(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】眼鏡レンズの保持具の処理方法、処理装置、および眼鏡レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 13/005 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
B24B13/005 Z
(21)【出願番号】P 2018026010
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-508813(JP,A)
【文献】特開2001-212742(JP,A)
【文献】特開2013-255956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0102739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-1/04
B24B9/00-19/28
B24B41/06
G02C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの加工装置に設置される土台と、
前記土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台よりも融点が低い低融点金属部材と、
を備えた眼鏡レンズの保持具に対する処理方法であって、
前記土台を加熱する加熱工程と、
前記土台から前記低融点金属部材へと熱を伝達し、前記土台の近傍の前記低融点金属部材を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く固着解除工程と、
を有する、眼鏡レンズの保持具の処理方法。
【請求項2】
前記加熱工程および前記固着解除工程は、前記低融点金属部材を液体に接触させない乾式にて行う、請求項1に記載の眼鏡レンズの保持具の処理方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、電磁誘導加熱機構により前記土台に対して加熱を行う、請求項1または2に記載の眼鏡レンズの保持具の処理方法。
【請求項4】
前記固着解除工程では、前記土台および前記低融点金属部材の少なくともいずれかを保持する保持機構により、前記土台と前記低融点金属部材とを離間させる、請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡レンズの保持具の処理方法。
【請求項5】
眼鏡レンズの加工装置に設置される土台と、
前記土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台よりも融点が低い低融点金属部材と、
を備えた眼鏡レンズの保持具に対する処理装置であって、
前記土台を加熱するための熱を生成する熱源を備え、
前記熱源は、前記土台に固着する前記低融点金属部材へと熱を伝達させ、前記土台の近傍の前記低融点金属部材を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く、眼鏡レンズの保持具の処理装置。
【請求項6】
前記熱源は電磁誘導加熱機構である、請求項5に記載の眼鏡レンズの保持具の処理装置。
【請求項7】
前記土台および前記低融点金属部材の少なくともいずれかを保持する保持機構を更に有し、前記保持機構により前記土台と前記低融点金属部材とを離間させる、請求項5または6に記載の眼鏡レンズの保持具の処理装置。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の眼鏡レンズの保持具の処理方法により固着が解除された前記土台と前記低融点金属部材とを再利用し、再び前記土台に固着させた前記低融点金属部材に対して眼鏡レンズを固着する眼鏡レンズ固着工程と、
前記低融点金属部材に固着された眼鏡レンズを、前記眼鏡レンズの加工装置にて加工する眼鏡レンズ加工工程と、
を有する、眼鏡レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの保持具の処理方法、処理装置、および眼鏡レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの製造工程には、眼鏡レンズ(詳しく言うと両面のうち一面を光学的に仕上げたセミフィニッシュトレンズ(semi-finished lens))の切削工程および研磨工程が含まれる。これらの工程は共に眼鏡レンズの加工装置により行われる場合が多い。この眼鏡レンズを保持具にて保持する。次に、この保持具を前記加工装置に設置する。そして、この眼鏡レンズに対して切削工程および研磨工程の少なくともいずれか(以降、加工工程または単に加工と称する。)を行う。
【0003】
