(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】補強フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220106BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20220106BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20220106BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J4/00
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2018182739
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】仲野 武史
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】米川 雄也
(72)【発明者】
【氏名】藤山 雄士
(72)【発明者】
【氏名】安江 智広
(72)【発明者】
【氏名】池上 堅真
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127539(JP,A)
【文献】特開2012-153901(JP,A)
【文献】特開2013-185007(JP,A)
【文献】特開2017-132977(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163115(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062287(WO,A1)
【文献】特開2018-090696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G02B5/30
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材と、前記フィルム基材の一主面上に固着積層された粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層は、
重量平均分子量が10万以上の(メタ)アクリル系ベースポリマー、重量平均分子量が1000~50000の(メタ)アクリル系オリゴマー、および2以上の
光重合性官能基を有する多官能化合物を含む光硬化性組成物からなり、
前記(メタ)アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、前記(メタ)アクリル系オリゴマーを3~30重量部、および前記多官能化合物を0.5~30重量部含有し、
前記粘着剤層を厚み方向に3等分し、基材側から最も遠い領域を表層領域とした場合に、
表層領域における前記多官能化合物の存在量が、厚み方向全体の前記多官能化合物の存在量の50%以上であり、かつ
表層領域における前記(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量が、厚み方向全体の前記(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量の31%以下である、
補強フィルム。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ベースポリマーに架橋構造が導入されている、請求項1に記載の補強フィルム。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ベースポリマーが、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーを含有する、請求項1または2に記載の補強フィルム。
【請求項4】
前記多官能化合物が多官能(メタ)アクリレートである、請求項1~3のいずれか1項に記載の補強フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種デバイス等の表面に貼設される補強フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ等の光学デバイスや電子デバイスの表面には、表面保護や耐衝撃性付与等を目的として、粘着性フィルムが貼着される場合がある。このような粘着性フィルムは、通常、フィルム基材の主面に粘着剤層が固着積層されており、この粘着剤層を介してデバイス表面に貼り合わせられる。
【0003】
デバイスの組み立て、加工、輸送等の使用前の状態において、デバイスまたはデバイス構成部品の表面に粘着性フィルムを仮着することにより、被着体の傷つきや破損を抑制できる。このような粘着性フィルムは工程材であり、デバイスの使用前に剥離除去される。特許文献1に記載されているように、工程材として用いられる粘着性フィルムは、低粘着性であり、被着体から容易に剥離可能であり、被着体への糊残りが生じないことが求められる。
【0004】
特許文献2には、デバイスの組み立て、加工、輸送等に加えて、デバイスの使用時にもデバイス表面に貼着したままの状態で使用される粘着性フィルムが開示されている。このような粘着性フィルムは、表面保護に加えて、デバイスへの衝撃の分散や、フレキシブルデバイスへの剛性付与等により、デバイスを補強する機能を有している。
【0005】
粘着性フィルムを被着体に貼り合わせる際に、気泡の混入や貼り位置のずれ等の貼り合わせ不良が生じる場合がある。貼り合わせ不良が生じた場合には、被着体から粘着性フィルムを剥離し、別の粘着性フィルムを貼り合わせる作業(リワーク)が行われる。工程材として用いられる粘着性フィルムは、被着体からの剥離を前提として設計されているため、リワークが容易である。一方、補強フィルムは、一般には、デバイスから剥離することは想定されておらず、デバイスの表面に強固に接着しているため、リワークが困難である。
【0006】
特許文献3では、被着体との貼り合わせ直後は低粘着性であり、経時的に接着力が上昇するように設計された粘着シート(粘着剤層)が開示されている。フィルム基材上にこのような粘着剤層が固着積層された粘着性フィルムは、被着体との貼り合わせ直後は被着体からの剥離が容易であり、所定時間経過後には被着体と強固に接着するため、リワーク性を有する補強フィルムとして利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-185007号公報
【文献】特開2017-132977号公報
【文献】WO2015/163115号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被着体との接着力が経時的に変化する補強フィルムは、工程のリードタイムに対する柔軟性が十分とは言い難い。例えば、接着力が経時的に上昇する粘着剤層を備える補強フィルムは、被着体との貼り合わせ後、接着力が上昇するまでの所定時間内に、貼り合わせ状態の検査およびリワークを実施する必要がある。また、デバイスやデバイス部品の全面に補強フィルムを貼り合わせた後、一部の領域から補強フィルムを除去する等の加工を行う場合には、接着力が上昇するまでの期間に加工を行う必要がある。
【0009】
