(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
H01J37/244
(21)【出願番号】P 2018022128
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆志
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-269938(JP,A)
【文献】米国特許第05844416(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を検出するマイクロチャンネルプレートと、
前記マイクロチャンネルプレートからの電流信号を電圧信号に変換する変換回路と、
前記電圧信号を増幅または減衰させる調整回路と、
前記調整回路の出力信号に基づいて、検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記調整回路のゲインを制御するゲイン制御部と、
を含み、
前記ゲイン制御部は、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化する前の前記検出信号と、前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化した後の前記検出信号と、に基づいて、前記調整回路のゲインを制御する、電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記ゲイン制御部は、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化する前の所定時間の前記検出信号の平均値である第1平均値と、前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化した後の所定時間の前記検出信号の平均値である第2平均値と、の差を算出し、
前記第1平均値と前記第2平均値との差が小さくなるように前記調整回路のゲインを制御する、電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧の情報の入力を受け付ける入力部を含み、
前記ゲイン制御部は、前記入力部が前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧の情報を受け付けた場合に、前記調整回路のゲインを制御する処理を開始する、電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
電子線を試料に照射する光学系と、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧に応じて、前記電子線が前記光学系の光軸に合った状態となるように前記光学系を制御する光学系制御部と、
を含む、電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4において、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧と、前記電子線が前記光軸にあった状態となる前記光学系の条件と、の関係の情報を記憶する記憶部を含み、
前記光学系制御部は、前記関係の情報に基づいて前記光学系を制御する、電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を切り替える電圧印加部を含む、電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項6において、
前記電圧印加部は、前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧をN段階に切り替え、
前記ゲイン制御部は、前記調整回路のゲインをn段階に切り替え、
N<nである、電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡に搭載される、二次電子や反射電子を検出する検出器として、マイクロチャンネルプレート(micro channel plate)を用いた検出器が知られている(例えば特許文献1参照)。マイクロチャンネルプレートは、電子増幅作用を持つ素子を二次元的に配列した板状の検出器である。
【0003】
マイクロチャンネルプレートを用いた検出器では、検出器のゲインを調整することで、得られる反射電子像や二次電子像のコントラストを調整することができる。検出器のゲインは、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を変化させることで調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の電子顕微鏡では、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を変化させることでマイクロチャンネルプレートのゲインを変化させ、反射電子像や二次電子像のコントラストを調整していた。
【0006】
しかしながら、マイクロチャンネルプレートは鏡筒内に配置される。そのため、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を変化させると、試料に照射される電子線に影響を与えてしまい、電子線の軸ずれ、すなわち、電子線が光学系の光軸からずれてしまう場合があった。このように、従来の電子顕微鏡では、良好な反射電子像や二次電子像を得るためには、像のコントラストを調整するごとに、電子線の軸合わせを行わなければならず、操作性が悪かった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、操作性に優れた電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子顕微鏡の一態様は、
電子を検出するマイクロチャンネルプレートと、
前記マイクロチャンネルプレートからの電流信号を電圧信号に変換する変換回路と、
