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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電子レベル
(51)【国際特許分類】
   G01C 5/00 20060101AFI20220106BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01C5/00 Z
G01C15/06 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018021495
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019138745
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊一郎
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-163960(JP,A)
【文献】特開2017-44610(JP,A)
【文献】特開平7-311036(JP,A)
【文献】特開平6-241790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に揺動させている標尺の目盛を所定周期で読み取って、前記標尺上の視準位置を自動的に演算する電子レベルであって、前記標尺を揺動するタイミングを標尺側作業者に報知するように構成された報知手段を備えることを特徴とする電子レベル。
【請求項2】
前記報知手段は、前記タイミングに合わせて光を点滅する発光ユニットであることを特徴とする請求項1記載の電子レベル。
【請求項3】
前記報知手段は、前記タイミングに合わせて音を発するスピーカユニットであることを特徴とする請求項1記載の電子レベル。
【請求項4】
前記報知手段は、電子レベル本体に組み込まれた送信機と、前記電子レベル本体とは別体の受信機とを備える無線通信装置であることを特徴とする請求項1記載の電子レベル。
【請求項5】
前記受信機は、前記標尺に設けられていることを特徴とする請求項4記載の電子レベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レベル(電子式水準儀)に関し、より詳細には、ウェービング法によって2地点の高低差を測定することができる電子レベルに関する。
【背景技術】
【0002】
2地点の高低差を高精度に測定する方法として、標尺を手動のレベルに向かって前後に揺動させながら、標尺側作業者が標尺の目盛の読み値が最小となるところを探して高さの測定値とするウェービング法と呼ばれる測定方法が知られている。
【0003】
近年では、ウェービング法に対応可能な電子レベルが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の電子レベルでは、電子的手段を用いて標尺上のパターンを連続的に読み取り、演算処理部により、読み取り値を多項式で近似して最小値を算出し、その最小値を測定値としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-163960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電子レベルでは、読み取りと演算とを連続で行うために、標尺の揺動周期が短すぎると最小値状態を取得できない虞があり、最適な周期で標尺を揺動させなければ測定値の精度が低下する。このため、最適な周期が周囲の照度などに応じて予め電子レベルに設定されている。しかし、この最適な周期で標尺を揺動するためには、標尺側作業者の熟練や勘に頼ることになり、測定ミスを起こしやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであり、ウェービング法を用いて精度よく高低差を測定することができる電子レベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様に係る電子レベルは、前後に揺動させている標尺の目盛を所定周期で読み取って、前記標尺上の視準位置を自動的に演算する電子レベルであって、前記標尺を揺動するタイミングを標尺側作業者に報知するように構成された報知手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記態様において、前記報知手段は、前記タイミングに合わせて光を点滅する発光ユニットであることも好ましい。
【0009】
また、上記態様において、前記報知手段は、前記タイミングに合わせて音を発するスピーカユニットであることも好ましい。
【0010】
また、上記態様において、前記報知手段は、電子レベル本体に組み込まれた送信機と、前記電子レベル本体とは別体の受信機とを備える無線通信装置であることも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記受信機は、前記標尺に設けられていることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様に係る電子レベルによれば、ウェービング法により高低差を測定する場合において、標尺側作業者が報知された揺動タイミングに合わせて標尺を揺動するだけで、最適なタイミングで標尺を揺動することができるので、標尺側作業者の勘や熟練に頼らず、精度よく高低差を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子レベルの構成ブロック図である。
図2】同形態に係る電子レベルの概略模式図であり、図右の円内に、標尺の部分拡大図を示している。
