートに直接取り付けることができるか、または、曲げロッドを、骨プレートの開口部から突出するガイドチューブとスライド可能に嵌合させることができる。どちらのアプローチでも、曲げロッドまたはガイドチューブを受容するために採用された骨プレートの開口部は、曲げロッドまたはガイドチューブがこれらの開口部と連動している間は、骨ねじで占有することはできない。
【0006】
曲げ加工用品と連動するために骨プレート開口部に依存することには、さまざまな欠点がある。例えば、このように依存することで、曲げ加工前に骨プレートを骨ねじによって骨に固定し得る場所が制限される。外科医は、一般的に、骨プレートのどの開口部が曲げ加工用品と連動する可能性があるか予測し、それらの開口部を占有されないようにし、かつ曲げ加工処置に利用できるようにしておかなければならない。予測が正確でない場合、外科医が、曲げ加工処置の前に1つまたは複数の骨ねじを取り外してから、処置が完了した後でそれらの骨ねじを再び取り付ける必要が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨プレートが骨に取り付けられたままである間に骨プレートを生体位で曲げるために、より良いアプローチが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、骨上でプレート部材を変形させるための、方法および装置を含む、システムを提供する。いくつかの実施形態では、システムは、プレート部材を含んでよく、プレート部材は、プレート部材を骨に取り付ける留め具を受容するために複数の開口部を画定している。プレート部材は、プレート部材の対向するエッジ領域により形成された一対のアンダーカットフランジを含み得る。システムは、プレート部材が骨に取り付けられた後でプレート部材と動作可能に結合されるように構成された曲げツールを含むこともでき、曲げツールのある領域は、アンダーカットフランジそれぞれの下に位置決めされており、曲げツールの回転により、プレート部材にモーメントが加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の態様による、(仮想輪郭線の)骨折した骨に複数の骨ねじにより固定された骨プレートを含み、かつ骨プレート(および/またはそのプレート部材)と動作可能に結合されるように構成された一対の曲げツールも含む、組み立て前の例示的な生体位曲げ加工システムの分解組立図である。
【
図2】曲げツールによって曲げモーメントを骨プレートに加えることにより骨プレートが変形させられる前の
図1のシステムの組立図である。
【
図3】
図2と同様であるが骨プレートが曲げツールによって変形させられた後の
図1のシステムの別の組立図である。
【
図3A】
図1のシステムの断片的な分解組立図である。
【
図4】
図1と同様であるが他のシステム構成要素がない場合の、骨プレートに対して外側の位置からの
図1の骨プレートの立面図である。
【
図5】
図4の線5-5に概ね沿った
図1の骨プレートの平面図である。
【
図6】
図4の線6-6に概ね沿った
図1の骨プレートの下面図である。
【
図7】
図5の線7-7に概ね沿った
図1の骨プレートの横断面図である。
【
図8】
図5の線8-8に概ね沿った
図1の骨プレートの別の横断面図である。
【
図9】
図5の線9-9に概ね沿った
図1の骨プレートの断片的な長手方向断面図である。
【
図10】
図4中に「10」で示された領域の概ね周辺における、
図1の骨プレートの断片的な立面図である。
【
図11】
図1のシステムのための例示的な一対の曲げツールの側面図である。
【
図12】曲げツールのシャフトがない場合の、
図11の曲げツールの嵌合部分の図である。
【
図18】
図17中に「18」で示された領域のほぼ周辺における、
図1の骨プレートと嵌合した
図12の嵌合部分の断片的な断面図であり、骨プレートは(仮想輪郭線の)骨に取り付けられている。
【
図19】
図11の曲げツールのうちの一方のワーキングモデルの下面図である。
【
図20】
図1の骨プレートのワーキングモデルと嵌合するよう整列されているが、骨プレートのエッジ領域が曲げツールの嵌合部分に形成された通路に受容される前の、
図19の曲げツールの断片的な下面図である。
【
図21】曲げツールを骨プレートと動作可能に結合させるために、曲げツールを一対の矢印で示す方向に動かすことによって曲げツールが骨プレートと嵌合した後の、
図20の曲げツールおよび骨プレートの断片的な下面図である。
【
図22】
図18と同様の、他の例示的な生体位曲げ加工システムの断片的な断面図であり、システムの曲げツールおよび骨プレートは互いに動作可能に結合されており、骨プレートは(仮想輪郭線の)骨に取り付けられている。
【
図23】
図18と同様の、他の例示的な生体位曲げ加工システムの断片的な断面図であり、システムの曲げツールおよび骨プレートは互いに動作可能に結合されており、骨プレートは(仮想輪郭線の)骨に取り付けられている。
【
図24】
図18と同様の、他の例示的な生体位曲げ加工システムの断片的な断面図であり、システムの曲げツールおよび骨プレートは互いに動作可能に結合されており、骨プレートは(仮想輪郭線の)骨に取り付けられている。
【
図25】
図18と同様の、他の例示的な生体位曲げ加工システムの断片的な断面図であり、システムの曲げツールおよび骨プレートは互いに動作可能に結合されており、骨プレートは(仮想輪郭線の)骨に取り付けられている。
【
図26】本開示の曲げ加工システムのための別の例示的な骨プレートの断片的な下面図である。
【
図27】本開示の曲げ加工システムのための他の例示的な骨プレートの上面図である。
【
図28】本開示の曲げ加工システムのための他の例示的な骨プレートの上面図である。
【
図29】本開示の曲げ加工システムのための他の例示的な骨プレートの上面図である。
【
図30】本開示の曲げ加工システムのための別の例示的な骨プレートの上面図であり、骨プレートは、本体および本体と一体的に形成された複数の付属物を有し、これらの付属物はそれぞれ、曲げツールと動作可能に結合するための少なくとも一対のアンダーカットフランジを有する。
【
