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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】車両用安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/38 20110101AFI20220106BHJP
【FI】
B60R21/38 330
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018055005
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019166921
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 徹也
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/026863(WO,A1)
【文献】特開2007-062487(JP,A)
【文献】特開2016-016854(JP,A)
【文献】特開2016-030454(JP,A)
【文献】特開2016-011079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用安全装置において、
車両フードを支持するアームであって、該車両フードおよび車両本体にそれぞれ回動可能に取付けられるアームと、
前記アームから突出するピンと、
前記車両フードに取付けられたアクチュエータであって、該車両フードの下面に沿って駆動するくさび形状の駆動部材を含み、該駆動部材が該車両フードの下面と前記ピンとの間隙に進入して該間隙を広げることで前記車両フードを持ち上げるアクチュエータと、
前記車両フードに取付けられた案内部材であって、前記ピンの上方に位置する上面および該ピンが貫通する2つの側面を有し、該2つの側面には、上下方向に長いスロットが形成されていて、前記間隙が広がることで前記車両フードの下面から離れる前記ピンを該スロットが案内する案内部材と、
前記アームに取付けられ、前記案内部材の側面の内側に位置し前記ピンの両端を支持する支持部と、
前記ピンの下方に位置し前記支持部同士を橋渡して連結する連結部とを備え、
前記駆動部材の幅は、前記連結部の幅よりも小さく、且つ該駆動部材は、前記支持部との間に隙間を確保した壁部を有し、これによって、該駆動部材のくさび形状を構成する1つの傾斜したガイド面が前記ピンに接触しているときに該駆動部材が前記支持部に点接触しないことを特徴とする車両用安全装置。
【請求項2】
前記駆動部材は、前記案内部材の上面に面接触する接触部を有し、
前記壁部は、前記駆動部材のうち、該接触部以外の部分であり、
前記接触部の幅は、前記壁部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置され主に緊急時での歩行者保護を目的とする車両用安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用安全装置として、いわゆるフードリフタが知られている。これは、車両に歩行者が衝突した際に車両フードを跳ね上げ、その後歩行者の頭部などが車両フードに衝突するいわゆる二次衝突が生じた際、持ち上がった車両フードを緩衝器(ショックアブソーバ)として機能させ、歩行者への衝撃を緩和するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用安全装置は、車両フードと車両本体との間に連結されたリンク機構と、リンク機構を作動させるアクチュエータとを備えている。リンク機構は、車両本体に対して車両フードを格納位置と跳ね上げ位置との間で往復移動させる。
【0004】
アクチュエータは、モータの出力軸に連結されたネジ軸と、ネジ軸に螺合されたナット部と、ナット部に対して固定されたスライダと、スライダから突出したスライドピンとを備えている。スライドピンは、リンク機構に形成されたスライド溝に挿入されている。
【0005】
アクチュエータでは、モータが回転すると、ネジ軸が回転し、ナット部がネジ軸に沿って移動する。そして、ナット部の移動に伴ってスライダが移動し、これにより、スライダのスライドピンがリンク機構のスライド溝内をスライドする。その結果、この車両用安全装置では、アクチュエータによってリンク機構が作動されて、車両フードを跳ね上げることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-182511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両用安全装置では、例えば歩行者の頭部が車両フードに衝突するまでに、車両フードとその下方に位置する車両本体との間に十分なスペースを確保し、二次衝突に伴う衝撃を緩和することが重要である。つまり、二次衝突の衝撃を緩和して歩行者を保護するためには、車両フードを迅速に跳ね上げる必要がある。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術では、モータの回転に伴ってリンク機構を駆動することから、緊急時に迅速に車両フードを跳ね上げることは困難と考えられる。
【0009】
