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特許6994945生きた活性培養物を有する、固形のフレッシュヨーグルトチーズ、およびそれから作られ、チョコレートで覆われたヨーグルトデザート、ならびにそれらの調製のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】生きた活性培養物を有する、固形のフレッシュヨーグルトチーズ、およびそれから作られ、チョコレートで覆われたヨーグルトデザート、ならびにそれらの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/093 20060101AFI20220106BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20220106BHJP
   A23C 19/09 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A23C19/093
A23C9/13
A23C19/09
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017555853
(86)(22)【出願日】2016-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 HU2016000004
(87)【国際公開番号】W WO2016113580
(87)【国際公開日】2016-07-21
【審査請求日】2018-12-28
(31)【優先権主張番号】P1500011
(32)【優先日】2015-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】517248719
【氏名又は名称】アッティラ ラコシ
【氏名又は名称原語表記】RAKOSI, Attila
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100204401
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 睦美
(72)【発明者】
【氏名】アッティラ ラコシ
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528582(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02052625(EP,A1)
【文献】国際公開第2006/046151(WO,A1)
【文献】国際公開第88/009125(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/104820(WO,A1)
【文献】特表2008-539749(JP,A)
【文献】特開昭60-156352(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104887(WO,A1)
【文献】米国特許第06254900(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第102669267(CN,A)
【文献】国際公開第2005/099470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 19/093
A23C 9/13
A23C 19/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヨーグルトチーズの製造の初期材料として、乳を、低温殺菌装置により、90-95℃の温度で低温殺菌するステップ、
b)スキミング機械により、乳の脂肪含有量を最大5%(w/v)の値に設定するステップ、
c)設定された脂肪含有量で乳をホモジナイズするステップ、
d)ホモジナイズされた乳を42°Cの温度に冷却するステップ、
e)温度42°Cのホモジナイズされた乳を、ミキサーを備えた冷却可能/加熱可能なチーズタンクにポンプで注入するステップ、
f)チーズタンクに注入されたホモジナイズされた乳に、Streptococcus thermophilus es Lactobacillus delbrueckii bulgaricus 菌株を含むサーモフィリックヨーグルト細菌培養物を接種し、そして、ヨーグルトカードのpH値が4.6-4.4に達するまでこの温度で発酵させるステップ、
g)得られたヨーグルトカードを固化して、生細菌叢を有する固形のヨーグルトチーズを得るステップ、
h)得られたヨーグルトチーズを4℃の温度に冷却し、冷却されたヨーグルトチーズをさらに加工するまで冷蔵保存するステップ、
i)ヨーグルトチーズと、レシピに基づいて必要な成分とを混合し、デザートコーパスの材料として機能する均質な塊とするステップ、
j)均質な塊を、デザートピースのコーパスを調製するために、押し出しによって、円形、正方形、長方形または他の断面の棒、立方体または球形のいずれかに成形するステップ、
k)コーティング装置上で、チョコレートまたはココアのアイシングによりデザートコーパスの表面全体をコーティングし、生細菌叢を有するチョコレートまたはココアでコーティングしたヨーグルトデザートピースを製造するステップ、
l)製造されたヨーグルトデザートピースを冷却トンネル内で冷却し、包装機によりホイル内に包装し、出荷まで4℃の温度で冷蔵保存するステップ、
を含む、チョコレートまたはココアでコーティングされたヨーグルトデザートピース製品の製造方法であって、
得られたヨーグルトカードを固化するステップは、さらに、チーズタンクの糸状の切削器具により、得られたヨーグルトカードを1cm~2cmの辺長を有する立方体に切断し、得られたカードと乳清の混合物を、撹拌しながら最高温度55℃まで加熱して、カードのタンパク質ネットワークを凝固させ、乳清分離を促進し、生菌叢を保存しながら、ヨーグルトカードの濃度を増し、
固化したカードと乳清の混合物を、底に穴の開いたカートにチーズタンクから排出し、
空気圧プレス構造により、乾物含量が最小限量30%(w/v)に達するまで、余分な量の乳清をカードから圧搾することを特徴とする方法。
【請求項2】
