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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220106BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/74
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018003964
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019125635
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 考史
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-076691(JP,A)
【文献】特開2017-228649(JP,A)
【文献】特開平8-125001(JP,A)
【文献】特開2017-152537(JP,A)
【文献】特開平11-191535(JP,A)
【文献】特開2017-228361(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188189(WO,A1)
【文献】特開2016-139503(JP,A)
【文献】特開2014-75525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略垂直な略平面状の第1の表面を有するセラミックス部材と、
前記セラミックス部材の内部に配置された複数のヒータ電極であって、それぞれ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されると共に、前記第1の方向視で前記ヒータライン部より幅の大きいヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、
前記セラミックス部材の内部に配置され、導電領域を含むドライバ電極と、
給電端子と、
前記給電端子と前記ドライバ電極の前記導電領域とを電気的に接続する給電側ビアと、
各前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と前記ドライバ電極の前記導電領域とを電気的に接続するヒータ側ビアと、
を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の中心点を通り、かつ、前記ヒータパッド部と前記ヒータライン部との接続部分からの前記ヒータライン部の延伸方向に平行な仮想直線を第1の仮想直線とし、前記中心点を通ると共に前記第1の仮想直線とのなす角が45度である2つの仮想直線をそれぞれ第2および第3の仮想直線としたとき、前記給電端子は、前記第2および第3の仮想直線により区切られた4つの領域の内、前記中心点を挟んで前記接続部分に対向する第1の領域内に位置することを特徴とする、保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記給電端子は、前記第1の仮想直線上に位置することを特徴とする、保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記第1の領域を前記第1の仮想直線によって第1および第2の小領域に分割したとき、前記給電端子は、前記第1および第2の小領域の内、前記第1の仮想直線に対して、前記接続部分から延伸した前記ヒータライン部が前記第1の仮想直線から離間する方向とは反対側の方向に位置する前記小領域内に位置することを特徴とする、保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記第1の仮想直線における前記給電端子と前記ヒータパッド部との間の部分は、前記ヒータライン部と重なっており、前記ヒータライン部における前記第1の仮想直線と重なっている部分は、前記ヒータライン部における前記第1の仮想直線と重なっていない少なくとも一部分と比較して、幅が大きいことを特徴とする、保持装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記導電領域は、前記ヒータ側ビアを介して、複数の前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と接続されており、前記第1の方向視で、一の前記ヒータパッド部の中心点と他の前記ヒータパッド部の中心点とを結ぶ仮想線分は、前記導電領域以外の領域を通ることを特徴とする、保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略垂直な略平面状の表面(以下、「吸着面」という)を有するセラミックス部材と、セラミックス部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、例えば、セラミックス部材の内部に複数のヒータ電極が設けられる。各ヒータ電極に電圧が印加されると、各ヒータ電極が発熱することによってセラミックス部材が加熱され、これにより、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が実現される。
【0004】
各ヒータ電極は、線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、ヒータライン部の各端部に接続されたヒータパッド部とを有する(例えば、特許文献1参照)。また、各ヒータ電極への給電のため、静電チャックに、導電領域を有するドライバ電極が設けられることがある(例えば、特許文献2参照)。ドライバ電極の導電領域は、給電側ビアを介して給電端子と電気的に接続されると共に、ヒータ側ビアを介して各ヒータ電極のヒータパッド部と電気的に接続される。このような構成では、各ヒータ電極のヒータパッド部は、ヒータ側ビアとドライバ電極の導電領域と給電側ビアと給電端子とを介して電源に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-139503号公報