ここで、上記アクチュエータに代えて火薬などを用いたアクチュエータを使用し、緊急時に迅速に車両フードを跳ね上げる構成も考えられる。しかし、単にアクチュエータを変更した構成では、車両フードの跳ね上げ速度を向上させることは困難である。
【0010】
アクチュエータを用いた場合の問題は以下の通りである。すなわち、車両フードを跳ね上げる場合には、例えば車両フードの重量や跳ね上げに伴う加速度の影響により、車両用安全装置を構成する部材が変形し、アクチュエータの駆動部材が、変形した部材に点接触する可能性がある。アクチュエータの駆動部材が他の部材に点接触すると、アクチュエータの駆動に伴う力の伝達効率が損なわれ、車両フードを跳ね上げる速度が低下してしまう。例えば特許文献1では、車両フードを跳ね上げる速度が部材同士の点接触に起因して低下する点について、何ら対策が講じられてない。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み、車両フードを跳ね上げる速度を向上させ、歩行者保護性能を高めることができる車両用安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用安全装置の代表的な構成は、車両用安全装置において、車両フードを支持するアームであって、車両フードおよび車両本体にそれぞれ回動可能に取付けられるアームと、アームから突出するピンと、車両フードに取付けられたアクチュエータであって、車両フードの下面に沿って駆動するくさび形状の駆動部材を含み、駆動部材が車両フードの下面とピンとの間隙に進入して間隙を広げることで車両フードを持ち上げるアクチュエータと、車両フードに取付けられた案内部材であって、ピンの上方に位置する上面およびピンが貫通する2つの側面を有し、2つの側面には、上下方向に長いスロットが形成されていて、間隙が広がることで車両フードの下面から離れるピンをスロットが案内する案内部材と、アームに取付けられ、案内部材の側面の内側に位置しピンの両端を支持する支持部と、ピンの下方に位置し支持部同士を橋渡して連結する連結部とを備え、駆動部材の幅は、連結部の幅よりも小さく、これによって、駆動部材のくさび形状を構成する1つの傾斜したガイド面がピンに接触しているときに駆動部材が支持部に点接触しないことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、車両フードに取付けられたアクチュエータの駆動部材が駆動すると、駆動部材のガイド面は、アームから突出するピンに接触する。一方、ピンは、ガイド面に力を作用させる。その結果、案内部材の側面のスロットに沿ってピンが移動するに伴って、案内部材は、ピンから上方に向けて離間する。そして車両フードを支持するアームが回動し、車両フードを持ち上げて車両本体に対して離間させる。
【0014】
すなわち、車両用安全装置は、車両フードと車両本体との間に設置されていて、アクチュエータが駆動部材を駆動することで、車両フードを上方に向けて跳ね上げることが可能となる。なお車両用安全装置は、車両に歩行者が衝突しその後歩行者の頭部などが車両フードに衝突する二次衝突を緩和するものである。車両用安全装置では、車両フードを跳ね上げることで、車両フードとその下方に位置する車両本体との間のスペースを確保し、車両フードを緩衝器(ショックアブソーバ)として機能させることで、二次衝突に伴う衝撃を緩和する。
【0015】
ただし本発明の作用効果は、単に二次衝突の衝撃を緩和することではなく、車両フードを迅速に跳ね上げることである。車両フードを跳ね上げる場合、例えば、車両フードの重量や跳ね上げに伴う加速度の影響により、ピンを支持するアームの支持部および連結部が変形し、駆動部材が支持部に点接触してしまう可能性がある。このような点接触が生じた場合、駆動部材の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれ、車両フードを跳ね上げる速度が低下する。その結果、例えば歩行者の頭部が車両フードに衝突するまでに、車両フードの下方に十分なスペースを確保できず、二次衝突に伴う衝撃を十分に緩和できないおそれがある。
【0016】
これに対して、本発明による上記構成では、駆動部材の幅は、連結部の幅よりも小さく、駆動部材と支持部との間に隙間を確保できる。このため、上記構成によれば、ガイド面がピンに接触した状態すなわち車両フードを跳ね上げる場合に、上記点接触を防止できる。
【0017】
したがって、上記車両用安全装置によれば、車両フードを跳ね上げる速度を向上させ、歩行者保護性能を高めることができる。また、アクチュエータの駆動部材の幅を小さくする構成により、車両フードの跳ね上げ速度を向上できるので、例えば出力の高い大型のアクチュエータなども不要となり、製造コストを抑えることができる。
【0018】
上記の駆動部材は、案内部材の上面に面接触する接触部を有し、接触部の幅は、駆動部材のうち、接触部以外の部分の幅よりも大きくするとよい。
【0019】