前記保持具は、例えば特許文献1の
図1等に示すように、眼鏡レンズの加工装置に設置される土台と低融点金属部材とを備えている。この低融点金属部材は、土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ土台よりも融点が低い。以降、前記土台のことをヤトイ(fixture)と称する。また、前記低融点金属部材は、好ましくは低融点合金からなるためアロイ(alloy)と称する。保持具が加工装置に設置される際には、アロイにおける眼鏡レンズの光学面に倣った形状と、加工工程前の眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)の光学面とが、保護フィルムを介して固着している。
【0004】
加工工程後、眼鏡レンズ付き保持具は加工装置から取り外される。そして眼鏡レンズは保持具から取り外される(deblocking)。複数の眼鏡レンズ付き保持具から眼鏡レンズを取り外す作業を連続して行う装置が知られている。この従来装置では、眼鏡レンズ付き保持具全体に対して高温水を接触させる。これにより、アロイを溶融させ、眼鏡レンズとヤトイとを分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来装置だと、眼鏡レンズ付き保持具全体に対して接触した後の高温水(排水)の中には溶融したアロイが含まれる。しかも、複数の眼鏡レンズ付き保持具に対して連続で眼鏡レンズの取り外しが行われるため、排水中には多量のアロイが含まれる。それに起因して以下の課題が生じる。
【0007】
一つの課題は、以下の通りである。アロイが多量に溶融した排水が飛散することにより雰囲気が汚染される可能性がある。つまり、加工工程前にて眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)において光学的に仕上がった光学面に保護フィルムを貼る前に、汚染された雰囲気由来の異物が光学面に付着する可能性がある。その結果、完成後の眼鏡レンズの品質を低下させる可能性がある。また、眼鏡レンズの製造の歩留まりを低下させる可能性がある。
また、眼鏡レンズの取り外し後のヤトイは、通常、再利用される。再利用の際に、溶融されたアロイに由来する異物が排水の飛散のせいでヤトイ全体に付着したままの可能性がある。この異物により雰囲気が汚染される可能性がある。そうなると、眼鏡レンズに保護フィルムを貼る際に、汚染された雰囲気由来の異物が眼鏡レンズに付着する可能性もある。
【0008】
別の課題は、以下の通りである。排水中のアロイは排水容器の底に溜まる。この溜まったアロイを回収して再利用することが可能である。しかしながら、溶融したアロイが排水中の酸素のせいで酸化する可能性がある。酸化アロイは、融点が変化し、硬度が低下し、保持具を形成したときに気泡が生じやすく、再利用できない。酸化アロイの量に応じてアロイを新たに補充したうえで、加工前の別の眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)をアロイにて保持させることになる。アロイの補充により費用が嵩む。また、産業廃棄物である酸化アロイを処理する費用も嵩む。
【0009】
更に別の課題は、アロイおよびヤトイに対する作業性が挙げられる。溶融したアロイを排水中から回収することは可能である。その一方、アロイは排水中にて溶融状態であり、排水容器の底をさらってアロイを回収する必要がある。先ほど述べた酸化アロイが、排水中にて溶融状態のアロイに混在する可能性もある。この状態で、酸化していないアロイのみを取り出すことは困難である。
また、排水中に溶融したアロイが含まれる場合、先に述べたようにヤトイが汚れる可能性がある。ヤトイには複数種類の形状のものがある。ヤトイが汚れると、種類ごとにヤトイを分別する際に、各種類の外見上の識別が困難となる。
以上の結果、前記従来装置だと、アロイおよびヤトイに対する作業性の改善が求められる。
【0010】
上記の各課題はいずれも排水中に溶融したアロイが含まれることに起因して生じる。そこで本発明の一実施例は、低融点金属部材(アロイ)の溶融を抑えつつ低融点金属部材(アロイ)と土台(ヤトイ)との間の固着を解く技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために案出されたものである。
本発明の第1の態様は、
眼鏡レンズの加工装置に設置される土台と、
前記土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台よりも融点が低い低融点金属部材と、
を備えた眼鏡レンズの保持具に対する処理方法であって、
前記土台を加熱する加熱工程と、
前記土台から前記低融点金属部材へと熱を伝達し、前記土台の近傍の前記低融点金属部材を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く固着解除工程と、