【文献】特開2015-018704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒータ電極において、上記第1の方向視でのヒータパッド部の幅は、ヒータライン部の幅より大きいため、ヒータパッド部での発熱量は、ヒータライン部での発熱量と比較してごく僅かである。そのため、従来の静電チャックでは、セラミックス部材の吸着面の内、第1の方向視でヒータパッド部に重なる領域や、ヒータパッド部に対してヒータライン部の延伸方向とは反対側の領域に重なる領域は、低温の温度特異点となりやすい。従って、従来の静電チャックでは、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハの温度分布の制御性)の点で向上の余地がある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、セラミックス部材を備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略垂直な略平面状の第1の表面を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に配置された複数のヒータ電極であって、それぞれ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されると共に、前記第1の方向視で前記ヒータライン部より幅の大きいヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、前記セラミックス部材の内部に配置され、導電領域を含むドライバ電極と、給電端子と、前記給電端子と前記ドライバ電極の前記導電領域とを電気的に接続する給電側ビアと、各前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と前記ドライバ電極の前記導電領域とを電気的に接続するヒータ側ビアと、を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記第1の方向視で、前記ヒータパッド部の中心点を通り、かつ、前記ヒータパッド部と前記ヒータライン部との接続部分からの前記ヒータライン部の延伸方向に平行な仮想直線を第1の仮想直線とし、前記中心点を通ると共に前記第1の仮想直線とのなす角が45度である2つの仮想直線をそれぞれ第2および第3の仮想直線としたとき、前記給電端子は、前記第2および第3の仮想直線により区切られた4つの領域の内、前記中心点を挟んで前記接続部分に対向する第1の領域内に位置する。ヒータ電極において、第1の方向視で、ヒータパッド部はヒータライン部より幅が大きいため、ヒータパッド部での発熱量はヒータライン部での発熱量と比較してごく僅かである。そのため、セラミックス部材の第1の表面の内、第1の方向視で、ヒータパッド部に重なる領域や、ヒータパッド部に対してヒータライン部の延伸方向とは反対側の領域に重なる領域(以下、「特定領域」という)は、低温の温度特異点となりやすい。セラミックス部材の第1の表面に低温の温度特異点が発生すると、第1の表面の温度分布の制御性が低下し、ひいては、保持装置に保持された対象物の温度分布の制御性が低下する。しかしながら、本保持装置では、給電端子が、第2の仮想直線および第3の仮想直線により区切られた4つの領域の内、ヒータパッド部の中心点を挟んで、ヒータパッド部とヒータライン部との接続部分に対向する第1の領域内に位置する。第1の領域は、上述した低温の温度特異点となりやすい特定領域の大部分を含むような領域である。そのため、ドライバ電極の導電領域における、第1の方向視でヒータパッド部と第1の領域に位置する給電端子とを結ぶ直線上付近を電流が流れることによる発熱により、上述した特定領域が低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、セラミックス部材の第1の表面に低温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、対象物の温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記給電端子は、前記第1の仮想直線上に位置する構成としてもよい。上述した特定領域の内、第1の仮想直線上の位置では、特に低温の温度特異点となりやすい。本保持装置では、第1の方向視で、給電端子が第1の仮想直線上に位置している。そのため、本保持装置によれば、ドライバ電極の導電領域における、第1の方向視でヒータパッド部と第1の仮想直線上に位置する給電端子とを結ぶ直線上付近を電流が流れることによる発熱により、特定領域が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、対象物の温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記第1の領域を前記第1の仮想直線によって第1および第2の小領域に分割したとき、前記給電端子は、前記第1および第2の小領域の内、前記第1の仮想直線に対して、前記接続部分から延伸した前記ヒータライン部が前記第1の仮想直線から離間する方向とは反対側の方向に位置する前記小領域内に位置する構成としてもよい。上述した特定領域の内、ヒータパッド部とヒータライン部との接続部分から延伸したヒータライン部が第1の仮想直線から離間する方向とは反対側の方向に位置する小領域では、特に低温の温度特異点となりやすい。