これにより、駆動部材のガイド面がピンに接触した状態、すなわち車両フードを跳ね上げる場合に、ピンを支持するアームの支持部および連結部が変形しても、接触部が案内部材の上面に面接触することから、駆動部材が案内部材の上面に点接触することがない。よって、駆動部材は、アームの支持部だけでなく案内部材の上面にも点接触しない。したがって、上記構成では、駆動部材の駆動に伴う力の伝達効率がより改善され、車両フードを跳ね上げる速度をより高めることが可能となる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用安全装置の他の代表的な構成は、車両用安全装置において、車両フードを支持するアームであって、車両フードおよび車両本体にそれぞれ回動可能に取付けられるアームと、アームから突出するピンと、車両フードに取付けられたアクチュエータであって、車両フードの下面に沿って駆動するくさび形状の駆動部材を含み、駆動部材が車両フードの下面とピンとの間隙に進入して間隙を広げることで車両フードを持ち上げるアクチュエータと、車両フードに取付けられた案内部材であって、ピンの上方に位置する上面およびピンが貫通する2つの側面を有し、2つの側面には、上下方向に長いスロットが形成されていて、間隙が広がることで車両フードの下面から離れるピンをスロットが案内する案内部材と、アームに取付けられ、案内部材の側面の内側に位置しピンの両端を支持する支持部と、ピンの下方に位置し支持部同士を橋渡して連結する連結部とを備え、駆動部材の幅は、連結部の幅よりも小さく、これによって、駆動部材のくさび形状を構成する1つの傾斜したガイド面がピンに接触しているときに駆動部材が支持部に点接触せず、ガイド面は、駆動部材の幅方向に対してさらに傾斜しピンに面接触する傾斜面を有することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、車両フードに取付けられたアクチュエータの駆動部材が駆動すると、駆動部材のガイド面は、アームから突出するピンに接触する。一方、ピンは、ガイド面に力を作用させる。その結果、案内部材の側面のスロットに沿ってピンが移動するに伴って、案内部材は、ピンから上方に向けて離間する。そして車両フードを支持するアームが回動し、車両フードを持ち上げて車両本体に対して離間させる。
【0022】
すなわち、車両用安全装置は、車両フードと車両本体との間に設置されていて、アクチュエータが駆動部材を駆動することで、車両フードを上方に向けて跳ね上げることが可能となる。なお車両用安全装置は、車両に歩行者が衝突しその後歩行者の頭部などが車両フードに衝突する二次衝突を緩和するものである。車両用安全装置では、車両フードを跳ね上げることで、車両フードとその下方に位置する車両本体との間のスペースを確保し、二次衝突に伴う衝撃を緩和する。
【0023】
ただし本発明の作用効果は、単に二次衝突の衝撃を緩和することではなく、車両フードを迅速に跳ね上げることである。車両フードを跳ね上げる場合、例えば、車両フードの重量や跳ね上げに伴う加速度の影響により、ピンを支持するアームの支持部および連結部が変形し、駆動部材が支持部に点接触してしまう可能性がある。さらに、アームの支持部および連結部が変形することから、ピンが傾斜する可能性もある。この場合には、駆動部材のガイド面は、傾斜したピンに点接触してしまう。
【0024】
このような点接触が生じた場合、駆動部材の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれ、車両フードを跳ね上げる速度が低下する。その結果、例えば歩行者の頭部が車両フードに衝突するまでに、車両フードの下方に十分なスペースを確保できず、二次衝突に伴う衝撃を十分に緩和できないおそれがある。
【0025】
これに対して、本発明による上記構成では、駆動部材の幅は、連結部の幅よりも小さく、駆動部材と支持部との間に隙間を確保できる。このため、上記構成によれば、ガイド面がピンに接触した状態すなわち車両フードを跳ね上げる場合に、駆動部材がアームの支持部と点接触することを防止できる。さらに、ガイド面は、傾斜したピンに面接触する傾斜面を有するので、傾斜したピンとの点接触を防止できる。
【0026】
したがって、上記車両用安全装置によれば、車両フードを跳ね上げる速度を向上させ、歩行者保護性能を高めることができる。また、アクチュエータの駆動部材の幅を小さくしガイド面に傾斜面を形成する構成により、車両フードの跳ね上げ速度を向上できるので、例えば出力の高い大型のアクチュエータなども不要となり、製造コストを抑えることができる。
【0027】
上記の傾斜面は、ガイド面を車幅方向の中央にて車両前後方向に延びる稜線で仕切った2つの面の一方であり、2つの面は、稜線に対して対称に配置されているとよい。
【0028】
これにより、ガイド面は、稜線に対して対称に配置された2つの面を有することから、車両用安全装置を車両フードの車幅方向の一方の側に配置した場合には、一方の面が傾斜したピンに面接触する傾斜面となり、他方の面はピンに接触しない。また、車両用安全装置を車両フードの他方の側に配置した場合には、他方の面が傾斜したピンに面接触する傾斜面となり、一方の面はピンに接触しない。このため、このガイド面を有する駆動部材は、車両用安全装置を車両フードの車幅方向の両側に配置する場合に共通に使用できる部品となり、部品点数を削減できる。
【0029】
上記の傾斜面は、ガイド面の前端部を除いて形成されているとよい。ここで、ガイド面の前端部がピンに接触した状態、すなわち車両フードを跳ね上げる初期段階では、ピンを支持するアームの支持部および連結部は変形していない。このため、初期段階では、ピンは傾斜していない可能性が高く、ガイド面の前端部に傾斜面が形成されていない場合であってもガイド面はピンに点接触せず、駆動部材の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれない。
