(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ヘアカラー方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220106BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220106BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220106BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220106BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/19
A61K8/20
A61K8/22
A61K8/34
A61K8/365
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/73
A61K8/9789
A61Q5/06
A61Q5/10
(21)【出願番号】P 2018020935
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171952(JP,A)
【文献】特開2006-131523(JP,A)
【文献】特開2011-178718(JP,A)
【文献】特開2004-018492(JP,A)
【文献】特開2006-182731(JP,A)
【文献】特開2017-031085(JP,A)
【文献】特開2011-184426(JP,A)
【文献】特開2003-002811(JP,A)
【文献】特開平11-193220(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166201(WO,A1)
【文献】特開2017-088502(JP,A)
【文献】特開2004-285048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0017286(US,A1)
【文献】特開2018-87177(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩基性染料、HC染料、第二のアミノ酸、第一のカチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、
pH7.3~8.0であり、パラフェニレンジアミンを含有しないヘアカラー剤と、
(B)アルカリ剤、第一のアミノ酸、炭素数が12~22の高級アルコール類、界面活性剤、及び増粘剤を少なくとも含有する毛髪化粧料と、
を所定割合で混合したものを塗布する工程と、
前記塗布後に所定時間を設ける工程と、
前記所定時間後にキューティクルケア剤を塗布する工程とを含む、ヘアカラー方法
であって、前記ヘアカラー剤、前記毛髪化粧料、及び前記キューティクルケア剤の少なくとも一つが、抗体産生抑制剤としてザクロ種子エキスを含む、ことを特徴とするヘアカラー方法。
【請求項2】
前記キューティクルケア剤は、臭素酸ナトリウム、過酸化水素から選択される少なくとも1種と、第二のカチオン界面活性剤と、第二のpH調整剤とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記キューティクルケア剤の塗布後、一定時間放置する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記(A)ヘアカラー剤と前記(B)毛髪化粧料とを混合する配合比は、(A)/(B)=1~20である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ剤は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一又は第二のアミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種である請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記塗布後に所定時間を設ける工程において、毛髪を加温することを特徴とする
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカラー方法に関し、特に、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能であり、色もち及び浸透染着力に優れる毛髪化粧料組成物とヘアカラー剤組成物との混合物を用いたヘアカラー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ、(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤、及び(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を含む従来技術のごとく、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるのに加えて、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因での皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