前記電圧信号を増幅または減衰させる調整回路と、
前記調整回路の出力信号に基づいて、検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記調整回路のゲインを制御するゲイン制御部と、
を含み、
前記ゲイン制御部は、
前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化する前の前記検出信号と、前記マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化した後の前記検出信号と、に基づいて、前記調整回路のゲインを制御する。
【0009】
このような電子顕微鏡では、調整回路を含むため、マイクロチャンネルプレートで電子を検出して検出信号として出力する回路全体(電子検出部)のゲインを、調整回路のゲインを制御することで制御することができる。そのため、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を変化させなくても、調整回路のゲインを制御することで、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を変化させたときと同様に、電子顕微鏡像のコントラストを調整することができる。したがって、このような電子顕微鏡では、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧を変化させるごとに、すなわち、電子顕微鏡像のコントラストを変化させるごとに、電子線の軸合わせを行う必要がなく、操作性を向上できる。
【0010】
さらに、このような電子顕微鏡では、ゲイン制御部が、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化する前の検出信号と、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化した後の検出信号と、に基づいて、調整回路のゲインを制御する。そのため、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧の変化の前後の電子検出部のゲインの差を小さく、または差を無くすことができる。これにより、電子検出部のゲインの変化が連続的となり、ユーザーはマイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化したことを意識することなく、電子顕微鏡像のコントラストの調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】高電圧印加部、電子検出部、および制御部の構成を示す図。
【
図3】マイクロチャンネルプレートに印加される電圧とマイクロチャンネルプレートのゲインとの関係を示すグラフ。
【
図4】マイクロチャンネルプレートに印加される電圧およびDACのゲインと電子検出部のゲインとの関係を示すグラフ。
【
図6】実施形態に係る電子顕微鏡の処理部の処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】電子検出部のゲインとマイクロチャンネルプレートに印加される電圧およびDACのゲインとの関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1. 電子顕微鏡
まず、本実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0014】
電子顕微鏡100は、
図1に示すように、電子源2と、コンデンサーレンズ3と、偏向器4と、走査コイル5と、対物レンズ6と、マイクロチャンネルプレート7と、高電圧印加部8と、検出回路9と、制御部10と、を含んで構成されている。
【0015】
電子源2は、電子線を放出する。電子源2は、例えば、公知の電子銃である。
【0016】
コンデンサーレンズ3は、電子線を集束させて、試料Sに照射するためのレンズである。
【0017】
偏向器4は、電子源2から放出された電子線を二次元的に偏向する。偏向器4は、例えば、電子線を、光学系(例えば対物レンズ6)の光軸OAに合わせる(一致させる)ために、すなわち電子線の軸合わせのために用いられる。
【0018】
走査コイル5は、コンデンサーレンズ3および対物レンズ6で集束された電子線(電子プローブ)で試料S上を走査するためのコイルである。
【0019】
対物レンズ6は、電子源2から放出された電子線を集束して試料Sに照射する。対物レンズ6は、試料Sの直前に配置され、電子プローブを形成する。試料Sは、試料ホルダー(図示せず)によって保持されている。
【0020】
マイクロチャンネルプレート7は、電子線が試料Sに照射されることで発生する反射電子を検出する反射電子検出器を構成している。マイクロチャンネルプレート7は、電子顕微鏡100を構成する光学系(偏向器4、走査コイル5、対物レンズ6等)が収容される鏡筒内に配置されている。
【0021】
なお、ここでは、マイクロチャンネルプレート7が反射電子を検出する反射電子検出器を構成する場合について説明するが、マイクロチャンネルプレート7が二次電子を検出する二次電子検出器を構成してもよい。すなわち、電子顕微鏡100で取得される電子顕微鏡像は、反射電子像であってもよいし、二次電子像であってもよい。
【0022】
高電圧印加部8は、マイクロチャンネルプレート7に高電圧を印加する。高電圧印加部8でマイクロチャンネルプレート7に印加する電圧を制御することで、マイクロチャンネルプレート7のゲインを制御することができる。
【0023】
検出回路9は、マイクロチャンネルプレート7からの電流信号に基づいて、検出信号を生成する。検出信号は、反射電子の強度の情報を含む信号である。
【0024】
制御部10は、電子顕微鏡100を構成する各部、すなわち、コンデンサーレンズ3、偏向器4、走査コイル5、対物レンズ6、高電圧印加部8、および検出回路9を制御する。また、制御部10は、検出回路9で生成された検出信号に基づいて反射電子像を生成し、表示部16(
図2参照)に表示する処理を行う。
【0025】