m)ヨーグルトチーズの製造の初期材料として、脱脂粉乳と水との混合物、または、脱脂粉乳と限外濾過により8-24%(w/v)無脂肪乾物含量に濃縮された乳との混合物を、低温殺菌装置により、90-95℃の温度で低温殺菌するステップ、
n)設定された脂肪含有量で乳をホモジナイズするステップ、
o)ホモジナイズされた乳を42°Cの温度に冷却するステップ、
p)温度42°Cのホモジナイズされた乳を、ミキサーを備えた冷却可能/加熱可能なチーズタンクにポンプで注入するステップ、
q)チーズタンクに注入されたホモジナイズされた乳に、Streptococcus thermophilus es Lactobacillus delbrueckii bulgaricus 菌株を含むサーモフィリックヨーグルト細菌培養物を接種し、そして、ヨーグルトカードのpH値が4.6-4.4に達するまでこの温度で発酵させるステップ、
r)得られたヨーグルトカードを固化して、生細菌叢を有する固形のヨーグルトチーズを得るステップ、
s)得られたヨーグルトチーズを4℃の温度に冷却し、冷却されたヨーグルトチーズをさらに加工するまで冷蔵保存するステップ、
t)ヨーグルトチーズと、レシピに基づいて必要な成分とを混合し、デザートコーパスの材料として機能する均質な塊とするステップ、
u)均質な塊を、デザートピースのコーパスを調製するために、押し出しによって、円形、正方形、長方形または他の断面の棒、立方体または球形のいずれかに成形するステップ、
v)コーティング装置上で、チョコレートまたはココアのアイシングによりデザートコーパスの表面全体をコーティングし、生細菌叢を有するチョコレートまたはココアでコーティングしたヨーグルトデザートピースを製造するステップ、
w)製造されたヨーグルトデザートピースを冷却トンネル内で冷却し、包装機によりホイル内に包装し、出荷まで4℃の温度で冷蔵保存するステップ、
を含む、チョコレートまたはココアでコーティングされたヨーグルトデザートピース製品の製造方法であって、
得られたヨーグルトカードを固化するステップは、さらに、チーズタンクの糸状の切削器具により、得られたヨーグルトカードを1cm~2cmの辺長を有する立方体に切断し、得られたカードと乳清の混合物を、撹拌しながら最高温度55℃まで加熱して、カードのタンパク質ネットワークを凝固させ、乳清分離を促進し、生菌叢を保存しながら、ヨーグルトカードの濃度を増し、
固化したカードと乳清の混合物を、底に穴の開いたカートにチーズタンクから排出し、空気圧プレス構造により、乾物含量が最小限量30%(w/v)に達するまで、余分な量の乳清をカードから圧搾することを特徴とする方法。
【請求項3】
脱脂粉乳と水の混合物、または、脱脂粉乳と限外濾過により8-24%(w/v)無脂肪乾物含量に濃縮された乳との混合物を、バター、クリーム、または固体植物性脂肪によって、脂肪含有量を最大5%(w/v)に設定し、低温殺菌前に、該混合物中の粉乳を、約50℃の2~3時間晒すことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
押し出しのステップが、さらに、デザートコーパスの押し出し中に、既知の別個の手順により調製された風味材料、または果物ゼリーを、連続注入により均質な塊に導入することを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
押し出しのステップが、さらに、デザートコーパスの押し出し中に、既知の別個の手順により調製された冷間成形可能なビスケット生地を、連続注入により均質な塊に導入することを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
生細菌叢を有する固形粘稠性で形状維持のヨーグルトチーズで作られた、冷蔵されたチョコレートまたはココアでコーティングされたヨーグルトデザートピース製品であって、
・ -固化したタンパク質ネットワークを含み、形状を保持する固形粘稠性であり、乾物含量が30%(w/v)以上で、生きている細菌叢をそのまま含む、50%(w/v)を超える主要な乳製品成分としてのヨーグルトチーズ、
ここで、前記ヨーグルトチーズは、カードと乳清の混合物を、撹拌しながら最高温度55℃まで加熱して、カードのタンパク質ネットワークを凝固させ、乳清分離を促進し、生菌叢を保存しながら、ヨーグルトカードの濃度を増して得られるものである、
-トランス脂肪を含有しない、0%~15%(重量/体積)のバターおよび/または固形植物性脂肪、またはオメガ-3脂肪酸を含有するマーガリン、
-最大5%(w/v)の粉乳、
-8%~15%(w/v)の砂糖またはその一部/全部の代替となる他の甘味料、
-0%または最大20%(w/v)の、デザートコーパス材料に混合するか、または、コーパス内で別の相として構成した、ジャム、フルーツゼリー、または他のフレーバー材料、
-最大0.1%(w/v)の、レモンのアロマまたはバニラのアロマ、
- 1.0~2.0%(w/v)の、増粘、抗菌、抗酸化及び乳清-分離-還元補助物質
-食品工業用着色剤、
ここで、これらの材料は、均質な塊に混合された後、デザートのコーパスを構成し、
-コーパスの表面全体に均等に塗布されたコーティングの形の20-35%(w/v)のチョコレートまたはココアコーティングペースト、
を含む製品であり
押し出しにより、円形、正方形、長方形または他の断面の棒、立方体または球形に成形された、またはさらに箔に包まれていること
を特徴とするヨーグルトデザートピース製品
【請求項7】
デザートのコーパスが、最大30%(w/v)の、既知の方法によって製造されたスポンジフランを別個の相として含むことを特徴とする、請求項6に記載のヨーグルトデザートピース製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の対象)
本発明は、一方では、生細菌叢を有する固形粘稠性のフレッシュヨーグルトチーズと、生細菌叢を有し、前記フレッシュヨーグルトチーズを基に調製された、チョコレートまたはココアペーストでコーティングされたヨーグルトデザートピース(piece、個々の)製品(製品ライン)とであって、乳の、または粉乳から水で、好ましくは乳よりも高い稠度に還元された乳の、限外ろ過により濃縮された乳の、あるいは凝乳(カード)を切断して加熱し、沈殿した乳清を分離することによる粉乳の、ヨーグルト培養物による凝乳により得られる、生細菌叢を有する固形粘稠性のヨーグルトチーズを主成分として含むヨーグルトデザートピース製品とに関する。