上記に鑑み、本発明は、被着体との貼り合わせ直後はリワークが容易であり、被着体との貼り合わせ後、接着力が向上するまでの時間を任意に設定可能であり、かつ接着力向上により被着体と強固に接着可能な補強フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の補強フィルムは、フィルム基材の一主面上に固着積層された粘着剤層を備える。粘着剤層は、(メタ)アクリル系ベースポリマーおよび多官能化合物を含む光硬化性組成物からなる。(メタ)アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は10万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーを含有するものが好ましい。(メタ)アクリル系ベースポリマーには、架橋構造が導入されていることが好ましい。多官能化合物は、2以上の重合性官能基を含む化合物であり、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0011】
粘着剤層を構成する光硬化性組成物は、(メタ)アクリル系ベースポリマーおよび多官能化合物に加えて、重量平均分子量が1000~50000の(メタ)アクリル系オリゴマーを含む。粘着剤層は、(メタ)アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、(メタ)アクリル系オリゴマーを3~30重量部、および多官能化合物を0.5~30重量部含有することが好ましい。
【0012】
粘着剤層を厚み方向に3等分し、基材側から最も遠い領域を表層領域とした場合に、表層領域における多官能化合物の存在量は、厚み方向全体の前記多官能化合物の存在量の50%以上である。表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量は、厚み方向全体の(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量の31%以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の補強フィルムは、粘着剤層が光硬化性組成物からなり、表層領域に多官能化合物が偏在しているため、粘着剤層の光硬化前は接着力が小さく被着体からの剥離が容易である。また、粘着剤層を光硬化した後は被着体に対して高い接着力を示すため、デバイスの補強および信頼性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】補強フィルムの積層構成を示す断面図である。
【
図2】補強フィルムの積層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、補強フィルムの一実施形態を表す断面図である。補強フィルム10は、フィルム基材1の一主面上に粘着剤層2を備える。粘着剤層2は、基材フィルム1の一主面上に固着積層されている。粘着剤層2は光硬化性組成物からなる光硬化性粘着剤であり、紫外線等の活性光線の照射により硬化して、被着体との接着強度が上昇する。
【0016】
図2は、粘着剤層2の主面上にセパレータ5が仮着された補強フィルムの断面図である。粘着剤層2の表面からセパレータ5を剥離除去し、粘着剤層2の露出面を被着体に貼り合わせることにより、被着体の表面に補強フィルム10が貼設される。この状態では、粘着剤層2は光硬化前であり、被着体に補強フィルム10(粘着剤層2)が仮着された状態である。粘着剤層2を光硬化することにより、被着体と粘着剤層2との界面での接着力が上昇し、被着体と補強フィルム10とが固着される。
【0017】
「固着」とは積層された2つの層が強固に接着しており、両者の界面での剥離が不可能または困難な状態である。「仮着」とは、積層された2つの層間の接着力が小さく、両者の界面で容易に剥離できる状態である。
【0018】
図2に示す補強フィルムでは、フィルム基材1と粘着剤層2とが固着しており、セパレータ5は粘着剤層2に仮着されている。セパレータ5を剥離すると、粘着剤層2とセパレータ5との界面で剥離が生じ、フィルム基材1上に粘着剤層2が固着した状態が維持される。剥離後のセパレータ5上には粘着剤は残存しない。
【0019】
[フィルム基材]
フィルム基材1としては、プラスチックフィルムが用いられる。フィルム基材1と粘着剤層2とを固着するために、フィルム基材1の粘着剤層2付設面は離型処理が施されていないことが好ましい。
【0020】
フィルム基材の厚みは、例えば4~500μm程度である。剛性付与や衝撃緩和等によりデバイスを補強する観点から、フィルム基材1の厚みは20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましい。補強フィルムに可撓性を持たせハンドリング性を高める観点から、フィルム基材1の厚みは300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0021】
フィルム基材1を構成するプラスチック材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。ディスプレイ等の光学デバイス用の補強フィルムにおいては、フィルム基材1は透明フィルムであることが好ましい。また、フィルム基材1側から活性光線を照射して粘着剤層2の光硬化を行う場合は、フィルム基材1は、粘着剤層の硬化に用いられる活性光線に対する透明性を有することが好ましい。機械強度と透明性とを兼ね備えることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好適に用いられる。
【0022】
[粘着剤層]
フィルム基材1上に粘着剤層2を設けることにより、補強フィルムが得られる。粘着剤層2は、フィルム基材1上に直接形成してもよく、他の基材上でシート状に形成された粘着剤層をフィルム基材1上に転写してもよい。
【0023】
粘着剤層2は、光硬化性組成物からなる。粘着剤層2は、光硬化前はデバイスやデバイス部品等の被着体との接着力が小さいため、リワークが容易である。粘着剤層2は、光硬化により被着体との接着力が向上するため、デバイスの使用時においても補強フィルムがデバイス表面から剥離し難く、接着信頼性に優れる。
【0024】
粘着剤層2の厚みは、例えば、1~300μm程度である。粘着剤層2の厚みが大きいほど被着体との接着性が向上する傾向がある。一方、粘着剤層2の厚みが過度に大きい場合は、光硬化前の流動性が高く、ハンドリングが困難となる場合がある。そのため、粘着剤層2の厚みは5~100μmが好ましく、8~50μmがより好ましく、10~40μmがさらに好ましく、13~30μmが特に好ましい。
【0025】
補強フィルムが、ディスプレイ等の光学デバイスに用いられる場合、粘着剤層2の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。粘着剤層2のヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.7%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0026】
粘着剤層2を構成する粘着剤組成物(光硬化性組成物)は、(メタ)アクリル系ベースポリマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、および多官能化合物を含む。活性光線の照射による硬化の効率を高める観点から、粘着剤層2を構成する粘着剤組成物は、光重合開始剤を含んでいることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、粘着剤組成物の主構成成分であり、粘着剤の接着力を決定する主要素である。粘着剤層2の光硬前に被着体から補強フィルムを剥離する際に、剥離を容易として被着体への糊残りを防止する観点から、(メタ)アクリル系ベースポリマーには架橋構造が導入されていることが好ましい。