電子顕微鏡100では、電子源2から放出された電子線は、コンデンサーレンズ3および対物レンズ6で集束されて電子プローブを形成する。走査コイル5によって電子プローブで試料S上を走査し、試料Sから放出された反射電子をマイクロチャンネルプレート7で検出する。検出回路9では、マイクロチャンネルプレート7の出力信号(電流信号)から検出信号が生成され、制御部10では、検出信号に基づき反射電子像が生成される。
【0026】
なお、電子顕微鏡100は、上述したレンズやコイル以外のレンズや、コイル、絞り等を備えていてもよい。また、電子顕微鏡100は、反射電子検出器以外の検出器を備えていてもよい。例えば、電子顕微鏡100は、試料Sを透過した電子線を検出する検出器を備えていてもよい。試料Sを透過した電子線を検出する検出器を用いて、試料Sを透過した電子線を検出することで、走査透過電子顕微鏡像(STEM像、scanning transmission electron microscope image)を得ることができる。
【0027】
図2は、高電圧印加部8、電子検出部70、および制御部10の構成を示す図である。
【0028】
高電圧印加部8は、高電圧発生源80と、高電圧切り替えスイッチ82と、を含んで構成されている。
【0029】
高電圧発生源80は、マイクロチャンネルプレート7に印加される高電圧を発生させる。
【0030】
高電圧切り替えスイッチ82は、マイクロチャンネルプレート7に印加される高電圧を切り替える。図示の例では、高電圧切り替えスイッチ82は、マイクロチャンネルプレート7に印加される高電圧を、高電圧HV1、高電圧HV2、高電圧HV3の3通りに切り替え可能に構成されている。
【0031】
高電圧切り替えスイッチ82は、制御部10の高電圧制御部120で制御される。具体的には、操作部14においてマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報の入力を受け付けると、高電圧制御部120が当該電圧の情報に基づいて、高電圧切り替えスイッチ82を制御する。これにより、所望の高電圧がマイクロチャンネルプレート7に印加される。
【0032】
なお、上記では、高電圧印加部8は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を3段階に切り替える場合について説明したが、高電圧印加部8は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧をN段階(Nは2以上の整数)に切り替え可能に構成されていてもよい。
【0033】
マイクロチャンネルプレート7には、高電圧印加部8によって高電圧が印加されており、検出した反射電子を増幅して、反射電子の強度に応じた電流信号として出力する。
【0034】
検出回路9は、電流電圧変換回路90と、デジタルアナログ変換回路(Digital to Analog Converter、以下「DAC」ともいう)92(調整回路の一例)と、検出信号生成回路94と、を含んで構成されている。
【0035】
電流電圧変換回路90は、マイクロチャンネルプレート7からの電流信号を電圧信号に変換する。
【0036】
DAC92は、電流電圧変換回路90からの電圧信号を増幅または減衰する。電流電圧変換回路90からの電圧信号は、DAC92にリファレンス電圧として入力される。ゲイン制御部122から入力されるDAC92のデータを変更することで、DAC92の出力電圧を変更することができる。すなわち、DAC92のデータを変更することで、DAC92のゲインを制御することができる。DAC92のゲインは、電流電圧変換回路90からの電圧信号(入力)とDAC92の出力信号(出力)の比である。
【0037】
図2に示す例では、DAC92は、電流電圧変換回路90と増幅回路940との間に配置されているが、DAC92の位置は、電流電圧変換回路90とDAC946との間であれば特に限定されない。
【0038】
検出信号生成回路94は、DAC92の出力信号に基づいて、検出信号を生成する。検出信号生成回路94は、増幅回路940と、レベルシフト回路942と、増幅回路944と、DAC946と、を有している。
【0039】
増幅回路940は、DAC92の出力信号を増幅する。レベルシフト回路942は、DAC946でデジタル信号に変換可能となるように、低電位にレベルシフトする。レベルシフト回路942としては、フォトカプラ等を用いることができる。増幅回路944は、レベルシフト回路942の出力信号を増幅する。DAC946は、増幅回路944の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、検出信号を生成する。検出信号は、制御部10に送られる。制御部10では、検出信号に基づいて反射電子像が生成され、表示部16に反射電子像が表示される。
【0040】
マイクロチャンネルプレート7と検出回路9とは、電子検出部70を構成している。電子検出部70では、マイクロチャンネルプレート7で検出された反射電子(入力)を、検出信号として出力する。電子検出部70のゲインは、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧、およびDAC92のゲインで制御される。電子検出部70のゲインは、マイクロチャンネルプレート7で検出される反射電子(入力)と検出信号(出力)の比である。
【0041】
図3は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧と、マイクロチャンネルプレート7のゲインと、の関係を示すグラフである。
図3に示すグラフでは、横軸にマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を示し、縦軸にマイクロチャンネルプレート7のゲインを示している。なお、縦軸は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が高電圧HV1のときの、マイクロチャンネルプレート7のゲインを基準(「1」)とした相対値である。
【0042】