一方で、上述のヘアカラーでは、コルテックス(毛皮質。毛髪の内部)までしっかり染めることができるが、一般的なヘアカラートリートメントでは、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、毛髪染毛を行う上で、より色もちが良く、パラフェニレンジアミンフリーで、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能なヘアカラー方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラー方法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明のヘアカラー方法は、(A)塩基性染料、HC染料、第二のアミノ酸、第一のカチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH7.3~8.0であり、パラフェニレンジアミンを含有しないヘアカラー剤と、
(B)アルカリ剤、第一のアミノ酸、炭素数が12~22の高級アルコール類、界面活性剤、及び増粘剤を少なくとも含有する毛髪化粧料と、
を所定割合で混合したものを塗布する工程と、
前記塗布後に所定時間を設ける工程と、
前記所定時間後にキューティクルケア剤を塗布する工程とを含む、ヘアカラー方法であって、前記ヘアカラー剤、前記毛髪化粧料、及び前記キューティクルケア剤の少なくとも一つが、抗体産生抑制剤としてザクロ種子エキスを含む、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記キューティクルケア剤は、臭素酸ナトリウム、過酸化水素から選択される少なくとも1種と、第二のカチオン界面活性剤と、第二のpH調整剤とを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記キューティクルケア剤の塗布後、一定時間放置する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記(A)ヘアカラー剤と前記(B)毛髪化粧料とを混合する配合比は、(A)/(B)=1~20であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記第一又は第二のアミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記塗布後に所定時間を設ける工程において、毛髪を加温することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヘアカラー方法によれば、パラフェニレンジアミンを含まないことで、かぶれや接触性皮膚炎のリスクを低減することに加え、ヘアカラーの使用期間が長くなる場合にも毛髪を傷め難いながらも、色持ち良く、施術者側において頭皮への付着を気にせず新生部までヘア・カラーリングの提供が可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のヘアカラー方法は、(A)塩基性染料、HC染料、第二のアミノ酸、第一のカチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8以上であるヘアカラー剤と、
(B)アルカリ剤、第一のアミノ酸、炭素数が12~22の高級アルコール類、界面活性剤、及び増粘剤を少なくとも含有する毛髪化粧料と、
を所定割合で混合したものを塗布する工程と、
前記塗布後に所定時間を設ける工程と、
前記所定時間後にキューティクルケア剤を塗布する工程とを含む、ことを特徴とする。当該ヘアカラー剤は、塩基性染料と、HC染料、第二のアミノ酸と、第一のカチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、第一のpH調整剤と、湿潤剤とを含有するものであって、pHは、6.8以上であり、当該毛髪化粧料は、アルカリ剤と、第一のアミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有することが好ましい。
【0020】
まず、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物及びヘアカラー剤について以下に説明する。
【0021】
本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物は、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8以上であることを特徴とする。本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物においては、pH6.8以上にすることによって、キューティクルを開き易くし、同時にL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、またその塩類といった塩基性アミノ酸を毛髪内部に送り込み、(毛髪の傷みとして)過去に毛髪から流出した塩基性アミノ酸を補って補修しながらカラーリングできる製品である。すなわち、本発明のヘアカラ―剤組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0022】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、キューティクルを開き易くしpHを6.8以上に調整するという観点から、前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を挙げることができる。弱アルカリ性で毛髪への残留が少ないという観点から、好ましくは、前記pH調整剤としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0023】