を有する、眼鏡レンズの保持具の処理方法である。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記加熱工程および前記固着解除工程は、前記低融点金属部材を液体に接触させない乾式にて行う。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の態様であって、
前記加熱工程では、電磁誘導加熱機構により前記土台に対して加熱を行う。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記固着解除工程では、前記土台および前記低融点金属部材の少なくともいずれかを保持する保持機構により、前記土台と前記低融点金属部材とを離間させる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
眼鏡レンズの加工装置に設置される土台と、
前記土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台よりも融点が低い低融点金属部材と、
を備えた眼鏡レンズの保持具に対する処理装置であって、
前記土台を加熱するための熱を生成する熱源を備え、
前記熱源は、前記土台に固着する前記低融点金属部材へと熱を伝達させ、前記土台の近傍の前記低融点金属部材を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く、眼鏡レンズの保持具の処理装置である。
【0016】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の態様であって、
前記熱源は電磁誘導加熱機構である。
【0017】
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様に記載の態様であって、
前記土台および前記低融点金属部材の少なくともいずれかを保持する保持機構を更に有し、前記保持機構により前記土台と前記低融点金属部材とを離間させる。
【0018】
本発明の第8の態様は、
第1~第4のいずれかの態様に記載の眼鏡レンズの保持具の処理方法により固着が解除された前記土台と前記低融点金属部材とを再利用し、再び前記土台に固着させた前記低融点金属部材に対して眼鏡レンズを固着する眼鏡レンズ固着工程と、
前記低融点金属部材に固着された眼鏡レンズを、前記眼鏡レンズの加工装置にて加工する眼鏡レンズ加工工程と、
を有する、眼鏡レンズの製造方法である。
【0019】
以下、本発明の別の態様を挙げる。下記の態様に対し、前記の各態様を適宜組み合わせても構わない。
【0020】
本発明の別の態様だと、
前記保持機構は、前記土台を保持する土台保持部と、前記低融点金属部材を保持する低融点金属部材保持部と、を備える、眼鏡レンズの保持具の処理方法である。
【0021】
本発明の別の態様だと、
前記加熱工程は、前記土台を覆う覆い部材越しに熱源を接触させることにより行う、眼鏡レンズの保持具の処理方法である。
【0022】
本発明の別の態様だと、
前記加熱工程は、前記低融点金属部材の融点以上の液体に前記土台を浸けることにより行う、眼鏡レンズの保持具の処理方法である。
【0023】
本発明の別の態様だと、
前記電磁誘導加熱機構は、前記土台の周囲に配置される誘導コイルと、前記土台と接触した熱電対と、前記熱電対と接続された温度調節器と、前記温度調節器にて設定された所定の温度へと前記土台が加熱されるように誘導コイルに供給する電力を制御するIHコントローラと、を備える、眼鏡レンズの保持具の処理方法である。
【0024】
本発明の別の態様だと、
前記保持機構は、前記土台を保持する土台保持機構と、前記低融点金属部材を保持する低融点金属部材保持機構と、を備える、眼鏡レンズの保持具の処理装置である。
【0025】
本発明の別の態様だと、
前記加熱工程は、前記土台を覆う覆い部材越しに熱源を接触させることにより行う、眼鏡レンズの保持具の処理装置である。
【0026】
本発明の別の態様だと、
前記熱源は恒温槽であり、
前記土台および前記低融点金属部材の少なくともいずれかを保持し、且つ前記土台を加熱するために前記土台を前記恒温槽内にて保持する保持機構を更に有する、眼鏡レンズの保持具の処理装置である。
【0027】
本発明の別の態様だと、
前記電磁誘導加熱機構は、前記土台の周囲に配置される誘導コイルと、前記土台と接触した熱電対と、前記熱電対と接続された温度調節器と、前記温度調節器にて設定された所定の温度へと前記土台が加熱されるように前記誘導コイルに電力を供給するIHコントローラと、を備える、眼鏡レンズの保持具の処理装置である。
【0028】
なお、以下の別の態様も挙げられる。
【0029】
本発明の更に別の態様だと、
土台と、