図31】本開示の曲げ加工システムのためのさらに別の例示的な骨プレートの上面図であり、骨プレートは、本体と、本体とは別に形成され留め具により本体に留められた複数の取り外し可能な付属物アタッチメント(補助プレート部材)との組立体であり、これらのアタッチメントはそれぞれ、曲げツールと動作可能に結合するための少なくとも一対のアンダーカットフランジを有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、骨上でプレート部材を変形させるための、方法および装置を含む、システムを提供する。いくつかの実施形態では、このシステムは、プレート部材を含むことができ、プレート部材は、このプレート部材を骨に取り付ける留め具を受容するために複数の開口部を画定している。プレート部材は、プレート部材の対向するエッジ領域により形成された一対のアンダーカットフランジを含み得る。システムは、プレート部材が骨に取り付けられた後でプレート部材と動作可能に結合されるように構成された曲げツールも含むことができ、曲げツールのある領域は、アンダーカットフランジそれぞれの下に位置決めされており、曲げツールの回転により、プレート部材にモーメントが加えられる。
【0011】
本開示のさらなる態様を、以下の節で説明する:(I)骨プレートのための例示的な曲げ加工システムの概観、(II)骨プレート、(III)曲げツール、(IV)曲げ加工システムによる骨固定方法、および(V)実施例。
【0012】
I.骨プレートのための例示的な曲げ加工システムの概観
本節では、生体位で(骨上で)骨プレート52を変形させるための例示的なシステム50の概観を提供する。
図1~
図3および
図3Aを参照のこと。
【0013】
システム50は、ツール54aおよび54bなど、1つまたは複数の曲げツールを含み得る。ツールは、骨プレート52(および/またはそのプレート部材)が骨ねじなどの1つまたは複数の留め具58によって骨56に取り付けられた後(またはその前)に、骨プレート(および/またはプレート部材)と動作可能に結合され得る(
図1と
図2とを比較のこと)。いったんツールが骨プレート(および/またはそのプレート部材)と組み立てられたら、外科医は、60において矢印によって示されるように曲げツールを操作して、骨プレートおよび/またはプレート部材を変形させる曲げモーメントを骨プレート52に加えることができる(
図2と
図3とを比較のこと)。曲げツール54aおよび54b、ならびに/またはそのプレートとの嵌合部分は、互いに同じものであってよい(または、同じものでなくてもよい)。
【0014】
曲げツールは、任意の適切な変形力を骨プレートに加えることができる。例えば、描かれた実施形態では、ツールは、骨プレートの長軸に直交する横軸の周辺で曲げモーメントを加えている。
【0015】
骨プレートの変形(互換的に曲げ加工とも呼ぶ)により、骨折部の整復を改善することができる。例えば、骨プレートは、骨部分または破片64a、64bの側面に位置する骨の少なくとも1つの不連続部(例えば骨折部62)にまたがることができる。1つまたは複数の留め具58(ねじ山付き留め具など)が、骨プレートを骨部分のそれぞれに取り付けることができる。例えば、描かれた実施形態では、2つの留め具58が、骨プレートから各骨部分64aおよび64bの中に延びている。骨プレートを曲げ加工することにより、骨部分64a、64bを骨56内におけるそれらの骨折前位置に近づけることができる(
図2と
図3とを比較のこと)。
【0016】
曲げツール54a、54bは、ヘッドが骨プレートの上表面より上に突き出している留め具であったとしても、事前に取り付けられた留め具58上で骨プレートと組み立てられ得る(
図1と
図2とを比較のこと)。したがって、外科医は、骨プレートがツール54a、54bと組み立てられる前に、任意の所望の組み合わせの骨プレート開口部に留め具58を自由に取り付けることができる。さらに、曲げツールはそれぞれ、離間した複数の結合部位66のそれぞれで互換的に骨プレートと組み立てられて、骨プレートを任意の隣り合う一対の結合部位66間など、任意の対の結合部位間で、希望どおりに曲げることができる。以下でさらに詳細に説明するように、結合部位66はそれぞれ、骨プレートの開口部を挟む(例えば横断方向で挟む)ことができる。この構成により、開口部(および、もしあれば、特にその開口部内の雌ねじ)は、外科医が占有されないままにしている場合、変形後に2回目の留め具取り付けを行うまで、曲げ加工プロセス中に変形から保護され得る。
【0017】
図1は、ツール54a、54bを骨プレートと結合させるために外科医が利用できる一対のさまざまな組み立て構成を示す矢印で構成された、2つの組み立てルート68、70を示す。
図3Aは、
図1の選択された態様、特に組み立てルート68、の拡大された断片的なバージョンを示しており、ルート68の矢印が、より正確に位置決めされている。各ルート68および70は、ツール54a、54bのための、嵌合前経路または整列経路72と、一対のそれぞれの嵌合経路74a、74bと、を含んでいる。各嵌合前経路72は、骨プレート52により画定される(全体的な)長軸78および/または選択された結合部位66の局所的に近くで骨プレートにより画定される局所的な長軸80に対して横断方向の直交軸76に沿って延びることができる。局所的な長軸は、互換的に、骨プレート(または、そのプレート部材および/もしくはプレート部分)の伸長方向と呼ばれ得る。線形骨プレート52などの、いくつかの実施形態では、骨プレートの全体的な長軸78は、結合部位の近くで画定される各局所的な長軸80と同一の広がりを有し得るが、長手方向に湾曲したプレートなどの非線形プレートでは、局所的な長軸が、互いに同一の広がりを有していない場合がある。
【0018】
嵌合前経路72に沿って各ツールを動かすことで、ツールは、骨プレートの上表面などの、骨プレートの近くに来るか、または骨プレートと接触することができ、また、ツールは、選択された結合部位66から軸方向にオフセットしているが、その後の嵌合のためにその結合部位66と整列した状態で、位置決めされ得る。ツールはその後、経路74aまたは74b上で、長軸78(および/または局所的な長軸80)に平行な方向に動き、後で変形力を骨プレートに加えるためにツールを骨プレートと動作可能に嵌合させることができる。経路74aまたは74bは、結合部位のエッジ領域もしくはフランジに平行、かつ/または骨プレートにより画定される(例えば局所的に画定される)平面に対して平行なものとしても説明され得る。