【0028】
多官能化合物は、1分子中に2以上の重合性官能基を有する。多官能化合物は、光硬化後の粘着剤の凝集性を高め、被着体との接着力を向上させる作用を有する。また、光硬化前の粘着剤層2の表層領域2aにおける多官能化合物の存在量が、厚み方向の他の領域2b,2cにおける多官能化合物の存在量よりも多いことにより、光硬化前の粘着剤2と被着体との接着力が適度に減少し、被着体からの補強シートの剥離性が向上する傾向がある。
【0029】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、光硬化前の粘着剤層2の厚み方向の組成に分布を持たせることにより、光硬化前後の粘着剤の接着力を調整する作用を有する。特に、光硬化前の粘着剤層2の表層領域2aにおける(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量が、中層領域2bおよび基材側領域2cにおける(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量よりも小さい場合に、光硬化前の接着力が小さく剥離性に優れ、光硬化により接着力が大幅に上昇し接着信頼性が向上する傾向がある。
【0030】
以下では、粘着剤層2を厚み方向に3等分し、表層側の1/3の領域(フィルム基材1から最も離れた領域)を「表層領域」、厚み方向中央の1/3の領域を「中層領域」、フィルム基材1側の1/3の領域を「基材側領域」と称する。
【0031】
粘着剤層2は、二次イオン質量分析(SIMS)により表層側からフィルム基材側に向かって粘着剤層2の組成分布を測定した際に、各成分の全量100%に対する表層領域2aにおける存在比率、中層領域2bにおける存在比率、基材側領域2cにおける存在比率が分布を有している。粘着剤層が厚み方向に組成分布を有していない場合は、各成分の存在比率は、表層領域2a、中層領域2b、および基材側領域2cにおいて、それぞれ約33%となる。これに対して、本発明の補強フィルムの粘着剤層2では、多官能化合物の表層領域2aにおける存在比率が50%以上であり、かつ(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域2aにおける存在比率が31%以下である。本明細書において、「多官能化合物の表層領域における存在比率」とは、粘着剤層に含まれる多官能化合物の全量100%に対する表層領域における多官能化合物の存在比率を意味し、「(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率」とは、粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーの全量100%に対する表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーの存在比率を意味する。
【0032】
(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域2aにおける存在比率は、30%以下が好ましく、29%以下がより好ましく、28%以下がさらに好ましく、27.5%以下が特に好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域2aにおける存在比率は、一般に15%以上であり、粘着剤の透明性を高める観点からは、20%以上が好ましく、23%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。
【0033】
多官能化合物の表層領域2aにおける存在比率は、55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、63%以上がさらに好ましく、65%以上が特に好ましい。多官能化合物の表層領域2aにおける存在比率は、一般に95%以下であり、粘着剤層2の光硬化後の被着体に対する接着力を高める観点からは93%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、87%以下がさらに好ましい。
【0034】
表層領域2aにおける(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量が小さいほど、表層領域2aにおける多官能化合物の存在量が大きく、粘着剤層2の光硬化後の被着体に対する接着力が高くなる傾向がある。一方、表層領域2aにおける多官能化合物の存在量が過度に大きいと、光硬化後の接着力が十分に上昇しない場合がある。
【0035】
以下、粘着剤組成物を構成する各成分の好ましい形態について、順に説明する。
【0036】
<(メタ)アクリル系ベースポリマー>
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、主たるモノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重量平均分子量が10万以上のポリマーである。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖でもよく分枝を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラルキル等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、(メタ)アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、55重量%以上がさらに好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するモノマー成分を含有することが好ましい。架橋可能な官能基を有するモノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。(メタ)アクリル系ベースポリマーのヒドロキシ基やカルボキシ基は、後述の架橋剤との反応点となる。(メタ)アクリル系ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、凝集力が向上し、粘着剤層2の接着性が向上するとともに、粘着剤の流動性が低下するため、リワーク時の被着体への糊残りが低減する傾向がある。
【0040】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、上記以外に、共重合モノマー成分として、酸無水物基含有モノマー、アクリル酸のカプロラクトン付加物、スルホン酸基含有モノマー、燐酸基含有モノマー等を用いることもできる。また、改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2-メトキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等も使用することができる。
【0042】