【0030】
上記の傾斜面は、ガイド面の前端部および後端部を除いた中間部に形成されていて、傾斜面の傾斜角は、中間部のうち中央付近が最も大きく、前端部および後端部付近が最も小さいとよい。ここで、ガイド面の前端部および後端部がピンに接触した状態、すなわち車両フードを跳ね上げる初期段階および終期段階では、ピンを支持するアームの支持部および連結部は変形していない。このため、初期段階および終期段階では、ピンは傾斜していない可能性が高く、ガイド面はピンに点接触しない。
【0031】
また、ガイド面の中間部がピンに接触した状態で、ピンは傾斜する可能性が高い。そして、ピンの傾斜角は、ガイド面の中間部の中央付近にピンが接触したときが最も大きく、中央付近以外にピンが接触したときは小さくなると考えられる。上記構成では、このピンの傾斜に追従して、ガイド面の傾斜面の傾斜角を変化させているので、ガイド面はピンに点接触しない。したがって、上記構成によれば、車両フードを跳ね上げる場合に、駆動部材の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれない。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、車両フードを跳ね上げる速度を向上させ、歩行者保護性能を高めることができる車両用安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態における車両用安全装置が適用される車両の一部を示す図である。
図2図1(a)の車両用安全装置を拡大して示す図である。
図3図1(b)の車両用安全装置を拡大して示す図である。
図4図2および図3の車両用安全装置の断面形状を示す図である。
図5図1の車両用安全装置による車両フードのリフト量を示すグラフである。
図6図1の車両用安全装置による車両フードのリフトに伴う位置の変化を概略的に示す図である。
図7】比較例の車両用安全装置を示す図である。
図8】他の車両用安全装置を示す図である。
図9図1の車両用安全装置の駆動部材とピンとが接触する状態を示す図である。
図10図9の駆動部材の形状を示す図である。
図11】第1の駆動部材の形状を示す図である。
図12図11の駆動部材がピンと接触する状態を示す図である。
図13】第2の駆動部材の形状を示す図である。
図14】第3の駆動部材の形状を示す図である。
図15】第4の駆動部材の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態における車両用安全装置100が適用される車両の一部を示す図である。図1(a)は、車両フード102がエンジンルーム104を覆っている通常状態を示している。図1(b)は、車両フード102のリフト状態を示している。リフト状態とは、車両フード102の前端に位置し図示を省略するフードロック機構を支点として、車両フード102のフロントウインドガラス106側となる後端部108が車両用安全装置100により跳ね上げられた状態をいう。
【0036】
車両用安全装置100は、車両に歩行者が衝突しその後歩行者の頭部などが車両フード102に衝突する二次衝突を緩和するものであり、車両フード102の後端部108の下面108aと車両本体110との間に設置されている。車両本体110としては、例えばエンジンルーム104付近に配置され、車両を構成するシャーシなど適宜の剛体であればよい。
【0037】
車両用安全装置100は、図1(b)に示すように、車両フード102を跳ね上げることで、車両フード102とその下方に位置するエンジンルーム104との間のスペース112を確保し、二次衝突に伴う衝撃を緩和する。また、車両用安全装置100では、このスペース112を利用して、歩行者保護のための不図示のエアバッグを展開させ、歩行者保護性能を高めることもできる。
【0038】
なお図中では、車両フード102の右側の後端部108に設置された車両用安全装置100のみを示しているが、車両フード102の左側にも不図示の他の車両用安全装置が設置されている。ただし、他の車両用安全装置は、上記車両用安全装置100と左右対称の構成を有しているので、説明を省略する。
【0039】
以下、図2図3および図4を参照して、車両用安全装置100について説明する。図2は、図1(a)の車両用安全装置100を拡大して示す図である。図3は、図1(b)の車両用安全装置100を拡大して示す図である。なお、図2および図3では、紙面手前側が車内側、紙面奥側が車外側となり、矢印Xは車両後側を示している。図2(a)、図3(a)は、図1(a)、図1(b)の車両用安全装置100を車内側から見た状態をそれぞれ示している。図2(b)、図3(b)は、図2(a)、図3(a)の車両用安全装置100の一部を断面でそれぞれ示している。
【0040】
図4は、図2および図3の車両用安全装置100の断面形状を示す図である。なお図4では、紙面手前側が車両後側、紙面奥側が車両前側となり、矢印Yは車外側を示している。図4(a)、図4(c)は、図2(a)、図3(a)に示すA-A線に沿った断面を示している。なお、A-A線は、便宜上、図2(b)、図3(b)にも示している。図4(b)は、車両フード102が通常状態からリフト状態に至る途中の状態(中間状態)の断面を示している。
【0041】