【0019】
描かれた実施形態では、ツール54aおよび54bは、それぞれの隣り合う部位66と動作可能に結合するため、互いに対して180°回転して、それぞれの経路74a、74b上でそれぞれ反対の方向に動くことができる。各ツールは、結合部位66と嵌合するためにツールが動く方向を示すために、矢印および/または1つまたは複数の英数字(例えば、「引く」などの単語をつづる)などの目に見える印82を有することができる。さらに、各ツールは、その近位端部まで、嵌合する方向に延びるシャフト84を有し得る(
図1を参照のこと)。
【0020】
II.骨プレート
本節では、
図1の骨プレート52のさらなる態様を説明する。
図4~
図10を参照のこと。
【0021】
骨プレート52は、単一のプレート部材であってよいか、または互いに重なっていてよい2つ以上のプレート部材の組立体であってよい。各プレート部材は、1つまたは複数の開口部と、曲げツールと係合するためのエッジ領域と、を有するプレート部分であるか、またはそのようなプレート部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、骨プレート52は、主要固定プレート(一次プレート部材)と、曲げツールと係合するための(ウィングとも呼ばれる)アンダーカットフランジを有する1つまたは複数の別個のオプションの補助プレート部材と、を含み得る。いくつかの実施形態では、骨プレート52は、一次プレート部材と、一次プレート部材と一体的に形成され、かつ曲げツールと係合するためのアンダーカットフランジを有する、1つまたは複数の補助プレート部材と、を含み得る。各プレート部材および/またはプレート部分は、骨接触表面を有してよく、この骨接触表面は、プレート部材の下面/内面により形成され、骨に接触するように構成されている。プレート部材および/またはプレート部分は、その幅および長さの50%未満または25%未満など、その幅および長さより短い厚さを有するプレート外形を有する。
【0022】
図4~
図6は、
図1の骨プレート52の立面図、上面図、および下面図をそれぞれ示している。骨プレートは、長軸78上に配置された長手方向部分86と、長軸78からそれぞれ反対の直交方向に直交して延びる横断方向部分88と、を有する。結合部位66は、骨プレートの長手方向部分および/または横断方向部分に沿って配置され得る。他の実施形態では、骨プレートには、横断方向部分88がなくてもよく、横断方向部分は、長軸78から、ただ1つの直交方向に延びてもよく、かつ/もしくは長軸78に対して斜めに延びてもよく、かつ/または、長手方向部分は、長手方向に湾曲するかもしくは角度のある経路に沿って延びてもよい。
【0023】
骨プレート52は、長手方向部分86に沿って、かつ/または横断方向部分88に沿って、さまざまな(不均一な)幅を有し得る。骨プレートは、結合部位66においてより幅広く、隣り合う各対の結合部位66の中間に配設されたウェブ90(互換的に架橋領域とも呼ばれる)において、より狭くなっていてよい。各ウェブ90は、曲げツール54aまたは54bを骨プレート52の所望の結合部位66と整列させ、その後、骨プレートおよび/またはそのプレート部材の局所的な長軸に平行に曲げツールを骨プレートと嵌合させるための、アクセス部位を提供することができる。
【0024】
骨プレートは、下面93と反対側の上面92を有する。上面は、骨から離れる方を向く上方表面または外表面を形成する。下面は、骨の方を向き、かつ骨に接触する1つまたは複数の下表面領域94または内表面領域を有する、下方表面または内表面を形成する。下表面領域94は、以下で説明するように、ウェブ90により形成された下表面の陥凹領域によって、互いに離されていてよい。説明を単純にするため、骨プレートは、本明細書では、上面および下面それぞれが重力の方向に少なくとも概ね直交し、上および下をそれぞれ向いた状態で、かつ骨プレートが、上を向く少なくとも概ね水平な骨表面に取り付けられるか、または取り付け可能な状態で、説明されている。しかしながら、骨プレートは、重力に対して任意の適切な向きで任意の適切な骨表面に取り付けることができる。
【0025】
骨プレートは、それぞれ上面92から下面93まで骨プレートを通って延びる複数の開口部96を画定し得る。各開口部は、骨プレートを骨に取り付ける留め具を受容することができ、留め具を骨プレートに取り付けるための雌ねじなどの構造を有していても、有していなくてもよい。開口部は、骨プレートの長手方向部分86および/または横断方向部分88に沿って配置され得る。
【0026】
骨プレート52は、本体98と、各結合部位66において本体から突き出す少なくとも一対のアンダーカットフランジ100により形成されたエッジ構造体99と、を有し得る。各フランジは、1つまたは複数の突出部を含み得る(第V節も参照のこと)。フランジは、骨プレートの対向するエッジ領域によって形成され得、それぞれが、フランジの近くで骨プレートによって画定される局所的な長軸に平行に、かつ曲げツールが結合部位と嵌合される際に沿う嵌合軸に平行に、細長くなっていてよい。局所的な長軸は、フランジの中間に配設され得る。フランジは、本体98によって画定される局所的な長軸80(および/または全体的な長軸78)から離れて、結合部位において、かつ結合部位に隣り合って、互いに対してそれぞれ反対の方向に突き出す(そして一対の「ウィング」を形成する)ことができる。フランジは、結合部位によって画定された開口部96を挟むことができる。以下でさらに詳細に説明するように、フランジは、骨プレートの下表面領域94に対して高くされていてよく、そのため、骨プレートが骨に固定された際に骨より高くされ得、かつ骨より上に張り出した突出部を形成し得る。アンダーカット/高くされたフランジ100の存在により、曲げツールのある領域(例えば、ツールフランジまたは隆起部)は、プレートフランジの下面と骨との間で、各プレートフランジの下に受容され、曲げツールは、曲げモーメントを加えるために骨プレートに連結される。