(メタ)アクリル系ベースポリマー中の共重合モノマー成分の比率は特に制限されないが、例えば架橋点を導入する目的で共重合モノマー成分としてヒドロキシ基含有モノマーやカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、ヒドロキシ基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーの含有量の合計は、(メタ)アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、1~20重量%程度が好ましく、2~15重量%がより好ましい。
【0043】
上記モノマー成分を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することで(メタ)アクリル系ベースポリマーが得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、溶液重合法が好ましい。溶液重合の溶媒としては、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20~80重量%程度である。重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系等の各種公知のものを使用できる。分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。反応温度は通常50~80℃、反応時間は通常1~8時間である。
【0044】
粘着剤層2に適宜の保持力を付与する観点から、(メタ)アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は10万以上が好ましい。粘着剤層2の加工性や透明性等の観点から、(メタ)アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は、200万以下が好ましい。(メタ)アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は、20万~150万が好ましく、40万~120万がより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の分子量である。ベースポリマーに架橋構造が導入される場合は、架橋構造導入前の(メタ)アクリル系ベースポリマーの分子量が上記範囲であることが好ましい。
【0045】
常温環境において被着体に対する適宜の接着性を有する粘着剤層2を得るためには、(メタ)アクリル系ベースポリマーのFox式換算のガラス転移温度(Tg)は0℃以下が好ましい。(メタ)アクリル系ベースポリマーのTgは、-80~-10℃が好ましく、-75~-20℃がより好ましく、-70~-20℃がさらに好ましい。
【0046】
<架橋剤>
粘着剤に適度の凝集力を持たせる観点から、(メタ)アクリル系ベースポリマーには架橋構造が導入されることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル系ベースポリマーを重合後の溶液に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱を行うことにより、架橋構造が導入される。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、(メタ)アクリル系ベースポリマー中に導入されたヒドロキシ基等の官能基と反応して架橋構造を形成する。
【0047】
加熱により(メタ)アクリル系ベースポリマーに架橋構造を導入可能であることから、架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートHL」)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学製「タケネートD110N」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、東ソー製「コロネートHX」、綜研化学製「Y-75」)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。
【0048】
架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ベースポリマーの組成や分子量等に応じて適宜に調整すればよい。架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、0.1~10重量部であり、好ましくは0.2~7重量部、より好ましくは0.3~5重量部、さらに好ましくは1~4重量部である。
【0049】
架橋構造の形成を促進するために架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジブチルスズアセタート、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジアセタート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒(特にスズ系架橋触媒)等が挙げられる。架橋触媒の使用量は、一般には、(メタ)アクリル系ベースポリマー100重量部に対して0.05重量部以下である。
【0050】
<多官能化合物>
多官能化合物としては、光硬化性モノマー、または光硬化性オリゴマーが用いられる。多官能化合物としては、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル系ベースポリマーとの親和性が高いことから、多官能化合物として多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のエステル類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3以上のヒドロキシ基を有するポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基と(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を有する化合物等が挙げられる。
【0052】
多官能化合物として、メチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドによるポリオールの変性体と(メタ)アクリロイル基とのエステルを用いてもよい。ポリオールのアルキレンオキシド変性体と(メタ)アクリロイル基とのエステルとしては、ポリオールと(メタ)アクリロイル基の間に、1または複数のオキシアルキレン基を挿入したものが挙げられる。オキシアルキレン基の挿入により、多官能化合物の官能基当量が大きく(すなわち、単位分子量あたりの官能基数が小さく)なり、分子の極性も変化する。また、オキシアルキレン基の挿入により、多官能化合物と(メタ)アクリル系ベースポリマーや(メタ)アクリル系オリゴマーとの相溶性が変化し、これに伴って、光硬化前の粘着剤層における厚み方向の組成分布や、光硬化後の粘着剤の接着性等が変化する場合がある。
【0053】
光硬化後の接着力を高める観点から、多官能化合物の官能基当量(g/eq)は500以下が好ましく、450以下がより好ましい。一方、光架橋密度が過度に上昇すると、粘着剤の粘性が低下し接着力が低下する場合がある。そのため、多官能化合物の官能基当量は100以上が好ましく、130以上がより好ましく、150以上がさらに好ましい。また、多官能化合物の官能基当量が小さい場合は、(メタ)アクリル系ベースポリマーと多官能化合物の相互作用が強く、光硬化前の粘着剤層2の接着力が上昇し、被着体からの剥離が困難となる場合がある。光硬化前の粘着剤層2と被着体との接着力を適切な範囲に保持する観点からも、多官能化合物の官能基当量は上記の範囲内であることが好ましい。多官能化合物の分子量は、100~1000が好ましい。