【0002】
本発明は、他方では、レシピにしたがった成分と共に加工して冷やしたヨーグルトチーズの塊から形状維持デザートコーパス(corpuses)を形成し、チョコレートまたはココアペーストでそれらをコーティングし、それらを冷却して梱包する、上記製品の製造方法に関し、一方で、デザートコーパス(corpus)は、別個の相として果物ゼリーまたは他の風味料、スポンジフランを含んでいてもよく、さらに、デザートコーパスは、独立した相を構成する2つ以上の色および風味のヨーグルトチーズ塊を含んでいてもよい。
【背景技術】
【0003】
(前例)
ロシアおよびいくつかの東ヨーロッパ諸国は、乳に中温性乳酸菌培養物を接種することによる固形粘稠性の酸性(酸)乳製品と、レンネットでの時々の補充的凝乳による食用のフレッシュチーズ(クワルク、quark)と、最小50%(重量/体積)の量のそれを含むチョコレートまたはココアペーストでコーティングされたクワルクデザートとを製造する。しかしながら、この方法で製造されるフレッシュチーズ(クワルク)と、それを基に作られるクワルクデザートは、上記の地理的領域を超えて広がっていない。
【0004】
クワルクおよびクワルクのデザートのより広範な世界的広がりは、いくつかの要因により妨げられると考えられている:
- クワルクは、それが伝統的製品ではない場所では知られていないため、人々はクワルクおよびその製品、結果としてそれから作られるクワルクデザートを試してみることに消極的である。
- クワルクおよびクワルクから作られる製品を知っている人の多くは、それらに低い評価価値を与え、結果としてそれらを消費することを控える。
- 一部の人々にとって、クワルクおよびクワルクデザートの味は、中温性乳酸菌培養物による凝乳の使用のため、十分に調和しておらず、香りが十分に豊富ではない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、新規のチョコレートコーティングデザート製品と、それらを製造するための方法(単数または複数)とを創出することであり、そこでのデザート製品のコーパスの決定的な原料は、既知のチョコレートコーティングフレッシュチーズデザートの決定的な原料として使用されるフレッシュチーズよりも高い栄養価を有する、形状維持固形粘稠性で生細菌叢を含む発酵酸乳製品であり、それはより心地よい味、より豊かな香りの内容、より高い評価を有する。
【0006】
その目的を達成するために、どのような酸乳製品が、所望の特性を特徴とするデザート原料を製造するための基として役立つことができるかどうかが検討された。本発明者らは、主成分の基本的特徴として、それが、栄養に関して有益な生細菌叢を有するべきであると規定している。したがって、本発明者らは、それが最も豊富な酸酪農製品であるヨーグルトを主成分の原料として選んだ。本発明者らは、形状維持固形のヨーグルトチーズをヨーグルトから製造することができ、発酵の過程で成長した生細菌培養物を完全に保持する、本発明による手順を開発した。
【0007】
(技術の状態)
本発明者らは、本発明に最も近い解決策と、本発明により修正されるそれらの欠点とを説明する。
【0008】
ヨーグルトおよびヨーグルトデザートは、それらの有利な栄養特性および官能特性のために、非常に一般的であり、世界的に人気がある。ヨーグルトおよびヨーグルトデザートの下では、凝固酸乳製品は、乳ならびに乳製品(乳、脱脂乳、濃縮乳、濃縮脱脂乳、クリーム、クリームおよびそれらの混合物)から作られ、主にストレプトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・デルブリッキー・ブルガリカスの培養物に由来する好熱性微生物の影響下での乳酸凝乳により生成されることを意味する。「ヨーグルト」という名前は、これらの2つの細菌株の適切なn個の数の生物体が製品中に存在する場合に正当に使用することができる。
【0009】
従来の、よく知られており、最も普及しているヨーグルト製造の方法:所望の脂肪含量に設定された、低温殺菌およびホモジナイズ(均質化)された牛乳をヨーグルト乳酸菌培養物により接種し、それを、細菌発酵に理想的である約42℃の温度で、好ましくは4.2~4.8のpH値の所望の酸性度に達するまで凝乳させる。このようにして調製されたプレーンヨーグルトの凝乳は、好ましくは20℃の温度に冷却され、カップに注がれるか、または様々な風味のヨーグルトデザートの原料として使用される。
【0010】
従来のヨーグルトデザートの製造中に、様々な追加物質がヨーグルトの凝乳に加えられる:手順の開始時に、例えば、砂糖またはクリームが原料乳に添加され、そして手順の最後に、例えば、果物ゼリーまたは果物のかけらがヨーグルトの凝乳に混合され、それはカップに注がれ、閉じられ、冷蔵保存されるか、またはタンパク質安定剤添加物が貯蔵寿命を延ばすために添加され、その後低温殺菌され、熱い状態でカップに注がれ、閉じられ、そして冷却される。
【0011】
パリのCompagnie Gervais Danoneの特許文献1によれば、例えば砂糖もしくは甘味料、風味料、果物、小麦またはいくつかの栄養素、例えばビタミン、ミネラルおよび繊維物質が、完成したヨーグルトに添加されてもよい。さらに、様々な酪農原料、例えば粉乳、脱脂粉乳、ラクトンセラム、乳タンパク質、食用カゼインも添加されてもよい。当の特許明細書に記載されている解決策の主な特徴は、ヨーグルトが「バイモーダル構造」であることであり、それはタンパク質-脂肪物質ネットワークに接続された平らな小球および遊離脂肪球(これらの脂肪球の直径は2つの主要な値に分かれており、そういうわけで、これは「バイモーダル構造」を有する)を含み、それは製品の7%~14%(重量/体積)のホモジナイズされたクリームも含有する。
【0012】
特許文献2の主題である好ましいヨーグルトデザートを製造することは、親水コロイドをその中に混合することにより乳が濃縮されることを特徴とし、それはホモジナイズされ、低温殺菌され、35℃の温度に冷却され、既知の方法で培養され、12~16時間でpH値4~4.5に発酵され、別の量の親水コロイドがヨーグルト凝乳に添加され、それは後加熱処理され、半無菌的な方法でカップに注がれ、冷却される。
【0013】