本保持装置では、第1の方向視で、給電端子がそのような特に低温の温度特異点となりやすい小領域内に位置しているため、ドライバ電極の導電領域における、第1の方向視でヒータパッド部と該小領域内に位置する給電端子とを結ぶ直線上付近を電流が流れることによる発熱により、特定領域が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、対象物の温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記第1の仮想直線における前記給電端子と前記ヒータパッド部との間の部分は、前記ヒータライン部と重なっており、前記ヒータライン部における前記第1の仮想直線と重なっている部分は、前記ヒータライン部における前記第1の仮想直線と重なっていない少なくとも一部分と比較して、幅が大きい構成としてもよい。ヒータライン部における第1の仮想直線と重なっている部分(以下、「重複部」という)の位置は、重複部からの発熱に加えて、ドライバ電極の導電領域における、第1の方向視でヒータパッド部と給電端子とを結ぶ直線上付近を電流が流れることによる発熱があるため、高温の温度特異点となりやすい。本保持装置では、ヒータライン部における重複部は、ヒータライン部における第1の仮想直線と重なっていない少なくとも一部分と比較して、幅が大きい。そのため、ヒータライン部における重複部の発熱量は、ヒータライン部における他の部分の発熱量より小さくなる。従って、本保持装置によれば、セラミックス部材の第1の表面に高温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、対象物の温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0014】
(5)上記保持装置において、前記導電領域は、前記ヒータ側ビアを介して、複数の前記ヒータ電極の前記ヒータパッド部と接続されており、前記第1の方向視で、一の前記ヒータパッド部の中心点と他の前記ヒータパッド部の中心点とを結ぶ仮想線分は、前記導電領域以外の領域を通る構成としてもよい。本保持装置では、一のヒータパッド部の中心点と他のヒータパッド部の中心点とを結ぶ仮想線分が導電領域以外の領域を通るように構成されているため、ドライバ電極の導電領域における、第1の方向視で各ヒータパッド部と給電端子との間を流れる電流の経路を、各ヒータパッド部と給電端子とを結ぶ直線に近い経路にすることができる。従って、本保持装置によれば、ドライバ電極の導電領域における、第1の方向視で各ヒータパッド部と給電端子との間を流れる電流による発熱により、上述した特定領域が低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、対象物の温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、CVDヒータ等のヒータ装置、真空チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】第1実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。
図4】1つのセグメントSEに配置された1つのヒータ電極500のXY断面構成を模式的に示す説明図である。
図5】本実施形態の静電チャック100における給電端子とヒータパッド部との位置関係を示す説明図である。
図6】本実施形態の静電チャック100における給電端子とヒータパッド部との位置関係を示す説明図である。
図7】第2実施形態の静電チャック100における給電端子とヒータパッド部との位置関係を示す説明図である。
図8】第3実施形態の静電チャック100におけるドライバ電極60の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、第1実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0018】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
【0019】
セラミックス部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」といい、図3に示すように、面方向の内、吸着面S1の中心点Pxを中心とする円周方向を「円周方向CD」といい、面方向の内、円周方向CDに直交する方向を「径方向RD」という。
【0020】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0021】
セラミックス部材10の内部には、また、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)のためのヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のための構成とが配置されている。これらの構成については、後に詳述する。なお、このような構成のセラミックス部材10は、例えば、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの充填および印刷等の加工を行い、これらのセラミックスグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。