前記土台に固着し、且つ前記土台よりも融点が低い低融点金属部材と、
を備えた治具に対する処理方法であって、
前記土台を加熱する加熱工程と、
前記土台から前記低融点金属部材へと熱を伝達し、前記土台の近傍の前記低融点金属部材を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く固着解除工程と、
を有する、治具の処理方法である。
好ましくは、前記治具はレンズの保持具であり、前記土台はレンズの加工装置に設置され、前記低融点金属部材はレンズの光学面に倣った形状を有する、治具の処理方法である。
【0030】
本発明の更に別の態様だと、
土台と、
前記土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台よりも融点が低い低融点金属部材と、
を備えた治具に対する処理装置であって、
前記土台を加熱するための熱を生成する熱源を備え、
前記熱源は、前記土台に固着する前記低融点金属部材へと熱を伝達させ、前記土台の近傍の前記低融点金属部材を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く、治具の処理装置である。
好ましくは、前記治具はレンズの保持具であり、前記土台はレンズの加工装置に設置され、前記低融点金属部材はレンズの光学面に倣った形状を有する、治具の処理装置である。
【0031】
本発明の更に別の態様だと、前記低融点金属部材の代わりに、低融点(または低ガラス転移温度)である素材であって金属以外の素材(例えばワックスまたは樹脂)を使用してもよい。上記の各態様に係る保持具の処理方法、処理装置および眼鏡レンズの製造方法において、「低融点金属部材(アロイ)」の記載を「ワックスまたは樹脂」に置き換えてもよい。金属素材、非金属素材を包括するように「低融点金属部材(アロイ)」の記載を「低融点部材」に置き換えてもよい。「低融点金属部材(アロイ)」を「倣い部材」と置き換えてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一実施例によれば、低融点金属部材(アロイ)の溶融を抑えつつ低融点金属部材(アロイ)と土台(ヤトイ)との間の固着を解く技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本実施形態にて熱源を電磁誘導加熱機構とした場合の眼鏡レンズの保持具の処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において「~」は所定の数値以上且つ所定の数値以下を表す。
【0035】
本実施形態である眼鏡レンズの保持具の処理方法(具体的にはヤトイとアロイとの分離方法)は、以下の構成を有する。
眼鏡レンズの加工装置に設置される土台と、
前記土台に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台(ヤトイ)よりも融点が低い低融点金属部材(アロイ)と、
を備えた眼鏡レンズの保持具に対する処理方法であって、
前記土台(ヤトイ)を加熱する加熱工程と、
前記土台(ヤトイ)から前記低融点金属部材(アロイ)へと熱を伝達し、前記土台(ヤトイ)の近傍の前記低融点金属部材(アロイ)を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く固着解除工程と、
を有する、眼鏡レンズの保持具の処理方法。
【0036】
前記保持具は、土台(ヤトイ)と低融点金属部材(アロイ)とを備える。ヤトイは、眼鏡レンズの加工装置に設置されるものである。アロイは、ヤトイと、加工前の眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ。加工前の眼鏡レンズについては以降同様。)との間に挟まれて接着剤の役割を果たす。なお、加工前の眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)の光学面に対して保護フィルムを貼り付けるのがよい。その後、眼鏡レンズ付き保持具におけるヤトイが加工装置に設置される。そして、眼鏡レンズに対して加工装置により加工がおこなわれる。その際、場合によってはアロイごと眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)を加工する。
【0037】
アロイは、ヤトイに固着し、且つ眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)の光学面に倣った形状を有し、且つ前記ヤトイよりも融点が低い。
【0038】
この眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)の光学面とは、光学的に仕上がった眼球側の面または物体側の面のことである。