図3に示すように、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧は、高電圧印加部8によって、3段階(高電圧HV1,HV2,HV3)に切り替えられる。そのため、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替えることで、マイクロチャンネルプレート7のゲインを3段階に切り替えることができる。
【0043】
図4は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧およびDAC92のゲインと、電子検出部70のゲインと、の関係を示すグラフである。
図4に示すグラフでは、横軸にマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を示し、縦軸に電子検出部70のゲインを示している。また、長方形の箱の大きさがDAC92のゲインを調整できる範囲を表している。
【0044】
図3および
図4に示すように、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧は、3段階に切り替えられる。そのため、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替えることによって、電子検出部70のゲインを3段階に切り替えることができる。
【0045】
また、DAC92のゲインは、ゲイン制御部122でDAC92のデータを入力することで変更することができる。DAC92では、DAC92の分解能に応じたゲインの制御可能である。したがって、
図4に示すように、DAC92のゲインを変更することで、電子検出部70のゲインを、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を変えた場合よりも細かく変えることができる。
【0046】
すなわち、電子顕微鏡100では、高電圧印加部8は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧をN段階に切り替え、ゲイン制御部122は、DAC92のゲインをn段階に切り替え、N<nである。例えば、高電圧切り替えスイッチ82が高電圧を3通りに切り替え、DAC92の分解能が8ビットの場合、N=3であり、n=255である。
【0047】
このように、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の切り替え(粗調整)と、DAC92のゲインの制御(微調整)とによって、電子検出部70のゲインを制御する。これにより、電子顕微鏡100では、電子検出部70のゲインを、広範囲に精度よく調整することが可能となる。
【0048】
なお、
図4に示すように、例えば、高電圧HV1とした場合と、高電圧HV2とした場合と、において、電子検出部70のゲインを調整できる範囲が重複する場合には、DAC92のゲインを上げて使用できる範囲を採用する。すなわち、電子顕微鏡100では、
図4においてハッチングを付した領域は使用しない。DAC92は、ゲインが小さい場合、ゲインが大きい場合と比べて、SN比が低下してしまう。そのため、DAC92のゲイン
を上げて使用できる範囲を採用することで(すなわち
図4のハッチングを付した領域を用いないことで)、SN比を向上できる。
【0049】
電子顕微鏡100では、電子検出部70のゲインを調整することで、反射電子像のコントラストを調整することができる。
【0050】
制御部10は、処理部12と、操作部14と、表示部16と、記憶部18と、を含んで構成されている。
【0051】
操作部14は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部12に送る処理を行う。操作部14は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。また、操作部14は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報の入力を受け付ける入力部として機能する。また、操作部14は、電子検出部70のゲインの情報の入力を受け付ける入力部としても機能する。すなわち、ユーザーは、操作部14を操作することで、反射電子像のコントラストを調整することができる。
【0052】
表示部16は、処理部12によって生成された画像を表示するものである。表示部16は、LCD(liquid crystal display)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ、などのディスプレイにより実現できる。
【0053】
記憶部18は、処理部12が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部18は、処理部12の作業領域として用いられ、処理部12が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。記憶部18は、RAM(random access memory)や、ROM(read only memory)、ハードディスクなどにより実現できる。
【0054】
記憶部18には、後述する電子線の軸合わせに用いられる情報が記憶されている。具体的には、記憶部18には、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧と、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系(偏向器4等)の条件と、の関係の情報が記憶されている。電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧は、高電圧HV1,HV2,HV3の3通りである。そのため、記憶部18には、マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV1が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報、マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV2が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報、およびマイクロチャンネルプレート7に高電圧HV3が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報が記憶されている。