【0022】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10と同径の、または、セラミックス部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0023】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着層30によって、セラミックス部材10に接合されている。接着層30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着層30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0024】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着層30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0025】
A-2.ヒータ電極層50等の構成:
次に、ヒータ電極層50の構成およびヒータ電極層50への給電のための構成について詳述する。
【0026】
上述したように、静電チャック100は、ヒータ電極層50を備える(図2参照)。ヒータ電極層50は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。なお、本実施形態では、ヒータ電極層50は、チャック電極40より下側に配置されている。
【0027】
ヒータ電極層50は、複数のヒータ電極500(図4参照)を含んでいる。ここで、図3に示すように、本実施形態では、セラミックス部材10に複数の仮想的な領域であるセグメントSEが設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、セラミックス部材10が、吸着面S1の中心点Pxを中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点Pxを含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。複数のヒータ電極500のそれぞれは、セラミックス部材10に設定された複数のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに、1つのヒータ電極500が配置されている。
【0028】
図4は、1つのセグメントSEに配置された1つのヒータ電極500のXY断面構成を模式的に示す説明図である。図4に示すように、ヒータ電極500は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部510と、ヒータライン部510の両端部に接続されるヒータパッド部(第1のヒータパッド部521および第2のヒータパッド部522)とを有する。以下では、第1のヒータパッド部521および第2のヒータパッド部522を、まとめてヒータパッド部521,522ともいう。Z軸方向視で、ヒータパッド部521,522の幅は、ヒータライン部510の幅より大きい。他のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の構成も同様である。
【0029】
また、図2に示すように、静電チャック100は、ヒータ電極層50を構成する各ヒータ電極500への給電のための構成を備えている。具体的には、静電チャック100は、ドライバ電極60を備える。ドライバ電極60は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。ドライバ電極60は、面方向に平行な所定の領域を有するパターンである複数の導電領域61,62を有する。なお、本実施形態では、ドライバ電極60は、ヒータ電極層50より下側に配置されている。なお、ドライバ電極60は、下記の(1)および(2)の少なくとも一方を満たすという点で、ヒータ電極500と相違する。
(1)ドライバ電極60の断面積は、ヒータ電極500の断面積の10倍以上である。
(2)面方向において、ドライバ電極60は1つのセグメントSEより大きな面積を有する。
【0030】
ヒータ電極層50を構成する複数のヒータ電極500の全部または一部は、ドライバ電極60における一対の導電領域61,62に対して、並列に接続されている。具体的には、図2および図4に示すように、各ヒータ電極500の第1のヒータパッド部521は、導電性材料により形成された第1のヒータ側ビア721を介して、ドライバ電極60における一対の導電領域61,62の一方である第1の導電領域61に導通しており、各ヒータ電極500の第2のヒータパッド部522は、導電性材料により形成された第2のヒータ側ビア722を介して、ドライバ電極60における一対の導電領域61,62の他方である第2の導電領域62に導通している。以下では、第1のヒータ側ビア721および第2のヒータ側ビア722を、まとめてヒータ側ビア721,722ともいう。
【0031】
また、図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4からセラミックス部材10の内部に至る一対の端子用孔110,120が形成されている。各端子用孔110,120は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔22と、接着層30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10の下面S2側に形成された凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。
【0032】