【0027】
骨プレートの大部分は、本体98によって形成され得る。本体は、骨プレートの長さに沿って連続的に延びてよく、各結合部位66の中央支持部分を提供することができ、各ウェブ90を形成することができ、また、各開口部96を画定することができる。フランジ100は、本体98と一体的に形成され得、本体と連続していてよい。他の実施例では、フランジは、骨プレートの本体に取り外し可能に取り付けられた別の付属物によって提供され得る(例えば第V節を参照のこと)。
【0028】
骨プレート52の下面93は、さまざまな表面領域で構成され得る(
図4および
図6を参照のこと)。ウェブ90は、下表面領域94に対して高くされており、陥凹型下方ウェブ表面領域102を形成することができ(
図4を参照のこと)、陥凹型下方ウェブ表面領域102は、骨からわずかに離間していてよい。骨プレートは、結合部位66においてウェブ90より強くなり得る。言い換えれば、ウェブは、点在する結合部位66より狭くかつ/または薄くなることによって、骨プレートが比較的可撓性となり、かつ容易に曲げられる部分を提供することができる。この外形は、骨プレートが曲げられているときに各結合部位66を変形から守るのに役立つ。結合部位の変形は、結合部位内部の開口部96の雌ねじを変形させる場合があるので、一般的に望ましくない。
【0029】
骨プレート52の下面はまた、1つまたは複数の長手方向凹部104および複数の横断方向凹部106を画定することもでき、これらの凹部は、やはり骨からわずかに離間していてよい(
図6および以下を参照のこと)。凹部104および106は、各結合部位66に対して、複数の骨接触下表面領域94(ここでは4つ)を形成し得る。
【0030】
図7は、結合部位66のうちの1つを通る、骨プレート52の横断面図を示している。フランジ100はそれぞれ、骨プレートから直交して突き出して、上面112および下面114を有する張り出し部を形成することができる。フランジは、切断プロセスにより形成されたかどうかにかかわらず、アンダーカットされているものとして説明され得る。曲げツールは、フランジの少なくとも下面114と、またオプションとして上面112と接触するために、各フランジ上に受容され得る。下面114は、特に、水平であるか、傾斜しているか、湾曲しているか、またはこれらの組み合わせであってよい(第V節も参照のこと)。したがって、結合部位における骨プレートの断面は、T字型、蟻継型、横方向溝付きなどであってよい。
【0031】
開口部96は、この開口部において雄ねじ付き留め具を骨プレートに取り付けるために雌ねじ116を有し得る。開口部の上方領域は、留め具のヘッドの少なくとも下方部分を受容するために幅広であってよい。
【0032】
図8は、結合部位66の端部における、骨プレート52の横断面図である。骨プレートの下面により形成された長手方向凹部104は、下表面領域94の中間に配設される。
【0033】
図9および
図10は、骨プレート52の断面図および断片的な図をそれぞれ示している。ウェブ90は、下表面領域94より高くされており、陥凹型表面領域102を形成することができる。
【0034】
骨プレートは、不可逆的に変形され得るので、任意の塑性変形可能材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、骨プレートは、特に、生体適合性金属(ステンレス鋼、チタンもしくはその合金など)または生体適合性プラスチックで形成され得る。
【0035】
曲げ加工システムのための例示的な骨プレートのさらなる態様は、特に、第V節など、本明細書の他の箇所で説明する。
【0036】
III.曲げツール
本節では、
図1のシステム50のための例示的な一対の曲げツール54a、54cのさらなる態様を説明する。
図11~
図18を参照のこと。
【0037】
ツール54aおよび54cはそれぞれ、骨プレート52と連動する嵌合部分120と、嵌合部分の上端部において取り付けられたシャフト84と、を有する。一対のツールの嵌合部分120は、互いに同じものであってよいが、シャフト84は、骨プレートとの動作可能な結合のためにツールのいずれかの端部の使用を容易にするため、ここで図示するように、異なっていてもよい(または異なっていなくてもよい)。
【0038】
各シャフト84は、骨プレートへの接続、その後の変形力の適用、および次の骨プレートからの取り外しの間、ツールの操作を容易にするよう、把持可能であってよい。シャフトは、嵌合部分120まで延びる遠位端部分122と、嵌合部分120によって画定される嵌合軸126に平行に延びる近位端部分124aまたは124cと、を形成するように非線形であってよい。嵌合軸126は、ツールが骨プレートとツールを動作可能に結合させるために骨プレートの結合部位66と嵌合された際に、骨プレートの局所的な長軸に平行に配置され得る。
【0039】
各近位端部分124aまたは124cの近位端部は、(仮想輪郭線で断片的なものとして示す)骨プレート52の開口部96の雌ねじに対して補完的な雄ねじ128を含み得る。したがって、各ツール54a、54cは、所望の骨プレート開口部96がその時に留め具によって占有されていない場合に、その開口部96の近く、または開口部96において、いずれかの端部を骨プレートと動作可能に結合させるというオプションを提供する。近位端部分124a、124cは、両方のツールが互いに干渉せずに骨プレートのそれぞれの開口部96に通されるように、異なる長さのものであってよい。例えば、描かれた実施形態では、短いほうのツール54cのねじ山128を、開口部96に最初に通してよく、次に、長いほうのツール54aのねじ山128を、骨プレートの別の開口部96に通すことができる。近位端部分124aのほうが長いことにより、長いほうのツール54aの遠位端部分122および嵌合部分120がツール54cの対応部分よりも骨プレート52から遠くに位置決めされ、ツール54cから妨害されることなく、ツール54aが自由に回転できるとともに、開口部96に通されることが可能となる。
【0040】