図3】同形態に係る電子レベルの動作を説明するフローチャートである。
図4】同形態に係る電子レベルによる、揺動タイミングと発光タイミングを説明する図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る電子レベルの概略模式図である。
図6】本発明の別の実施の形態に係る電子レベルの概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態において、同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施の形態に係る電子レベル10の構成ブロック図、図2は電子レベル10の概略模式図である。電子レベル10は、望遠鏡11と、受光センサ12と、演算処理部13と、報知手段14とにより構成されている。
【0016】
望遠鏡11は、対物レンズ、合焦レンズ、コンペンセータ、ビームスプリッタ、焦点板、接眼レンズ等を備え、前方の測定点に垂直に配置された標尺20を視準するものである。
【0017】
受光センサ12は、例えばCCDカメラ等の二次元センサである。受光センサ12には、望遠鏡11内に配置されたビームスプリッタにより望遠鏡が視準する標尺20の像が分岐されるように構成されている。受光センサ12は、視準されている標尺20の像を電気信号である画像信号に変換し、演算処理部13へと出力する。受光センサ12としては、他にも例えばMOS型FETを用いてもよい。
【0018】
演算処理部13は、演算処理を行うCPUと、画像メモリと、A/D変換器と、補助記憶部としてのROM(Read・Only・Memory)およびRAM(Randam・Access・Memory)とを備える。受光センサ12からの画像信号はA/D変換器でデジタル化された後、画像メモリに格納される。演算処理部13は、デジタル化した画像データを、予め記憶された画像データと照合して、後述する目盛パターンを識別し、標尺上の視準位置を自動的に演算する。
【0019】
報知手段14は、例えばLED光源等の光源を備える発光ユニットである。報知手段14は演算処理部13からの指令に基いて、点灯および消灯(点滅)を行う。
【0020】
図2に示すように、本実施の形態において、報知手段14は、望遠鏡11の対物レンズ側の上部に設けられている。しかし、報知手段14の配置はこれに限定されるものではなく、標尺側作業者16から視認可能な位置に設けられていればよい。また、報知手段14は、標尺側作業者16からの視認を容易にするように、リフレクタや、拡散ステップを備える前面カバー等の部品を備えていてもよい。
【0021】
標尺20は、アルミニウム製やカーボンファイバー製の真直な基体に、図2右の円内に示すような、縦方向に所定の間隔で配置された目盛パターン21が印刷等により表示されたものである。
【0022】
図3は、本実施の形態に係る電子レベル10を用いて、ウェービング法により、高低差を測定する動作を説明するフローチャートである。
【0023】
電子レベル10が測定をスタートすると、ステップS101に移行して、演算処理部13からの指令に基いて、報知手段14は、揺動開始の合図を標尺側作業者に報知するために1回点滅する。標尺側作業者16は、この点滅に応じて標尺の揺動を開始する。
【0024】
次いで、ステップS102に移行して、演算処理部13は、報知手段14が、所定の間隔で点滅するように制御して、揺動タイミングを標尺側作業者16に報知する。また、演算処理部13は、望遠鏡11を介して、標尺の目盛パターンの読み取りを開始する。標尺側作業者16は、報知手段14の点滅のタイミングに応じて、標尺を揺動する。
【0025】
ここで、報知手段14の点滅と、標尺を揺動するタイミングの関係について、図4を用いて説明する。標尺側作業者16はまず、報知手段14の点灯に合わせて、標尺20を最も前方になるよう保持する(a)。
【0026】
次に、報知手段14が消灯している間に標尺を後方に揺動し(b)、再度報知手段14が点灯した時に、標尺20が最も後方となるように保持する(c)。そして、報知手段14が消灯している間に標尺20を前方に揺動し(d)、報知手段14が点灯した時に、再度標尺20が最も前方へ来るように保持する(e)。この位置(e)が、標尺の初期位置(a)である。
【0027】
このように、標尺側作業者16は、報知手段14の点滅のタイミングに合わせて、(a)~(e)を1周期として標尺を揺動する。例えば、電子レベル10において、最適な揺動周期が2秒に1往復の場合、演算処理部13が報知手段14を1秒間に1回点滅するように制御する。これにより、標尺側作業者16は、報知手段14の点滅に合わせて標尺20を揺動するだけで、2秒に1往復の揺動周期で、標尺20を揺動できることになる。
【0028】
なお、最適な揺動周期は、周囲の照度等の測定条件に応じて任意で設定できるように構成されていてもよい。
【0029】
ステップS102において、所定回数の揺動が終了すると、ステップS103に移行して、演算処理部13が、高さ測定値を算出する。ウェービング法による高さ測定値の算出方法は、例えば、特許文献1に開示されている公知の方法を用いることができる。
【0030】
次いで、ステップS104に移行して、演算処理部13は、測定が終了したかどうかを判断する。測定終了の判断は、例えば複数回測定した高さ測定値の平均値より算出した高さ測定値の分散が、所定値以下であるかどうか等によって行う。
【0031】
測定が終了した場合(Yes)、ステップS105に移行して、演算処理部13は、報知手段14のパターン発光を停止する。測定が終了していない場合(No)、ステップS102に戻って、報知手段14のパターン発光を続行する。
【0032】