一対の端子用孔110,120の一方である第1の端子用孔110には、柱状の第1の給電端子741が収容されている。また、第1の端子用孔110を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、第1の電極パッド731が設けられている。第1の給電端子741は、例えばろう付け等により第1の電極パッド731に接合されている。また、第1の電極パッド731は、第1の給電側ビア711を介して、ドライバ電極60における第1の導電領域61に導通している。なお、第1の給電端子741、第1の電極パッド731、第1の給電側ビア711は、すべて、導電性材料により形成されている。同様に、一対の端子用孔110,120の他方である第2の端子用孔120には、柱状の第2の給電端子742が収容されている。また、第2の端子用孔120を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、第2の電極パッド732が設けられている。第2の給電端子742は、例えばろう付け等により第2の電極パッド732に接合されている。また、第2の電極パッド732は、第2の給電側ビア712を介して、ドライバ電極60における第2の導電領域62に導通している。
【0033】
なお、以下では、第1の給電端子741および第2の給電端子742を、まとめて給電端子741,742ともいい、第1の電極パッド731および第2の電極パッド732を、まとめて電極パッド731,732ともいい、第1の給電側ビア711および第2の給電側ビア712を、まとめて給電側ビア711,712ともいう。給電端子741,742、電極パッド731,732、および、給電側ビア711,712は、すべて、導電性材料により形成されている。
【0034】
一対の給電端子741,742は、電源(図示せず)に接続されている。電源からの電圧は、一対の給電端子741,742、一対の電極パッド731,732、および、一対の給電側ビア711,712を介してドライバ電極60の一対の導電領域61,62に供給され、さらに、各ヒータ電極500について設けられた一対のヒータ側ビア721,722を介してヒータ電極500に印加される。これにより、各ヒータ電極500が発熱し、ヒータ電極500が配置されたセグメントSEが加熱される。セラミックス部材10の各セグメントSEに配置されたヒータ電極500への印加電圧を個別に制御することにより、各セグメントSEの温度を個別に制御することができる。これにより、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。
【0035】
A-3.給電端子とヒータパッド部との位置関係:
図5および図6は、本実施形態の静電チャック100における給電端子とヒータパッド部との位置関係を示す説明図である。図5には、1つのヒータ電極500における第1のヒータパッド部521周辺の一部分のXY断面構成が示されていると共に、ドライバ電極60の第1の導電領域61を介して該第1のヒータパッド部521と電気的に接続される第1の給電端子741の位置が破線で示されている。また、図6には、図5に示された部分のXZ断面構成が示されている。
【0036】
図5に示すように、以下の説明では、Z軸方向視で、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通り、かつ、第1のヒータパッド部521とヒータライン部510との接続部分CPからのヒータライン部510の延伸方向(本実施形態では、おおよそX軸正方向)に平行な仮想直線を、第1の仮想直線VL1という。また、第1のヒータパッド部521の中心点P0を通ると共に、第1の仮想直線VL1とのなす角が45度である2つの仮想直線を、それぞれ第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3という。
【0037】
なお、第1のヒータパッド部521の中心点P0が一見して明らかではない場合には、第1のヒータパッド部521の外周線に近似する仮想円VCを特定し、仮想円VCの中心点を第1のヒータパッド部521の中心点P0として特定する。また、第1のヒータパッド部521とヒータライン部510との接続部分CPからのヒータライン部510の延伸方向が一見して明らかではない場合には、上記仮想円VCと第1のヒータパッド部521の外周線との2つの交点P1,P2を特定し、2つの交点P1,P2を結ぶ仮想線分の中点P3を特定し、第1のヒータパッド部521の中心点P0から中点P3に向かう方向をヒータライン部510の延伸方向として特定する。
【0038】
本実施形態では、Z軸方向視で、第1の給電端子741は、第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3により区切られた4つの領域の内、第1のヒータパッド部521の中心点P0を挟んで、第1のヒータパッド部521とヒータライン部510との接続部分CPに対向する第1の領域R1内に位置している。なお、第1の給電端子741が、ある領域内に位置するとは、第1の給電端子741の中心点P10が、その領域内に位置することを意味する。
【0039】
また、本実施形態では、Z軸方向視で、第1の給電端子741は、第1の仮想直線VL1上に位置している。なお、第1の給電端子741が、ある仮想直線上に位置するとは、第1の給電端子741の少なくとも一部分が、その仮想直線に重なることを意味する。
【0040】
また、本実施形態では、Z軸方向視で、上述した第1の領域R1を、第1の仮想直線VL1によって第1の小領域R11および第2の小領域R12に分割したとき、第1の給電端子741は、第1の小領域R11および第2の小領域R12の内、第1の仮想直線VL1に対して、第1のヒータパッド部521とヒータライン部510との接続部分CPから延伸したヒータライン部510が第1の仮想直線VL1から離間する方向(本実施形態ではY軸正方向)とは反対側の方向(同Y軸負方向)に位置する小領域(すなわち、図5の例では第2の小領域R12)内に位置している。
【0041】