キューティクルを効率よく開き、色もちを良好に発揮し得るという観点から、本発明のヘアカラー剤組成物のpH値としては、好ましくは、6.8以上、より好ましくは、7.0~9.0さらに好ましくは、pH7.3~8.0に調整することができる。
【0024】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0025】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57)、塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、染色力は強くないが毛髪へのダメージが少ないという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは、0.1~1質量%とすることができる。
【0026】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、前記HC染料の量としては、特に限定されないが、HC染料は毛髪内を染色するため、より深みのある発色を呈するという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%とすることができる。
【0027】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、毛髪に与える感触をさらに向上させるという観点から、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。また、好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。また、前記カチオン界面活性剤の量としては、特に限定されないが、塩基性染料の毛髪染着力の向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%とすることができる。
【0028】
その他、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物には、増粘剤、湿潤剤、油剤等を含むことができる。本発明においては、これら増粘剤等について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。増粘剤としては、製品の安定性という観点から、例えばヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。また、前記増粘剤の量としては、特に限定されないが、製品の安定性向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%、さらに好ましくは0.2~0.4質量%とすることができる。
【0029】
また、湿潤剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1、3-ブチレングリコールを挙げることができる。また、前記湿潤剤の量としては、特に限定されないが、製品の塗布のしやすさという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%とすることができる。
【0030】
また、油剤としては、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等を挙げることができる。また、前記油剤の量としては、特に限定されないが、塗布放置時間の乾燥を防ぐとともに製品の安定性という観点から、好ましくは、1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0031】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤は、上述の本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。所望により、又はヘアカラー剤の用途によって、ヘアカラー剤に適宜本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物を含めることができる。
【0032】
また、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物及び毛髪化粧料の一例は、以下の通りである。
【0033】
本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤と、アミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有することを特徴とする。当該毛髪化粧料組成物(塩基性キューティクル膨潤剤)に含まれるアルカリ剤によりキューティクルを開くことが可能である。すなわち、従来のヘアカラーリング等では、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染め、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあったが、当該毛髪化粧料組成物により、キューティクルを開くことが可能であり、ひいては、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0034】
すなわち、従来、塩基性染料やHC染料はキューティクル及び表面近くのコルテックスを染めることに対しては、前記毛髪化粧料組成物(膨潤剤)を使うことによって、毛髪のより深い部分までを塩基性染料及びHC染料で染めることが可能となることが本発明者らにより判明したものである。
【0035】