工業的に世界的に製造されている従来のヨーグルト製品の共通の特徴は、その粘稠性が自由流動性であることであること-これらはヨーグルト飲料である-、またはパルプ状流動性もしくはスプーンですくうことができる、またはクリーム状のいずれかであり、したがって、それらは固形および形状維持性ではないため、ヨーグルト飲料の場合はボトルに、他のヨーグルト製品の場合はカップまたはボックスに、市場向けに包装されている。
【0014】
近年、乾物含量がより高く、したがって従来のものよりもより高い栄養価およびより高い賞味価値(enjoyment value)を有する、いわゆるギリシャ風のヨーグルト、または「水切りヨーグルト(strained yogurts)」が大きな人気を得ている。従来ヨーグルトの10%(重量/体積)の最大乾物含量とは対照的に、それらは約20%(重量/体積)の乾物含量を有する。既知の最も一般的なギリシャ風ヨーグルトの製造方法は、乳清/水分含量の一部を機械的/限外ろ過により従来ヨーグルトから除去することである。例えば、非特許文献1は、高い乾物含量(20%~25%)のギリシャ風ヨーグルトの調製に言及する。このプロセスによれば、この乾物含量は遠心分離を2回行うことにより達成される。これらの高固形製品は、乳タンパク質濃縮物として使用される。
【0015】
「レブネ」タイプの濃厚なヨーグルトは、中東諸国において普及しており、平均22重量%~27重量%(重量/体積)の乾物含量で作られている。これらは、広げることができる粘稠度の、柔らかい非形状維持性製品であり、通常プラスチックボックスに入って販売されている。例えば、27%(重量/体積)乾物を含み、プラスチックジャーに入って販売されている、カナダのフェニキア(Phoenicia)グループ社の「レブネ」製品など。
【0016】
ギリシャ風ヨーグルトは柔らかいため、形状維持性デザートコーパスの製造には不都合である。原料として、これらは本発明によるヨーグルトデザート製造に利用することができる。
【0017】
特許文献3(C.G.DANONE)の発明による食品組成物は、ペストリーまたはチョコレートのコーティングおよび詰め物を含む。詰め物のヨーグルト含量は20%~25%(重量/体積)である。使用された天然ヨーグルトの高い含水量(88%~90%)のために、組成上の問題がある。したがって、必要な水分活性値(aw)を確保し、生細菌叢を維持するためには、15%~35%(重量/体積)の脂肪で多くの水を安定化しなければならない。
【0018】
この低粘度の詰め物は、形状維持性固形デザートコーパスそのものを形成することはできない。この詰め物は、上記文献から明らかなように、組成物のペストリー成分と一緒に固形コーパスを形成することができる。組成物中での天然ヨーグルト成分の適用では、必要とされる70%(重量/体積)の乳ベースの単純な製品比の達成を可能にできなかったため、この文献による組成物はヨーグルトデザートに含まれていない。
【0019】
Ferrero Rocher社のヨーグルトバー製品は、2つのスポンジフランとそれらの間の詰め物とで構成されている。詰め物には、29.5%(重量/体積)のヨーグルトが含まれており、固形粘稠度に凝縮されていない。
【0020】
しかしながら、凝縮ヨーグルトは熱処理されるため、生菌叢(living flora)成分ではない。前者の例と同じように、詰め物を囲む2つのスポンジスライスにより、バーの固さが確保される。
【0021】
特許文献4(C.G.DANONE)の発明は、乳ベースの高含水量コーパスの調製およびチョコレートコーティングに言及する。発明の特許請求の範囲は、コーパスの含水量を減少させる方法に言及する。
【0022】
文献には、ヨーグルトの成分、またはコーパス内部の生細菌叢の存在は記載されていない。
【0023】
特許文献5(FRIESLAND HUNGARIA)の発明は、ヨーグルトベースのフレッシュチーズデザート製品に言及する。文献によると、ヨーグルトとフレッシュチーズとが調製され、砂糖および他の成分と混合される。この塊は68℃~76℃で熱処理され、その後包装される。
【0024】
製品は、固形粘稠性の品物ではない。それは、生細菌叢およびチョコレートコーティングを含まない。
【0025】
特許文献6(C.G.DANONE)の発明は、フレッシュチーズクリーム製品およびそれを基に調製される乳デザート、ならびにそれらの製造方法を記載している。中温菌での酸性凝乳により、フレッシュチーズが乳から作られる。手順によれば、凝乳は22℃~36℃でpH値4~5に達するまで起こり、凝乳は2cm~10cmの立方体に切断され、65℃~75℃に加熱され、この温度で、乾物含量が35%~50%(重量/体積)になるまで圧搾され、強力な切断効果のカッターで激しく混合され、その間-40℃~-160℃の不活性ガスで冷却され、次いでバターがその中に混合される。この方法で、その体積中1%~5%のガスを含むバターのようなフレッシュチーズクリームが製造される。乳デザートは、ガスを含有するバターのようなフレッシュチーズクリームを他の添加剤と混合し、混合物を10-14-19-23-28-31℃で成形/押し出し、切断し、次いで被覆塊でコーティングすることにより完成する。文献には、フレッシュチーズクリームの製造に適用された強力な切断効果カッター装置の記載が含まれている。
【0026】
この文献によるフレッシュチーズクリームおよびデザートは、ヨーグルト細菌叢を含まない。文献によると、これらは冷蔵製品ではなく、すぐに消費される菓子製品であり、どちらもきちんとは包装されていない。
【0027】
文献による手順は複雑で、いくつかの技術的欠点があり、そのうちの一部のみを追加の装置や操作で修正することができる:
-凝乳を65℃~75℃に加熱し、圧搾する。しかし、この温度では、ラクトタンパク質は部分的に変性され、内部に硬質脱水コアが生じ、これは製品の品質を悪化させ、その賞味価値を低下させる。賞味価値は、コアを細断する強力な切断効果カッター装置の適用により部分的に改善されるが、同時にフレッシュチーズの固さを保証するタンパク質の網状構造を破壊し、生じたタンパク質変性を修正しない、
-強力な切断効果カッター装置は、動作中に多くの電気エネルギーを消費するため、このエネルギー量はフレッシュチーズクリームの温度を上昇させる。クリームは、高価で高エネルギーを消費する方法である液体窒素により冷却される、