なお、ここでは1つのヒータ電極500の第1のヒータパッド部521について、給電端子との位置関係を説明したが、本実施形態では、各ヒータ電極500の第1のヒータパッド部521および第2のヒータパッド部522と給電端子との位置関係が、同様の位置関係となっている。
【0042】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略垂直な略平面状の吸着面S1を有するセラミックス部材10を備え、セラミックス部材10の吸着面S1上に対象物(例えばウェハW)を保持する保持装置である。静電チャック100は、セラミックス部材10の内部に配置された複数のヒータ電極500を備える。各ヒータ電極500は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部510と、ヒータライン部510の端部に接続されると共に、Z軸方向視でヒータライン部510より幅の大きいヒータパッド部521,522とを有する。また、静電チャック100は、セラミックス部材10の内部に配置され、導電領域61,62を含むドライバ電極60と、給電端子741,742と、給電端子741,742とドライバ電極60の導電領域61,62とを電気的に接続する給電側ビア711,712と、各ヒータ電極500のヒータパッド部521,522とドライバ電極60の導電領域61,62とを電気的に接続するヒータ側ビア721,722とを備える。また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、ヒータパッド部521,522の中心点P0を通り、かつ、ヒータパッド部521,522とヒータライン部510との接続部分CPからのヒータライン部510の延伸方向に平行な仮想直線を第1の仮想直線VL1とし、上記中心点P0を通ると共に第1の仮想直線VL1とのなす角が45度である2つの仮想直線をそれぞれ第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3としたとき、給電端子741,742は、第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3により区切られた4つの領域の内、上記中心点P0を挟んで上記接続部分CPに対向する第1の領域R1内に位置する。本実施形態の静電チャック100は、このような構成を有しているため、以下に説明するように、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0043】
各ヒータ電極500において、Z軸方向視で、ヒータパッド部521,522は、ヒータライン部510より幅が大きいため、ヒータパッド部521,522での発熱量は、ヒータライン部510での発熱量と比較してごく僅かである。そのため、セラミックス部材10の吸着面S1の内、Z軸方向視で、ヒータパッド部521,522に重なる領域や、ヒータパッド部521,522に対してヒータライン部510の延伸方向とは反対側の領域に重なる領域(以下、「特定領域Rx」という)は、低温の温度特異点となりやすい。セラミックス部材10の吸着面S1に低温の温度特異点が発生すると、吸着面S1の温度分布の制御性が低下し、ひいては、ウェハWの温度分布の制御性が低下する。
【0044】
しかしながら、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、給電端子741,742が、第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3により区切られた4つの領域の内、ヒータパッド部521,522の中心点P0を挟んで、ヒータパッド部521,522とヒータライン部510との接続部分CPに対向する第1の領域R1内に位置する(図5参照)。第1の領域R1は、上述した低温の温度特異点となりやすい特定領域Rxの大部分を含むような領域である。そのため、ドライバ電極60の導電領域61,62における、Z軸方向視でヒータパッド部521,522と、第1の領域R1に位置する給電端子741,742とを結ぶ直線上付近を電流I1(図5および図6参照)が流れることによる発熱により、上述した特定領域Rxが低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1に低温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。なお、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が高いとは、吸着面S1全体の温度分布が均一に近いことと、セグメントSE毎に吸着面S1の温度分布が均一に近いこととの少なくとも一方の意味を含む。
【0045】
また、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、給電端子741,742は、第1の仮想直線VL1上に位置している。上述した特定領域Rxの内、第1の仮想直線VL1上の位置では、特に低温の温度特異点となりやすい。本実施形態の静電チャック100によれば、ドライバ電極60の導電領域61,62における、Z軸方向視でヒータパッド部521,522と、第1の仮想直線VL1上に位置する給電端子741,742とを結ぶ直線上付近を電流I1が流れることによる発熱により、特定領域Rxが低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0046】