アルカリ剤の量としては、特に限定されないが、キューティクルを効率よく開き、膨潤効果を良好に発揮し得るという観点から、前記毛髪化粧料組成物のpH値としては、好ましくは7.0~11.5、より好ましくは、pH8.5~11.5、さらに好ましくは、pH9.0~9.7に調整することができる。アルカリ剤の量としては、特に限定されないが、キューティクルを効率よく開き、膨潤効果を良好に発揮し得るという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、1~3質量%とすることができる。
【0036】
また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0037】
本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物において、炭素数が12~22の高級アルコール類としては特に限定されないが、毛髪に滑らかさを付与、乳化安定性の向上及び粘度調整という観点から、例えば、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等を挙げることができる。
【0038】
また、炭素数が12~22の高級アルコール類の量としては、特に限定されないが、毛髪に滑らかさを付与、乳化安定性の向上及び粘度調整という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.1~5.0質量%、より好ましくは、0.1~3.0質量%、さらに好ましくは0.2~2.0質量%とすることができる。
【0039】
好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種を挙げることができる。また、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記エタノールアミン類は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び/又はトリエタノールアミンであることを特徴とする。モノエタノールアミン等のエタノールアミン類は不揮発性のため臭いは少ないが、毛髪への残留が高く毛髪を痛める虞がある。また、アルギニンは毛髪との親和性が高いがアルカリ剤としての作用としては弱く反応が穏やかである。アンモニア水は揮発性のため刺激臭はあるが、毛髪への残留が少なく反応が早い点特徴である。かかる観点から、アルカリ剤としては、好ましくは、アンモニア水を挙げることができる。
【0040】
また、好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、及び/又はヒスチジンから選択される少なくとも1種を挙げることができる。加齢に伴い毛髪内部のアルギニンやヒスチジンが低下することが報告されているが、本発明においては、本発明の毛髪化粧料組成物(膨潤剤)に配合されているアルギニンやヒスチジン塩酸塩、リシン塩酸塩が毛髪に浸透して毛髪補修効果を発揮することが可能である。
【0041】
本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物においては、界面活性剤と、増粘剤とを含有することができる。これら界面活性剤と、増粘剤について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0042】
また、好ましい実施態様において、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物(塩基性キューティクル膨潤剤)において、当該毛髪化粧料組成物中に含まれるアルカリ剤がキューティクルを開くことが可能である。
【0043】
なお、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物を含むヘアカラーリング後、キューティクルを引き締めるためなどに、例えば、臭素酸ナトリウムを含むキューティクルケア剤を適用することも可能である。また、色落ちしやすいHC染料を毛髪内部染着させ、色落ちを遅らせることも可能である。
【0044】
また、本発明に適用可能な毛髪化粧料は、前記毛髪化粧料組成物を含むことを特徴とする。
【0045】
以上が、毛髪化粧料及びヘアカラー剤の一例についての説明である。
【0046】
本発明においては、これらのヘアカラ―剤と毛髪化粧料とを、所定割合で混合したものを塗布することができる。両者を混合することとしたのは、これら単独使用に比較して、両者を混合して用いると、染色が濃く、色もちがよくなることを本発明者らが見出したことによる。両者を混合すれば足り、所定の割合については特に限定されないが、好ましい実施態様において、前記(A)ヘアカラー剤と前記(B)毛髪化粧料とを混合する配合比は、(A)/(B)=1~20であることを特徴とする。すなわち、毛髪染着力の観点から、前記ヘアカラー剤と前記毛髪化粧料の配合比は、好ましくは1~20:1の質量比、より好ましくは5~15:1の質量比、さらに好ましくは8~12:1の質量比とすることができる。
【0047】
また、本発明においては、キューティクルを効率良く開き、膨潤効果を良好に発揮させ、また染色を進行させ得るという観点から、前記塗布後に所定時間を設けることができる。また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記塗布後に所定時間を設ける工程において、浸透染着力を高めるという観点から、毛髪を加温することを特徴とする。加温時間についても、所望により特に限定されないが、効率よく染毛するという観点から、1~60分間、好ましくは5~40分間とすることが出来る。施術行程時間という観点から、約10分~(約10分又はそれ以上)で40℃前後まで昇温し、約20分間温度を保ってもよい。また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、塗布との毛髪を置いておく時間の間、塗布部分をラップで覆い、ヘアドライヤーを用いて加温してもよい。