-手順の欠点により、フレッシュチーズクリームは、固さを保証するタンパク質の網状構造を保有しておらず、したがってフレッシュチーズ成分の乾物含量を35%~50%(重量/体積)の値に上げることにより固さに達することに従う。これは、乳から生産される最終製品の量を減少させる。
【0028】
文献による手順は、デザートコーパスのチョコレートコーティングを含まない。
【0029】
Stepanovaが非特許文献2で記載しているように、ロシアにおいてフレッシュチーズデザートの製造時に乳の凝乳を促進する(precipitate)ための手順が適用されている。中温菌と、ヨーグルト菌の一つであるストレプトコッカス・サーモフィルスとの共生培養により、手順に従った凝乳が起こる。
【0030】
ヨーグルトはこの手順では製造できないため、ヨーグルトチーズとそれに基づくヨーグルトデザートとのどちらも固形粘稠性にはなれない。
【0031】
特許文献7(Gantzer Jean Luis)の発明は、ヨーグルト含有デザートに言及する:食用カップは甘いビスケットで作られており、アイスクリーム、ヨーグルトなどで満たされ、チョコレートでコーティングされている。
【0032】
この製品はヨーグルトデザートに含まれず、その固さは、詰め物(コーパス)ではなく、甘いビスケットカップにより確保される。
【0033】
市場の状況を調べることにより、固形粘稠性を有し、その形状を維持する発酵製品として作られたヨーグルトチーズまたはそれに基づくヨーグルトデザートは、知られていない/市販されていないことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【文献】E 002 213
【文献】ハンガリー特許第19750 A号
【文献】PCT/FR 9500206
【文献】P0600733
【文献】P0600314
【文献】P0400763A
【文献】仏国特許出願公開第2437996 A1号
【非特許文献】
【0035】
【文献】Food Processing Principles and Applications, 18. Dairy - Fermented Products, Second Edition, WILEY Blackwell, pages 411-422 (2014)
【文献】Dairy Industrial Technology Guide, Volume I., page 172 (Saint Petersburg, GIORG, 2000)
【発明の概要】
【0036】
(本発明)
本発明は、レブネタイプの濃厚なヨーグルトと類似しているが、より硬い粘稠性であり、結果としてその形状を維持するヨーグルトチーズは、本発明によるデザート製品のコーパスの決定的な原料として適切であること、すなわち、本発明者らの製造実験によれば、それは30%(重量/体積)以上、好ましくは33%(重量/体積)の乾物含量、および12%(重量/体積)の値を超えない脂肪含量を有するべきであるという認識に基づいている。
【0037】
本発明はまた、従来のフレッシュチーズの製造中、乳清分離を促進するために適用される加熱は、熱感受性中温性乳酸菌培養物の重要な部分を破壊するという認識に基づいている。対照的に、ヨーグルトチーズを製造する本発明による方法において、適用される好熱性ヨーグルト細菌培養物は、同じ目的の加熱の間、その生存能力を保存する。その結果、ヨーグルトチーズを基に作られる発明によるヨーグルトデザートは、生物学的に活性な製品となる。これは、それらに市場の優位性(market edge)を与える。
【0038】
本発明はまた、本発明によるヨーグルトデザートの主成分としてのヨーグルトチーズの製造過程において、調製したヨーグルトの凝乳を切断し、55℃の限界まで加熱した場合、凝乳の内部では、30%~35%(重量/体積)の乾物含量に達するまで圧搾することにより不要な乳清を除去した後に、都合のよい形状維持性の固さを確保するタンパク質網状構造が発達するという認識に基づいている。
【0039】
本発明はまた、凝乳の固さに役立つ働きをする加熱は、実質的に55℃に達するまで実施されるべきであり、それは、本発明者らの経験によれば、この温度限界までが、凝乳中で成長したヨーグルト細菌叢の生存能力を完全に維持することができるためであるという認識に基づいている。
【0040】
本発明はまた、本発明による方法により製造されたチョコレートまたはココアペーストでコーティングされたヨーグルトデザートは、香りがより豊かでより心地よいその風味のために、そのより高い栄養価のためにより人気があり、そしてヨーグルトの味は、フレッシュチーズの味とは反対に、大部分の人々により人気があるため、彼らはそれ、および関連ヨーグルト製品をより高い評価価値をもって好むという認識に基づいている。その結果、それらは従来のフレッシュチーズおよびそれを基に作られたデザートにとって成功したライバルになることができ、さらにはそれらに置き換わることさえできる。これは、消費者群により確認された:全ての参加者は、本発明によるヨーグルトチーズを基に作られたデザートが、従来のフレッシュチーズを基に作られた従来のデザートよりも美味しく且つ香りがより豊かであると感じた。
【0041】
本発明はまた、従来適用されてきたフレッシュチーズの製造方法とは対照的に、本発明の方法による本発明のヨーグルトチーズとヨーグルトデザートとの製造は、一般的な乳よりも濃厚に還元された乳またはより少ない水分含量に濃縮された乳が発酵される原料として適用されるならば、そのより小さい設備およびより小さいエネルギーの必要性のおかげで品質を維持することがより経済的である、という認識に基づいている。この認識は、本発明者らが行った技術的実験と、得られた製品の官能比較とにより確認された。
【0042】
ヨーグルトチーズは、本発明による方法により、以下から製造されている:
i) 0.1重量%の脂肪含量、8%(重量/体積)の無脂肪乾物含量の脱脂乳から、
ii) 0.1重量%の脂肪含量、8%(重量/体積)の無脂肪乾物含量の脱脂乳と、16%(重量/体積)の無脂肪乾物含量を有するように調製された、すなわち、通常の脱脂乳の2倍濃縮された脱脂粉乳との分散混合物から、
iii) 24%(重量/体積)の無脂肪乾物含量を有するように調製された、すなわち、通常の脱脂乳の3倍濃縮された、脱脂粉乳と水との分散混合物から。