【0055】
マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV1が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報は、例えば、マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV1を印加して、光学系(例えば偏向器4)を用いて軸合わせを行い、そのときの光学系の条件を記録することで得ることができる。
【0056】
マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV2が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報、およびマイクロチャンネルプレート7に高電圧HV3が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報も、高電圧HV1の場合と同様に得ることができる。
【0057】
処理部12は、記憶部18に記憶されているプログラムに従って、各種の制御処理や計算処理を行う。処理部12の機能は、各種プロセッサ(CPU(central processing unit)等)でプログラムを実行することにより実現することができる。なお、処理部12の
機能を、FPGA(field-programmable gate array)などにより実現してもよい。
【0058】
処理部12は、高電圧制御部120と、ゲイン制御部122と、光学系制御部124と、を含む。
【0059】
高電圧制御部120は、高電圧切り替えスイッチ82を制御する。高電圧制御部120は、操作部14に入力されたマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報に基づいて、高電圧切り替えスイッチ82を制御する。高電圧制御部120が高電圧切り替えスイッチ82を切り替えることで、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替えることができる。
【0060】
ゲイン制御部122は、DAC92に所定のデータを入力して、DAC92のゲインを制御する。ゲイン制御部122は、操作部14に入力された電子検出部70のゲインの情報、すなわち反射電子像のコントラストの情報に基づいてDAC92に入力されるデータ値を求め、DAC92のゲインを制御する。
【0061】
また、ゲイン制御部122は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が切り替えられる場合、すなわち、操作部14にマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報が入力された場合に、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化する前(切り替えられる前)の検出信号と、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化した後(切り替えられた後)の検出信号と、に基づいて、DAC92のゲインを制御する。
【0062】
具体的には、ゲイン制御部122は、まず、操作部14にマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報が入力されると、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化する前の所定時間の検出信号の平均値(以下、「電圧変化前の検出信号の平均値」ともいう)と、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化した後の所定時間の検出信号の平均値(以下、「電圧変化後の検出信号の平均値」ともいう)と、を算出する。このとき、変化前の検出信号を平均する時間(所定時間)と、変化後の検出信号を平均する時間(所定時間)とは、例えば、等しい。
【0063】
次に、ゲイン制御部122は、電圧変化前の検出信号の平均値と電圧変化後の検出信号の平均値との差を計算する。そして、ゲイン制御部122は、この差が小さくなるように、より好ましくは差が零となるようにDAC92を制御する。
【0064】
この結果、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の切り替えの前後の電子検出部70のゲインの差を小さく、またはゲインの差を零とすることができる。これにより、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化することによる反射電子像のコントラストの変化を小さくできる。そのため、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が切り替えられた場合でも、電子検出部70のゲインの変化が連続的となる。したがって、ユーザーはマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化したことを意識することなく、反射電子像のコントラストの調整が可能である。
【0065】
電圧変化前の検出信号の平均値および電圧変化後の検出信号の平均値は、電子プローブで試料Sの所定の領域を走査して、マイクロチャンネルプレート7で反射電子を検出することで得られる。このとき、電圧変化前の検出信号の平均値を取得するために、電子プローブで走査する際の試料Sの走査領域と、電圧変化後の検出信号の平均値を取得するために、電子プローブで走査する際の試料Sの走査領域とは、同じ領域であることが好ましい。これにより、DAC92のゲインをより適切に設定することができ、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化することによる反射電子像のコントラストの変化を