【0039】
アロイの融点をヤトイよりも低くする理由は、ヤトイを集中的に加熱することにより、ヤトイを経由してアロイに熱を伝達する際、ヤトイ自体を溶融させないためである。
なお、後述の固着解除工程を支障なく行えるのならば、アロイの融点とヤトイの融点との温度差には特に限定は無く、例えば50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、500℃以上が更に好ましい。
【0040】
ヤトイの素材としては、例えばステンレス、アルミニウム、鉄等の金属が挙げられる。また、アロイの素材としては、例えばBi,Pb,Sn,In,Gaの合金(このときの融点は約60℃)が挙げられ、Pbが含まれいないのが好ましい。ただ、上記のヤトイとアロイとの融点の関係を満たし、後述の加熱工程および固着解除工程を実施できるのであれば、ヤトイの素材にもアロイの素材にも特に限定は無い。また、低融点金属部材は合金でなくとも構わず、上記列挙元素単体金属であっても構わない。ただ、加熱工程にて電磁誘導加熱機構を採用するならば、ヤトイを加熱できるようにヤトイを金属製とするのがよい。
【0041】
加工装置による眼鏡レンズの加工工程後、眼鏡レンズ付き保持具を加工装置から取り外す。そして、眼鏡レンズ付き保持具から加工後の眼鏡レンズを取り外す。その後、本実施形態における、ヤトイを加熱する加熱工程を行う。なお、眼鏡レンズが固着したままの保持具に対して加熱工程を行うことは妨げない。ただ、熱が眼鏡レンズに与える影響を抑えるためには、先に眼鏡レンズを取り外しておくのがよい。眼鏡レンズを取り外す手法としては公知のものを用いても構わない。
【0042】
本実施形態においては、前記加熱工程により、ヤトイからアロイへと熱を伝達する。そして、ヤトイの近傍のアロイを部分的に溶融させることによりヤトイとアロイとの間の固着を解く固着解除工程を行う。
【0043】
「部分的に溶融」とは、アロイにおけるヤトイとの界面部分のみを溶融させることを指す。「ヤトイの近傍のアロイ」とは、アロイにおけるヤトイとの界面部分のことを指す。
【0044】
また、「ヤトイとアロイとの間の固着を解く」とは、固体であるヤトイから固体であるアロイが分離することを指す、すなわち、固着が解かれる際に、アロイ全体は溶融していないことを指す。つまり、本実施形態においては、アロイにおけるヤトイとの界面部分のみを溶融させることにより、ヤトイとアロイとを分離する。本実施形態においては、この局所的な溶融を、ヤトイに対する集中的な加熱、およびヤトイを経由したアロイ(特にヤトイとの界面部分)への熱の伝達により実現する。
【0045】
以上の各工程により、アロイの溶融を抑えつつアロイとヤトイとの間の固着を解くことが可能となる。それに伴い、前記従来装置にて生じる可能性を抑制できる。すなわち、排水中に溶融したアロイが含まれる可能性を抑制できる。
【0046】
その結果、一つの効果として、雰囲気の汚染を抑制でき、異物が眼鏡レンズに付着する可能性を抑制できる。また、アロイとヤトイとの間の固着を解いた後のヤトイが再利用される際、ヤトイ全体に異物が付着する可能性も抑制できる。そのため、完成後の眼鏡レンズの品質を低下させる可能性を抑制でき、眼鏡レンズの製造の歩留まりを低下させる可能性を抑制できる。
【0047】
別の効果として、アロイの溶融量を低く抑えられるため、溶融したアロイから生じる酸化アロイの発生量も低く抑えられる。そのため、アロイを新たに補充する頻度が減り、費用が減る。また、産業廃棄物である酸化アロイを処理する費用も減る。
【0048】
更に別の効果として、アロイおよびヤトイに対する作業性が向上する。先ほど述べたように、アロイが溶融するのはヤトイとの界面部分のみであり、その他の部分は固体のままである。そのため、アロイをほぼ固体のまま別容器に保管することが可能となる。つまり、前記従来装置にて想定される、溶融状態のアロイが排水に浸かったままという状態を回避できる。また、排水容器の底をさらって溶融状態のアロイを回収するという作業は不要となる。また、先ほど述べたように、回収したほぼ固体のアロイには溶融状態のアロイはほぼ含まれていない。そもそも溶融状態のアロイが排水に浸かったままという状態を回避されている。その結果、回収したほぼ固体のアロイには、酸化アロイはほぼ含まれていない。
また、先に述べたようにヤトイが汚れる可能性も抑制できる。そのため、本実施形態におけるヤトイとアロイとの分離後、種類ごとにヤトイを容易に分別することが可能となる。
【0049】
アロイは液体状態だと沸点に至るまでは融点以上の温度に上昇する。その一方、固体状態だと融点近傍の温度のままである。つまり、アロイにおけるヤトイとの界面部分さえ局所的に融点以上に温度を上昇させられれば、アロイにおける界面部分以外の部分を固体状態のままでヤトイから分離できる。本実施形態は、この性質を巧みに利用している。