【0043】
試験の間、参加者は、通常の脱脂乳で、脱脂乳の2倍または3倍濃縮された還元乳でそれぞれ作られた3種類のヨーグルトチーズ、並びに、上記それぞれを基にして作られ、他の全ての点で同じ特性を有する3種類のコーティングされたヨーグルトデザートを、味見することにより区別することができなかった。
【0044】
本発明の目的は、上記の認識に基づいて、本発明によるチョコレートコーティングデザートのコーパスの決定的な原料として、および同時にデザートの主成分として、固形粘稠性ヨーグルトチーズを適用することにより実現され、したがって、本発明による製品、生細菌叢を有するコーティングされたヨーグルトピースデザートは、最終製品に関して、以下を含む:
- 固形粘稠性であり、生細菌叢を有し、50%(重量/体積)を超える、さらに30%~35%(重量/体積)の乾物含量であり、乳もしくは脱脂乳の、または好ましくは水もしくは脱脂粉乳を用いた限外ろ過で8%~24%(重量/体積)の無脂肪乾物含量に濃縮され、トランス脂肪を含まないバター、クリームもしくは固形植物性脂肪で0%~5%(重量/体積)の脂肪含量に設定された乳もしくは脱脂乳の、分散混合物の低温殺菌により得られるヨーグルトチーズであって、その酸性凝固は、好ましくは凍結乾燥された、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・デルブリッキー・ブルガリカスの細菌株、ならびにその時々の補充的接種発酵を含む好熱性ヨーグルト細菌培養物により、凝乳の凝固は、加熱および生成される乳清の不要な部分の除去による、
- 8%~15%(重量/体積)の砂糖またはその一部/全部の代替となる他の甘味料、
- トランス脂肪を含有しない、0%~15%(重量/体積)のバターおよび/または固形植物性脂肪、好ましくはオメガ-3脂肪酸を含有するマーガリン、
- 0%~5.0%(重量/体積)の脱脂粉乳、
- デザートのコーパス材料中で混合されているか、コーパス内で別個の相を構成している、0%~15%(重量/体積)のジャム、果物ゼリーまたは他の風味材料、
- 0%~0.1%(重量/体積)のレモンまたはバニラのアロマ、
- 1%~2.0%(重量/体積)の増粘剤、抗菌剤および抗酸化剤含有の乳清分離還元補助物質(whey-separation-reducing auxiliary material)、
- コーパス材料の着色を望む場合の、食品着色剤。
上記材料は、均質な塊に混合され、デザートのコーパスを構成し;加えて、製品は、コーパスに均一に塗布されたコーティングの形態で、最終製品に関して、以下を含む:
- 20%~35%(重量/体積)のチョコレートまたはココアコーティングペースト。
製品を、円形、正方形、長方形もしくは他の断面の、棒、立方体または球形に成形し、保護ガスを加えてまたは加えることなく、ホイル内に包装する。
【0045】
上記の成分に加えて、デザートは、承認された防腐剤を含有していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明によるデザートの主成分を構成するヨーグルトチーズを製造するための本発明による可能な方法は、以下の通りである:乳を90℃~95℃の温度で低温殺菌し、その間、その脂肪含量を好ましくは0.1%~1.5%(重量/体積)の値に設定し、それを高圧でホモジナイズし、40℃~45℃、好ましくは42℃の温度に冷却し、チーズタンク/チーズ槽に注ぎ、その中でそれを対応するヨーグルト細菌培養物の量で接種し、この温度でpH値が4.6~4.4に達するまで発酵させ、得られた凝乳を1cm~2cmの辺長を有する立方体に切断し、混合物を55℃の最高温度にまで加熱してタンパク質ネットワークを凝固させ、生菌叢を保存しながら適切な厚さの凝乳になるまで乳清分離(離漿)を増し、ヨーグルト凝乳から乳清を分離し、不要な乳清を凝乳から、所望の、好ましくは33%(重量/体積)の乾物含量になるまで圧搾し、このようにして、生細菌叢を有する固形粘稠性のヨーグルトチーズを得る。
【0047】
ヨーグルトチーズを、ミキサー-ホモジネーター中で、様々なレシピに従った成分と共にホモジナイズし、得られた塊を好ましくは4℃の温度に冷却し、好ましくは圧力が調節されたマルチライン成形機により形状維持デザートコーパスに成形し、それらをチョコレートまたはココアコーティングペーストでコーティングし、その後冷却して包装する。このようにして、本発明によるヨーグルトデザートピース製品が製造される。
【0048】
本発明による方法の別の実施形態として、デザートの主成分を構成するヨーグルトチーズを製造するために、以下から、乳よりもはるかに濃縮された原料が使用される:限外ろ過により濃縮された脱脂乳から、または粉乳で濃縮した脱脂乳もしくは水で調製した脱脂粉乳の分散混合物から;ここで、前記混合物は、好ましくは16%~24%(重量/体積)の無脂肪乾物含量を有する。
【0049】
本方法は、典型的には以下の工程を含む:
a)好ましくは16%~24%(重量/体積)の乾物含量に達するのに必要な脱脂粉乳の量を、50℃の温度に加熱した水/脱脂乳に、好ましくは分散装置により導入し、混合物を連続的に撹拌しながら2時間~3時間さらし、
b)さらした後、混合物を90℃~95℃の温度で低温殺菌し(脂肪の不存在下で、高圧ホモジナイズは不要として)、40℃~45℃の温度に冷却し、チーズタンク/チーズ槽に移し、
c)混合物に好熱性ヨーグルト乳酸菌培養物を接種し、それを好ましくはpH値4.6~4.4に達するまで42℃の温度で発酵させ、得られた凝乳を1cm~2cmの辺長に切断し、生菌叢を保持し、適切な凝乳の固さが得られるまでタンパク質ネットワークを固め、乳清分離を増すために、混合物を55℃の最高温度に加熱し、
d)凝乳-乳清混合物をチーズタンク/チーズ槽から排出し、乳清の大部分をろ過(straining)により分離し、不要な量の乳清を凝乳から、所望の、好ましくは33%(重量/体積)の乾物含量になるまで圧搾し、その結果として、生菌叢を有する固形粘稠性のヨーグルトチーズを得る。
【0050】
技術の状態と相関する、発明の結果としての有益な影響:
1. 発明による食品は、以下の二重要件を満たす初めての、そしてこれまで唯一の生菌叢のヨーグルトデザートピース製品である:
- ヨーグルト細菌の生存可能なコロニー数は、その賞味期限を通して107CFU/g値に達する