【0048】
また、本発明において、前記所定時間後にキューティクルケア剤を塗布する工程とを含むことができる。また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記キューティクルケア剤の塗布後、開かせたキューティクル(毛小皮)を引き締め、HC染料を毛髪内部染着させるという観点から、一定時間放置する工程を含むことができる。放置時間としても特に限定されないが、例えば、放置時間は、1~20分間、好ましくは、1~10分間とすることができる。
【0049】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記毛髪化粧料及び前記ヘアカラー剤を混合して塗布した後、さらに、臭素酸ナトリウム、過酸化水素から選択される少なくとも1種と、第二のカチオン界面活性剤と、第二のpH調整剤とを含むキューティクルケア剤を塗布する工程を含んでもよい。なお、第二のpH調整剤としては、酸性側のpH調整剤を配合することができる。また、健康な毛髪の状態(等電帯pH4.5~5.5)に戻すという観点から、pH調整剤としては、クエン酸、リン酸、フィチン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。
【0050】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。アルカリ剤については、上述の本発明に適用可能な毛髪化粧料等における説明を参照することができる。
【0051】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記第一又は第二のアミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。第一又は第二のアミノ酸については、上述の本発明に適用可能な毛髪化粧料及びヘアカラー剤等における説明を参照することができる。
【0052】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、さらに、シャンプー剤の適用を含んでもよい。シャンプー剤を毛髪に適用する場合、整髪料や皮脂等の阻害要因を取り除くという観点から、毛髪化粧料前に適用してもよい。この場合、シャンプー剤としては、好ましくは、エストロンシャンプー、エストロンブラック、アプルセルシャンプープレミアム、ナノサプリクレンジングシャンプー等(これらの製品の製造販売元:(株)サニープレイス)を用いることができる。
【0053】
また、シャンプー剤を、カラーリング後に適用してもよい。この場合、シャンプー剤のpHとしては、好ましくは弱酸性とする。また、シャンプー剤としては、好ましくは、エストロンシャンプーあるいは、アプルセルシャンプープレミアム(製造販売元:(株)サニープレイスのシャンプー剤)を用いることができる。
【0054】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、さらに、前記ヘアカラー剤、前記毛髪化粧料、及び前記キューティクルケア剤の少なくとも一つが、抗体産生抑制剤を含むことができる。抗体産生抑制剤としては、アレルギー疾患の予防や改善という観点から、ザクロ種子エキス、アガリクス属等に属するキノコ、ヤナギハッカ、エーデルワイス等抽出物を挙げることができる。
【0055】
例えば、抗体産生抑制剤として、ザクロ種子エキスを用いた場合を例に説明すれば以下の通りである。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0056】
また、好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスは、プニカ酸、又はエラグ酸を含むことを特徴とする。ザクロ種子エキスは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。
【0057】
より詳細には、まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0058】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0059】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。また、本発明のザクロ種子エキスの製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0060】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0061】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0062】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0063】
なお、本発明のヘアカラー方法の一例を、以下に説明する。
【0064】
1)整髪剤や汚れの除去のため、適宜プレシャンプーを行う。
2)本発明に適用可能なヘアカラー剤(染毛成分含有)及び毛髪化粧料(塩基性キューティクル膨潤剤含有)を所定割合で混合したものを、刷毛によって毛髪に塗布する。
3)塗布した毛髪をラップで覆い、ヘアドライヤーを用いて加温し、約30分置く。