【0050】
以下、本実施形態における好適例を挙げる。
【0051】
加熱工程の具体的な手法として、電磁誘導加熱機構(以降、IH機構とも言う。)により前記ヤトイに対して集中的に加熱を行う手法を挙げる。IH機構を採用することにより、ヤトイとアロイとの分離時間を大幅に短縮することができる。
【0052】
図1は、本実施形態にて熱源をIH機構とした場合の眼鏡レンズの保持具1の処理装置11の概略図である。以下、
図1を用いて説明する。
図1におけるアロイ3においてアロイ保持部5と接触する部分は、実際には、眼鏡レンズの光学面に倣う形状を有している。ヤトイ2は、ヤトイ保持部4の内部に隠れるように保持されるため、破線で記載している。
なお、説明の便宜上、明細書中における符号は、最初に登場するもの以外では適宜省略する。
【0053】
前記IH機構6は、ヤトイ2に対して集中的に電磁誘導加熱が行えるのならば特に限定は無く、公知のものを採用しても構わない。IH機構は、例えば、前記ヤトイの周囲に配置される誘導コイル7と、前記ヤトイと接触した熱電対8と、前記熱電対と接続された温度調節器9と、前記温度調節器にて設定された所定の温度へと前記ヤトイが加熱されるように誘導コイルに供給する電力を制御するIHコントローラ10と、を備える。このとき誘導コイルの内側にはヤトイのみを配置する。ただ、ヤトイとアロイ3との界面部分のごく一部のアロイ(例えば厚さ方向1~2mmまで)が誘導コイルの内側に存在する場合は許容される。
【0054】
IH機構を設ける場合、前記加熱工程および前記固着解除工程においては、前記アロイを高温水に接触させないで済む。また、IH機構を設ける場合、ヤトイも液体に接触させないで済む。つまり、IH機構を設ける場合、完全乾式にて前記加熱工程および前記固着解除工程が行われることになる。
【0055】
前記固着解除工程では、アロイ(あるいはヤトイ)の自由落下により両者の固着を解いても構わない。ただ、前記ヤトイおよび前記アロイの少なくともいずれかを保持する保持機構により、前記ヤトイと前記アロイとを強制的に離間させるのが好ましい。この構成により作業時間を短縮できる。また、自由落下の場合、分離または落下の衝撃に伴うアロイの溶融部分の飛散により、雰囲気が若干汚染する可能性もゼロではない。その一方、保持機構を設けることにより、このような汚染の可能性を抑制できる。
【0056】
前記保持機構は、前記ヤトイを保持するヤトイ保持部4と、前記アロイを保持するアロイ保持部5と、を備えるのが好ましい。この構成により、作業時間を相当短縮できる。
【0057】
ヤトイ保持部の素材には特に限定は無く、例えば樹脂が挙げられる。樹脂ならば、IH機構の誘導コイル内に存在したとしても加熱されない。そして、ヤトイが金属製ならば、誘導コイル内においてヤトイ保持部に保持されたヤトイのみが、IH機構により加熱されることになる。
【0058】
なお、ヤトイに伝達された熱を逃がしにくくするよう、ヤトイ保持部の熱伝導率をヤトイ以下とするのがよい。また、ヤトイ保持部に耐熱性を備えさせるのがよい。
【0059】
ヤトイを保持する手法としては特に限定は無く、例えば真空吸着やチャック方式が挙げられる。
【0060】
アロイ保持部の素材には特に限定は無く、例えば樹脂が挙げられる。また、アロイを保持する手法としては特に限定は無く、例えば真空吸着やチャック方式が挙げられる。
【0061】
以下、IH機構を用いた場合のIHコントローラの動作の一例について、
図1を用いて説明する。
【0062】
まず、ヤトイ保持部ごとヤトイを誘導コイル内に配置する。その一方、アロイ保持部にて保持されたアロイは誘導コイル外の下方に配置される。そして、アロイ保持部を上昇させ、このアロイを真空吸着またはチャック方式を用いてアロイ保持部にて保持する。
【0063】
なお、
図1だとアロイ保持部を下降させるが、保持具の向きに応じてアロイ保持部の変位方向は任意に設定すればよい。また、アロイ保持具に加えてヤトイ保持具を、ヤトイとアロイとが離間する方向に変位させてもよい。また、アロイ保持具は変位させず、ヤトイ保持具を変位させてもよい。
【0064】
アロイの保持後、アロイ保持部を下降させつつ、IHコントローラの出力(本実施形態においては例えば最高出力1kW)をONにし、誘導コイルによりヤトイを加熱する。加熱の際に、ヤトイ保持部に取り付けられ且つヤトイに接触させた熱電対によりヤトイの温度を測定しながら、温度調節器によりIHコントローラの出力を制御する。温度調節器の設定温度は、アロイの融点以上に設定すればよく、例えば80~100℃に設定してもよい。
【0065】
ヤトイを加熱することにより、ヤトイと接している面のアロイが局所的に溶融する。アロイが局所的に溶融すると、アロイ保持部でアロイを下方に引っ張る作用により、アロイがヤトイから短時間で分離される。ヤトイとアロイとの間の固着が解かれることによりアロイ保持部が下降する。この下降をセンサ(不図示)が検出し、この検出結果に基づいてIHコントローラの出力をOFFにする。