図12は、ツール54aの嵌合部分120のさらなる態様を示す。ツールのシャフト84と一体的、または別々に形成され得る、嵌合部分は、受容領域130を画定することができ、受容領域130は、骨プレート52の結合部位66と連動し、これと少なくとも部分的に補完的である。受容領域130は、それぞれが互いに平行かつ嵌合軸126に平行に延びる、溝および/または隆起部/フランジなど、一対の通路132を含み得る。通路は、結合部位66のフランジ100上へ嵌合部分120を案内するものであり、嵌合後、特にプレート変形中に、各フランジの上面および/または下面に接触する壁を有し得る。嵌合部分120はまた、ツールのシャフト84の端部を受容するためにソケット134を画定することができる。嵌合部分は、さらに、嵌合部分が骨プレートの結合部位66と完全に嵌合した後で骨プレート52の開口部96と同軸に配置される、ガイドチャネル136を画定することができる。ガイドチャネルは、ドリルの先端部領域を受容し、開口部96を通して下にある骨内へとドリルを案内して、骨に孔を形成することができる。留め具は、嵌合部分が骨プレートから取り外された後(またはその前)にその孔内に設置され得る。
【0041】
図13~
図18は、曲げツール54aの嵌合部分120単独の、または骨プレート52の結合部位66と嵌合した後の、追加の図面を示す(
図18を参照のこと)。受容領域130は、通路132を形成する一対のフック138(互換的にフランジとも呼ばれる)を形成し得る(
図13、
図14、
図17、および
図18を参照のこと)。フックは、ツールが骨プレートと嵌合すると、フランジ100の下に延びることができる。一方または両方の通路132は、通路132がフランジ100上に前進するのを妨げる停止領域140を有し得る(
図15を参照のこと)。例えば、描かれた実施形態では、各通路132は、結合部位のうちの1つに沿った所定の位置にツールを設置するために(例えば、ガイドチャネル136を、下にある骨プレート52の開口部96と整列させるために)フランジ100が接触する盲端を有する溝である。あるいは、各通路132は、各端部が開放した溝であってもよく、フランジ100は、完全に嵌合したときに嵌合軸に沿って嵌合部分がさらに移動するのを防ぐ停止領域を有し得る。
【0042】
図13、
図17、および
図18は、嵌合部分120の受容領域130により画定された空隙142を示している。空隙は、骨プレートの結合部位66、および骨プレートの上面より上に突き出していてよい留め具のヘッドを受容するのに十分なほど大きくてよい。
【0043】
図18は、フランジ100と、通路132と、フック/フランジ138との間の例示的な補完的関係を示す。フランジ100は、通路の上方壁領域と隣り合い、かつその下にフランジ100の上面112を位置決めするように、また、通路の下方壁領域と隣り合い、かつその上にフランジ100の下面114を位置決めするように、通路132内に受容され得る。ツール54aの回転は、その回転が骨プレートの長軸に対して直交する軸を中心にしたものである場合に特に、嵌合部分120に各フランジの上面および下面の両方を圧迫させて、結合部位66において骨プレートにモーメントを加えることができる。
【0044】
骨プレート52は、
図18では仮想輪郭線で示されている骨56に取り付けられる。各プレートフランジ100は、ツールフランジ138がプレートフランジ100と骨との間に配設された状態で、骨56から離間している。ツール54aの下面は、骨プレートの下面と同じ高さであってよいか、または、図示のとおり、下面に対して高くされており、ツールが骨プレートと嵌合されているときにツールと骨との接触を最小限に抑えることができる。
【0045】
ドリルガイドチャネル136および開口部96が同軸に配置されたところが、
図18に示されている。このチャネルおよび開口部はいずれも、同じ軸144上に中心を有する。
【0046】
曲げツールのさらなる態様を、第V節など、本明細書中の他の部分で説明する。
【0047】
IV.曲げ加工システムによる骨固定方法
本節では、本開示の曲げ加工システムによる例示的な骨固定方法を説明する。本節で説明するステップは、任意の適切な順序および組み合わせで実行されてよく、また、本開示の任意の他のステップ、要素、および/もしくは特徴部と組み合わせられるか、またはそれらによって変更されてよい。
【0048】
固定されるべき少なくとも1つの骨が選択され得る。その骨は、ヒトなど、脊椎動物種の任意の適切な骨であってよい。選択され得る例示的な骨としては、腕(例えば、上腕骨、橈骨、または尺骨)、脚(例えば、大腿骨、脛骨、または腓骨)、手/手首(例えば手根骨、中手骨、または指節骨)、足首/足(例えば、足根骨、蹠骨、または趾節骨)、骨盤、脊髄(椎骨)、胸郭(例えば、肋骨または胸骨)、頭蓋骨(例えば、頭骨、または顔面骨)、肩甲骨、鎖骨などのうちの、少なくとも1つの骨が含まれる。
【0049】
選択された骨は、固定による安定から恩恵を受けるであろう任意の適切な状態を有し得る。選択された骨の例示的な状態としては、少なくとも1つの骨折部、(例えば、骨切り処置中に形成された)切断部、偽関節、(骨の癒合処置のための)2つの骨間の継ぎ目、構造的弱点などといった不連続部が含まれ得る。
【0050】
少なくとも1つのプレート部材を含む骨プレートが、選択された骨を固定するために選択され得る。プレート部材は、骨のための一次固定デバイスであってよく、または補助固定デバイスであってよい。いくつかの実施例では、骨は、骨が3つ以上の断片へと砕かれる、粉砕骨折部を有し得る。骨の2つ以上のより大きな断片は、特に、一次固定プレートまたは釘によって互いに対して固定され得、骨の2つ以上のより小さな断片は、選択された骨プレートによって互いに対して固定され得る。
【0051】
選択された骨プレート(および/またはそのプレート部材)は、任意の適切な形状を有し得る。骨プレートおよび/またはプレート部材は、線形であるか、角度がある(例えば、H字型、L字型、T字型、X字型、Y字型などである)か、湾曲している(例えば、平面内で、もしくは、平面を外れて長手方向に湾曲している)か、それらの組み合わせなどであってよい。骨プレートおよび/またはプレート部材は、骨へのフィット感を改善するため、骨プレートおよび/またはプレート部材が選択された骨に取り付けられる前に、外科医などによって、変形され得る。骨プレートおよび/またはプレート部材はまた、もしくは代わりに、骨プレートおよび/またはプレート部材のサイズを小さくするために切断または粉砕され得る。