また、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、上述した第1の領域R1を第1の仮想直線VL1によって第1の小領域R11および第2の小領域R12に分割したとき、給電端子741,742は、第1の小領域R11および第2の小領域R12の内、第1の仮想直線VL1に対して、ヒータパッド部521,522とヒータライン部510との接続部分CPから延伸したヒータライン部510が第1の仮想直線VL1から離間する方向とは反対側の方向に位置する小領域(第2の小領域R12)内に位置している。上述した特定領域Rxの内、接続部分CPから延伸したヒータライン部510が第1の仮想直線VL1から離間する方向とは反対側の方向に位置する小領域(第2の小領域R12)では、特に低温の温度特異点となりやすい。本実施形態の静電チャック100によれば、ドライバ電極60の導電領域61,62における、Z軸方向視でヒータパッド部521,522と、第2の小領域R12内に位置する給電端子741,742とを結ぶ直線上付近を電流I1が流れることによる発熱により、特定領域Rxが低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0047】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の静電チャック100における給電端子とヒータパッド部との位置関係を示す説明図である。以下では、第2実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0048】
図7に示すように、第2実施形態の静電チャック100は、第1実施形態の静電チャック100と比較して、ヒータ電極500のヒータライン部510の構成が異なっている。具体的には、第2実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、第1の仮想直線VL1における第1の給電端子741と第1のヒータパッド部521との間の部分が、ヒータライン部510と重なっており、ヒータライン部510における第1の仮想直線VL1と重なっている部分(以下、「重複部510a」という)は、ヒータライン部510における第1の仮想直線VL1と重なっていない少なくとも一部分と比較して、幅が大きい。なお、重複部510aは、第1のヒータパッド部521と共通のヒータ電極500を構成するヒータライン部510の一部分である必要はなく、異なるヒータ電極500を構成するヒータライン部510であってもよい。
【0049】
なお、ここでは1つのヒータ電極500の第1のヒータパッド部521側について、ヒータライン部510の構成を説明したが、本実施形態では、各ヒータ電極500の第1のヒータパッド部521側および第2のヒータパッド部522側の両方について、ヒータライン部510が同様の構成となっている。
【0050】
ヒータライン部510の重複部510aの位置は、重複部510aからの発熱に加えて、ドライバ電極60の第1の導電領域61における、Z軸方向視で第1のヒータパッド部521と第1の給電端子741とを結ぶ直線上付近を電流I1が流れることによる発熱があるため、高温の温度特異点となりやすい。第2実施形態の静電チャック100では、ヒータライン部510における第1の仮想直線VL1と重なっている重複部510aは、ヒータライン部510における第1の仮想直線VL1と重なっていない少なくとも一部分と比較して径が大きい。そのため、ヒータライン部510における重複部510aの発熱量は、ヒータライン部510における他の部分の発熱量より小さくなる。従って、第2実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1に高温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0051】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態の静電チャック100におけるドライバ電極60の構成を示す説明図である。以下では、第3実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0052】
図8に示すように、第3実施形態の静電チャック100は、第1実施形態の静電チャック100と比較して、ドライバ電極60の構成が異なっている。具体的には、第3実施形態の静電チャック100では、ドライバ電極60の第1の導電領域61は、第1のヒータ側ビア721(図2参照)を介して、複数のヒータ電極500(ヒータ電極500A,500B,500C)の第1のヒータパッド部521(第1のヒータパッド部521A,521B,521C)と接続されている。
【0053】
また、第3実施形態の静電チャック100では、ドライバ電極60の導電領域61の形状が、Z軸方向視で、一のヒータ電極500の第1のヒータパッド部521に重なる領域と他のヒータ電極500の第1のヒータパッド部521に重なる領域との間に、切り欠きのある形状となっている。すなわち、Z軸方向視で、一のヒータ電極500の第1のヒータパッド部521の中心点と他のヒータ電極500の第1のヒータパッド部521の中心点とを結ぶ仮想線分VLS1,VLS2は、第1の導電領域61以外の領域を通る。
【0054】
なお、ここではドライバ電極60の1つの導電領域61の構成を説明したが、本実施形態では、ドライバ電極60の各導電領域が同様の構成となっている。
【0055】
このように、第3実施形態の静電チャック100では、一のヒータ電極500のヒータパッド部521,522の中心点と他のヒータ電極500のヒータパッド部521,522の中心点とを結ぶ仮想線分VLS1,VLS2が導電領域61,62以外の領域を通るように構成されているため、ドライバ電極60の導電領域61,62における、Z軸方向視で各ヒータパッド部521,522と給電端子741,742との間を流れる電流I1の経路を、各ヒータパッド部521,522と給電端子741,742とを結ぶ直線に近い経路にすることができる。従って、第3実施形態の静電チャック100によれば、ドライバ電極60の導電領域61,62における、Z軸方向視で各ヒータパッド部521,522と給電端子741,742との間を流れる電流I1による発熱により、特定領域Rxが低温の温度特異点となることを効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を効果的に向上させることができる。