より小さくできる。
【0066】
光学系制御部124は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧に応じて、電子線が光軸OAに合った状態となるように光学系(例えば偏向器4)を制御する。具体的には、光学系制御部124は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が切り替えられると、記憶部18に記憶された、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧と電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件との関係の情報に基づき、光学系を制御する。
【0067】
例えば、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が高電圧HV1に切り替えられた場合には、記憶部18に記憶されている、マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV1が印加されたときに、電子線が光軸OAに合った状態となる光学系の条件の情報から、光学系の条件を決定し、光学系を制御する。
【0068】
この結果、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が切り替えられた場合でも、電子線が光軸OAに合った状態とすることができる。すなわち、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が切り替えられた場合でも、電子線の軸ずれを無くす、あるいは軸ずれを小さくできる。
【0069】
2. DACの動作例
次に、DAC92の動作例について説明する。
図5は、電子検出部70の構成を示す図である。
図5では、検出信号生成回路94を1つの増幅回路として示している。ここでは、
図5を用いて、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を、高電圧HV1から高電圧HV2に切り替えたときのDAC92の動作について説明する。
【0070】
図5に示す例において、DAC92の分解能は、8ビットとする。また、検出信号生成回路94のゲインA1は、A1=16とする。
【0071】
マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が高電圧HV1であって、高電圧HV1から高電圧HV2に切り替える直前において、リファレンス電圧V1がV1=Vref1であり、DAC92のデータ値がFF(HEX)(255(DEC))であったものとする。なお、「(HEX)」は16進数であることを示し、「(DEC)」は10進数であることを示している。
【0072】
また、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が高電圧HV1から高電圧HV2に切り替えられた直後において、リファレンス電圧V1がV1=Vref2であり、DAC92のデータ値が0F(HEX)(15(DEC))であったものとする。なお、高電圧が切り替えられた直後のDAC92のデータ値は、電子検出部70のゲイン特性が大きくずれないように、高電圧切り替え時に自動で設定される値である。
【0073】
マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が高電圧HV1のとき、DAC92の出力電圧V2はV2=Vref1であり、検出信号生成回路94の出力電圧V0はV0=16×V2である。
【0074】
また、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が高電圧HV2のとき、DAC92の出力電圧V2、および検出信号生成回路94の出力電圧V0は以下の通りである。
【0075】
V2=(0F/FF)×Vref2=(15/255)×Vref2≒0.0588×Vref2・・・(1)
V0=16×V2
【0076】
図3に示すグラフからVref2は以下のように表される。
【0077】
Vref1×10=Vref2・・・(2)
【0078】
したがって、式(1)および式(2)から、マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV2が印加されたときのDAC92の出力電圧V2は以下のように表される。
【0079】
V2=0.0588×Vref1×10=0.588×Vref1
【0080】
マイクロチャンネルプレート7に高電圧HV1が印加されたときの検出信号生成回路94の出力電圧V0は、以下の通りである。
【0081】
V0=16×Vref1・・・(3)
【0082】
また、およびマイクロチャンネルプレート7に高電圧HV2が印加されたときの検出信号生成回路94の出力電圧V0は、以下の通りである。
【0083】
V0=16×0.588×Vref1=9.408×Vref1・・・(4)
【0084】
上記式(3)と上記式(4)の差を、制御部10(ゲイン制御部122)で計算し、DAC92のデータに反映する。
【0085】
ここでは、DAC92のデータは、以下の値となる。
【0086】
15×(16/9.408)≒25(DEC)
DATA:19(HEX)
【0087】
マイクロチャンネルプレート7に印加される高電圧を高電圧HV1から高電圧HV2に切り替えた後に、DAC92のデータに19(HEX)を書き込むことで、高電圧を切り替える直前の電子検出部70のゲインに近い(好ましくは同じ)状態にすることができる。
【0088】
3. 動作