車両用安全装置100は、上記車両フード102を支持するアーム112と、アーム112から突出するピン114と、車両フード102に取付けられた案内部材116およびアクチュエータ118とを備える。アーム112は、後端部112aがヒンジ120を介してベース部材122に回動可能に取付けられている。ベース部材122は、シャーシなどの上記車両本体110に固定されている。アーム112の前端部112bは、ヒンジピボット124を介して案内部材116に回動可能に取付けられている。
【0042】
アクチュエータ118は、図2(b)に示すように、例えば筒状の筐体126と、筐体126内に配置され例えば火薬を着火する着火装置(スクイブ128)と、駆動部材130とを備える。駆動部材130は、筐体126内に一部が挿入され、筐体126の外に突出したくさび形状を成す突出部132を含んでいる。
【0043】
案内部材116は、図4(a)に示すように、ピン114の上方に位置する上面134と、ピン114が貫通する2つの側面136a、136bを有する。側面136a、136bには、図2(a)に示すように、上下方向に長いスロット138が形成されている。
【0044】
アーム112は、図4(a)に示すように、支持部140a、140bと連結部142とを備える。支持部140a、140bは、案内部材116の側面136a、136bの内側に位置しピン114の両端を支持する。連結部142は、ピン114の下方に位置し支持部140a、140b同士を橋渡して連結する。
【0045】
駆動部材130の突出部132は、図2(b)に示すように、くさび形状を構成する1つの傾斜したガイド面144を有している。突出部132のガイド面144は、車両フード102の下面108aに位置する案内部材116の上面134とピン114との間隙146に進入して、ピン114に接触している。なお突出部132には、ピン114を保持するための凹部148が形成されている。また、駆動部材130の突出部132は、図4(a)に示すように、接触部150と、接触部150以外の壁部152とを含んでいる。
【0046】
接触部150は、案内部材116の上面134に対応する形状を有していて、図4(a)に示すように、車幅方向の幅L1がアーム112の連結部142の幅L2より小さく、壁部152の幅L3よりも大きい。また、壁部152は、アーム112の連結部142の幅L2よりも十分に小さい。
【0047】
ここで、車両用安全装置100の動作について説明する。まず、車両に歩行者が衝突した際の衝撃を不図示のセンサなどによって検知すると、これに起因して、アクチュエータ118では、スクイブ128による火薬の着火が行われる。つぎに、火薬の着火に伴ってガス圧などにより、図3(b)に示すように駆動部材130は、筐体126の外側に向かって車両前側に駆動される。
【0048】
駆動部材130の突出部132は、図3(b)に示すように、案内部材116の上面134とピン114との上記間隙146にさらに進入し、この間隙146を広げることで車両フード102を跳ね上げる。車両フード102を跳ね上げる際、ピン114は、間隙146が広がることで、図3(a)に示すように、案内部材116の側面136a、136bのスロット138に案内される。その結果、ピン114は、図4(a)および図4(c)で示すように、案内部材116の上面134から離れる。
【0049】
詳しくは、間隙146を広げる際、ピン114は、接触している駆動部材130の突出部132に力を作用させ、これによって車両フード102に取付けられたアクチュエータ118の駆動部材130および案内部材116が一体となってピン114から上方に向けて離間する。そして、車両用安全装置100では、車両フード102を支持するアーム112が回動し、車両フード102を車両本体110に対して離間させ持ち上げることになる。このようにして、車両フード102は、図1に示した通常状態からリフト状態に移行する。また、リフト状態を保持するように、ピン114は、図3(b)に示す凹部148に嵌まり込み保持される。
【0050】
ここで、車両用安全装置100では、図4(b)に示す中間状態において、車両フード102の重量や跳ね上げに伴う加速度などの影響により、ピン114を支持するアーム112の支持部140a、140bおよび連結部142が変形してしまう。そして、仮に、変形した支持部140a、140bおよび連結部142に駆動部材130の突出部132が点接触すると、駆動部材130の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれ、車両フード102を跳ね上げる速度が低下する可能性がある。
【0051】
このような場合、歩行者の頭部が車両フード102に衝突するまでに、車両フード102の下方に十分なスペース112(図1(b)参照)を確保できず、二次衝突に伴う衝撃を緩和することが困難となる。なおリフト状態では、図4(c)に示すように、支持部140a、140bおよび連結部142の形状が元に戻る。
【0052】
これに対して、車両用安全装置100では、図4(a)に示したように、駆動部材130の壁部152の幅L3は、連結部142の幅L2よりも十分に小さく、駆動部材130の壁部152と支持部140a、140bとの間に十分な隙間154a、154bを確保できる。このため、図4(b)に示す中間状態において、駆動部材130の壁部152は、支持部140a、140bと点接触しない。
【0053】