- 乳ベースの単純な製品比は70%(重量/体積)に達する
2. 発明によるヨーグルトデザートは、栄養に関して既知のフレッシュチーズデザートよりも価値があり、それは、その生細菌叢が消化管に有益な効果を有するヨーグルト細菌により提供される一方で、既知のフレッシュチーズデザートはそのような効果を持たない中温性細菌培養物を含むためである。
3. 本発明によるヨーグルトデザートの生存可能なコロニー数CFU/gは、その製造のために調製されるヨーグルトの凝乳の生存可能なコロニー数CFU/gの何倍もになる。したがって、本発明によるデザートの栄養生理学的価値は、天然およびギリシャ風ヨーグルトよりもさらに高い。この利点は、凝乳を凝固させることにより形成されるタンパク質ネットワークが、ヨーグルト細菌にとって最適な生存環境を提供するという認識により説明可能である。この理由から、少量のヨーグルト細菌が乳清分離の間になくなり、このために、固形凝乳の生存可能なコロニー数CFU/gが増殖する。本発明者らの経験によれば、33%(重量/体積)の乾物含量のヨーグルトチーズの生存可能なコロニー数CFU/gは、天然ヨーグルトの何倍にもなるが、分離された乳清の生存可能なコロニー数CFU/gは、平均してヨーグルトチーズの生存可能なコロニー数CFU/gのわずか1/10である。
4. 本発明によるヨーグルトデザートは、美味しくて香りが良いと大部分の消費者により考えられているが、これは、ヨーグルト細菌により生成される芳香化合物の中でアルデヒドが優位となり、それが消費者により好まれるためである。対照的に、フレッシュチーズデザートの芳香化合物の中ではジアセチルが優位となり、それは子供の頃からフレッシュチーズを含む食品に慣れている人々によってのみ評価される。
5. 本発明の方法によれば、デザートコーパス塊の調製において、比較的低いエネルギーを消費するミキサー-ホモジナイザーが適用される。それはタンパク質ネットワークをわずかにしか侵害せず、したがってデザートコーパスの形状を維持する固さを促進する。対照的に、フレッシュチーズデザート製造では、強い切断効果と高エネルギー消費のカッターが一般的に使用され、これにより中温性凝乳の加熱時に成長した脱水硬質コアが、ホモジナイズとともに細断される。
【実施例
【0051】
ヨーグルトチーズおよびヨーグルトデザートを製造するための本発明による方法は、本発明の適用性またはそれらに適用される特許の範囲を制限することなく、以下の実施例によって例示される。
【0052】
(実施例1)
生細菌叢を有するヨーグルトチーズの乳からの製造方法
牛乳を、95℃でプレート低温殺菌装置で低温殺菌し、その間、乳の脂肪含量をスキミング機械により1.5%(重量/体積)になるように設定し、それをホモジナイザーでホモジナイズし、ミキサーを備えた加熱可能/冷却可能なチーズタンク/チーズ槽に42℃の温度でポンプで注入し、標準化された量に相当するYC-380型のヨーグルト細菌培養物の量で接種し、この温度で、4.6~4.4のpH値に達するまで凝乳する。タンク/槽のミキサーを糸状の切削器具に置き換え、凝乳を1cm~2cmの辺長の立方体に切断し、生菌叢を保存するためにその温度が55℃を超えないように注意しながら、適切な硬度の凝乳に達するまで穏やかに撹拌しながら混合物を加熱する。乳清分離の強度が減少した後、乳清のより大部分を、ろ過バスケットを通してタンク/槽から除去する。タンク/槽内に残っている凝乳/乳清混合物を、好ましくはBUDAGEPタイプの、好ましくは有孔底部を有するカート内に排出し、好ましくは凝乳中の乾物含量が30%~35%(重量/体積)に達するまで、カートの空気圧プレス構造を使用して不要な乳清を凝乳から除去する。
【0053】
これにより、生細菌叢を有する固形ヨーグルトチーズを作り、好ましくは4℃の温度に冷却し、使用するまで冷蔵保存する。
【0054】
(実施例2)
16%の無脂肪乾物含量を有するように調製された粉乳と水との混合物からの、生細菌叢を有するヨーグルトチーズの製造方法
50℃の温度の水を、ミキサーを備えた予備タンクに注ぎ入れる。粉末混合タンクおよびそれに接続されたせん断カッターポンプを含む分散装置を用いて、好ましくはBUDAGEPタイプの循環パイプラインにより、16%(重量/体積)の乾物含量を達成するのに必要な脱脂粉乳の量、ならびに好ましくは3%(重量/体積)の脂肪含量を有することが要求されるバターまたは固体植物性脂肪の量を、予備タンク内の水に加え、混合物を一定の循環で2時間分散させる。
【0055】
このように調製された分散混合物は、実際に1.5%(重量/体積)の脂肪含量の乳よりも2倍濃縮された還元無脂肪乳であり、90℃~95℃(90÷95℃)の温度でプレート低温殺菌装置により低温殺菌し、高圧ホモジナイザー装置でホモジナイズし、42℃の温度で、好ましくはBUDAGEPタイプの円錐形の底部を有するように設計された凝乳(crud)分離を容易にする加熱可能/冷却可能なチーズ調製タンクにポンプで通し、それを標準化された量に相当するYC-380型のヨーグルト細菌培養物の量で接種し、4.6~4.4のpH値に達するまでこの温度で凝固する。得られた凝乳を糸状のカッター装置により1cm~2cmの辺長の立方体に切断し、生菌叢を保存するためにその温度が55℃を超えないように注意しながら、適切な硬度の凝乳に達するまで穏やかに撹拌しながら混合物を加熱する。乳清分離の強度が減少した後、凝乳/乳清混合物を、好ましくはBUDAGEPタイプの有孔底部を有するカート内に排出し、好ましくは凝乳中の乾物含量が30%~35%(重量/体積)に達するまで、カートの空気圧プレス構造を使用して不要な乳清を凝乳から除去する。
【0056】
これにより、最適組成の、脂肪を含有する、本発明のヨーグルトデザートのコーパスの材料を製造するのに必要な生細菌叢を有する固形ヨーグルトチーズを作り、それを好ましくは4℃の温度に冷却し、使用するまで冷蔵保存する。
【0057】
(実施例3)
生細菌叢を有するプレーンチョコレートコーティングヨーグルトデザートバーピース製品の製造方法
生細菌叢を有するヨーグルトチーズを、上記の実施例1または2に記載の方法により、好ましくは33%(重量/体積)の乾物含量に製造し、4℃の温度に冷却し、以下のレシピに従って測定した成分と共に、好ましくはBUDAGEPタイプのミキサー-ホモジナイザーにより、準均質の白色プレーンヨーグルトチーズに加工する:
- 74kgのヨーグルトチーズ、
- 10kgのバター(80%の脂肪含量)、
- 16kgのテンサイ糖、
- 100gのAB 352型レモン粉末アロマ、
- 2kgのPROMIKOLL型添加剤。
【0058】
このようにして得られ、デザートコーパスの原料としての役割を果たす塊を温度4℃に冷却し、好ましくはBUDAGEPタイプの、圧力が調整されたマルチライン成形機により、直径18mm、長さ50mm~80mmのバーに成形し、コーパスの全表面を、完成したデザート製品に関して30%(重量/体積)に相当するチョコレートの量で浸漬機においてコーティングする。このようにして作られたデザートを、冷却トンネル内で10℃の温度にまで穏やかに冷却し、その後、好ましくは1つずつ、好ましくはBUDAGEP LINEPACKタイプの、自動供給ユニットを備えた「フローパック」包装機により、保護ガスを加えてまたは加えることなく、印刷により製造されたBOPPホイルに包装し、マルチパックボックスに詰め、出荷まで4℃の温度で冷蔵保存する。
【0059】
(実施例4)
生細菌叢を有する、チョコレートコーティングされ、風味付けされたヨーグルトデザートバーピース製品の製造方法
デザート製品を、デザートコーパスの材料が、着色され、風味付けされたヨーグルトチーズ塊であるという相違点を除いて、実施例3に記載の方法により製造し、以下のレシピに従って製造する:
- 72kgのヨーグルトチーズ、
- 10kgの植物性脂肪(70%の脂肪含量)、
- 12kgのテンサイ糖、
- 4kgの果物ゼリー(サワーチェリー、カラントアプリコット、ストロベリー、バナナまたはその他)、適量の着色剤を含む、
- 100gのAB-678型バニラ粉末アロマ、
- 2kgのPROMIKOLL型添加剤。
【0060】
(実施例5)
生細菌叢を有する、ココアペーストコーティングされ、詰め物をしたヨーグルトデザートバーピース製品の製造方法
生細菌叢を有するヨーグルトチーズを、実施例1または2に記載の方法により、好ましくは33%(重量/体積)の乾物含量に製造し、4℃の温度に冷却し、好ましくはBUDAGEPタイプの、好ましくはミキサー-ホモジナイザーにより、以下のレシピに従って計量した材料
と共に、準均質のプレーンヨーグルトチーズ塊に加工する:
- 76kgのヨーグルトチーズ、
- 13kgのオメガ3-脂肪含量のマーガリン(50%脂肪含量)、
- 9kgのカンショ糖、
- 100gのレモン粉末アロマ、ブランドAB 352、
- 2kgのPROMIKOLL FC-10 ABS 02型添加剤。
【0061】
このようにして得られ、デザートコーパスの原料としての役割を果たす塊を温度4℃に冷却し、好ましくはBUDAGEPタイプの、圧力調整を備えるマルチライン成形機により、直径18mm、長さ50mm~80mmのバーに成形し、成形機のコーパス形状圧力管の軸線に位置する注入管を通して、デザートコーパスの軸線に位置するジャム、果肉、カラメル、甘味付けした栗のピューレ、ナッツまたはその他のバーが、完成したデザート製品に関して4%(重量/体積)の量で製造されるようにする。コーパスの全表面を、完成したデザート製品に関して30%(重量/体積)のココアペーストで浸漬機においてコーティングする。このようにして作られたデザートを、冷却トンネル内で6℃の温度にまで冷却し、その後、好ましくは1つずつまたは2つずつ、好ましくはBUDAGEP LINEPACKタイプの、自動供給ユニットを備えた「フローパック」包装機により、保護ガスを加えてまたは加えることなく、印刷により製造されたBOPPホイルに包装し、マルチパックボックスに詰め、出荷まで4℃の温度で冷蔵保存する。
【0062】
(実施例6)
生細菌叢を有する、ココア(coca)ペーストコーティングされた、層状の白色ヨーグルトデザートバーの製造方法
幅35mm、高さ18mmおよび長さ80mmの直方体(バー)を、デザートコーパスの原料としての役割を果たす白色プレーンヨーグルトチーズ塊で、好ましくはBUDAGEPタイプのマルチライン成形機により成型する相違点を除いて、デザート製品を実施例5に記載の方法により製造し、成形機のコーパス成形圧力管の断面の長手方向軸線に沿って位置する平坦な出口を有する注入管を通して、ジャム、果肉、甘味付けした栗のピューレ、ナッツまたはその他のクリーム製品を、コーパスの一端から反対側の端まで、デザートコーパス内で別個の相を構成する2mm厚の層として導入し、デザートコーパスの表面を、完成したデザート製品の20%(重量/体積)に相当する量のココアペーストによりコーティングする。
【0063】
(実施例7)
生細菌叢を有する、スポンジケーキを用いたココアペーストコーティングヨーグルトバー製品の製造方法
生細菌叢を有するヨーグルトチーズを、実施例1または2に記載の方法により、好ましくは33%(重量/体積)の乾物含量に製造し、4℃の温度に冷却し、その後、好ましくはBUDAGEPタイプのミキサー-ホモジナイザーにより、以下のレシピに従って計量した材料と共に、準均質の白色プレーンヨーグルトチーズ塊に加工する:
- 74kgのヨーグルトチーズ、
- 10kgのバター(80%の脂肪含量)、
- 14kgのテンサイ糖、
- 100gのAB 352型レモン粉末アロマ、
- 2kgのPROMIKOLL型添加剤。
【0064】
幅35mmおよび厚さ4mmのスポンジケーキ一片を別個の手順で製造し、別個の手順で製造された白色の、プレーンまたは着色され、味付けされたヨーグルトチーズ塊を、スポンジケーキ一片の全幅に、高さ12mmの層として、連続供給により、好ましくはBUDAGEPタイプのマルチライン成形機により塗布し、形成された連続直方体を長さ80mmの個々の品(pieces)に切断し、前記完成品(pieces)はデザートのコーパスを構成する。完成したデザート製品の20%(重量/体積)に相当する量のココアコーティングを浸漬機で塗布することによりコーパスの全表面を覆い、このようにして作られたデザートを、冷却トンネル内で6℃の温度にまで冷却し、その後、1つずつまたは2つずつ、好ましくはBUDAGEP LINEPACKタイプの、自動供給機を備えた「フローパック」包装機により、保護ガスを加えてまたは加えることなく、印刷により製造されたBOPPホイルに包装し、マルチパックボックスに詰め、出荷まで4℃の温度で冷蔵保存する。