【0052】
選択された骨プレートおよび/またはプレート部材は、骨の1つまたは複数の断片のうちの各断片の中および/または周囲に延びる少なくとも1つの留め具または2つ以上の留め具など、1つまたは複数の留め具によって、骨の1つまたは複数の断片に固定され得る。適切となり得る例示的な留め具としては、ねじ山付き留め具(骨ねじ)、ピン、ワイヤ、縫合糸、リベットなどが含まれる。ねじ山付き留め具は、骨の断片と、またオプションとして、骨プレートおよび/またはプレート部材とも、ねじ係合して配設され得る。骨プレートおよび/またはプレート部材の任意の適切な数の開口部(すべての開口部を含む)は、骨プレートおよび/またはプレート部材が骨に固定された後、また、骨プレートおよび/またはプレート部材が本開示の曲げ加工システムにより変形される前に、留め具によって占有され得る。
【0053】
1つまたは複数の曲げツールが、骨プレートおよび/またはプレート部材に変形モーメントを伝達するために、骨プレートおよび/またはプレート部材と動作可能に結合され得る。いくつかの実施例では、一対の曲げツールは、連続的に、または並行して結合されるなどして、骨プレート(および/またはプレート部材)と結合され得る。外科医は、曲げツールのための一対の結合部位を選択することができ、その後、曲げツールを各部位と嵌合させ得る。いくつかの実施形態では、両方の曲げツールは、骨プレート(またはプレート部材)の同じアクセス部位を介して骨プレートおよび/またはプレート部材の異なる結合部位と整列され得る。アクセス部位は、曲げツールのそれぞれが、結合部位のうちの1つの嵌合軸に直交する同じ軸に沿って移動することによって、その結合部位と嵌合するよう位置決めされることを可能にし得る。各曲げツールは、骨プレート(および/もしくはプレート部材)の局所的および/もしくは全体的な長軸に平行であってよく、かつ/または結合部位のエッジ領域/フランジにより画定される軸に平行であってよい、嵌合軸に平行な方向において、結合部位と嵌合し得る。曲げツールは、それぞれの嵌合軸に沿ってそれぞれ反対の方向に動くことによって、それらのそれぞれの結合部位と嵌合し得る。曲げツールは、両方のツールをそれらのそれぞれの結合部位と嵌合させることによって、骨プレートおよび/またはプレート部材に沿った所定の位置に設置され得る。
【0054】
曲げモーメントが、曲げツールによって骨プレートおよび/またはプレート部材に加えられ得る。曲げモーメントは、外科医によって手作業で曲げツールのシャフトに加えられ得る。曲げモーメントは、骨プレート(またはプレート部材)の局所的な長軸に対して平行、直交、および/または斜めの軸の周りで、骨プレートおよび/またはプレート部材を変形させることができる。
【0055】
曲げツールのうちの一方または両方は、骨プレートおよび/またはプレート部材から取り外され得る。曲げツールのうちの少なくとも一方は、その後、骨プレート(またはプレート部材)に沿った1つまたは複数の他の位置でさらなる曲げ加工を行う予定である場合、1つまたは複数の他の結合部位において骨プレートと結合され得る。各曲げツールの取り外しは、曲げツールを嵌合軸に平行に、しかし、嵌合のためにたどる方向とは反対の方向に動かし、それから、曲げツールを、骨プレート(またはプレート部材)の平面に対して横断方向の軸に沿って骨プレート(またはプレート部材)から離すことによって、行われ得る。
【0056】
曲げ加工処置中または曲げ加工処置後の任意の適切な時点で、1つまたは複数の追加の留め具を、骨プレート(および/またはプレート部材)のこれまで占有されていなかった開口部から骨内に設置し、骨プレート(またはプレート部材)を骨にさらに取り付けることができる。例えば、曲げツールは、開口部を通して骨内にドリルを案内することができ、それから、留め具は、曲げツールが骨プレート(またはプレート部材)から取り外される前またはその後で、開口部から骨内に設置され得る。
【0057】
V.実施例
以下の実施例は、骨への取り付け後に骨プレートおよび/またはそのプレート部材を変形させるためのシステムに関する、本開示の選択された態様および実施形態を説明するものである。これらの実施例のそれぞれに記載されるシステムの構成要素、態様、ステップおよび特徴部は、互いに、また、前述したシステムと、任意の組み合わせで組み合わせられてよい。これらの実施例は、例示目的であり、本開示の範囲全体を制限するものではない。
【0058】
(実施例1)
骨プレートおよび曲げツールの例示的なワーキングモデル
この実施例では、骨プレート52および曲げツール54aの例示的なワーキングモデルを説明する。
図19~
図21を参照のこと。
【0059】
図19は、ツール54aの嵌合部分120の下面図を示す。
【0060】
図20は、骨プレートのアクセス部位上に位置決めされ、嵌合前に骨プレート52の(フランジ100を含む)隣り合う結合部位と軸方向に整列された、嵌合部分120を示す。
【0061】
図21は、一対の矢印によって示されるように嵌合部分の動きによって、骨プレートの結合部位と嵌合され、フランジ100上に受容された嵌合部分120を示す。
【0062】
(実施例2)
例示的な骨プレートおよび曲げツール
この実施例では、
図1のシステムのための追加の例示的な骨プレート52および曲げツールを説明する。
図22~
図31を参照のこと。
【0063】
図22は、結合部位66で骨プレート52と嵌合された別の例示的な曲げツール54dの断面図を示す。骨プレートは、断面において蟻継形状を形成するように傾斜した下面114をそれぞれが有するプレートフランジ100を有する。ツール54dの嵌合部分120は、プレートフランジ100を受容するために通路を形成する補完的な溝132を有し、また、プレートフランジ100の下に受容されるフックを形成する(ツールフランジとも呼ばれる)リップ138を有する。
【0064】
図23~