また、駆動部材130の接触部150は、壁部152の幅L3よりも大きく、さらに案内部材116の上面134に対応した形状を有しているので、図4(b)に示す中間状態において、案内部材116の上面134に面接触し、点接触しない。
【0054】
つまり、駆動部材130の突出部132は、車両フード102を跳ね上げる場合に、ピン114を支持するアーム112の支持部140a、140bおよび連結部142が中間状態で変形しても、ピン114に接触しつつ、突出部132の周囲に位置する案内部材116の上面134、アーム112の支持部140a、140bのいずれにも点接触することがない。したがって、車両用安全装置100によれば、駆動部材130の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれず、車両フード102を跳ね上げる速度を高めることが可能となる。
【0055】
図5は、図1の車両用安全装置100による車両フード102のリフト量を示すグラフである。図中横軸を車両用安全装置100の作動開始からの経過時間T(s)とし、縦軸を車両フード102のリフト量F(mm)とした。また、図中実線で示すグラフBが車両用安全装置100を示している。点線で示すグラフCは、駆動部材130の突出部132が周囲の各部材と点接触するような形状を有する比較例を示している。なお比較例と車両用安全装置100とでは、同出力のアクチュエータ118を用いている。
【0056】
グラフBに示すリフト量は、車両フード102を跳ね上げる初期段階において、グラフCに示すリフト量よりも大きい。また、グラフBは、グラフCよりも短時間で最大のリフト量に到達していることも示している。さらに、グラフBに示すリフト量の最大値は、グラフCに示すリフト量の最大値よりも小さい。
【0057】
したがって、グラフB、Cに示すように、車両用安全装置100によれば、上記点接触が防止されることで、駆動部材130の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれず、車両フード102を跳ね上げる速度が向上することが明らかである。また、車両用安全装置100では、上記点接触を防止することで、車両フード102の跳ね上げ速度を向上できることから、例えば出力の高い大型のアクチュエータ118なども不要となり、製造コストを抑えることができる。
【0058】
図6は、図1の車両用安全装置100による車両フード102のリフトに伴う位置の変化を概略的に示す図である。ここでは、一例として、実線で示す車両フード102の車両前後方向の寸法Laを1200mm、点線で示すアーム112の寸法Lbを200mmとした。この場合、アーム112が回動することで、車両フード102は寸法Lc(例えば90mm)程度、跳ね上がる。
【0059】
さらに、車両フード102は、車両用安全装置100により跳ね上げられる際、例えばフードロック機構の空隙に起因して、寸法Ld(例えば15mm)程度、車両後側に移動する。この移動により、二次衝突の際、歩行者の頭部が車両のフロントウインドガラス106に衝突する可能性を低減できる。
【0060】
図7は、比較例の車両用安全装置200を示す図である。この車両用安全装置200は、駆動部材230の突出部232に上記接触部150が形成されていない点、さらに案内部材216の上面234およびアーム212の連結部242の幅を小さくした点で、上記車両用安全装置100と異なる。
【0061】
比較例の車両用安全装置200では、上記幅を小さくしたことで、突出部232の壁部252とアーム212の支持部240a、240bとの隙間を小さくしている。このような構成では、突出部232の壁部252の幅が支持部240a、240bの幅よりも小さくても、車両フード102を跳ね上げる際、突出部232の壁部252が支持部240a、240bに点接触してしまい、車両フード102を跳ね上げる速度を高めることは困難となる。
【0062】
すなわち、車両フード102を跳ね上げる速度を向上させるためには、上記車両用安全装置100のように、突出部132の壁部152とアーム112の支持部140a、140bとの間に十分な隙間154a、154bを確保することが重要となる。
【0063】
図8は、他の車両用安全装置100Aを示す図である。なお図8(a)、図8(b)および図8(c)に示す車両用安全装置100Aの断面形状は、図4(a)、図4(b)および図4(c)に対応していて、それぞれ通常状態、中間状態およびリフト状態を示している。
【0064】
この車両用安全装置100Aは、駆動部材130の突出部132に上記接触部150が形成されていない点で、上記車両用安全装置100と異なる。このため、車両用安全装置100Aでは、図4(b)に示す中間状態において、ピン114を支持するアーム112の支持部140a、140bおよび連結部142が変形した際、突出部132の壁部152の上端部156が案内部材116の上面134に点接触し、その分、駆動部材130の駆動に伴う力の伝達効率が多少損なわれてしまう。
【0065】
しかし、車両用安全装置100Aでは、上記車両用安全装置100と同様に、突出部132の壁部152と支持部140a、140bとの間に十分な隙間154a、154bを確保している。
【0066】
このため、車両用安全装置100Aでは、比較例の車両用安全装置200とは異なり、突出部132の壁部152が支持部140a、140bに点接触しない。したがって、車両用安全装置100Aでは、比較例の車両用安全装置200に比べて、車両フード102の跳ね上げ速度を向上できる。