【0054】
粘着剤組成物における多官能化合物の含有量は、(メタ)アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、0.5~30重量部が好ましく、1~20重量部がより好ましく、2~15重量部がさらに好ましい。多官能化合物を0.5重量部以上含むことにより、光硬化前の粘着剤層2において、表層部2aに多官能化合物が偏在しやすくなり、これに伴って被着体との接着力が適度に低減する傾向がある。一方、粘着剤組成物における多官能化合物の含有量が過度に大きくなると、多官能化合物のブリードアウトによる透明性の低下や、光硬化後の粘着剤の粘性の低下により十分な接着力が得られない場合がある。多官能化合物を未硬化の状態で組成物中に含めるために、(メタ)アクリル系ベースポリマーを重合後に多官能化合物を添加することが好ましい。
【0055】
<(メタ)アクリル系オリゴマー>
粘着剤層2は、(メタ)アクリル系オリゴマーを含む。(メタ)アクリル系オリゴマーは、粘着付与剤として作用し、光硬化後の粘着剤の被着体への接着力向上に寄与し得る。また、本発明においては、粘着剤組成物が、ベースポリマーおよび多官能化合物に加えて(メタ)アクリル系オリゴマーを含むことにより、粘着剤層2の厚み方向の組成に分布を持たせ、光硬化前後の粘着剤の接着力を調整する作用を有する。
【0056】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル系モノマーを含む重合体であり、上記の(メタ)アクリル系ベースポリマーよりも重量平均分子量が小さい成分である。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、1000~50000である。上記の(メタ)アクリル系ベースポリマーおよび多官能化合物との適度の親和性を持たせ粘着剤層2の透明性を維持する観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、30000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、8000以下がさらに好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、主たるモノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分全量に対して50重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。好ましい形態においては、(メタ)アクリル系オリゴマーは、モノマー成分として実質的に(メタ)アクリル酸アルキルエステルのみを含む。(メタ)アクリル系オリゴマーは、2種以上のモノマー成分を含んでいてもよい。
【0058】
(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分は、前述の架橋剤と架橋構造を形成しないものが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分は、ヒドロキシ基やカルボキシ基を含まないものが好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分として先に例示した炭素数1~20の直鎖または分枝アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。その他に、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジン(メタ)クリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環または複素環含有基を有する(メタ)アクリル酸エステル;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等のモノマー成分も、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分として好適である。
【0060】
<光開始剤>
粘着剤層2は、光開始剤を含むことが好ましい。光開始剤は、活性光線の照射により活性種を発生し、多官能化合物の硬化反応を促進する。光開始剤としては、多官能化合物の種類等に応じて、光カチオン開始剤(光酸発生剤)、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤(光塩基発生剤)等が用いられる。多官能化合物として多官能アクリレートが用いられる場合は、光ラジカル開始剤を用いることが好ましい。光ラジカル開始剤としては、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光ラジカル発生剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。粘着剤層2における光重合開始剤の含有量は、粘着剤層2の全量100重量部に対して、0.001~10重量部が好ましく、0.01~5重量部がより好ましい。
【0061】
<その他の添加剤>
上記例示の各成分の他、粘着剤組成物は、シランカップリング剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0062】
<粘着剤層の形成>
(メタ)アクリル系ベースポリマー、多官能化合物および(メタ)アクリル系オリゴマーを含む上記の粘着剤組成物を、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコート等により、基材上に塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去することにより粘着剤層が形成される。乾燥方法としては、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃、より好ましくは50℃~180℃、さらに好ましくは70℃~170℃である。乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、より好ましくは5秒~15分、さらに好ましくは10秒~10分である。
【0063】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合は、溶媒の乾燥と同時、または溶媒の乾燥後に、加熱またはエージングにより架橋を進行させることが好ましい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定され、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。溶媒を乾燥除去するための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。
【0064】