図25は、結合部位66で骨プレート52と嵌合された、他の例示的な曲げツール54e~54gの断面図を示す。骨プレートは、一対の上方フランジ100および一対の下方フランジ152を形成するように結合部位66の対向するエッジ領域それぞれに沿って延びる細長い凹部150(溝)を有する。各ツール54e~54gは、細長い凹部150に収まる補完的な隆起部154(互換的にツールフランジとも呼ばれる)を形成し、ツールのある領域は、結合部位66の各上方プレートフランジ100の下に位置する。凹部150および隆起部154は、特に、三角形(
図23を参照のこと)、矩形(
図24を参照のこと)、または円形(
図25を参照のこと)など、任意の適切な補完的横断面形状を有し得る。
【0065】
図26は、各結合部位66で少なくとも2つの突出部156によってそれぞれが形成されたフランジ100を有する骨プレート52を示す。各突出部156は、骨プレートの局所的な長軸に直交する方向に骨プレートの本体98から突き出し得る。
【0066】
【0067】
図28は、L字型である
図4~
図6の骨プレート52の角度があるバージョンを示す(
図5と
図28とを比較のこと)。骨プレートの長手方向部分および横断方向部分は、互いに直交しているか、または斜めであってよい。
【0068】
図29は、骨プレートの実質的に全長にわたり延びるアンダーカットフランジ100を有する骨プレート52を示す。曲げツールは、いずれかの端部から骨プレートと嵌合されてよく、また、骨プレートに沿った連続した位置範囲内で任意の位置までスライドし得る。
【0069】
図30は、本開示の曲げ加工システムのための別の例示的な骨プレート52を示す。骨プレートは、本体160(互換的に一次プレート部材とも呼ばれる)と、本体と一体的に形成され、かつ(例えば本体の長軸に対して横断方向に)本体から突き出している複数の付属物162(互換的に補助プレート部材とも呼ばれる)と、を有する。各付属物は、曲げツールのための少なくとも1つまたは少なくとも一対の結合部位66を含んでよく、各部位66は、曲げツールと動作可能に結合するための一対のアンダーカットフランジ100を有する。
【0070】
本体160は、骨プレートの一次固定構造体として機能し得る。本体は、付属物より幅広く、かつ厚くてよく、(例えば、特に、大腿骨、脛骨、もしくは上腕骨などの骨に沿って長手方向に延びることによって)骨の1つまたは複数の一次骨折部にまたがっていてよい。本体は、骨ねじなどの留め具を受容するための複数の開口部164を画定し得る。付属物162は、骨の二次骨折部にまたがって、例えば、付属物を介してより小さい骨片に骨プレート52を取り付けることができる。
【0071】
図31は、本開示の曲げ加工システムのためのさらに別の例示的な骨プレート52を示す。骨プレートは、一次プレート部材170(互換的に主要プレートとも呼ばれる)と、複数の取り外し可能な付属物172(互換的に補助プレート部材とも呼ばれる)との組立体である。各補助プレート部材は、選択可能な位置において、ねじ山付き留め具などの1つまたは複数の留め具174によって、一次プレート部材とは別に形成され、これに留められ得る。一次プレート部材170は、複数の開口部176を画定することができ、これらの開口部において、各補助プレート部材は、少なくとも1つの留め具174によって、また、補助プレート部材が一次プレート部材に重なり、かつ一次プレート部材から突き出した状態で、取り付けられて、骨上における骨プレート組立体の設置面積を増やすことができる。各開口部176は、雌ねじを有しても、有していなくてもよい。
【0072】
一次プレート部材170は、補助プレート部材172より大きく、かつ/または強くてよい。一次プレート部材は、補助プレート部材より長く、幅広く、かつ/または厚くてよい。
【0073】
骨プレート組立体は、一次プレート部材と、補助プレート部材と、を含み得る。補助プレート部材は、複数対のアンダーカットフランジ100により形成された結合部位66を有する。補助プレート部材は、一次プレート部材上に配設されてよく、一次プレート部材の一部は、補助プレート部材と骨との間に位置する。留め具174のうちの少なくとも1つは、プレート部材172の開口部およびプレート部材170の開口部を通って延び、オプションとして骨内に入ることができる。補助プレート部材は、一次プレート部材170の端部領域から突き出し、骨端部付近で骨折により生じた、より小さい骨片が捕捉されるのを可能にし得る。
【0074】
(実施例3)
選択された実施形態
この実施例では、本開示の選択された実施形態を、一連の番号付きの段落として説明する。
【0075】
1.(A)プレート部材であって、プレート部材を骨に取り付ける留め具を受容するために複数の開口部を画定しており、プレート部材の対向するエッジ領域により形成された一対のアンダーカットフランジを含む、プレート部材と、
(B)プレート部材が骨に取り付けられた後でプレート部材と動作可能に結合されるように構成された曲げツールであって、曲げツールのある領域は、アンダーカットフランジそれぞれの下に位置決めされ、曲げツールの回転によりプレート部材にモーメントが加えられる、曲げツールと、
を含む、骨上でプレート部材を変形させるためのシステム。
2.アンダーカットフランジは、平面を画定し、
曲げツールは、平面に対して平行に曲げツールとプレート部材とを互いに嵌合させることによってプレート部材と動作可能に結合されるように構成されている、段落1に記載のシステム。
3.曲げツールは、プレート部材に対して長手方向に曲げツールとプレート部材とを互いに嵌合させることによってプレート部材と動作可能に結合されるように構成されている、段落1または2に記載のシステム。
4.曲げツールは、一対の通路を形成し、
一対のアンダーカットフランジの各フランジの少なくとも一部は、曲げツールがプレート部材と動作可能に結合されたとき通路のうちの1つによって受容される、段落1~3のいずれかに記載のシステム。
5.一対の通路の各通路は、アンダーカットフランジのうちの1つの少なくとも一部を受容するための溝を含む、段落4に記載のシステム。
6.曲げツールは、嵌合軸に沿って移動することによってプレート部材と動作可能に結合されるように構成され、
曲げツールおよび/またはプレート部材は、曲げツールがプレート部材と動作可能に結合されたとき移動を停止させる停止領域を含む、段落1~5のいずれかに記載のシステム。