4)この約30分では、へアドライヤーにより、約10分で40℃前後まで昇温した後、約20分温度を保つ。
5)4)の後、キューティクルケア剤を毛髪に十分塗布し、約6分置く。
6)5)の後、適温の湯とシャンプー剤で洗髪する。
7)タオルドライ後、ヘアドライヤーで毛髪を乾かす。
【実施例】
【0065】
以下では本発明のヘアカラー方法に適する、ヘアカラー剤、毛髪化粧料及びキューティクルケア剤の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0066】
まず、本発明に適用可能なヘアカラー剤を作成した。
【0067】
アルカリ剤(pH調整剤)に関しては、弱アルカリ性で皮膚刺激が起きにくいという観点から、本実施例においては、炭酸水素アンモニウムを一例として、試験を行った。
【0068】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷すると流出することが知られていて、塩基性アミノ酸およびその塩類を0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0069】
表1は、本発明の一実施態様におけるヘアカラー剤組成物の成分例を示す。
【0070】
【0071】
調整方法は以下の通りである。
【0072】
調整方法:
1.表1の水相を75~77℃まで撹拌しながら加温する。
2.表1の油相を75~79℃まで加熱しながら撹拌し、均一にする。
3.75~77℃までに加熱した水相に色素を加えて均一にし、前記油相を加えて乳化し、均一になるまで撹拌する。
4.内容物をゆっくりと冷却し、43℃以下になったら防腐剤および清涼成分、消炎成分、アミノ酸群を加えて均一になるまで撹拌し、32℃以下になるまで冷却する。
【0073】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0074】
また、本発明に適用可能なヘアカラ―剤を調整して、毛束に色落ち試験をおこなったところ、色落ちに極めて優れていることが判明した。
【0075】
従来、パラフェニレンジアミンを含まないヘアカラー剤を塗布し放置すると、ベースカラーは、酸化染料に比べて安全性が高いとされている塩基性染料およびHC染料であるが、毛髪に染着するために染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすいという欠点があった。従来のヘアカラー剤に対して、本発明に適用するヘアカラー剤は、ベースカラーが浸透しやすくなるばかりではなく、酸性染料を含まないために頭皮への付着を気にせず新生部から毛先まで塗布できることが判明した。
【0076】
このように、本発明に適用するヘアカラー剤等は、毛髪染料を行う上で、従来のヘアカラー及びヘアマニキュアと比較し、1)染色を繰り返すことで毛髪が傷んでいる方は毛髪強度が低下し、弾力が無くなり、毛髪が細化する(従来のヘアカラー)、2)頭皮のかぶれが発生しているとかぶれ部分が染色してかなり取れにくい(従来のヘアマニキュア)といった問題が無く、より色持ちと浸透染着力が良い毛髪化粧料を提供することが判明した。すなわち、本発明においては、色持ち以外に、安全性も備わっていることも判明した。
【0077】
次に、本発明に適用可能な毛髪化粧料を作成した。
【0078】
アルカリ剤に関しては、アンモニア水・炭酸アンモニウム・炭酸ナトリウム・モノやジ、トリエタノールアミンといったエタノールアミン類・炭酸水素アンモニウム・アルギニン等が考えられる。しかしながらモノエタノールアミン等のエタノールアミン類は不揮発性のため臭いは少ないが、毛髪への残留が高く毛髪を痛めるおそれがある。また、アルギニンは毛髪との親和性が高いがアルカリ剤としての作用としては弱く反応が穏やかである。アンモニア水は揮発性のため刺激臭はあるが、毛髪への残留が少なく反応が早い性質を有する。
【0079】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷により毛髪から流出することが知られていて、塩基性アミノ酸およびその塩類0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0080】
表2は、本発明の一実施態様における毛髪化粧料組成物の成分例を示す。
【0081】
【0082】
表3は、本発明の一実施態様における毛髪化粧料の成分例に関する調整例を示す。
【0083】
【0084】
調整方法は、以下のとおりである。
1.表3のA相の精製水にアミノ酸群を溶解確認後、アルカリ剤を均一に混合する。
2.次いで、表3のA相を撹拌しながら表3のB相を加えて均一に混合する。
3.適度に撹拌しながら表3のC相を加え、均一になるまで撹拌する。
【0085】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0086】
表4は、本発明の一実施態様におけるキューティクルケア剤の成分例を示す。キューティクルケア剤とは、キューティクルを整える、引き締めるといったキューティクルの状態を改善する作用を含むものである。つまり、整える、引き締める作用に限定されない。
【0087】
【0088】
表5は、本発明の一実施態様において、本発明に適用可能なキューティクルケア剤の調整方法の一例を示す。
【0089】
【表5】
本発明に適用可能なキューティクルケア剤の調整方法は以下の通りである。
調整方法:
1.表5のA相の精製水に残りの成分を均一に混合する。
2.表5のA相を撹拌しながら表5のB相を加えて均一に混合する。
3.適度に撹拌しながら表5のC相を加え、均一になるまで撹拌する。