【0066】
そして、ヤトイ保持部からヤトイを取り外して一連の動作を終了する。
【0067】
加熱工程の別の具体的な手法として、前記ヤトイを覆う覆い部材(不図示)越しに前記ヤトイに対して熱源を接触させる手法が挙げられる。覆い部材を設けることにより、熱源の熱を雰囲気中に逃がすことなく、ヤトイに伝達できる。そして、ヤトイを経由してアロイ(特にヤトイとの界面部分)へと熱が伝達される。この「覆い部材越し」とは、熱源がヤトイに直接接触させる構造を覆い部材に設けることを含む。また、熱源はヤトイとは直接接触しないけれども、熱源とヤトイとが、ヤトイに熱が十分伝達される程度の距離しか離れないような構造を覆い部材に設けることも含まれる。なお、覆い部材の素材としては任意で構わない。ただ、覆い部材によって熱源の熱を雰囲気中に逃がさないようにするのがよい。そのため、覆い部材の素材として、熱伝導率の値が比較的低い素材(ヤトイの熱伝導率以下(好ましくは未満)の素材)を使用するのもよい。この素材としては例えばステンレスが挙げられる。
【0068】
また、加熱工程の更に別の具体的な手法として、前記アロイの融点以上の液体(例:高温水、油等)に前記ヤトイを浸けるという手法が挙げられる。ここで前記液体に浸けるのはヤトイのみである。ヤトイに対して液体が有する熱が伝達され、ヤトイを経由してアロイ(特にヤトイとの界面部分)へと熱が伝達される。ただ、ヤトイとアロイとの界面部分のごく一部のアロイ(例えば厚さ方向1~2mmまで)が前記液体に接触する場合は許容される。
【0069】
この構成を採用する場合、前記加熱工程および前記固着解除工程においては、前記アロイを高温水に接触させないで済む。ただ、ヤトイは液体に接触することになる。そのため、IH機構を設ける場合のような完全乾式ではなく一部乾式にて前記加熱工程および前記固着解除工程が行われることになる。本明細書における「乾式」は、完全乾式と一部乾式とを含む。完全乾式でも一部乾式でも、少なくともアロイは液体にほとんど接触しないため、上記に示した効果を特に発揮できる。その一方、完全乾式の方が、アロイもヤトイも液体との接触機会が実質的にゼロである。そのため、完全乾式が好ましい。
【0070】
上記の内容が眼鏡レンズの保持具の処理方法である。その一方、眼鏡レンズの保持具の処理装置にも本発明の技術的思想が反映されている。本実施形態における眼鏡レンズの保持具の処理装置は、以下の構成を有する。
「眼鏡レンズの加工装置に設置される土台(ヤトイ)と、
前記土台(ヤトイ)に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台(ヤトイ)よりも融点が低い低融点金属部材(アロイ)と、
を備えた眼鏡レンズの保持具に対する処理装置であって、
前記土台(ヤトイ)を加熱するための熱を生成する熱源を備え、
前記熱源は、前記土台(ヤトイ)に固着する前記低融点金属部材(アロイ)へと熱を伝達させ、前記土台(ヤトイ)の近傍の前記低融点金属部材(アロイ)を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く、眼鏡レンズの保持具の処理装置。」
【0071】
なお、眼鏡レンズの保持具の処理方法にて述べた各内容は、眼鏡レンズの保持具の処理装置にも適用可能である。例えば、前記熱源はIH機構である。
また、先に挙げた、ヤトイを覆う覆い部材越しに前記ヤトイに対して熱源を接触させる手法においては、前記熱源はヒーター(例:はんだごて等)(不図示)である。
また、先に挙げた、前記アロイの融点以上の液体に前記ヤトイを浸けるという手法においては、前記熱源は恒温槽(不図示)である。この場合、恒温槽により加熱された液体からヤトイに熱が伝達され、ヤトイを経由してアロイ(特にヤトイとの界面部分)に熱が伝達される。なお、その際、前記ヤトイおよび前記アロイの少なくともいずれかを保持し、且つ前記ヤトイを加熱するために前記ヤトイを前記恒温槽内にて保持する保持機構を更に有するのが好ましい。この構成により、ヤトイに対して安定して液体の熱を伝達できる。
【0072】
また、眼鏡レンズの製造方法にも本発明の技術的思想が反映されている。本実施形態における眼鏡レンズの製造方法は、以下の構成を有する。
「前記眼鏡レンズの保持具の処理方法により固着が解除された前記土台(ヤトイ)と前記低融点金属部材(アロイ)とを再利用し、再び前記土台(ヤトイ)に固着させた前記低融点金属部材(アロイ)に対して眼鏡レンズを固着する眼鏡レンズ固着工程と、
前記低融点金属部材(アロイ)に固着された眼鏡レンズを、前記眼鏡レンズの加工装置にて加工する眼鏡レンズ加工工程と、
を有する、眼鏡レンズの製造方法。」
【0073】