次に、電子顕微鏡100の動作について説明する。以下では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替える際の処理部12の処理について説明する。
図6は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の処理部12の処理の一例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、処理部12は、ユーザーからのマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替える指示(電圧切り替え指示)があったか否かを判定し(ステップS100)、電圧切り替え指示があるまで待機する。処理部12は、操作部14がマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報の入力を受け付けた場合に、電圧切り替え指示があったと判定する。
【0090】
電圧切り替え指示があったと判定された場合(S100のYes)、ゲイン制御部122は、DAC92のゲインを制御する処理を開始する。具体的には、ゲイン制御部122は、まず、電子検出部70からの検出信号を所定時間、取得して、検出信号の平均値A(すなわち電圧変化前の検出信号の平均値)を算出する(S102)。
【0091】
ゲイン制御部122が検出信号を所定時間取得した後、高電圧制御部120は、操作部14に入力された電圧の情報に基づきマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替える(S104)。
【0092】
マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が切り替えられると、光学系制御部124は、電子線が光軸OAに合うように光学系の条件を制御する(S106)。これにより、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化することによる、電子線の軸ずれを無くす、あるいは軸ずれを低減できる。
【0093】
次に、ゲイン制御部122は、電子検出部70からの検出信号を所定時間、取得して、検出信号の平均値B(すなわち電圧変化後の検出信号の平均値)を算出する(S108)。
【0094】
次に、ゲイン制御部122は、平均値Aと平均値Bとの差に基づいて、DAC92のゲインを制御する(S110)。具体的には、ゲイン制御部122は、平均値Aと平均値Bとの差が小さくなるように(好ましくは零となるように)DAC92のゲインを制御する。これにより、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化することによる反射電子像のコントラストの変化を小さくできる。
【0095】
処理部12は、DAC92のゲインの制御を行った後(S110の後)、ステップS100に戻って、ステップS100,S102,S104,S106,S108,S110の処理を繰り返す。
【0096】
4. 特徴
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0097】
電子顕微鏡100は、電子を検出するマイクロチャンネルプレート7と、マイクロチャンネルプレート7からの電流信号を電圧信号に変換する電流電圧変換回路90と、電流電圧変換回路90からの電圧信号を増幅または減衰させるDAC92と、DAC92の出力信号に基づいて、検出信号を生成する検出信号生成回路94と、DAC92のゲインを制御するゲイン制御部122と、を含み、ゲイン制御部122は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化する前の検出信号と、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化した後の検出信号と、に基づいて、DAC92のゲインを制御する。
【0098】
このように電子顕微鏡100では、DAC92を含むため、DAC92のゲインを制御することで、電子検出部70のゲインを制御することができる。そのため、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を変化させなくても、DAC92のゲインを制御することによって、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を変化させたときと同様に、反射電子像のコントラストを調整することができる。したがって、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を変化させるごとに、すなわち、電子顕微鏡像のコントラストを変化させるごとに、電子線の軸合わせを行う必要がなく、操作性を向上できる。
【0099】
電子顕微鏡100では、電子検出部70のゲイン調整、すなわち反射電子像のコントラストの調整は、ユーザーが、最初に試料Sの観察に適したマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を選択し(粗調整)、その後、DAC92のゲインを調整すること(微調整)で行うことができる。そのため、電子顕微鏡100では、反射電子像のコントラストを調整するたびに電子線の軸合わせを行う必要がなく、優れた操作性を有する。
【0100】
さらに、電子顕微鏡100では、ゲイン制御部122は、マイクロチャンネルプレート
7に印加される電圧が変化する前の検出信号と、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化した後の検出信号と、に基づいて、DAC92のゲインを制御する。
【0101】
そのため、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の切り替えの前後の電子検出部70のゲインの差を小さく、またはゲインの差を零とすることができる。これにより、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化することによる反射電子像のコントラストの変化を小さくできる。したがって、電子検出部70のゲインの変化が連続的となり、ユーザーはマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化したことを意識することなく、反射電子像のコントラストの調整が可能である。したがって、電子顕微鏡100では、操作性を向上できる。