4.毛髪の等電帯(pH4.5~5.5)に整えるために製剤のpHを、クエン酸を用いてpH5.4付近にする。
【0090】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0091】
なお、上記毛髪化粧料、及びヘアカラー剤のパッチテストを行った結果、被験者数20名に対して、皮膚刺激指数0.0~2.5であり、何れも安全品であることが確認された。
【0092】
次に、ヘアカラー剤(本発明に用いる一種類及び他社製品)、毛髪化粧料及びキューティクルケア剤を用いて、ヘアカラーリングを行い、引張破断強度、洗髪による明度変化、染毛の水分量について比較した結果を説明する。
【0093】
実施例1
市販黒髪100%未処理毛(品番:BS-B-A、ビューラックス社製)重さ1g、長さ10cmを毛髪試料として、ヘアカラー剤(販売名:輝髪ペインターA、サニープレイス社製)と塩基性キューティクル膨潤剤(販売名:輝髪ペインターB、サニープレイス社製)を、配合比(A:B=10:1)になるように混合したものを刷毛によりまんべんなく塗布した後、ラップで覆いヘアドライヤーを用いて約30分間加温する(約10分で40℃前後まで昇温し、約20分間温度を保つ)。その後、キューティクルケア剤(販売名:輝髪ペインターC、サニープレイス社製)を全体に揉みこむように塗布し約6分置いた。その後、適温の湯とザクロシード抽出成分含有シャンプー(販売名:エストロン・シャンプー、サニープレイス社製)を用いて洗い流し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げた。この染毛から洗髪、乾燥までの工程を5回繰り返し、染色毛を作成した。なお、配合比は、製品の質量の比率である。
【0094】
比較例1
実施例1と同じ毛髪試料を、酸化染毛剤(販売名:イゴラ・ロイヤル・ピクサム-G G-B6、ヘンケルジャパン社製)と過酸化水素6%のデベロッパーを1:1の割合で混合して塗布した後、室温下で30分間置いた。その後、適温の湯と、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げた。この染毛から洗髪、乾燥までの工程を5回繰り返し、染色毛を作成した。
【0095】
比較例2
実施例1(及び比較例1)と同じ毛髪試料を、酸化染毛剤(販売名:プロマスターB-6/5、ホーユー株式会社製)と過酸化水素6%のデベロッパーを1:1の割合で混合して塗布した後、室温下で30分間置いた。その後、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げた。この染毛から洗髪、乾燥までの工程を5回繰り返し、染色毛を作成した。
【0096】
実施例1、比較例1及び比較例2について、高感度毛髪引張り試験機(形式:KES-G1-SH、カトーテック社製)を用いて、毛髪一本当たりの引張切断強度を1.2cm/分の引張速度で測定した。
【0097】
表6は、実施例1、比較例1及び比較例2の引張切断強度の結果を示す。実施例1の引張切断強度(平均4.1(gf/P))は、比較例1(平均3.81(gf/P))の1.07倍、比較例2(3.61(gf/P))の1.13倍であった。
【0098】
【0099】
参照例1(ダメージ毛の作成)
次に、後述する引張切断強度の比較及び水分測定のためのダメージ毛を作成した。実施例1と同じ毛髪試料に、ブリーチ剤(商品名:ブリーチパウダー、ナンバースリー社製)と過酸化水素6%のデベロッパーを1:3の割合で混合して塗布した後、室温下で約30分間放置することによりブリーチ処理を行った。
【0100】
参照例2
作成したダメージ毛に、ヘアカラー剤(販売名:輝髪ペインターA、サニープレイス社製)を刷毛にてまんべんなく塗布した後、ラップで覆いヘアドライヤーを用いて30分間加温した(10分で40℃前後まで昇温し、20分間温度を保つ)。その後、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げ、染色毛を作成した。
【0101】
実施例2
作成したダメージ毛に、実施例1と同様に、ヘアカラー剤(販売名:輝髪ペインターA、サニープレイス社製)と毛髪化粧料(販売名:輝髪ペインターB、サニープレイス社製)を配合比でAが10に対してBが1になるように混合したものを刷毛にてまんべんなく塗布した後、ラップで覆いヘアドライヤーを用いて30分間加温した(10分で40℃前後まで昇温し、20分間温度を保つ)。その後、キューティクルケア剤(販売名:輝髪ペインターC、サニープレイス社製)を全体に揉みこむように塗布し6分放置。その後、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げ、染色毛を作成した。
【0102】
参照例1、参照例2及び実施例2について、実施例1と同じ測定機で、毛髪一本当たりの引張切断強度を1.2cm/分の引張速度で測定した。表7は、その測定結果を示す。参照例1(ダメージ毛のカラーリングなし)の破断強度3.18(gf/P)に対して、参照例2(ダメージ毛にカラー剤のみ施術)の破断強度は3.62(gf/P)(1.13倍)となった。ダメージ毛の破断強度に対して、実施例2(ダメージ毛に実施例1と同様の施術)は3.91(gf/P)(1.23倍)となった。参照例2は、一般的に家庭で使われるヘアカラートリートメントとしての使い方で、この方法でも輝髪ペインターA単品でも使うことも可能であるが、実施例2で示すようにA,B,Cの3製品使用の方が毛髪の引張強度が上がることが判明した。
【0103】
【0104】
次に、同じ毛髪試料に対するカラー剤のみ用いたカラーリングと、毛髪化粧料及びキューティクルケア剤を加えたカラーリングとの染色具合を、洗髪回数ごとに明度を測定し、その結果を比較した。