ステップS105において、パターン発光を停止する場合は、ステップS106に移行して、演算処理部13は、報知手段14が測定終了を報知する発光を行うように制御する。
【0033】
測定終了を報知する発光は、パターン発光よりも長時間点灯を続けるように制御するなど、標尺側作業者16に認知されるような種々の態様で行うことができる。これにより、標尺側作業者16、電子レベル10の測定が終了したことを認知し、揺動を終了する。その後、電子レベル10の測定動作が終了する。
【0034】
このように、電子レベル10によってウェービング法により高低差を測定する場合において、標尺側作業者16は、報知手段14により、報知された揺動タイミングに合わせて標尺20を揺動するだけで、高さ測定値の算出に最適なタイミングで標尺20を揺動することができるので、標尺側作業者16の熟練や勘に頼らず、高低差を正確に測定することができる。
【0035】
また、本実施の形態に係る電子レベル10によれば、高さ測定値の算出に最適なタイミングで標尺20を揺動することが容易にできるので、測定の失敗を少なくすることができる。この結果、測定をやり直す必要が少なくなり、測定作業全体の時間を短縮することができる。
【0036】
また、測定の開始と測定の終了を標尺側作業者16がリアルタイムに知ることができるので、標尺側作業者16が無駄に標尺20の揺動する必要がなく、測定作業の負担が軽減される。
【0037】
また、測定の開始及び終了を報知する発光を青色で、揺動タイミングを報知する発光を白色でというように、報知する情報に応じて、発光の色を変更してもよい。このようにすると、標尺側作業者が、発光による合図を容易に把握することができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
図5は第2の実施の形態に係る電子レベル100の概略模式図である。電子レベル100は、報知手段114が、発光ユニットではなく、スピーカユニットである点を除き、第1の実施の形態に係る電子レベル10と同一の構成を有する。
【0039】
報知手段114は、演算処理部13からの指令に基いて、標尺側作業者に向かって、音を発して、測定の開始、標尺の揺動タイミング、および測定の終了を報知する。具体的には、図4に示す、第1の実施の形態に係る報知手段14の発光と対応するように音を発するように構成されている。
【0040】
報知手段114を構成するスピーカユニットとしては、特に限定されず、音を発するための公知の種々のスピーカユニットを用いることができる。報知手段114が発する音は、シグナル音であってもよいし、音声であってもよいが、数十メートル離隔した標尺側作業者16にも十分に認識される周波数および音圧レベルとなるように設定されている。
【0041】
(第3の実施の形態)
図6(a)は第3の実施の形態に係る電子レベル200の概略模式図である。電子レベル200は、報知手段214が、発光ユニットではなく、無線通信装置である点を除き、第1の実施の形態に係る電子レベル10と実質的に同一の構成を有する。
【0042】
報知手段214を構成する無線通信装置としては、例えば、ブルートゥース(登録商標)を用いた無線通信装置を用いることができるがこれに限定されない。
【0043】
報知手段214は、電子レベル200本体に組み込まれた送信機231と、電子レベル200本体とは別体の受信機232とを備える。受信機232は、測定時に標尺側作業者16の近傍に配置されて用いられる。
【0044】
報知手段214は、演算処理部13からの指令に基いて、測定の開始、標尺の揺動タイミング、および測定の終了に関する信号を、送信機231から受信機232へと送信する。
【0045】
受信機232は、送信機231からの信号を、光、音、画面表示等により出力するための、発光部、スピーカ、液晶ディスプレイ等の少なくとも1つの出力手段233を備えている。図示の例では、出力手段233は発光部である。
【0046】
受信機232は、送信機231からの信号に基いて、測定の開始、標尺の揺動タイミング、および測定の終了を、光、音、画像表示等により標尺側作業者16に報知する。
【0047】
上記の構成によれば、標尺の揺動タイミング等を報知する受信機232は標尺側作業者16の近傍に配置されるので、電子レベル200からの測定の開始、標尺の揺動タイミング、および測定の終了の合図の確認が容易になる。
【0048】
さらに、出力手段233を、音声や画像表示により出力可能に構成すると、受信機232が、測定の開始、標尺の揺動タイミング、および測定の終了に加えて、測定における標尺の振幅不足や、標尺範囲のエラー、高さ測定値のタイムアウトエラー等の複雑な情報を標尺側作業者16に報知できるので好ましい。
【0049】
(第4の実施の形態)
図6(b)は第4の実施の形態に係る電子レベル300の概略模式図である。電子レベル300において、報知手段314は、無線通信装置であるが、報知手段314の受信機332が、標尺320に取り付けられている点を除き、第3の実施の形態に係る電子レベル200と同一の構成を有する。
【0050】
このように、報知手段314の受信機332が、標尺320と一体に構成されていると、標尺を持ち運んで測定作業を行う標尺側作業者16が、受信機332を別途持ち運ぶ必要がないので、作業負担が軽減する。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10,100,200,300 電子レベル
14,114,214,314 報知手段
16 標尺側作業者
20,320 標尺
231 送信機
232,332 受信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6