上記の眼鏡レンズの製造方法によれば、眼鏡レンズの保持具の処理方法で述べた効果と同様の効果を奏する。つまり、アロイの溶融を抑えつつアロイとヤトイとの間の固着を解くことが可能となる。それに伴い、前記従来装置にて生じる可能性を抑制できる。すなわち、排水中に溶融したアロイが含まれる可能性を抑制できる。
【0074】
その結果、完成後の眼鏡レンズの品質を低下させる可能性を抑制でき、眼鏡レンズの製造の歩留まりを低下させる可能性を抑制できる。また、アロイを新たに補充する頻度が減り、費用が減る。また、産業廃棄物である酸化アロイを処理する費用も減る。そして、アロイおよびヤトイに対する作業性が向上する。また、本実施形態におけるヤトイとアロイとの分離後、種類ごとにヤトイを容易に分別することが可能となる。
【0075】
なお、ヤトイの再利用は、アロイから分離後のヤトイを洗浄することにより可能である。アロイの再利用は、例えば以下のように行われる。ほぼ固体のアロイを分離回収した後、まとめて溶融する。型となるブロッキングリングを挟むようにヤトイと眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)とを配置し、ブロッキングリングの内側すなわちヤトイと眼鏡レンズ(セミフィニッシュトレンズ)との間に溶融状態のアロイを流し込む。その後、冷却固化させ、アロイを作製する。
【0076】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0077】
例えば、本実施形態においては眼鏡レンズの保持具の処理方法および処理装置について述べた。その一方、眼鏡レンズの保持具ではなく眼鏡レンズ以外の用途のレンズの保持具としても本発明の技術的思想が反映されている。また、そもそも保持具ではなく何らかの治具だとしてもヤトイとアロイとを分離させるという観点から見ると、本発明の技術的思想が反映されている。
【0078】
上記観点に基づく治具の処理方法の構成は以下の通りである。
「土台(ヤトイ)と、
前記土台(ヤトイ)に固着し、且つ前記土台(ヤトイ)よりも融点が低い低融点金属部材(アロイ)と、
を備えた治具に対する処理方法であって、
前記土台(ヤトイ)を加熱する加熱工程と、
前記土台(ヤトイ)から前記低融点金属部材(アロイ)へと熱を伝達し、前記土台(ヤトイ)の近傍の前記低融点金属部材(アロイ)を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く固着解除工程と、
を有する、治具の処理方法。」
好適には、前記治具はレンズの保持具であり、前記土台(ヤトイ)はレンズの加工装置に設置され、前記低融点金属部材(アロイ)はレンズの光学面に倣った形状を有する。
【0079】
また、上記観点に基づく治具の処理装置の構成は以下の通りである。
「土台(ヤトイ)と、
前記土台(ヤトイ)に固着し、且つ眼鏡レンズの光学面に倣った形状を有し、且つ前記土台(ヤトイ)よりも融点が低い低融点金属部材(アロイ)と、
を備えた治具に対する処理装置であって、
前記土台(ヤトイ)を加熱するための熱を生成する熱源を備え、
前記熱源は、前記土台(ヤトイ)に固着する前記低融点金属部材(アロイ)へと熱を伝達させ、前記土台(ヤトイ)の近傍の前記低融点金属部材(アロイ)を部分的に溶融させることにより両者の固着を解く、治具の処理装置。」
好適には、治具はレンズの保持具であり、前記土台(ヤトイ)はレンズの加工装置に設置され、前記低融点金属部材(アロイ)はレンズの光学面に倣った形状を有する。
【0080】
更に、本実施形態では低融点金属部材を使用したが、低融点(または低ガラス転移温度)である素材であって金属以外の素材を使用してもよい。この素材としては例えば低融点(又は低ガラス転移温度)のワックスまたは樹脂が挙げられる。ワックスまたは樹脂の場合であっても、雰囲気の汚染の抑制、再利用可能なものの確保、作業性についての課題は、低融点金属部材(アロイ)の場合と同様に生じる。そして、上記の本実施形態に係る保持具の処理方法、処理装置および眼鏡レンズの製造方法において、「低融点金属部材(アロイ)」の記載を「ワックスまたは樹脂」に置き換えたとしても、各課題を解決可能である。金属素材、非金属素材を包括するように「低融点金属部材(アロイ)」の記載を「低融点部材」に置き換えたとしても、各課題を解決可能である。この変形例を適用する場合、金属素材の場合のみならず樹脂素材も包含すべく、低融点金属部材(アロイ)が光学面に倣った形状を有することから、本実施形態に係る「低融点金属部材(アロイ)」の記載を「倣い部材」に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…保持具
2…ヤトイ
3…アロイ
4…ヤトイ保持部
5…アロイ保持部
6…IH機構
7…誘導コイル
8…熱電対
9…温度調節器
10…IHコントローラ
11…眼鏡レンズの保持具の処理装置