【0067】
以下、図9図15を参照して、車両フード102の跳ね上げ速度をさらに向上させる構成について説明する。図9は、図1の車両用安全装置100の駆動部材130とピン114とが接触する状態を示す図である。図9(a)は、中間状態を示す図4(b)に対応している。図9(b)は、図9(a)の一部を概略的に示している。
【0068】
車両用安全装置100では、図9(a)に示す中間状態において、上記したアーム112の支持部140a、140bおよび連結部142の変形に伴って、ピン114が所定角度(以下、傾斜角θ)だけ傾斜する。このため、駆動部材130の突出部132の上記ガイド面144が、図9(b)に示すように、傾斜角θだけ傾いたピン114に点接触してしまう。なお、図8に示した他の車両用安全装置100Aにおいても、図8(b)に示すように中間状態において、ピン114が傾斜する場合がある。
【0069】
図10は、図9の駆動部材130の形状を示す図である。図10(a)、図10(b)、図10(c)は、駆動部材130の突出部132のうち上記接触部150を除いて示す斜視図、車両前側から見た正面図、車内側から見た側面図である。
【0070】
図10(c)に示すように、ガイド面144はくさび形状を構成するように傾斜しているものの、図10(a)、図10(b)に示すように、幅方向に対しては傾斜していない。このため、ガイド面144は、中間状態において、傾いたピン114と点接触することになる。この点接触により、駆動部材130の駆動に伴う力の伝達効率が損なわれ、車両フード102を跳ね上げる速度が低下してしまう。
【0071】
そこで、上記ガイド面144に代えて、駆動部材130の幅方向に対してさらに傾斜した傾斜面を有するガイド面を採用した。このガイド面を構成する傾斜面は、中間状態において傾斜したピン114に面接触するように傾斜角θで傾斜している。以下、具体的に説明する。
【0072】
図11は、第1の駆動部材130Aの形状を示す図である。図11(a)、図11(b)、図11(c)は、駆動部材130Aの突出部132Aのうち壁部152Aを示す斜視図、車両前側から見た正面図、車内側から見た側面図である。図12は、図11の駆動部材130Aがピン114と接触する状態を示す図である。
【0073】
駆動部材130Aでは、図11(b)に示すように、ガイド面144Aが傾斜角θで傾斜した傾斜面158を有している。なおガイド面144Aを構成する傾斜面158は、各側辺160a、160b、160c、160dにより規定されている。このような傾斜面158を有するガイド面144Aは、図12に示すように、点Dで点接触することなく(図9(b)参照)、傾いたピン114に面接触している。
【0074】
したがって、第1の駆動部材130Aを用いることで、傾いたピン114との点接触を防止し、駆動部材130Aの駆動に伴う力の伝達効率を改善し、車両フード102を跳ね上げる速度を高めることが可能となる。
【0075】
図13は、第2の駆動部材130Bの形状を示す図である。図13(a)、図13(b)、図13(c)は、駆動部材130Bの突出部132Bのうち壁部152Bを示す斜視図、車両前側から見た正面図、車内側から見た側面図である。
【0076】
駆動部材130Bのガイド面144Bは、ガイド面144Bを車幅方向の中央にて車両前後方向に延びる稜線162で仕切った2つの傾斜面164a、164bを有している。2つの傾斜面164a、164bは、図示のように、稜線162に対して対称に配置されていて、傾斜角θでそれぞれ傾斜している。傾斜面164a、164bは、稜線162および各側辺166a、166b、166c、166d、166eで規定されている。
【0077】
駆動部材130Bでは、車両用安全装置100を車両フード102の車幅方向の右側に配置した場合には、例えば一方の傾斜面164aが傾斜したピン114に面接触し、他方の傾斜面164bはピン114に接触しない。また、車両用安全装置100を車両フード102の車幅方向の左側に配置した場合には、他方の傾斜面164bが傾斜したピン114に面接触し、一方の傾斜面164aはピン114に接触しない。
【0078】
したがって、第2の駆動部材130Bを用いることで、傾いたピン114との点接触を防止でき、車両フード102を跳ね上げる速度を高めることが可能となる。さらに、ガイド面144Bを構成する2つの傾斜面164a、164bが稜線162に対称に配置されていることから、第2の駆動部材130Bは、車両用安全装置100を車両フード102の車幅方向の両側に配置する場合に共通に使用できる部品となり、部品点数を削減できる。
【0079】
図14は、第3の駆動部材130Cの形状を示す図である。図14(a)、図14(b)、図14(c)は、駆動部材130Cの突出部132Cのうち壁部152Cを示す斜視図、車両前側から見た正面図、車内側から見た側面図である。
【0080】
駆動部材130Cのガイド面144Cは、ガイド面144Cの前端部168を除いて、ガイド面144を車幅方向の中央にて車両前後方向に延びる稜線170で仕切った2つの傾斜面172a、172bを有している。2つの傾斜面172a、172bは、図14(b)に示すように、稜線170に対して対称に配置されていていて、傾斜角θでそれぞれ傾斜している。傾斜面172a、172bは、稜線170および各側辺174a、174b、174c、174d、174eで規定されている。