(メタ)アクリル系ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、粘着剤層2のゲル分率が上昇する傾向がある。粘着剤層2のゲル分率が高いほど粘着剤が硬く、リワーク等による被着体からの補強フィルムの剥離時に、被着体への糊残りが抑制される傾向がある。粘着剤層2の光硬化前のゲル分率は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。光硬化前の粘着剤層2のゲル分率が過度に大きいと、被着体に対する投錨力が低下し、接着力が不十分となる場合がある。そのため、光硬化前の粘着剤層2のゲル分率は、95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましく、80%以下が特に好ましい。ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができ、具体的には、粘着剤層を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。
【0065】
架橋剤により(メタ)アクリル系ベースポリマーに架橋構造を導入後も、多官能化合物は未反応の状態を維持している。また、架橋剤との反応性官能基を有していない(メタ)アクリル系オリゴマーを用いた場合は、(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリル系ベースポリマーと化学結合を形成しない状態で、粘着剤層2中に存在する。
【0066】
フィルム基材1上に粘着剤層2を形成する場合は、粘着剤層2の保護等を目的として、粘着剤層2上にセパレータ5を付設することが好ましい。粘着剤層2上にセパレータ5を付設後に架橋を行ってもよい。他の基材上に粘着剤層2を形成する場合は、溶媒を乾燥後に、フィルム基材1上に粘着剤層2を転写することにより補強フィルムが得られる。粘着剤層の形成に用いた基材を、そのままセパレータ5としてもよい。
【0067】
セパレータ5としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。セパレータの厚みは、通常3~200μm、好ましくは10~100μmである。セパレータ5の粘着剤層2との接触面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、もしくは脂肪酸アミド系等の離型剤、またなシリカ粉等による離型処理が施されていることが好ましい。セパレータ5の表面が離型処理されていることにより、フィルム基材1とセパレータ5を剥離した際に、粘着剤層2とセパレータ5との界面で剥離が生じ、フィルム基材1上に粘着剤層2が固着した状態が維持される。
【0068】
前述のように、光硬化前の粘着剤層2は、厚み方向に組成分布を有しており、多官能化合物の表層領域2aにおける存在比率が50%以上、(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域2aにおける存在比率が31%以下である。すなわち、表層領域(被着体との貼り合わせ界面)では、中層領域および基材側領域に比べて、多官能化合物の存在量が大きく、(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量が小さい。
【0069】
低分子量の多官能化合物が表層領域2aに偏在することにより、被着体との接着界面に接着阻害層(Weak Boundary Layer; WBL)が形成され、光硬化前の粘着剤層2は、バルクとしての硬さを保持したまま、接着界面では液状の特性が強いため、被着体への接着力が小さいと考えられる。さらに、被着体との接着界面である表層領域2aに多官能化合物が偏在するため、光硬化に伴う被着体界面の凝集力の増加が顕著になると考えられる。光硬化後の粘着剤層の被着体界面での凝集力が高められることにより、被着体との接着力が大幅に上昇し、補強フィルムの接着信頼性が高められる。
【0070】
このような厚み方向の組成分布は、(メタ)アクリル系ベースポリマー、多官能化合物、および(メタ)アクリル系オリゴマーの3成分の相溶性に依存すると考えられる。(メタ)アクリル系ベースポリマーと多官能化合物との相溶性は、主に、化合物の構造の影響を受ける。化合物の構造と相溶性は、例えばハンセン(Hansen)溶解度パラメータにより評価可能である。
【0071】
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、ヒルデブランド(Hildebrand)の溶解度パラメータδを、分散項δd,極性項δp,および水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであり、δ2=δd
2+δp
2+δh
2の関係が成り立つ。分散項δdは分散力による効果、極性項δpは双極子間力による効果、水素結合項δhは水素結合力による効果を示す。2つの物質のHSPの距離Raは、2つの物質間の分散項の差Δδd、極性項の差Δδp、および水素結合項の差Δδhから、Ra={4Δδd
2+Δδp
2+Δδh
2}1/2で表され、Raが小さいほど相溶性が高く、Raが大きいほど相溶性が低い。
【0072】
ハンセン溶解度パラメータの詳細は、Charles M. Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook (CRCプレス、2007年)に記載されており、文献値等が未知の物質については、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice (HSPiP)を用いて計算可能である。
【0073】
多官能化合物の表層領域への偏在は、粘着剤組成物の主成分である(メタ)アクリル系ベースポリマーと多官能化合物との相溶性に依存すると考えられる。すなわち、(メタ)アクリル系ベースポリマーとのHSPの距離が適度に大きい多官能化合物を用いることにより、多官能化合物の表層領域への偏在が促進されると考えられる。
【0074】
(メタ)アクリル系オリゴマーと多官能化合物の相溶性が低い場合は、多官能化合物の表層領域への偏在に伴って、多官能化合物との相溶性が低い(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率が小さくなる。そのため、多官能化合物とのHSPの距離が適度に大きい(メタ)アクリル系オリゴマーを用いることにより、(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率が相対的に小さい(例えば31%以下の)粘着剤層2を形成できると考えられる。また、粘着剤組成物の主成分である(メタ)アクリル系ベースポリマーとの相溶性も、表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量を左右する要因になると考えられる。
【0075】
これらを勘案して、粘着剤組成物を構成する(メタ)アクリル系ベースポリマー、多官能化合物および(メタ)アクリル系オリゴマーの組み合わせを選択することにより、表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量が小さく、光硬化により高い接着性を示す粘着剤層を形成できる。
【0076】
[被着体への補強シートの貼り合わせおよび光硬化]
本発明の補強フィルムは、各種デバイスの構成部材(仕掛品)や、完成後のデバイスに貼り合わせて用いられる。デバイスの製造工程において、仕掛品に補強フィルムが貼り合わせられる場合は、製品サイズに切断される前の大判の仕掛品に補強フィルムを貼り合わせてもよい。ロールトゥーロールプロセスにより製造されるデバイスのマザーロールに、補強フィルムをロールトゥーロールで貼り合わせてもよい。補強フィルムは被着体の全面に貼り合わせられてもよく、補強を必要とする部分にのみ選択的に貼り合わせられてもよい。また、被着体の全面に補強フィルムを貼り合わせ後、補強を必要としない箇所の補強フィルムを切断し、補強フィルムを剥離除去してもよい。