【0102】
電子顕微鏡100では、ゲイン制御部122は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化する前の所定時間の検出信号の平均値である第1平均値と、マイクロチャンネルプレートに印加される電圧が変化した後の所定時間の検出信号の平均値である第2平均値と、の差を算出し、第1平均値と第2平均値との差が小さくなるようにDAC92のゲインを制御する。そのため、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の切り替えの前後の電子検出部70のゲインの差を小さく、またはゲインの差を零とすることができる。
【0103】
電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報の入力を受け付ける入力部としての操作部14を含み、ゲイン制御部122は、操作部14がマイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の情報を受け付けた場合に、DAC92のゲインを制御する処理を開始する。そのため、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧の変化を意識することなく、反射電子像のコントラストの調整が可能である。
【0104】
電子顕微鏡100では、電子線を試料Sに照射する光学系(コンデンサーレンズ3、偏向器4、走査コイル5、対物レンズ6等)と、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧に応じて、電子線が光学系の光軸OAに合った状態となるように光学系を制御する光学系制御部124と、を含む。そのため、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化しても、自動で電子線が光軸OAに合った状態とすることができる。
【0105】
電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧と、電子線が光軸OAにあった状態となる光学系の条件と、の関係の情報を記憶する記憶部18を含み、光学系制御部124は、前記関係の情報に基づいて光学系を制御する。そのため、電子顕微鏡100では、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧が変化しても、自動で電子線が光軸OAに合った状態とすることができる。
【0106】
電子顕微鏡100は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を切り替える高電圧印加部8を含む。さらに、電子顕微鏡100の高電圧印加部8は、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧をN段階に切り替え、ゲイン制御部122は、DAC92のゲインをn段階に切り替え、N<nである。そのため、電子顕微鏡100では、電子検出部70のゲインを、広範囲に精度よく調整することができる。
【0107】
5. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0108】
5.1. 第1変形例
図7は、電子検出部70のゲインと、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧およびDAC92のゲインと、の関係の一例を示すグラフである。
【0109】
図7に示すように、電子検出部70のゲインと、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧およびDAC92のゲインと、を一対一に対応させてもよい。すなわち、反射電子像のコントラスト値に応じて、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧およびDAC92のゲインがそれぞれ一義的に決まるようにしてもよい。これにより、ユーザーは、マイクロチャンネルプレート7に印加される電圧を選択することなく、反射電子像のコントラストを調整することができる。
【0110】
5.2. 第2変形例
上記の実施形態では、
図2に示すように、ゲイン制御部122は、DAC946から出力される検出信号に基づいてDAC92のゲインの制御を行った。すなわち、上記の実施形態では、反射電子像を生成するための検出信号と、DAC92のゲインの制御を行うための検出信号と、を同じDAC946の出力信号から得ていた。
【0111】
これに対して、本変形例では、図示はしないが、反射電子像を生成するための検出信号を得るためのDAC946とは別に、DAC92のゲインの制御を行うための検出信号を得るためのDACを設けてもよい。これにより、DAC92のゲインの制御に適した回路を組むことができる。
【0112】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0113】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0114】
2…電子源、3…コンデンサーレンズ、4…偏向器、5…走査コイル、6…対物レンズ、7…マイクロチャンネルプレート、8…高電圧印加部、9…検出回路、10…制御部、12…処理部、14…操作部、16…表示部、18…記憶部、70…電子検出部、80…高電圧発生源、82…高電圧切り替えスイッチ、90…電流電圧変換回路、92…DAC、94…検出信号生成回路、100…電子顕微鏡、120…高電圧制御部、122…ゲイン制御部、124…光学系制御部、940…増幅回路、942…レベルシフト回路、944…増幅回路、946…DAC