【0081】
ここで、ガイド面144Cの前端部168がピン114に接触した状態、すなわち車両フード102を跳ね上げる初期段階では、ピン114を支持するアーム112の支持部140a、140bおよび連結部142は変形していない。このため、初期段階では、ピン114は傾斜していない可能性が高い。よって、ガイド面144Cの前端部168に傾斜面172a、172bが形成されていない場合であっても、ガイド面144Cはピン114に点接触せず、駆動部材130Cの駆動に伴う力の伝達効率が損なわれない。
【0082】
したがって、第3の駆動部材130Cを用いることで、ガイド面144Cがピン114と点接触することを防止し、車両フード102を跳ね上げる速度を高めることが可能となる。さらに、第3の駆動部材130Cは、第2の駆動部材130Bと同様に共通使用できる部品となるので、部品点数を削減できる。
【0083】
図15は、第4の駆動部材130Dの形状を示す図である。図15(a)、図15(b)、図15(c)は、駆動部材130Dの突出部132Dのうち壁部152Dを示す斜視図、車両前側から見た正面図、車内側から見た側面図である。また、図15(d)は、図15(c)のE-E断面図である。
【0084】
駆動部材130Dのガイド面144Dは、ガイド面144Dの前端部176および後端部178を除いた中間部180に形成された傾斜面182a、182bを有する。これらの傾斜面182a、182bの傾斜角は、中間部180のうち中央付近が最も大きく、図15(d)に示す傾斜角θを成し、前端部176および後端部178付近が最も小さい。
【0085】
また、傾斜面182a、182bは、ガイド面144Dの前端部176および後端部178を除いて、ガイド面144を車幅方向の中央にて車両前後方向に延びる稜線184で仕切っている。これらの傾斜面182a、182bは、稜線184に対して対称に配置されていて、稜線184および各側辺186a、186bで規定されている。
【0086】
ここで、ガイド面144Dの前端部178および後端部178がピン114に接触した状態、すなわち車両フード102を跳ね上げる初期段階および終期段階(リフト状態)では、ピン114を支持するアーム112の支持部140a、140bおよび連結部142は変形していない。このため、初期段階および終期段階では、ピン114は傾斜していない可能性が高く、ガイド面144Dはピン114に点接触しない。
【0087】
また、ガイド面144Dの中間部180がピン114に接触した状態(中間状態)で、ピン114は傾斜する可能性が高い。そして、ピン114の傾斜角は、ガイド面144Dの中間部180の中央付近にピン114が接触したときが最も大きく、中央付近以外にピン114が接触したときは小さくなる。
【0088】
駆動部材130Dでは、このピン114の傾斜に追従して、ガイド面144Dの傾斜面182a、182bの傾斜角を変化させている。したがって、第4の駆動部材130Dを用いることで、ガイド面144Dがピン114に点接触することを防止し、車両フード102を跳ね上げる速度を高めることが可能となる。さらに、第4の駆動部材130Dは、第2および第3の駆動部材130B、130Cと同様に共通使用できる部品となるので、部品点数も削減できる。
【0089】
上記実施形態では、案内部材116の上面134は平坦としたが、これに限られず、適宜の曲面からなる湾曲した形状であってもよい。このような場合には、例えば駆動部材130の接触部150を、案内部材116の上面134の湾曲した形状に合わせた形状とし、上面134に面接触させてよい。
【0090】
また、駆動部材130、130A~130Dのガイド面144、144A~144Dを構成する傾斜面158、164a、164b、172a、172b、182a、182bは、平面形状としたが、傾斜したピン114に面接触可能な形状であれば、ピン114の変形に合わせて湾曲した形状としてもよい。
【0091】
また、車両用安全装置100は、車両フード102の後端部108の右側および左側に設置された一対のものであるとしたが、これに限られず、車両フード102を迅速に跳ね上げることが可能で歩行者保護性能を確保できるのであれば、右側または左側の一方にのみ設置してもよい。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、車両に設置され主に緊急時での歩行者保護を目的する車両用安全装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
100、100A…車両用安全装置、102…車両フード、110…車両本体、112…アーム、114…ピン、116…案内部材、118…アクチュエータ、128…スクイブ、130、130A~130D…駆動部材、132、132A~132D…突出部、134…上面、136a、136b…側面、138…スロット、140a、140b…支持部、142…連結部、144、144A~144D…ガイド面、146…間隙、150…接触部、152、152A~152D…壁部、156…上端部、158、164a、164b、172a、172b、182a、182b…傾斜面
図1
図2
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