【0077】
粘着剤の光硬化前は、粘着剤層と被着体との接着力が小さく、補強フィルムは被着体表面に仮着された状態であるため、被着体の表面から補強フィルムを容易に剥離除去でき、リワーク性に優れている。前述のように、多官能化合物が粘着剤層2の表層領域に偏在することにより、光硬化前の接着性が小さくなる傾向がある。
【0078】
被着体からの剥離を容易とし、補強フィルムを剥離後の被着体への糊残りを防止する観点から、光硬化前の粘着剤層2と被着体との接着力は、1N/25mm以下が好ましく、0.8N/25mm以下がより好ましく、0.6N/25mm以下がさらに好ましい。一方、保管やハンドリングの際の被着体からの補強シートの剥離を防止する観点から、光硬化前の粘着剤層2と被着体との接着力は、0.01N/25mm以上が好ましく、0.05N/25mm以上がより好ましく、0.15N/25mm以上がさらに好ましく、0.1N/25mm以上が特に好ましい。接着強度は、SUS304板を被着体として、引張速度300mm/分の180°ピール試験により評価できる。
【0079】
被着体に補強フィルムを貼り合わせ後、粘着剤層2に活性光線を照射することにより、粘着剤層を光硬化させる。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線、X線、α線、β線、およびγ線等が挙げられる。保管状態における粘着剤層の硬化を抑制可能であり、かつ硬化が容易であることから、活性光線としては紫外線が好ましい。活性光線の照射強度や照射時間は、粘着剤層の組成や厚み等に応じて適宜設定すればよい。
【0080】
デバイスの実用時の接着信頼性の観点から、光硬化後の粘着剤層と被着体との接着力は、5N/25mm以上が好ましく、8N/25mm以上がより好ましく、10N/25mm以上がさらに好ましい。光硬化後の粘着剤層と被着体との接着力は、光硬化前の粘着剤層2と被着体との接着力の10倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましく、20倍以上がさらに好ましい。
【0081】
前述のように、光硬化前の粘着剤層2において、(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率が小さい場合に、光硬化により接着力が大幅に上昇する傾向がある。なお、光硬化前の粘着剤層2が厚み方向に組成分布を有している場合でも、光硬化後の粘着剤層では、(メタ)アクリル系オリゴマーの存在比率は、厚み方向でほぼ均一となることが多い。このような事実から、光硬化前に基材側領域および中層領域に存在していた(メタ)アクリル系オリゴマーが、光硬化に伴って表層領域に移動することが、接着力の向上に関連していると推定される。
【0082】
光硬化により多官能化合物の重合が進行すると、表層領域に偏在していた多官能化合物の液状の特性が弱くなり、WBLが消失して、(メタ)アクリル系ベースポリマーと多官能化合物との相溶性が高くなる。これに伴って、表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーと他の成分との相溶性は、中層領域および基材側領域における(メタ)アクリル系オリゴマーと他の成分との相溶性に略等しくなる。このように、光硬化の進行に伴って、(メタ)アクリル系オリゴマーの厚み方向の存在比率の分布を生じさせていた要因が解消され、表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーの濃度が高くなる。前述のように、粘着剤層を光硬化すると、表層領域では、光硬化前に偏在していた多官能化合物の重合に伴う凝集力が増加する。これに加えて、表層領域では粘着付与剤として作用する(メタ)アクリル系オリゴマーの濃度が高くなることも、光硬化後の粘着剤層の被着体に対する接着力の向上に寄与すると考えられる。
【0083】
補強フィルムを貼り合わせることにより、被着体に剛性を付与できるため、応力や自重等による湾曲、カール、撓み等が抑制され、ハンドリング性が向上する。そのため、デバイスの製造工程で仕掛品に補強フィルムを貼り合わせることにより、搬送や加工の際の不良や不具合を防止できる。また、完成後のデバイスの使用において、デバイスの落下、デバイス上への重量物の載置、デバイスへの飛来物の衝突等により、不意に外力が負荷された場合でも、補強フィルムが貼り合わせられていることにより、デバイスの破損を防止できる。粘着剤を光硬化後の補強フィルムはデバイスに強固に接着しているため、長期使用においても補強フィルムが剥がれ難く、信頼性に優れている。
【0084】
本発明の補強フィルムは、粘着剤層2が光硬化性であり、硬化のタイミングを任意に設定可能である。リワークや補強フィルムの加工等の処理は、被着体に補強フィルムを貼設後、粘着剤を光硬化するまでの間の任意のタイミングで実施可能であるため、デバイスの製造工程のリードタイムにも柔軟に対応可能である。
【実施例】
【0085】
以下に各種配合の粘着剤組成物を備える補強フィルムの作製例を挙げてさらに説明するが、本発明は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0086】
[(メタ)アクリル系ベースポリマーの製造]
<ベースポリマーA>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、モノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)95.9重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)4重量部、およびアクリル酸(AA)0.1重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、ならびに溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、70℃に加熱し、6時間反応させて、ベースポリマーAの溶液を得た。ベースポリマーAの重量平均分子量は49.4万であった。
【0087】
<ベースポリマーB~H>
モノマー仕込み量を表1に示すように変更した以外は、ベースポリマーAの重合と同様にして、ベースポリマーB~Hの溶液を得た。
【0088】
ベースポリマーA~Hの仕込みモノマー比率、ポリマーのガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を表1に一覧で示す。表1において、モノマー成分は以下の略称で記載している。
2EHA: 2-エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg:-70℃)
2HEA: 2-ヒドロキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-15℃)
BA : アクリル酸ブチル(ホモポリマーのTg:-55℃)
AM : アクリルアミド(ホモポリマーのTg:165℃)
AA : アクリル酸(ホモポリマーのTg:106℃)
【0089】