【0056】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の静電チャック100は、
(1)Z軸方向視で、ヒータパッド部521,522の中心点P0を通り、かつ、ヒータパッド部521,522とヒータライン部510との接続部分CPからのヒータライン部510の延伸方向に平行な仮想直線を第1の仮想直線VL1とし、上記中心点P0を通ると共に第1の仮想直線VL1とのなす角が45度である2つの仮想直線をそれぞれ第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3としたとき、給電端子741,742は、第2の仮想直線VL2および第3の仮想直線VL3により区切られた4つの領域の内、上記中心点P0を挟んで上記接続部分CPに対向する第1の領域R1内に位置するという条件と、
(2)Z軸方向視で、給電端子741,742は、第1の仮想直線VL1上に位置しているという条件と、
(3)Z軸方向視で、第1の領域R1を第1の仮想直線VL1によって第1の小領域R11および第2の小領域R12に分割したとき、給電端子741,742は、第1の小領域R11および第2の小領域R12の内、第1の仮想直線VL1に対して、ヒータパッド部521,522とヒータライン部510との接続部分CPから延伸したヒータライン部510が第1の仮想直線VL1から離間する方向とは反対側の方向に位置する小領域(第2の小領域R12)内に位置するという条件と、
のすべてを満たしているが、上記3つの条件の内、少なくとも条件(1)を満たしていれば、条件(2)と条件(3)との少なくとも一方を満たさなくてもよい。このような構成であっても、セラミックス部材10の吸着面S1に低温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0058】
上記実施形態の静電チャック100では、各ヒータ電極500の第1のヒータパッド部521および第2のヒータパッド部522と給電端子との位置関係について、上記条件(1)~(3)が満たされているが、少なくとも1つのヒータ電極500の少なくとも一方のヒータパッド部と給電端子との位置関係について、上記条件(1)~(3)(または、少なくとも条件(1))が満たされていればよい。このような構成では、上記条件が満たされた箇所について、セラミックス部材10の吸着面S1に低温の温度特異点が発生することを抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0059】
同様に、上記第2実施形態の静電チャック100では、各ヒータ電極500の第1のヒータパッド部521側および第2のヒータパッド部522側の両方について、ヒータライン部510が上述した特定の構成となっているが、少なくとも1つのヒータ電極500の少なくとも一方のヒータパッド部側について、ヒータライン部510が上述した特定の構成となっていればよい。また、上記第3実施形態の静電チャック100では、ドライバ電極60の各導電領域が上述した特定の構成となっているが、少なくとも1つの導電領域が上述した特定の構成となっていればよい。
【0060】
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態におけるセグメントSEの設定態様は、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、各セグメントSEが吸着面S1の円周方向CDに並ぶように複数のセグメントSEが設定されているが、各セグメントSEが格子状に並ぶように複数のセグメントSEが設定されてもよい。また、例えば、上記実施形態では、静電チャック100の全体が複数のセグメントSEに仮想的に分割されているが、静電チャック100の一部分が複数のセグメントSEに仮想的に分割されていてもよい。また、静電チャック100において、必ずしもセグメントSEが設定されている必要はない。
【0062】
また、上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0063】
また、本発明は、セラミックス部材10とベース部材20とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、セラミックス部材を備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10:セラミックス部材 12:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 30:接着層 32:貫通孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極層 60:ドライバ電極 61:第1の導電領域 62:第2の導電領域 100:静電チャック 110:第1の端子用孔 120:第2の端子用孔 500:ヒータ電極 510:ヒータライン部 510a:重複部 521:第1のヒータパッド部 522:第2のヒータパッド部 711:第1の給電側ビア 712:第2の給電側ビア 721:第1のヒータ側ビア 722:第2のヒータ側ビア 731:第1の電極パッド 732:第2の電極パッド 741:第1の給電端子 742:第2の給電端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8