【0105】
参照例3
市販人毛白髪30%混合品(品番:BM-MIX-A、ビューラックス社製)重さ1g、長さ10cmを毛髪試料として、ヘアカラー剤(販売名:輝髪ペインターA、サニープレイス社製)を刷毛によりまんべんなく塗布した後、ラップで覆いヘアドライヤーを用いて30分間加温する(10分で40℃前後まで昇温し、20分間温度を保つ)。その後、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げ、染色毛を作成した。この洗髪回数による色味の違いを分光測色計(型式:CM-2600d、コニカミノルタ社製)を用いて、明度(L*)を測定した。
【0106】
参照例4
市販人毛白髪30%混合品(品番:BM-MIX-A、ビューラックス社製)重さ1g、長さ10cmを毛髪試料として、塩基性キューティクル膨潤剤(販売名:輝髪ペインターB、サニープレイス社製)を刷毛により約5から8分置いた後、水洗いしてヘアドライヤーで乾かす。その後、ヘアカラー剤(販売名:輝髪ペインターA、サニープレイス社製)を刷毛によりまんべんなく塗布した後、ラップで覆いヘアドライヤーを用いて5分間加温し、その後約15分間置いた。その後、キューティクルケア剤(販売名:輝髪ペインターC、サニープレイス社製)を全体に揉みこむように塗布し約5分置いた。その後、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げ、染色毛を作成した。洗髪回数による色味の違いを比較例5と同様に明度(L*)を測定した。
【0107】
実施例3
市販人毛白髪30%混合品(品番:BM-MIX-A、ビューラックス社製)重さ1g、長さ10cmを毛髪試料として、ヘアカラー剤(販売名:輝髪ペインターA、サニープレイス社製)と毛髪化粧料(販売名:輝髪ペインターB、サニープレイス社製)を配合比でA:B=10:1になるように混合したものを刷毛によりまんべんなく塗布した後、ラップで覆いヘアドライヤーを用いて30分間加温する(10分で40℃前後まで昇温し、20分間温度を保つ)。その後、キューティクルケア剤(販売名:輝髪ペインターC、サニープレイス社製)を全体に揉みこむように塗布し約6分置いた。その後、実施例1と同様に洗髪し、ヘアドライヤーで乾燥させて仕上げ、染色毛を作成した。洗髪回数による色味の違いを比較例4及び5と同様に明度(L*)を測定した。なお、L*の数値が0に近ければ近いほど黒っぽいという数値になる。
【0108】
表8は、参照例3、参照例4及び実施例3について洗髪回数ごとの明度測定結果を示す。洗髪前(すなわち染毛処理直後)から洗髪35回で、参照例3(ヘアカラー剤単独の染毛)では、明度は0.14減少し、参照例4の明度は1.43減少し、実施例3は、明度は0.05の減少におさまった。すなわち、実施例3は他二ケースよりも、洗髪による色落ちが少なかった。
【0109】
【0110】
まず、本発明によれば、洗髪前と洗髪後では明るさの差ΔLの値は3以内であり、3以内ということは離して並べればほとんど気づかず、一般的に同じ明るさの範囲である。つまり洗髪しても色落ちしにくいカラートリートメントであることが分かる。また、カラートリートメントのみによるカラーリングと、ペインターA.B.Cを使用したカラーリングでは、L*の差は約7であり、目で見て明るさの違いがわかる範囲であった。つまりカラートリートメントのみによるカラーリングよりペインターA.B.Cを使用したカラーリングの方が良く染まり、髪色が濃くなったといえる。
【0111】
さらに、ペインターA.B.C単独使用とペインター(A+B)+Cの本発明では、ペインターA,B,C単独使用ではΔLの値が1.43色管理で使用される範囲内であるが色が明るくなったのに対し、ペインター(A+B)+Cの本発明ではΔLの値が0.05と明るさの違いを識別できない範囲であった。つまりペインターA.B.C単独使用は若干色落ちしたが、ペインター(A+B)+Cの本件は色落ちが見られなかった。これより本発明のペインター使用方法が、染色力が高く、色持ちが良いカラーリング方法であることが分かる。
【0112】
すなわち、これらの結果から、単に毛髪化粧料及びキューティクルケア剤をカラー剤に付加しただけでは、染色後の毛髪は、カラー剤単独の洗髪による色落ち低下よりもさらに色落ちする可能性があることが分かる。実施例3のように毛髪化粧料及びカラー剤を混合したものを(すなわち毛髪化粧料及びカラー剤を同時に)適用した後で、キューティクルケア剤を毛髪に適用することで、洗髪の色落ち低下を抑制できるといえる。
【0113】
実施例4
さらに、実施例3、参照例3及び参照例4の染色した毛髪(洗髪なし)を加熱乾燥・質量測定方式の赤外線水分計(型式:FD-660、ケット科学研究所社製)を使って測定した。表9にこの測定結果を示す。この結果からは、ヘアカラー剤単独よりも、毛髪化粧料及びキューティクルケア剤を付加することで、染毛の水分量は増加することが判明した。
【0114】
【0115】
以上のことから、毛髪等のカラーリングにおいてカラー剤単独よりも、毛髪化粧料及びキューティクルケア剤を組み合わせることで毛髪の強度及び水分量が向上することが判明した。さらに、カラー剤及び毛髪化粧料を混合したものの塗布の後で、キューティクルケア剤を塗布する施術とすることで、洗髪による色落ちを抑制できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によると、色もちがよくなかったヘアカラー処理に対して、色もちを改善し、さらに毛髪を傷めにくく、皮膚障害を低減可能であり、広範囲において、産業上利用価値が高い。