7.曲げツールは、骨ねじがプレート部材の開口部のそれぞれを動作可能に占有している間、プレート部材と動作可能に結合されることが可能である、段落1~6のいずれかに記載のシステム。
8.プレート部材によって画定された開口部のうちの少なくとも1つは、一対のアンダーカットフランジ間に配設され、
少なくとも1つの開口部は、オプションとして雌ねじを含む、段落1~7のいずれかに記載のシステム。
9.一対のアンダーカットフランジは、プレート部材に対して長手方向に細長く、かつ/または互いに対してそれぞれ反対の方向に突き出し、オプションとしてプレート部材の本体から突き出している、段落1~8のいずれかに記載のシステム。
10.曲げツールは、プレート部材に沿った複数の離間した別個の結合部位のそれぞれにおいていずれか1つを選んでプレート部材と動作可能に結合されるように構成されている、段落1~9のいずれかに記載のシステム。
11.結合部位はそれぞれ、プレート部材によって画定された開口部のうちの少なくとも1つを挟む、段落10に記載のシステム。
12.プレート部材は、複数対のアンダーカットフランジを形成し、
複数対のアンダーカットフランジは、プレート部材に沿って(すなわち、プレート部材の長手方向に)互いに離間している、段落1~11のいずれかに記載のシステム。
13.プレート部材は、各対のアンダーカットフランジにおいてより幅広く、隣り合う対のアンダーカットフランジ間においてより狭くなっている、段落12に記載のシステム。
14.曲げツールは、第1の曲げツールであり、
プレート部材と動作可能に結合されるように構成された第2の曲げツールをさらに含み、曲げツールは、プレート部材に対向するモーメントを同時に加えることができる、段落1~13のいずれかに記載のシステム。
15.プレート部材は、補助プレート部材であり、
骨上で補助プレート部材に重なるように構成された一次プレート部材をさらに含み、
オプションとして、補助プレート部材は、一次プレート部材より小さい平均厚さおよび/または平均幅を有する、段落1~14のいずれかに記載のシステム。
16.(A)プレート部材であって、互いにプレート部材を挟んで位置する一対のエッジ領域を有する、プレート部材と、
(B)曲げツールであって、プレート部材上で長手方向に曲げツールを変位させるプレート部材と曲げツールとを嵌合させることにより一対のエッジ領域と動作可能に結合されるように構成されている、曲げツールと、
を含む、骨上でプレート部材を変形させるためのシステム。
17.プレート部材は、下表面領域を有する本体を含み、
エッジ領域はそれぞれ、下表面領域に対して高くされている下面を有し、
曲げツールは、プレート部材にモーメントを加える際にエッジ領域それぞれの下面と係合されるように構成されている、段落16に記載のシステム。
18.曲げツールは、プレート部材にモーメントを加える際にプレート部材の上面および/または両方のエッジ領域と係合されるように構成されている、段落16または17に記載のシステム。
19.(A)複数の留め具によってプレート部材を骨に取り付けるステップと、
(B)曲げツールとプレート部材とを、プレート部材の伸長方向に平行に、互いに対して動かすことによって、曲げツールをプレート部材と動作可能に嵌合させるステップと、
(C)少なくとも一部には曲げツールによってプレート部材に加えられた力によって、プレート部材を変形させるステップと、
を任意の順序で含む、骨を固定する方法。
20.プレート部材は、一次プレート部材に重なる補助プレート部材であり、
補助プレート部材は、一次プレート部材より小さい平均幅を有する、段落19に記載の方法。
【0076】
前述した開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含し得る。これらの発明はそれぞれその好適な形態で開示されているが、本明細書に開示され、例示されたその特定の実施形態は、多くの変形形態が可能であるため、限定的な意味で考えられるべきでない。本発明の主題は、本明細書に開示されたさまざまな要素、特徴部、機能、および/または特性のすべての新規かつ非自明の組み合わせおよびサブコンビネーションを含む。以下の特許請求の範囲では、新規かつ非自明とみなされた特定の組み合わせおよびサブコンビネーションを特に示す。特徴部、機能、要素、および/または特性の他の組み合わせおよびサブコンビネーションにおいて具現化された発明は、本出願または関連出願の優先権を主張する出願で主張することができる。このような特許請求の範囲は、異なる発明を対象としていても、同じ発明を対象としていても、また、元の特許請求の範囲に対し、範囲が広いか、狭いか、等しいか、または異なっているかにかかわらず、やはり本開示の発明の主題に含まれるものとしてみなされる。さらに、特定される要素に関する、第1、第2、または第3などの序数を示すものは、要素を識別するために使用されており、別段の定めのない限り、そのような要素の特定の位置または順序を指すものではない。
【符号の説明】
【0077】
50 システム
52 骨プレート
54a~54g 曲げツール
56 骨
58 留め具
62 骨折部
64a、64b 骨部分
66 結合部位
68 組み立てルート
70 組み立てルート
72 嵌合前経路
74a、74b 嵌合経路
76 直交軸
78 全体的な長軸
80 局所的な長軸
82 目に見える印
84 シャフト
86 長手方向部分
88 横断方向部分
90 ウェブ
92 上面
93 下面
94 下表面領域
96 開口部
98 本体
99 エッジ構造体
100 アンダーカットフランジ
102 陥凹型下方ウェブ表面領域
104 長手方向凹部
106 横断方向凹部
112 上面
114 下面
116 雌ねじ
120 嵌合部分
122 遠位端部分
124a、124c 近位端部分
126 嵌合軸
128 雄ねじ
130 受容領域
132 通路
134 ソケット
136 ガイドチャネル
138 フック
140 停止領域
142 空隙
144 軸
150 凹部
152 下方フランジ
154 隆起部
156 突出部
160 本体
162 付属物
164 開口部
170 一次プレート部材
172 付属物
174 留め具
176 開口部