(メタ)アクリル系ベースポリマーのTgは、各モノマー成分のホモポリマーのTgおよびモノマーの配合比率から、Foxの式により算出した。(メタ)アクリル系ベースポリマーのMw(ポリスチレン換算)は、GPC(東ソー製「HLC-8220GPC」)を用い下記の条件により測定した。
サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:THF
流速 :0.6ml/分
測定温度 :40℃
サンプルカラム:TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
参照カラム : TSKgel SuperH-RC(1本)
検出器 :RI
【0090】
【0091】
[補強フィルムの作製]
<粘着剤組成物の調製>
上記(メタ)アクリル系ベースポリマーの製造により得られたベースポリマー溶液に、(メタ)アクリル系ベースポリマーの固形分100重量部に対して、(メタ)アクリル系オリゴマー5重量部と、多官能化合物10重量部と、架橋剤2重量部と、光重合開始剤0.1重量部とをそれぞれ固形分比で添加し、均一に混合して、表2に示す配合1~39の粘着剤組成物を調製した。熱架橋剤としては、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(75%酢酸エチル溶液、三井化学製「タケネートD110N」)を用いた、光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「イルガキュア184」)を用いた。
【0092】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)の重合物、n-ブチルメタクリレート(nBMA)の重合物、またはイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の重合物を用いた。いずれも重量平均分子量は約3000であった。
【0093】
多官能化合物としては、トリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチルプロパン(EO)3トリアクリレート(TMP(EO)3TA)、またはトリメチルプロパン(EO)6トリアクリレート(TMP(EO)6TA)を用いた。TMP(EO)3TAは、メチロールとアクリロイルの間に平均1個(1分子中平均3個)のエチレンオキシドが挿入されたものであり、TMP(EO)6TAは、メチロールとアクリロイルの間に平均2個(1分子中平均6個)のエチレンオキシドが挿入されたものである。
【0094】
配合40、41では、(メタ)アクリル系オリゴマーを用いずに粘着剤組成物を調製した。配合42~44では、多官能化合物および光重合開始剤を用いずに粘着剤組成物を調製した。
【0095】
<粘着剤溶液の塗布および架橋>
表面処理がされていない厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製「ルミラーS10」)上に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、ファウンテンロールを用いて塗布した。130℃で1分間乾燥して溶媒を除去後、粘着剤の塗布面に、セパレータ(表面がシリコーン離型処理された厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面を貼り合わせた。その後、25℃の雰囲気で4日間のエージング処理を行い、架橋を進行させ、基材上に光硬化性粘着シートが固着積層され、その上にセパレータが仮着された補強フィルムを得た。
【0096】
[評価]
<組成の厚み分布>
アルバック・ファイ製Ar-GCIB銃搭載のTOF-SIMS「TRIFT V nano TOF」を用い、表面側から粘着剤層をスパッタしながら二次イオン質量分析を行い、粘着剤層の深さ方向の組成を分析した。測定条件およびスパッタ条件は以下の通りである。
(測定条件)
一次イオン :Bi3
++
加速電圧 :30kV
イオン電流 :約2nA(DCとして)
分析面積 :100μm×100μm
分析時間 :約15秒/サイクル
検出イオン :正・負イオン
中和 :電子銃使用
(スパッタ条件)
スパッタイオン:Ar2500+
加速電圧 :20kV
イオン電流 :約8nA
スパッタ面積 :400μm×400μm
スパッタ時間 :30秒/サイクル
【0097】
(メタ)アクリル系ベースポリマー、(メタ)アクリル系オリゴマーおよび多官能化合物のそれぞれについて、デプスプロファイルを作成し、全面積(二次イオン量の積分値)に対する、表層領域(表面から全厚みの1/3の領域)の面積比を、当該成分の表層領域における存在比率とした。
【0098】
<接着力>
幅25mm×長さ100mmに切り出した補強フィルムの表面からセパレータを剥離除去し、SUS304板の表面にハンドローラを用いて貼り合わせ、光硬化前の試験サンプルとした。光硬化前の試験サンプルの補強フィルム側(ポリエチレンテレフタレートフィルム側)から紫外線を照射して粘着剤層を光硬化したものを光硬化後の試験サンプルとした。これらの試験サンプルを用い、補強フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムの端部をチャックで保持して、引張速度300mm/分で、補強フィルムの180°ピールを行い、ピール強度を測定した。
【0099】
各補強シートの粘着剤組成物の配合((メタ)アクリル系ベースポリマー、多官能化合物および(メタ)アクリル系オリゴマーの種類)、多官能化合物および(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率、ならびに光硬化前後の接着力の測定結果を表2に示す。
【0100】
【0101】
表2に示すように、(メタ)アクリル系ベースポリマーと多官能化合物と(メタ)アクリル系オリゴマーとを含む配合1~39の光硬化性粘着剤層は、多官能化合物の表層領域における存在比率が高く、光硬化前は被着体(SUS304板)との接着力が小さく、良好なリワーク性を示した。また、(メタ)アクリル系ベースポリマーおよび多官能化合物の種類が同一であっても、(メタ)アクリル系オリゴマーの種類が異なると、表層領域における(メタ)アクリル系オリゴマーの存在量が変化し、これに伴って表層領域における多官能化合物の存在量も変化することが分かる。
【0102】
例えば、配合7~9では、(メタ)アクリル系ベースポリマーおよび多官能化合物が同一であるが、(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率は、配合7が33.7%であるのに対して、配合8では27.2%であった。配合8では、(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率が小さいことに伴って、多官能化合物の表層領域における存在比率が大きく、粘着剤を光硬化後の被着体に対する接着力が大幅に上昇していた。
【0103】
表2の他の例についても、(メタ)アクリル系オリゴマーの表層領域における存在比率が小さいほど、多官能化合物の表層領域における存在比率が高く、光硬化により接着力が大幅に上昇する傾向がみられた。これらの結果から、(メタ)アクリル系ベースポリマーおよび多官能化合物に加えて(メタ)アクリル系オリゴマーを含む光硬化性の粘着剤組成物では、これらの3成分の相溶性に依存して、表層付近に多官能化合物を偏在させ、光硬化後の接着力を大幅に上昇させ、接着信頼性を向上できることが分かる。